この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

ホモシスチン尿症・重いMTHFR欠損症・ビタミンB12(コバラミン)の代謝の病気など、ホモシステインとメチオニンの代謝に関わる39の遺伝子を一度に調べる遺伝子検査です。新生児マススクリーニングで再検査と言われた、血液検査でホモシステインが高いと言われた、若い年齢で血栓ができた、水晶体がずれていると言われた、といった方が、原因を確かめるために受けます。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の治療や健康管理だけでなく、ご家族やこれからの妊娠・出産を考えるときにも、ずっと使える情報になります。なお、「MTHFR遺伝子検査」でよく調べられるC677Tなどのありふれた多型は、この検査では報告しません。その理由もこのページで説明します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
ホモシスチン尿症(CBS欠損症・コバラミン代謝異常症・重いMTHFR欠損症)、メチルマロン酸血症、ビタミンB12や葉酸の吸収・運搬の病気など、39遺伝子の病的な変化を調べます。MTHFRのありふれた多型(C677T・A1298C)は、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の推奨にしたがい報告しません。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
新生児マススクリーニングで再検査と言われた方、ホモシステインが高い・若い年齢で血栓ができた・水晶体がずれている方、ビタミンB12や葉酸を補っても良くならない貧血や神経の症状がある方、ご家族にこれらの病気の方がいる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかると、ビタミンB6が効く型かどうか・避けたい麻酔・血栓への備えなど、次の一手が決まります。ほとんどが常染色体潜性(劣性)遺伝のため、きょうだいの検査やご両親の保因者の確認にもつながります。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. ホモシスチン尿症・ビタミンB12代謝異常症の遺伝子検査でわかること
この遺伝子検査は、ホモシステイン・メチオニン・ビタミンB12(コバラミン)・葉酸の代謝に関わる39の遺伝子を一度に読み、ホモシスチン尿症などの原因となる遺伝子の変化があるかを調べます。これらの病気は、同じ「ホモシステインが高い」という検査結果でも、原因の遺伝子によって治療が大きく違います。だからこそ、どの遺伝子のどの変化が原因かを確かめることに意味があります。
ホモシステイン・メチオニン・ビタミンB12・葉酸はどうつながっているか
メチオニンは食べ物のたんぱく質に含まれるアミノ酸です。体の中でメチオニンは、DNAやたんぱく質に「メチル基」という目印を付ける材料(SAM(S-アデノシルメチオニン))に変わり、目印を渡したあとにホモシステインになります。ホモシステインは、ふだんは2つの道ですぐに片付けられます。この回り道全体をメチオニン回路、葉酸が関わる部分を含めて1炭素代謝と呼びます。
メチオニン食べ物のたんぱく質から
▶
SAMメチル基を渡す
▶
ホモシステインためてはいけない物質
▶
シスタチオニンCBS+ビタミンB6
ホモシステイン
▶
メチオニン合成酵素(MTR)ビタミンB12が必要
◀
MTHFR葉酸からメチル基を用意
▶
メチオニンに戻る
1つ目の道(上の図)は、CBSという酵素がビタミンB6を使ってホモシステインをシスタチオニンに変える道です。2つ目の道(下の図)は、メチオニン合成酵素がビタミンB12と、MTHFRが葉酸から作ったメチル基を使って、ホモシステインをメチオニンに戻す道です。どちらの道が止まってもホモシステインがたまり、ホモシスチン尿症になります。ビタミンB12を細胞に運び込み、使える形に変える途中のどこかが止まると、メチルマロン酸もたまります。
この検査で調べる主な病気
🧬 39遺伝子パネルで調べる病気のグループ
※遺伝子ごとの病名と遺伝のしかたは第5章の表で、OMIMの登録にもとづいてまとめています。
2. ホモシスチン尿症とは:原因・症状・遺伝
ホモシスチン尿症は、メチオニンが分解されてできるホモシステインが血液にたまる、生まれつきの代謝の病気です。日本の指定難病(337)では、原因の違いから3つの病型に分けられています。難病情報センターによると、Ⅰ型はシスタチオニンβ合成酵素(CBS)の欠損、Ⅱ型はコバラミン(ビタミンB12)代謝の異常(cblC型など)、Ⅲ型はメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)の欠損によるもので、いずれも常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です(2026年10月時点で確認)。患者さんの数は、Ⅰ型が約200人、Ⅱ型とⅢ型はそれぞれ100人未満とされています。
名前が似ている「シスチン尿症」は、腎臓でアミノ酸の再吸収がうまくいかず尿路結石ができやすくなる別の病気です。この検査の対象ではありません。
CBS欠損症(Ⅰ型・古典的ホモシスチン尿症):水晶体偏位・血栓・骨
CBS欠損症でもっとも一貫してみられるのは、目のレンズ(水晶体)がずれる「水晶体偏位」です。命や健康に大きく関わるのは血栓症で、病気による重い合併症や早い死亡の主な原因とされています[1]。欧州の診療ガイドラインでは、骨では背骨の骨粗しょう症がもっとも多く、ビタミンB6が効かない型で治療をしないと、9割近くの方に学習の困難がみられるとされています[1]。
背が高く手足の指が長いなど、マルファン症候群に似た体つきになることがあり、水晶体偏位もどちらの病気でも起こります。水晶体偏位だけが家族に続く家族性水晶体偏位もあります。見た目は似ていても、原因と治療はまったく違うため、ホモシステインの値と遺伝子検査で見分けることが大切です。CBS欠損症について詳しくはシスタチオニンβ合成酵素欠損症によるホモシスチン尿症で解説しています。
遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは、CBS欠損症の頻度は少なくとも20万〜33.5万人に1人で、創始者変異のある地域ではもっと多いとされています[3]。日本では、小児慢性特定疾病情報センターが、患者さんが見つかる頻度を約80万人に1人としています(2026年10月時点で確認)。
ホモシステインをメチオニンに戻せない型(Ⅲ型:重いMTHFR欠損症、cblE型・cblG型)
2つ目の道が止まる病気です。MTHFRの働きがほとんどない重いMTHFR欠損症(Ⅲ型)や、メチオニン合成酵素とその再活性化に関わる遺伝子(MTR・MTRR)の病気(cblG型・cblE型)がここに入ります。CBS欠損症と違い、血液のメチオニンはむしろ低くなります。欧州の診療ガイドラインは、MTHFR欠損症では早く見つけて早く治療を始めるほど、神経の経過が良いことが多いとしています[2]。
💡 用語解説:重いMTHFR欠損症とMTHFR多型は別のもの
この検査で調べる「重いMTHFR欠損症」は、MTHFR遺伝子の両方に病的な変化があり、酵素がほとんど働かない、まれな病気です。一方、「MTHFR遺伝子検査」でよく話題になるC677Tなどは、多くの人が持っているありふれた体質の違い(多型)で、病気とは別のものです(第3章)。
メチルマロン酸血症を伴う型(Ⅱ型:cblC型・cblD型・cblF型・cblJ型・cblX型)
ビタミンB12を細胞の中で使える形に変える途中の病気で、ホモシステインとメチルマロン酸の両方がたまります。GeneReviewsでは、細胞の中のコバラミン代謝の病気のうち、cblC型がもっとも多く、もっともよくわかっている型とされています。多くは常染色体潜性遺伝ですが、HCFC1遺伝子によるcblX型はX連鎖の遺伝のしかたをとります[4]。詳しくはホモシスチン尿症を伴うメチルマロン酸血症(cblC型など)で解説しています。
そのほかの病気:ビタミンB12・葉酸の吸収と運搬、高メチオニン血症など
このパネルには、ビタミンB12を腸で吸収するための内因子やその受け皿の病気(遺伝性内因子欠損症、イマースルンド・グレスベック症候群)、血液中でビタミンB12を運ぶたんぱく質の病気(トランスコバラミン欠損症)、葉酸を腸から吸収する病気(遺伝性葉酸吸収不全症)、メチオニンが高くなる病気(MAT1A・GNMT・AHCY・ADKの病気)、メチルマロン酸血症・プロピオン酸血症なども含まれます。遺伝性内因子欠損症は、自己免疫で起こる悪性貧血とは別の、遺伝子の変化による病気です。
3. 「MTHFR遺伝子検査」を考えている方へ:C677Tの多型と、このパネルで調べるもの
この検査では、MTHFR遺伝子のありふれた多型2つ(c.665C>T〔旧表記C677T〕と c.1286A>C〔旧表記A1298C〕)は報告しません。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の推奨にしたがい、病気の診断や管理に役立つ根拠が不十分なためです[5]。この検査で調べるのは、MTHFRを含む39遺伝子の、病気の原因となる変化です。
MTHFR遺伝子多型(C677T・A1298C)は、多くの人が持つ体質の違い
C677Tは、熱に少し弱いMTHFR酵素を作る「熱不安定型」の多型として知られています。ACMGの指針によると、C677Tを2つ持つ(ホモ接合)人は、ヒスパニック系の方では25%を超え、北米の白人では10〜15%とされています[5]。米国産科婦人科学会(ACOG)は、ヨーロッパの人々でC677Tのホモ接合は10〜16%、A1298Cのホモ接合は4〜6%としています[6]。これほど多くの人が持っているものなので、多型があるというだけで病気と結びつけることはできません。MTHFR遺伝子とC677T・A1298C多型の詳しい解説もあわせてご覧ください。
MTHFR多型と不育症・流産・血栓:学会の立場
ACMGは、血栓が起きやすい体質の検査や、流産をくり返す(不育症)原因を調べる検査として、MTHFR多型を調べるべきではないとしています。症状のないご家族にも調べるべきではないとしています[5]。ACOGも、C677Tを1つ持つ場合も2つ持つ場合も、妊娠の経過が悪くなることとの関連が認められないとして、妊娠中の血栓や妊娠の経過の評価のために、MTHFRの解析や空腹時のホモシステイン値の測定は勧めないとしています[6]。
欧州ヒト生殖学会(ESHRE)の不育症ガイドライン(2022年版)は、不育症の女性に遺伝性の血栓性素因の検査をしないことを提案し(研究の場合や、ほかに血栓のリスクがある場合を除く)、ホモシステインの測定も日常的には勧めないとしています[7]。また、ACMGは、MTHFRの多型があってもなくても、妊娠を考える女性が標準量の葉酸をとるという勧めは変わらないとしています[5]。不育症の原因と検査については不育症とはで、妊娠前後の葉酸については葉酸サプリメントの効果で解説しています。
⚠️ 「MTHFRの多型がある=流産の原因」ではありません
体質の検査キットなどでC677Tを指摘されて、不安になる方もいます。けれども、学会の指針はこの多型と流産・不育症を結びつけていません。多型の結果だけで、薬やサプリメントを自己判断で変えないでください。流産をくり返す場合は、不育症の検査を担当する医療機関でご相談ください。
このパネルが調べる「重いMTHFR欠損症」とは
このパネルが調べるのは、MTHFR遺伝子の両方の写しに病気の原因となる変化があり、酵素がほとんど働かない「MTHFR欠損によるホモシスチン尿症」(Ⅲ型)です。OMIMでも、MTHFR遺伝子による単一遺伝子の病気として登録されているのはこの病気で、常染色体潜性遺伝です。血液のホモシステインが高くなり、メチオニンはむしろ低くなるのが特徴です(難病情報センター)。多型の結果が気になる方より、こうした症状や検査値がある方に向く検査です。
4. どんな人がこの検査を受けるとよいか
ホモシステインやメチルマロン酸の値、目・血管・神経・血液の症状から、この代謝の病気が疑われている方に向く検査です。病院を回っても原因がわからないまま過ごす時間は、本人にもご家族にも大きな負担です。欧州の患者団体が41か国の希少疾患の患者さん6,507人を対象に行った調査では、診断までにかかった期間は平均4.7年でした[8]。原因の候補となる39遺伝子を一度に調べることで、その回り道を短くできる可能性があります。
新生児マススクリーニングで再検査・要精密検査と言われた方
日本では、都道府県・指定都市が20の病気を対象に新生児マススクリーニングを行っており(こども家庭庁、2025年12月の資料)、自治体の案内では、ホモシスチン尿症・メチルマロン酸血症・プロピオン酸血症がその対象に含まれています(2026年10月時点で確認)。ホモシスチン尿症で対象になっているのは、血液のメチオニンが高くなるⅠ型(CBS欠損症)です。
一方、Ⅱ型(cblC型など)とⅢ型(MTHFR欠損症)は、生まれたときにメチオニンがむしろ低くなるため、スクリーニングでは有効に見つけられず、対象の病気になっていません(難病情報センター、2026年10月時点で確認)。Ⅰ型でも、ビタミンB6が効く型の多くはメチオニンの値だけでは見つからない可能性が高いとされています[1]。スクリーニングで「異常なし」だったことは、これらの病気がないことを意味しません。
再検査や精密検査で値の異常が続いた場合、遺伝子検査は、どの病気なのかを確かめ、治療を決める手がかりになります。当院には、生まれてすぐの赤ちゃんを対象にした新生児遺伝子スクリーニング検査パネル(255遺伝子)もありますが、こちらにはMTHFRは入っていません。ホモシスチン尿症の原因を確かめる目的なら、このページの検査が向いています。
血液検査でホモシステインが高い(高ホモシステイン血症)と言われた方、若い年齢で血栓ができた方
ホモシステインは遺伝の病気以外の理由で高くなることもあるため、まず主治医が原因を調べます。そのうえで原因が見当たらないのに値が高い場合や、若い年齢で脳や手足の静脈に血栓ができた場合は、CBS欠損症などの遺伝の病気を考えます。血栓の原因を幅広く調べたい場合は、凝固の遺伝子を含む血栓性疾患遺伝子パネル検査も選択肢になります(こちらにはMTHFRは入っていますが、CBSは入っていません)。
水晶体偏位がある、マルファン症候群に似た体つきと言われた方
水晶体偏位は、CBS欠損症でもっとも一貫してみられる症状です[1]。目の症状から原因を幅広く調べるなら水晶体偏位遺伝子検査、体つきや大動脈の病気が中心ならマルファン症候群・胸部大動脈瘤解離遺伝子検査が向くこともあります。ホモシステインが高い場合は、このページの検査を先に考えます。
ビタミンB12や葉酸を補っても良くならない貧血・神経の症状がある方
大きな赤血球が増える貧血(巨赤芽球性貧血)や神経の症状があり、ビタミンB12や葉酸を補っても良くならない場合は、これらのビタミンを吸収・運搬・活用するしくみの遺伝の病気が考えられます。このパネルには、吸収(内因子・CUBN・AMN)、運搬(TCN2・CD320)、細胞の中での活用(cblC型など)の遺伝子がまとめて入っています。
ご家族にこれらの病気の方がいる、血のつながりのある方との結婚を考えている方
このパネルの病気のほとんどは常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに同じ遺伝子の変化を1つずつ持つ「保因者」のときに、お子さんが病気になることがあります。いとこ同士など血のつながりのある方どうしでは、同じ祖先から同じ変化を受け継いでいる可能性があるため、潜性遺伝の病気が起こる確率は、血のつながりのない場合より高くなります。ご家族に病気の方がいて、ご自身が保因者かどうかを知りたい場合は、病気の方の原因がわかっていればその変化をピンポイントで調べられます。わかっていない場合は、まず遺伝カウンセリングでご相談ください。
この検査より別の検査が向いている場合
病気がある程度しぼれているなら狭いパネル、しぼれないなら広いパネル、が基本の考え方です。同じ代謝の病気を調べる当院の検査を、遺伝子リストで比べると次のとおりです。
🔍 代謝の病気の検査の選び方
※遺伝子数と重なりは、各検査ページの遺伝子一覧で確かめたもの(2026年10月時点)。どの検査が合うかは、症状と検査値で変わります。
反対に、MTHFRの多型の結果だけが気になっていて、ホモシステインの値も症状もない方には、この検査はおすすめしません(第3章)。
5. 調べる39遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査で調べる39遺伝子と、それぞれの遺伝子の変化で起こる病気・遺伝のしかたは次のとおりです。病名と遺伝のしかたは、遺伝性疾患のデータベースOMIMの登録にもとづいています。遺伝子名にリンクがあるものは、当院の遺伝子の解説ページへ移動します。
🧬 対象遺伝子(39遺伝子)と関係する病気
※病名と遺伝のしかたはOMIMの登録(OMIMのデータを収めたヒト表現型オントロジー〔HPO〕の2026年9月版で照合)にもとづく。「かかりやすさ」はOMIMで多くの要因が重なって起こる体質として登録されているもので、単独で病気の原因になるものではありません。遺伝子名は今のページの表記で、現在の正式名がちがうものは(現在の名前)を添えています。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、39遺伝子の、たんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)とその境目にある小さな変化(1文字の置き換わりや、小さな挿入・欠失)と、ある程度の大きさの欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●MTHFRのありふれた多型:c.665C>T(C677T)とc.1286A>C(A1298C)は報告しません(第3章)。
- ●欠失・重複の見つけ方の条件:遺伝子1つ分まるごとの欠失・重複は、血液と頬の粘膜の検体で見つけられます。エクソン2つ分以上の欠失・重複は、血液の検体でのみ見つけられます。エクソン1つ分だけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふつうは見つけられません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●見つけられない変化:染色体の組み換わり(転座・逆位)、繰り返し配列の伸び、遺伝子の働きを調節する部分(プロモーター)や、エクソンから20塩基以上離れた部分(深いイントロン)の変化は、この検査では見つけられません。よく似た配列(偽遺伝子)がある場所では、読み取りが難しいことがあります。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけある変化(モザイク)を見つけることは目的としていません。
- ●調べていない遺伝子:コバラミン代謝の病気には、このパネルに入っていない遺伝子による型もあります。たとえばcblL型(THAP11遺伝子)は、この検査では調べません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。ご希望により、VUSを報告に含めない(VUS除外)こともできます。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で見つけられない原因が残る可能性があります。ホモシステイン・メチルマロン酸・メチオニンの値など、血液や尿の検査にもとづく診断と管理は引き続き大切です。
調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針にもとづいてご説明します。
7. 病的変異が見つかったら、次にできること
この代謝の病気は、原因の遺伝子によって、効く治療・避けるべき治療・気をつける場面がはっきり分かれます。わかったら終わりではなく、ここからが始まりです。治療はご本人の主治医や、先天代謝異常症を専門とする医療機関で行います。当院は、結果の意味をご説明し、ご家族と次の妊娠の計画を一緒に考えます。
ご本人:使える治療と、気をつけること
💊 原因ごとの主な治療(診療ガイドラインより)
※ベタインの承認は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認情報で確認(2026年10月時点)。ヒドロキソコバラミン注射は、国内の添付文書の効能・効果にホモシスチン尿症・メチルマロン酸血症は書かれていません(2026年10月時点で確認)。使い方は専門の医療機関でご相談ください。
ビタミンB6が効く型かどうかは、治療を大きく左右します。GeneReviewsでは、CBS欠損症の約40%がビタミンB6に反応するとされ[3]、欧州の診療ガイドラインも、これまでで最大の患者さんの集団で44%がビタミンB6反応型だったと紹介しています[1]。一方、難病情報センターは、ビタミンB6反応型は日本人ではまれとしています(2026年10月時点で確認)。欧州の診療ガイドラインは、血液の総ホモシステインの目標を、ビタミンB6反応型では50μmol/L未満、反応しない型では100μmol/L未満としています[1]。
⚠️ 手術・麻酔の前に、必ず病名を伝えてください
CBS欠損症では、手術や麻酔が血栓のリスクを高めるとされ、笑気(亜酸化窒素)はホモシステインを上げるため避けるべきとされています[1]。ホモシステインをメチオニンに戻せない病気(cblC型・MTHFR欠損症など)でも、笑気を使わないことが強く勧められています。MTHFR欠損症の方が笑気で麻酔を受けたあとに亡くなった報告もあります[2]。歯科を含め、麻酔を受けるときは、病名と遺伝子検査の結果を担当の医師に伝えてください。
CBS欠損症では、水晶体偏位を見つけるための目の定期的な検査、骨の検査、血栓への備えが大切です。日本先天代謝異常学会の診療ガイドライン(2025年案)は、成人の女性では妊娠・出産で血栓症のリスクが高くなるとしており、妊娠を考えるときは主治医と前もって相談することが勧められます。また、指定難病・小児慢性特定疾病の医療費助成を申請するときにも、遺伝子検査で原因が確かめられていることが手がかりになります(第9章)。
症状のない方・保因者だった方
常染色体潜性遺伝の病気では、変化を1つだけ持つ保因者の方は、ふつう症状はありません。保因者の方がお子さんを考えるときに大切なのは、パートナーも同じ遺伝子の保因者かどうかです。おふたりとも保因者の場合、お子さん1人ごとに、病気になる確率が4分の1、保因者になる確率が2分の1、どちらでもない確率が4分の1です[3]。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)には、CBS・MMACHC・MTHFR・MUT・PCCA・PCCBなど、このパネルの遺伝子の多くが含まれています(すべてではありません。対象かどうかは遺伝子一覧でご確認ください)。潜性遺伝と保因者のしくみもあわせてご覧ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラスもあります。
子どもを持つときの選択肢
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。病気によって出生前診断の考え方は違うため、妊娠を考えている段階からご相談ください。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。出生前診断を受けずに出産することも、もちろん選べる選択肢です。どの選択も尊重します。
ご家族:症状が出る前のきょうだいを見つける
ご本人の原因がわかると、きょうだいが同じ変化を持っているかを、ピンポイントで調べられるようになります。ご両親がともに保因者なら、きょうだいが同じ病気である確率は4分の1です[3]。CBS欠損症は新生児マススクリーニングで見つかったときには症状がないこと(小児慢性特定疾病情報センター)、ビタミンB6が効く型はスクリーニングで見つからないことがあること[1]を考えると、あなたの1回の検査が、症状の出る前のきょうだいを見つけ、早く治療につなげる手がかりになります。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のもとで行います。
当院でのその後
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、ご家族の検査、パートナーの保因者検査、次の妊娠の計画まで、何から始めるかを一緒に考えます。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)です。
8. 陰性・VUSだったとき
39遺伝子に原因が見つからなくても、病気が否定されたわけではありません。この検査で見つけられない種類の変化(第6章)や、パネルに入っていない遺伝子が原因のこともあります。ホモシステインやメチルマロン酸の値が高い状態が続く場合は、主治医のもとで、血液・尿の検査にもとづく診断と治療を続けることが大切です。症状がほかの臓器にも広がっている場合は、代謝の病気を広く調べる包括的代謝疾患遺伝子検査などを考えます。
VUS(意義がまだわからない変化)は、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。VUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いでも解説しています。
9. 日本の制度(2026年10月時点)
ホモシスチン尿症は指定難病337で、Ⅰ型(CBS欠損症)・Ⅱ型(コバラミン代謝異常)・Ⅲ型(MTHFR欠損症)の3つの病型が含まれます。メチルマロン酸血症は指定難病246、プロピオン酸血症は指定難病245です(難病情報センター)。また、ホモシスチン尿症・メチルマロン酸血症・プロピオン酸血症は、いずれも小児慢性特定疾病の先天性代謝異常の群に掲載されています(小児慢性特定疾病情報センター)。
医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のどれでも検査でき、オンライン診療にも対応しています。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取・送付お支払いのあとキットを送付
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の見方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
11. 院長コラム
🩺 院長コラム【多型の数字に悩むより、原因をはっきりさせる】
体質の検査キットなどでMTHFRの多型を指摘され、流産やお子さんの病気との関係を心配する方もいます。学会の指針が示すとおり、ありふれた多型は、それだけで病気の原因と決まるものではありません。一方で、ホモシステインがはっきり高い、若いうちに血栓ができた、水晶体がずれているといった手がかりがあるなら、調べるべきは多型ではなく、病気の原因となる遺伝子の変化です。この2つを取り違えないことが、遺伝の専門医として大切だと考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、家族歴が濃いものの、ご本人は大学を卒業して会社に勤めていた方が、念のため検査を受けたところ、染色体の微小欠失が見つかったことがあります。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、そして次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ホモシスチン尿症の症状は?
原因によって違います。CBS欠損症(Ⅰ型)では、目のレンズがずれる水晶体偏位がもっとも一貫してみられ、血栓症が重い合併症の主な原因とされています。背骨の骨粗しょう症や、治療をしない場合の学習の困難もみられます。cblC型などのⅡ型やMTHFR欠損症(Ⅲ型)は新生児マススクリーニングで見つけにくく、症状が出る時期と重さは人によってさまざまです。新生児マススクリーニングで見つかったCBS欠損症は、見つかった時点では症状がありません。
Q2. ホモシスチン尿症の原因は?遺伝する確率は?
ホモシステインを片付ける酵素や、ビタミンB12・葉酸を使うしくみの遺伝子の変化が原因です。日本の指定難病では、CBS欠損症(Ⅰ型)、コバラミン代謝異常(Ⅱ型)、MTHFR欠損症(Ⅲ型)の3病型に分けられ、いずれも常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに病気になる確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1です。
Q3. ホモシスチン尿症の治療に使うビタミンは?
CBS欠損症ではまずビタミンB6(ピリドキシン)が効くかを確かめ、メチオニンを制限する食事療法やベタインを組み合わせます。ビタミンB6が効く型は海外では約4割とされますが、日本人ではまれとされています。cblC型などのコバラミン代謝異常ではビタミンB12(ヒドロキソコバラミン)の注射が使われ、MTHFR欠損症ではベタインが中心です。どの治療が合うかは原因の遺伝子で変わるため、遺伝子検査で原因を確かめることが役立ちます。
Q4. MTHFR遺伝子検査で、C677Tの結果はわかりますか?
この検査では、MTHFRのありふれた多型2つ(c.665C>T〔旧表記C677T〕とc.1286A>C〔旧表記A1298C〕)は報告しません。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)が、これらの多型の検査は臨床的な有用性の根拠が不十分として、血栓や不育症の評価に使うべきではないとしているためです。この検査で調べるのは、MTHFR欠損症などの病気の原因となる変化です。
Q5. MTHFRの多型があると、流産・不育症になりやすいのですか?
学会の指針は、MTHFRの多型と流産・不育症を結びつけていません。米国産科婦人科学会(ACOG)は、C677Tを1つ持つ場合も2つ持つ場合も妊娠の経過が悪くなることとの関連は認められないとし、MTHFRの解析やホモシステインの測定を勧めていません。欧州ヒト生殖学会(ESHRE)も、不育症の女性に遺伝性の血栓性素因の検査をしないことを提案しています。流産をくり返す場合は、不育症の検査を担当する医療機関でご相談ください。
Q6. いとこ同士の結婚で、こうした病気は増えますか?
このパネルの病気のほとんどは常染色体潜性遺伝で、ご両親がともに同じ遺伝子の保因者のときにお子さんが病気になることがあります。血のつながりのある方どうしでは、同じ祖先から同じ変化を受け継いでいる可能性があるため、確率は血のつながりのない場合より高くなります。ただし、多くのお子さんは病気になりません。ご家族に病気の方がいる場合は、原因の変化をピンポイントで調べたり、保因者検査を受けたりすることで、知ったうえで計画を立てられます。
Q7. 新生児マススクリーニングで再検査と言われました。この検査を受けたほうがよいですか?
再検査や精密検査は、まず指示された医療機関で受けてください。そのうえで値の異常が続き、ホモシスチン尿症やメチルマロン酸血症などが疑われる場合、この遺伝子検査は、どの病気なのかを確かめ、治療を決める手がかりになります。なお、cblC型やMTHFR欠損症はメチオニンが低くなるため、スクリーニングでは有効に見つけられないとされています。
Q8. 陰性なら、ホモシスチン尿症ではないと言えますか?
言えません。この検査で見つけられない種類の変化や、パネルに入っていない遺伝子が原因のこともあります。ホモシステインやメチルマロン酸の値が高い状態が続く場合は、血液・尿の検査にもとづく診断と治療を続けることが大切です。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ホモシスチン尿症やコバラミン代謝異常症の原因がわかれば、ご自身の治療や麻酔・血栓への備えだけでなく、きょうだいの検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
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