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マルファン症候群の遺伝子検査|FBN1ほか大動脈瘤・解離の原因遺伝子39種と遺伝する確率

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

マルファン症候群の遺伝子検査|FBN1ほか大動脈瘤・解離の原因遺伝子39種と遺伝する確率

マルファン症候群は、FBN1遺伝子の変化で起こる、大動脈・目・骨格に症状が出る遺伝性の病気です。ただ、若いうちに胸部大動脈瘤や大動脈解離が起こる原因はFBN1だけではなく、TGFBR1・TGFBR2・SMAD3・ACTA2など多くの遺伝子が知られています。原因の遺伝子がどれかによって、手術を考える大動脈の太さの目安や、ご家族の定期検査の考え方が変わります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の健康管理だけでなく、妊娠・出産の計画やご家族の健康を考えるときにも、この先ずっと使える情報になります。このページでは、39の遺伝子をまとめて調べる遺伝子検査でわかることと、遺伝する確率、結果のあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

マルファン症候群の原因であるFBN1遺伝子に加えて、ロイス・ディーツ症候群(TGFBR1・TGFBR2・SMAD3・TGFB2など)、家族性胸部大動脈瘤・解離(ACTA2・MYH11・MYLKなど)、血管型エーラス・ダンロス症候群(COL3A1)など、大動脈瘤・解離に関わる39の遺伝子を一度に調べ、原因がどの遺伝子かを確かめます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

マルファン症候群と言われた方・疑われている方、若いうちに胸部大動脈瘤や大動脈解離が見つかった方、ご家族に大動脈解離やマルファン症候群の方がいる方、結婚・妊娠を考えていて家族歴が気になる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。マルファン症候群などの顕性遺伝の病気なら、お子さんに受け継がれる確率は2分の1で、ご家族も同じ場所を調べられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. マルファン症候群・胸部大動脈瘤解離とは:遺伝する病気か

マルファン症候群は、FBN1遺伝子の変化による常染色体顕性(優性)遺伝の病気で、親がマルファン症候群なら、お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継がれます[1]。一方、胸部大動脈瘤・解離は、マルファン症候群以外の遺伝子の変化でも起こり、ご家族の中で続けて起こることがあります[3]。このページの検査は、その両方をまとめて調べるためのものです。

マルファン症候群:FBN1遺伝子と3つの主な症状

マルファン症候群は、体を支える組織(結合組織)の大事な部品であるフィブリリン-1というたんぱく質の設計図、FBN1遺伝子の変化で起こります。フィブリリン-1は、細胞のまわりを埋める細胞外マトリックスの中で、弾力のある線維を作る材料になっています。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、有病率は5,000〜10,000人に1人と推定されています[1]。

GeneReviewsは、主な症状として次の3つを挙げています[1]。

  • ●大動脈:心臓から出てすぐの大動脈の付け根(バルサルバ洞)が広がり、裂けたり破れたりしやすくなる
  • ●目:目のレンズ(水晶体)の位置がずれる水晶体偏位。マルファン症候群の方の約60%にみられる
  • ●骨格:手足の長い骨が伸びすぎることと、関節がやわらかいこと

診断には、2010年に改訂された国際的な診断基準(改訂ゲント基準)が使われています。この基準では、大動脈の付け根の拡張と水晶体偏位が中心となる所見とされ、FBN1遺伝子の検査は必須ではないものの、以前より重みをもって扱われるようになりました[2]。病気そのもののくわしい解説は、マルファン症候群とは(疾患の解説)をご覧ください。

マルファン症候群だけではない:遺伝性の胸部大動脈疾患

胸部大動脈瘤・解離のうち、遺伝子の変化が関わるものをまとめて「遺伝性胸部大動脈疾患(HTAD)」と呼びます。GeneReviewsの総説では、原因の遺伝子として、マルファン症候群のFBN1のほか、ロイス・ディーツ症候群のTGFBR1・TGFBR2・SMAD3・TGFB2、血管型エーラス・ダンロス症候群のCOL3A1、体の外見に特徴の出にくい家族性胸部大動脈瘤・解離のACTA2・MYH11・MYLKなどが、関係の確かな遺伝子として挙げられています[3]。

これらの病気の多くは、細胞の増殖や組織の修復を調節するTGF-βシグナル伝達経路や、血管の壁の平滑筋の働きに関わる遺伝子の変化で起こります。病気のグループ全体については、遺伝性大動脈疾患 総論とロイス・ディーツ症候群 総論で解説しています。

💡 用語解説:大動脈瘤と大動脈解離

大動脈瘤は、大動脈の一部がこぶのように広がった状態です。大動脈解離は、大動脈の壁の層が裂けて、壁の中に血液が入り込む状態です。どちらも、大動脈の太さを心エコーやCT・MRIで定期的に測り、太さが目安を超える前に手術で置きかえることで、解離や破裂を防ぐことを目指します。

遺伝のしかた:お子さんへは2分の1・新しく起きた変化もある

マルファン症候群は常染色体顕性(優性)遺伝で、マルファン症候群の方のお子さんは、1人ごとに2分の1の確率で原因の変化と病気を受け継ぎます[1]。ロイス・ディーツ症候群や家族性胸部大動脈瘤・解離の多くも、同じ常染色体顕性遺伝です[3][4]。

ご家族に同じ病気の方がいなくても、発症することがあります。GeneReviewsによると、マルファン症候群の方の約75%は親御さんも同じ病気ですが、約25%はご本人の代で新しく起きた変化(de novo)によるものです[1]。ロイス・ディーツ症候群では、新しく起きた変化による方が約75%とされています[4]。

また、マルファン症候群は、症状が出る割合(浸透率)が高い一方で、同じ家族の中でも症状の重さに大きな差が出ることがあるとされています[1]。これを表現型の多様性といいます。

⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません

同じ家族の中でも症状の重さには大きな差があるため、親御さんの症状が軽くても、同じ変化を受け継いだお子さんが同じ程度になるとは限りません[1]。見た目の印象や家族歴だけで判断せず、原因を知ったうえで計画することに意味があります。

このパネルには、常染色体潜性(劣性)遺伝やX連鎖遺伝の病気の遺伝子も含まれています(第4章の表)。遺伝のしかたは原因の遺伝子ごとに違うため、結果が出たら、その遺伝子に合わせてお子さんへの確率をお伝えします。

2. 原因の遺伝子がわかると変わること:手術の目安・薬・ご家族の定期検査

遺伝性の胸部大動脈疾患では、原因の遺伝子によって、手術を考える大動脈の太さの目安が違います。GeneReviewsの総説も、管理はできる限り原因の遺伝子にもとづいて行うべきだとしています[3]。病名がわかるだけでなく「次に何をするか」が決まることが、この検査を受ける大きな理由です。先天異常や知的障害のあるお子さんのエクソーム・ゲノム検査の研究を集めた米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の系統的レビューでも、検査の成果として最も多く報告されていたのは、診療方針や、その後の妊娠・出産に関する判断の変化でした[8]。対象の病気は違いますが、「原因がわかると次の一手が決まる」という点は共通しています。

遺伝子によって、手術を考える大動脈の太さの目安が違う

米国心臓病学会・米国心臓協会(ACC/AHA)の2022年の大動脈疾患ガイドラインは、ロイス・ディーツ症候群の予防的な手術の時期は、原因の遺伝子の種類にもとづいて決めるべきだとしています[5]。GeneReviewsの総説は、このガイドラインの目安を遺伝子ごとに次のようにまとめています[3]。

📏 予防的な大動脈の手術を考える太さの目安(大人・遺伝子別)

原因の遺伝子 主な病気 目安となる大動脈の太さ
FBN1 マルファン症候群 4.5〜5.0cm以上
TGFBR1・TGFBR2 ロイス・ディーツ症候群1型・2型 4.0〜4.5cm以上
SMAD3・TGFB2 ロイス・ディーツ症候群3型・4型 4.5cm以上
TGFB3 ロイス・ディーツ症候群5型 5.0cm以上
ACTA2 家族性胸部大動脈瘤・解離6型 4.2〜4.5cm以上
PRKG1 家族性胸部大動脈瘤・解離8型 太さが正常の範囲〜4.2cm以上
LOX・MYH11・MYLK 家族性胸部大動脈瘤・解離 目安を決めるだけのデータがまだ少ない

※GeneReviewsの総説[3]が2022年ACC/AHAガイドライン[5]の目安をまとめたもの。幅がある値は、ほかの危険因子の有無や手術施設の経験によって変わるとされています。実際の手術の時期は、心臓血管外科・循環器内科の主治医が、ご本人の状態をみて決めます。

ロイス・ディーツ症候群については、マルファン症候群より細い太さや若い年齢で大動脈解離が起こりうるとされています[4]。同じ「若い人の大動脈瘤」でも、原因がFBN1かTGFBR1・TGFBR2かで、手術を考えはじめる時期が変わりうるということです。

一方、血管型エーラス・ダンロス症候群(COL3A1)では、血管の壁がもろいため、予定の手術は大きな利益が見込める場合を除いて一般に勧められないとされています[7]。どの病気かによって、手術に対する考え方そのものが違うのです。

薬と、日常生活で気をつけること

マルファン症候群の大動脈の拡張に対しては、β遮断薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が使われます。子どもと若い成人のマルファン症候群の方を対象にした臨床試験では、β遮断薬(アテノロール)とARB(ロサルタン)の間で、大動脈の付け根が広がる速さに有意な差はみられませんでした[6]。どの薬をどう使うかは、循環器内科の主治医が決めます。

ご家族の定期検査:誰が続け、誰が卒業できるか

GeneReviewsの総説は、原因の遺伝子の変化がわかった場合、ご両親・きょうだい・お子さんなど血縁者の遺伝子検査(カスケード検査)を勧めています[3]。2022年のACC/AHAガイドラインも、胸部大動脈疾患の方の第一度近親者(親・きょうだい・子)に大動脈の画像検査を勧めています[5]。

ご本人の原因の変化がわかっていれば、ご家族は同じ場所を調べることで、受け継いでいるかどうかをはっきりさせられます。受け継いでいた方は、その遺伝子に合わせた定期検査を続けます。原因がわからないままだと、ご家族の誰が定期検査を続けるべきかを、遺伝子で分けることはできません。遺伝性乳がん卵巣がん(BRCA1/2)の検査を受けた人を追った研究では、家族のためなど、ほかの人のために検査を受けたいという動機が、遺伝カウンセリングのあとに有意に高まったと報告されています[9]。あなたの1回の検査が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知る手がかりになります。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

マルファン症候群と言われた方・疑われている方、若いうちに胸部大動脈瘤や大動脈解離が見つかった方、ご家族に大動脈解離やマルファン症候群の方がいる方に向く検査です。2022年のACC/AHAガイドラインは、体の特徴(症候群の所見)がある方や、胸部大動脈疾患の家族歴がある方などに遺伝子検査を勧めています[5]。

マルファン症候群と言われた方・疑われている方

背が高く手足が長い、水晶体偏位がある、大動脈の付け根が広がっていると言われた、など、マルファン症候群が疑われる方です。GeneReviewsによると、典型的なマルファン症候群の方では、FBN1の配列を読む検査で約90〜93%、欠失・重複を調べる検査でさらに約5%に原因の変化が見つかるとされています[1]。マルファン症候群に似た体つきでも、ロイス・ディーツ症候群やシュプリンツェン・ゴールドバーグ症候群など別の病気のことがあり、このパネルではそれらの遺伝子も一緒に調べます。

若いうちに胸部大動脈瘤・解離が見つかった方、ご家族に大動脈解離の方がいる方

体の特徴がはっきりしない方でも、遺伝子の変化が原因のことがあります。GeneReviewsの総説によると、体の特徴がなく、家族に胸部大動脈疾患の方がいる場合、遺伝子の原因が見つかるのは約20〜30%とされています[3]。つまり全員に原因が見つかるわけではありませんが、見つかれば、ご本人の手術の目安とご家族の検査の両方に使えます。

症状のないご家族が、受け継いでいるか知りたいとき(発症前の検査)

ご家族の原因の変化がわかっている場合、症状のない方が同じ変化を受け継いでいるかを調べることができます。これは発症前の検査(予測的検査)にあたります。当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。

マルファン症候群やロイス・ディーツ症候群は、定期的な画像検査・薬・予防的な手術という「わかったあとにできること」がある病気です。陽性でも陰性でも、結果を知ったあとの気持ちの変化は起こりえます。当院では、結果をお伝えしたあとも遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。

結婚・妊娠を考えている方

結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。とくにマルファン症候群の女性では、妊娠中に大動脈の負担が増えるため、妊娠前の準備が大切です。2022年のACC/AHAガイドラインは、マルファン症候群の方には妊娠前に遺伝カウンセリングと大動脈の画像検査を行うこと、大動脈の付け根が4.5cmを超える場合は妊娠前の手術を勧めています[5]。GeneReviewsも、大動脈の付け根が4.0cmを超えると妊娠は特に危険になりうるとし、妊娠中は2〜3か月ごとの心エコーを勧めています[1]。

当院は分娩を行っていません。妊娠中の管理は、かかりつけの産科と循環器内科で、マルファン症候群に詳しい医療機関と連携して受けていただくことになります。当院では、妊娠前の遺伝子検査と遺伝カウンセリング、妊娠したときの赤ちゃんの出生前診断の相談をお受けしています(第6章)。

この検査より別の検査が向いている場合

大動脈瘤・解離やマルファン症候群を疑うなら、まずこの検査です。症状によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類です。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
マルファン症候群が疑われる、若い胸部大動脈瘤・解離、大動脈解離の家族歴 このページの検査(39遺伝子)
ロイス・ディーツ症候群とほぼ決まっていて、その原因遺伝子を確かめたい ロイス・ディーツ症候群の遺伝子検査
皮膚の伸びやすさ・関節のゆるさ・骨の弱さなど、結合組織の症状が中心 結合組織疾患パネル検査、エーラス・ダンロス症候群の遺伝子検査
目の水晶体偏位が中心で、大動脈の所見がない 水晶体偏位の遺伝子検査
大動脈だけでなく心筋症・不整脈などもあり、心臓の病気を広く調べたい 心血管疾患包括パネル検査(264遺伝子)
発達の遅れなど心臓以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※どの検査が合うかは、症状・画像検査の所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングでご一緒に決めます。

\ あなたの1回の検査が、ご家族を守る手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因がわかれば、ご家族は同じ場所を調べて、誰が心エコーなどの定期検査を続けるかを決められます。当院では、ご家族の遺伝子検査も遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

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4. 調べる39の遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、マルファン症候群・ロイス・ディーツ症候群・家族性胸部大動脈瘤・解離・血管型エーラス・ダンロス症候群など、大動脈の拡張や解離、マルファン症候群に似た体つきを起こす病気の39の遺伝子を、まとめて調べます。

🧬 対象の39遺伝子と関係する主な病気

遺伝子 関係する主な病気 遺伝のしかた
ABL1 先天性心疾患・骨格異常症候群 常染色体顕性
ACTA2 家族性胸部大動脈瘤・解離6型/多系統平滑筋機能不全症候群 常染色体顕性
ADAMTS10 ワイル・マルケサーニ症候群1型 常染色体潜性
ADAMTS17 ワイル・マルケサーニ症候群4型 常染色体潜性
BGN ミースター・ロイス症候群 X連鎖
CBS ホモシスチン尿症(シスタチオニンβ合成酵素欠損症) 常染色体潜性
COL1A1 骨形成不全症/関節弛緩型エーラス・ダンロス症候群1型/骨形成不全症・エーラス・ダンロス症候群複合症1 常染色体顕性
COL3A1 血管型エーラス・ダンロス症候群 常染色体顕性
COL5A1 古典型エーラス・ダンロス症候群1型 常染色体顕性
COL5A2 古典型エーラス・ダンロス症候群2型 常染色体顕性
EFEMP2 常染色体潜性皮膚弛緩症1B型 常染色体潜性
ELN 大動脈弁上狭窄症/常染色体顕性皮膚弛緩症1型 常染色体顕性
FBN1 マルファン症候群/家族性水晶体偏位/ワイル・マルケサーニ症候群2型 常染色体顕性
FBN2 先天性拘縮性くも状指趾症(ビールズ症候群) 常染色体顕性
FLNA 脳室周囲結節状異所性灰白質1型/耳口蓋指症候群1型/X連鎖性心臓弁異形成症 X連鎖
FOXE3 家族性胸部大動脈瘤・解離11型(なりやすさ) 常染色体顕性(浸透率は100%ではない)
HCN4 洞不全症候群2型/ブルガダ症候群8型 常染色体顕性(洞不全症候群2型)
IPO8 VISS症候群(ロイス・ディーツ症候群に似た病気) 常染色体潜性
LOX 家族性胸部大動脈瘤・解離10型 常染色体顕性
LTBP3 歯の異常と低身長を伴う病気(潜性)/ジェレオフィジック骨異形成症3型(顕性) 常染色体潜性・常染色体顕性
MAT2A 病気との関係を研究中の遺伝子(胸部大動脈瘤との関連が報告されている) 未確立(OMIMに病気の記載なし)
MED12 FG症候群1型(オピッツ・カヴェッジャ症候群)/ルジャン・フリンス症候群 X連鎖
MFAP5 家族性胸部大動脈瘤・解離9型 常染色体顕性
MYH11 家族性胸部大動脈瘤・解離4型 常染色体顕性
MYLK 家族性胸部大動脈瘤・解離7型 常染色体顕性
NOTCH1 大動脈弁疾患1型(大動脈二尖弁など)/アダムス・オリバー症候群5型 常染色体顕性
PLOD1 後側弯型エーラス・ダンロス症候群1型 常染色体潜性
PRKG1 家族性胸部大動脈瘤・解離8型 常染色体顕性
SKI シュプリンツェン・ゴールドバーグ症候群 常染色体顕性
SLC2A10 動脈蛇行症候群 常染色体潜性
SMAD2 ロイス・ディーツ症候群6型 常染色体顕性
SMAD3 ロイス・ディーツ症候群3型 常染色体顕性
SMAD4 若年性ポリポーシス・遺伝性出血性毛細血管拡張症複合症候群/若年性ポリポーシス症候群 常染色体顕性
SMAD6 大動脈弁疾患2型 常染色体顕性
TAB2 先天性心疾患(多型)2型 常染色体顕性
TGFB2 ロイス・ディーツ症候群4型 常染色体顕性
TGFB3 ロイス・ディーツ症候群5型/不整脈原性右室心筋症1型 常染色体顕性(ロイス・ディーツ症候群5型)
TGFBR1 ロイス・ディーツ症候群1型 常染色体顕性
TGFBR2 ロイス・ディーツ症候群2型 常染色体顕性

※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気と遺伝のしかたは、OMIMの遺伝子と病気の対応(UniProt・HPOに収録された情報で確認)による。遺伝子によっては、表に挙げたほかにも関係する病気があります。常染色体顕性=優性、常染色体潜性=劣性。

潜性(劣性)遺伝・X連鎖遺伝の遺伝子について

表のうち、CBS(ホモシスチン尿症)・SLC2A10(動脈蛇行症候群)・EFEMP2(皮膚弛緩症)・PLOD1(後側弯型エーラス・ダンロス症候群)などは常染色体潜性(劣性)遺伝、BGN・FLNA・MED12はX連鎖遺伝の病気に関わります。潜性遺伝の病気では、ご両親がともに保因者のとき、お子さんが病気になる確率は4分の1です。CBS・SLC2A10・EFEMP2・PLOD1は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の対象遺伝子にも入っています。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。

当院のNIPTとの関係

このパネルの遺伝子のうち、FBN1・TGFBR1・TGFBR2・SMAD3・TGFB2・SMAD4・FLNAは当院のNIPTのインペリアルプラン、COL1A1・SKIはダイヤモンドプランとインペリアルプランの対象遺伝子に入っています。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。

NIPTで単一遺伝子の病気を調べるのは、主に赤ちゃんで新しく起きた変化を見つけるためです。マルファン症候群の約25%、ロイス・ディーツ症候群の約75%は新しく起きた変化によるもので[1][4]、ご家族に病気の方がいなくても起こりえます。一方、ご両親のどちらかが原因の変化をもっているとわかっている場合は、その変化を狙って調べる羊水検査・絨毛検査での出生前診断が基本になります(第6章)。各プランの対象はインペリアルプラン・ダイヤモンドプランのページでご確認ください。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、39の遺伝子の中の小さな変化(1文字の置きかわりや、小さな挿入・欠失)と、遺伝子全体や複数のエクソン(遺伝子の中のたんぱく質の情報が書かれた部分)にまたがる欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●調べる場所:遺伝子のうち、たんぱく質の情報が書かれた部分(コード領域)と、その境目(スプライス部位)を読みます。遺伝子の働きを調節する部分(プロモーター領域)や、エクソンから20塩基以上離れたイントロンの奥の変化は、ほとんど調べられません。
  • ●見つけにくい変化:染色体の一部が入れかわる転座や逆位、同じ配列の繰り返しが長くなる変化(リピート伸長)は、この検査ではわかりません。1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんは検出の対象外です。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけるようには作られていません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知見ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:体の特徴がなく家族歴がある胸部大動脈疾患でも、原因が見つかるのは約20〜30%とされています[3]。原因が見つからなくても、まだ知られていない遺伝子や、この検査で調べられない変化が原因のことがあります。
🔬 検査の精度について(くわしく知りたい方へ)

この検査は次世代シーケンサー(NGS)で行い、調べる範囲の99%以上を20回以上読んでいます(読み取り深度20回以上で99%以上)。同じ場所を何度も読むことで、読み間違いを減らすためです。読み取りの質が低かった変化は、別の方法(サンガー法)で確かめます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。遺伝子によく似た配列(偽遺伝子など)がある場所では、正確に読み分けにくいことがあります。

6. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。報告書の読み方は遺伝子検査の結果の見方で解説しています。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

陽性だったとき:病名の確定と、遺伝子に合わせた管理

原因の変化が見つかると、病名がはっきりし、その遺伝子に合わせて、大動脈の画像検査の間隔、手術を考える太さの目安、目や骨格など大動脈以外の確認が決まります(第2章)。結果は、循環器内科・心臓血管外科の主治医と共有して、今後の管理に役立ててください。

ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき

顕性遺伝の病気の原因が見つかった場合、ご両親・きょうだい・お子さんも、それぞれ同じ変化をもっている可能性があります。ご家族は、ご本人で見つかった変化だけを調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。症状のないご家族の検査は発症前の検査になるため、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます(第3章)。

陰性だったとき

原因の変化が見つからなくても、病気が否定されたわけではありません(第5章)。大動脈の拡張がある方は、主治医のもとで画像検査による経過観察を続けます。ご家族の画像検査が勧められることも変わりません[5]。症状に合わせて、より広い検査(全エクソーム検査など)を考えることもあります。研究が進めば、同じデータを解析し直して新しくわかることがあります(再解析)。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

妊娠を考えている方:出生前診断の相談

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。あらかじめご家族の原因を確かめておくことが、出生前診断を計画するための出発点になります。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。海外でPGT-Mを受けたいというお問い合わせを多くいただいています。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因の遺伝子の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書、③ご家族の検体を挙げています[10]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。

ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて血縁者のDNAが必要です。顕性遺伝の病気(マルファン症候群・ロイス・ディーツ症候群など)では、指針の目安は、患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人です[10]。潜性遺伝の病気では患者さん・保因者・保因者でない方、X連鎖遺伝の病気では患者さん、および/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)が目安です。血縁者がいない場合、指針は治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法も挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。また、ご本人で新しく起きた変化(マルファン症候群の約25%、ロイス・ディーツ症候群の約75%)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[1][4][10]。

海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。臨床遺伝専門医としての判断では、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[11]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患は、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。審査が続いている申請も多く、学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。

英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。マルファン症候群とロイス・ディーツ症候群1〜4型、家族性胸部大動脈瘤・解離6型(ACTA2)は、この一覧に載っています(2026年9月時点)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[12]。米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[13]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。

7. 日本の制度(2026年10月時点)

マルファン症候群とロイス・ディーツ症候群は、あわせて指定難病167「マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群」に含まれています。難病情報センターのページでは、マルファン症候群について、およそ5,000人に1人がこの病気の遺伝子の変化をもっていると報告されている、と説明されています。エーラス・ダンロス症候群は、別の指定難病168に含まれています(2026年10月時点で確認)。

また、小児慢性特定疾病の「染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群」の疾患群に、マルファン症候群とロイス・ディーツ症候群が掲載されています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも検査でき、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取唾液・粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 マルファン症候群・胸部大動脈瘤解離に関わる39遺伝子(塩基配列の解析と、欠失・挿入の解析。どちらも料金に含まれます)
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります):55,000円/VUS除外:無料
検体 血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬の内側の粘膜(頬粘膜スワブ)、唾液(ご希望により採取キットをお送りします)
オンライン診療 唾液・頬の内側の粘膜なら、ご来院なしでお受けできます。ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
結果の報告書 基本的に日本語版。英語の原本が必要な方には英語版(検査の時にお申し出ください)。双方の場合は追加料金5,500円

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。腫瘍の組織を使った検査には対応していません。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・頬の内側の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「同じ病名」でも、遺伝子で次の一手が変わる】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。マルファン症候群や遺伝性の大動脈の病気は、同じ家族の中でも症状の重さに差があり、ご家族に病気の方がいなくても新しく起こることがあります。そして、同じ「大動脈瘤」でも、原因の遺伝子によって手術を考える時期の目安が違います。見た目の印象や家族歴だけで将来を決めてしまわず、原因を確かめたうえで計画してほしいと考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。ご自身の管理、ご家族の検査、結婚や妊娠の計画まで、知ったうえで選べるよう、出生前診断を含めて当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. マルファン症候群は遺伝しますか?遺伝する確率は?

はい。マルファン症候群は常染色体顕性(優性)遺伝で、マルファン症候群の方のお子さんは、1人ごとに2分の1の確率で原因の変化を受け継ぎます。一方で、マルファン症候群の方の約25%は、ご本人の代で新しく起きた変化によるもので、ご家族に同じ病気の方がいなくても発症することがあります。

Q2. マルファン症候群の原因遺伝子は何ですか?

マルファン症候群の原因はFBN1遺伝子の変化です。ただし、マルファン症候群に似た体つきや、若いうちの胸部大動脈瘤・解離は、TGFBR1・TGFBR2・SMAD3・TGFB2(ロイス・ディーツ症候群)、ACTA2・MYH11・MYLK(家族性胸部大動脈瘤・解離)、COL3A1(血管型エーラス・ダンロス症候群)など、ほかの遺伝子でも起こります。この検査では、こうした39の遺伝子をまとめて調べます。

Q3. 家族に大動脈解離の人がいます。遺伝子検査を受けたほうがよいですか?

大動脈解離を起こしたご本人が検査を受け、原因の遺伝子の変化がわかると、ご家族は同じ場所を調べて、受け継いでいるかどうかを確かめられます。ご本人の検査が難しい場合も含め、どなたから調べるのがよいかは遺伝カウンセリングでご相談ください。なお、米国のガイドラインは、胸部大動脈疾患の方の親・きょうだい・子に大動脈の画像検査を勧めています。

Q4. ロイス・ディーツ症候群とマルファン症候群の違いは何ですか?

どちらも大動脈瘤・解離を起こす遺伝性の病気ですが、原因の遺伝子が違います。マルファン症候群はFBN1、ロイス・ディーツ症候群はTGFBR1・TGFBR2・SMAD3・TGFB2などの変化で起こります。ロイス・ディーツ症候群では、マルファン症候群より細い太さや若い年齢で大動脈解離が起こりうるとされ、手術を考える太さの目安も遺伝子ごとに違います。

Q5. マルファン症候群の人は妊娠・出産できますか?

妊娠・出産されている方はいますが、妊娠中は大動脈の負担が増えるため、妊娠前の準備が大切です。米国のガイドラインは、妊娠前に遺伝カウンセリングと大動脈の画像検査を行うこと、大動脈の付け根が4.5cmを超える場合は妊娠前の手術を勧めています。当院は分娩を行っていないため、妊娠中の管理はかかりつけの産科と循環器内科で受けていただきます。妊娠前の遺伝子検査と、赤ちゃんの出生前診断の相談は当院でお受けしています。

Q6. マルファン症候群は指定難病ですか?

はい。マルファン症候群とロイス・ディーツ症候群は、指定難病167「マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群」に含まれています。小児慢性特定疾病の対象疾病にも掲載されています(2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たす必要があります。

Q7. 遺伝子検査で原因が見つからなければ、マルファン症候群ではないのですか?

いいえ、それだけで否定はできません。典型的なマルファン症候群の方の多くではFBN1に原因が見つかりますが、この検査で調べられない種類の変化や、まだ知られていない遺伝子が原因のこともあります。大動脈の拡張がある方は、結果にかかわらず主治医のもとで画像検査を続けてください。

Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。結果は基本的に日本語版でお渡ししていますが、海外でPGT-Mを受けるなど英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。ご本人の検査結果だけではPGT-Mの準備はふつう整わず、ご家族の検体が必要になることが多いため、詳しくは海外でPGT-Mを考えている方向けのページをご覧ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。マルファン症候群や胸部大動脈瘤・解離の原因の遺伝子がわかれば、ご自身の手術の目安や定期検査だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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