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心臓病の遺伝子検査(264遺伝子)|遺伝する心臓病・心臓病の多い家系を一度に調べる心血管疾患パネル

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

心臓病の遺伝子検査(心血管疾患包括パネル264遺伝子)

心臓病はすべてが遺伝するわけではありませんが、心筋症・遺伝性の不整脈・大動脈の病気・家族性高コレステロール血症などは、1つの遺伝子の変化で起こり、親から子へ受け継がれることがあります。心血管疾患包括パネルは、こうした心臓と血管の病気に関わる264の遺伝子を、1回の検査でまとめて調べる遺伝子検査です。どの病気かしぼれないまま検査を1つずつ重ねる回り道を、1回の検査で短くできる可能性があります。このページでは、心臓病が遺伝するしくみ、この検査で調べる病気と遺伝子、結果がご家族の健康や将来の計画にどう役立つかを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

心筋症・不整脈・大動脈の病気・先天性心疾患・家族性高コレステロール血症など、遺伝する心臓と血管の病気に関わる264遺伝子に、病気の原因となる変化がないかを1回で調べます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

心臓の病気があるのに病名がしぼれない方、ご家族に何種類かの心臓の病気がある方、若くして突然亡くなったご家族がいる方などです。病名がはっきりしている場合は、その病気の検査のほうが向くこともあります。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です(至急オプション55,000円で約7日短くなります)。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、定期検査や治療の方針を考える手がかりになり、ご家族は同じ変化だけを調べて自分の状態を確かめられます。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、ご家族とこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

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1. 心臓病は遺伝する?家系に多い心臓病と遺伝子の関係

心臓病のすべてが遺伝するわけではありません。よくある心筋梗塞や狭心症の多くは、たくさんの遺伝子の小さな影響(体質)と生活習慣が重なって起こります。一方で、心筋症・遺伝性の不整脈・大動脈の病気・家族性高コレステロール血症などは、1つの遺伝子の変化で起こり、親から子へ受け継がれることがあります。「家系に心臓病が多い」と感じたときに大切なのは、そのどちらに当たるのかを見分けることです。

よくある心臓病の多くは「体質+生活習慣」、一部は「1つの遺伝子」で起こる

コレステロールを例に考えてみます。米国などの研究で、LDLコレステロールが190mg/dL以上ととても高い人を調べても、家族性高コレステロール血症の原因遺伝子に変化があったのは1.7%でした。一方で、原因遺伝子の変化があり、LDLコレステロールも190mg/dL以上の人では、LDLコレステロールが130mg/dL未満で変化のない人と比べて、冠動脈疾患のリスクが約22倍(オッズ比22.3)でした[3]。

つまり、コレステロールが高い人の多くは1つの遺伝子だけで説明できるわけではありませんが、1つの遺伝子の変化が原因の人では、心臓への影響がとても大きいということです。家族性高コレステロール血症(ヘテロ接合)は、19の研究・約246万人をまとめた解析で、約250人に1人(0.40%)とされ、決して珍しい病気ではありません[4]。

心筋症や遺伝性の不整脈も同じで、1つの遺伝子の変化がわかれば、ご本人の治療や定期検査の方針を考える手がかりになり、ご家族は同じ変化があるかどうかだけを調べて確かめられます。これが、遺伝子検査で「1つの遺伝子で起こる心臓病」を見つけることの意味です。

遺伝のしかたと、子どもや孫に伝わる確率

このパネルで調べる心臓の病気の多くは、常染色体顕性(優性)遺伝です。顕性遺伝の病気では、親が原因の変化をもっていると、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継がれます。性別には関係しません。お孫さんに伝わるかどうかは、間の世代(お子さん)が変化を受け継いだかで決まります。お子さんが受け継いでいれば、お孫さんへの確率はまた2分の1、お子さんが受け継いでいなければ、その系統のお孫さんには伝わりません。

一方、このパネルには常染色体潜性(劣性)遺伝やX連鎖遺伝の病気の遺伝子も含まれます。潜性遺伝の病気では、ご両親がともに変化を1つずつもつ保因者のとき、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。X連鎖の病気では、お母さんが変化をもつ場合、息子さんは2分の1の確率で受け継ぎ、発症することがあります。どの確率が当てはまるかは、どの遺伝子のどの変化かで変わるので、遺伝のしかたを結果とあわせてご説明します。

⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません

心臓の病気の原因となる変化をもっていても、生涯発症しない人もいます[1]。これを「不完全浸透」といいます。同じ変化をもつご家族の中でも、症状の出る時期や重さはさまざまです。親御さんが症状に気づいていなくても、受け継いだお子さんが同じ経過をたどるとは限りません。だからこそ、症状の有無だけで判断せず、知ったうえで計画することに意味があります。

遺伝する心臓病を考えたい家族歴のサイン

次のような家族歴があるときは、1つの遺伝子で起こる心臓の病気が隠れていないかを考えます。

  • ●若い年齢での突然死や、原因のはっきりしない死亡がご家族にある
  • ●同じ種類の心臓の病気(心筋症・不整脈・大動脈瘤や大動脈解離など)の方が、ご家族に何人もいる
  • ●平均より若い年齢で心臓や血管の病気を発症したご家族がいる
  • ●LDLコレステロールがとても高い方が、ご家族に何人もいる
  • ●運動中の失神や胸の痛みがある、健康診断で心電図や心エコーの異常を指摘された

若い人の突然死では、解剖をしても原因がわからない場合が少なくありません。オーストラリアとニュージーランドで1〜35歳の心臓突然死490例を調べた研究では、解剖でも原因がわからなかったのは40%でした。そのうち遺伝子を調べた113例の27%で、臨床的に意味のある心臓の遺伝子の変化が見つかり、ご家族の追跡では13%の家族で遺伝性の心血管の病気の診断がつきました[2]。原因がわかれば、残されたご家族が自分の状態を確かめる道が開けます。

2. 264遺伝子で調べる病気と遺伝子の一覧

このパネルでは、心臓と血管の病気に関わる264の遺伝子を、9つのグループにまたがってまとめて調べます。下の表は、グループごとの主な病気と遺伝のしかた、調べる遺伝子をすべて示したものです。遺伝子名や病名から、それぞれの詳しい解説ページに進めます。

🧬 心血管疾患包括パネルで調べる264遺伝子と主な病気

グループ 主な病気 主な遺伝のしかた 調べる遺伝子
心筋症(心臓の筋肉の病気)
(55遺伝子)
肥大型心筋症、拡張型心筋症(LMNAによる1A型など)、不整脈原性右室心筋症、拘束型心筋症、左室緻密化障害 主に常染色体顕性。一部に常染色体潜性の型 ABCC9、ACTC1、ACTN2、ANKRD1※、BAG3、CALR3※、CAV3、CAVIN4※、CRYAB、CSRP3、CTF1※、CTNNA3、DES、DSC2、DSG2、DSP、DTNA、EYA4、FHL2※、FLNC、GATAD1、ILK※、JPH2、JUP、LAMA4、LDB3、MIB1、MYBPC3、MYH6、MYH7、MYL2、MYL3、MYLK2※、MYOM1※、MYOZ2、MYPN、NEBL※、NEXN、PDLIM3※、PKP2、PLN、PRDM16、PSEN2、RBM20、SGCD、TCAP、TMEM43、TMPO※、TNNC1、TNNI3、TNNT2、TPM1、TTN、VCL、YWHAE※
遺伝性不整脈
(36遺伝子)
QT延長症候群、ブルガダ症候群、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)、QT短縮症候群、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群、アンデルセン・タウィル症候群、家族性心房細動、洞不全症候群・進行性心臓伝導障害 主に常染色体顕性。ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群(KCNQ1・KCNE1)やCPVTの一部の型(CASQ2・TRDN)は常染色体潜性 AKAP9、ANK2、CACNA1C、CACNB2、CALM1、CALM2、CALM3、CASQ2、CHRM2※、GJA5、GPD1L、HCN4、KCNA5、KCND3、KCNE1、KCNE2、KCNE3、KCNE5※、KCNH2、KCNJ2、KCNJ5、KCNJ8※、KCNQ1、NPPA、RANGRF※、RYR2、SCN10A、SCN1B、SCN2B、SCN3B、SCN4B、SCN5A、SLMAP※、SNTA1、TRDN、TRPM4
大動脈・結合組織の病気
(36遺伝子)
マルファン症候群、ロイス・ディーツ症候群、遺伝性胸部大動脈瘤・解離、血管型エーラス・ダンロス症候群などのエーラス・ダンロス症候群、ウィリアムズ症候群の大動脈弁上狭窄(ELN)、大動脈弁の病気、動脈蛇行症候群 主に常染色体顕性。動脈蛇行症候群(SLC2A10)などは常染色体潜性、BGN・FLNAの病気はX連鎖 ACTA2、ADAMTS10、ADAMTS17、B4GALT7、BGN、C1R、C1S、COL1A1、COL3A1、COL5A1、COL5A2、EFEMP2、ELN、FBN1、FBN2、FLNA、FOXE3、IPO8、LOX、LTBP3、MAT2A※、MFAP5、MYH11、MYLK、NOTCH1、PLOD1、PRKG1、SKI、SLC2A10、SMAD2、SMAD3、SMAD6、TGFB2、TGFB3、TGFBR1、TGFBR2
肺高血圧・血管の病気
(9遺伝子)
肺動脈性肺高血圧症、遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)、若年性ポリポーシス/HHT症候群、毛細血管奇形-動静脈奇形(RASA1)、ADA2欠損症(血管炎) 主に常染色体顕性。ADA2は常染色体潜性 ACVRL1、ADA2、BMPR2、CAV1、ENG、KCNK3、RASA1、SMAD4、SMAD9
生まれつきの心臓の病気・内臓の左右の異常
(56遺伝子)
先天性心疾患(心房中隔欠損・心室中隔欠損・ファロー四徴症など)、ホルト・オーラム症候群、アラジール症候群、CHARGE症候群、内臓錯位症、原発性線毛機能不全、アルストローム症候群、バルデー・ビードル症候群など 常染色体顕性・潜性・X連鎖が混在。線毛の病気は常染色体潜性、ZIC3の内臓錯位症はX連鎖 ABL1、ACTB、ACTG1、ACVR2B、ALMS1、BBS10、BCOR、CCDC103(現在の名前:DNAAF19)、CCDC39、CCDC40、CHD7、CRELD1、DNAAF1、DNAAF2、DNAAF3、DNAAF4、DNAAF5、DNAH11、DNAH5、DNAI1、DNAI2、DNAL1、FGD1、FOXH1※、GATA4、GATA6、GDF1、GJA1、GPC3、HAND1※、INVS、JAG1、KAT6B、LEFTY2※、MED12、MED13L、MKS1、MMP21、NEK8、NKX2-5、NKX2-6、NME8、NODAL、NOTCH2、NPHP3、NR2F2、NSD1、OFD1、PKD1L1、TAB2、TBX1、TBX20、TBX5、TTC8、ZFPM2、ZIC3
RAS経路の病気(ヌーナン症候群など)
(17遺伝子)
ヌーナン症候群、CFC症候群、コステロ症候群、神経線維腫症-ヌーナン症候群(肥大型心筋症・肺動脈弁狭窄を合併しやすい) 主に常染色体顕性。LZTR1には常染色体潜性の型もある A2ML1※、BRAF、CBL、HRAS、KRAS、LZTR1、MAP2K1、MAP2K2、NF1、NRAS、PTPN11、RAF1、RIT1、RRAS※、SHOC2、SOS1、SOS2
脂質の病気
(5遺伝子)
家族性高コレステロール血症、家族性高トリグリセリド血症(APOA5) LDLR・APOB・PCSK9は常染色体顕性、LDLRAP1は常染色体潜性 APOA5、APOB、LDLR、LDLRAP1、PCSK9
心臓を合併する代謝・神経筋の病気
(39遺伝子)
ファブリー病、ポンペ病、ダノン病、トランスサイレチン型アミロイドーシス(TTR)、フリードライヒ運動失調症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー、バース症候群、脂肪酸代謝異常症、ミトコンドリア病、遺伝性ヘモクロマトーシス、ホモシスチン尿症 多くは常染色体潜性。ファブリー病(GLA)・ダノン病(LAMP2)・デュシェンヌ/ベッカー型(DMD)・バース症候群(TAZ)などはX連鎖、TTR・LMNA・SLC40A1などは常染色体顕性 ACADVL、AGL、CBS、COX15、CPT1A、CPT2、DMD、DNAJC11※、DNAJC19、DOLK、ELAC2、EMD、FHL1、FKRP、FKTN、FXN、GAA、GLA、GYG1、HAMP、HFE、HJV、LAMP2、LMNA、MRPL3、MTO1、NDUFAF1、NDUFB11、PRKAG2、SDHA、SLC22A5、SLC25A20、SLC40A1、SYNE1、TAZ(現在の名前:TAFAZZIN)、TFR2、TMEM70、TTR、TXNRD2
てんかんなど神経の病気
(11遺伝子)
てんかん(ドラベ症候群・家族性焦点てんかんなど)、発作性運動誘発性ジスキネジア、GLUT1欠損症、遺伝性の痛みの病気(SCN9A) 主に常染色体顕性。PCDH19はX連鎖、CACNA2D1などは常染色体潜性 CACNA2D1、DEPDC5、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、PCDH19、PRRT2、SCN1A、SCN8A、SCN9A、SLC2A1

※の付いた24遺伝子は、遺伝子と病気の関係がまだ研究段階で、遺伝性疾患のデータベース(OMIM)に病気との関係が登録されていない遺伝子です。病名・遺伝のしかたはOMIMの登録にもとづき、2026年10月時点のデータで確認しました。

※の遺伝子のように、病気との関係がまだ研究の途中にある遺伝子も含まれていることは、このパネルを受けるときに知っておいていただきたい点です(第4章)。

当院のNIPTで調べられる遺伝子もあります

このパネルの遺伝子のうち、BRAF、CBL、CHD7、COL1A1、HRAS、KAT6B、KRAS、LMNA、MAP2K1、MAP2K2、NRAS、NSD1、PTPN11、RAF1、RIT1、SHOC2、SKI、SOS1、SOS2の19遺伝子は、当院のNIPTのダイヤモンドプランとインペリアルプランの両方で、ACTB、ACTG1、FBN1、FLNA、JAG1、KCNJ2、KCNQ2、KCNT1、LZTR1、MED13L、NF1、NOTCH2、SCN1A、SCN8A、SMAD3、SMAD4、TBX5、TGFB2、TGFBR1、TGFBR2の20遺伝子はインペリアルプランで、妊娠中に赤ちゃんの変化を調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性のときは、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。プランの詳しい内容はNIPTのページをご覧ください。

3. どんな人が受けるとよいか/別の検査が向いている場合

このパネルが最も向いているのは、心臓や血管の病気があるのに病名がしぼれない方と、ご家族に何種類かの心臓の病気がある方です。病名がはっきりしている場合は、その病気にしぼった検査を選ぶほうが、結果の解釈がしやすくなります。

このパネルが向いている人

  • ●心筋症・不整脈・大動脈の病気のどれか(または複数)が疑われているが、病名がしぼれない方
  • ●ご家族に、心筋症・不整脈・大動脈瘤・突然死など、種類の違う心臓の病気の方が何人もいる方
  • ●若くして突然亡くなったご家族や、原因のはっきりしない死亡のご家族がいる方
  • ●ご家族の誰かで原因の遺伝子が見つかっていて、ご自身も同じ変化をもっているか知りたい方(その場合は、見つかった変化だけを調べる方法もあります)
  • ●ほかの検査で原因がわからなかった方

ご家族に心臓の病気があって、症状のないご自身が将来のために調べる場合は、発症前の検査になります。当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。結果を知ったあとの気持ちの変化は、陽性でも陰性でも起こりえます。当院では、結果をお伝えしたあとも遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。

病名がわかっているなら、その病気の検査を(選び方の表)

🔍 症状・ご家族の状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
病名がまだしぼれない/ご家族に何種類かの心臓の病気がある このページの心血管疾患包括パネル(264遺伝子)
不整脈が中心(QT延長症候群・ブルガダ症候群など) 遺伝性不整脈パネル(77遺伝子)、QT延長症候群/ブルガダ症候群パネル、CPVT遺伝子検査、QT短縮症候群パネル、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の検査
心筋症と診断された 肥大型心筋症パネル、拡張型心筋症パネル、ARVC遺伝子検査
大動脈瘤・大動脈解離、マルファン症候群などが疑われる マルファン症候群・胸部大動脈瘤解離遺伝子検査、ロイス・ディーツ症候群パネル、結合組織疾患パネル、エーラス・ダンロス症候群の検査
LDLコレステロールがとても高い 家族性高コレステロール血症遺伝子検査
生まれつきの心臓の病気がある 先天性心疾患パネル、内臓錯位症・完全内臓逆位の検査、ヌーナン症候群・RASopathiesパネル
お子さんを突然亡くされた 親子トリオ全ゲノム検査(お子さんの突然死の原因究明)
鼻血をくり返す・血管奇形・脳の血管の病気 遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)遺伝子検査、血管奇形パネル、脳海綿状血管腫(CCM)遺伝子検査、片麻痺・脳卒中パネル、CADASIL(NOTCH3)遺伝子検査
そのほか(肺高血圧・アミロイドーシス・鉄の病気・線毛の病気) 肺動脈性肺高血圧症パネル、TTRアミロイドーシス遺伝子検査、ヘモクロマトーシスパネル、原発性線毛機能不全症候群パネル
心臓だけでなく、がんなど治療や予防につながる遺伝子もまとめて調べたい アクショナブル遺伝子パネル

※比べているのは検査の種類です。どれが合うかは、診断名・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

このパネルでは調べにくいこと・別の検査が向く場合

  • ●染色体の数や大きな欠失(22q11.2欠失症候群など):このパネルは遺伝子の配列を読む検査なので、染色体の変化を調べるにはマイクロアレイ染色体検査が向いています。
  • ●体の一部の細胞だけに起きた変化(体細胞モザイク):このパネルはモザイクを見つける目的で作られていません。血管奇形の多くはこのタイプなので、血管奇形パネルをご覧ください。
  • ●心臓以外にも多くの症状があり、病気をしぼれない:約2万の遺伝子を調べる全エクソーム検査(WES)が向くことがあります。

遺伝子検査そのものの種類と、わかること・わからないことは、遺伝子検査(遺伝学的検査)とはで解説しています。

\ あなたの1回の検査が、ご家族を守る手がかりになります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因の変化がわかれば、ご両親・きょうだい・お子さんは、同じ変化があるかだけを調べて自分の状態を確かめられます。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

4. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、264遺伝子の中の小さな変化(1文字の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、すべての遺伝子検査には限界があり、陰性の結果でも心臓の病気が遺伝性ではないとは言い切れません。

わかること

  • ●遺伝子の小さな変化:次世代シーケンサー(NGS)で、遺伝子のたんぱく質をつくる部分(エクソン)と、その境目(スプライス部位)を読みます。調べる場所の99%以上を、20回以上読んで確かめます。
  • ●遺伝子の欠失・重複:遺伝子1つまるごとの欠失・重複(頬の粘膜と血液の検体)と、となり合う2つ以上のエクソンの欠失・重複(血液の検体のみ)を見つけられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は見つかることもありますが、ふだんの検査の対象ではありません。
  • ●確認のしくみ:読み取りの質が低かった変化は、別の方法(サンガー法)で確かめます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。

わからないこと(検査の限界)

  • ●染色体の転座や逆位、くり返し配列の伸長、遺伝子の働きを調節する領域の多く、エクソンから20塩基より離れたイントロンの深い部分の変化は調べません。
  • ●FXN遺伝子:フリードライヒ運動失調症の原因として最も多いGAAのくり返し配列の伸長は、この検査では調べません。症状からこの病気が強く疑われる場合は、くり返し配列を調べる別の検査が必要です。
  • ●ZIC3遺伝子:3塩基のくり返し配列の伸長は調べません。
  • ●体の一部の細胞にだけ変化がある状態(体細胞モザイク)を見つける目的では作られておらず、腫瘍の組織の検査はできません。
  • ●似た配列が多い場所(偽遺伝子など)では、変化を読み取りにくいことがあります。

陰性でも、心臓の病気が遺伝性ではないとは言い切れません。たとえばQT延長症候群でも、根拠の確かな遺伝子を調べて原因の変化が見つかるのは約70〜85%とされています[1]。病気の原因がまだわかっていない遺伝子や、この検査では見つけられない種類の変化が残るためです。

遺伝子が多いパネルほど、意義がまだわからない変化(VUS)が見つかりやすい

検査では、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS)が見つかることがあります。調べる遺伝子が多いほど、VUSに出会う機会も増えます。肥大型心筋症の検査によく含まれる33の遺伝子を専門家が評価した研究では、病気との関係が「確か」とされたのは8遺伝子(24%)にとどまり、22遺伝子(66%)は根拠が限られるか、ないと判断されました[5]。

💡 臨床遺伝専門医としての考え方

264遺伝子には、病気との関係が確かな遺伝子から、まだ研究段階の遺伝子までが含まれています。それでもこのパネルを選ぶ意味があるのは、病名がしぼれない段階では「どの遺伝子を調べればよいか」自体がわからないからです。当院では、結果を遺伝子ごとの根拠の強さとあわせて読み、VUSを診断やご家族の検査に使わないようにご説明します。VUSの扱いはVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いでも解説しています。なお、VUSを報告書に載せない「VUS除外」のオプション(無料)も選べます。

5. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。原因が見つかったとき・見つからなかったとき・VUSのときで、次にできることが違います。

原因がわかったとき:定期検査・薬・運動・ICDの判断材料に

病名がわかると、受けるべき定期検査、気をつけたい薬や運動、植込み型除細動器(ICD)が必要かどうかなど、次の一手を考える手がかりになります。たとえばQT延長症候群では、原因の遺伝子によって危険が高まる場面が違い、KCNQ1の型では交感神経が高ぶる場面で危険が高く、β遮断薬などがとくに効くとされています[1]。どの遺伝子のどの変化かがわかることは、同じ病名の中でも一人ひとりに合った管理を考える材料になります。実際の治療や管理は、循環器の主治医と相談して決めます。

ご家族の検査(カスケード検査)

ご本人で原因の変化が見つかると、ご両親・きょうだい・お子さんは、その変化があるかどうかだけを調べて、自分の状態を確かめられます。これをカスケード検査といいます。国際的な専門家の合意文書では、変化をもつ方は定期的に診察を受け、もたない方は、多くの病気でその後の経過観察から外れられるとされています[1]。

一方で、VUSは、LP(おそらく病気の原因)以上に評価が上がらない限り、ご家族の検査には使わないとされています[1]。症状のないご家族の検査は発症前の検査になるため、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味を一緒に考えていただきます。

原因が見つからなかったとき・VUSのとき

原因が見つからなかった場合も、症状がある方は、引き続き循環器の主治医のもとで経過をみることが大切です。症状や家族歴によっては、全エクソーム検査やマイクロアレイ染色体検査などを考えます。VUSは、それだけで診断に使ったりご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。

調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。結果の報告書の読み方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

妊娠を考えている方:出生前診断のご相談

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。当院の羊水検査・絨毛検査は、2025年6月から併設した産婦人科で院内で受けられます。詳しくは単一遺伝子疾患の出生前診断もご覧ください。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因の遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査(院内)です。

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備に、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書、③ご家族の検体、が求められています[6]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(STR・SNPなどの多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[6]。

ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要です。指針の目安は、顕性遺伝では患者さん少なくとも1人(できれば2人)および/または発症していない方1人、潜性遺伝では患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方、X連鎖では患者さん、および/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)です[6]。血縁者がいない場合、指針は治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法を挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。また、新しく起きた変化(de novo)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[6]。

海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。臨床遺伝専門医としての判断では、VUSは病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しく、潜性遺伝の病気ではご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[7]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患は、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。審査が続いている申請も多く、学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。

英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。マルファン症候群、ロイス・ディーツ症候群1〜4型、QT延長症候群、カテコラミン誘発多形性心室頻拍1〜4型、拡張型・肥大型・不整脈原性右室心筋症の多くの型は、この一覧に載っています(2026年9月時点)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[8]。米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[9]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。

準備に必要なことは、遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へでくわしく解説しています。

6. 日本の制度(指定難病)

このパネルで調べる病気のうち、肥大型心筋症(告示番号58)、特発性拡張型心筋症(57)、拘束型心筋症(59)、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)(79)、肺動脈性肺高血圧症(86)、CFC症候群(103)、コステロ症候群(104)は、国の指定難病です(厚生労働省の一覧、令和8年4月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、病気ごとの診断基準と重症度の基準を満たし、申請する必要があります。遺伝子検査で原因が確定していることは、診断の手がかりのひとつになります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

7. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜から選べ、唾液・頬の粘膜の場合は、遠方の方でもクリニックにお越しにならずにオンライン診療で受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 心臓と血管の病気に関わる264遺伝子の配列と、欠失・重複
検査費用 税込330,000円
結果までの期間 2〜3週間
至急オプション 55,000円(結果までの期間が約7日短くなります)
VUS除外オプション 無料(意義がまだわからない変化を報告書に載せない)
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出したDNA、頬の内側の粘膜(スワブ)、唾液(採取キットをお渡しします)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・頬の粘膜の検体なら可能。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療では、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れになります。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の健康管理だけでなく、ご家族の健康や妊娠・出産の計画を考えるときにも、この先ずっと使える情報です。

臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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8. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「心臓病の家系だから」で終わらせないために】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。「うちは心臓病の家系だから」と漠然と心配し続けるより、1つの遺伝子で起こる病気なのか、体質と生活習慣が重なったものなのかを見分けることが、ご本人とご家族の次の一歩につながると考えています。1つの遺伝子で起こる心臓の病気は、同じ家族の中でも発症する人としない人がいて、症状の重さもさまざまです。見た目の印象だけで、将来を決めてしまわないでほしいと思います。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく関係のない別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ったうえで考えたい方には、ご家族の検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 心臓病は家系で遺伝しますか?

心臓病のすべてが遺伝するわけではありません。よくある心筋梗塞や狭心症の多くは、体質と生活習慣が重なって起こります。一方、心筋症・遺伝性の不整脈・大動脈の病気・家族性高コレステロール血症などは、1つの遺伝子の変化で起こり、家系の中で受け継がれることがあります。若い年齢での突然死や、同じ心臓の病気の方が何人もいる家族歴は、遺伝する心臓病を考える手がかりです。

Q2. 心臓病が遺伝する確率はどれくらいですか?

病気と遺伝のしかたによって違います。常染色体顕性(優性)遺伝の病気では、親が原因の変化をもっていると、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継がれます。常染色体潜性(劣性)遺伝では、ご両親がともに保因者のとき4分の1です。ただし、変化を受け継いでも生涯発症しない人もいるため、受け継ぐ確率と発症する確率は同じではありません。

Q3. 親や祖父母の心臓病は、子どもや孫に遺伝しますか?

顕性遺伝の病気では、お孫さんに伝わるかどうかは、間の世代(お子さん)が変化を受け継いだかで決まります。お子さんが受け継いでいれば、お孫さんへの確率はまた2分の1、受け継いでいなければ、その系統のお孫さんには伝わりません。ご家族で原因の変化がわかれば、それぞれの方が同じ変化だけを調べて確かめられます。

Q4. 症状がなく、家族歴だけでも受けられますか?

受けられます。症状のない方の検査は発症前の検査になるため、検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで、知ることの意味や結果のあとの選択肢をご説明します。ご家族の誰かで原因の変化がすでにわかっている場合は、その変化だけを調べる方法もあります。

Q5. 不整脈だけを調べる検査(77遺伝子)との違いは?

この検査は、不整脈に加えて、心筋症・大動脈の病気・先天性心疾患・家族性高コレステロール血症など、心臓と血管の病気に関わる264遺伝子を広く調べます。不整脈が中心で、ほかの心臓の病気が疑われていない場合は、不整脈の遺伝子にしぼった遺伝性不整脈パネル(77遺伝子)のほうが向いています。

Q6. 陰性なら心臓病にならないと考えてよいですか?

そうは言えません。原因の遺伝子がまだわかっていない病気や、この検査では見つけられない種類の変化があるためです。たとえばQT延長症候群でも、原因の変化が見つかるのは約70〜85%とされています。また、よくある心臓病は生活習慣の影響も受けます。症状がある方は、引き続き主治医のもとで経過をみてください。

Q7. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。病気の有無がわかっている血縁者の検体が必要になるため、ご家族の検査も含めてご相談ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。

Q8. 費用と結果までの期間は?

検査費用は税込330,000円で、結果までは2〜3週間です。至急オプション(55,000円)で約7日短くなります。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族の心臓のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。心臓の病気の原因がわかれば、ご自身の定期検査や治療の判断材料になるだけでなく、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を確かめる手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、ご家族の検査、羊水検査・絨毛検査による出生前診断のご相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Wilde AAM, Semsarian C, Márquez MF, et al. European Heart Rhythm Association (EHRA)/Heart Rhythm Society (HRS)/Asia Pacific Heart Rhythm Society (APHRS)/Latin American Heart Rhythm Society (LAHRS) Expert Consensus Statement on the state of genetic testing for cardiac diseases. Europace. 2022;24(8):1307-1367. [DOI: 10.1093/europace/euac030]
  • [2] Bagnall RD, Weintraub RG, Ingles J, et al. A Prospective Study of Sudden Cardiac Death among Children and Young Adults. N Engl J Med. 2016;374(25):2441-2452. [DOI: 10.1056/NEJMoa1510687]
  • [3] Khera AV, Won HH, Peloso GM, et al. Diagnostic Yield and Clinical Utility of Sequencing Familial Hypercholesterolemia Genes in Patients With Severe Hypercholesterolemia. J Am Coll Cardiol. 2016;67(22):2578-2589. [DOI: 10.1016/j.jacc.2016.03.520]
  • [4] Akioyamen LE, Genest J, Shan SD, et al. Estimating the prevalence of heterozygous familial hypercholesterolaemia: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open. 2017;7(9):e016461. [DOI: 10.1136/bmjopen-2017-016461]
  • [5] Ingles J, Goldstein J, Thaxton C, et al. Evaluating the Clinical Validity of Hypertrophic Cardiomyopathy Genes. Circ Genom Precis Med. 2019;12(2):e002460. [DOI: 10.1161/CIRCGEN.119.002460]
  • [6] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [7] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [8] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
  • [9] Ethics Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Use of preimplantation genetic testing for monogenic adult-onset conditions: an Ethics Committee opinion. Fertil Steril. 2024;122(4):607-611. [DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.05.165]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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