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ウィリアムズ症候群(Williams-Beuren症候群)は、第7染色体の7q11.23領域における約1.55〜1.83 Mbの微小欠失によって引き起こされる、多臓器にわたる先天性神経発達障害です。約1万人に1人の割合で発生し、特徴的な「エルフ様顔貌」・大動脈弁上狭窄を主体とする心血管疾患・高カルシウム血症・軽度から中等度の知的障害、そして音楽や言語に特異な才能を持ちながら視空間認知が著しく低下するという独特の認知プロファイルを特徴とします。本記事では、染色体欠失のメカニズムから生涯にわたる医療管理戦略まで、臨床遺伝専門医が包括的に解説します。
Q. ウィリアムズ症候群とはどのような疾患ですか?まず結論を知りたいです
A. ウィリアムズ症候群(OMIM #194050)は、第7染色体7q11.23領域における約1.5〜1.8 Mbの微小欠失を原因とする隣接遺伝子症候群です。ELN・GTF2I・LIMK1など25〜28個の遺伝子のハプロ不全(片方のコピーが欠失すること)が複合的に作用して、心血管疾患・特有の顔貌・知的障害・高カルシウム血症という多臓器にわたる症候群を形成します。ほぼすべての症例が減数分裂時の新生突然変異(de novo変異)として発生し、約1万人に1人の頻度で出生します。
- ➤原因 → 第7染色体7q11.23の微小欠失(1.55〜1.83 Mb)・NAHRによる発生
- ➤主要合併症 → 大動脈弁上狭窄(SVAS)35〜70%・末梢性肺動脈狭窄60%・突然死リスク一般の25〜100倍
- ➤認知プロファイル → 言語・音楽が強み/視空間認知が著しく低下という独特の非均一性
- ➤診断 → 染色体マイクロアレイ(CMA)またはFISH法による7q11.23欠失の同定
- ➤管理 → 根治療法なし。多学的な生涯にわたる合併症管理・早期療育が生命予後とQOLを決める
1. ウィリアムズ症候群とは:定義・歴史的背景・疫学
ウィリアムズ症候群(Williams syndrome: WS、またはWilliams-Beuren syndrome: WBS;OMIM #194050)は、第7染色体長腕の7q11.23領域における微小欠失を原因とする、多臓器にわたる複雑な先天性神経発達障害です。1952年にFanconiらによって特異な顔貌・低身長・重度の乳児高カルシウム血症を伴う一連の症例として初めて医学文献に報告されました。その後、1961年に循環器専門医のJ.C.P. Williamsらと、A.J. Beurenらによって、大動脈弁上狭窄(SVAS)と特異な顔貌・知的障害を併発する独立した疾患単位として明確に定義され、現在の病名の由来となっています。
今日においてウィリアムズ症候群は、細胞外マトリックスの構造と機能、染色体のゲノム構造と再構成のメカニズム、さらには学習・言語・行動の遺伝的基盤を解明するための極めて重要な疾患モデルとなっています。
💡 用語解説:隣接遺伝子症候群(りんせつ いでんしょうこうぐん)
染色体上で隣り合って並んでいる複数の遺伝子が、ひとかたまりで欠失することによって引き起こされる症候群です。単一の遺伝子の変異ではなく、「まとめて複数の遺伝子がなくなる」ことが特徴です。ウィリアムズ症候群では7q11.23領域にある25〜28個の遺伝子がまとめて欠失するため、心臓・血管・脳・内分泌など複数の器官系に同時に影響が出ます。それぞれの遺伝子が担う機能が失われることで、複雑な症状の組み合わせが生まれます。
発生頻度と遺伝形式
本疾患の発生頻度は、近年の疫学調査や診断技術の向上により、出生約7,500人に1人から約18,000人に1人の割合で発生すると推定されており、最もよく引用される数値は約1万人に1人です。人種や性別による明らかな偏りは認められず、男女等しい割合で発症します。
ほぼすべての症例が減数分裂時のエラーによる新生突然変異(de novo変異)に起因して発生します。常染色体優性(顕性)遺伝の形式をとるものの、患者が次世代に疾患を伝播する例は極めて稀です。非遺伝的要因や環境的な危険因子が本疾患の発症に関与しているという証拠はありません。
2. 分子遺伝学:欠失のメカニズムと遺伝子型—表現型相関
ウィリアムズ症候群は、第7染色体長腕の7q11.23領域(Williams-Beuren Syndrome Critical Region: WBSCR)におけるヘテロ接合性微小欠失(片アレル欠損)によって引き起こされる代表的な隣接遺伝子症候群です。この欠失領域は通常1.55 Mbから1.83 Mbの範囲に及び、25〜28個の固有のタンパク質コード遺伝子を含んでいます。
低コピー反復配列(LCR)と非アレル性相同組換え(NAHR)のメカニズム
7q11.23領域が高頻度で特異的な欠失を起こす背景には、このゲノム領域の特殊な構造的脆弱性が存在します。WBSCRの両端には、高度な配列相同性(類似性)を持つ複雑な分節重複領域である「低コピー反復配列(Low-copy repeats: LCRs)」のブロックが配置されています。
💡 用語解説:NAHRとは(非アレル性相同組換え)
減数分裂(卵子・精子が作られるとき)に、染色体が相同対合を行う過程で、LCR間でアライメントの不一致(ミスアライメント)が生じやすくなります。この不整列な状態で非アレル性相同組換え(Nonallelic homologous recombination: NAHR)が発生すると、一方の染色体ではWBSCRの欠失が、もう一方の染色体では重複が引き起こされます。患者間で欠失サイズが1.55〜1.83 Mbと均一に近い値を示すのは、このNAHRが特定のLCRブロック間で起こるためです。同じメカニズムで生じる相互的な重複は「7q11.23微小重複症候群」として知られ、ウィリアムズ症候群とは対照的・あるいは重複する臨床的表現型を呈します。
主要な欠失遺伝子と臨床症状の対応関係(遺伝子型—表現型相関)
ウィリアムズ症候群の多岐にわたる複雑な臨床的表現型は、単一の遺伝子変異によって引き起こされるものではありません。欠失領域に含まれる複数の遺伝子のハプロ不全(一対の対立遺伝子のうち片方が失われることでタンパク質の発現量が半減し、機能が不十分になる状態)が複合的に作用することで、特異な症候群が形成されます。
特筆すべきはNCF1遺伝子の逆説的な役割です。この遺伝子は欠失領域の端に位置するため、患者によって欠失に含まれる場合と含まれない場合があります。NCF1が欠失している患者では、血管壁の酸化ストレスが抑制され、高血圧や動脈硬化のリスクが有意に低下するという「保護効果」が生じることが研究で示されています。これは同じウィリアムズ症候群でも欠失の正確な範囲によって心血管リスクが大きく変わることを意味します。
また、非定型欠失(約1.0〜1.3 Mbの短い欠失)を有し、GTF2IおよびGTF2IRD1遺伝子が欠失を免れた患者では、ウィリアムズ症候群特有の顔貌が軽度であり、視空間認知の欠如や知的障害が見られずIQが正常範囲にあったことが報告されています。これらの遺伝子が神経認知および頭蓋顔面の発達において決定的な役割を果たしていることが実証されています。
3. 心血管系:エラスチン動脈症と生命を脅かす血管狭窄
心血管疾患の合併はウィリアムズ症候群患者の約80%に認められ、本疾患の生命予後とQOLを決定づける最大の要因です。この心血管異常の根本原因は、ELN遺伝子のハプロ不全に起因する「エラスチン動脈症(elastin arteriopathy)」にあります。
正常な血管壁において、コラーゲンは血管の引張強度を、エラスチンは拡張後の反発・収縮能力(弾性)を担保しています。エラスチンが不足すると、動脈壁の弾力性が失われ、血流のずり応力に対する代償として平滑筋の異常増殖や結合組織の肥厚が生じ、結果として全身の中〜大血管において進行性の狭窄や硬化が引き起こされます。
大動脈弁上狭窄(SVAS):最も致死的な合併症
最も頻度が高く、かつ致死的な合併症が大動脈弁上狭窄(Supravalvar aortic stenosis: SVAS)です。SVASは患者の35%から70%に発生し、大動脈弁の直上部における大動脈の局所的あるいは長区域にわたるびまん性の狭窄を特徴とします。
⚠️ 重要:突然死リスクについて
大動脈の狭窄・左室肥大・冠動脈の異常という要因が重なることで、ウィリアムズ症候群の患者における心停止や突然死のリスクは、一般人口の25倍から100倍(年間1,000人に約1人)という極めて高い水準に達します。SVASは特に生後5年間で急速に進行する傾向があり、患者の約30%において開心術による大動脈形成術やカテーテル介入が必要となります。外科的介入時の死亡率も約6%と決して低くありません。
次いで高頻度に見られるのが末梢性肺動脈狭窄(PPS)で、患者の約60%に認められます。PPSの大半は小児期の成長とともに自然軽快する傾向がありますが、重症例ではカテーテルによる血管拡張術が必要となります。これらに加え、冠動脈の狭窄・胸部および腹部大動脈の狭窄・腎動脈狭窄・頭蓋内動脈の狭窄など、エラスチン動脈症は文字通り全身の動脈ネットワークに病変を形成する可能性があります。
ウィリアムズ症候群における主要な臨床症状の有病率
データソース:GeneReviews Williams Syndrome / AAP Clinical Report / Clin Surg Group
NCF1遺伝子と高血圧の逆説的な修飾効果
高血圧とそれに伴う血管硬化(脈波伝播速度の亢進)は、ウィリアムズ症候群の長期的な予後を脅かす深刻な問題です。しかし近年の研究により、WBSCR内の微小欠失の「範囲」がこのリスクを大きく修飾することが判明しています。
NCF1遺伝子はNADPHオキシダーゼ(NOX)複合体のp47phoxサブユニットをコードしています。血管壁においてエラスチンが欠乏した状態では、通常、代償的なシグナル伝達によってNADPHオキシダーゼが過剰に活性化し、大量の酸化ストレスが生み出されます。これが血管平滑筋の異常増殖や血管のさらなる硬化、重度の高血圧を引き起こす主因となります。
しかし、微小欠失がNCF1遺伝子にまで及んでいる患者(NCF1のコピー数が1つ)の場合、NADPHオキシダーゼ複合体の機能が低下しているため、エラスチン欠乏下であっても過剰な酸化ストレスの生成が抑制されます。その結果として、脈波伝播速度の亢進が抑えられ、高血圧や血管硬化の発症リスクが劇的かつ有意に低下することが証明されています。すなわち、NCF1遺伝子のハプロ不全は、ウィリアムズ症候群の血管障害において強力な「防御因子(Protective factor)」として働くという逆説的な現象が起きているのです。この知見は、高血圧を発症しているウィリアムズ症候群患者の治療において、酸化ストレスを抑制する抗酸化薬学的な介入が動脈硬化の進行予防に有効である可能性を示しています。
4. 特異な神経認知プロファイルと行動特性
ウィリアムズ症候群の患者は、約75%の症例において軽度から中等度の知的障害(ID)や学習障害を有します。しかし、その認知能力は一様ではなく、劇的な「強み」と「弱み」のアンバランス(特異な認知プロファイル)を示す点が本疾患の最大の特徴の一つです。
✨ 相対的な「強み」
- 言語能力・語彙力・表現力
- 音楽への強い親和性・リズム感
- 他者の顔の認識・表情の読み取り
- 音声に基づく短期記憶
- 外向的な社交性・共感能力
📉 著しい「弱み」
- 視空間構成能力(図形・パズル・地図)
- 視覚運動協調・描画・書字
- 数概念・算数の理解
- 計画・実行機能
- 多段階指示への対応
この深刻な視空間処理の欠陥は、GTF2IおよびLIMK1遺伝子のハプロ不全に直接的に起因することが明らかになっています。一方、言語能力・音楽能力・他者への強い親和性はCLIP2などの遺伝子欠失が関与していると推察されています。
行動面・精神医学的特徴
行動面においては「カクテルパーティー・パーソナリティ」と形容されるような、非常に外向的で愛嬌があり、他者に対して極度の関心と高い共感性を示す過剰な社交性(hypersociability)が特徴的です。しかし、この他者への境界線の無さは、成長後に社会的距離感を誤認する、あるいは他者から搾取されるリスクを伴います。
さらに、このような明るく外向的な性格の裏側で、精神医学的な合併症が極めて高頻度で発生します。全般性不安障害(GAD)・特定の恐怖症・注意欠陥・多動性障害(ADHD)が患者の多くに認められます。特に聴覚過敏を伴うことが多く、掃除機やサイレンなどの特定の大きな音に対して激しい恐怖反応を示すことが特徴的です。
5. 内分泌・代謝・骨格系・その他の多臓器症状
特発性高カルシウム血症
内分泌異常のなかで最も顕著かつ特徴的なものが、乳幼児期に発症する特発性高カルシウム血症であり、患者の15%から45%に認められます。高カルシウム血症は、過敏性(極度の不機嫌)・頻回な嘔吐・重度の便秘・筋緊張低下・哺乳困難を引き起こし、乳児期における深刻な体重増加不良や成長障害の原因となります。
血清カルシウム値の上昇は成長とともに一過性で自然に正常化することが多いものの、高カルシウム尿症(尿中への過剰なカルシウム排泄)は長期間にわたって残存する傾向があります。慢性的な高カルシウム尿症は、腎臓の石灰化(腎結石)や腎機能障害の直接的なリスク要因となります。その他の内分泌学的所見として、思春期早発症・甲状腺機能低下症・成人期以降における耐糖能異常および糖尿病の発症リスクの上昇が報告されています。
頭蓋顔面・歯科・骨格系の特徴
ウィリアムズ症候群の患者は、事実上100%の確率で特有の「エルフ様顔貌(elfin facies)」を呈します。広い額・眼窩周囲の腫れ(puffy eyes)・扁平な鼻梁・ふっくらした頬・厚い口唇・大きく開いた口・小さな顎(小顎症)が特徴です。これらの頭蓋顔面の発達異常は主としてGTF2IRD1遺伝子の機能不全に関連しています。
歯科・口腔異常として、歯が全体的に小さい(小歯症)・歯列に隙間が空いている(空隙歯列)・先天的な歯の欠損などが高頻度で見られます。全般的な結合組織の脆弱性から、重度の筋緊張低下(ハイポトニア)と関節の過弛緩が生じ、乳幼児期の粗大運動・微細運動の獲得遅延に直結します。消化器系では慢性的な便秘が多発し、泌尿器系では膀胱の弾性低下に伴う膀胱憩室の形成や再発性の尿路感染症(UTI)が合併しやすい傾向があります。
6. 診断アプローチと遺伝学的検査
🔍 関連記事:微小欠失症候群とは/羊水検査・絨毛検査について/臨床遺伝専門医とは
ウィリアムズ症候群の診断は、小児科医や遺伝専門医による詳細な臨床的評価から始まります。特徴的な顔貌・心疾患(特にSVASの聴診所見)・乳児期の哺乳障害と高カルシウム血症・特異な認知・行動プロファイルの組み合わせから本疾患が強く疑われます。しかし、確定診断を下すためには必ず分子遺伝学的検査による確定が必要となります。
出生後の確定検査
出生前診断について
出生前にウィリアムズ症候群の診断が検討される状況としては、超音波検査での胎児心奇形(SVAS様所見)の指摘・以前の子がウィリアムズ症候群と診断された場合・親自身がウィリアムズ症候群の場合(次子への遺伝確率50%)などがあります。
出生前の確定診断には羊水検査または絨毛検査によるCMAまたはFISH法が用いられます。一般的なNIPTは染色体数の異常(トリソミーなど)を主な対象としており、1〜2 Mb前後の微小欠失の検出精度は検査設計によって異なります。ウィリアムズ症候群が強く疑われる場合は、遺伝カウンセリングを受けた上で適切な検査方針を専門医とともに検討することが重要です。
💡 用語解説:CMA(染色体マイクロアレイ)とは
染色体マイクロアレイ(Chromosomal Microarray Analysis: CMA)は、染色体上の無数の場所に「プローブ」と呼ばれる試薬を一度に当て、DNAのコピー数の増減(欠失・重複)を全ゲノムにわたって網羅的に調べる検査です。従来の光学顕微鏡を用いる核型分析(G分染法)では5Mb以下の変化を検出できませんでしたが、CMAでは数十〜数百キロベース(kb)単位の微小な欠失・重複も検出可能です。ウィリアムズ症候群の欠失(約1.5〜1.8 Mb)はCMAで確実に検出でき、さらに欠失の正確な範囲・NCF1遺伝子が欠失に含まれているかどうかまで詳細に評価できます。これは長期的な心血管リスクの予測にも直結する重要な情報です。
7. 包括的医療管理:乳幼児期から小児期のスクリーニング
ウィリアムズ症候群の基礎にある遺伝子欠失を修復する根治的な治療法(キュア)は存在しません。したがって、医療の目的は多臓器にわたる合併症を早期に発見し、症状を管理・軽減し、患者の生涯にわたるQOLを最大化するための多学的・包括的な医療介入を提供することにあります。
心血管系の厳重な監視
診断が下された時点で、直ちに小児循環器専門医によるベースラインの心エコー検査を実施しなければなりません(たとえ最初の診察で異常所見がなくとも定期的な評価が必須です)。特にSVASの進行リスクが高い生後5年間は、少なくとも年1回の頻度で心エコー検査を含む詳細な心血管評価が義務付けられます。5歳以降も、最低でも2〜3年ごとの定期評価が必要です。
高カルシウム血症への対応と栄養管理
乳児期における高カルシウム血症のリスクを最小限に抑えるため、ビタミンDを含有する小児用マルチビタミン製剤の処方は絶対的禁忌です。また、皮膚での自己由来のビタミンD産生を抑えるため、屋外での活動時には日焼け止めの厳重な使用が推奨されます。
生化学的スクリーニングとして、血清総カルシウム値は少なくとも2年ごとに測定し、尿中へのカルシウム排泄(腎結石リスク)を評価するために尿中カルシウム/クレアチニン比を年1回の頻度で確認します。重度の高カルシウム血症クリーゼに陥った場合の急性期管理としては、静脈内への大量輸液による水和・ループ利尿薬(フロセミド)・ステロイド薬(経口プレドニゾロン)・カルシトニン持続静注・重症例ではビスホスホネート製剤(パミドロネート)による骨吸収抑制などの専門的な内分泌学的介入が必要となります。
定期的スクリーニング一覧
発達支援・療育プログラム
乳児期の筋緊張低下や哺乳障害に対しては、生後可能な限り早期から摂食療法および口腔運動療法を開始します。これに加え、理学療法(PT)・作業療法(OT)・言語聴覚療法(ST)・感覚統合療法などを組み合わせた包括的な早期介入プログラム(0〜3歳向け)や、学校ベースの特別支援教育(3歳以降)を導入し、運動能力と認知能力の発達を最大限に引き出します。読字の学習においては、視空間認知に依存しないフォニックス手法(発音と綴りの規則性を学ぶ方法)が効果的とされています。
8. 周術期・麻酔管理:生死を分ける絶対的留意点
🚨 麻酔・手術に関する重大警告
ウィリアムズ症候群患者に対する最も致命的なリスクが、鎮静および全身麻酔の施行です。麻酔中の有害な心血管イベントの発生率は11.1%に達し、周術期の心停止リスクは1.85%、全体的な周術期死亡率は0.9%と報告されています。麻酔に関連する死亡例の実に50%が心臓カテーテル検査中に発生しています。麻酔科医は本疾患特有の病態生理を完璧に理解していなければなりません。
病態生理的メカニズムと麻酔の危険性
SVASが存在する患者では、左室から大動脈への流出路が物理的に狭窄しているため、心筋の酸素需要が増加(頻脈など)しても心拍出量を増やすことができません。一般的な全身麻酔薬(特に吸入麻酔薬)は全身血管抵抗(SVR)を低下させて血圧を下げる作用があります。SVAS患者で血圧(大動脈圧)が低下すると、著しく肥厚した左心室を栄養する冠動脈への灌流圧が致命的に低下し、深刻な心筋虚血・悪性不整脈・蘇生困難な心停止を瞬時に引き起こします。
推奨される麻酔プロトコル
- ①術前評価:麻酔・手術の1ヶ月以内に、必ず専門医による詳細な心血管評価(心エコー含む)を実施。術前の絶飲食(NPO)期間中の循環血液量の減少(Hypovolemia)は致命的であるため、術前2時間まで透明な水分の経口摂取を奨励し、不可能な場合は直ちに静脈内輸液を開始して完璧な水和状態(Euvolemia)を維持すること。
- ②麻酔手法の選択:可能な限り全身麻酔を避け、末梢神経ブロックや局所麻酔、あるいは浅い鎮静を優先する。全身麻酔が不可避な場合は、血管拡張作用の強い吸入麻酔薬による導入を避け、血圧変動を抑えやすい静脈内麻酔(IV induction)が強く推奨される。
- ③術中の目標(Hemodynamic Goals):最優先事項は「全身血管抵抗(SVR)の維持」と「冠動脈灌流圧の維持」。心拍数の上昇(頻脈)や血圧低下(低血圧)を厳格に回避する。ハイリスク患者では観血的動脈圧モニタリング(Aライン)の留置を躊躇してはならない。
- ④危機管理:本疾患の患者の手術は、小児循環器専門医・集中治療医が常駐し、必要に応じてECMO(体外式膜型人工肺)による早期の積極的心肺蘇生を即座に開始できる高度医療機関(PICU併設施設)でのみ施行されるべきである。
9. 成人期の管理・直面する課題と長期的予後
ウィリアムズ症候群の患者に対する医学的管理は、小児期を過ぎた後も生涯にわたって継続されます。大多数の患者は成人期(60代以降)まで生存し、地域社会の中で活動的な生活を送りますが、重度の大動脈狭窄や心不全などの心血管合併症がコントロールできない場合、寿命が短縮する可能性があります。成人期における管理の焦点は、加齢に伴って新たに顕在化する疾患群への対応へとシフトします。
成人期に顕在化する主な問題
❤️ 心血管リスクの変化
小児期に急速に進行したSVASは成人期に安定化する傾向があるが、エラスチン欠乏による動脈壁の慢性的な硬化は生涯継続する。成人期の最大の脅威は重症の全身性高血圧症とその標的臓器障害。NCF1遺伝子の欠失状態を考慮した積極的な血圧管理が不可欠。
🍽️ 消化器・泌尿器
小児期からの慢性的な便秘が、大腸壁に異常な圧力をかけ続け憩室炎を引き起こす主要因となる。成人患者の慢性腹痛には常に憩室炎を鑑別の上位に置く必要がある。腎・膀胱超音波を5〜10年ごとに継続。20歳以降は耐糖能異常・糖尿病の定期的スクリーニングを開始。
🧠 精神衛生・社会的自立
年齢を重ねるにつれ全般性不安障害・うつ病・ADHDの症状が悪化することが多い。「極端な社交性」は長所である一方で、他者から搾取されるリスクを高める。大多数の成人患者は完全な自立した生活は難しく、グループホームや保護的雇用などの継続的サポートが必要。
よくある質問(FAQ)
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