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オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症・HHT)の遺伝子検査|6遺伝子で原因とご家族のリスクを調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症・HHT)の遺伝子検査

オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症、英語の頭文字でHHT、オスラー・ウェーバー・ランデュ病とも呼ばれます)は、くり返す鼻血と、肺・脳・肝臓などの血管の異常(動静脈奇形)が起こる遺伝性の病気です。この遺伝子検査では、オスラー病とよく似た血管の病気に関わる6つの遺伝子をまとめて調べます。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査で原因がわかれば、症状が出る前に肺や脳の血管を調べて治療につなげる計画や、2分の1の確率で受け継がれるご家族の検査に、この先ずっと使えます。このページでは、オスラー病の症状と遺伝のしかた、検査でわかること・わからないこと、結果が出たあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

オスラー病(HHT)の原因となるENG・ACVRL1・SMAD4を含む6つの遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。HHTの多くはACVRL1とENGで説明でき、HHTとよく似た「毛細血管奇形-動静脈奇形」の原因遺伝子(RASA1・EPHB4)も含まれています。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

くり返す鼻血や唇・指先の毛細血管拡張がある方、肺・脳・肝臓の動静脈奇形が見つかった方、ご家族にオスラー病の方がいる方、結婚や妊娠を前に遺伝のことを知っておきたい方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です(至急オプション55,000円で約7日短くなります)。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、唾液・口の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、お子さん・きょうだいに受け継がれる確率は2分の1です。ご家族の検査、肺や脳の血管の検査の計画、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いまでご説明します。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、これからの計画に /

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検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

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1. オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症・HHT)とは

オスラー病は、血管の形づくりに関わる遺伝子の変化によって、細い血管が広がったり(毛細血管拡張)、動脈と静脈が毛細血管を通らずに直接つながったり(動静脈奇形)する病気です。正式な病名は「遺伝性出血性毛細血管拡張症」で、英語の hereditary hemorrhagic telangiectasia の頭文字から「HHT」、最初に報告した医師たちの名前から「オスラー・ウェーバー・ランデュ病」とも呼ばれます。日本の指定難病・小児慢性特定疾病の制度では「遺伝性出血性末梢血管拡張症」という名前も使われています。どれも同じ病気を指しています。

どれくらいの人がなる病気か

遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは、臨床的に診断された人の割合は約5,000人に1人とされ、実際にはもっと多いと考えられています[1]。国際的な診療ガイドライン(2020年)も、有病率をおよそ5,000人に1人としています[2]。日本では、難病情報センターが「日本では5,000〜8,000人に1人がこの病気の遺伝子をもっている」と報告されていること、実際の患者さんは約1万人と推定されることを紹介しています(2026年10月時点で確認)。気づかれていない方も多い病気です。

主な症状:鼻血・毛細血管拡張・内臓の動静脈奇形

オスラー病の症状は、鼻血と皮膚・粘膜の毛細血管拡張がほとんどの方にみられ、それに加えて、肺・肝臓・脳などに動静脈奇形ができることがあります[1]。内臓の動静脈奇形は、症状がないまま隠れていることが多いのが、この病気の注意したい点です。

🩸 オスラー病の主な症状と、みられる割合

症状・病変 みられる割合の目安 ポイント
くり返す鼻血 約95% 平均12歳ごろに始まり、10歳までに約3分の1、20歳までに約80%の方で始まる
毛細血管拡張(唇・口の中・指先・鼻など) 約95% 小さな赤い点のような血管。大人になるころから目立ってくる
貧血 約50% 鼻血や消化管からの出血が続くことによる
肺の動静脈奇形 約30〜50% ENG遺伝子の変化をもつ方でより多い
肝臓の動静脈奇形 約40〜70% 症状が出るのは10%未満。ACVRL1遺伝子の変化をもつ方でより多い
脳の動静脈奇形 約10% ENG遺伝子の変化をもつ方でより多い
消化管の毛細血管拡張からの出血 約4分の1 50歳より前に出血することはまれ
肺動脈性肺高血圧症 約1〜2% 肺の血圧が高くなる病気

※割合はGeneReviews[1]による。調べた集団によって数字は変わるため、目安として受け取ってください。

肺の動静脈奇形があると、静脈の血液が肺で酸素を受け取らないまま全身に流れるため、息切れや指先の色の変化(チアノーゼ)が出ることがあります。血液の中の小さな血のかたまりや細菌が、肺のフィルターを通らずに脳へ流れて、脳梗塞や脳膿瘍の原因になることも知られています。GeneReviewsは、治療していない肺の動静脈奇形は脳梗塞(脳卒中)などの重い合併症の大きなリスクになるとしています[1]。また、肺の動脈の血圧が高くなる肺動脈性肺高血圧症を合併する方も少数います[1]。

オスラー病のセルフチェックの目安(キュラソー基準)

オスラー病の診断には、国際的な「キュラソー基準」が使われています。次の4つのうち3つ以上が当てはまれば診断が確実、2つなら「疑い」とされます[1]。

  • ●鼻血:自然に起こる鼻血をくり返す(目安は年に4回以上)
  • ●毛細血管拡張:唇・口の中・指先・鼻など、特徴的な場所に複数ある
  • ●内臓の動静脈奇形:肺・脳・肝臓・脊髄・消化管などにある
  • ●家族歴:一親等(親・きょうだい・子ども)に、この基準でオスラー病と診断された方がいる

鼻血と毛細血管拡張は自分でも気づけますが、内臓の動静脈奇形は画像検査をしないとわかりません。また、子どもや若い方ではまだ症状がそろっていないことが多く、基準だけでは「疑い」のままになりがちです。症状がそろう前に、遺伝子検査で原因がはっきりすると、診断が確定します。こうした場合に、この遺伝子検査が役に立ちます。

病気そのもののしくみをさらに知りたい方は、動静脈奇形(AVM)の解説もご覧ください。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

2. 遺伝のしかたと原因遺伝子

オスラー病は常染色体顕性(優性)遺伝の病気で、親がオスラー病の場合、お子さん1人あたり2分の1の確率で原因となる遺伝子の変化を受け継ぎます[1]。原因となる遺伝子はいくつかあり、どの遺伝子かによって、起こりやすい合併症に違いがあります。

常染色体顕性(優性)遺伝:お子さん・きょうだいへは2分の1

常染色体顕性(優性)遺伝では、対になった2本の遺伝子のうち1本に変化があれば発症しうるため、親から子へ伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です。性別には関係しません。上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。ご本人がオスラー病とわかった場合、ご両親のどちらか、きょうだい、お子さんも、同じ変化をもっている可能性があります。

GeneReviewsによると、オスラー病は大人になるころまでにほぼすべての方で何らかの症状が出る(浸透率が高い)とされています。ただし、鼻血が始まる年齢には幅があり、子どものうちはまだ症状がない方も多くいます[1]。

原因遺伝子と、その違い:ENG(1型)・ACVRL1(2型)・SMAD4

GeneReviewsでは、オスラー病の原因の内訳は、ACVRL1遺伝子が約52%、ENG遺伝子が約44%、SMAD4遺伝子が約1%で、残りの約3%は原因遺伝子がまだわかっていないとされています[1]。ENGの変化によるものを「1型(HHT1)」、ACVRL1の変化によるものを「2型(HHT2)」と呼ぶことがあります。これらの遺伝子は、血管の形づくりを調節するTGF-β(BMP)シグナルという情報の伝わり道で働いています。

GeneReviewsは、肺と脳の動静脈奇形はENGの変化をもつ方で多く、肝臓の動静脈奇形はACVRL1の変化をもつ方で多いとしています。そのうえで、両者の症状は重なり合い、症状からどの遺伝子が原因かを確実に言い当てることはできないとしています[1]。だからこそ、遺伝子をまとめて調べる意味があります。

SMAD4:若年性ポリポーシスを合わせ持つ型

SMAD4遺伝子の変化によるオスラー病では、胃や腸にポリープが多発する若年性ポリポーシスを合わせ持つことがあります。オスラー病と若年性ポリポーシスの両方がみられた7家系を調べた研究では、全員にSMAD4(当時の名前はMADH4)の変化が見つかり、ENGやACVRL1の変化をもつ方はいませんでした。このうち3例は新しく起きた変化(de novo)でした[3]。

SMAD4の変化がわかった場合は、オスラー病の血管の検査に加えて、消化管のポリープの検査(内視鏡など)も考える必要があります。この型については若年性ポリポーシス/HHT症候群(JP-HHT)と若年性ポリポーシス症候群のページで詳しく解説しています。

⚠️ 症状が軽くても、内臓の血管に異常があることがあります

鼻血がたまにしか出ない方でも、肺や脳に動静脈奇形が隠れていることがあります。肝臓の動静脈奇形は40〜70%の方にみられる一方、症状が出るのは10%未満とされています[1]。また、同じ遺伝子の変化でも、どの臓器に何が起こるかは人によって違い、症状の重さは人それぞれです。「親は鼻血だけだったから、子どもも大丈夫」とは言えません。原因を知ったうえで、ご家族それぞれに合った検査を計画することに意味があります。

3. 遺伝子検査で原因がわかると、何ができるか

オスラー病の遺伝子検査の大きな意味は、症状が出る前に肺や脳の動静脈奇形を見つけて治療につなげられること、そしてご家族のうち誰に検査が必要かをしぼれることです。病名がつくと、受けるべき検査、日常生活で気をつけること、使える制度が決まります。

肺の動静脈奇形:見つけて、カテーテルで治療できる

GeneReviewsでは、肺の動静脈奇形を調べる方法として、泡を含ませた生理食塩水を静脈に注射して心臓の超音波で見る検査(経胸壁コントラスト心エコー)を挙げています。子どもでは、胸のレントゲンと血液中の酸素の値(パルスオキシメーター)で調べ、異常があれば心エコーに進む方法も示されています。大人で前回の心エコーが正常だった場合は、おおむね5年ごとにくり返すとされています[1]。

見つかった肺の動静脈奇形は、カテーテルで血管をふさぐ治療(塞栓術)が第一の選択とされています[1]。治療しておくことで、脳梗塞や脳膿瘍などの合併症を防ぐことにつながります。

脳の動静脈奇形:子どものうちからMRIで確認

国際的な診療ガイドライン(2020年)は、オスラー病と診断された、またはオスラー病の可能性があるお子さんに、診断の時点で脳の血管の異常を調べることを勧めています[2]。GeneReviewsでは、脳のMRIをできるだけ早い時期(できれば生後1年以内)に行い、18〜20歳までにもう一度行うとされています[1]。脳の動静脈奇形があるとわかっていれば、頭をぶつけやすいスポーツを避けるなど、日常生活の判断にも役立ちます。

肝臓・消化管・貧血の管理

国際的な診療ガイドラインは、オスラー病の大人の方に肝臓の動静脈奇形を調べることを勧めています[2]。また、鼻血や消化管からの出血による貧血には、まず飲み薬の鉄剤を使い、効かない場合や飲めない場合は点滴の鉄剤を使うとされています[1]。鼻血には、鼻の中を湿らせる・保湿剤や止血の製品を使うことから始め、効果が不十分なら焼灼などの処置を考えます[1]。

日常生活で気をつけること

GeneReviewsには、オスラー病の方が気をつけたいこととして、次のような点が挙げられています[1]。どれも、病名がわかってはじめて意識できることです。

  • ●鼻血が多い方は、強く鼻をかむ・重いものを持ち上げる・排便時に強くいきむ・指で鼻をいじることを避ける
  • ●お酒を飲むと鼻血が増える方がいる
  • ●血を固まりにくくする薬(抗凝固薬・アスピリン)や、イブプロフェンなどの痛み止めは、ほかの病気の治療で必要な場合を除いて避ける(オスラー病だから絶対に使えない、というわけではない)
  • ●肺の動静脈奇形がある方は、歯の治療など細菌が血液に入りやすい処置の前に、予防のための抗菌薬を使う
  • ●肺の動静脈奇形がある方は、点滴のときに空気の泡が入らないよう注意する(可能ならエアフィルターを使う)
  • ●スキューバダイビングは、5年以内の造影心エコーで異常がなかった場合を除いて避ける
  • ●肝臓の生検(針で組織をとる検査)は避ける

ご家族の検査で、必要な検査をしぼれる

あなたの1回の検査が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知る手がかりになります。ご家族の中で原因の変化がわかっていれば、ほかのご家族は同じ変化だけを調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます[1]。

GeneReviewsでは、ご家族の原因がわからない場合、リスクのあるご家族はオスラー病の方と同じように検査を受けることとされ、40歳以下の方では脳と肺の動静脈奇形を調べることが勧められています[1]。臨床遺伝専門医としての判断では、原因の変化がわかっていて、ご家族がその変化を受け継いでいないと確かめられれば、その家系のオスラー病を受け継いでいないと考えられ、くり返しの画像検査が本当に必要かを主治医と見直す材料になります。反対に、受け継いでいるとわかったご家族は、症状がなくても計画的に検査を受けられます。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

オスラー病の症状がある方、肺・脳・肝臓の動静脈奇形が見つかった方、ご家族にオスラー病の方がいる方、結婚や妊娠を前に知っておきたい方に向く検査です。

  • ●くり返す鼻血や、唇・口の中・指先の毛細血管拡張がある方
  • ●肺・脳・肝臓などの動静脈奇形が、原因がわからないまま見つかった方
  • ●原因のはっきりしない消化管出血や、鉄欠乏性の貧血が続く方
  • ●ご家族にオスラー病の方がいて、ご自身やお子さんが受け継いでいるか知りたい方
  • ●診断基準で「疑い」にとどまっていて、診断をはっきりさせたい方
  • ●胃や腸のポリープが多く、オスラー病の症状もある方(SMAD4の型の可能性)
  • ●結婚・妊娠を考えていて、お子さんへの遺伝を知ったうえで計画したい方

症状がまだないご家族が検査を受けるとき

当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。オスラー病は、わかったあとに受けられる検査や治療がある病気です。わかったうえで、仕事・結婚や出産・住まいなど、これからの人生を計画したいと考える方もいます。結果を知ったあとの気持ちの変化は、陽性でも陰性でも起こりえます。当院では、結果をお伝えしたあとも、遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。

お子さんについては、オスラー病では子どものうちから肺や脳の血管を調べることが勧められています[1][2]。ご家族の原因がわかっている場合に、お子さんの検査をいつ・どのように考えるかは、遺伝カウンセリングでご相談ください。

この検査より別の検査が向いている場合

オスラー病を疑うなら、まずこの検査です。ただし、症状によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。比べているのは検査の種類で、どれが合うかは症状とご家族の情報で決まります。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
くり返す鼻血・毛細血管拡張・内臓の動静脈奇形・家族歴 このページの検査(6遺伝子)
生まれつきのあざ(毛細血管奇形)、静脈やリンパ管の奇形、体の一部の過成長など、血管の奇形が広くみられる 血管奇形NGSパネル(44遺伝子。このページの6遺伝子もすべて含む)
肺の血圧が高い(肺動脈性肺高血圧症) 肺動脈性肺高血圧症NGS遺伝子検査(ACVRL1・ENG・GDF2を含む16遺伝子)
脳の海綿状血管腫が多発している、ご家族にもいる 脳海綿状血管腫(CCM)遺伝子検査
若い年齢での脳卒中・片麻痺 片麻痺・脳卒中遺伝子検査(NGSパネル)
心臓・大動脈の病気が複数あり、病気をしぼれない 心血管疾患包括パネル(264遺伝子)
血管以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※血管奇形NGSパネルは、体の一部の細胞にだけ起きた変化(体細胞モザイク)が原因の病気も対象にした検査です。どちらが合うかは、遺伝カウンセリングでご相談ください。

\ 症状が出る前に知って、検査と治療を計画する /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因がわかれば、ご両親・きょうだい・お子さんも同じ変化だけを調べて確かめられます。海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | 血管奇形NGSパネルと比べる | どの検査がよいか迷う方へ

5. 調べる6つの遺伝子と、わかる病気

この検査では、ACVRL1・ENG・EPHB4・GDF2・RASA1・SMAD4の6つの遺伝子を調べます。オスラー病の主な原因遺伝子に加えて、オスラー病とよく似た症状を起こす病気の原因遺伝子も含めているのが特徴です。

🧬 この検査で調べる6つの遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
ACVRL1 オスラー病2型(HHT2)。肺動脈性肺高血圧症との関係も報告されている 常染色体顕性(優性)
ENG オスラー病1型(HHT1)。肺動脈性肺高血圧症との関係も報告されている 常染色体顕性(優性)
SMAD4 若年性ポリポーシス/HHT症候群、若年性ポリポーシス症候群。別の種類の変化でマイヤー症候群も起こる 常染色体顕性(優性)
GDF2(BMP9) オスラー病と症状が重なる血管の病気(GDF2関連の血管異常症候群) 常染色体顕性(優性)
RASA1 毛細血管奇形-動静脈奇形1型(CM-AVM1)、パークス・ウェーバー症候群 常染色体顕性(優性)
EPHB4 毛細血管奇形-動静脈奇形2型(CM-AVM2) 常染色体顕性(優性)

※遺伝子は当院の検査内容による。病名と遺伝のしかたはGeneReviews[1]、文献[3][4][5][6]と米国国立医学図書館の遺伝情報による。マイヤー症候群は、SMAD4のごく限られた場所の変化で起こる別の病気で、オスラー病とは症状が異なります。

GDF2:オスラー病に似た血管の病気

ENG・ACVRL1・SMAD4に変化が見つからなかった、オスラー病が疑われる191人を調べた研究では、3人にGDF2(BMP9とも呼ばれる)遺伝子の変化が見つかりました。症状は典型的なオスラー病よりも、RASA1による病気に近いものでした。研究者たちは、GDF2の変化がオスラー病と症状の重なる血管の病気を起こすと結論しています[4]。

RASA1・EPHB4:オスラー病とよく似た「毛細血管奇形-動静脈奇形」

毛細血管奇形-動静脈奇形(CM-AVM)は、顔や手足に小さな毛細血管奇形(赤いあざ)が多発し、動静脈奇形を伴うことがある病気で、RASA1やEPHB4の変化で起こります[5][6]。EPHB4の変化をもつ54人の発端者を調べた研究では、多発する毛細血管奇形・毛細血管拡張・動静脈奇形がみられ、RASA1による型やオスラー病とよく似ていると報告されています[6]。

GeneReviewsは、オスラー病と最も間違えられやすい病気としてEPHB4による毛細血管奇形-動静脈奇形を挙げ、オスラー病が疑われるときは、毛細血管奇形-動静脈奇形の遺伝子も含めたパネル検査を勧めています[1]。この検査に両方の遺伝子が入っているのは、そのためです。原因がオスラー病なのか毛細血管奇形-動静脈奇形なのかによって、注意する臓器や検査の計画が変わります。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、6つの遺伝子の小さな変化(1文字の置き換わりや、小さな挿入・欠失)と、遺伝子の一部または全体がまとまって抜けたり増えたりしている変化(欠失・重複)です。オスラー病では、ACVRL1とENGの原因の約10%がこうした欠失・重複とされているため[1]、欠失・重複まで調べることには意味があります。

🔬 検査のしくみ(専門的な内容)

項目 内容
調べ方 次世代シーケンサー(NGS)で、遺伝子のタンパク質をつくる部分と、その境目(スプライス部位)を読みます
読み取りの深さ 調べる範囲の99%以上を、20回以上くり返して読みます(読み落としを減らすため)
確認 読み取りの質が十分でない部分は、サンガー法という別の方法で確かめます
欠失・重複 見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します

※当院の検査ページの記載による。

一方で、この検査にも限界があります。検査を受ける前に、次の点をご理解ください。

  • ●小さな欠失・重複:遺伝子1つまるごとの欠失・重複(血液と口の粘膜の検体)と、2つ以上続くエクソン(遺伝子の区切り)の欠失・重複(血液の検体のみ)は見つけられますが、エクソン1つだけの欠失・重複はふだんは検出の対象になりません。
  • ●調べていない種類の変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、くり返し配列の伸長、遺伝子の働きを調節する領域(プロモーター)や、遺伝子の区切りから20塩基以上離れた場所の変化は調べていません。
  • ●体細胞モザイク:体の一部の細胞にだけ起きた変化(体細胞モザイク)を見つけるための検査ではありません。腫瘍の組織での検査も対象外です。
  • ●原因遺伝子が未知の場合:オスラー病の約3%は、原因遺伝子がまだわかっていません[1]。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうかまだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、オスラー病ではないとは言い切れません。診断基準に当てはまる症状があれば、遺伝子検査の結果にかかわらず、オスラー病として検査や治療を続けます。

7. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。報告書の読み方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

陽性だったとき:診断の確定と、合併症の検査の計画

原因となる変化が見つかると、オスラー病(または毛細血管奇形-動静脈奇形など)の診断が確定します。どの遺伝子かがわかると、肺・脳・肝臓のどこを重点的に調べるか、SMAD4なら消化管のポリープの検査も必要か、といった検査の計画を立てやすくなります。主治医の先生と、肺の動静脈奇形の検査(造影心エコー)や脳のMRIなどの予定を相談してください。

ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき

原因の変化がわかった場合、ご両親・きょうだい・お子さんは、それぞれ2分の1の確率で同じ変化をもっている可能性があります。ご家族は、見つかった変化だけを調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。症状のないご家族の検査は発症前の検査になるため、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます(第4章)。

陰性だったとき

6つの遺伝子に原因となる変化が見つからなかった場合でも、オスラー病ではないとは言い切れません(第6章)。オスラー病の症状がそろっていれば、遺伝子の結果にかかわらず、肺や脳の血管の検査を続けることが大切です。症状に合わせて、血管奇形NGSパネルや全エクソーム検査などを考えることもあります。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

妊娠を考えている方:妊娠中の注意と出生前診断

オスラー病の方の妊娠では、肺の動静脈奇形への備えが大切です。GeneReviewsでは、症状のない妊婦さんは造影心エコーか、被ばくの少ない造影剤を使わない胸のCTで肺の動静脈奇形を調べ、大きなものは原則として妊娠中期(第2三半期)から治療するとされています。治療済みの肺の動静脈奇形がある方は、妊娠中のリスクが高くはならないようだとされています。脳のMRIは、脳の動静脈奇形を疑う症状があるときに造影剤を使わずに行います。また、オスラー病という理由だけで、お産のときの硬膜外麻酔を控えるべきではない、というのが専門家の一致した意見とされています[1]。

国際的な診療ガイドライン(2020年)も、妊娠と出産を独立した項目として取り上げています[2]。当院は分娩を行っていないため、妊娠中の管理とお産は、主治医の先生とかかりつけの産科でご相談ください。妊娠の前に肺の検査や治療を済ませておけるよう、早めに計画しておくと安心です。

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べることができます[1]。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、羊水検査・絨毛検査について、妊娠を考えている段階からご相談ください。

また、6つの遺伝子のうちSMAD4は、当院のNIPTインペリアルプランで調べる対象の遺伝子に入っています(ダイヤモンドプランには入っていません。そのほかの5つの遺伝子は、どちらのプランにも入っていません)。インペリアルプランは、赤ちゃんに新しく起きた遺伝子の変化も含めて調べるNIPTで、妊娠9週から、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。NIPTの詳しい内容はNIPTのページをご覧ください。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院には、海外でPGT-Mを受けたいというお問い合わせが多く寄せられています。当院は体外受精・PGT-Mを行っていませんが、その前提となる原因遺伝子の確定と、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査(院内)をお受けしています。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備に、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②見つかった変化の内容が書かれた元の報告書、③ご家族の検体、が必要とされています[7]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で、変化をもつ染色体を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[7]。

ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要です。オスラー病のような常染色体顕性(優性)遺伝の病気では、指針の目安は「患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人」です[7]。血縁者がいない場合について、指針は、受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法も挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。新しく起きた変化(de novo)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[7]。

海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。臨床遺伝専門医としての判断では、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。また、海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[8]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)」に関する指針(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないものの日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています(2026年10月時点で確認)。

どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。日本では症例ごとに学会が審査し、審査が続いている申請も多くあります(学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中。2026年9月発表)。英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[9]。米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[10]。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。

必要な3つのこと・ご家族の検体が要る理由・妊娠後の確定検査については、遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで詳しく解説しています。

8. 日本の制度(2026年10月時点)

オスラー病は、指定難病227に指定されています。難病情報センターのページ(令和8年7月更新)では「オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症)」として、常染色体顕性(優性)遺伝の病気と説明されています。また、小児慢性特定疾病情報センターの対象疾病にも、脈管系疾患の「遺伝性出血性末梢血管拡張症」として掲載されています(2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。遺伝子検査で原因が確定していることは、診断をはっきりさせる手がかりになります。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液や口の内側の粘膜の検体なら、遠方の方もクリニックにお越しにならずに、オンライン診療で受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・来院またはオンライン
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検体の提出血液・唾液・口の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 ACVRL1, ENG, EPHB4, GDF2, RASA1, SMAD4(6遺伝子)
検査の範囲 塩基配列・欠失/挿入(料金に含まれる)
検査費用 税込330,000円
結果までの期間 2〜3週間
至急オプション 55,000円(結果までの期間が約7日短くなります)
VUS除外 無料(内容は遺伝カウンセリングでご説明します)
検体 血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(ご要望により採取キットをお送りします)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・口の内側の粘膜の検体なら可能。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療の場合は、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れになります。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、検体の採り方は遺伝カウンセリングでご案内します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ あなたの1回の検査が、ご家族の検査計画の出発点に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。唾液・口の粘膜の検体ならオンライン診療でも受けられます。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「たかが鼻血」と思わず、原因を知って計画を】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。オスラー病は、鼻血が目立つ病気なので「体質だから」と見過ごされがちです。けれども、肺や脳の血管の異常は症状がないまま隠れていることがあり、見つかれば治療できるものもあります。だからこそ、病名と原因の遺伝子をはっきりさせ、ご本人とご家族それぞれに必要な検査を計画することに、大きな意味があると考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. オスラー病は遺伝しますか?遺伝する確率は?

オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症・HHT)は常染色体顕性(優性)遺伝の病気です。親がオスラー病の場合、お子さん1人あたり2分の1の確率で原因となる遺伝子の変化を受け継ぎます。性別には関係しません。ご家族で原因の変化がわかっていれば、ほかのご家族が受け継いでいるかを遺伝子検査で確かめられます。

Q2. オスラー病は指定難病ですか?

はい。オスラー病は指定難病227に指定されています(2026年10月時点、難病情報センターの情報)。小児慢性特定疾病の対象疾病にも「遺伝性出血性末梢血管拡張症」として掲載されています。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。

Q3. オスラー病の症状は鼻血だけですか?

鼻血だけではありません。くり返す鼻血と、唇・口の中・指先などの小さな赤い血管の拡張(毛細血管拡張)が多くの方にみられるほか、肺・脳・肝臓などに動脈と静脈が直接つながった血管(動静脈奇形)ができることがあります。内臓の動静脈奇形は症状がないまま見つかることも多いため、診断がついたら画像検査で確かめることが勧められています。

Q4. オスラー病のセルフチェックの方法はありますか?

国際的な診断基準(キュラソー基準)では、くり返す鼻血、唇・口の中・指先・鼻の毛細血管拡張、内臓の動静脈奇形、一親等の家族にオスラー病の方がいること、の4つのうち3つ以上で診断が確実、2つで疑いとされます。当てはまる項目があれば目安になりますが、内臓の血管は自分では確かめられないので、医療機関での診察と検査が必要です。

Q5. 症状のない家族も検査を受けたほうがよいですか?

ご家族の中で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、症状のないご家族も同じ変化を受け継いでいるかを調べられます。オスラー病では、症状が出る前から肺や脳の血管の検査が勧められているため、受け継いでいるかがわかると、どの検査が必要かを考える手がかりになります。検査を受けるかどうかは、遺伝カウンセリングで十分に考えてから決めていただきます。

Q6. オスラー病の人が妊娠するときに気をつけることは?

妊娠中は肺の動静脈奇形が問題になることがあるため、肺の動静脈奇形を調べ、大きなものは妊娠中期以降に治療することが勧められています。妊娠の前に肺の検査や治療を済ませておけるよう、妊娠を考えた段階で主治医とかかりつけの産科にご相談ください。当院は分娩を行っていませんが、遺伝カウンセリングと、羊水検査・絨毛検査による出生前診断のご相談は院内でお受けしています。

Q7. 検査で原因が見つからなかったら、オスラー病ではないのですか?

そうとは限りません。オスラー病の一部は、まだ原因遺伝子が見つかっていないとされています。また、この検査では見つけにくい種類の変化もあります。診断の基準に当てはまる症状があれば、遺伝子検査の結果にかかわらず、オスラー病として肺や脳の血管の検査などを続けることが大切です。

Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。ご家族の検体が必要になることが多いため、検査の段階からご相談ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。オスラー病の原因がわかれば、肺や脳の血管の検査をいつ・誰が受けるかを計画でき、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりにもなります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] McDonald J, Gossage JR, Stevenson DA. Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2000 (Updated 2026 Feb 19). [NCBI Bookshelf NBK1351]
  • [2] Faughnan ME, Mager JJ, Hetts SW, et al. Second International Guidelines for the Diagnosis and Management of Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia. Ann Intern Med. 2020;173(12):989-1001. [DOI: 10.7326/M20-1443](PMID: 32894695)
  • [3] Gallione CJ, Repetto GM, Legius E, et al. A combined syndrome of juvenile polyposis and hereditary haemorrhagic telangiectasia associated with mutations in MADH4 (SMAD4). Lancet. 2004;363(9412):852-859. [DOI: 10.1016/S0140-6736(04)15732-2](PMID: 15031030)
  • [4] Wooderchak-Donahue WL, McDonald J, O’Fallon B, et al. BMP9 mutations cause a vascular-anomaly syndrome with phenotypic overlap with hereditary hemorrhagic telangiectasia. Am J Hum Genet. 2013;93(3):530-537. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2013.07.004](PMID: 23972370)
  • [5] Eerola I, Boon LM, Mulliken JB, et al. Capillary malformation-arteriovenous malformation, a new clinical and genetic disorder caused by RASA1 mutations. Am J Hum Genet. 2003;73(6):1240-1249. [DOI: 10.1086/379793]
  • [6] Amyere M, Revencu N, Helaers R, et al. Germline loss-of-function mutations in EPHB4 cause a second form of capillary malformation-arteriovenous malformation (CM-AVM2) deregulating RAS-MAPK signaling. Circulation. 2017;136(11):1037-1048. [DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.116.026886](PMID: 28687708)
  • [7] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [8] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [9] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
  • [10] Ethics Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Use of preimplantation genetic testing for monogenic adult-onset conditions: an Ethics Committee opinion. Fertil Steril. 2024;122:607-611.

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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