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脳動静脈奇形(AVM)とは?原因遺伝子(KRAS)から最新治療・遺伝との関係まで遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

脳動静脈奇形(AVM)は、動脈と静脈が毛細血管を挟まずに直接つながってしまう血管の異常です。まれな病気ですが、50歳未満の若い世代に起こる脳出血の主要な原因のひとつであり、決して他人事ではありません。かつては「生まれつきの動かない構造異常」と考えられていましたが、近年KRASという遺伝子の体細胞変異が引き金であることが分かり、病気の見方そのものが大きく変わりました。本記事では、症状や出血リスク、遺伝との関係、そして手術・放射線・血管内治療から最新の分子標的薬まで、遺伝専門医の視点でやさしく解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
🧬 病態・遺伝・診断・治療
臨床遺伝専門医監修

Q. 脳動静脈奇形(AVM)とは何ですか?まず結論だけ知りたいです

A. AVMは、動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながり、「ナイダス」と呼ばれる異常な血管のかたまりをつくる病気です。高い圧力の動脈血が本来低圧であるべき静脈に直接流れ込むため、血管の壁がもろくなり、脳出血やてんかん発作の原因になります。近年、そのかなりの割合で、KRASを中心とするRAS/MAPK経路の体細胞変異が病変から検出されることが分かってきました。病変限定の体細胞変異が原因である場合、その変異自体が子どもへ受け継がれることは通常なく、多くは孤発例として扱われます。

  • 病気の本体 → 動脈と静脈が直接つながった「ナイダス」。高圧の血流で血管壁がもろくなり出血しやすい
  • 主な原因 → 孤発例の多くで病変にKRASを中心とするRAS/MAPK経路の体細胞変異。BRAF変異も一部で見つかる
  • 遺伝するか → 病変限定の体細胞変異は子に受け継がれない。少数例はHHTなど遺伝性疾患の一部
  • 治療 → 手術・定位放射線治療・血管内治療を組み合わせる。未破裂例は慎重な適応判断が必要
  • 新しい展望 → MEK阻害剤など、原因経路をねらう薬物療法の臨床試験が進行中

🧬 脳動静脈奇形(AVM)の基本情報

項目 内容
疾患名 脳動静脈奇形(和名)/Brain Arteriovenous Malformation(英名)/略称 bAVM。脊髄に生じるものは脊髄動静脈奇形(SAVM)
主に関わる遺伝子 孤発例=KRAS・BRAF(体細胞変異)/遺伝性=ENG・ACVRL1(ALK1)・SMAD4(HHT)、RASA1・EPHB4(CM-AVM)
遺伝形式 多くは体細胞変異による孤発例(非遺伝性)/遺伝性症候群に伴う場合は常染色体顕性(優性)遺伝
頻度 10万人あたり約10〜18人(有病率約0.01〜0.05%)。若年成人の非外傷性脳出血の主要原因のひとつ
主な症状 脳出血に伴う急性症状/てんかん発作(約27%)/慢性頭痛/局所神経症状
診断の決め手 MRI・CT・脳血管造影(DSA)。近年はリキッドバイオプシーや血管内生検による分子診断も研究段階
鑑別すべき疾患 硬膜動静脈瘻(DAVF)/海綿状血管奇形(CCM)/発達性静脈異常(DVA)/脊髄動静脈奇形(SAVM)
再発・遺伝 体細胞変異型は原則遺伝しない/小児では治療後の再発が成人より多い(約10%)ため長期経過観察が必要
検査上の注意 HHT・CM-AVMなど生殖細胞系列変異は通常の採血(末梢血)で検査可能/一方、孤発例のKRAS/BRAF体細胞変異は末梢血DNAでは原則検出が難しく、病変組織などの解析が必要になる

各項目の根拠と詳しい解説は、本文の該当セクションをご覧ください。

1. 脳動静脈奇形(AVM)とは ─ 動脈と静脈をつなぐ「近道」ができる病気

AVMは、本来は毛細血管という細い網の目を通ってゆっくり流れるはずの血液が、その網目を飛ばして動脈から静脈へ一気に流れ込んでしまう病気です。読者ご自身やご家族が診断を受けた場合にまず知っておきたいのは、これは「血管の通り道の設計ミス」であって、がんのように増殖して転移する腫瘍ではない、という点です。

正常な血管では、心臓から送り出された高い圧力の動脈血は、毛細血管を通過するあいだに勢いがやわらげられ、低い圧力になってから静脈に入ります。ところがAVMでは、動脈と静脈がナイダス(nidus)と呼ばれる異常な血管のかたまりを介して直接つながっています。毛細血管という「抵抗」が欠けているため、高流量・高圧の動脈血が静脈へなだれ込みます[1]

📘 用語解説:ナイダス

ナイダスとは、ラテン語で「巣」を意味する言葉です。AVMでは、動脈と静脈をつなぐ異常に拡張した細い血管が毛玉のように絡み合った部分を指します。このナイダスが病気の本体であり、治療では「ナイダスをいかに完全に閉塞・切除するか」が目標になります。ナイダスの一部だけを閉じる不完全な治療は、かえって出血リスクを残すことがあります。

高圧の血流にさらされ続けた静脈は、動脈のように厚く変化し(静脈の動脈化)、血管の内側をおおう内皮細胞の働きが乱れ、壁がもろくなっていきます。この「もろさ」が積み重なった結果として起こる最も重大な合併症が、頭蓋内出血です[1]。AVMがこわいのは、この出血が起こるまで無症状のことが少なくないためです。

頻度としては、一般人口10万人あたり約10〜18人と推定される、まれな病気です[1]。ただしまれであっても、50歳未満の若い世代に起こる「けがによらない脳出血」の主要な原因のひとつであり、公衆衛生上は軽視できない位置を占めています。若くして脳出血を起こした場合、その背景にAVMが隠れていないかを確認することは、その後の人生設計にも関わる重要な意味を持ちます。

2. 症状と出血リスク ─ 「破裂したか」で見通しが大きく変わります

AVMの見通しを左右する最大の分かれ目は、過去に出血したことがあるかどうかです。一度も破裂していない未破裂のAVMと、すでに出血した既往のあるAVMとでは、その後の年間出血リスクが大きく異なります。

具体的には、未破裂のAVMの年間出血リスクは約1〜2.3%と推定されるのに対し、いちど出血したことのあるAVMでは約4.5〜4.8%へと上昇します[2]。この数字は、読者ご自身の状況を理解するうえでとても重要です。すでに出血を経験した方は再出血の予防が治療目的の中心になりますし、たまたま見つかった未破裂の方は、あわてて治療するのではなく、リスクとメリットを慎重に比較する時間があるということでもあります。

▼ 未破裂と破裂既往で異なる年間出血リスク

未破裂AVM

約1〜2.3%/年

まだ出血していない状態。治療は慎重に適応を判断

破裂既往のあるAVM

約4.5〜4.8%/年

再出血の予防が治療の主目的になる

出血以外の症状としては、てんかん発作が代表的です。AVM患者の約27%にみられ、特に側頭葉にある病変で多いことが知られています[2]。そのほか慢性的な頭痛や、手足の動かしにくさ・言葉の出にくさといった局所神経症状が現れることもあります。健康診断や別の理由で受けた頭部画像検査で、症状がまったくないまま偶然見つかる例も少なくありません。

なお、妊娠とAVMの関係については特別な配慮が必要です。妊娠に伴って出血リスクが上昇する可能性を示した研究がありますが、増加を認めなかった研究もあり、現在も結論は一定していません[3]。したがって、病変の既往出血・部位・静脈還流・関連する動脈瘤の有無などを踏まえ、妊娠前から脳神経外科と産科で個別に評価しておくことが重要です。一律に「妊娠すると危険」と考えるのではなく、ご自身の病変の条件に応じてリスクを見積もる、という姿勢が現実的です。

💡 「血流の奪い合い(スチール現象)」は本当か

かつては、AVMに血液が流れ込むことで隣の正常な脳が血流を奪われ(スチール現象)、手足の麻痺などが起こると広く信じられてきました。しかし152名を対象とした前向き研究では、出血によらない進行性の神経症状はわずか1.3%と極めてまれで、神経症状のある人とない人で供給動脈の血流速度や圧に差はありませんでした[4]。現在は、純粋な血流の奪い合いよりも、静脈のうっ滞による局所的な圧の上昇や微小な出血が症状の主因と考えられています。「AVMがあるだけで脳が酸欠になる」と過度に心配する必要はない、という点は知っておくとよいでしょう。

3. 原因遺伝子KRAS ─ 「静かな構造異常」から「動く病気」へのパラダイムシフト

AVMの原因についての理解は、この10年で大きく変わりました。結論から言うと、孤発性AVMのかなりの割合で、KRASを中心とするRAS/MAPK経路の体細胞変異が病変から検出されることが分かってきました。報告される検出率には幅があり、後で述べるように、メタ解析ではKRAS約55%、より高感度の解析ではさらに高い割合が報告されています。いずれにせよ、これは病気の見方そのものを変える発見でした。

かつてAVMは、胎生4〜8週の血管ができる過程での異常な停止に由来する「生まれつきの、動かない構造異常」だと考えられていました[2]。ところが、成人になってから新たにAVMができる例や、いちど完全に閉塞したはずのAVMが再発する例が数多く報告され、この「静かな構造異常」というモデルには疑問が投げかけられました。現在では、AVMは血流のストレス・血管新生シグナル・炎症が複雑に絡み合い、生涯にわたって変化し続ける「生物学的に活発な病気」として捉え直されています[5]。この転換は、後で述べる薬による治療という新しい可能性に直接つながっています。

📘 用語解説:体細胞変異とは

遺伝子の変化には、生まれる前から全身の細胞に存在する「生殖細胞系列変異」と、生まれた後に体の一部の細胞だけで新たに生じる「体細胞変異」の2種類があります。前者は子どもに受け継がれますが、後者は病変の細胞だけにあり、原則として子どもには遺伝しません。AVMのKRAS変異は後者の体細胞変異です。この違いを理解することは、「自分の病気が家族に遺伝するのか」という疑問に答える出発点になります。体細胞変異と生殖細胞系列変異のちがいもあわせてご覧ください。

2018年以降、次世代シーケンシング(NGS)という高精度な解析技術を使った研究で、孤発性AVMの病変内皮細胞に、がん遺伝子として有名なKRASやBRAFの活性化変異が高頻度に存在することが同定されました[5]。1726例をまとめたメタアナリシスによれば、孤発性AVMにおけるKRAS変異の頻度は約55%、BRAF変異は約7.5%と推定されています[6]。ただしこの割合は検出方法に左右され、超高感度のデジタルPCRを併用した研究では、脳AVMの81%、脊髄も含めると87%からKRAS/BRAF変異が検出されたと報告されています[7]。つまり「孤発性AVMのかなりの割合がこの経路の変異で説明できる」という理解が妥当で、全例がKRAS/BRAFで説明されたと確定したわけではありません。これらの変異は細胞内のRAS/MAPKという情報伝達経路を過剰に活性化させ、血管を無秩序につくるプログラムや、後述する内皮間葉移行を直接駆動します。

▼ KRAS変異がAVMを引き起こすまでの流れ

① 遺伝子

内皮細胞でKRAS体細胞変異が発生

② 経路

RAS/MAPK経路が過剰に活性化

③ 細胞変化

内皮間葉移行(EndMT)と壁細胞の喪失

④ 結果

血管壁がもろくなり出血しやすくなる

ここで鍵になるのが内皮間葉移行(EndMT)という現象です。変異した内皮細胞は、本来もっているべき「動脈・静脈らしさ」を失い、細胞どうしをつなぐ密着結合やバリア機能を手放して、間葉系という別の性質の細胞のように変化していきます[5]。同時に、血管壁を裏から支える周皮細胞や平滑筋細胞の呼び込みがうまくいかなくなり、壁が薄く不安定になります。ここに炎症細胞が入り込み、血液脳関門(脳の血管の関所)を壊すことで、微小な出血から本格的な破裂へと進む悪循環が形成されます[1]

興味深いのは、病変全体のごく一部の内皮細胞しか変異を持っていないのに、病変全体が大きく不安定になる点です。変異細胞が放出する小胞(エクソソーム)が、周囲の正常な細胞にまで異常な変化を伝播させることが示唆されており、これが「わずかな変異細胞で病変全体が広がる」仕組みの一端と考えられています[5]。この「変異細胞はわずか」という事実は、後で述べる診断や検査の難しさにも直結します。

4. AVMは遺伝するのか ─ 多くは「遺伝しないタイプ」です

患者さんとそのご家族が最も知りたいのは、おそらく「この病気は子どもや兄弟に遺伝するのか」という点でしょう。結論として、病変限定の体細胞変異が原因であるタイプでは、その変異自体が次の世代に受け継がれることは通常ありません。ただし、少数例に遺伝性の背景を持つタイプがあり、それを見分けることが遺伝診療の役割です。

前の章で見たように、孤発性AVMのKRAS変異やBRAF変異は病変の細胞だけで生じた体細胞変異です。全身の設計図である生殖細胞系列の遺伝子は正常なので、精子や卵子を通じて子どもに伝わることはありません。この意味を、ご家族の状況に置き換えて理解しておくことが大切です。孤発性AVMで病変限定の体細胞変異が原因である場合、その変異自体がお子さんへ受け継がれることは通常ありません。明らかなHHTやCM-AVMといった遺伝性の背景がなければ、通常は家族性の病気としては扱わない、というのが基本的な考え方です。

🔎 遺伝学的検査を検討したほうがよいサイン

次のような特徴がある場合は、遺伝性の背景が隠れている可能性があり、遺伝カウンセリングや遺伝学的検査を検討する価値があります。

  • 血管の病変が複数(多発性)ある
  • AVMや脳出血の家族歴がある
  • くり返す鼻出血や、唇・舌・指先の毛細血管拡張がある(HHTを疑う所見)
  • 肺や肝臓にも動静脈の異常が指摘されている

少数例では、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT、別名オスラー・ウェーバー・レンデュ症候群)や、毛細血管奇形-動静脈奇形(CM-AVM)症候群といった、常染色体顕性(優性)遺伝をとる病気の一部としてAVMが発症します[2]。AVM患者側から見たHHTの頻度は、大規模な紹介施設のデータでも数%程度と報告されています。これらは生殖細胞系列変異が原因なので、家族内で受け継がれる可能性があります。次の章で詳しく見ていきます。

CM-AVM症候群では、RASA1やEPHB4という遺伝子の生殖細胞系列変異が原因となります。この場合も、変異を1つ受け継いだうえで、体の一部で二つ目の変化(セカンドヒット)が加わることで病変が形成されると考えられており、「遺伝的な素因」と「後天的なきっかけ」の両方が関わります。遺伝形式を正しく理解することが、血縁者への影響を考えるうえでの土台になります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「遺伝子の病気」=「遺伝する病気」ではありません】

「KRAS遺伝子が原因」と聞くと、多くの方が「では家族に遺伝するのか」と身構えられます。けれど、遺伝子が関わる病気のすべてが子孫に伝わるわけではありません。AVMのKRAS変異は、生まれた後に病変の場所でだけ起きた変化であり、全身の細胞や生殖細胞には及んでいません。ここを混同したまま不安を抱え続けるのは、とてももったいないことだと考えています。

大切なのは、「体細胞変異による孤発例」なのか、「HHTなど遺伝性疾患の一部」なのかを見極めることです。前者であれば血縁者の心配は原則不要ですし、後者であれば血縁者の検査や早期発見という次の一手が見えてきます。遺伝カウンセリングでは、この見極めを一緒に整理し、必要以上に不安を広げず、必要なところにはきちんと備える、という考え方をお伝えしています。

5. HHT(オスラー病)との関係 ─ 遺伝性AVMの代表格

遺伝性のAVMを考えるうえで最も重要なのが、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)です。これは常染色体顕性(優性)遺伝をとる病気で、脳のAVMだけでなく、肺・肝臓の血管異常やくり返す鼻出血を特徴とします。AVMの背景にHHTがあるかどうかは、血縁者の健康管理にも直接関わるため、見逃せないポイントです。

HHTは、TGF-β/BMPという血管の情報伝達経路に関わる遺伝子、すなわちENG(HHT1型)、ACVRL1/ALK1(HHT2型)、SMAD4などの生殖細胞系列のヘテロ接合性機能喪失変異によって起こります[8]。ENGとACVRL1の変異で、HHTの最大96%を説明できると報告されています[9]。これらの遺伝子を調べるHHT遺伝子検査は、診断の確定と血縁者のリスク評価に役立ちます。

▼ HHTの型によって脳AVMの合併率が異なる

HHT1型(ENG変異)

13.4%

脳AVMを合併する割合が高い

HHT2型(ACVRL1変異)

2.4%

HHT1型より脳AVMの合併は少ない

HHT患者の脳AVM合併率は全体で約10%とされ、なかでもHHT1型では13.4%、HHT2型では2.4%と、型によって大きく異なることが報告されています[10]。これは読者にとって具体的な意味を持ちます。もしHHTと診断され、その型が分かれば、脳のスクリーニング検査をどの程度重視すべきかの目安になるのです。

HHTでAVMが生じる仕組みとしては「ツーヒット仮説」が提唱されています。生まれつきの変異(ファーストヒット)だけでは病変ができず、そこに血管新生の刺激や局所的な体細胞変異(セカンドヒット)が加わってはじめて病変が形成される、という考え方です[8]。つまり、遺伝性のAVMであっても、後天的なきっかけが引き金を引いているという点で、孤発例と共通の生物学を持っています。

HHTが疑われる場合や、家族性の脳海綿状血管奇形(CCM)など他の遺伝性血管疾患との区別が必要な場合には、複数の関連遺伝子をまとめて調べる血管奇形NGSパネル検査が選択肢になります。よく似た画像所見でも原因遺伝子が異なると、家族への影響も経過も変わってきます。名前の似た脳海綿状血管奇形(CCM)とは原因遺伝子も遺伝形式も別であり、正確な鑑別が出発点になります。

6. 手術せずに病変遺伝子を調べる研究 ─ リキッドバイオプシーと血管内生検

AVMの遺伝子診断には、これまで大きなハードルがありました。KRAS変異は病変のごく一部の内皮細胞にしかなく、手術で組織を取ってこないと調べられなかったのです。近年、この壁を乗り越えようとする低侵襲な手法の研究が進んでいます。ただし、これらは2026年時点でいずれも研究段階であり、日常診療の標準的な検査として確立したものではありません。将来の可能性として知っておく、という位置づけで読んでいただくのが正確です。

なぜ診断が難しいのかを、まず理解しておきましょう。KRAS変異を持つ細胞の割合を示すバリアントアレル頻度(VAF)は非常に低く、多くの場合1%未満(報告では0.03〜12.3%)にとどまります[5]。周囲の壁細胞や間質細胞は遺伝的に正常なので、病変全体をすりつぶして調べても変異が薄まってしまうのです。だからこそ、超高感度の検出技術が必要になります。

📘 用語解説:リキッドバイオプシー

リキッドバイオプシー(液体生検)とは、組織を手術で取るのではなく、血液など体液に漏れ出した微量のDNA(セルフリーDNA)を調べて、病変の遺伝子情報を推定する手法です。病変の細胞が死ぬときに血流へ放出されるDNAを、超高感度のデジタルPCRやNGSでとらえます。がんの分野で先行して発展した技術が、血管奇形にも応用されつつあります。

一つ目のアプローチが、このリキッドバイオプシーです。AVMから流れ出る導出静脈の血液を調べた研究では、セルフリーDNAからKRAS変異を同定できたと報告されています[11]。将来的には、手術に頼らずに病変の遺伝子情報を得られる可能性が期待されますが、現時点では研究段階であり、日常診療で行える検査ではありません。

二つ目が血管内生検です。脳血管造影の最中にマイクロカテーテルを病変まで進め、コイルやステント、ガイドワイヤーを血管の内壁に接触させて細胞を直接採取します[12]。採れた細胞から内皮細胞を選び出し、単一細胞レベルでの遺伝子解析を行うことで、MAPKシグナルの過剰活性化や炎症関連遺伝子の変化を明らかにできます。いずれもまだ研究段階の技術ですが、「開頭手術をしなくても病変の性質を分子レベルで知る」という方向は、今後の個別化医療の基盤になると期待されています。

7. 重症度の評価 ─ 手術の難しさを点数で見える化する

AVMの治療方針を決めるとき、医師は「手術がどれくらい難しく、危険か」を客観的に評価します。そのための物差しがグレーディングシステムです。読者にとっては、自分のAVMがどのグレードで、なぜその治療が勧められる(あるいは勧められない)のかを理解する手がかりになります。

最も基本になるのが、1986年に提唱されたSpetzler-Martin(SM)グレーディングシステムです[13]。これは、ナイダスの大きさ・深部静脈が関わるか・隣接する脳が「雄弁野(運動や言語など重要な機能を担う領域)」かどうかの3点を点数化し、グレードI〜Vに分類するものです[2]。点数が低いほど手術のリスクが低く、高いほど難易度と危険性が上がります。

▼ Spetzler-Martinグレーディングの3つの評価軸

📏

ナイダスの大きさ

小 1点/中 2点/大 3点

🧠

脳の雄弁性

非雄弁 0点/雄弁 1点

🩸

静脈ドレナージ

表在性のみ 0点/深部を含む 1点

ただしSMスケールには限界がありました。患者さんの年齢や過去の出血歴が考慮されておらず、特に中間のグレードIIIの予後予測が難しかったのです[14]。そこで2010年、患者の年齢・出血歴・ナイダスの形(コンパクトかびまん性か)を加えて評価するSupplemented Spetzler-Martin(Supp-SM)グレーディングが導入されました[15]。1009名の手術患者を対象とした多施設共同研究で、Supp-SMは従来のSM単独よりも術後の神経学的転帰を有意に精度よく予測できることが検証されています[16]

これらのスコアは、単なる分類ではなく、とくに外科的切除を検討するときの手術リスクを評価するための物差しです。ここは誤解されやすいのですが、Spetzler-Martinスコアは「出血しやすさ(自然経過のリスク)」を表す点数ではなく、あくまで「手術で取るとしたら、どれくらい難しく危険か」を見積もるためのものです。合算スコアが低ければ外科的切除のリスクは許容範囲内とされ、高ければ手術以外の選択肢(放射線治療・血管内治療・経過観察)がより慎重に検討されます。ご自身のAVMがどう評価されているかを主治医に確認しておくと、なぜその治療(あるいは経過観察)が勧められているのか、背景を理解しやすくなります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「数字」は不安を煽るためではなく、見通しを持つためにあります】

この記事には、出血リスクやグレードなど、たくさんの数字が出てきます。数字を見ると、かえって不安が大きくなる方もいらっしゃるかもしれません。けれど私は、これらの数字は「怖がらせるため」ではなく、「見通しを持つため」にあると考えています。年間何%というリスクが分かれば、あわてて決めるべきなのか、時間をかけて考えてよいのかが見えてきます。

グレーディングも同じです。点数が高いから絶望的、というものではなく、「この病変にはどの治療が向いているか」を医師とあなたが同じ土俵で話すための共通言語です。数字を正確にお伝えし、その意味を一緒に読み解くこと。それが、納得して次の一歩を選んでいただくための土台になると、私は考えています。

8. 治療の選び方 ─ 3つの武器を組み合わせる「集学的アプローチ」

AVMの治療の目的は、出血を予防し、脳の機能を守ることです。手段は大きく分けて、外科的切除・定位放射線治療・血管内治療の3つがあり、これらを病変の性質に応じて組み合わせる集学的アプローチが現在の主流です。どれを選ぶかは、グレードや部位、そして「未破裂か破裂既往か」によって変わります。

未破裂AVMの扱いをめぐっては、世界的に大きな議論を呼んだ研究があります。ARUBA試験です[17]。この多施設ランダム化比較試験では、未破裂AVM患者を「内科的治療(経過観察)のみ」の群と「内科的治療+介入治療」の群に分けて比較しました。平均約50ヶ月の追跡の結果、死亡または症候性脳卒中の発生率は内科群のほうが有意に低く、試験は早期に中断されました[18]

▼ ARUBA試験:死亡または症候性脳卒中の発生率(100人・年あたり)

内科的治療のみ3.39件
内科的治療+介入治療12.32件

※未破裂AVMを対象とした試験。破裂既往のあるAVMには当てはまりません。

ただし、この試験には専門家から強い批判もあります。合併症リスクの異なる3つの治療法が一括りにされ、根治を目指さない不十分な部分塞栓術が多く含まれていたこと、追跡期間が約4年と短く、若い患者が生涯背負う累積出血リスクと比較するには不十分であることなどが指摘されています[19]。結果としてARUBA試験は、「未破裂AVMを安易に治療すべきではない」という警鐘を鳴らす一方で、Supp-SMスケールなどで正確にリスクを層別化し、根治可能で手術リスクの低い低グレード病変を慎重に選んで治療するという個別化医療の流れを加速させました[18]。この点は、未破裂AVMと言われた読者にとって重要です。「すぐ治療」でも「絶対に放置」でもなく、あなたの病変の条件次第で最適解が変わる、ということです。

マイクロサージャリー(外科的切除)は、表在性で雄弁野を避けた低グレードのAVMに対し、その場で確実に出血リスクを取り除ける方法です。近年は術中にインドシアニングリーン蛍光造影を併用して血流を可視化し、より安全な切除が可能になっています[20]

切除が難しい深部や雄弁野の小〜中規模病変には、ガンマナイフなどを用いた定位放射線治療(SRS)が確立した選択肢です[21]。放射線で血管の内皮を傷つけ、1〜3年の潜伏期間をかけてナイダスを徐々に閉塞させます。閉塞率は70〜85%に達しますが、閉塞が完了するまでの潜伏期間中は出血リスクが残るという限界があります[21]。巨大なAVMでは放射線壊死を減らすため、照射を数回に分ける工夫も進んでいます。

血管内治療(塞栓術)は、カテーテルを通じて液体の塞栓物質でナイダスを詰める方法で、単独の根治治療としても、手術前の補助としても使われます。使う液体塞栓物質にはそれぞれ特性があり、瞬時に固まる接着性のn-BCAや、ゆっくり固まり複雑な形にも対応できる非接着性のOnyx・Squid・PHILなどが状況に応じて使い分けられます[22]。近年は、術後にX線での見えかたが徐々に消えることで残った病変を評価しやすくする新しい塞栓物質(ihtObtura)も登場しています。初期の単施設研究(first-in-human)では高い完全閉塞率が報告されていますが、これは脳AVM 42例(うち約9割がSpetzler-MartinグレードIII〜IVという特殊な集団)を対象とした少数例の解析であり、そのまま一般化できる数字ではありません[23]

9. 分子標的薬という新しい可能性 ─ 「原因の経路」をねらう薬

AVM治療の最も先進的な話題が、外科的介入を補ったり置き換えたりしうる分子標的治療です。まだ研究・臨床試験の段階ですが、切除できない病変を抱える方にとって、将来の新しい選択肢として期待が寄せられています。ここは「今すぐ受けられる治療」ではなく「開発が進む未来の話」として読んでいただくのが正確です。

前の章で、AVMの多くがKRAS変異によるRAS/MAPK経路の過剰活性化で起こると述べました。この経路は、がん治療で使われるMEK阻害剤(トラメチニブなど)がねらう標的そのものです。すでに承認されているがん治療薬を、別の病気に転用する「ドラッグリポジショニング」の発想が生まれました。マウスモデルでは、トラメチニブの投与によりMAPKシグナルが抑えられ、病的な内皮間葉移行が正常化し、脳出血が減少することが示されています[24]

ヒトでの報告も出始めています。皮膚と脊髄に血管の異常をきたすCobb症候群という難治性の病態で、KRAS変異を持つ2名の患者にトラメチニブを投与し、症状の改善が得られたという報告があります[25]。さらに、MAPK阻害剤とVEGF阻害剤を併用すると相乗効果が得られることもモデル実験で示されています[26]。臨床試験の状況は流動的です。脳AVMそのものを対象としたトラメチニブの試験も計画されましたが、登録がないまま中止されています。一方で、RAS/MAPK経路の異常をもつ血管奇形全般(頭蓋外AVMを含む)に対しては、トラメチニブやミルダメチニブといったMEK阻害薬の臨床試験が現在も進められています。脳AVMへの応用は、こうした関連領域の成果を踏まえて今後検討が進む段階です。切除や放射線治療が難しい病変を抱える患者さんやご家族にとって、こうした薬の研究は将来の選択肢につながる希望ですが、いま過度に期待するのではなく、現時点で確立した治療とのバランスを冷静に見ておくことが大切です。

💡 「もう薬で治る」と早合点しないために

分子標的薬の話題は希望をもたらしますが、現時点でこれらは臨床試験や少数例の報告の段階であり、確立した標準治療ではありません。効果や安全性がまだ十分に検証されていないため、現在のAVM治療の中心はあくまで手術・放射線・血管内治療です。研究の進展を冷静に見守りつつ、目の前の治療方針は主治医とよく相談することが大切です。なお、血管の炎症を抑えて壁を安定させる目的で、ミノサイクリンなどの抗炎症薬を長期投与するアプローチも研究されており、血管安定化療法という新しい方向性も視野に入りつつあります[5]

10. 脊髄AVMと、まぎらわしい関連疾患

AVMは脳だけでなく脊髄にも生じます。また、画像で似ていても原因や経過が異なる関連疾患がいくつかあり、正しく区別することが適切な治療につながります。ご自身の診断名が「AVM」なのか、それとも「DAVF」や「海綿状血管奇形」なのかによって、遺伝の考え方も治療も変わってきます。

脊髄血管奇形は、脊髄内の病変のなかでは約3〜4%を占めるにすぎませんが、脊髄の虚血・静脈うっ滞・出血によって、麻痺や感覚障害、膀胱直腸障害といった深刻な神経症状を引き起こすことがあります[27]。ここで注意したいのは、「脊髄血管奇形」は一つの病気ではなく、複数の病型をまとめた呼び名だという点です。脊髄の実質内にナイダスをつくる脊髄動静脈奇形(intramedullary AVM)のほかに、硬膜の部分でシャントを生じる脊髄硬膜動静脈瘻(spinal DAVF)などがあり、これらは発症の仕組みも治療方針も異なります[28]。歴史的にはこれらをまとめて分類する体系も使われてきましたが、実務上は「脳のAVMと同じ性質の実質内病変」と「後天的に生じるDAVF」を分けて理解するほうが、ご自身の診断名の意味をつかみやすくなります。

📘 用語解説:硬膜動静脈瘻(DAVF)との違い

AVMが体細胞変異に由来する脳実質内の先天的要素を持つ病変であるのに対し、硬膜動静脈瘻(DAVF)は「後天的に」生じる病的なシャントです。静脈洞血栓症・外傷・手術などをきっかけに、局所的な静脈の圧上昇への反応として発症すると考えられています[29]。DAVFの出血リスクは、皮質静脈への逆流があるかどうかで大きく変わり、逆流のないタイプは良性ですが、逆流を伴うタイプでは年間出血リスクが跳ね上がるため積極的な治療が必要になります[30]。原因も遺伝の考え方も異なるため、AVMとの区別は治療方針を決める出発点です。

また、名前が似ている海綿状血管奇形(CCM)は、AVMとは別の病気です。CCMには家族性のタイプがあり、原因遺伝子や遺伝形式もAVMとは異なります。画像所見が紛らわしいことがあるため、遺伝性が疑われる場合には、遺伝子検査を含めた正確な鑑別が、ご家族の健康管理のためにも重要になります。

なお、小児のAVMには成人と異なる特徴があります。初発症状として出血を呈する割合が高く、治療で完全に消えたと確認された後の再発が成人より多く(約10%)報告されているため、小児例では治療後も長期的な画像フォローアップが欠かせません[5]。お子さんがAVMと診断された場合、「治療して終わり」ではなく「経過を見続ける」という視点を持っておくことが、再発の早期発見につながります。

📌 このページを読んだあなたへ

AVMという言葉を調べてこのページにたどり着いた方は、いくつかの状況が考えられます。ご自身や家族がAVMと診断された方未破裂のAVMが偶然見つかり治療すべきか迷っている方遺伝するのかどうかを心配している方。それぞれの状況に応じて、次に確認しておくとよい観点を挙げます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 脳動静脈奇形(AVM)は遺伝しますか?

AVMの多くは、病変の細胞だけで生じたKRASなどの体細胞変異が原因の孤発例で、その変異自体が子どもや兄弟に受け継がれることは通常ありません。ただし少数例は、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)や毛細血管奇形-動静脈奇形(CM-AVM)症候群といった常染色体顕性(優性)遺伝の病気の一部として発症します。多発性の病変、家族歴、くり返す鼻出血や皮膚粘膜の毛細血管拡張などがある場合は、遺伝学的検査や遺伝カウンセリングを検討する価値があります。

Q2. 未破裂のAVMが偶然見つかりました。すぐに治療すべきですか?

一概には言えません。未破裂AVMの年間出血リスクは約1〜2.3%で、破裂既往のあるAVM(約4.5〜4.8%)より低いとされています。ARUBA試験では、未破裂AVMに対する画一的な介入は必ずしも有益でないという結果が示された一方、この試験には方法論上の批判もあります。現在は、Supplemented Spetzler-Martinスケールなどでリスクを正確に評価し、根治可能で手術リスクの低い低グレード病変を慎重に選んで治療する、という個別化した考え方が主流です。あなたの病変の条件によって最適解は変わりますので、主治医とよく相談してください。

Q3. AVMの原因がKRAS遺伝子と聞きました。がんになるのですか?

KRASはがんでもよく変異する遺伝子として知られていますが、AVMでKRAS変異があってもがんになるわけではありません。同じ遺伝子の変異でも、生じる細胞の種類や場所によって現れる病気は異なります。AVMの場合は血管の内皮細胞で変異が起こり、血管の異常なつながりという形で現れます。がん化を心配する必要はない、というのが基本的な理解です。ご不安な点は遺伝カウンセリングで整理することができます。

Q4. 血液の遺伝子検査でAVMの原因変異は見つかりますか?

検査の種類を分けて考える必要があります。HHTやCM-AVMといった遺伝性の背景を調べる生殖細胞系列の検査は、通常の採血(末梢血)で行えます。一方、孤発性AVMのKRAS/BRAF体細胞変異は病変の内皮細胞にしか存在せず、しかもその割合はごくわずか(多くは1%未満)のため、通常の末梢血DNAでは原則として検出が困難です。研究では、手術で得た病変組織や、病変から流れ出る導出静脈の血液を用いて検出されています。つまり「普通の採血が無意味」なのではなく、調べたい対象によって適切な検体が異なる、ということです。血液検査が陰性でも体細胞変異による病気を否定するものではありません。

Q5. AVMに効く薬はありますか?

現在、原因経路であるRAS/MAPKをねらうMEK阻害剤(トラメチニブなど)の研究が進んでおり、マウスモデルや少数のヒト症例で有望な結果が報告されています。ただし、これらはまだ臨床試験や症例報告の段階であり、確立した標準治療ではありません。現時点のAVM治療の中心は、外科的切除・定位放射線治療・血管内治療です。薬物療法は「開発が進む将来の選択肢」として理解し、実際の治療方針は主治医とご相談ください。

Q6. てんかん発作がありますが、AVMが原因でしょうか?

AVMはてんかん発作の原因になりえます。AVM患者の約27%に発作がみられ、特に側頭葉にある病変で多いことが知られています。ただし、てんかんの原因は多岐にわたりますので、AVMがあるからといって発作がすべてAVM由来とは限りません。発作の管理と、AVMそのものへの治療は別々に検討されることが多く、神経内科・脳神経外科での評価が必要です。

Q7. AVMと海綿状血管奇形(CCM)はどう違うのですか?

AVMは動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながる病変で、高流量のシャントを伴います。一方、海綿状血管奇形(CCM)は低流量の血管の集まりで、原因遺伝子も遺伝形式も異なります。CCMには家族性のタイプがあり、遺伝することがあります。画像所見が紛らわしいことがあるため、遺伝性が疑われる場合には遺伝子検査を含めた正確な鑑別が重要です。診断名によって家族への影響も治療も変わってきます。

Q8. 妊娠を考えていますが、AVMがあると危険ですか?

妊娠に伴って出血リスクが上昇する可能性を示した研究がありますが、増加を認めなかった研究もあり、現在も結論は一定していません。したがって「妊娠すると必ず危険になる」と単純には言えません。大切なのは、病変の既往出血・部位・静脈還流・関連する動脈瘤の有無などを踏まえて、妊娠前から個別にリスクを評価しておくことです。妊娠を計画されている場合は、あらかじめ脳神経外科と産科で情報を共有し、連携した管理計画を立てておくことをおすすめします。

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参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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