InstagramInstagram

ヌーナン症候群・RAS病(RASopathies)遺伝子パネル検査|コステロ症候群・CFC症候群など31遺伝子を一度に

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

ヌーナン症候群・RAS病(RASopathies)遺伝子パネル検査

ヌーナン症候群の遺伝子検査は、細胞の中のRAS/MAPK経路という「増える・育つ」の合図を伝えるしくみに関わる遺伝子を調べて、診断を確かめる検査です。当院の「ヌーナン症候群・RAS病(RASopathies)遺伝子パネル検査」では、ヌーナン症候群だけでなく、症状がよく似ているコステロ症候群・CFC症候群・多発性黒子を伴うヌーナン症候群・神経線維腫症1型などに関わる31の遺伝子を、一度に調べます。わかった遺伝子によって、心臓・成長・出血しやすさ・がんの見張り方が変わり、ご家族の確率や次の妊娠の選び方も具体的になります。このページでは、どんなときに検査を考えるか、わかったら何ができるか、遺伝のしかたと妊娠中に調べる方法までを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

ヌーナン症候群・コステロ症候群・CFC症候群など、RAS/MAPK経路の病気(RAS病)に関わる31遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。見分けたいほかの病気の遺伝子も入っています。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

顔つき・心臓(肺動脈弁狭窄・肥大型心筋症)・低身長が気になるお子さん、大人になって「軽いヌーナン症候群かも」と言われた方、妊娠中にNT肥厚やむくみを指摘され染色体は正常だった方、ご家族にRAS病の方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の粘膜などで、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療で受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、遺伝子に合わせた見張りの計画、ご家族の検査、次の妊娠での出生前診断まで考えられます。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

31遺伝子を一度に調べ、結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明します。妊娠中の確定検査(羊水検査・絨毛検査)も院内で受けられます。

お問い合わせはこちら | CFC症候群パネルとの違い

1. ヌーナン症候群・RAS病(RASopathies)遺伝子パネル検査とは

この検査は、症状が重なっていて見た目や診察だけでは区別しにくいRAS病を、原因の遺伝子から見分けるために、31の遺伝子を一度に調べる検査です。ヌーナン症候群は、生まれつきの心臓の病気・低身長・特徴のある顔つきなどを伴う病気で、生まれる赤ちゃん1,000〜2,500人に1人と推定されています[2]。

ヌーナン症候群の原因になる遺伝子は1つではありません。米国国立医学図書館の解説では、PTPN11遺伝子が全体の約半分、SOS1遺伝子が10〜15%、RAF1遺伝子とRIT1遺伝子がそれぞれ約5%を占め、15〜20%は原因がまだわからないとされています。厚生労働省の指定難病の資料でも、わかっている遺伝子をすべて調べても見つかるのは約80%とされています(2026年10月時点で確認)。「どの遺伝子か」によって、気をつける合併症が変わるため、1つずつ順番に調べるより、まとめて調べる意味があります。

🧪 検査の概要

項目 内容
調べる遺伝子 RAS/MAPK経路の病気と、見分けたい病気に関わる31遺伝子(第9章に一覧)
調べる変化 遺伝子の配列の変化(塩基配列)と、欠失・挿入(どちらも料金に含まれます)
結果までの期間 2〜3週間(至急オプションで約7日短くなります)
検体 血液・抽出DNA・頬の粘膜・唾液
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

RAS病(RASopathies)とは:同じ経路でつながる病気のグループ

RAS/MAPK経路は、細胞の外から届いた「増えなさい・育ちなさい」という合図を、細胞の中でリレーのように伝えていくしくみです。このリレーに関わる遺伝子のどれかに生まれつきの変化があり、合図が強く伝わりすぎることで起こる病気をまとめて、RAS病(RASopathies、ラソパチー)と呼びます。

ヌーナン症候群・コステロ症候群・CFC症候群・多発性黒子を伴うヌーナン症候群・神経線維腫症1型などは、どれもこのグループに入ります。同じリレーのどこが変わったかで病気の名前は変わりますが、心臓・顔つき・成長・皮膚などに似た特徴が出るため、とくに赤ちゃんのうちは見分けがつきにくいことがあります。経路のしくみはMAPK経路の解説もご覧ください。

2. このパネルで調べる病気と原因遺伝子

このパネルでは、ヌーナン症候群とその仲間の病気、そして症状が似ていて見分けたい病気の遺伝子を、まとめて調べます。下の表は、遺伝子ごとに主な病気と遺伝のしかたをまとめたものです。病気の名前・遺伝子の名前から、それぞれの詳しい解説ページへ進めます。

🧬 このパネルの31遺伝子と主な病気

遺伝子 主な病気 遺伝のしかた
A2ML1 ヌーナン症候群(根拠は限られ、ClinGenでは関連に疑問ありと評価) 顕性
ACTB バライツァー・ウィンター症候群1型 顕性
ACTG1 バライツァー・ウィンター症候群2型/非症候群性難聴 顕性
BRAF CFC症候群1型/ヌーナン症候群7型/多発性黒子を伴うヌーナン症候群3型 顕性
CBL CBL遺伝子変異を伴うヌーナン症候群様疾患/若年性骨髄単球性白血病(JMML) 顕性
CCNK 眼間開離と特徴的な顔つきを伴う知的発達症(根拠は限られる) 顕性
CDC42 竹内-小崎症候群 顕性
EPHB4 毛細血管奇形-動静脈奇形症候群2型 顕性
FGD1 アースコグ・スコット症候群 X連鎖
HRAS コステロ症候群 顕性
KAT6B ゲニトパテラー症候群/SBBYSS症候群 顕性
KRAS ヌーナン症候群3型/CFC症候群2型 顕性
LZTR1 ヌーナン症候群10型(顕性)/ヌーナン症候群2型(潜性) 顕性・潜性
MAP2K1 CFC症候群3型 顕性
MAP2K2 CFC症候群4型 顕性
MAP3K8 病気との関係を研究中の遺伝子 研究中
MRAS ヌーナン症候群11型 顕性
NF1 神経線維腫症1型/神経線維腫症-ヌーナン症候群/ワトソン症候群 顕性
NRAS ヌーナン症候群6型 顕性
PPP1CB 成長期毛が抜けやすいヌーナン様症候群2型 顕性
PTPN11 ヌーナン症候群1型/多発性黒子を伴うヌーナン症候群1型 顕性
RAF1 ヌーナン症候群5型/多発性黒子を伴うヌーナン症候群2型 顕性
RASA1 毛細血管奇形-動静脈奇形症候群1型 顕性
RASA2 ヌーナン症候群(根拠は限られる) 顕性
RIT1 ヌーナン症候群8型 顕性
RRAS ヌーナン症候群に近い病気(報告は少ない) 顕性
SASH1 遺伝性汎発性色素異常症1型(顕性)/色素異常・掌蹠角化症・皮膚がんを伴う病気(潜性) 顕性・潜性
SHOC2 成長期毛が抜けやすいヌーナン様症候群1型 顕性
SOS1 ヌーナン症候群4型 顕性
SOS2 ヌーナン症候群9型 顕性
SPRED1 レジウス症候群 顕性

※遺伝子と病気の対応・遺伝のしかたは、遺伝子と病気の関係をまとめた国際データベースGenCC(ClinGenなどの評価を収載)と、ClinGenのRAS病専門家パネルの評価[6]で確かめました(2026年10月時点)。「根拠は限られる」は、病気との関わりを示す報告がまだ少ない遺伝子です。

ヌーナン症候群(1〜11型)と、成長期毛が抜けやすいタイプ

ヌーナン症候群は、原因の遺伝子ごとに「1型」「2型」…と番号がついています。もっとも多いのはPTPN11遺伝子によるヌーナン症候群1型で、SOS1遺伝子による4型、RAF1遺伝子による5型、RIT1遺伝子による8型が続きます。RAF1遺伝子やRIT1遺伝子の変化では、心臓の筋肉が厚くなる肥大型心筋症に注意が必要とされています[2]。

ほとんどの型は、親から子へ2分の1の確率で伝わる顕性遺伝ですが、LZTR1遺伝子の変化には、両親から1つずつ受け継いだときに発症する潜性遺伝の型(ヌーナン症候群2型)があります。12家族・23人のお子さんを調べた研究では、症状の重さは軽い方から命に関わる方まで幅があり、変化を1つだけもつご両親は全員、症状がありませんでした[5]。同じLZTR1遺伝子でも、顕性遺伝の10型もあり、遺伝のしかたが型で違う点は、ご家族の確率を考えるうえで大切です。

髪がまばらで抜けやすいことが特徴の成長期毛が抜けやすいヌーナン様症候群1型(SHOC2)や、白血病(JMML)との関わりが知られるCBL遺伝子変異を伴うヌーナン症候群様疾患も、このパネルで調べます。

コステロ症候群・CFC症候群・多発性黒子を伴うヌーナン症候群(LEOPARD)

コステロ症候群はHRAS遺伝子の変化で起こり、RAS病の中でもがんの合併に特に注意が必要な病気です。厚生労働省の指定難病の資料では、約10〜15%に膀胱がん・横紋筋肉腫・神経芽腫などの悪性腫瘍を合併するとされ、早く見つけて治療することが予後を大きく改善するため、定期的な検診が必要とされています(2026年10月時点で確認)。米国がん研究協会(AACR)の専門家会議も、RAS病の中でコステロ症候群のがんのリスクがもっとも高く、がんの見張りを考えるべきとしています[3]。

心臓・顔・皮膚症候群(CFC症候群)は、米国国立医学図書館の解説では、BRAF遺伝子が75〜80%、MAP2K1遺伝子とMAP2K2遺伝子をあわせて10〜15%、KRAS遺伝子が5%未満とされ、発達の遅れや知的障害が中等度から重度のことが多いとされています。型ごとの解説はCFC症候群1型・2型・3型・4型をご覧ください。

多発性黒子を伴うヌーナン症候群(旧名LEOPARD症候群)は、子どものころから顔・首・上半身にほくろのような茶色い斑点(黒子)が増えていく病気です。米国国立医学図書館の解説では、PTPN11遺伝子が約85%、RAF1遺伝子が約10%を占め、心臓に病気がある方の約80%が肥大型心筋症とされています。1型(PTPN11)・2型(RAF1)・3型(BRAF)があります。

神経線維腫症1型・神経線維腫症-ヌーナン症候群・レジウス症候群

カフェオレ斑(ミルクコーヒー色の平らなあざ)で知られる神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)もRAS病の1つで、原因のNF1遺伝子はこのパネルに入っています。NF1遺伝子の変化で、ヌーナン症候群に似た顔つきや心臓の特徴を併せもつ神経線維腫症-ヌーナン症候群や、ワトソン症候群が起こることもあります。

SPRED1遺伝子によるレジウス症候群は、カフェオレ斑が出るため神経線維腫症1型と間違われやすい病気です。カフェオレ斑や神経線維腫が中心の場合は、神経線維腫症のNGS遺伝子パネル検査のほうが合うことがあります(第8章)。

見分けるために一緒に調べる病気

このパネルには、RAS病そのものではないものの、顔つきや体の特徴が似ていて見分けたい病気の遺伝子も入っています。皮膚の小さな赤い血管のあざ(毛細血管奇形)と、動脈と静脈が直接つながる血管の異常(動静脈奇形)を伴う毛細血管奇形-動静脈奇形症候群(RASA1・EPHB4)、低身長と顔・手・性器の特徴を伴うアースコグ・スコット症候群(FGD1)、バライツァー・ウィンター症候群(ACTB・ACTG1)、ゲニトパテラー症候群・SBBYSS症候群(KAT6B)、竹内-小崎症候群(CDC42)などです。動静脈奇形は出血の原因になることがあるとされ、見つかった場合は血管の専門医による評価が勧められます。

💡 用語解説:顕性遺伝と潜性遺伝

顕性(優性)遺伝は、2本ある遺伝子のうち1本に原因となる変化があれば発症しうる遺伝のしかたで、親から子へは1人ごとに2分の1の確率で伝わります。潜性(劣性)遺伝は、2本とも変化があるときに発症する遺伝のしかたで、変化を1本だけもつ「保因者」どうしのお子さんでは、1人ごとに4分の1の確率になります。このパネルの病気は多くが顕性遺伝ですが、潜性遺伝の型もあります。

3. こんなときに検査を考えます

この検査を考えるきっかけは、読む方の立場によって違います。お子さんの症状が気になる親御さん、ご自身が大人になってから指摘された方、妊娠中にエコーで所見を言われた方、ご家族にRAS病の方がいる方。それぞれに分けてご説明します。

顔つき・心臓・低身長・発達が気になるお子さん

ヌーナン症候群でもっとも多い心臓の病気は肺動脈弁狭窄症で、肥大型心筋症を伴う方もいます。また、米国国立医学図書館の解説では、低身長は50〜70%にみられ、男の子の多くに停留精巣(精巣が陰のうまで下りていない状態)があるとされています。

生まれつきの心臓の病気(とくに肺動脈弁狭窄症・肥大型心筋症)に加えて、離れぎみの目・まぶたが下がる・耳の位置が低いなどの顔つき、低身長、発達の遅れ、出血しやすさ、首の皮膚のたるみなどが重なっているときは、この検査で原因を確かめる意味があります。小児科で「ヌーナン症候群かもしれない」と言われ、確かめたい場合も同じです。

大人になって「軽いヌーナン症候群かもしれない」と言われた方

ヌーナン症候群は、軽い方では大人になるまで気づかれないことがあります。専門家の総説では、大人では顔つきの特徴が目立ちにくくなること、病気の問題がほとんどない方もいることが書かれています[2]。同じ遺伝子の変化でも、症状の出方や重さが人によって大きく違うことを表現型の多様性といいます。

お子さんがヌーナン症候群と診断されたのをきっかけに、親御さんご自身も同じ変化をもっていたとわかることもあります。心臓の定期的な検査は大人になっても続けることが勧められているため[1]、「軽いから」と確かめないままにせず、原因の遺伝子を知っておくことには意味があります。

妊娠中にNT肥厚・むくみ・胎児水腫・羊水過多を指摘され、染色体は正常だった方

ヌーナン症候群では、生まれる前に、首の後ろのむくみ(NT肥厚)・嚢胞性ヒグローマ・胎児水腫・羊水過多がよくみられます[2]。染色体の検査が正常でも、RAS病の遺伝子の変化が原因のことがあります。

染色体検査とマイクロアレイ検査が正常だった赤ちゃんを対象にした2022年のメタ解析では、NTが3.5mm以上でほかの異常がない場合、新たに原因がわかった割合は、複数の研究を統合した値でRAS病の遺伝子パネルが1.44%、全エクソーム解析が2.44%でした。NTの肥厚にほかの異常を伴う場合は、RAS病パネルで7.69%、全エクソームで22.92%と高くなりました[4]。「ほかの所見があるかどうか」で、原因が見つかる見込みが大きく変わるということです。

NTの見方はエコーで首のむくみ(NT肥厚)は何ミリから?、胎児のむくみ全体については胎児水腫の原因で解説しています。妊娠中にできる検査は第7章でご説明します。

家族にRAS病の人がいて、自分や子どもへの遺伝が心配な方

ご家族の中でヌーナン症候群などの原因の遺伝子がわかっていれば、ほかのご家族はその変化をもっているかどうかを確かめられます。ご家族がすでに検査を受けて原因がわかっていれば、その結果がいちばんの手がかりになります。知的障害などでご本人が同意できないご家族を、きょうだいの将来のために検査することはできません。その場合は、症状のない相談者ご本人の検査について、わかることと限界をご説明します。原因がわかれば、ご自身やお子さんへの確率を、推測ではなく実際の結果で考えられるようになります(第6章)。

\ 原因の遺伝子がわかると、見張り方が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・頬の粘膜の検体なら、遠方の方もオンライン診療で受けられます。

お問い合わせはこちら | ヌーナン症候群について詳しく知る

4. ヌーナン症候群はいつわかる?顔つき・症状と診断の流れ

ヌーナン症候群に気づくきっかけは、妊娠中のエコー、生まれてすぐの心臓の病気、成長してからの低身長、大人になってからのご家族の診断など、時期によって違います。診察だけで型まで決めることは難しいため、遺伝子検査が役に立ちます。

顔つきの特徴

厚生労働省の指定難病の資料では、ヌーナン症候群の特徴的な顔つきとして、目と目の間が離れている(眼間開離)、まぶたが下がる(眼瞼下垂)、目頭の皮膚のひだ(内眼角贅皮)、目じりが下がる(眼瞼裂斜下)などが挙げられています(2026年10月時点で確認)。ただし、顔つきは年齢とともに変わり、大人では目立ちにくくなります[2]。顔つきだけで診断が決まるわけではありません。

診断基準と遺伝子検査の役割

日本の指定難病の診断基準では、顔つき・心臓・身長・胸の形・家族歴・そのほかの所見を組み合わせて臨床的に診断し、そのうえでPTPN11などRAS/MAPK経路の遺伝子に変化が見つかったものを「確定」としています。資料には、この基準は主観に頼る部分が大きいため、臨床遺伝専門医による評価が勧められることも書かれています(2026年10月時点で確認)。

米国小児科学会誌に載った診療ガイドラインも、遺伝子検査で変化が見つかれば診断を確かめられる一方で、見つからなくても診断を否定はできないとしています[1]。症状や型ごとの詳しい解説はヌーナン症候群総論、顔つき・寿命についてはヌーナン症候群とは?特徴・顔つき・寿命で解説しています。

5. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子がわかると、どの臓器を、いつ、どれくらいの間隔で見張ればよいかが具体的になります。わかっただけで終わらせず、次の一手につなげることが、この検査のいちばんの意味です。治療は、それぞれの専門の医療機関で受けていただきます。

ご本人:心臓・成長・出血しやすさ・聞こえと目・発達・がんの見張り

ヌーナン症候群の診療ガイドライン(2010年)は、診断がついたときに次のような確認を勧めています[1]。

  • ●心臓:全員が診断時に心臓の専門医の診察(心電図・心エコー)を受けます。最初に異常がなくても5年ごとに見直し、大人になっても定期的な心臓の検査を続けます。
  • ●出血しやすさ:診断時に血算と凝固の検査(PT・APTT)を行い、アスピリンとアスピリンを含む薬を避けます。手術の前には出血のリスクを評価します。
  • ●成長:身長を定期的に測り、伸びが悪いときは小児内分泌の専門医へつなぎます。
  • ●目と聞こえ:乳児期か診断時に詳しい目の検査をして少なくとも2年ごとに見直し、聞こえの検査も乳児期か診断時に行って、幼児期までは毎年続けます。
  • ●発達:毎年、発達のスクリーニングを行い、気になる点があれば詳しい検査をします。
  • ●停留精巣:1歳になっても精巣が下りていなければ、手術(精巣固定術)を行います。
  • ●リンパ浮腫:手足のむくみ(リンパ浮腫)がある方は、専門の外来へつなぎます。

がんの見張りは、遺伝子によって考え方が変わります。米国国立医学図書館の解説では、ヌーナン症候群のお子さんの白血病などのがんのリスクは、同じ年ごろの子どもの約8倍と推定されています。米国がん研究協会(AACR)の専門家会議は、ヌーナン症候群全員に一律のがんの検診を勧めてはいませんが、PTPN11やKRASの変化がある乳児では、定期的な診察と血液検査が適切な場合があるとしています。コステロ症候群は、RAS病の中でがんのリスクがもっとも高く、がんの見張りを考えるべきとしています[3]。PTPN11遺伝子の中でも、若年性骨髄単球性白血病(JMML)と関わりが強いとされる変化があることも報告されています[2]。

ご家族の検査などで、症状がない・軽いのに原因の変化が見つかった方も、心臓の定期的な検査は大人になっても続けることが勧められています[1]。顕性遺伝の型なら、お子さんへは1人ごとに2分の1の確率で伝わるため、妊娠を考えるときの計画にもつながります。

成長ホルモン療法

日本では、成長ホルモン製剤(ノルディトロピン)の効能に「骨端線閉鎖を伴わないヌーナン症候群における低身長」が含まれています(PMDAの添付文書・2025年9月改訂で確認)。成長ホルモンの治療は、早く始めて長く続けるほど結果がよいとされる一方で[1]、大人になってからの最終的な身長への長期の効果は、まだはっきりしないとする総説もあります[2]。使えるかどうか・いつ始めるかは、小児内分泌の専門医にご相談ください。

研究中の治療:MEK阻害薬

RAS/MAPK経路の合図が強すぎることを抑える薬(MEK阻害薬)を、重い肥大型心筋症のRAS病の赤ちゃんに使った報告があります。RAF1遺伝子の変化によるヌーナン症候群の新生児に、トラメチニブを適応外で使った報告では、心筋の厚みは改善しましたが、肺の血管の病気は改善せず、生後3か月で心不全のため亡くなっています[7]。

日本ではトラメチニブの効能は、BRAF遺伝子変異をもつがんなどに限られており、RAS病や肥大型心筋症は含まれていません(PMDAの添付文書・2026年2月改訂で確認)。まだ研究の段階の治療で、一般の治療として受けられるものではありません。

指定難病・小児慢性特定疾病

ヌーナン症候群は指定難病195、CFC症候群は指定難病103、コステロ症候群は指定難病104です(2026年10月時点、厚生労働省の資料で確認)。厚生労働省は、2027年4月1日から一部の病気の診断基準などを改める予定としており、この3つも改定の対象に入っています。ヌーナン症候群・CFC症候群・コステロ症候群は、小児慢性特定疾病の対象にも含まれています(2026年10月時点で確認)。指定難病の「確定」には遺伝子の変化の確認が使われるため、遺伝子検査の結果は制度を使うときの手がかりにもなります。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。

ご両親・きょうだい:親の検査で次の子の確率が変わる

お子さんに原因の変化が見つかったら、ご両親が同じ変化をもっているかを調べると、次のお子さんの確率を正確に考えられます。診療ガイドラインも、変化が見つかったあとはご両親の検査を考えるよう勧めています[1]。常染色体顕性遺伝の型で、親御さんのどちらかが原因の変化をヘテロ接合でもっていれば、その親御さんから生まれるお子さん一人ひとりに2分の1の確率で変化が伝わります。症状が軽くても、病気に応じた見張りが役に立つことがあります。LZTR1による潜性遺伝の型では、ご両親がそれぞれ保因者の場合、次のお子さんが発症する確率は1人ごとに4分の1です。

次に子どもを持つとき:出生前診断・PGT-M・そのまま産む

ご家族の原因がわかっていれば、次の妊娠では、赤ちゃんが同じ変化をもっているかを絨毛検査・羊水検査で調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

体外受精の受精卵を調べるPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考える方もいます。日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。

出生前診断を受けない・結果にかかわらずそのまま産むと決めることも、大切な選択の1つです。どの道を選ばれても、その選択を尊重します。

当院でのその後

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。見張りや治療は、小児循環器・小児内分泌・血液など専門の医療機関で受けていただくことになりますが、ご家族の検査、次の妊娠での出生前診断(羊水検査・絨毛検査)は当院で続けて受けられます。海外でPGT-Mを受けるなど英語の原本が必要な方には、英語版の結果をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

6. ヌーナン症候群は遺伝する?子どもへの確率と結婚・妊娠

ヌーナン症候群の多くは常染色体顕性遺伝で、ヌーナン症候群の方のお子さんには、1人ごとに2分の1の確率で同じ変化が伝わります。ただし、親から受け継いだ方は一部で、新しく起きた変化の方のほうが多いとされています。

顕性遺伝と、新しく起きた変化(de novo)

専門家の総説では、ヌーナン症候群の多くは新しく起きた変化(de novo)によるもので、親御さんにもヌーナン症候群があるとわかるのは20〜40%とされています[2]。コステロ症候群やCFC症候群も、ほとんどが新しく起きた変化によるとされています(米国国立医学図書館の解説)。

例外は、前の章でご説明したLZTR1遺伝子の潜性遺伝の型(ヌーナン症候群2型)です。この型では、変化を1つずつもつ症状のないご両親から、4分の1の確率で発症するお子さんが生まれます[5]。同じ「ヌーナン症候群」でも、型によってご家族の確率がまったく違うため、原因の遺伝子と遺伝のしかたを確かめることが大切です。潜性遺伝の考え方は劣性遺伝(潜性遺伝)とは?でも解説しています。潜性遺伝の型が見つかったご家族では、パートナーの方が同じ遺伝子の保因者かどうかを調べることが、次のお子さんの確率を考える手がかりになります。LZTR1遺伝子が当院の拡大版保因者スクリーニングの対象かどうかは、遺伝子一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります。

新しく起きた変化でも、次の子の確率はゼロではない

ご両親の血液で変化が見つからなかった場合も、次のお子さんの確率は「ゼロ」とは言い切れません。親御さんの卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」は、血液の検査ではわからないからです。どれくらいの確率になるかはご家族ごとに違うため、遺伝カウンセリングで、ご両親の検査結果をもとに一緒に考えます。父親の年齢との関係については、父親の高齢と子どもの病気で解説しています。次のお子さんの確率をくわしく知りたい方は、ヌーナン症候群は遺伝する?次の子の再発リスクもご覧ください。

ご本人がRAS病で、結婚・妊娠を考えるとき

結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。ご本人がヌーナン症候群の場合、診療ガイドラインでは、女性の妊よう性(妊娠する力)には影響がないようだとされています[1]。一方、男性では停留精巣が多く、のちの不妊の一因になりうるとされています(米国国立医学図書館の解説)。

妊娠を考えるときには、ご自身の原因の遺伝子がわかっていると、お子さんの確率、妊娠中に赤ちゃんを調べる方法、PGT-Mを選ぶかどうかを、前もって考えられます。パートナーの方にとっても、推測ではなく事実をもとに話し合えることが、二人で決める助けになります。

7. 妊娠中に調べる方法:NIPT・絨毛検査・羊水検査・出生前全エクソーム

当院のNIPTでは、このパネルの31遺伝子のうち、ダイヤモンドプランで14遺伝子、インペリアルプランで18遺伝子を調べられます。どちらも妊娠9週から、6〜8週は臨床研究として受けられます。エコーで所見があるときや、ご家族の原因がわかっているときは、絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんを確かめます。

NIPTで調べられるRAS病の遺伝子

ヌーナン症候群などのRAS病は、多くが新しく起きた変化で起こるため、ご家族に病気の方がいなくても、どの妊娠でも起こりえます。当院のNIPTダイヤモンドプランは、新しく起きやすい遺伝子の変化を調べる56遺伝子を、インペリアルプランは最大155遺伝子を調べます。このパネルと重なる遺伝子は次のとおりです。

🤰 当院のNIPTで調べられるRAS病の遺伝子

プラン このパネルと重なる遺伝子・病気
ダイヤモンドプラン BRAF・CBL・HRAS・KAT6B・KRAS・MAP2K1・MAP2K2・NRAS・PTPN11・RAF1・RIT1・SHOC2・SOS1・SOS2(14遺伝子)
インペリアルプラン ダイヤモンドプランの14遺伝子に加えて、ACTB・ACTG1・LZTR1・NF1(18遺伝子)

※当院の各プランの遺伝子一覧で確認(2026年10月時点)。どちらのプランも妊娠9週から、6〜8週は臨床研究として受けられます。このパネルの残りの13遺伝子(A2ML1・CCNK・CDC42・EPHB4・FGD1・MAP3K8・MRAS・PPP1CB・RASA1・RASA2・RRAS・SASH1・SPRED1)は、当院のNIPTでは調べられません。

NIPTはお母さんの血液で調べるスクリーニング検査で、陽性のときは絨毛検査・羊水検査で確かめます。2つのプランの違いはインペリアルプランとダイヤモンドプランの違いでご確認いただけます。

エコーで所見があるとき:絨毛検査・羊水検査と、遺伝子の検査

妊娠中にNT肥厚や胎児水腫などを指摘された場合や、ご家族の原因がわかっている場合は、赤ちゃんの細胞を直接調べる検査が中心になります。当院では、絨毛検査を妊娠11〜14週ごろ、羊水検査を妊娠15〜18週ごろに行っています(羊水検査・絨毛検査)。ご家族の変化がわかっていれば、赤ちゃんがその変化をもっているかを調べる単一遺伝子検査ができます。染色体検査やマイクロアレイ検査で原因がわからなかったときは、出生前全エクソーム(WES)検査も考えます。

絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。

まだ検査を受けるか決めていない方は、NIPTダイヤモンドプランの内容を見てから、遺伝カウンセリングでご相談ください。陽性のときは、確定のための羊水検査・絨毛検査まで院内で続けて受けられます。

8. ほかの検査との選び分け

症状がRAS病らしく、どの病気かしぼれないときは、まずこのパネルが向いています。症状が特定の病気に近いときや、RAS病らしくないときは、次の検査のほうが合うことがあります。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
顔つき・心臓・低身長などがRAS病らしいが、どの病気かしぼれない このページの検査(31遺伝子)
皮膚・髪の特徴が強く、CFC症候群が強く疑われる 心臓顔面皮膚症候群(CFC症候群)NGS遺伝子パネル検査
カフェオレ斑・神経線維腫が中心 神経線維腫症のNGS遺伝子パネル検査
肥大型心筋症だけで、ほかの特徴がない 肥大型心筋症NGSパネル検査
生まれつきの心臓の病気が中心で、RAS病らしい特徴がはっきりしない 先天性心疾患(CHD)遺伝子検査パネル
低身長が中心 低身長遺伝子パネル検査
症状が多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)
妊娠中で、エコーで所見があり染色体は正常だった 絨毛・羊水からの遺伝子の検査、出生前全エクソーム(WES)検査

※どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

9. 検査の内容:対象遺伝子・検体・日数・料金

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液のほか、唾液・頬の粘膜でも受けられ、唾液・頬の粘膜ならクリニックにお越しにならずにオンライン診療で受けられます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

対象遺伝子(31遺伝子)

A2ML1, ACTB, ACTG1, BRAF, CBL, CCNK, CDC42, EPHB4, FGD1, HRAS, KAT6B, KRAS, LZTR1, MAP2K1, MAP2K2, MAP3K8, MRAS, NF1, NRAS, PPP1CB, PTPN11, RAF1, RASA1, RASA2, RIT1, RRAS, SASH1, SHOC2, SOS1, SOS2, SPRED1(31遺伝子)

読み取りの深さ(カバレッジ)は、20回以上の読み取りで99%以上です。遺伝子ごとの病気は第2章の表をご覧ください。

検体と、来院せずに受ける方法

血液(EDTA採血管4ml×2本・紫色のキャップ)、抽出したDNA(EBバッファー中3μg)、頬の粘膜のぬぐい液、唾液(ご希望により採取キットをお送りします)で受けられます。唾液・頬の粘膜の場合は、オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングをしたのち、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

結果が出るまでの期間・至急オプション

結果が出るまでは2〜3週間です。至急オプション(55,000円)を使うと、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。意義がまだわからない変化(VUS)を報告から除くオプション(無料)もあります。

料金

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別。出生前診断の遺伝カウンセリングは30分33,000円(税込)
至急オプション 55,000円(結果までの期間が約7日短くなります)
結果までの期間 2〜3週間
検体 血液・抽出DNA・頬の粘膜・唾液
オンライン診療 唾液・頬の粘膜の検体なら可能(遺伝カウンセリング料金は事前にお支払いください)

当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

結果の報告書

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の見かたはNIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | 妊娠中の方はNIPTダイヤモンドプランへ

10. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、31遺伝子の配列の変化と、欠失・挿入です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●陰性でも否定はできません:わかっている遺伝子をすべて調べても、ヌーナン症候群で原因が見つかるのは約80%とされています(厚生労働省の資料)。見つからなくても、ヌーナン症候群ではないとは言えません[1]。
  • ●見つけにくい変化:欠失・重複は、1つの遺伝子全体(頬の粘膜・血液の検体)と、2つ以上つながったエクソン(血液の検体のみ)の変化を見つけられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、ふつうは見つかりません。転座・逆位、繰り返し配列の伸長、多くの調節領域や、エクソンから20塩基以上離れたイントロンの奥の変化も調べられません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(体細胞モザイク)を見つけることは目的としていません。腫瘍の組織の検査には使えません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断やご家族の検査には使いません。
  • ●根拠がまだ限られる遺伝子:A2ML1・RASA2・RRAS・CCNKなどは、病気との関わりを示す報告がまだ少ない遺伝子です[6]。こうした遺伝子に変化が見つかったときは、その意味を慎重に考えます。

陰性だった場合や、原因がしぼれなかった場合は、症状に合わせて全エクソーム検査(WES)などを考えます。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。

11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「軽いから」「家族にいないから」で決めないでほしい】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。ヌーナン症候群は、新しく起きた変化で生まれてくるお子さんが多い一方で、同じ変化をもつ親御さんがとても軽く、気づかずに過ごしていることもある病気です。だからこそ、「自分は軽いから」「家族に症状のある人はいないから」という見た目の印象だけで、将来を決めてしまわないでほしいと考えています。

RAS病は、原因の遺伝子によって、心臓・血液・がんの見張り方が変わり、ご家族の確率も変わります。ヌーナン症候群と思われていても、調べてみるとコステロ症候群やCFC症候群で、見張るべきことが違っていた、ということが起こりうるのがこのグループの病気です。遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ヌーナン症候群は遺伝子検査でわかりますか?

わかることが多いですが、すべてではありません。原因の遺伝子に変化が見つかれば診断を確かめられます。一方で、わかっている遺伝子をすべて調べても原因が見つかるのは約80%とされ、見つからなくてもヌーナン症候群ではないとは言えません。このパネルでは、ヌーナン症候群と症状が似たRAS病を含む31遺伝子を一度に調べます。

Q2. ヌーナン症候群は何人に1人ですか?

生まれる赤ちゃん1,000〜2,500人に1人と推定されています。軽い方は大人になるまで気づかれないこともあります。

Q3. 軽度だとどうなりますか?大人になって気づくことはありますか?

あります。大人では顔つきの特徴が目立ちにくくなり、病気の問題がほとんどない方もいるとされています。お子さんの診断をきっかけに、親御さんも同じ変化をもっていたとわかることもあります。軽くても、心臓の定期的な検査は大人になっても続けることが勧められています。

Q4. ヌーナン症候群は遺伝しますか?子どもに伝わる確率は?

多くは常染色体顕性遺伝で、ヌーナン症候群の方のお子さんには1人ごとに2分の1の確率で伝わります。ただし、親御さんにもヌーナン症候群があるのは20〜40%で、多くは新しく起きた変化によるものです。LZTR1遺伝子による潜性遺伝の型(2型)では、症状のないご両親から4分の1の確率で発症します。

Q5. NT肥厚と言われ、染色体は正常でした。この検査を受ける意味はありますか?

意味はあります。ヌーナン症候群では、NT肥厚・胎児水腫・羊水過多などが生まれる前によくみられます。染色体とマイクロアレイが正常だった赤ちゃんの研究では、ほかの異常がないNT肥厚でRAS病パネルで原因がわかった割合は、複数の研究を統合した値で1.44%、ほかの異常を伴う場合は7.69%でした。妊娠中は、絨毛・羊水からの検査や出生前全エクソームを含めて考えます。

Q6. ヌーナン症候群はNIPTでわかりますか?

当院のNIPTでは、PTPN11・SOS1・RAF1・RIT1など、このパネルと重なる遺伝子を、ダイヤモンドプランで14遺伝子、インペリアルプランで18遺伝子調べられます。どちらも妊娠9週から、6〜8週は臨床研究として受けられます。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性のときは絨毛検査・羊水検査で確かめます。

Q7. ヌーナン症候群は指定難病ですか?

はい。ヌーナン症候群は指定難病195です。CFC症候群は指定難病103、コステロ症候群は指定難病104です(2026年10月時点)。小児慢性特定疾病の対象にも含まれています。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。

Q8. 成長ホルモンの治療は受けられますか?

日本では、成長ホルモン製剤の効能に「骨端線閉鎖を伴わないヌーナン症候群における低身長」が含まれています(2026年10月時点)。使えるかどうか・いつ始めるかは、小児内分泌の専門医にご相談ください。

Q9. 結婚・妊娠で気をつけることは?

ご本人がヌーナン症候群の場合、女性の妊よう性には影響がないようだとされる一方、男性では停留精巣が多く、のちの不妊の一因になりうるとされています。原因の遺伝子がわかっていると、お子さんの確率や、妊娠中に赤ちゃんを調べる方法を前もって考えられます。

Q10. 陰性だったら、ヌーナン症候群ではないのですか?

そうとは言い切れません。原因がまだわかっていない遺伝子があり、この検査で見つけにくい種類の変化もあります。症状に合わせて、全エクソーム検査などを考えます。

Q11. ヌーナン症候群の寿命は?

厚生労働省の資料では、主に合併する心臓の病気が生命予後に影響するとされています。心臓の状態や、遺伝子によって注意が必要ながんの見張りなど、一人ひとりで見通しは違います。詳しくはヌーナン症候群総論やコラムで解説しています。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ヌーナン症候群・RAS病の原因がわかれば、遺伝子に合わせた心臓・成長・がんの見張りだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Romano AA, Allanson JE, Dahlgren J, et al. Noonan syndrome: clinical features, diagnosis, and management guidelines. Pediatrics. 2010;126(4):746-759. [DOI: 10.1542/peds.2009-3207](PMID: 20876176)
  • [2] Zenker M, Edouard T, Blair JC, Cappa M. Noonan syndrome: improving recognition and diagnosis. Arch Dis Child. 2022;107(12):1073-1078. [DOI: 10.1136/archdischild-2021-322858](PMID: 35246453)
  • [3] Villani A, Greer MC, Kalish JM, et al. Recommendations for cancer surveillance in individuals with RASopathies and other rare genetic conditions with increased cancer risk. Clin Cancer Res. 2017;23(12):e83-e90. [DOI: 10.1158/1078-0432.CCR-17-0631](PMID: 28620009)
  • [4] Mastromoro G, Guadagnolo D, Khaleghi Hashemian N, et al. A pain in the neck: lessons learnt from genetic testing in fetuses detected with nuchal fluid collections, increased nuchal translucency versus cystic hygroma—systematic review of the literature, meta-analysis and case series. Diagnostics (Basel). 2022;13(1):48. [DOI: 10.3390/diagnostics13010048](PMID: 36611340)
  • [5] Johnston JJ, van der Smagt JJ, Rosenfeld JA, et al. Autosomal recessive Noonan syndrome associated with biallelic LZTR1 variants. Genet Med. 2018;20(10):1175-1185. [DOI: 10.1038/gim.2017.249](PMID: 29469822)
  • [6] Grant AR, Cushman BJ, Cavé H, et al. Assessing the gene-disease association of 19 genes with the RASopathies using the ClinGen gene curation framework. Hum Mutat. 2018;39(11):1485-1493. [DOI: 10.1002/humu.23624](PMID: 30311384)
  • [7] Mussa A, Carli D, Giorgio E, et al. MEK inhibition in a newborn with RAF1-associated Noonan syndrome ameliorates hypertrophic cardiomyopathy but is insufficient to revert pulmonary vascular disease. Genes (Basel). 2022;13(1):6. [DOI: 10.3390/genes13010006](PMID: 35052347)

関連記事

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

記事の作り方と生成AIの使い方は、編集方針をご覧ください。