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出生前全エクソーム(WES)検査|エコーで胎児に異常が見つかったとき、2万以上の遺伝子から原因を調べる遺伝子検査

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

出生前全エクソーム(WES)検査|エコーで胎児に異常が見つかったときの遺伝子検査

出生前全エクソーム(WES)検査は、エコーで赤ちゃんに形の異常が見つかったときに、2万以上の遺伝子から原因を探す胎児の遺伝子検査です。染色体検査やマイクロアレイ検査で原因がわからなかったときの、次の一手になります。原因がわかれば、生まれたあとに必要な医療を前もって準備でき、次のお子さんのことも、知ったうえで考えられるようになります。このページでは、この検査でわかること・わからないこと、受けるとよい場合と別の検査が向いている場合、費用と結果までの期間を、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この胎児の遺伝子検査で何がわかりますか?

エコーで見つかった赤ちゃんの異常の原因を、2万以上の遺伝子のタンパク質の設計図の部分(エクソーム)から探します。染色体検査やマイクロアレイでは見えない、遺伝子1つひとつの小さな変化まで調べます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

エコーで心臓・脳・骨格・腎臓・むくみなどの所見があり、染色体検査やマイクロアレイで原因がわからなかった方です。エコーで所見がない場合は対象になりません。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検体は、絨毛または羊水から育てた赤ちゃんの細胞です(採取は院内)。細胞を育てたあと、解析に1〜2週間かかります。費用は採取+母体細胞混入の解析(MCC)+検査料金の合計で、検査料金は遺伝カウンセリングでご案内します。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が見つかれば、生まれたあとの準備や、次のお子さんでの確率と選択肢を一緒に考えます。意味がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。

\ 原因がわかれば、生まれたあとの準備ができます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

絨毛・羊水の採取から結果のご説明まで、臨床遺伝専門医のもとで院内で行います。

お問い合わせはこちら | 羊水検査・絨毛検査について

1. 出生前全エクソーム(WES)とは|胎児の遺伝子検査でわかること

出生前全エクソーム(WES)検査とは、赤ちゃん(胎児)の2万以上の遺伝子について、タンパク質の設計図にあたる部分をまとめて読み、エコーで見つかった異常の原因を探す検査です。絨毛や羊水から育てた赤ちゃんの細胞を使い、次世代シーケンサーという機械で調べます。WESは、英語の whole exome sequencing の頭文字です。

「エクソーム」は、遺伝子のうちタンパク質の設計図として使われる部分(エクソン)を全部集めたものです。名前が似ている美容の「エクソソーム」とは、まったく別のものです。

この検査は、赤ちゃんの所見(エコーでわかったこと)をもとに、所見と関係のありそうな遺伝子の変化にしぼって評価するしくみです。そのため、検査の申し込みには、エコー所見や家族歴などの臨床情報が必ず必要です。当院の臨床遺伝専門医が臨床情報を確かめ、検査機関の審査と承認を経てから検査が始まります。

なぜ「エクソーム」を読むのか

人のDNA(ゲノム)を、分厚いレシピ本にたとえてみます。そのうち、料理の「作り方」、つまり体の部品であるタンパク質の作り方が書かれたページがエクソームです。エクソン(エクソームを形づくる部分)には、メンデル遺伝病(1つの遺伝子の変化で起こる病気)の原因となる変化の85%が含まれるとされています[5]。

エクソームはゲノム全体から見ると一部ですが、タンパク質の作り方が直接書かれた場所なので、ここに変化があると、体のつくりや働きに影響しやすくなります。エクソームだけを集中して読むことで、2万以上の遺伝子を一度に、効率よく調べられます。

💡 用語解説:エクソン・イントロン・スプライシング

遺伝子は、作り方が書かれた「エクソン」と、そのあいだにはさまった「イントロン」が交互に並んでいます。タンパク質を作るときは、イントロンを切り取ってエクソンだけをつなぎます(スプライシング)。この検査は、エクソンと、そのつなぎ目(スプライス部位)を読みます。

全エクソーム(WES)と全ゲノム(WGS)の違い

全エクソームは「作り方のページ」を重点的に読む検査、全ゲノムは「本をまるごと」読む検査です。どちらも出生前に受けられます。

📖 出生前全エクソームと出生前全ゲノムの違い

項目 出生前全エクソーム(WES) 出生前全ゲノム(WGS)
読む範囲 2万以上の遺伝子のエクソンとつなぎ目、ミトコンドリアのDNA エクソンに加え、遺伝子のあいだやイントロンの深い部分まで、ゲノムのほぼ全体
向いていること 遺伝子の小さな変化(1文字の変化・小さな挿入や欠失)を効率よく探す 小さな変化に加え、より広い範囲の変化や、エクソーム以外の場所の変化まで調べたいとき
くわしいページ このページ 出生前全ゲノム(WGS)検査

※どちらが合うかは、エコー所見やそれまでの検査結果で変わります。技術の違いはエクソーム解析と全ゲノム解析の違いで解説しています。

生まれたあとのお子さんの原因不明の症状を調べる場合は、全エクソーム検査(WES)をご覧ください。出生前の検査とは、検体と、検査のしくみが違います。

2. エコーでわかる胎児の異常と、遺伝子検査が役に立つとき

妊婦健診や胎児ドックのエコーで、心臓・脳・骨格・腎臓などの形の異常や、むくみが見つかることがあります。その一部は、遺伝子の変化が原因で起こっています。生まれつきの病気(先天異常)は決して珍しいものではなく、欧州の先天異常の登録ネットワーク(EUROCAT)の報告では、2003〜2007年の重い先天異常の頻度は出生1,000あたり23.9でした[6]。

エコーで所見が見つかったとき、まず調べるのは染色体の数や大きな変化です(染色体検査(Gバンド法)やマイクロアレイ染色体検査)。それでも原因がわからないとき、遺伝子1つひとつの変化を調べるのがこの検査です。エコーで何がわかるかは、胎児超音波検査や胎児ドックのページで解説しています。生まれつきの病気全体については先天異常とはもご覧ください。

どれくらいの割合で原因が見つかるか

原因が見つかる割合は、エコー所見の種類によって大きく違います。英国で、染色体の数の異常や大きな欠失・重複がないことを確かめたうえで、形の異常がある赤ちゃんとご両親の610組を調べた研究(PAGE研究)では、原因となる遺伝子の変化が見つかったのは52人(8.5%)でした[1]。

📊 エコー所見の種類ごとの、原因が見つかった割合(英国・PAGE研究)

エコー所見 原因が見つかった割合
いくつもの臓器に異常がある 15.4%
骨格の異常 15.4%
心臓の異常 11.1%
首のうしろのむくみ(NT肥厚)だけ 3.2%(93人中3人)
全体 8.5%(610人中52人)

※Lord J, et al. Lancet 2019(文献[1])。染色体の数の異常や大きなコピー数の変化がない赤ちゃんを対象とし、あらかじめ決めた1,628遺伝子で解析した研究です。検査の方法や対象が違えば、割合も変わります。

米国の研究では、染色体検査とマイクロアレイで原因がわからなかった、形の異常がある赤ちゃんとご両親の234組を全エクソームで調べ、24組(約10%)で原因が見つかりました。さらに約20%(234組中46組)で、原因の可能性はあるものの診断には証拠が足りない変化が見つかっています[2]。

裏を返せば、この検査を受けても、多くの場合は原因が見つからないということです。それでも、染色体の検査では届かなかった原因が見つかることがあるため、エコーで所見があり、原因を知ることが今後の準備に役立つ場合には、考える価値のある検査です。NT肥厚についてはNT(首のむくみ)の正常値で解説しています。

なぜエコーの所見がないと受けられないのか

「NIPTは採血だけで広く調べられるのに、なぜ羊水や絨毛の全エクソームは、エコー所見がないと受けられないの?」という疑問があります。結論から言うと、所見がないまま網羅的に調べても、得られるものより失うもののほうが大きいからです。理由は3つあります。

  • ●検査の役割が違う:NIPTは母体の採血だけで受けられる、ふるい分け(スクリーニング)の検査です。羊水検査・絨毛検査はおなかに針を刺して検体をとる検査で、わずかながら流産のリスクがあります。リスクのある検査で、所見のない赤ちゃんを広く調べるのは、つり合いがとれません。
  • ●所見は「手がかり」になる:エクソームを読むと、1人あたりたくさんの配列の違いが見つかり、その大半は病気と関係のない個人差です。「この所見と関係のある遺伝子はどれか」という手がかりがあって、はじめて意味のある変化をしぼり込めます。手がかりがないと、病気の原因か個人差か判断できない結果(VUS)ばかりが残りやすくなります。
  • ●所見と関係のない重い情報が出てしまう:所見と関係なく調べると、エコーではわからない病気の変化が思いがけず見つかることがあり、ご両親にとても重い判断を求めることになりかねません。

国際出生前診断学会(ISPD)・米国母体胎児医学会(SMFM)・周産期質財団(PQF)の共同声明(2018年)は、胎児の網羅的な遺伝子検査が役立ちうる場面として、大きな異常が1つ以上ある赤ちゃんの妊娠などをあげ、出生前の網羅的な遺伝子検査をすべての妊娠に広く行うことは、現時点では支持できないとしています[3]。ISPDは2022年にこの声明を改訂し、出生前の網羅的な遺伝子検査を責任をもって行うには、検査の前後の十分な遺伝カウンセリングが欠かせないとしています[4]。当院も、この考え方に沿って、一人ひとりのエコー所見を確かめてからご案内しています。

「知的障害は産む前にわかる?」という疑問もよくあります。知的障害の原因はさまざまで、エコーの所見として現れないこともあります。そのため、所見のない赤ちゃんで知的障害の原因を広く探すことは、この検査の目的ではありません。

3. どんな人が出生前全エクソームを受けるとよいか

エコーで赤ちゃんに形の異常やむくみが見つかり、染色体検査やマイクロアレイで原因がわからなかった方が、この検査の対象です。原因がわかると、次のようなことに役立ちます。

  • ●生まれたあとの準備:病名がわかれば、どんな合併症に気をつけるか、生まれてすぐにどんな医療が必要になりそうかの見通しが立ち、出産する病院や、生まれたあとにかかる専門の科を前もって考えられます。
  • ●原因がわからない時間を短くする:生まれてから検査を重ねて原因を探すより早く、手がかりが得られることがあります。
  • ●ご両親とご家族のこと:変化をご両親から受け継いだかどうかがわかると(ご両親を調べるTrio解析が最も判断しやすい)、次のお子さんでの確率を考えられます。

たとえば、エコーで心臓の形の異常、脳の形の異常、手足や骨の短さ・曲がり、腎臓の異常、全身のむくみ(胎児水腫)など、いくつもの臓器に所見がある場合です。以前の妊娠で、原因がわからないまま形の異常があった方も、遺伝カウンセリングでご相談ください。

受けなくてよい場合・別の検査が向いている場合

この検査がいちばん合うとは限りません。状況によっては、次の検査のほうが向いています。

🔍 状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
エコーで所見はないが、赤ちゃんの染色体を調べたい NIPT(採血で受けられるスクリーニング検査)
エコーで所見があり、まず染色体の数や大きな変化を調べたい 染色体検査(Gバンド法)・マイクロアレイ染色体検査
ご家族の病気の原因(遺伝子の変化)がすでにわかっている 単一遺伝子疾患の出生前診断
全身のむくみ(胎児水腫)が中心 非免疫性胎児水腫の遺伝子パネル検査
骨や手足の短さ・曲がりが中心 骨系統疾患の遺伝子パネル検査
心臓の形の異常が中心 先天性心疾患の遺伝子パネル検査
むくみやNT肥厚があり、ヌーナン症候群などが疑われる ヌーナン症候群・RAS病の遺伝子パネル検査

※パネル検査に入っていない遺伝子は、追加して調べられることがあります(カスタマイズ遺伝子パネル検査)。どの検査が合うかは、エコー所見とそれまでの検査結果で変わります。

\ 所見の原因を知って、生まれたあとに備える /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

エコー所見を臨床遺伝専門医が確かめ、この検査が合うかどうかからご説明します。

お問い合わせはこちら | マイクロアレイ染色体検査について

4. どの検査を選ぶか|NIPT・マイクロアレイ・全エクソーム・全ゲノムの違い

出生前の検査は、「ふるい分けの検査か、確定の検査か」と「どれくらい細かい変化まで見るか」で役割が分かれます。それぞれの検査の役割を、一覧にしました。

🧭 出生前の検査の役割の違い

検査 主にわかること 検体 向いている人
NIPT 赤ちゃんの染色体の数の変化など(ふるい分け) 母体の血液 所見がない段階で、赤ちゃんの染色体を調べたい方
染色体検査(Gバンド法) 染色体の数や、顕微鏡で見える大きな構造の変化 絨毛・羊水 所見があり、まず染色体を確かめたい方
マイクロアレイ染色体検査 染色体の一部の増減(顕微鏡では見えない小さな欠失・重複) 絨毛・羊水 所見があり、染色体の細かい変化を調べたい方
出生前全エクソーム(このページ) 遺伝子1つひとつの小さな変化 絨毛・羊水から育てた細胞 所見があり、染色体の検査で原因がわからなかった方
出生前全ゲノム 遺伝子の小さな変化に加え、ゲノムのより広い範囲 絨毛・羊水から育てた細胞 所見があり、より広い範囲まで調べたい方
単一遺伝子疾患の出生前診断 ご家族でわかっている遺伝子の変化があるかどうか 絨毛・羊水 ご家族の病気の原因がわかっている方

※出生前診断で何がわかり、何がわからないかは、出生前診断でわかること・わからないことで詳しく解説しています。

5. 出生前全エクソームでわかること・わからないこと

この検査は、2万以上の遺伝子の小さな変化を一度に調べられる一方で、何でもわかる検査ではありません。受ける前に、わかることとわからないこと、そして報告される範囲を知っておいてください。

わかること

  • ●遺伝子の小さな変化:DNAの文字が1つ置き換わる変化や、小さな挿入・欠失。
  • ●遺伝子の一部の欠失・重複:2つ以上の連続したエクソンにわたる欠失・重複(コピー数変異)。ただし、遺伝子の配列を読む解析で原因が見つかった場合は、欠失・重複の解析は行いません。
  • ●ミトコンドリアのDNAの変化:ミトコンドリアゲノムも調べます。変化をもつDNAの割合が2%以上であれば検出できるよう、検証されています。

わからないこと(検査の限界)

  • ●染色体の一部が入れ替わる「転座」や、向きが逆になる「逆位」。
  • ●同じ配列がくり返し伸びる変化(リピート伸長)。一部の遺伝子では、調べられることもあります。
  • ●DNAのメチル化など、遺伝子の働き方の調節の異常。
  • ●イントロンの深い部分など、エクソームの外にある変化(多くは調べていません)。
  • ●1つのエクソンだけの欠失・重複(見つかることもありますが、確実ではありません)。
  • ●体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)。
  • ●小さな挿入・欠失は、1文字の置き換わりほど確実には見つけられず、まれに見逃されることがあります。

「原因が見つからなかった」ことは、「遺伝の病気ではない」という意味ではありません。この検査でとらえられない種類の変化や、まだ病気との関係がわかっていない遺伝子が原因のこともあります。

報告される範囲:エコー所見と関係する遺伝子だけ

この検査では、赤ちゃんの所見と関係する遺伝子の変化を報告します。所見と関係しない遺伝子の変化は、原則として報告されません。たとえば、赤ちゃんの所見と関係のない潜性(劣性)の病気の保因者であることは、原則として報告の対象になりません。

「何でもわかる検査」ではなく、「エコーで見えている所見の原因を探す検査」だと考えてください。結果が「診断的」と判断されるのは、主に次のような場合です(病的バリアントの判定による)。

  • ●常染色体顕性(優性)遺伝・X連鎖顕性遺伝の遺伝子に、病的(または病的の可能性が高い)変化が1つ見つかった場合
  • ●X連鎖潜性遺伝の遺伝子で、男の子の検体に病的な変化が1つ見つかった場合
  • ●常染色体潜性(劣性)遺伝では、同じ遺伝子の父由来・母由来のそれぞれに病的な変化が見つかった場合(同じ変化を両方に持つ場合を含む)。X連鎖潜性遺伝では、女の子の2本のX染色体上の同じ遺伝子のそれぞれに病的な変化が見つかった場合

このほか、ご希望の方だけが選べる報告があります。

  • ●二次的所見:検査の目的とは別に、医学的に対応できる病気の遺伝子の変化を報告するもの。希望される方だけ追加できます。当院の考え方は二次的所見の開示方針をご覧ください。
  • ●意味がまだわからない変化(VUS)の報告:希望される方だけ選べます。VUSは、それだけで診断や判断の根拠にはしません(VUSの臨床的な扱い)。

どちらを選ぶかは、意味と、知ることのよい点・難しい点を遺伝カウンセリングでご説明したうえで、ご両親に決めていただきます。

ご両親と一緒に調べる(Duo・Trio解析)と、母体細胞混入の確認(MCC)

赤ちゃんの検体と一緒に、お母さんだけ(Duo)、またはご両親(Trio)の検体を調べると、見つかった変化の意味を判断しやすくなります。調べた親から変化を受け継いだかどうかを確認できるためです。ご両親を調べるTrio解析では、赤ちゃんで新しく起きたもの(de novo変異)かどうかも判断しやすくなります。Duo解析では、調べていない親から受け継いだ可能性が残ります。くわしくはトリオWESで解説しています。

ご両親の検体と情報は、赤ちゃんの検体と同時に提出する必要があります。あとから提出しても、解析に含められないことがあります。

羊水や絨毛には、お母さんの細胞が混じることがあります。混じったまま解析すると、お母さんの遺伝子を赤ちゃんのものと取り違えるおそれがあるため、お母さんの血液を使って母体細胞混入(MCC)がないかを確かめます。当院では、出生前の検査でMCCの解析を必ず行っています。

▶ 検出に制限がある遺伝子の一覧(クリックで開く)

🧬 検出に制限がある遺伝子

遺伝子 注意点
ALG1 よく似た配列があるため、エクソン6〜13の変化は見つけにくくなります。
CD40LG・DIP2B・RUNX2・SOX3・ZIC2・ZIC3 3つの塩基のくり返しが伸びる変化(トリヌクレオチドリピート伸長)は調べていません。
IL11RA くり返し配列が伸びる変化(リピート伸長)は調べていません。
DUOX2 よく似た遺伝子DUOX1があるため、エクソン6〜8の変化は確実には見つけられません。
GALNT12 GC(グアニンとシトシン)が多い配列のため、エクソン1の欠失・重複は確実には見つけられず、報告されません。
MTHFR よくある2つの多型(c.665C>T・c.1286A>C)は、臨床的な意味が乏しいため報告されません。
PIK3CA 病的な変化の多くは受精後に起きるモザイクのため、見つからなくても関連する病気が否定されるわけではありません。
RPGR ORF15という領域の一部では、変化があるかどうかを完全には否定できません。
SMN2 SMN1で診断的な結果が出たときだけ、エクソン7〜8を調べます。
TPRN エクソン1は、今の方法では解析できません。

※検査機関の検査内容による(2026年10月22日に確認)。カバレッジ(読み取りの十分さの目安)は99%(20回以上読む割合)です。

6. 結果が出るまでの期間と妊娠週数

この検査は、採取した絨毛や羊水の細胞をいったん育て(培養し)、増えた細胞からDNAを取り出して解析します。解析そのものには1〜2週間かかります。細胞を育てる時間が加わるので、採取した日から結果までは、それより長くなります。

絨毛・羊水の採取院内
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細胞を育てる培養
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遺伝子の解析1〜2週間
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結果のご説明臨床遺伝専門医

当院では、絨毛検査は妊娠11〜14週ごろ、羊水検査は15〜18週ごろに行っています。絨毛検査と羊水検査の違いは絨毛検査と羊水検査の違いで解説しています。

結果が出る時期によって、妊娠中に考えられることや準備できることが変わります。そのため、エコーで所見が見つかったら、できるだけ早くご相談ください。採取の時期と結果の見込みの時期は、妊娠週数に合わせて、遺伝カウンセリングで具体的にご説明します。なお、当院は分娩・中絶を行っていません。結果のあとの妊娠の管理や出産は、かかりつけの産婦人科と連携して進めていただきます。

7. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果の読み方は検査結果の見かたもご覧ください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

病的変異が見つかったら、次にできること

原因がわかることは、ゴールではなくスタートです。わかったことをもとに、立場ごとに次のことを考えられます。

  • ●赤ちゃんのために:病名がわかれば、どんな合併症が起こりやすいか、生まれてすぐにどんな検査や治療が必要になりそうかの見通しが立ちます。出産する病院や、生まれたあとにかかる専門の科を前もって考え、かかりつけの産婦人科・小児科と準備を進められます(当院は分娩や赤ちゃんの治療は行っていません)。
  • ●ご両親のために:Duo・Trio解析では、調べた親から変化を受け継いだかどうかを確認できます。Trio解析では、赤ちゃんで新しく起きた変化かどうかも判断しやすくなりますが、Duo解析では、調べていない親から受け継いだ可能性が残ります。受け継いだものなら、変化をもっている親御さんご自身の健康で気をつけることがあるかどうかもご説明します。
  • ●次のお子さんを持つとき:次の妊娠で同じ病気になる確率は、病気の遺伝のしかたと、変化を受け継いだかどうかで大きく変わります。確率がわかれば、次の妊娠で出生前診断を受ける、着床前診断(PGT-M)を考える、何もしないで妊娠・出産するなど、知ったうえで選べます。当院は体外受精・PGT-Mを行っていませんが、海外でPGT-Mを考えている方には英語の検査結果をお渡しできます(海外でPGT-Mを考えている方へ)。PGT-Mだけが選択肢ではないことは、着床前診断だけが選択肢ではない理由で解説しています。
  • ●ご家族のために:原因の変化がわかると、きょうだいなどのご家族が同じ変化をもっているかを、その場所だけピンポイントで調べられます(症状のない方の検査は、ご本人の同意のうえで行います)。
  • ●当院でのその後:結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます。

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかれば、次に妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。

原因が見つからなかったとき・VUSだったとき

原因が見つからなくても、遺伝の病気が否定されたわけではありません(第5章)。生まれたあとに赤ちゃんの症状がはっきりしてから、あらためて検査を考えることがあります。より広い範囲を調べる出生前全ゲノム(WGS)検査や、生まれたあとのクリニカルエクソーム検査などが選択肢になります。

意味がまだわからない変化(VUS)は、それだけで診断や、ご家族の発症予測の根拠にはしません。ただし、その変化の意味を判断するために、ご家族の検査を行うことがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。

8. 検査の流れと費用・検体

費用は、絨毛または羊水の採取、母体細胞混入の解析(MCC)、出生前全エクソームの検査料金の合計です。検査料金(赤ちゃんだけで調べるか、Duo・Trioで調べるか)は、遺伝カウンセリングでご案内します。当院の検査はすべて自費診療です。

ご予約
▶
遺伝カウンセリングエコー所見の確認
▶
採取・検体の提出ご両親の検体も同時に
▶
結果のご説明マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検体 絨毛または羊水から育てた赤ちゃんの細胞(またはその細胞から取り出したDNA)。MCCの解析にお母さんの血液。Duo・Trio解析ではご両親の検体
調べる範囲 2万以上の遺伝子のエクソンとつなぎ目、ミトコンドリアのDNA
結果までの期間 細胞を育てたあと、解析に1〜2週間
絨毛の採取 132,000円(税込)
羊水の採取 88,000円(税込)
母体細胞混入の解析(MCC) 132,000円(税込)※必須
出生前全エクソームの検査料金 遺伝カウンセリングでご案内します(赤ちゃんだけ・Duo・Trio)
遺伝カウンセリング料 30分33,000円(税込)※出生前診断の遺伝カウンセリング料。検査料金とは別
マイページ使用料 550円(税込)
検査結果作成手数料(暗号化を含む) 3,300円(税込)

※当院の検査はすべて自費診療です。他院で採取・培養した検体で受ける場合は、オンライン診療でご相談いただけます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

院内は全室個室で、受診の枠は90分です。ほかの患者さんと時間が重ならないので、院内でほかの患者さんと顔を合わせることはありません。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。当院が羊水・絨毛検査を院内で始めた理由はこちらに書いています。

\ 次のお子さんのことも、知ったうえで考えるために /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

採取から結果のご説明、次の妊娠の出生前診断まで、臨床遺伝専門医のもとで院内で続けて受けられます。

お問い合わせはこちら | 遺伝カウンセリングについて

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【わかるだけで終わらせない出生前の遺伝子検査】

エコーで赤ちゃんに所見があると言われたとき、ご両親の頭に最初に浮かぶのは「なぜ?」という問いだと思います。出生前全エクソームは、その問いに遺伝子の面から答えを探す検査です。ただ、この検査を受けても、多くの場合は原因が見つかりません。私はこのことを、受ける前に必ずお伝えすべきだと考えています。

それでも私がこの検査を大切にしているのは、原因がわかったときに、できることが確かに増えるからです。生まれたあとに必要な医療を前もって準備できること、次のお子さんでの確率がわかり、知ったうえで選べるようになること。わかるだけでは意味がなく、わかったあとに何ができるかまで一緒に考えることが、臨床遺伝専門医の仕事だと考えています。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という思いはよくわかります(遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由)。私が出生前診断に携わるようになった原点は、こちらに書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。検査を受けるかどうか、結果をどう受け止めてどう進むかは、ご両親が決めることです。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 胎児の遺伝子検査(出生前全エクソーム)で何がわかりますか?

エコーで見つかった赤ちゃんの形の異常の原因になっている遺伝子の変化を、2万以上の遺伝子のタンパク質の設計図にあたる部分(エクソーム)から探します。1つの文字の変化や小さな挿入・欠失、2つ以上のエクソンにわたる欠失・重複、ミトコンドリアのDNAの変化を調べます。ただし、何でもわかる検査ではなく、原因が見つからないこともあります。

Q2. エコーで異常がなくても受けられますか?

この検査は、エコーで赤ちゃんに所見がある場合に受ける検査で、検査機関の審査と承認を経て始まります。所見がないまま網羅的に調べても原因が見つかる見込みは低く、意味のわからない結果ばかりが残りやすいためです。所見がない段階で赤ちゃんの染色体を調べたい方には、採血で受けられるNIPTがあります。

Q3. マイクロアレイ検査との違いは何ですか?

マイクロアレイ検査は、染色体の一部が増えたり減ったりする比較的大きな変化を調べる検査です。出生前全エクソームは、遺伝子1つひとつの配列を読み、マイクロアレイではとらえられない小さな変化を調べます。染色体検査やマイクロアレイで原因がわからなかったときに、次に考える検査です。

Q4. 費用はいくらですか?

絨毛または羊水の採取(絨毛132,000円・羊水88,000円、税込)、母体細胞混入の解析(MCC、132,000円・税込)、出生前全エクソームの検査料金の合計になります。検査料金(赤ちゃんだけで調べるか、ご両親と一緒に調べるか)は遺伝カウンセリングでご案内します。遺伝カウンセリング料は30分33,000円(税込)で別にかかります。当院の検査はすべて自費診療です。

Q5. 結果はいつわかりますか?

採取した絨毛や羊水の細胞を育てて(培養して)から解析し、解析には1〜2週間かかります。採取の時期は、当院では絨毛検査が妊娠11〜14週ごろ、羊水検査が15〜18週ごろです。結果の見込みの時期は、妊娠週数に合わせて遺伝カウンセリングで具体的にご説明します。

Q6. 両親の血液も必要ですか?

必須ではありませんが、赤ちゃんと親の一方を調べるDuo解析、または赤ちゃんとご両親を調べるTrio解析をおすすめしています。調べた親から変化を受け継いだかどうかを確認でき、結果の意味を判断しやすくなります。Trio解析では、赤ちゃんで新しく起きた変化かどうかも判断しやすくなりますが、Duo解析では、調べていない親から受け継いだ可能性が残ります。解析する親の検体は、赤ちゃんの検体と同時に提出する必要があります。

Q7. 原因が見つかったら、次の妊娠はどうなりますか?

次の妊娠で同じ病気になる確率は、見つかった病気の遺伝のしかたと、変化がご両親から受け継いだものかどうかで大きく変わります。確率をもとに、次の妊娠で出生前診断を受ける、着床前診断(PGT-M)を考える、何もしないで妊娠・出産するなど、知ったうえで選ぶことができます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。

🧬 エコー所見の原因を知って、これからに備える

赤ちゃんの遺伝子は一生変わりません。原因がわかれば、生まれたあとの準備だけでなく、次のお子さんのことも、知ったうえで考えられます。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による採取、次の妊娠の出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

次の妊娠で、エコーより前の段階から赤ちゃんの染色体を調べたい方は、NIPT(新型出生前診断)や、NIPTを受けるべきか迷う方へもご覧ください。

参考文献

  • [1] Lord J, McMullan DJ, Eberhardt RY, et al. Prenatal exome sequencing analysis in fetal structural anomalies detected by ultrasonography (PAGE): a cohort study. Lancet. 2019;393(10173):747-757. [DOI: 10.1016/S0140-6736(18)31940-8](PMID: 30712880)
  • [2] Petrovski S, Aggarwal V, Giordano JL, et al. Whole-exome sequencing in the evaluation of fetal structural anomalies: a prospective cohort study. Lancet. 2019;393(10173):758-767. [DOI: 10.1016/S0140-6736(18)32042-7](PMID: 30712878)
  • [3] International Society for Prenatal Diagnosis; Society for Maternal and Fetal Medicine; Perinatal Quality Foundation. Joint Position Statement from the International Society for Prenatal Diagnosis (ISPD), the Society for Maternal Fetal Medicine (SMFM), and the Perinatal Quality Foundation (PQF) on the use of genome-wide sequencing for fetal diagnosis. Prenat Diagn. 2018;38(1):6-9. [DOI: 10.1002/pd.5195]
  • [4] Van den Veyver IB, Chandler N, Wilkins-Haug LE, et al. International Society for Prenatal Diagnosis Updated Position Statement on the use of genome-wide sequencing for prenatal diagnosis. Prenat Diagn. 2022;42(6):796-803. [DOI: 10.1002/pd.6157](PMID: 35583085)
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  • [6] Dolk H, Loane M, Garne E. The prevalence of congenital anomalies in Europe. Adv Exp Med Biol. 2010;686:349-364. [DOI: 10.1007/978-90-481-9485-8_20](PMID: 20824455)

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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