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エクソーム(Exome)とは? ―ゲノムの1.5%に集中する設計図と全エクソーム解析(WES)の基礎

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

エクソームとは、DNAの中で「タンパク質の設計図」として実際に使われる部分(エクソン)をすべて集めたものです。ヒトゲノム全体のわずか約1.5〜2%にすぎませんが、これまでに分かっている遺伝性疾患の原因の約85%が、この狭い領域に集中しています。だからこそ、エクソームだけを効率よく読み解く「全エクソーム解析(WES)」が、原因不明の病気の診断において世界的に重要な役割を担っています。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
🧬 エクソーム・全エクソーム解析(WES)・臨床遺伝
臨床遺伝専門医監修

Q. エクソームとは何ですか?まず結論だけ知りたいです

A. エクソームとは、DNAのうちタンパク質の設計図として働く「エクソン」をすべて合わせた領域のことです。ヒトゲノムの約1.5〜2%にすぎませんが、既知の遺伝性疾患の原因の約85%がここに集まっているため、この部分だけをまとめて読む「全エクソーム解析(WES)」が、原因不明の病気を調べる強力な手がかりになります。

  • エクソームの定義 → ゲノム(設計図全体)・遺伝子(個々の指示書)・エクソン(実際に使われる部分)の関係
  • なぜ重要か → 全体の約1.5%に、疾患原因の約85%が集中するという事実
  • WESの仕組み → 次世代シーケンサーでエクソンだけを選んで網羅的に読む
  • WESとWGSの違い → 読む範囲・コスト・見つけられる変異のちがい
  • 臨床での意味 → 診断・遺伝形式の判定・遺伝カウンセリングをどう支えるか

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1. エクソームとは:DNAの中の「設計図の本体」

わたしたちの体は、約37兆個の細胞からできています。その一つひとつの中に、体をつくり、生命活動を維持するための「設計図」が収められています。それがDNAです。DNAは、アデニン(A)・シトシン(C)・グアニン(G)・チミン(T)という4種類の文字(塩基)が約30億個ならんだ、とても長い情報の鎖です[1]

この30億文字すべてをひとまとめにしたものをゲノム(Genome)と呼びます。ゲノムの中には、特定のタンパク質をつくるための指示書である遺伝子(Gene)が約20,000個含まれています。そして、その遺伝子の中で、実際にタンパク質の「アミノ酸の並び」を指定している部分がエクソン(Exon)です。このエクソンを、全部の遺伝子からすべて集めたものが「エクソーム(Exome)」です。

💡 用語解説:ゲノム・遺伝子・エクソームの関係

ゲノム=図書館の全蔵書(DNA全体)。遺伝子=そのうちの1冊1冊の本(タンパク質の指示書)。エクソン=本の中で実際に物語が書かれているページ。

そしてエクソームとは、図書館中のすべての本から「物語のページ」だけを抜き出して集めた、いわば「設計図の本体」だけのコレクションのことなのです。

「エクソーム」という言葉は、英語で「Exon(エクソン)」と、全体を表す接尾語「-ome(オーム/〜の総体)」を組み合わせてできた用語です。「ゲノム(Gen-ome)」が遺伝子の総体を指すのと同じ発想で、エクソンの総体を「エクソーム」と呼ぶようになりました。

2. エクソンとイントロン:なぜ一部だけが「設計図」なのか

遺伝子の中身は、均一に情報が詰まっているわけではありません。タンパク質の情報を担うエクソンと、その間にはさまれたイントロン(Intron)という2種類の領域が、モザイクのように交互に並んでいます。イントロンはタンパク質の情報を直接コードしない領域です。

💡 用語解説:スプライシング

細胞がタンパク質をつくるとき、まずDNAの情報がコピー(転写)されてRNAになります。この最初のRNAにはエクソンとイントロンの両方が含まれていますが、その後「スプライシング」という編集作業で、不要なイントロンが切り取られ、エクソン同士がつなぎ合わされます。

こうして完成した「成熟したRNA」が、実際のタンパク質づくりの設計図になります。エクソンとイントロンの仕組みは、エクソンとイントロンの解説ページでさらに詳しくご覧いただけます。

ヒトゲノムの中で、このエクソンが占める割合はわずか約1.5〜2%(約3,000万〜5,000万塩基対)にすぎません[1]。残りの98%以上は、イントロンや、遺伝子の働きを調節する領域などで占められています。つまりエクソームとは、ゲノムという広大な土地のうち、「建物(タンパク質)の設計図」が直接書かれている、ごく一部の区画なのです。

3. なぜエクソームが重要なのか:1.5%に集中する「疾患の原因」

エクソームが医学で特別に注目される理由は、ある「偏り」にあります。エクソームはゲノム全体のわずか約1.5%しかないにもかかわらず、これまでに分かっている遺伝性疾患の原因となる変化(病原性バリアント)の約85%が、このエクソン領域とその周辺に集中しているのです[2]

これは考えてみれば自然なことです。エクソンはタンパク質の「設計図そのもの」ですから、ここに1文字でも誤りがあると、できあがるタンパク質の形や働きに直接影響が出やすいのです。逆に、設計図ではない領域の変化は、症状に結びつかないことも多くあります。

💡 用語解説:ミスセンス変異・ナンセンス変異

ミスセンス変異とは、DNAの文字が1つ変わることで、設計されるアミノ酸が別の種類に置き換わる変化です。タンパク質の形がわずかに変わり、機能に影響することがあります。

ナンセンス変異は、タンパク質づくりを途中で止めてしまう「停止信号」が誤って生まれる変化です。いずれもエクソンに起きると影響が出やすい変異です(ミスセンス変異の解説ナンセンス変異の解説)。

この「1.5%に85%が集中する」という性質があるからこそ、ゲノム全体(100%)を読むよりも、エクソームだけ(1.5%)を集中的に読むほうが、はるかに少ない費用と時間で、効率よく病気の原因を探せるのです。これが、全エクソーム解析(WES)が世界中で急速に広まった最大の理由です。

4. 全エクソーム解析(WES)とは:エクソームを読み解く検査

全エクソーム解析(Whole Exome Sequencing:WES)とは、その名のとおり、エクソームすなわち約20,000の遺伝子のエクソン領域を、まとめて読み解く検査です[6]。次世代シーケンサー(NGS)という高速の解読装置を使って、患者さんのDNAからエクソン部分だけを選び出し、数百万のDNA断片を一気に並列で読み取ります。

💡 用語解説:次世代シーケンサー(NGS)

次世代シーケンサー(NGS)とは、DNAの文字配列を超高速・大量に読み取る装置です。かつての方法(サンガー法)が遺伝子を1つずつ読んでいたのに対し、NGSは数千万〜数億の断片を同時に解読できます。

これにより「とりあえず約2万遺伝子をまとめて調べる」ことが現実になりました(次世代シーケンサーの解説)。

WESのおおまかな流れ

WESは、いくつかの精密な工程を経て進められます。専門的な手順ですが、流れを知っておくと結果の意味が理解しやすくなります。

  • ① 検体採取:血液、唾液、または頬の内側の粘膜(口腔粘膜スワブ)からDNAを取り出します。
  • ② エクソンの濃縮:エクソンにくっつく特殊な「釣り針(プローブ)」を使って、エクソンを含む断片だけを集め、不要な部分を洗い流します。
  • ③ 読み取り(シーケンス):濃縮したエクソンを次世代シーケンサーで大量に読み取ります。
  • ④ 解析(バイオインフォマティクス):読み取った配列を標準ゲノムと照合し、違っている部分(バリアント)を見つけ出します。
  • ⑤ 解釈と報告:見つかった多数のバリアントを症状や頻度でしぼり込み、病気に関係するものだけを臨床遺伝専門医が評価して報告します。
補足:1人のDNAからは通常、数万のバリアントが見つかります。その大半は病気とは関係のない個人差(多型)です。「どれくらい正確に読めたか」を示すカバレッジという指標も、検査の信頼性を支える重要なポイントです。
仲田洋美院長

🩺 院長コラム【1.5%の地図が、答えへの近道になる】

原因のわからない症状を抱えたお子さんとご家族が、何年も病院を転々とする——いわゆる「診断のオデッセイ(終わりなき旅)」は、決して珍しい話ではありません。どこを調べればいいのか分からないまま、検査だけが積み重なっていくのは、ご家族にとって大きな負担です。

エクソームという「疾患原因が集まる1.5%の地図」を一度にまとめて読めるようになったことで、こうした旅に区切りがつく方が増えました。エクソームは単なる学術用語ではなく、ご家族の不安と時間を減らすための、とても実際的な道具なのだと私は感じています。

5. WESとWGS(全ゲノム解析)の違い

エクソームだけを読むWESに対し、ゲノム全体(100%)を読むのが全ゲノム解析(Whole Genome Sequencing:WGS)です。両者は似ているようで、読む範囲・費用・見つけられる変異が異なり、目的に応じて使い分けられます。

比較項目 全エクソーム解析(WES) 全ゲノム解析(WGS)
読む範囲 エクソン(設計図部分)のみ。ゲノムの約1.5〜2% エクソン+イントロン+調節領域など全体(100%)
対象 約20,000のタンパク質コード遺伝子 コード遺伝子+非コード領域すべて
得意な変異 一塩基置換、小さな欠失・挿入、一部のコピー数変異 上記に加え、大きな構造異常(転座・逆位)、イントロン深部・調節領域の変異
データ量 比較的小さく、解析が速い 非常に大きく、高い計算資源が必要
費用の傾向 相対的に安価 WESより高くなることが多い
位置づけ 多くの場合の第一選択 WESで原因不明、構造異常が疑われる場合の次の一手

WESには「エクソンにしか釣り針を投げない」という構造上の限界があります。イントロンの深い部分や、遺伝子の働きを調節する領域の変化、巨大な構造変異などは、WESでは原理的に捉えにくいのです。こうしたケースでは、ゲノム全体を均一に読むWGSのほうが感度が高くなります。そのため臨床では、まず費用と速度のバランスがよいWESから始め、それでも原因が分からないときにWGSへ進む、という流れが合理的とされています。

6. エクソーム解析でどれくらい分かるのか:診断率とトリオ解析

WESは、あらかじめ特定の遺伝子にしぼり込むのではなく、約20,000のすべての遺伝子を網羅的に調べます。そのため、従来の検査と比べて「診断率(原因がはっきりつく割合)」が大きく向上します[3]

検査手法別の診断率(代表的な目安)

染色体マイクロアレイ(CMA)
17.5%
複数遺伝子パネル検査
25%
全エクソーム解析(WES)
36%
全ゲノム解析(WGS)
40%

神経発達症・希少疾患領域における代表的な診断率の目安(GeneDx等の臨床データに基づく)[3]。実際の診断率は、症状や解析手法(シングルトン/トリオ)によって異なります。グラフの横幅は見やすさのために調整しています。

WESの診断率は、染色体マイクロアレイ(CMA)のおよそ2倍に達します。さらに、WESで診断が確定した症例の一部は、もし症状から推測してパネル検査だけを選んでいたら見逃されていた——つまり「予想外の遺伝子」に原因があったというデータも報告されています[3]。網羅的に調べることの強みがここにあります。

診断率をさらに高める「トリオ解析」

💡 用語解説:トリオ解析・新生突然変異(de novo)

トリオ解析とは、お子さん本人だけでなく、ご両親も含めた3人のDNAを同時に解析する方法です。本人だけを調べる「シングルトン解析」と区別されます。

3人を比べると、新生突然変異(de novo変異/両親にはなく、お子さんで初めて生じた変化)をはっきり見つけられます。重い神経発達症の多くはこの新生突然変異が原因のため、トリオ解析は診断の大きな鍵になります。

トリオ解析には、両親が持っている変化を「病気の原因ではない」と判断しやすくなり、結果の解釈の精度が上がるという利点もあります。報告では、本人のみ(シングルトン)で約15〜25%、本人+両親(トリオ)で約25〜37%と、診断率が一段と高まることが示されています。

7. 国際ガイドライン:「最後の手段」から「第一選択」へ

ここ数年で、エクソーム解析の位置づけは大きく変わりました。かつては「通常の検査がすべて失敗したあとの最後の手段」とされていましたが、現在は初期評価の段階で実施すべき「第一選択検査」へと格上げされています。主要な医学会が、相次いでガイドラインを改訂したためです。

  • ACMG(米国の医学遺伝・ゲノム学会)は2021年に、1歳未満で先天奇形のある児や、18歳未満で知的障害・発達遅延のある児に対し、WES/WGSを第一・第二選択として強く推奨しました。
  • AAP(米国小児科学会)は2025年、2014年以来となる大幅な更新を行い、原因不明の発達遅延・知的障害をもつ小児に対し、WES/WGSを第一選択(Tier 1)として正式に推奨しました[4]

この転換を後押ししたのは、医療経済的な根拠です。最初から網羅的なWESを行うほうが、複数の専門医を受診して効果の薄い検査を繰り返すよりも、患者1人あたり平均で約6,845ドル(およそ100万円前後)の医療費を削減できると報告されています[4]。最新技術の進歩により、重症の新生児に対して結果を数日〜数時間で返す「迅速ゲノム解析」も現実になりつつあります。

8. 出生前と出生後:エクソーム解析の臨床での位置づけ

「遺伝子の検査」と聞くと出生前(妊娠中)をイメージしがちですが、エクソーム解析(WES)が最も活躍するのは、おもに出生後の「原因不明の症状の診断」の場面です。出生前と出生後では、使われる検査が異なるため、混同しないことが大切です。

出生後(生まれたあと)の診断

原因不明の症状があるお子さんでは、血液・唾液・口腔粘膜からWES/WGSを行い、原因を網羅的に探します。染色体の細かな増減を調べる染色体マイクロアレイ(CMA)も用いられます。

原因不明の症状のための遺伝子検査をご覧ください。

出生前(妊娠中)の検査

スクリーニング(可能性を調べる)=母体の血液で行うNIPT。これは確定診断ではありません。

確定診断羊水検査・絨毛検査。羊水・絨毛の検体にCMAを併用すると、染色体のGバンド法では見えない微小な欠失も確定診断できますが、学会指針では原則として超音波で構造異常がある場合などが対象とされています。

胎児を対象とした出生前のエクソーム解析(prenatal exome)は、超音波で複数の構造異常がみられる場合などに、専門施設で行われることがあります。ただし、出生前に原因を見つけることが常にご家族の利益になるとは限りません。どの検査を、いつ、受けるかどうかは、ご家族自身が決めることです。私たちは特定の検査を勧めたり、不安をあおったりする立場ではなく、判断に必要な情報を中立にお伝えする役割を担っています。

💡 NGSの感度がもたらす「予期せぬ発見」

エクソーム解析やNIPTで使われるNGSは、ごく微量のDNAの異常まで捉えるほど高感度です。そのため、たとえばNIPTの採血で妊婦さん自身の未発見のがんに由来するDNAが偶然見つかることがあります。これはNGSの感度の高さと、ゲノム解析が多くの情報を含むことを示す一例で、結果の解釈にいかに専門的な知識が必要かを物語っています(NIPTで母親のがんが見つかる仕組み)。

9. エクソーム解析の限界・再解析・倫理

エクソーム解析は万能ではありません。WES/WGSを実施しても、約60〜75%の症例では原因が特定できないのが現状です。これは、ヒトゲノムの機能に関する科学的理解がまだ道半ばであり、未知の遺伝子の関与、複数の遺伝子の相互作用、環境要因、体細胞モザイク(一部の細胞だけにある変化)などが、検出の網から漏れるためです。

💡 用語解説:意義不明のバリアント(VUS)と再解析

VUS(意義不明のバリアント)とは、病気の原因なのかどうか、現時点ではまだ判断できない変化のことです。検出された変化は、病的・病的疑い・意義不明(VUS)・良性疑い・良性の5段階で分類されます。

遺伝子研究は日々進歩しているため、今日「VUS」とされた変化が、数年後に「病的」と分かることも珍しくありません。保存したデータを後で照合する「再解析」により、国内研究では約10〜20%で新たに診断が確定したとの報告もあります。

また、目的とした病気以外の予期せぬ結果(二次的所見)が見つかることもあります。たとえば発達の遅れを調べる過程で、将来のがんのリスクに関わる変化が偶然見つかる、といったケースです。陽性でも必ず治療法があるわけではなく、陰性でも「遺伝的要因が100%ない」と言い切れるわけではありません。こうした複雑で重い情報を、どう受け止め、どう生きていくか——その意思決定に寄り添うのが遺伝カウンセリングです

10. よくある誤解

誤解①「エクソーム=ゲノム全体」

エクソームはゲノムのわずか約1.5%です。ゲノム全体を読むのはWGS、エクソンだけを読むのがWESで、対象範囲がまったく違います。

誤解②「WESを受ければ必ず原因が分かる」

WESでも約6〜7割は原因が特定できません。陰性でも病気を完全に否定はできず、将来の再解析に望みをつなぎます。

誤解③「遺伝子検査は妊娠中だけのもの」

WESがおもに使われるのは出生後の原因不明の症状の診断です。出生前と出生後では使う検査が異なります。

誤解④「結果はすぐに白黒つく」

「意義不明(VUS)」という、今は判断できない結果も少なくありません。時間とともに評価が変わることがあります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「分からない」も、大切な結果です】

エクソーム解析を受けても原因が分からなかったとき、ご家族は大きく落胆されます。けれど私は、「現時点では分からない」という結果も、立派な医学的情報だとお伝えしています。今日のVUSが、来年には病的変異と分かることがある——だからこそ、データを保存し、研究の進歩とともに見直す再解析の道があります。

結果が陽性でも陰性でも、VUSでも、その人にとっての意味は一つひとつ違います。数値や分類を渡して終わりにするのではなく、「この結果をどう受け止め、どう生きていくか」まで一緒に考えること。それが、エクソームという強力な技術を、本当にご家族の力に変えるために欠かせないことだと考えています。

よくある質問(FAQ)

Q1. エクソームとゲノムは何が違うのですか?

ゲノムはDNA全体(約30億文字)を指すのに対し、エクソームはそのうちタンパク質の設計図として使われる「エクソン」だけを集めたものです。エクソームはゲノム全体の約1.5〜2%にすぎませんが、既知の遺伝性疾患の原因の約85%がここに集中しています。

Q2. 全エクソーム解析(WES)では何がわかりますか?

約20,000の遺伝子のエクソンを一度に調べ、一塩基置換や小さな欠失・挿入などの変化を検出します。原因不明の症状の診断、適切な治療・管理方針の決定、ご家族の再発リスクの評価などに役立ちます。一方で、調節領域の変化や大きな構造異常は捉えにくいという限界もあります。

Q3. WESとWGS(全ゲノム解析)はどちらを受ければよいですか?

どちらが適しているかは、症状や検査歴によって異なり、ご家族と医師が相談して決めるものです。一般には、費用と速度のバランスがよいWESから始め、原因が分からない場合や構造異常が疑われる場合に、より網羅的なWGSを検討する流れが取られることが多いです。

Q4. エクソーム解析で必ず原因がわかりますか?

いいえ。WES/WGSでも約60〜75%の症例では原因が特定できません。未知の遺伝子の関与や複数遺伝子の相互作用、検査技術の限界などが理由です。ただしデータを保存しておけば、将来新しい遺伝子が見つかった際に再解析でき、診断が確定する可能性が残ります。結果報告の範囲も併せてご確認ください。

Q5. トリオ解析とは何ですか?なぜ両親も調べるのですか?

お子さん本人とご両親の3人を同時に解析する方法です。3人を比べることで、両親にはなくお子さんで初めて生じた「新生突然変異(de novo変異)」を見つけやすくなり、また両親が持つ変化を「病気の原因ではない」と判断しやすくなります。その結果、診断率が高まり、結果の解釈も確実になります。

Q6. エクソーム解析は妊娠中(出生前)にもできますか?

胎児を対象とした出生前のエクソーム解析は、超音波で複数の構造異常がみられる場合などに専門施設で行われることがあります。妊娠中のスクリーニングにはNIPT、確定診断には羊水検査・絨毛検査が用いられます。出生前に調べるかどうかはご家族が決めることであり、まずは臨床遺伝専門医にご相談ください。

Q7. 結果が「意義不明(VUS)」だったらどうなりますか?

VUSは、病気の原因かどうか現時点では判断できない変化です。今は確定できなくても、遺伝子研究の進歩により、後日「病的」または「良性」と再分類されることがあります。保存したデータを照合する再解析によって、数年後に診断が確定するケースも報告されています。判断に迷う場合は臨床遺伝専門医にご相談ください。

🏥 エクソーム解析・遺伝子検査のご相談

原因不明の症状やエクソーム解析(WES)に関するご相談は、
臨床遺伝専門医が在籍するミネルバクリニックにお気軽にどうぞ。

関連記事

参考文献

  • [1] National Human Genome Research Institute (NHGRI). Exome — Genetics Glossary. [genome.gov]
  • [2] Illumina. Whole-Exome Sequencing(エクソン領域のバリアント検出). [Illumina]
  • [3] GeneDx. Whole Exome Sequencing — Clinical Genetic Testing(診断率データ). [GeneDx]
  • [4] American Academy of Pediatrics. Genetic Evaluation of the Child With Intellectual Disability or Global Developmental Delay. Pediatrics. 2025;156(1):e2025072219. [AAP Pediatrics]
  • [5] A meta-analysis of diagnostic yield and clinical utility of genome and exome sequencing in pediatric rare and undiagnosed genetic diseases. PubMed. [PubMed]
  • [6] MedlinePlus Genetics (NIH/NLM). What are whole exome sequencing and whole genome sequencing? [MedlinePlus]

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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