この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

発達の遅れ、けいれん、哺乳の弱さ、いくつも重なる症状——検査を重ねても「原因不明」「診断がつかない」と言われ続けるお子さんでは、遺伝子の変化が原因になっていることがあります。全エクソーム解析(WES)と全ゲノム解析(WGS)は、およそ2万の遺伝子を一度に調べ、病気を決めきれないお子さんの原因を探す遺伝子検査です。原因がわかれば、病名・見張るべき合併症・使える制度が決まり、次のお子さんで同じことが起こる確率と、次の妊娠でどう備えるかまで考えられるようになります。このページでは、原因が見つかる割合、WESとWGSの選び方、見つけにくい変化と報告される範囲、結果のあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
診断がつかないお子さんの症状の原因になっている遺伝子の変化を、およそ2万の遺伝子から探します。子どもを対象にした研究をまとめた解析では、原因が見つかった割合は全エクソームで約36%、全ゲノムで約41%でした。ご両親も一緒に調べるトリオ解析では見つかりやすくなります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
発達の遅れ・知的障害・けいれん・体の特徴などがあり、染色体検査やマイクロアレイ、パネル検査でも原因がわからなかったお子さんと、次のお子さんへの確率を知りたいご両親です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
全エクソーム(WES)は税込660,000円、全ゲノム(WGS)は税込990,000円で、結果までは5〜7週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などです。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。何でもわかる検査ではなく、症状と関係のない保因者の情報は原則として報告されないことも、事前にご説明します。
1. 「診断がつかない」とは:未診断疾患と診断のオデッセイ
症状があり、いくつもの病院で検査を受けても病名が決まらない状態を「未診断疾患」と呼びます。病名を求めて病院を回り続けることは、英語で「診断のオデッセイ(diagnostic odyssey)」と呼ばれています。オデッセイは、長くさまよう旅を意味する言葉です。
こんな症状が続いていませんか
お子さんに次のような様子があり、原因不明と言われているご家族に向けたページです。
- ●生まれたときから哺乳が弱い、授乳に時間がかかる、体重が増えにくい
- ●首すわり・お座り・歩き始めが遅い(運動発達の遅れ)、言葉が出ない(言葉の遅れ)
- ●体がやわらかい(筋緊張低下)、または硬い
- ●けいれん(てんかん)がある、顔つきや体に特徴がある
- ●心臓・腎臓・目・耳など、いくつもの場所に症状があり、ひとつの病気で説明できない
- ●染色体検査やマイクロアレイを受けても原因がわからず、何科に相談すればよいかわからない
診断までにかかる年数
ヨーロッパの41か国で、希少疾患とともに暮らす6,507人に尋ねた調査では、症状が出てから診断がつくまでの期間は平均4.7年でした[1]。原因がわからない期間が長いほど、お子さんにもご家族にも、検査と通院の負担が重なっていきます。
原因がわからないと困ること
病名が決まらないと、何に気をつけて、どの専門の医療機関で、どんな療育や支援を受ければよいかが決めにくくなります。心臓・腎臓・目・耳など、病気によって見張るべき合併症も違います。ご両親にとっては、次のお子さんで同じことが起こる確率がわからないまま、次の妊娠を考えなければならない、という悩みにもつながります。
2. 遺伝子検査で原因が見つかる割合
遺伝性が疑われる症状のある子どもを対象にした37の研究(20,068人)をまとめた解析では、原因が見つかった割合は、全ゲノム解析(WGS)で41%、全エクソーム解析(WES)で36%、染色体マイクロアレイで10%でした[2]。裏を返せば、半分以上のお子さんでは、WESやWGSでも原因が見つからないということです。
📊 子どもの遺伝性が疑われる病気で、原因が見つかった割合
※2011年1月〜2017年8月に発表された研究のメタ解析[2]。研究ごとに対象のお子さんや調べ方が違うため、目安として受け取ってください。
こうした結果を受けて、ACMG(米国臨床遺伝・ゲノム学会)は2021年の指針で、先天異常や、発達の遅れ・知的障害のあるお子さんには、エクソーム・ゲノム検査を最初の(または2番目の)検査として行うことを強く勧めています[4]。
親子で調べる「トリオ解析」で見つかりやすくなる理由
同じ研究の中でくらべた5つの研究では、お子さんとご両親の3人を一緒に調べるトリオ解析のほうが、お子さんだけを調べるより、原因が見つかる見込みが約2倍(オッズ比2.04)高くなっていました[2]。
人は誰でも、病気と関係のない遺伝子の違いをたくさん持っています。ご両親のDNAとくらべると、お子さんに新しく起きた変化(新生突然変異〔de novo〕)や、ご両親からひとつずつ受け継いだ変化の組み合わせを、しぼり込みやすくなるためです。トリオ解析のしくみはトリオWES(全エクソーム解析)で解説しています。
日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)では
日本では、国の研究事業として未診断疾患イニシアチブ(IRUD)が行われています。2021年3月までの6年間の報告では、全エクソーム解析を終えた5,136家系のうち2,247家系(43.8%)で診断が確定し、新しい病気(病気のタイプ)も39見つかっています[3]。病気の原因になる遺伝子は今も新しく見つかり続けており、それが、あとで解析し直す(再解析)ことに意味がある理由にもなっています。
知的障害・発達の遅れの原因はどこまでわかるか
知的障害や発達の遅れの原因には、染色体の数や大きな構造の変化、染色体の小さな欠失・重複(微小欠失・微小重複)、1つの遺伝子の変化、生まれる前後の環境など、さまざまなものがあります。遺伝子の変化が原因のとき、その多くは見た目や家族歴だけでは区別できません。「どの原因なのか」を決めるには、検査で確かめるしかないというのが、遺伝子検査を考える出発点です。
3. どんな人がこの検査を受けるとよいか
症状があるのに病名を決めきれないお子さんと、次のお子さんへの確率を知りたいご両親に向く検査です。病名がほぼしぼれているときは、もっと範囲をしぼった検査のほうが向くこともあります(下の表)。
診断がつかないお子さん
- ●発達の遅れ・知的障害に、けいれん・体の特徴・内臓の症状などが重なっている
- ●染色体検査(Gバンド法)・マイクロアレイ・病気ごとのパネル検査で原因がわからなかった
- ●きょうだいに同じような症状がある、ご両親が血縁関係にある
次のお子さんを考えているご両親
次のお子さんで同じ病気が起こる確率は、原因と遺伝のしかたで大きく変わります。お子さんの原因がわからないままでは、確率を言うことも、次の妊娠で出生前に何を調べるかを決めることもできません。原因がわかってはじめて、次の妊娠の計画が具体的になります(第7章)。
ほかの道:研究として調べるIRUD
IRUDは研究のプロジェクトで、2つ以上の臓器にまたがる症状や、遺伝子の変化が疑われる症状が6か月以上(乳幼児を除く)続いて生活に支障があり、診断がついていない方が対象です。かかりつけ医を通じてIRUD拠点病院に申し込み、診断委員会が網羅的な遺伝子解析が適切と判断すると登録されます。遺伝子解析の費用の負担はなく、拠点病院の受診料はかかります(IRUD公式ページ、2026年10月時点で確認)。どの道を選ぶかは、お子さんの状況とご家族の考えで決めてよいものです。当院では紹介状がなくても相談でき、遺伝カウンセリングのうえで検査を受けられます。
この検査より別の検査が向いている場合
疑う病気がしぼれているか、どんな種類の変化が疑われるかで、合う検査が変わります。比べる相手は「検査の種類」です。
🔍 どの検査を選ぶか(目安)
※どの検査が合うかは、症状・これまでの検査・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
4. 全エクソーム解析(WES)と全ゲノム解析(WGS)の違いと選び方
WESは遺伝子のうち、たんぱく質の設計図になる部分(エクソン)をまとめて読む検査で、WGSはエクソンの外側まで含めて全体を読む検査です。多くの場合はWESから始め、WESで見つからないときにWGSを考えます。最初からWGSを選ぶこともできます。
💡 用語解説:エクソームとゲノム
ゲノムは、ひとりの人がもつDNAの情報の全部です。そのうち、遺伝子の中でたんぱく質の設計図になっている部分をエクソンと呼び、エクソンをすべて集めたものをエクソームと呼びます。WESはエクソームを、WGSはゲノム全体を読みます。
5. 全エクソーム・全ゲノムでも「全部わかる」わけではありません:見つけにくい変化・調べない変化
WESもWGSも、遺伝子の変化を広く調べる検査ですが、何でもわかる検査ではありません。しくみの上で見つけにくい変化や、そもそも調べていない変化があります。「全部調べたから、遺伝の病気はない」とは言えません。
⚠️ WES・WGSで見つけにくい・調べない変化
※当院が検査を依頼している検査機関の検査の限界の記載による(2026年10月確認)。
そのほかにも、よく似た配列がゲノムの別の場所にある遺伝子(偽遺伝子をもつ遺伝子など)では、変化を正しく読み取りにくいことがあります。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告されます。読み取りの質が十分でない変化は、サンガー法という別の読み方で確かめます。
疑う病気によっては、別の検査を組み合わせます。たとえば、リピート伸長の病気ならリピート伸長の検査、ミトコンドリアの病気ならミトコンドリア病の遺伝子検査、インプリンティング疾患ならメチル化解析の検査、染色体の構造の変化なら染色体検査(Gバンド法)です。どの検査を足すかは、症状を伺ってから遺伝カウンセリングで決めます。
⚠️ 「原因が見つからない」は「遺伝の病気ではない」ではありません
WES・WGSで原因が見つからなくても、遺伝的な原因を否定することはできません。検査会社の資料でも、陰性の結果は遺伝的な原因を否定するものではなく、陽性の結果もほかに病的な変化がないことを意味しない、とされています。見つからなかったときの次の一手は、第8章でご説明します。
6. 結果には報告される範囲があります:WES・WGSは保因者検査の代わりになりません
WES・WGSでは、およそ2万の遺伝子のデータが得られますが、そのすべてが報告されるわけではありません。結果は、米国の学会(ACMG)のガイドラインなどにもとづいて、お伝えする範囲が決まっています。データの中にあっても、報告されない情報があります。
報告されるもの・されないもの
たとえば、お子さんが症状と関係のない潜性遺伝の病気の保因者であるというデータが検査の中にあっても、原則として報告されません。ACMGの二次的所見のリストでも、潜性遺伝の遺伝子は、病的な変化が2つそろったときだけ報告の対象とされ、変化を1つだけ持つ保因者は対象になっていません[5]。
二次的所見は、受け取るかどうかを選べます
二次的所見とは、検査の目的とは別の病気の原因が見つかることです。ACMGは、がんや心臓の病気など、早く知れば治療や予防につなげられる病気の遺伝子をリストにしており、最新の版(ACMG SF v3.3、2025年)は84遺伝子です。2025年の改訂ではABCD1・CYP27A1・PLNの3遺伝子が加わりました[5]。当院では、二次的所見を受け取るかどうかを、検査の前の遺伝カウンセリングで考えたうえで、ご自身で選んでいただきます(希望された場合のみ報告・無料)。くわしくは二次的所見の開示方針をご覧ください。なお、ACMGは、二次的所見の報告は症状に合わせた診断のための遺伝子検査の代わりにはならない、としています[5]。
💡 子どもを持つ前に、保因者かどうか知りたい方へ
WES・WGSは、症状の原因を探すための検査です。症状と関係のない保因者の情報は原則として報告されないため、保因者検査の代わりにはなりません。ご自身やきょうだいが、将来お子さんを持つ前に保因者かどうかを知りたい場合は、保因者検査(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)をお選びください。入口は遺伝子ブライダルチェックです。
7. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子の変化が見つかると、「わかった」で終わりではなく、お子さん・ご家族・次の妊娠のそれぞれで、次にできることが決まります。研究のまとめでは、WESで17%、WGSで27%のお子さんで治療や管理の方針が変わっていました[2]。
結果の受け取り方
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。
お子さんご本人:診断の確定と、これからの備え
病名が決まると、その病気で起こりやすい合併症と、いつ何を調べればよいかがわかります。治療や療育・支援は、その病気をよく知る専門の医療機関で続けていきます。病名がわかると、その病気が指定難病や小児慢性特定疾病の対象かどうかを確かめられ、制度の利用を考える手がかりにもなります。同じ病気のご家族の会とつながれることもあります。
ご家族:同じ変化をピンポイントで調べられる
お子さんで原因がわかると、その報告書がご家族にとっていちばんの手がかりになります。ご両親・きょうだい・おじ・おばなどは、既知の変異検査で、同じ変化を持っているかを1か所だけ調べられます。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のもとで行います。
次のお子さん:確率と、次の妊娠での備え
次のお子さんで同じ病気が起こる確率は、遺伝のしかたで変わります。
- ●お子さんに新しく起きた変化(de novo):ご両親のどちらも持っていない変化です。ご両親のせいではありません。次のお子さんでの確率は低いものの、ゼロではありません。ご両親の卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」があるためです。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。
- ●常染色体潜性(劣性)遺伝:ご両親がともに保因者で、次のお子さんごとに4分の1の確率で同じ病気になります。
- ●常染色体顕性(優性)遺伝でご両親のどちらかが持っている場合:次のお子さんごとに2分の1の確率で受け継ぎます。症状の重さは人によって違うことがあります。
- ●X連鎖遺伝:お母さんが保因者かどうか、お子さんの性別で確率が変わります。
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、次に妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。くわしくは羊水検査・絨毛検査をご覧ください。
お子さんで見つかった遺伝子が、当院のNIPTのダイヤモンドプラン・インペリアルプランの対象遺伝子に入っていれば、NIPTで調べられることもあります。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。どの遺伝子が対象かは、遺伝カウンセリングでお子さんの結果を見ながらご説明します。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。何もしないで次のお子さんを迎えることも、同じように尊重される選択です。
きょうだいが将来、結婚や出産を考えるとき
病気のあるお子さんのきょうだいが大人になり、結婚や出産を考えるとき、「自分も同じ変化を持っているのでは」「相手の家族に反対されるのでは」と悩むことがあります。お子さんの原因がわかっていれば、その報告書がいちばんの手がかりになり、きょうだいは既知の変異検査で、同じ変化を持っているかを調べられます。わかっていなければ、症状のないきょうだいご自身を検査します。潜性遺伝の病気なら、パートナーの保因者検査で、お子さんへの確率を具体的に考えられます。
なお、知的障害のあるご本人の検査は、ご本人の利益のために行うことが前提です。ご本人は同意できず、代わりに同意するのはご本人のためであることが前提なので、きょうだいの将来のためにご本人を検査することはできません。きょうだいの不安に応えるためには、症状のないきょうだいご自身を検査します。確率は病気とご家族ごとに違い、知ったうえで選べることがあります。遺伝のことは、結婚をあきらめる理由ではなく、知って備えるための情報だと考えています。
8. 原因が見つからなかったとき・VUSが見つかったとき
原因が見つからなかったときも、そこで終わりではありません。見つからなかった理由として、まだ病気との関係がわかっていない遺伝子が原因である、この検査で見つけにくい種類の変化である(第5章)、遺伝子以外の原因である、などが考えられます。
次の一手:再解析・WGS・ほかの検査
- ●再解析:検査で得られたデータは保存され、新しく病気の遺伝子が見つかったときに解析し直すことで、追加の情報が得られる可能性があります。IRUDでも、6年間で39の新しい病気(病気のタイプ)が見つかっています[3]。
- ●WESからWGSへ:エクソンの外の変化や、ゲノム全体の欠失・重複を調べます。
- ●ほかの種類の検査:染色体の構造なら染色体シーケンス解析(CSA)、遺伝子の働き方(RNA)まで見るならRNA統合シークエンス解析、リピート伸長やメチル化の病気ならそれぞれ専用の検査を考えます。
原因が見つからなくても、症状に合わせた療育や支援を受けることはできます。症状が変わったり、新しい症状が出たりしたときは、もう一度ご相談ください。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、病気の原因かどうかを今の知識では決められない変化です。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。ご両親の検査の結果や研究が進むことで、のちに意味がはっきりすることもあります。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
全エクソーム(WES)は税込660,000円、全ゲノム(WGS)は税込990,000円で、結果までは5〜7週間です。このページでご案内している遺伝子検査は、すべて、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います(染色体検査〔Gバンド法〕とマイクロアレイ染色体検査を除く)。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
▶
結果のご説明5〜7週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で遺伝カウンセリングを受けていただけます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、報告される範囲、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【「原因不明」のまま、次の一歩を決めなくていいように】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。お子さんに新しく起きた変化だとわかれば、ご両親のせいではないことがはっきりします。原因がわからないままだと、次のお子さんのことも、きょうだいの将来のことも、「わからない」の上で考えるしかありません。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
一方で、全エクソームや全ゲノムは何でもわかる検査ではなく、報告される範囲も決まっています。だからこそ、検査の前に、何がわかり何がわからないかを一緒に確かめることを大切にしています。原因がわかったご家族には、次の妊娠での出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 診断がつかない子どもの遺伝子検査で、原因はどれくらい見つかりますか?
遺伝性が疑われる症状のある子どもを対象にした37の研究をまとめた解析では、原因が見つかった割合は全ゲノム解析(WGS)で41%、全エクソーム解析(WES)で36%、染色体マイクロアレイで10%でした。半分以上のお子さんでは原因が見つからないため、見つからなかったときの次の一手も事前にご説明します。
Q2. 全エクソーム解析(WES)と全ゲノム解析(WGS)の違いは?どちらを選べばいいですか?
WESは約2万の遺伝子のたんぱく質の設計図になる部分(エクソン)を読み、WGSはエクソンの外側も含めてゲノム全体を読みます。多くの場合はWESから始め、WESで見つからないときや、エクソンの外の変化・ゲノム全体の欠失や重複まで一度に調べたいときにWGSを考えます。
Q3. 費用はいくらですか?保険はききますか?
全エクソーム解析(WES)は税込660,000円、全ゲノム解析(WGS)は税込990,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。トリオ解析の料金は遺伝カウンセリングでご案内します。
Q4. 親も一緒に検査(トリオ解析)したほうがいいのですか?
研究のまとめでは、お子さんとご両親の3人を一緒に調べるトリオ解析のほうが、お子さんだけを調べるより、原因が見つかる見込みが約2倍高くなっていました。ご両親のDNAとくらべることで、お子さんに新しく起きた変化などをしぼり込みやすくなるためです。
Q5. WES・WGSで保因者かどうかもわかりますか?
症状と関係のない潜性(劣性)遺伝の病気の保因者であるというデータは、検査の中にあっても原則として報告されません。そのため、WES・WGSは保因者検査の代わりになりません。子どもを持つ前に保因者かどうかを知りたい方は、保因者検査をお選びください。
Q6. 原因が見つからなかったら、どうすればいいですか?
原因が見つからなくても、遺伝的な原因を否定することはできません。データを解析し直す再解析、WESからWGSへの切りかえ、染色体シーケンス解析やRNAまで見る検査など、次の選択肢があります。症状に合わせた療育や支援は、原因がわからなくても受けられます。
Q7. IRUD(未診断疾患イニシアチブ)とは何ですか?
IRUDは、診断がつかない患者さんの遺伝子を調べる国の研究プロジェクトです。かかりつけ医を通じてIRUD拠点病院に申し込み、診断委員会が網羅的な遺伝子解析が適切と判断すると登録されます。遺伝子解析の費用の負担はなく、拠点病院の受診料はかかります(2026年10月時点のIRUD公式ページによる)。
Q8. 次の子どもに同じ病気が起こる確率は?
原因と遺伝のしかたで変わります。常染色体潜性遺伝ならお子さんごとに4分の1、ご両親のどちらかが持つ常染色体顕性遺伝なら2分の1です。お子さんに新しく起きた変化なら確率は低いものの、ご両親の生殖細胞にだけ変化がある場合があるため、ゼロではありません。原因がわかっていれば、次の妊娠で絨毛検査・羊水検査による出生前診断を計画できます。
Q9. 病気のある子のきょうだいが結婚するとき、遺伝のことを心配されたらどうすればいいですか?
お子さんの原因がわかっていれば、その報告書をもとに、きょうだいが既知の変異検査で同じ変化を持っているかを調べられます。わかっていなければ、症状のないきょうだいご自身を検査します。確率は病気とご家族ごとに違い、知ったうえで選べることがあります。
🧬 「原因不明」から、次の一歩へ
原因がわかれば、お子さんの病名と備え方、ご家族の検査、次のお子さんへの確率と次の妊娠での選択肢まで、具体的に考えられるようになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、紹介状がなくてもご相談いただけます。検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Faye F, Crocione C, Anido de Peña R, et al. Time to diagnosis and determinants of diagnostic delays of people living with a rare disease: results of a Rare Barometer retrospective patient survey. Eur J Hum Genet. 2024;32(9):1116-1126. [DOI: 10.1038/s41431-024-01604-z]
- [2] Clark MM, Stark Z, Farnaes L, et al. Meta-analysis of the diagnostic and clinical utility of genome and exome sequencing and chromosomal microarray in children with suspected genetic diseases. NPJ Genom Med. 2018;3:16. [DOI: 10.1038/s41525-018-0053-8](PMID: 30002876)
- [3] Takahashi Y, Date H, Oi H, et al. Six years’ accomplishment of the Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases: nationwide project in Japan to discover causes, mechanisms, and cures. J Hum Genet. 2022;67(9):505-513. [DOI: 10.1038/s10038-022-01025-0](PMID: 35318459)
- [4] Manickam K, McClain MR, Demmer LA, et al. Exome and genome sequencing for pediatric patients with congenital anomalies or intellectual disability: an evidence-based clinical guideline of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genet Med. 2021;23(11):2029-2037. [DOI: 10.1038/s41436-021-01242-6]
- [5] Lee K, Abul-Husn NS, Amendola LM, et al. ACMG SF v3.3 list for reporting of secondary findings in clinical exome and genome sequencing: a policy statement of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genet Med. 2025;27(8):101454. [DOI: 10.1016/j.gim.2025.101454](PMID: 40568962)
関連記事