この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

染色体シーケンス解析(CSA)は、発達障害・自閉症・知的障害の原因の一部となる「染色体の小さな欠失・重複」と「脆弱X症候群」を、1回の検査でまとめて調べる遺伝子検査です。結果に応じて、遺伝子の小さな変化を読むパネル検査やエクソーム検査へ進める仕組みになっています。原因がわからないまま検査や病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。原因がわかれば、合併症への備え・支援の手がかり・次のお子さんの確率まで、具体的に考えられるようになります。発達障害の検査全体の選び方は、発達障害の遺伝子検査(窓口ページ)にまとめています。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
染色体の小さな欠失・重複(微小欠失など)、エクソン単位の欠失・重複、脆弱X症候群(FMR1のリピート伸長)、片親性ダイソミーの手がかりになるホモ接合領域を1回で調べます。結果に応じて、遺伝子パネル・エクソーム解析へ進めます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
お子さんに発達の遅れ・知的障害・自閉症があり原因を知りたい方、Gバンドで「染色体異常なし」と言われた方、大人になって発達障害と診断されご自身の原因を知りたい方、家族歴があり妊娠の前に知りたい方です。
🧬 Q. 費用・日数は?
CSA(お子さんお一人)660,000円、CSAトリオ(お子さんとご両親)792,000円、全ゲノムのトリオ990,000円(いずれも税込)です。結果までは、欠失・重複と脆弱X症候群で2〜4週間、エクソームまで進むと5〜7週間です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。ご両親が同じ変化をもっているかで、次のお子さんの確率が変わります。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。
1. 発達障害・自閉症・知的障害と染色体の関係
発達障害・自閉症・知的障害の原因の一部は、染色体の小さな欠失(一部が欠けている)や重複(一部が増えている)です。こうした変化は顕微鏡で染色体を見る検査では見えないほど小さく、遺伝子のレベルで調べてはじめて見つかります。ただし、原因が1つに決まらないことも多く、検査で原因が見つかるのは一部の方です。
染色体の「数」と「小さな欠失・重複」
染色体には多くの遺伝子が並んでいて、ふつうは父親由来と母親由来の2本で1組になっています。染色体の一部が欠けたり増えたりすると、その場所にある遺伝子の量(遺伝子量)が変わります。遺伝子の中には、2本のうち1本が欠けるだけで働きが足りなくなるもの(ハプロ不全)があり、脳の発達に関わる遺伝子がそこに含まれると、発達の遅れや知的障害、自閉症の特徴につながることがあります。
ダウン症候群のように染色体が1本まるごと多い変化は、顕微鏡で見るGバンド法でもわかります。一方、数百万塩基より小さな欠失・重複(微小欠失症候群など)は顕微鏡では見えません。染色体の変化の全体像は染色体異常の種類で解説しています。
原因が見つかる割合
原因がわからない発達の遅れ・知的障害・自閉症・多発奇形の方では、染色体の小さな欠失・重複を調べるマイクロアレイ検査で原因が見つかる割合は15〜20%、Gバンド法では約3%(ダウン症候群など見た目で分かる症候群を除く)と報告されています[1]。米国小児科学会の報告では、発達の遅れ・知的障害のお子さんでのマイクロアレイの診断率を約12%と見積もっています[3]。
自閉症の方を対象にした米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の指針では、6つの研究・2,805人のうち274人(10%)で臨床的に意味のある変化が見つかったとされています[2]。脆弱X症候群は、原因不明の発達の遅れ・知的障害の男の子の2〜3%、女の子の1〜2%にみられると報告されています[3]。
数字だけを見ると「大半はわからない」と感じるかもしれません。それでも、見つかった方にとっては、病名・合併症への備え・次のお子さんの確率が決まる、大きな情報になります。見つからなかった場合も、次に調べる検査を絞り込む手がかりになります。
代表的な微小欠失・重複と、発達への影響
同じ「微小欠失・重複」でも、発達への影響の大きさや、親から受け継ぐことが多いかどうかは、場所によって大きく違います。代表的なものを表にまとめました。親が同じ変化をもっていても、症状がない・軽いことがある変化もあります(浸透率が100%ではない、といいます)。
🧬 発達に関わる代表的な微小欠失・重複
※割合は各文献の報告によるもので、対象集団によって幅があります。NIPTの欄は当院の各プランのページで確かめた内容です(2026年10月時点)。NIPTはスクリーニング検査のため、陽性の場合は確定検査が必要です。
「染色体異常なし」と言われても、原因がないとは限らない
Gバンド法で「染色体異常なし」と言われても、小さな欠失・重複や脆弱X症候群、1つの遺伝子の小さな変化は否定されていません。Gバンド法は顕微鏡で見える大きさの変化しか見つけられないためです。自閉症かどうかを血液検査で診断することはできませんが、原因の一部は血液などの検体で調べることができます。
脆弱X症候群は、FMR1遺伝子の中にある3塩基の繰り返し(CGGリピート)が長く伸びることで起こります(脆弱X症候群)。この「長さ」の変化は、マイクロアレイや一般的なエクソーム検査では見つけられません。そのため、発達の遅れ・知的障害・自閉症の原因を調べるときは、欠失・重複とは別に脆弱X症候群の検査を考える必要があります。
2. 染色体シーケンス解析(CSA)とは|1回で何を調べるか
染色体シーケンス解析は、次世代シークエンサーでDNAの配列を読み、そのデータから染色体の欠失・重複と脆弱X症候群を同時に調べる検査です。結果に応じて、同じ検体で遺伝子パネル検査やエクソーム検査へ進めます。
この検査で調べる変化

🔬 染色体シーケンス解析で調べる変化
見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。常染色体潜性(劣性)遺伝の病気の遺伝子で片方の欠失・重複が見つかった場合は、もう片方の配列も追加料金なしで調べます。
結果に応じて、遺伝子パネル・エクソームへ進む仕組み
最初に欠失・重複と脆弱X症候群を調べ、そこで原因が見つからなければ、症状に関係する遺伝子のパネル検査や、約2万の遺伝子を読むエクソーム検査へ進みます。検査を1つずつ別に申し込み直す必要がなく、どこまで進むかで結果までの日数が変わります。
なぜ「欠失・重複」と「脆弱X症候群」から調べるのか
米国の学会の指針では、原因がわからない発達の遅れ・知的障害・自閉症の最初の検査として、マイクロアレイで欠失・重複を調べることと、脆弱X症候群の検査が勧められてきました[1][2][3]。自閉症の指針では、原因不明の自閉症の男の子には全員に脆弱X症候群の検査が勧められています[2]。染色体シーケンス解析は、この2つを1回の検査にまとめたものです。
その後、遺伝子の配列を読む検査の診断率が高いことがわかってきました。神経発達症の方を対象にしたメタ解析では、エクソーム検査で原因が見つかった割合は36%で、マイクロアレイの15〜20%を上回っていました[4]。2021年のACMGの指針は、先天異常・発達の遅れ・知的障害のお子さんに、エクソームまたは全ゲノム検査を「最初か2番目の検査」として考えることを強く勧めています[5]。20,068人のお子さんを含む37の研究のメタ解析でも、診断に役立った割合は全ゲノム0.41・エクソーム0.36・マイクロアレイ0.10でした[6]。欠失・重複と脆弱X症候群から始めて、必要に応じて配列の検査へ進めるこの検査は、こうした流れを1つにまとめたものといえます。

※検査の種類ごとに原因が見つかる割合の目安を示した図です。割合は研究や対象となった方によって幅があり、マイクロアレイの診断率は使う方法によっても異なります。
3. マイクロアレイ・Gバンド・遺伝子パネル・エクソームとの違い
いちばん大きな違いは、染色体シーケンス解析は欠失・重複に加えて脆弱X症候群まで1回で調べ、そのまま配列の検査へ進めることです。マイクロアレイは欠失・重複を調べる検査で、脆弱X症候群や1つの遺伝子の小さな変化は調べられません。発達障害の検査全体の選び方は発達障害の遺伝子検査(窓口ページ)にまとめています。
🔍 発達障害の原因を調べる主な検査の違い
※各検査の料金・日数は、それぞれのページの記載によります(2026年10月時点)。マイクロアレイとGバンドの違いはCNV-seqとマイクロアレイの違いでも解説しています。
4. どんな人が受けるとよいか
お子さんの発達の遅れ・知的障害・自閉症の原因を知りたい方
原因がわからない発達の遅れ・知的障害・自閉症のお子さんは、この検査の中心となる対象です。病名がつくと、気をつけたい合併症や受けておくとよい検査、使える制度が決まり、療育や支援を考える手がかりにもなります。ご両親が一緒に受けるトリオ(親子3人)にすると、見つかった変化が新しく起きたものか、どちらかの親から受け継いだものかまで、同時にわかります。
大人になってから発達障害と診断された方
大人になってから自閉スペクトラム症やADHDと診断され、ご自身の原因を知りたいという方も受けられます。たとえば16p11.2欠失は、多くの方に知的障害がなく、自閉スペクトラム症やADHDがみられることがある変化です[14]。ただし、大人の方で原因が見つかるのは一部で、見つからないことのほうが多いことを、検査の前にご説明します。原因がわかれば、ご自身の健康管理や、これからお子さんを持つときの確率を考える材料になります(大人の発達障害)。
ご家族に発達障害・知的障害の方がいて、妊娠の前に知りたい方
見た目や家族歴だけでは、ご自身が同じ変化をもっているかどうかはわかりません。当院では、家族歴が濃いものの、ご本人は大学を卒業して会社に勤めていた方が念のため検査を受けたところ、染色体の微小欠失が見つかったことがあります。表のように、親が同じ変化をもっていても症状がない・軽いことがある変化もあるためです。
きょうだいなど知的障害のあるご家族ご本人の検査は、ご本人が同意できず、代わりに同意するのはご本人の利益のためであることが前提のため、きょうだいの将来のための検査としては行えません。当院で検査できるのは、症状のないご相談者ご本人です(きょうだいに知的障害がある方の遺伝のリスク)。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
この検査より別の検査が向いている場合
症状から特定の病気が強く疑われる場合は、その病気に合った検査のほうが向いていることがあります。プラダー・ウィリ症候群・アンジェルマン症候群は、欠失以外に片親性ダイソミーやメチル化の異常で起こることもあるため、メチル化解析の検査が向いています。レット症候群が疑われる場合はレット・アンジェルマン症候群パネル、男の子でお母さんの家系に知的障害の男性が多い場合はX連鎖知的障害パネル、てんかんが中心ならてんかんの遺伝子検査を考えます。
自閉症・知的障害の遺伝子の小さな変化を中心に調べたい場合は自閉症の遺伝子検査(122遺伝子)・知的障害の遺伝子検査(689遺伝子)、脆弱X症候群だけを確かめたい場合はFMR1リピート伸長検査があります。流産をくり返すなど均衡型転座が疑われる場合は、Gバンド法が向いています。
5. 検査でわかること・わからないこと
わかること
1つの遺伝子を含む大きさ以上の欠失・重複(詳しい臨床情報があればエクソン単位まで)、脆弱X症候群の原因となるFMR1のリピートの伸び、5Mb以上のホモ接合領域がわかります。結果に応じて進むパネル検査・エクソーム検査では、遺伝子の1文字の変化や小さな挿入・欠失がわかります。
わからないこと(検査の限界)
染色体のかけらが入れ替わっただけで量が変わらない均衡型転座や、一部の細胞だけに変化がある割合の低いモザイクは、見つけにくい変化です[1]。片親性ダイソミーは、ホモ接合領域があれば手がかりになりますが、ホモ接合領域を示さない型(主にヘテロダイソミー)は見逃されることがあります。ACMGの声明では、確定した片親性ダイソミーの約3分の1はホモ接合領域を示さず、マイクロアレイでは見つけられないとされています[7]。DNAの配列は変わらずメチル化だけが変わる病気や、環境が関わる要因も、この検査ではわかりません。
「陰性」の意味と、意義がまだわからない変化(VUS)
検査で原因が見つからなくても、「発達障害の遺伝的な原因がない」という意味ではありません。調べていない種類の変化や、まだ病気との関係がわかっていない遺伝子に原因があることもあります。また、病気との関係がまだはっきりしない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、あとから意味がはっきりすることもあります。
⚠️ 陰性でも「発達障害ではない」とは言えません
この検査は「自閉症かどうか」「発達障害かどうか」を診断する検査ではなく、原因の一部を調べる検査です。陰性だった場合も、考えられる理由と、次に調べられる検査を遺伝カウンセリングでご説明します。
6. 結果が出たあと
原因が見つかったとき:合併症への備えと支援
原因がわかると、その病気で起こりやすい合併症を前もって見張り、療育や支援を考える手がかりになります。たとえば22q11.2欠失症候群では、6〜68歳の1,402人を調べた国際研究で、子どものADHDが37.10%、25歳を超えた方の精神病性障害が41%と報告されています[8]。こうした見通しがわかっていれば、学校生活や大人になってからの変化に早めに備えられます。
日本の制度では、ウィリアムズ症候群(指定難病179)、プラダー・ウィリ症候群(193)、1p36欠失症候群(197)、アンジェルマン症候群(201)、スミス・マギニス症候群(202)、22q11.2欠失症候群(203)、脆弱X症候群(206)が指定難病に入っています。小児慢性特定疾病にも、22q11.2欠失症候群・ウィリアムズ症候群・プラダー・ウィリ症候群・アンジェルマン症候群・スミス・マギニス症候群・脆弱X症候群が掲載されています(いずれも2026年10月時点、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターの情報)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たす必要があります。
ご両親の検査とトリオ:次のお子さんの確率
次のお子さんで同じことが起こる確率は、見つかった変化がお子さんの代で新しく起きたもの(新生突然変異・de novo)か、親から受け継いだものかで大きく変わります。ご両親も検査を受けるトリオ(トリオ解析)では、これを同時に確かめられます。
親のどちらかが同じ欠失・重複をもっている場合、お子さんに受け継がれる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です。症状がない・軽い親でも、受け継いだお子さんの症状が同じ程度になるとは限りません。新しく起きた変化の場合、再発の確率は低くなりますが、ゼロではありません。親の卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある(性腺モザイク)ことがあるためです。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。
新しく起きた変化だとわかれば、ご両親のせいではないことがはっきりします。親から受け継いだ変化であっても、遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
次の妊娠でできること
ご家族で原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんに同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております(羊水検査・絨毛検査)。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
当院のNIPTでも、一部の微小欠失を調べられます。22q11.2欠失症候群・1p36欠失症候群・スミス・マギニス症候群・プラダー・ウィリ症候群・アンジェルマン症候群などはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルの全プランで、ウィリアムズ症候群と16p11.2の欠失・重複は双子マックスとインペリアルで調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性の場合は確定検査が必要で、当院では確定検査まで院内で受けられます。NIPTで調べられるのは一部で、陰性でも発達障害の心配がなくなるわけではありません(自閉症はNIPTでわかる?)。
結果の受け取り方
結果は、遺伝カウンセリングで臨床遺伝専門医が直接ご説明してから、マイページにアップします。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かた、調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは二次的所見の開示方針をご覧ください。
7. 検査の流れ・費用・結果までの日数
ご予約のあと、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、検査を受けるかどうかは説明を聞いて納得してから決めていただきます。検体の種類や採り方は、遺伝カウンセリングでご案内します。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取トリオはご両親も
▶
結果のご説明2〜7週間後・マイページへ
💴 費用・結果までの日数
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。遺伝カウンセリング料金は診察料のため、検査を受けなかった場合もお支払いいただきます。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
トリオを選ぶと、見つかった変化がお子さんの代で新しく起きたものか、ご両親から受け継いだものかが同時にわかり、次のお子さんの確率をより具体的にお伝えできます。どれを選ぶかは、遺伝カウンセリングでご一緒に考えます。
8. 院長コラム
🩺 院長コラム【検査をしないと、何も言えない】
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。発達障害・知的障害の原因となる染色体の小さな変化には、親が同じ変化をもっていても症状がほとんど出ないものもあり、見た目や家族歴だけでは判断できません。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
原因がわかっても、発達の特性そのものが変わるわけではありません。それでも、病名がつけば合併症に備えられ、次のお子さんの確率がわかり、ご家族が自分のことを考える手がかりにもなります。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで次の妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自閉症や発達障害は、血液検査でわかりますか?
血液検査で「自閉症かどうか」を診断することはできません。自閉症(自閉スペクトラム症)の診断は、行動や発達の様子をもとに専門の医師が行います。この検査が調べるのは「原因」の一部で、染色体の小さな欠失・重複や脆弱X症候群など、遺伝子レベルの原因が見つかる方がいます。
Q2. 「染色体異常なし」と言われましたが、受ける意味はありますか?
あります。顕微鏡で染色体を見るGバンド法では、小さな欠失・重複は見えません。自閉症の方を対象にした米国の指針では、マイクロアレイで臨床的に意味のある変化が見つかった方は約10%と報告されています。Gバンドで「異常なし」でも、小さな欠失・重複や脆弱X症候群は否定されていません。
Q3. マイクロアレイ検査を受けたことがあっても、意味はありますか?
マイクロアレイで原因が見つからなかった場合は、脆弱X症候群の検査や、遺伝子の小さな変化を読むパネル検査・エクソーム検査が次の候補になります。どの検査が残っているかは、これまでの検査結果を見ながら遺伝カウンセリングでご一緒に決めます。
Q4. 発達障害は親のせいですか?
親のせいではありません。染色体の小さな欠失・重複の多くは、お子さんの代で新しく起きた変化です。親から受け継いだ変化であっても、遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因がわかると、このことがはっきりします。
Q5. 妊娠中に発達障害はわかりますか?
一部はわかります。22q11.2欠失症候群など一部の微小欠失や、一部の単一遺伝子の病気は、当院のNIPTで調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。ただし、発達障害の原因の多くは出生前の検査ではわからないため、陰性でも発達障害の心配がなくなるわけではありません。
Q6. 大人でも受けられますか?
受けられます。大人になってから自閉スペクトラム症やADHDと診断された方が、ご自身の原因を知りたくて受けることもできます。ただし、原因が見つかるのは一部の方で、見つからないことのほうが多いことを、検査の前に遺伝カウンセリングでご説明します。
Q7. 保険は使えますか?
当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。この検査の料金は660,000円(税込)、親子3人で受けるトリオは792,000円(税込)で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 一度の検査で、お子さんとご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。発達の遅れ・知的障害・自閉症の原因がわかれば、合併症への備えや支援の手がかりだけでなく、ご家族の検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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