目次

単一遺伝子検査は、ご希望の遺伝子を1つだけ選んで、その遺伝子に病気の原因となる変化がないかを調べる遺伝子検査です。原因の遺伝子が1つにしぼれている単一遺伝子疾患(単一遺伝子病)の診断や、ご家族の病気が気になる方、遺伝子パネル検査に入っていない遺伝子を調べたい方に向いています。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の健康管理だけでなく、これからの結婚・妊娠の計画や、ご家族の健康を考えるときにも、ずっと役に立ちます。このページでは、単一遺伝子検査でわかること・わからないこと、ほかの検査との選び方、費用、ご家族と胎児の検査までを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 単一遺伝子検査で何がわかりますか?
ご希望の遺伝子1つについて、たんぱく質の設計図になる部分(エクソン)とその境目を読み、単一遺伝子疾患の原因となる変化があるかを調べます。ご希望により、遺伝子の一部や全体が抜けたり増えたりしていないか(欠失・重複)も調べられます。リピートの伸長や染色体の変化は、この方法では調べられません。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
病名がほぼ決まっていて原因の遺伝子が1つにしぼれる方、遺伝子パネル検査に入っていない遺伝子を調べたい方、ご家族に遺伝性の病気があり、ご自身のことを知りたい方です。ご家族の変化がすでにわかっている場合は、既知の変異検査も選べます。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
費用は275,000円(税込)〜で、どの遺伝子でも基本の費用は同じです。胎児の検査は132,000円が追加になります。結果までは3〜5週間です。検体は血液・唾液・口の粘膜で、唾液・口の粘膜ならオンライン診療のあと検体をお送りいただけます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)は別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が見つかれば、ご家族は同じ変化だけを調べられ、妊娠したときは絨毛・羊水で赤ちゃんを調べる出生前診断を院内で受けられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /
検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。
1. 単一遺伝子検査とは:遺伝子を1つだけ選んで調べる検査
単一遺伝子検査は、ご希望の遺伝子1つについて、病気の原因となる変化(病的バリアント)がないかを調べる検査です。当院では、たくさんの遺伝子を一度に調べる遺伝子パネル検査を主にご案内していますが、「調べたい遺伝子は1つだけ」というご希望にお応えするのが、この検査です。どの遺伝子をご希望でも、基本の費用は同じです。
検査では、次世代シークエンサー(NGS)という機械で、遺伝子のうちたんぱく質の設計図になる部分(エクソン)と、そのすぐ両わきの境目(スプライシングにかかわる部分)を読みます。病気の原因となる遺伝子の変化の多くは、この範囲で見つかります。
単一遺伝子疾患(単一遺伝子病)とは
単一遺伝子疾患とは、1つの遺伝子の変化が主な原因で起こる病気のことで、単一遺伝子病ともいいます。親から子への伝わり方に決まった法則(メンデル遺伝)があるので、遺伝のしかたがわかれば、ご家族やお子さんに伝わる確率を考えることができます。
ただし、同じ病名でも、原因になりうる遺伝子が1つだけの病気と、いくつもの遺伝子のどれかの変化で起こる病気があります。いくつもの遺伝子が原因になりうる病気では、1つの遺伝子だけを調べても答えが出ないことがあり、遺伝子パネル検査のほうが向いています(第2章)。
多因子疾患・染色体の病気との違い
「遺伝の病気」には、大きく分けて次の3つがあります。単一遺伝子検査で調べられるのは、このうち単一遺伝子疾患です。
🧬 単一遺伝子疾患・多因子疾患・染色体の病気の違い
| 種類 | 原因 | 合う検査 |
|---|---|---|
| 単一遺伝子疾患 | 1つの遺伝子の変化が主な原因 | 単一遺伝子検査・遺伝子パネル検査・エクソーム検査 |
| 多因子疾患 | いくつもの遺伝子と、生活習慣などの環境が重なって起こる | 1つの遺伝子を調べて原因を決めることは難しい |
| 染色体の病気(例:ダウン症候群) | 染色体の数や大きな構造の変化 | 染色体検査・マイクロアレイ染色体検査など。NIPTは出生前のスクリーニング検査 |
※ダウン症候群は21番染色体が1本多いことで起こる染色体の病気で、単一遺伝子疾患ではありません。
遺伝のしかたと、親から子への確率
単一遺伝子疾患は、遺伝のしかた(遺伝形式)によって、お子さんに伝わる確率が変わります。
- ●常染色体顕性(優性)遺伝:2本ある遺伝子のうち1本に変化があると発症しうる遺伝のしかたです。親が変化をもっていると、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎます(常染色体顕性遺伝)。
- ●常染色体潜性(劣性)遺伝:2本とも変化があると発症する遺伝のしかたです。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します(常染色体潜性遺伝)。
- ●X連鎖遺伝:X染色体にある遺伝子の病気で、男性と女性で現れ方が違います。お母さんやお父さんが変化を持っているか、お子さんの性別などによって、受け継ぐ確率が変わります(X連鎖遺伝)。
同じ遺伝子の変化をもっていても、症状の重さが人によって大きく違う病気や、変化をもっていても発症しない人がいる病気(浸透率が100%ではない病気)もあります。病気によっては、世代を重ねるごとに発症が早く重くなること(表現促進現象)もあります。「親が軽いから子どもも軽い」とは言えないことがあるため、知ったうえで計画することに意味があります。
2. どの検査を選ぶか:単一遺伝子検査・遺伝子パネル・既知の変異検査・エクソーム
原因の遺伝子が1つに決まっているなら単一遺伝子検査、原因の遺伝子がいくつもありうるならパネル検査、ご家族の変化がすでにわかっているなら既知の変異検査が向いています。知りたいことに合わせて、当院では次のように検査を選んでいます。比べているのは検査の種類です。
🔍 知りたいことに合わせた検査の選び方
| こんなとき | 向いている検査 |
|---|---|
| 病名がほぼ決まっていて、原因の遺伝子が1つに決まっている | このページの単一遺伝子検査 |
| 病名がほぼ決まっていて、原因の遺伝子がいくつもありうる | 病気ごとの遺伝子パネル検査(税込330,000円。当院の遺伝子検査一覧から選べます) |
| ご家族の変化(バリアント)がすでにわかっている | 既知の変異検査 |
| 病名が決まらない・いくつもの症状がある | クリニカルエクソーム検査→全エクソーム検査(WES)→全ゲノムシークエンス(WGS)。原因のわからないお子さんは原因不明の症状の遺伝子検査 |
| 染色体の数や大きな構造を調べたい | 染色体検査(Gバンド法)・マイクロアレイ染色体検査・染色体シーケンス解析(CSA) |
| がんのなりやすさを知りたい | 遺伝性がん遺伝子検査・がんと遺伝の外来 |
| 子どもを持つ前に、保因者かどうか知りたい | 保因者検査(ブライダルチェック)。全エクソーム・全ゲノムは保因者検査の代わりにはなりません |
※どの検査が合うかは、症状・ご家族の情報・知りたいことで変わります。遺伝カウンセリングでご案内します。
単一遺伝子検査が向いている場面
- ●診察や検査の結果から病名がほぼ決まっていて、その病気の原因になる遺伝子が1つに決まっている
- ●主治医などから、調べるべき遺伝子の名前を伝えられている
- ●調べたい遺伝子が、当院の病気ごとの遺伝子パネル検査に入っていない
遺伝子と病気の関係がどれくらい確かに示されているか(臨床的妥当性)は、遺伝子ごとに違います。国際的な取り組み(ClinGen)は、この関係の確かさを「確定的」「強い」「中等度」「限定的」などに分けて評価する枠組みをつくっています[1]。関係が十分に確かめられていない遺伝子では、変化が見つかっても意味を判断しにくくなるため、どの遺伝子を調べるかは遺伝カウンセリングで確かめてから決めます。
別の検査が向いている場面
- ●原因の遺伝子がいくつもありうる病気:1つずつ順に調べると、答えにたどり着くまでに時間がかかることがあります。病気ごとの遺伝子パネル検査が向いています。
- ●ご家族の変化がすでにわかっている:同じ変化を持っているかだけを調べる既知の変異検査が向いています。
- ●パネル検査に、いくつか遺伝子を足したい:パネルに入っていない遺伝子を追加して調べることができます。カスタマイズ遺伝子パネル検査をご覧ください。
リピート伸長・染色体の変化など、別の方法が必要な病気
同じ配列のくり返しが長く伸びて起こる病気(リピート伸長病)は、この検査の方法では調べられません。ハンチントン病・脆弱X症候群・筋強直性ジストロフィー1型・脊髄小脳失調症の一部などは、リピート伸長の遺伝子検査でご案内しています。それ以外でリピートの回数を調べる必要がある場合は、別の検査会社を手配するため、別途お見積もりとなります。
染色体の数や大きな構造の変化、遺伝子より大きな範囲の欠失・重複を調べたいときは、染色体検査(Gバンド法)やマイクロアレイ染色体検査が向いています。
3. どんな人が単一遺伝子検査を受けるとよいか
調べたい遺伝子が決まっている方、ご家族に遺伝性の病気がありご自身のことを知りたい方、結婚・妊娠を考えている方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは判断できないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
調べたい遺伝子が決まっている方(遺伝子名・病名で検査を探している方)
「〇〇遺伝子 検査」「〇〇 遺伝子検査 費用」のように、遺伝子名や病名で検査を探してこのページにたどり着いた方もいると思います。当院の単一遺伝子検査は、ご希望の遺伝子を1つ選んで調べる検査で、どの遺伝子をご希望でも、基本の費用は275,000円(税込)〜で同じです。ご希望の遺伝子が、この検査の方法で調べられるか(リピート伸長など別の方法が必要ではないか)や、ご家族の情報からほかの検査が合わないかは、遺伝カウンセリングで確かめてからご案内します。
ご家族に遺伝性の病気がある方
ご家族がすでに遺伝子検査を受けていて原因がわかっていれば、その報告書がいちばんの手がかりになります。既知の変異検査で、同じ変化を持っているかを調べられます。ご家族の原因がわかっていなければ、症状のないあなたご自身を検査します。
先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、仕事・結婚や出産・住まい・ご家族の介護の準備など、これからの人生を計画したいと考える方もいます。症状のない方が、将来発症する可能性を調べる検査は「発症前の検査(予測的検査)」になります。当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。
結婚・妊娠を考えている方
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。ご本人やきょうだいに遺伝の病気があることで、結婚について悩んだり、ご家族と意見が分かれたりすることもあります。遺伝する確率は、病気の遺伝のしかたとご家族の状況によって大きく違い、検査をすると、ご自身が変化を持っているか、お子さんに伝わる確率はどれくらいかがわかります。
常染色体潜性(劣性)遺伝やX連鎖遺伝の病気では、パートナーが同じ病気の保因者かどうかも大切です。妊娠の前なら拡大版保因者スクリーニング、妊娠中ならNIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(単独では受けられません)があります。結婚前の不安については、結婚前に考えたい遺伝性疾患のリスクでも解説しています。
\ 妊娠の前に知れば、選べることが増えます /
ご家族で原因がわかれば、妊娠したときの出生前診断(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。
4. 単一遺伝子検査でわかること・わからないこと(検査の限界)
わかるのは、選んだ遺伝子1つのたんぱく質の設計図の部分とその境目にある、小さな変化です。どんな遺伝子検査にも限界があり、この検査でも見つけられない変化があります。
わかること
一定の深さ(何回読んだか)で遺伝子の対象部分を読めているかという「カバレッジ」の基準を満たすように検査が行われます。読み残しが少ないほど、変化の見落としが減るためです。
わからないこと
- ●染色体の組みかわり:転座や逆位など、染色体の一部が入れかわったり向きが変わったりする変化
- ●リピートの伸長:3つや6つの塩基のくり返しが長く伸びる変化(リピート伸長の検査が必要です)
- ●遺伝子の調節部分・深いところ:遺伝子の働きを調節する部分(プロモーターなど)の多くや、エクソンから20塩基より離れたイントロンの奥の変化(深部イントロン変異)
- ●体の一部の細胞だけの変化:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(体細胞モザイク)や、がんの細胞だけに起きた変化は、この検査の対象として作られていません
- ●よく似た配列がある遺伝子:その遺伝子とそっくりな配列(偽遺伝子など)がほかにある場合、読み分けが難しく、変化を正しく見つけられないことがあります
遺伝子によっては、今の技術では調べにくい部分があることが、検査の説明に個別に書かれています(例:MECP2遺伝子のエクソン1の欠失・重複)。ご希望の遺伝子にこうした注意があるかも、遺伝カウンセリングでお伝えします。
「陰性」でも病気は否定できない/意義がまだわからない変化(VUS)
原因となる変化が見つからなくても、その病気ではないとは言い切れません。上に書いた、この検査で見つけられない種類の変化が原因のこともあれば、別の遺伝子が原因のこともあります。
見つかった変化は、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)などの指針にもとづいて、「病的」「病的の可能性が高い」「意義不明」「良性の可能性が高い」「良性」の5つに分けて判断します[2](変化の判定のしかた)。このうち「意義不明」の変化(VUS)は、病気の原因かどうかまだ判断できないため、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。
5. 胎児の検査(出生前診断):絨毛・羊水で赤ちゃんの遺伝子を調べる
ご家族で原因の遺伝子がわかっていれば、妊娠したときに、絨毛や羊水から赤ちゃんの同じ遺伝子を調べることができます。胎児の検査では、検査費用に132,000円が追加になります。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っており(2025年6月から産婦人科を併設)、検体の採取から遺伝子の検査、結果のご説明まで、当院で続けて受けていただけます。
胎児の検査の流れ
絨毛検査・羊水検査を受けられる時期や方法は、羊水検査・絨毛検査のページでご案内しています。出生前診断の遺伝カウンセリング料は30分33,000円(税込)です。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。あらかじめご家族の原因を確かめておくことが、出生前診断を計画するための出発点になります。
ご家族の原因がわからないまま、妊娠中の超音波検査で赤ちゃんに気になる所見が見つかったときは、出生前全エクソーム(WES)検査という選択肢もあります。
NIPTで調べられる遺伝子もあります
赤ちゃんで新しく起きた変化(de novo変異)による単一遺伝子の病気の一部は、当院のNIPTのダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子)で調べられます。プランごとに対象の遺伝子が違うので、調べたい遺伝子が入っているかは各プランの遺伝子一覧でご確認ください。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。
なお、単一遺伝子の病気をお母さんの血液で調べる検査(NIPD)は、現在当院では扱っていません。ご家族から受け継ぐ変化を確かめたいときは、絨毛・羊水を使う出生前診断になります。
6. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因となる変化が見つかると、病名の確定につながることがあり、ご自身の健康管理、ご家族の検査、これからの妊娠の計画まで、次の一歩が具体的になります。わかったあとにできることを、立場ごとにまとめます。
結果の受け取り方
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけを郵送やメールでお送りすることはありません。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は、遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。
ご本人(症状がある方)
病名が確定すると、その病気で気をつけたい合併症や、いつ何を調べればよいかがはっきりします。治療や支援は、その病気の専門の医療機関で、診断にもとづいて選ぶことになります。指定難病・小児慢性特定疾病など、使える制度は病気ごとに違いますので、診断が確定したら、主治医や制度の窓口でご確認ください。
症状のないご本人(家族歴で受けた方・保因者とわかった方)
変化を受け継いでいるとわかった場合は、その病気で早く見つけるための検査や、生活の計画を考えられます。常染色体潜性(劣性)遺伝の病気の保因者とわかった場合は、ふつうご自身は発症しませんが、パートナーが同じ病気の保因者かどうかで、お子さんへの確率が変わります。
ご家族:既知の変異検査で、同じ変化だけを調べられる
ご家族の中で原因がわかると、ご両親・きょうだい・お子さんは、その1か所だけを調べる既知の変異検査で、同じ変化を持っているかを確かめられます。このときは、あなたの検査の報告書がいちばんの手がかりになります。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のうえで行い、検査の前に遺伝カウンセリングで知ることの意味を考えていただきます。
子どもを持つときの選択肢
知ったうえで選べることがあります。どの選択も尊重します。
- ●自然に妊娠して、出生前診断を受ける:絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。
- ●NIPTで調べる:調べたい遺伝子がダイヤモンドプラン・インペリアルプランの対象に入っている場合に限ります(第5章)。
- ●PGT-M(着床前遺伝学的検査):日本では学会の審査を経て行われ、海外で受ける方もいます。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません(下の項目)。
- ●特別な検査をせずに出産する:これも、そのまま選べる選択肢です。
お子さんに見つかった変化がご両親のどちらにもなく、新しく起きた変化と考えられる場合でも、次のお子さんへの確率はゼロとは言えません。ご両親の卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」があるためです。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院では、PGT-Mの前提になる原因遺伝子の確定と、海外で使える英語の検査結果をご用意できます。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書(認定を受けた検査室のもの)、③ご家族の検体、を挙げています[3]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[3]。
ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要です。指針の目安は次のとおりです[3]。
- ●常染色体顕性(優性)遺伝:患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人
- ●常染色体潜性(劣性)遺伝:患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方
- ●X連鎖遺伝:患者さん、および/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)
血縁者がいない場合について、指針は、ご夫婦で目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法を挙げています。ただし、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。また、新しく起きた変化(de novo)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[3]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
臨床遺伝専門医としての判断をお伝えすると、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。また、海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[4]。
当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています(2026年10月時点で学会の公式ページを確認)。
どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。英国では公的機関(HFEA)がPGT-Mを行ってよい病気の一覧を公表しており、英国の認可施設からの申請を受けて、病気の追加の審査を続けています(2026年10月14日版の一覧を確認)。米国にはPGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[5]。米国生殖医学会の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[6]。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは、海外でPGT-Mを考えている方へ(必要な遺伝子検査・家族の検体・英語の検査結果)で解説しています。
陰性・VUSだったとき
原因となる変化が見つからなかったときは、この検査で見つけられない種類の変化や、別の遺伝子が原因の可能性を考えます。症状に合わせて、遺伝子パネル検査・クリニカルエクソーム・全エクソーム検査など、次の検査を考えます。VUSが見つかった場合、研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。
7. 検査の流れ・遺伝子検査の費用・結果までの日数・検体
単一遺伝子検査の費用は275,000円(税込)〜、結果までは3〜5週間です。遺伝子検査を受けられる病院・クリニックを探している方へ:当院では、紹介状がなくても遺伝カウンセリングをご予約いただけます。唾液・口の粘膜の検体なら、遠方の方でも、オンライン診療(ビデオ通話での診察)で遺伝カウンセリングを受けたあと、検体を当院にお送りいただく形で、ご来院なしで検査を受けられます。
💴 単一遺伝子検査の費用・日数・検体
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査費用 | 275,000円(税込)〜。どの遺伝子をご希望でも基本の費用は同じです |
| 胎児の検査(出生前診断) | 132,000円(税込)が追加になります |
| 特殊な場合 | リピートの回数を調べる必要があるなど、別の検査会社を手配する場合は、別途お見積もり |
| 遺伝カウンセリング料 | 30分22,000円(税込)。出生前診断は30分33,000円(税込)。検査費用とは別にかかります |
| 結果までの期間 | 3〜5週間 |
| 検体 | 血液・唾液・口腔粘膜ぬぐい液(口の内側の粘膜) |
| オンライン診療 | 唾液・口の粘膜の検体なら、オンライン診療のあと検体をお送りいただけます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。 |
| 結果の報告書 | 基本は日本語版。英語版はお申し出により。英語版と日本語版の双方は追加料金5,500円 |
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に /
臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。
8. 院長コラム
🩺 院長コラム【一つの遺伝子を知ることが、これからの計画の出発点になる】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。単一遺伝子の病気は、原因がわかれば、ご家族が同じ変化だけを調べたり、次の妊娠で赤ちゃんを調べたりと、次にできることがはっきりします。だからこそ、「調べたい遺伝子は1つだけ」というご希望にも、きちんとお応えしたいと考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 単一遺伝子検査と遺伝子パネル検査の違いは何ですか?
単一遺伝子検査はご希望の遺伝子を1つだけ調べる検査で、遺伝子パネル検査はある病気(または病気のグループ)の原因遺伝子をまとめて調べる検査です。病名がほぼ決まっていて原因の遺伝子が1つにしぼれるときは単一遺伝子検査、原因の遺伝子がいくつもありうるときはパネル検査が向いています。当院の遺伝子パネル検査は税込330,000円、単一遺伝子検査は税込275,000円からです。
Q2. どんな遺伝子でも調べられますか?
ご希望の遺伝子を1つ選んで調べることができ、どの遺伝子をご希望でも基本の費用は同じです。ただし、リピートの回数を調べる必要があるなど、遺伝子の配列を読む方法では調べられない場合は別の方法での検査になり、別途お見積もりとなります。ご希望の遺伝子がこの検査で調べられるかは、遺伝カウンセリングで確かめてからご案内します。
Q3. 遺伝子検査の費用はいくらですか?保険は使えますか?
単一遺伝子検査の費用は275,000円(税込)からで、胎児の検査(出生前診断)では132,000円が追加になります。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込。出生前診断は30分33,000円)で、検査費用とは別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
Q4. 結果が出るまでどれくらいかかりますか?
結果が出るまでの期間は3〜5週間です。結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけを郵送やメールでお送りすることはありません。
Q5. 家族が遺伝子の変化を持っているとわかりました。自分も調べられますか?
調べられます。ご家族がすでに遺伝子検査を受けていて原因がわかっていれば、その報告書がいちばんの手がかりになり、既知の変異検査で同じ変化を持っているかを調べられます。わかっていなければ、症状のないあなたご自身を検査します。どちらの検査が合うかは、遺伝カウンセリングでご案内します。
Q6. 単一遺伝子疾患と多因子疾患の違いは何ですか?
単一遺伝子疾患は、1つの遺伝子の変化が主な原因で起こる病気で、親から子への伝わり方に決まった法則(メンデル遺伝)があります。多因子疾患は、いくつもの遺伝子と生活習慣などの環境が重なって起こる病気で、1つの遺伝子を調べて原因を決めることは難しい病気です。
Q7. ダウン症候群は単一遺伝子疾患ですか?
いいえ。ダウン症候群は21番染色体が1本多いことで起こる染色体の病気で、単一遺伝子疾患ではありません。染色体の数の変化は、単一遺伝子検査ではなく、染色体検査やNIPTなどで調べます。
Q8. 家族に遺伝性の病気があると、結婚に差し支えますか?
遺伝する確率は、病気の遺伝のしかたとご家族の状況によって大きく違います。検査をすると、ご自身がその変化を持っているか、パートナーが同じ病気の保因者か、お子さんに伝わる確率はどれくらいかがわかり、出生前診断などの選択肢も含めて、知ったうえでこれからの計画を立てられます。いとこ同士の結婚で心配な方も、保因者検査でわかることがあります。
Q9. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整わないため、ご家族の検体が必要になることがあります。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
Q10. おなかの赤ちゃん(胎児)の遺伝子も調べられますか?
調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。胎児の検査では、検査費用に132,000円が追加になります。出生前診断を行えるかは病気の重さなどを踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
🧬 一つの遺伝子を知って、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。単一遺伝子疾患の原因がわかれば、ご自身の健康管理だけでなく、ご家族が同じ変化だけを調べる検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による胎児の出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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