ミスセンス変異 missense mutation
ミスセンス変異とは、1つの塩基対が変化することにより、生成されるタンパク質の中で異なるアミノ酸に置換されてしまうことをいう。このアミノ酸の置換は、何の影響も及ぼさない場合もあれば、タンパク質が機能しなくなる場合もある。
ミスセンス変異は、DNAの塩基配列の変化により、リボソームが認識するアミノ酸のコドンが異なるために、誤ったアミノ酸がタンパク質に取り込まれてしまうものである。アミノ酸の変化は、タンパク質の機能において非常に重要な意味を持つことがあるし、全く違いがない場合や、ほとんど違いがない場合もある。要はタンパクの中のどういう位置のアミノ酸が置換されてしまうのか、ということが重要である。
たとえば、リガンドのリセプターに認識して結合する部分のアミノ酸の置換でタンパクの立体構造が変わってしまい、より結合しやすくなると機能獲得型変異となるし、より結合しにくくなると機能喪失型変異となるし、立体構造にまったく影響がない場合変化がないという事になる。
ミスセンス変異によってアミノ酸が取り込まれ、タンパク質がより効果的に仕事をするようになるのが機能獲得型変異である。タンパク質の機能を低下させてしまうのが機能喪失型変異と呼ばれる。
そしてこれこそが進化の醍醐味なのである。ミスセンス変異が起こり、そのために小さな変化、つまりタンパク質の小さな変化が頻繁に起こり、それがたまたまタンパク質の機能を向上させることになる。その結果、そのミスセンス変異を持つ生物は競争上有利になり、集団の中で維持されたり優勢になる。たとえば、アフリカの人たちには鎌状赤血球症と呼ばれる赤血球の形が変わってしまっている人たちがいるが、実は、この方々はマラリアに感染しにくくなっている、というのがその一例である。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号