ナンセンス変異 nonsense mutation
ナンセンス変異とは、DNAの塩基配列に生じた遺伝子変異で、その結果、短い未完成のタンパク産物を生じることを意味しているいる。DNAは、ヌクレオチドと呼ばれる多数の小さな分子の鎖である。タンパク質の形成過程において、DNA(またはRNA)のヌクレオチド配列は、コドンと呼ばれる単位で一度に3ヌクレオチドずつ読み込まれ、各コドンは特定のアミノ酸または停止信号(ストップコドン)に対応している。ストップコドンはUAA,UAG,UGAの3つである。UはウラシルでRNA表記であるため、DNA配列のストップコドンではUはT(チミン)に置き換えればよい。
ストップコドンは、アミノ酸をコードせず、タンパク質合成をここで終了しなさい、という遺伝暗号であり、遺伝子変異でタンパクのアミノ酸配列の途中にストップを知らせることから、ナンセンスコドンとも呼ばれる。
このように、ナンセンス変異は、早すぎるナンセンスコドンまたはストップコドンがDNA配列に導入されたときに起こる。変異した配列がタンパク質に翻訳されると、できあがったタンパク質は不完全で、通常よりも短いものとなる。その結果、ほとんどのナンセンス変異は、機能しないタンパクとなる。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号