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SBBYSS症候群(Say-Barber-Biesecker-Young-Simpson症候群)は、KAT6B遺伝子の片方のコピーが働かなくなることで起こる、まれな生まれつきの病気です。表情の乏しい顔つき(仮面様顔貌)、まぶたの開きが狭いこと(眼瞼裂狭小)、長い手足の親指、ひざのお皿(膝蓋骨)の低形成、知的発達の遅れが組み合わさるのが特徴です[1][2]。名前の似た「バーバー・セイ症候群」は、TWIST2遺伝子が原因の別の病気です[7]。ほかの遺伝性疾患は遺伝性疾患リストから探せます。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. SBBYSS症候群とはどんな病気?
KAT6B遺伝子の変化で起こる、まれな先天性の病気です。推定の頻度は100万人に1人未満で、表情の乏しい顔つき・まぶたの開きの狭さ・長い親指・膝蓋骨の低形成・知的発達の遅れが特徴です[3][4]。
🔍 Q. バーバー・セイ症候群と同じ病気?
別の病気です。英語名にどちらも「Say」「Barber」が入るため混同されやすいのですが、バーバー・セイ症候群の原因はTWIST2遺伝子で、まぶたの外反・大きな口・多毛・薄くたるんだ皮膚などが特徴です[7]。
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1. SBBYSS症候群とは:名前の由来と位置づけ
SBBYSS症候群(OMIM 603736)は、似た特徴をもつ患者さんを報告した医師たち(Say、Barber、Biesecker、Young、Simpson)の名前を並べて名づけられた、まれな先天性多発奇形症候群です[4][5]。「大堂(Ohdo)症候群のSBBYS型」「眼瞼裂狭小・知的障害症候群 SBBYS型」とも呼ばれます[1][4]。
推定の頻度は100万人に1人未満とされ[3][4]、GeneReviews(2020年更新)によると、遺伝子で確かめられたKAT6Bの病気の報告は89人(SBBYSS 58人・ゲニトパテラー症候群18人・両者の中間の型13人)です[3]。症状が幅広く、ほかの病気と見分けにくいため、診断がついていない患者さんもいると考えられます。
💡 用語解説:常染色体顕性(優性)遺伝
「常染色体」は、性染色体(X・Y)以外の染色体です。「顕性(優性)」は、2本ある遺伝子のうちどちらか1本に変化があれば症状が出る遺伝のしかたをいいます。SBBYSS症候群はこの形式ですが、実際にはご両親から受け継いだものではなく、お子さんで新しく起きた変化によることがほとんどです[1]。▶常染色体顕性遺伝について詳しく
「大堂症候群」からKAT6B遺伝子の病気へ
1986年、日本の大堂(Ohdo)らは、知的障害・先天性心疾患・眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・歯の形成不全をもつ姉妹を報告しました[9]。その後、1987年にYoungとSimpson、同年にSayとBarber、1991年にBieseckerが似た患者さんを報告し、これらがまとめて「大堂症候群のSBBYS型(SBBYSS)」と呼ばれるようになりました[3]。なお、大堂らが最初に報告したご家族は、顔つきが違い、尿たんぱくがあり、骨格の異常がない点で、SBBYS型とは別の病気と考えられています[3]。
2006年、Verloesらはこれらを「眼瞼裂狭小・知的障害症候群(BMRS)」として整理し、SBBYS型を独立した型として分類しました[5]。その後、SBBYS型の原因がKAT6B遺伝子の変化であることが分かり、遺伝子で確かめられる病気になりました[1][2]。
2. 原因遺伝子KAT6Bと病気が起こるしくみ
SBBYSS症候群の原因は、10番染色体(10q22.2)にあるKAT6B遺伝子の片方のコピーの変化です[3]。KAT6Bは以前、MYST4やMORFとも呼ばれていました[11]。KAT6B遺伝子は18個のエクソンからなり、病気の原因になる変化は最後のエクソン18に多くみられます[3]。
💡 用語解説:ヒストンアセチル基転移酵素とは
細胞の中のDNAは、ヒストンというタンパク質に巻きついて収納されています。KAT6Bが作る酵素は、ヒストンに「アセチル基」という小さな目印を付けて、ある遺伝子の働きを調節します[1]。KAT6Bは、骨格や神経の発達など、体づくりの初期に大切な遺伝子を調節していると考えられています[1]。DNAの配列を変えずに遺伝子の働きを調節するしくみはエピジェネティクスと呼ばれ、こうした調節の遺伝子の病気をまとめてクロマチノパチーと呼ぶことがあります。
SBBYSS症候群を起こす変化:ハプロ不全
SBBYSS症候群を起こすKAT6Bの変化の多くは、タンパク質が途中で切れてしまう変化(ナンセンス変異・フレームシフト変異など)です。変化の場所は遺伝子全体に散らばるか、最後のエクソン(エクソン18)の後ろ寄りにあり、異常なmRNAが分解されることで、片方のコピーから働くタンパク質が作られなくなると考えられています[2][11]。
💡 用語解説:ハプロ不全とNMD
遺伝子は父親由来と母親由来の2コピーあります。ハプロ不全は、片方のコピーが働かなくなり、残り1コピー分のタンパク質では足りずに症状が出る状態です。NMD(ナンセンス変異依存mRNA分解)は、途中で止まってしまう異常なmRNAを細胞が見分けて分解するしくみで、ハプロ不全の原因になります。▶ハプロ不全について詳しく ▶NMDについて詳しく
変化の場所で2つの病気に分かれる
同じKAT6B遺伝子の変化でも、変化の場所によってSBBYSS症候群とゲニトパテラー症候群(GPS)という別の病気になることが分かっています。GPSの変化は最後のエクソンの前寄りに集まり、後ろ側(C末端)を欠いたタンパク質が作られます。研究者は、両方に共通する症状はハプロ不全で、GPSだけの症状は短くなったタンパク質の新たな作用(機能獲得)で説明できると考えています[2]。
KAT6B遺伝子の変化の場所と2つの病気(模式図)
🌸 SBBYSS症候群
変化の場所:遺伝子全体、または最後のエクソンの後ろ寄り
→ 異常なmRNAが分解される → ハプロ不全
🔷 ゲニトパテラー症候群
変化の場所:最後のエクソン(エクソン18)の前寄り
→ 後ろ側を欠いたタンパク質ができる → 機能獲得的な作用も
3. 主な症状
SBBYSS症候群の症状は、顔・目・骨格・神経の発達・心臓・生殖器など、体の多くの部分にわたります。どの症状がどの程度出るかは、患者さんによって違います[1][4]。
📋 体の部位ごとの主な症状
| 部位 | 報告されている主な症状 |
|---|---|
| 顔・目・口 | 仮面様顔貌、眼瞼裂狭小、眼瞼下垂、涙腺・涙道の異常、目立つ頬、広い鼻根や先の丸い鼻、口蓋裂(約3分の1)、歯の異常[1] |
| 骨格・関節 | 長い手の親指・足の親指、膝蓋骨の欠損・低形成、股・膝・足首の関節のかたさ、上半身の関節のゆるさ[1] |
| 神経・発達 | 発達の遅れと知的障害(重いことが多い)、ことばの障害、筋緊張低下(呼吸や哺乳の困難につながる)、小頭(報告例の36%)[1][3] |
| 心臓 | 先天性心疾患(KAT6Bの病気全体の半数以上。主に心房中隔欠損・心室中隔欠損・卵円孔開存・動脈管開存)[3] |
| 生殖器・腎臓 | 停留精巣・尿道下裂などの生殖器の異常(SBBYSSの報告例の約40%)、腎臓の異常[3][4] |
| 消化器・食事 | 哺乳の困難と胃食道逆流(多くの患者さん)、小腸の回転異常(8人の報告)、成長の遅れ(18%)[3] |
| 内分泌・その他 | 甲状腺機能低下症(一部の患者さん。甲状腺がない・小さい例も)、両側の難聴(伝音性・感音性)、近視・弱視[3][4] |
割合はGeneReviews(2020年更新)による、報告された患者さんでの数字です[3]。報告例が少ないため、今後の報告で変わる可能性があります。表は「起こりうる症状」の一覧で、すべてがそろうわけではありません。
顔・目・歯の特徴
この病気を疑う大きな手がかりが顔つきです。多くの患者さんは表情の動きが乏しい「仮面様顔貌」で、まぶたの開きが横に狭い眼瞼裂狭小と、上まぶたが下がる眼瞼下垂がみられます[1]。涙腺や涙の通り道の異常もあります[1][2]。
まぶたが瞳を覆うほど下がっていると、見る力の発達が妨げられるおそれがあるため、早めに眼科で評価を受けることが大切です。約3分の1の患者さんは生まれつき口蓋裂があり、歯の異常も報告されています[1]。顔つきの特徴だけで診断することはできず、遺伝子検査で確かめます。
骨格の特徴:「長い親指」と上下で違う関節
多くの患者さんで手の親指と足の親指が長いことが知られており、Campeauらはこれを涙道の異常とともに、ゲニトパテラー症候群にはないSBBYSS症候群の特徴としています[2]。
関節には上下で違いがあります。股・膝・足首は固く動きが制限される一方で、腕や上半身の関節はゆるいことがあります[1]。膝蓋骨(ひざのお皿)の欠損や低形成は、骨格の異常の中で最もよくみられるものです[1]。
神経・発達
発達の遅れと知的障害を伴い、その程度は重いことが多いとされています[1]。乳児期には筋緊張低下がみられることが多く、呼吸や哺乳の困難につながります[1]。頭が小さいこと(小頭)は報告例の36%にみられます[3]。ことばの障害が多く、自閉スペクトラム症を思わせる特徴・不安・攻撃的な行動・注意の問題がみられることもあります。脳梁の欠損や低形成などの脳の形の異常は、一部の患者さんにとどまります[3]。
心臓・生殖器・甲状腺など
先天性心疾患は、KAT6Bの病気の半数以上にみられ、主に心房中隔欠損・心室中隔欠損・卵円孔開存・動脈管開存です[3]。ゲニトパテラー症候群と共通する症状の一つです[2]。男の子では停留精巣がよくみられ、女の子の外性器はふつう正常です[1]。甲状腺機能低下症(一部の患者さん)や両側の難聴を伴うこともあり[3]、新生児期から早めに調べておくことが大切です。
消化器では、多くの患者さんに哺乳の困難と胃食道逆流がみられます。小腸の回転異常は8人で報告されており[3]、吐くなどの症状があるときは早めに画像検査で確かめることがすすめられています[3]。
🩺 院長コラム【「長い親指」と「表情の乏しい顔つき」の組み合わせが手がかり】
SBBYSS症候群に早く気づくための手がかりは、「手足の親指が長い」ことと「表情の乏しい仮面のような顔つき」の組み合わせだと考えています。発達の遅れがあるお子さんでは顔つきに目が向きやすく、手足の所見は見落とされやすいので、足の親指の長さまで確かめることが大切です。
この組み合わせを知っていれば、骨のX線検査と遺伝子検査へすぐにつなげることができます。まれな病気の診断は「知っている人にしか見えない」世界ですが、だからこそ正確な情報発信が患者さんとご家族の人生を変える力を持っていると、私は信じています。
4. 鑑別診断:名前や症状が似ている病気との違い
バーバー・セイ症候群とは別の病気です
「バーバー・セイ症候群(Barber-Say症候群)」は、SBBYSS症候群と英語名の一部(Say・Barber)が重なるため混同されやすいのですが、原因遺伝子も症状も違う別の病気です。2015年の研究で、バーバー・セイ症候群はTWIST2遺伝子の同じ場所(基本ドメインの75番目のアミノ酸)の変化で起こることが報告されました[7]。
🔍 SBBYSS症候群とバーバー・セイ症候群の違い
どちらも報告例の少ない病気です。顔つきの印象だけでどちらの病気かを判断することはできず、遺伝子検査で確かめます。
ゲニトパテラー症候群(GPS)との違い
同じKAT6B遺伝子の変化で起こるもう一つの病気が、ゲニトパテラー症候群(GPS、OMIM 606170)です[4]。知的障害・先天性心疾患・生殖器の異常・膝蓋骨の異常は両方に共通しますが、それぞれにしかない症状もあります[2]。
| 区分 | 報告されている特徴 |
|---|---|
| SBBYSS症候群だけ | 長い手の親指・足の親指、涙道の異常 |
| GPSだけ | 関節拘縮、背骨・肋骨・骨盤の異常、腎臓の嚢胞・水腎症、脳梁の欠損 |
| 両方に共通 | 知的障害、先天性心疾患、生殖器の異常、膝蓋骨の異常 |
出典:Campeauら(Human Mutation, 2012)[2]
眼瞼裂狭小・知的障害症候群(BMRS)の分類
SBBYSS症候群は、まぶたの開きの狭さと知的障害を共通にもつ病気のグループ(BMRS)の一つです。Verloesらは2006年に、次の5つの型に分けることを提案しました[5]。
出典:Verloesら(Am J Med Genet A, 2006)[5]、MED12はVulto-van Silfhoutら(2013)[6]
そのほかの鑑別:BPESなど
BPES(眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・逆内眼角贅皮症候群)はFOXL2遺伝子の変化による常染色体顕性の病気で、まぶたの形がSBBYSS症候群と似ています。I型では女性の卵巣の働きが早く失われることがありますが、知的障害は病気の特徴に含まれていません[10]。詳しくはBPES(眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・逆内眼角贅皮症候群)で解説しています。SMARCA2遺伝子による眼瞼裂狭小・知的発達障害症候群(BIS)も、名前のとおりまぶたの開きの狭さと知的発達の遅れをもつ病気です。Toriello-Carey症候群も、筋緊張低下・生殖器の異常・小頭・脳梁欠損・口蓋裂・発達の遅れ・眼瞼下垂・心疾患などが重なりますが、小さいあご・舌が奥に落ち込むこと・口蓋裂の組み合わせ(ピエール・ロバン連鎖)が中心の症状である点が違います[3]。膝蓋骨の異常からは爪膝蓋骨症候群(LMX1B)なども見分ける対象になります[3]。症状が重なる病気が多いため、最終的には遺伝子検査で原因を確かめます。
5. 診断・遺伝子検査の進め方
SBBYSS症候群の診断は、症状の診察、骨のX線検査、遺伝子検査を組み合わせて行います。
この病気を疑う目安
GeneReviewsの著者らは、次の表の主な特徴2つ、または主な特徴1つと副次的な特徴2つがあれば、KAT6Bの病気の可能性が高いとしています[3]。
| 区分 | SBBYSS症候群を疑う特徴 |
|---|---|
| 主な特徴 | 長い手の親指・足の親指/動きの乏しい仮面様顔貌/眼瞼裂狭小・眼瞼下垂/涙道の異常/膝蓋骨の低形成・欠損 |
| 副次的な特徴 | 先天性心疾患/歯の異常(形成不全・生えるのが遅い)/難聴/甲状腺の異常/口蓋裂/男の子の停留精巣/筋緊張低下/発達の遅れ・知的障害 |
出典:GeneReviews「KAT6B Disorders」(2020年更新)の表2[3]。診断を確定するものではなく、遺伝子検査を考えるための目安です。
生まれた後の診断
① 骨のX線検査:長い手足の親指や膝蓋骨の状態を確かめることは、SBBYSS症候群とゲニトパテラー症候群を見分ける手がかりになります[2]。
② 遺伝子検査:症状が多くの病気と重なるため、全エクソーム検査(WES)や、知的障害・多発奇形を対象にした遺伝子パネル検査でKAT6Bを含む多くの遺伝子をまとめて調べる方法がよく使われます。KAT6Bの配列を読む検査で、病気の原因になる変化の98%超が見つかるとされています[3]。ご両親の検体も一緒に調べるトリオWESなら、見つかった変化がお子さんで新しく起きたもの(de novo変異)かどうかも分かります。
③ DNAメチル化(エピシグネチャー)解析:2023年の研究で、KAT6Bに関連する病気に特有のDNAメチル化のパターン(エピシグネチャー)が報告され、感度・特異度の高い目印になると考えられています[8]。遺伝子検査で意味のはっきりしない変化が見つかったときの判断の助けになる可能性があります。
💡 用語解説:意義不明バリアント(VUS)
遺伝子検査で見つかった変化のうち、現時点では「病気の原因かどうか判断できない」ものをVUS(Variant of Uncertain Significance)といいます。まれな病気ではVUSになることが少なくなく、ご両親の検査結果や症状との照らし合わせ、メチル化解析などで判断を深めていきます。▶VUSについて詳しく
診断がついた後に行う評価
多くの臓器に症状が出る可能性があるため、診断がついたら次のような評価をまとめて行い、それぞれの専門科につなげます。
- ➤発達・脳:運動・ことば・理解の発達の評価、脳のMRI、けいれんが疑われるときは脳波[3]
- ➤心臓:心エコーなどによる先天性心疾患の確認
- ➤目・耳:眼瞼下垂が見る力の発達を妨げていないか、涙道の異常、聴力の確認
- ➤食事・呼吸:哺乳や飲み込み・誤嚥の危険、栄養状態の確認。小腸の回転異常が疑われるときは画像検査[3]
- ➤甲状腺・生殖器・腎臓:甲状腺の働き、停留精巣、腎臓の形の確認
- ➤骨・関節:関節の動き・足の形・背骨の状態の記録
出生前に調べられるか
ご家族の中でKAT6Bの変化がすでに分かっている場合は、絨毛検査や羊水検査、着床前遺伝学的検査で調べられます[3]。妊娠中に羊水過多がみられることがあり、NT(首の後ろのむくみ)の増加や嚢胞性ヒグローマが4人で観察されています(著者らの観察)[3]。SBBYSS症候群は、ご両親にはない新しい変化で起こることがほとんどなので[1]、家族歴がなくても起こりえます。このような新しい変化は父親の年齢とともに増えることが知られており、詳しくは単一遺伝子疾患とNIPTで解説しています。
当院のNIPT(新型出生前診断)のうち、ダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子・202疾患)は、KAT6B遺伝子を調べる対象に含んでいます。調べる遺伝子の一覧は56遺伝子de novo変異NIPTと155遺伝子de novo変異NIPTで確認できます。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性のときは羊水検査・絨毛検査で確かめます。当院では羊水検査・絨毛検査とも院内で行い、羊水検査互助会(カトレア会)で確定検査の費用を補助しています。
⚠️ 出生前検査を考えるときに知っておきたいこと
SBBYSS症候群は症状の幅が大きいため、出生前に変化が見つかっても、生まれてくるお子さんの症状の重さを正確に予想することはできません。検査を受けるかどうかは、ご家族の価値観で決めることで、医療者が一律に「受けたほうがよい」「受けなくてよい」と決めるものではありません。遺伝カウンセリングで情報を整理したうえで、ご夫婦で話し合って決めていただくことをおすすめしています。
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ダイヤモンドプラン・インペリアルプランはKAT6B遺伝子を含み、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。
ダイヤモンドプラン | インペリアルプラン
6. 治療と長く続く管理
現在、KAT6B遺伝子の変化そのものを治す治療はありません。症状ごとの治療・手術と、発達の支援を組み合わせ、多くの専門職が長く関わることが基本になります。
| 症状 | 主な対応 |
|---|---|
| 先天性心疾患 | 小児循環器科で評価し、必要に応じて手術 |
| 停留精巣 | 小児外科・泌尿器科で精巣固定術の時期を相談 |
| 眼瞼下垂・涙道の異常 | 見る力の発達を妨げる場合は眼科で手術などを検討 |
| 口蓋裂 | 形成外科などで口蓋の手術と、ことば・食事の支援 |
| 甲状腺機能低下症 | 甲状腺ホルモンの補充 |
| 難聴 | 耳鼻科で評価し、補聴器などを検討 |
発達の支援
乳児期からの早めの療育が大切です。理学療法では筋緊張低下や下肢の関節のかたさに合わせて体の動きを支え、作業療法では手を使う動作を支えます。ことばの発達がゆっくりなお子さんには、言語聴覚療法に加えて、サインや絵カード、音声を出す機器など、話しことば以外の伝え方(拡大代替コミュニケーション)を取り入れる方法もあります。
定期的な確認
GeneReviewsでは、年1回(または必要に応じて)、発達と教育の必要、食事の状態と小腸の回転異常を思わせる症状、聞こえ、弱視、甲状腺の働き、関節の拘縮や背骨の側弯を確かめることがすすめられています[3]。学校に入る時期には、教育機関と連携して支援の計画を見直していきます。
7. 予後と遺伝カウンセリング
予後について
報告例が少ないため、寿命や長期の経過をまとめたデータはまだ十分ではありません。生活の質は、知的障害の程度や運動の発達、心臓や呼吸・食事の合併症への対応によって大きく変わります。ご家族への支援や福祉サービスにつながることも大切です。
遺伝のしかたと次のお子さんの確率
SBBYSS症候群は常染色体顕性の病気ですが、報告されている患者さんのほとんどは、ご両親から受け継いだものではなく新しく起きた変化によるものです[1][3]。一方で、症状の軽い親から受け継いだ例もあり、3世代にわたって受け継がれたご家族も報告されています[3]。KAT6Bの変化をもつ人はこれまで全員が何らかの症状をもっており、浸透率はほぼ100%と考えられています[3]。
- ➤ご両親の次のお子さん:ご両親の血液から同じ変化が見つからなければ、約1%と推定されています。卵子や精子のもとになる細胞だけに変化がある性腺モザイクの理論上の可能性を考えた数字で、KAT6Bの病気で性腺モザイクが実際に確認された報告はまだありません[3]。ご両親のどちらかが同じ変化をもつときは50%です[3]。
- ➤患者さんご本人のお子さん:常染色体顕性なので、妊娠のたびに50%の確率で変化が受け継がれます。
診断がついたご家族には、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングをおすすめします。次のお子さんを考えるときの検査の選択肢も、ご家族の考えに合わせて一緒に整理します。
8. よくある誤解
誤解①「バーバー・セイ症候群と同じ病気」
名前の一部が同じでも、原因遺伝子(KAT6BとTWIST2)も症状も違う別の病気です。
誤解②「親が健康なら遺伝の病気ではない」
ほとんどはお子さんで新しく起きた変化です。家族歴がないことは、この病気を否定する理由になりません。
誤解③「KAT6Bの変化なら同じ病気」
同じKAT6Bでも、変化の場所によってSBBYSS症候群とゲニトパテラー症候群に分かれます。
誤解④「顔つきを見れば診断できる」
似た顔つきの病気はほかにもあります。診断は遺伝子検査で確かめます。
9. 臨床遺伝専門医からのメッセージ
🩺 院長コラム【「あいまいな大堂症候群」から「遺伝子で分かる病気」へ】
SBBYSS症候群は、長いあいだ「大堂症候群」というあいまいな枠組みの中で、ほかの眼瞼裂狭小・知的障害の病気とひとくくりにされてきました。日本の大堂先生の報告から始まったこの病気のグループは、遺伝学の進歩で、染色体の欠失、KAT6B、MED12など、異なる原因に分けられることが明らかになりました。
正確な診断名が分かることは、お子さんの医療の見通しを立てるだけでなく、ご家族が「なぜこうなったのか」「次の子はどうか」という問いに答えを得る出発点になります。名前の似た病気と混同されやすいからこそ、遺伝子で確かめることが大切です。まれな病気だからこそ、一人ひとりの患者さんに向き合う臨床遺伝専門医の存在が大切だと、私は日々の診療で実感しています。
🏥 原因を遺伝子で確かめる検査と遺伝カウンセリング
臨床遺伝専門医が常駐し、全エクソーム検査などの選び方から結果の説明、次のお子さんを考えるときの検査まで一緒に整理します。
まだ検査を決めていない方は:全エクソーム検査(WES)の内容と流れ | 知的障害・発達障害の遺伝子検査
よくある質問(FAQ)
Q1. SBBYSS症候群とバーバー・セイ症候群は同じ病気ですか?
別の病気です。英語名の一部が重なるため混同されやすいのですが、SBBYSS症候群の原因はKAT6B遺伝子、バーバー・セイ症候群の原因はTWIST2遺伝子です。バーバー・セイ症候群はまぶたの外反・大きな口・多毛・薄くたるんだ皮膚などが特徴で、2015年の研究の報告例では発達は正常でした。
Q2. SBBYSS症候群の原因は何ですか?
10番染色体にあるKAT6B遺伝子の片方のコピーの変化です。KAT6Bはヒストンにアセチル基を付けて遺伝子の働きを調節する酵素を作り、体づくりの初期に大切な遺伝子を調節していると考えられています。この酵素が足りなくなることで症状が出ると考えられています。
Q3. SBBYSS症候群は遺伝しますか?
遺伝形式は常染色体顕性ですが、報告されている患者さんのほとんどは、ご両親にはない新しい変化によるものです。ご両親に同じ変化がなければ、次のお子さんの確率は性腺モザイクの理論上の可能性を考えて約1%と推定されています。症状の軽い親から受け継いだ例も報告されています。患者さんご本人のお子さんには、妊娠のたびに50%の確率で受け継がれます。
Q4. 知的障害の程度はどのくらいですか?
発達の遅れと知的障害を伴い、その程度は重いことが多いとされています。一方で、症状の軽い親から受け継いだ軽症の例も報告されています。乳児期には筋緊張低下がみられることが多く、呼吸や哺乳の困難につながります。早めの療育や、話しことば以外の伝え方を取り入れる支援が大切です。
Q5. どのように診断されますか?
表情の乏しい顔つき・まぶたの開きの狭さ・長い手足の親指・膝蓋骨の低形成・知的発達の遅れなどから疑い、骨のX線検査で親指や膝蓋骨を確かめたうえで、全エクソーム検査や遺伝子パネル検査でKAT6B遺伝子の変化を確かめます。意味のはっきりしない変化が見つかったときは、DNAメチル化(エピシグネチャー)解析が判断の助けになる可能性があります。
Q6. ゲニトパテラー症候群とどう違いますか?
どちらもKAT6B遺伝子の変化で起こりますが、変化の場所としくみが違います。SBBYSS症候群だけにみられるのは長い手足の親指と涙道の異常、ゲニトパテラー症候群だけにみられるのは関節拘縮、背骨・肋骨・骨盤の異常、腎臓の嚢胞、脳梁の欠損などです。知的障害・先天性心疾患・生殖器と膝蓋骨の異常は両方に共通します。
Q7. 出生前に分かりますか?
ご家族の中で変化が分かっている場合は、絨毛検査や羊水検査で調べられます。当院のNIPTのダイヤモンドプランとインペリアルプランはKAT6B遺伝子を調べる対象に含んでいますが、NIPTはスクリーニング検査なので、陽性のときは羊水検査や絨毛検査で確かめます。出生前に変化が見つかっても症状の重さを正確に予想することはできないため、遺伝カウンセリングで情報を整理してから決めることをおすすめします。
Q8. 寿命はどのくらいですか?
報告例が少ないため、寿命や長期の経過をまとめたデータはまだ十分ではありません。生活の質は、知的障害の程度や運動の発達、心臓や呼吸・食事の合併症への対応によって大きく変わります。
Q9. 治療法はありますか?
KAT6B遺伝子の変化そのものを治す治療は、現在ありません。心疾患・停留精巣・眼瞼下垂・口蓋裂などへの手術、甲状腺機能低下症へのホルモン補充、理学療法・作業療法・言語聴覚療法による発達の支援を組み合わせます。
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参考文献
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- [3] Lemire G, Campeau PM, Lee BH. KAT6B Disorders. 2012 Dec 13 [Updated 2020 Jan 2]. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews® [Internet]. Seattle (WA): University of Washington, Seattle. PMID: 23236640. [GeneReviews NBK114806]
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- [10] MedlinePlus Genetics. Blepharophimosis, ptosis, and epicanthus inversus syndrome. U.S. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
- [11] MedlinePlus Genetics. KAT6B gene. U.S. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断や検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。



