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📍 クイックナビゲーション
「上の子がヌーナン症候群と診断された。次の子も同じ病気になるのだろうか」。最初にお伝えしたいのは、次の子の確率は、ご両親のどちらかが同じ病気かどうかで大きく変わるということです。親のどちらかがヌーナン症候群なら妊娠ごとに50%、両親とも原因の変化をもっていなければ1%未満と報告されています[1]。ただし、症状が軽くて気づかれていない親御さんもいるため、どちらに当てはまるかを確かめることが出発点になります。この記事では、場合分けした再発リスク、男の子・女の子で違いがあるのか、父親の年齢との関係、次の妊娠で調べる方法までを、臨床遺伝専門医の立場から解説します。
- ➤ヌーナン症候群の遺伝のしかた(常染色体顕性遺伝)と、新生突然変異(de novo変異)が多い理由
- ➤次の子の再発リスクを3つの場合に分けた目安(50%/1%未満/親が気づいていない場合)
- ➤男の子・女の子で確率は違うのか、父親の年齢と新生突然変異の関係
- ➤次の妊娠で、おなかの赤ちゃんに気づかれるサインと、羊水検査・絨毛検査・NIPTの選び方
- ➤ダイヤモンドプラン・インペリアルプランのNIPTで調べられる範囲
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. ヌーナン症候群は遺伝する?次の子の確率は?
遺伝のしかたは常染色体顕性(優性)遺伝で、親のどちらかが同じ病気なら次の子に50%の確率で伝わります。一方、全体の約6割は両親に変化がない新生突然変異で、その場合の次の子の確率は1%未満です。ゼロではないのは、親の精子や卵子の一部だけに変化がある「生殖細胞モザイク」がありうるためです。
🔍 Q. ダウン症候群だけを調べるNIPTで大丈夫?
ヌーナン症候群は染色体の数ではなく、1つの遺伝子の変化で起こる病気です。そのためダウン症候群などの染色体の数を調べるNIPTでは分かりません。調べるには、ヌーナン症候群の原因遺伝子を対象に含む、当院のダイヤモンドプラン(56遺伝子)かインペリアルプラン(最大155遺伝子)を選びます。
👦 Q. 男の子と女の子で確率は違う?
原因遺伝子は性染色体ではなく常染色体にあるため、次の子が男の子でも女の子でも確率は同じです。ただし男の子では停留精巣が多く、男性では精子をつくる力が弱まることがあるため、家族内では母親から伝わる例が多いと報告されています[2]。
1. ヌーナン症候群は遺伝するのか?【結論】
【結論】ヌーナン症候群は常染色体顕性(優性)遺伝の病気で、原因の変化をもつ人の子どもには、性別に関係なく妊娠ごとに50%の確率で伝わります。ただし、家族の中で初めて起こる新生突然変異(de novo変異)のほうが多く、全体の約60%を占めると報告されています[1]。つまり、多くの場合ご両親は原因の変化をもっておらず、その子に偶然起きた変化です。
「遺伝する病気」と聞くと、必ず次の子にも起こるように感じるかもしれません。しかし実際の確率は、上の子の変化が親から受け継いだものか、新しく起きたものかで大きく変わります。ここを確かめることで、次の妊娠に向けて何を準備すればよいかが決まります。
🧬 ヌーナン症候群の基本情報(遺伝に関わるところ)
心臓の病気(肺動脈弁狭窄症・肥大型心筋症など)、低身長、特徴的な顔つきといった症状は人によって程度がまったく異なり、ご本人が気づかないほど軽い方もいます。この「症状の幅の広さ」が、次の章以降で説明する再発リスクの考え方に関わってきます。症状・原因遺伝子・治療の詳しい説明はヌーナン症候群とは(総論)に、顔つきや寿命、いつわかるかはヌーナン症候群とは?特徴・顔つき・寿命を専門医が解説にまとめています。この記事では「次の子」に絞ってお話しします。
2. de novo変異(新生突然変異)とは?父親の年齢との関係
【結論】de novo変異とは、両親のどちらからも受け継いだものではなく、精子や卵子ができる過程などで新しく生じた遺伝子の変化です。誰にでも起こりうるもので、ご両親の生活や行動が原因ではありません。
「de novo(デノボ)」はラテン語で「新しく」という意味です。両親の血液を調べても、子どもと同じ変化は見つかりません。用語の詳しい説明はDe Novo変異(新生突然変異)とはをご覧ください。
新生突然変異は、父親の年齢が上がるほど起こりやすい
精子は思春期から生涯にわたって細胞分裂をくり返しながらつくられるため、分裂の回数が増えるほど、遺伝子をコピーするときの小さな誤りがたまりやすくなります。アイスランドの親子78組の全ゲノムを調べた研究では、子どもに新しく起こる変化の数は父親の年齢が1歳上がるごとに約2個ずつ増え、約16.5年で2倍になると推定されています[3]。
ヌーナン症候群の約半数を占めるPTPN11については、新生突然変異が調べた例ではすべて父親由来だったことが報告されています[2]。ただし、父親の年齢が高いからといって、個々のご家族で「この子のヌーナン症候群は父親の年齢のせい」と言えるわけではありません。新生突然変異はどの年齢の父親にも起こりえます。父親の年齢と赤ちゃんの病気の関係は父親の高齢化で赤ちゃんの病気が増えるのはなぜ?で詳しく解説しています。
💡 用語解説:生殖細胞モザイク
親の体の細胞(血液など)には変化がないのに、精子や卵子をつくる細胞の一部にだけ変化がある状態を「生殖細胞モザイク」といいます。この場合、両親の血液検査で「変化なし」でも、次の子に同じ変化が伝わることがあります。新生突然変異でも次の子の確率がゼロにならないのは、この可能性を否定しきれないためです。
🩺 院長コラム【「遺伝する病気」と「遺伝した病気」は違う】
「遺伝性の病気」という言葉は、「親から受け継いだ」という意味に受け取られがちです。けれどもヌーナン症候群では、遺伝のしかたが顕性遺伝であることと、目の前のお子さんが親から受け継いだかどうかは、別の話です。半数以上は、その子で初めて起きた変化だからです。
新生突然変異は、精子や卵子がつくられる過程で誰にでも起こりうるものです。ご両親のどちらかに原因があったわけではありません。そのうえで、症状の軽い親御さんが気づかないまま変化をもっていることもあるため、思い込みで「うちは偶然」と決めず、確かめてから次の妊娠を考えることが大切だと考えています。
3. 次の子の再発リスク|場合分けした確率
【結論】次の子の再発リスクは、上の子の変化が親から受け継いだものか、新しく起きたものかで決まります。親のどちらかがヌーナン症候群なら50%、両親とも変化をもっていなければ1%未満です[1]。
📊 ヌーナン症候群|次の子の再発リスクの目安
| ご両親の状況 | 次の子の確率 | ポイント |
|---|---|---|
| 親のどちらかがヌーナン症候群 | 50%(妊娠ごと) | 男の子でも女の子でも同じ。症状の重さは親子でも異なることがある |
| 両親とも変化なし(新生突然変異) | 1%未満 | 生殖細胞モザイクの可能性があるため、一般の頻度よりわずかに高い |
| 親が軽症で気づかれていない | 実際は50% | 子どもの診断をきっかけに、親の検査で初めて分かることがある |
| 2型(LZTR1の潜性遺伝) | 25% | 両親がそれぞれ1つずつ変化をもつ場合。まれな型 |
※確率は集団での目安です。ご家族ごとの確率は、上の子の遺伝子検査の結果とご両親の検査・診察をもとに見積もります。
親のどちらかがヌーナン症候群の場合:50%
原因の変化をもつ親から子へは、妊娠のたびに2分の1の確率で伝わります[1]。前の子に伝わったかどうかで次の確率が変わることはありません。また、同じ変化を受け継いでも、症状の重さは親子・きょうだいの間で大きく異なることがあります。「親が軽かったから子も軽い」とは限らない点に注意が必要です。
両親とも変化がない場合(新生突然変異):1%未満
両親の遺伝子検査で上の子と同じ変化が見つからず、診察でも両親にヌーナン症候群の特徴がなければ、上の子の変化は新生突然変異と考えられます。この場合の次の子の確率は1%未満と報告されています[1]。それでもゼロにならないのは、前の章で説明した生殖細胞モザイクがあると、両親の血液で変化が見つからなくても次の子に伝わることがあるためです。生殖細胞モザイクの頻度ははっきり分かっておらず、「一般の頻度よりわずかに高い」と考えます。
親が軽症で気づかれていない場合:実際は50%
ヌーナン症候群は症状の幅が広く、低身長や軽い顔つきの特徴だけで、本人も周りも病気と思っていないことがあります。軽い方まで含めると100人に1人ほどの可能性も指摘されています[1]。PTPN11の変化を父親から受け継いだ子どもの報告では、子どもの診断をきっかけに、それまで診断されていなかった父親の変化が分かっています[4]。このように「両親は健康だから新生突然変異」と見た目だけで決めると、実際は50%なのに1%未満と思い込んでしまうおそれがあります。
上の子の原因遺伝子が見つかっていない場合
ヌーナン症候群と診断されていても、およそ5人に1人は既知の原因遺伝子に変化が見つかりません。この場合は両親を遺伝子で調べることができないため、ご両親の診察(身長、顔つき、心臓の検査など)や家族歴から、親が同じ病気をもっている可能性を判断します。一律の数字では示せないため、遺伝カウンセリングで個別に見積もります。
男の子・女の子で確率は違う?
ヌーナン症候群の原因遺伝子は性別を決める染色体(X・Y染色体)ではなく常染色体にあるため、次の子が男の子でも女の子でも、伝わる確率は同じです。病気のなりやすさにも男女差はありません。
男女で違いが出るのは症状と、親から子への伝わり方です。男の子では停留精巣(精巣が陰のうに下りてこない状態)がよくみられ、1歳までに下りなければ手術(精巣固定術)を考えます。また、男性では停留精巣や精巣の働きの低下によって精子をつくる力が弱まることがあります[1]。こうした背景もあり、家族内で受け継がれるヌーナン症候群では、母親から子へ伝わる例のほうが多いと報告されています[2]。お母さんが原因の変化をもつ場合、次の章で説明するようにNIPTでは判定が難しいため、出生前検査の選び方が変わります。
⚠️ 大切なこと
上の数字は集団での目安です。ご家族の正確な確率は、上の子の遺伝子検査で原因の変化が分かっているか、ご両親が同じ変化をもっているかで決まります。ミネルバクリニックでは臨床遺伝専門医が、検査結果をもとに遺伝カウンセリングで個別に見積もります。
4. 両親の遺伝子検査は必要?
【結論】両親の遺伝子検査は必須ではありませんが、次の子の確率が「50%」か「1%未満」かを分けるための、もっとも確かな方法です。上の子の原因の変化が分かっていれば、両親はその1か所を調べるだけで済みます。
前の章で見たように、親御さんが軽症で気づいていないことがあるため、見た目や健康状態だけで判断するのは危険です。一方で、検査を受けるかどうかは、結果が分かったときの気持ちも含めてご夫婦で話し合って決めることです。
✅ 両親の遺伝子検査のメリットと考えておきたいこと
| メリット | 考えておきたいこと |
|---|---|
| 次の子の確率を50%か1%未満かに分けられる | どちらかの親が変化をもつと分かる可能性がある |
| 次の妊娠で選ぶ検査(羊水・絨毛検査かNIPTか)が決まる | 「変化なし」でも生殖細胞モザイクの可能性は残る |
| 親御さん自身の心臓などの健康管理につながることがある | 費用がかかる・結果を受け止める心の準備が必要 |
上の子の原因遺伝子がまだ調べられていない場合や、ご家族の確認には、ヌーナン症候群とその類縁疾患(RAS病)の原因遺伝子をまとめて調べるNoonan症候群・RASopathies遺伝子パネル検査があります。
🩺 院長コラム【親の検査は「犯人探し」ではない】
親の遺伝子検査というと、「どちらのせいか」を調べるように感じて、ためらう方もいらっしゃると思います。けれども、この検査の目的は責任を問うことではなく、次の妊娠の確率が50%なのか1%未満なのかを知り、検査の方法を正しく選ぶことにあります。
どちらかの親御さんに変化が見つかった場合も、それはご本人の健康管理を見直すきっかけになります。ヌーナン症候群では大人になってから心臓の病気が問題になる方もいるからです。検査を受けるかどうかは、メリットと心の負担の両方を理解したうえで、ご夫婦で納得して決めていただきたいと考えています。
5. 次の妊娠での出生前診断の選択肢
【結論】上の子の原因の変化が分かっていれば、羊水検査・絨毛検査でその変化を直接調べるのがもっとも確実です。原因が分かっていない場合や、新生突然変異が新たに起きていないかを調べたい場合は、ヌーナン症候群を対象に含むダイヤモンドプラン・インペリアルプランのNIPTが選択肢になります。
おなかの赤ちゃんで気づかれるサインと、その限界
ヌーナン症候群の赤ちゃんでは、妊娠初期の超音波で首の後ろのむくみ(NT)が厚いことがあり、形の異常としては胸に水がたまる所見(胸水)が多いとされます[1]。羊水過多がきっかけになることもあります。ただし、これらはヌーナン症候群に特有ではなく、まったく所見のない赤ちゃんも多くいます。心臓の病気も、妊娠中に見つかることはまれです[1]。「健診のエコーで何も言われなかったから大丈夫」とは言えないため、次の子の確率が気になる方は検査で確かめる方法を考えます。生まれてから気づかれるサインはヌーナン症候群はいつわかる?(特徴・顔つきの記事)をご覧ください。
🔬 ヌーナン症候群を調べる出生前検査の比較
| 検査 | 受ける時期 | 向いている場合 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 絨毛検査 | 妊娠11〜14週ごろ | 家族の原因の変化が分かっている | 確定検査。おなかに針を刺すため、わずかに流産のリスクがある |
| 羊水検査 | 妊娠15週ごろ以降 | 家族の原因の変化が分かっている/NIPTで陽性だった | 確定検査。わずかに流産のリスクがある |
| ダイヤモンドプラン(56遺伝子) | 妊娠9週から | 原因が分かっていない/新生突然変異を調べたい | 採血のみ。スクリーニング検査なので陽性なら確定検査が必要 |
| インペリアルプラン(最大155遺伝子) | 妊娠9週から | ヌーナン症候群に加え、より広い単一遺伝子疾患も調べたい | 単一遺伝子の結果は3〜4週間。陽性なら確定検査が必要 |
※当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。結果は基本10〜14日で、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間です(ダイヤモンドプランは単一遺伝子も10〜14日)。
原因の変化が分かっているとき:羊水検査・絨毛検査で直接調べる
上の子の遺伝子検査で原因の変化(どの遺伝子の、どの位置か)が特定されていれば、赤ちゃんの細胞を羊水や絨毛から採って、その1か所に同じ変化があるかを確かめられます。これは確定検査なので、結果がそのまま診断になります。親のどちらかが変化をもつ場合(確率50%)や、新生突然変異でも生殖細胞モザイクが心配な場合に向いています。
原因が分かっていないとき・新生突然変異を調べたいとき:NIPT
お母さんの血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAから、新しく生じた変化や父親から受け継いだ変化を探す方法が開発されています。ヌーナン症候群などを対象にした研究では、新生突然変異に加え、父親由来の病的な変化を妊娠13週より前に見つけられた例が報告されています[5]。当院のダイヤモンドプランの56遺伝子にはPTPN11・SOS1・RAF1・RIT1・KRAS・NRAS・BRAF・SOS2などヌーナン症候群の原因遺伝子が含まれ、インペリアルプランもヌーナン症候群(RAS病)を対象にしています。
⚠️ NIPTで調べるときに確認したい2つのこと
①お母さん自身が原因の変化をもつ場合、血液中ではお母さんのDNAと赤ちゃんのDNAを区別できないため、この方法では判定できません。研究でもお母さん由来の変化は判定の対象から外されていました[5]。この場合は絨毛検査・羊水検査を選びます。②上の子の原因遺伝子が検査の対象に入っているかを確かめてください。たとえば2型の原因であるLZTR1は、ダイヤモンドプランの56遺伝子には含まれていません。
6. COATE法(ダイヤモンドプラン)とインペリアルプランとは
【結論】ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)で、染色体の数の変化・微小欠失に加えて、ヌーナン症候群を含む56の単一遺伝子を調べます。インペリアルプランは低深度全ゲノムシーケンスとターゲット法で、最大155遺伝子(202疾患)を対象にしています。
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
🔬 ヌーナン症候群を調べられる2つのプラン
| 項目 | ダイヤモンドプラン | インペリアルプラン |
|---|---|---|
| 検査方式 | COATE法(SNP法+ターゲット法) | 低深度全ゲノムシーケンス+ターゲット法 |
| 染色体の数 | 13・18・21・15・16・22番トリソミー、性染色体の数の変化4種類 | 全常染色体、性染色体の数の変化4種類 |
| 微小欠失・重複 | 12種類(13疾患) | 最大92か所+5Mbを超える構造異常 |
| 単一遺伝子 | 56遺伝子(ヌーナン症候群・アラジール症候群・CHARGE症候群・ソトス症候群・骨形成不全症・コルネリア・デ・ランゲ症候群・レット症候群など) | 最大155遺伝子・202疾患(ダイヤモンドの対象に加え、ピット・ホプキンス症候群・フェラン・マクダーミッド症候群・KBG症候群など) |
| 結果までの目安 | 10〜14日(単一遺伝子も同じ) | 10〜14日(単一遺伝子のみ3〜4週間) |
| 対象 | 単胎のみ | 単胎のみ |
どちらもスクリーニング検査です。陽性の結果が出たら、羊水検査・絨毛検査で確かめてから判断します。精度のデータはCOATE法×デノボ検査の解説を、インペリアルプランの対象は155遺伝子de novo変異NIPTをご覧ください。
🩺 院長コラム【NIPTは早さより正確さで選ぶ】
NIPTは結果が出るまでの早さを競う検査ではなく、生涯に関わる判断の材料になる検査です。だからこそミネルバクリニックでは、何を調べ、何を調べていないのかを明確にしたうえで、調べられる範囲と正確さを重視してプランを用意しています。
上のお子さんがヌーナン症候群だったご家族にとって、ダウン症候群などの染色体の数を調べるだけのNIPTでは、いちばん知りたいことに答えられません。一方で、お母さんが原因の変化をもつ場合のように、NIPTでは判定できない場面もあります。ご家族の状況に合わせて、NIPTと確定検査のどちらを、どの順で選ぶかを一緒に考えることが、臨床遺伝専門医の役割だと考えています。
ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
出生前検査というとダウン症候群を思い浮かべる方が多いですが、ヌーナン症候群のような単一遺伝子の病気は、染色体の数を調べる一般的なNIPTの対象外です。単一遺伝子の病気は1つひとつはまれでも、30遺伝子・25疾患を合わせただけで約600人に1人(0.17%)の頻度になると報告されており[7]、ダウン症候群と同じくらいの数字です。また、超音波検査で赤ちゃんの異常が疑われた妊婦さんを対象にした研究では、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件、60.7%増)に増えたと報告されています[6]。
🧮 1つの病気あたりで考えると
※料金は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後・税込です。項目の数は、常染色体トリソミー・性染色体の数の変化・微小欠失(重複)の領域・単一遺伝子の数を足したものです。陰性は、調べた範囲で可能性が低いという意味で、すべての病気がないことを保証するものではありません。
NIPTを受けるときは、互助会2つ(羊水検査の費用を補助するカトレア会8,000円と、流産で再検査ができず結果が出ない場合に備える安心検査結果保障制度6,000円)に全員加入していただきます。どちらも収益を目的としない事業のため、消費税の対象外です。
7. NIPTと医療費控除について
【結論】NIPTの費用は、病気の治療ではなく検査(スクリーニング)の費用として、原則として医療費控除の対象外とされています。陽性後の確定検査やその後の医療費がどう扱われるかは状況によって異なるため、領収書を保管し、管轄の税務署に確認してください。
対象になる費用・ならない費用の考え方は、NIPT医療費控除の対象と条件で詳しく整理しています。
8. 検査でわかること・わからないこと
【結論】出生前検査でわかるのは、赤ちゃんがヌーナン症候群の原因となる変化をもっているかどうかです。その子の症状がどのくらい重くなるか、将来どのような生活を送るかまでは分かりません。
📋 検査でわかること・わからないこと
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ◎ わかること | 調べた遺伝子に原因の変化があるかどうか(確定検査なら診断、NIPTなら可能性) |
| △ ある程度わかること | 原因遺伝子ごとの症状の傾向(例:RAF1では肥大型心筋症が多い、など)。ただし個人差が大きい |
| × わからないこと | 心臓の病気の重さ、身長、発達の程度、将来の生活など |
ヌーナン症候群は、同じ変化をもつ親子やきょうだいでも症状の重さが異なる病気です。知的な発達に遅れのない方も多く、発達の遅れがみられることがある程度です。成長ホルモン治療や心臓の治療など、生まれてからの管理の方法はヌーナン症候群とは(総論)で解説しています。
9. ミネルバクリニックのサポート体制
ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が運営し、遺伝カウンセリングから検査、陽性時の確定検査まで院内で対応します。
👩⚕️ 臨床遺伝専門医が常駐
上の子の遺伝子検査の結果やご家族の状況をもとに、次の子の確率と、羊水検査・絨毛検査・NIPTのどれを選ぶかを、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明します。NIPTの料金には遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定が含まれます。
🏥 確定検査まで院内で
2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。NIPTで陽性だった場合の陽性カウンセリングは何度でも無料です。
🗾 遠方の方はオンラインNIPT
オンラインNIPTでは、遺伝カウンセリングをオンラインで受け、採血は全国110か所の提携施設で行えます。
🏥 次の妊娠を、確かな情報をもとに考えるために
臨床遺伝専門医が常駐し、上のお子さんの検査結果をもとに次の子の確率を見積もります。ヌーナン症候群を対象に含むNIPT(ダイヤモンド・インペリアル)から、陽性時の羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。NIPT専用ダイヤル 03-3408-3768
よくある質問(FAQ)
Q1. ヌーナン症候群は遺伝しますか?
遺伝のしかたは常染色体顕性(優性)遺伝で、原因の変化をもつ人の子どもには、性別に関係なく妊娠ごとに50%の確率で伝わります。ただし全体の約60%は両親に変化がない新生突然変異(de novo変異)で起こり、この場合は親から受け継いだものではありません。
Q2. ダウン症候群だけを調べるNIPTで、ヌーナン症候群も分かりますか?
分かりません。ヌーナン症候群は染色体の数ではなく、PTPN11などの1つの遺伝子の変化で起こるためです。ミネルバクリニックでは、ヌーナン症候群の原因遺伝子を対象に含むダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子)で調べられます。陽性の場合は羊水検査・絨毛検査で確かめます。
Q3. 第1子がヌーナン症候群でした。次の子もなる確率は?
親のどちらかが同じ病気なら50%、両親とも原因の変化をもっていなければ1%未満と報告されています。両親が健康に見えても、症状が軽くて気づかれていないことがあるため、上の子と同じ変化が両親にあるかを遺伝子検査で確かめると、どちらに当てはまるかが分かります。
Q4. 次の子が男の子と女の子で、確率は違いますか?
同じです。原因遺伝子は性染色体ではなく常染色体にあるためです。男の子では停留精巣が多く、男性では精子をつくる力が弱まることがあるため、家族内で受け継がれる例では母親から伝わることが多いと報告されています。
Q5. 父親の年齢はヌーナン症候群に関係しますか?
新生突然変異は父親の年齢が上がるほど起こりやすく、子どもに新しく起こる変化は父親の年齢が1歳上がるごとに約2個増えると推定されています。PTPN11の新生突然変異は、調べた例ではすべて父親由来でした。ただし、どの年齢の父親にも起こりうるもので、個々のご家族で原因を年齢と断定することはできません。
Q6. 両親の遺伝子検査は必要ですか?
必須ではありませんが、次の子の確率が50%か1%未満かを分ける、もっとも確かな方法です。上の子の原因の変化が分かっていれば、両親はその1か所を調べるだけで済みます。「変化なし」でも生殖細胞モザイクの可能性はわずかに残ります。
Q7. 次の妊娠で、ヌーナン症候群を調べる方法は?
上の子の原因の変化が分かっていれば、絨毛検査(妊娠11〜14週ごろ)や羊水検査(15週ごろ以降)でその変化を直接調べるのが確実です。原因が分かっていない場合や新生突然変異を調べたい場合は、妊娠9週から受けられるダイヤモンドプラン・インペリアルプランのNIPTが選択肢です。お母さん自身が原因の変化をもつ場合はNIPTでは判定できないため、確定検査を選びます。
Q8. ヌーナン症候群の赤ちゃんは、妊娠中に気づかれますか?
首の後ろのむくみ(NT)が厚い、胸に水がたまる、羊水が多いといった所見がきっかけになることがありますが、ヌーナン症候群に特有ではなく、所見のない赤ちゃんも多くいます。心臓の病気が妊娠中に見つかることもまれです。健診のエコーで指摘がなくても否定はできません。
Q9. NIPTの費用は医療費控除の対象になりますか?
NIPTは検査(スクリーニング)の費用として、原則として医療費控除の対象外とされています。陽性後の確定検査などの扱いは状況により異なるため、領収書を保管し、管轄の税務署にご確認ください。
Q10. 遠方ですが検査を受けられますか?
オンラインNIPTでは、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングをオンラインで受け、採血は全国110か所の提携施設で行えます。陽性で確定検査が必要になった場合は、当院で羊水検査・絨毛検査を受けられます。
関連記事
参考文献
- [1] Bhambhani V, Muenke M. Noonan syndrome. Am Fam Physician. 2014;89(1):37-43. [AAFP]
- [2] Tartaglia M, Cordeddu V, Chang H, et al. Paternal germline origin and sex-ratio distortion in transmission of PTPN11 mutations in Noonan syndrome. Am J Hum Genet. 2004;75(3):492-497. [PubMed 15248152]
- [3] Kong A, Frigge ML, Masson G, et al. Rate of de novo mutations and the importance of father’s age to disease risk. Nature. 2012;488(7412):471-475. [DOI 10.1038/nature11396]
- [4] Paternally inherited Noonan syndrome caused by a PTPN11 variant may exhibit mild symptoms: a case report and literature review. Genes (Basel). 2024;15(4):445. [DOI 10.3390/genes15040445]
- [5] Zhang J, Li J, Saucier JB, et al. Non-invasive prenatal sequencing for multiple Mendelian monogenic disorders using circulating cell-free fetal DNA. Nat Med. 2019;25(3):439-447. [DOI 10.1038/s41591-018-0334-x]
- [6] Zhang J, Wu Y, Chen S, et al. Prospective prenatal cell-free DNA screening for genetic conditions of heterogenous etiologies. Nat Med. 2024;30(2):470-479. [DOI 10.1038/s41591-023-02774-x]
- [7] Mohan P, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 2022;59(1):33-39. [DOI 10.1002/uog.23756]
※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。次の妊娠や検査については、主治医・専門医にご相談ください。






