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先天性心疾患の遺伝子検査|原因は遺伝?お母さんのせい?二人目の確率と115遺伝子でわかること

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

先天性心疾患の遺伝子検査

先天性心疾患は、生まれつき心臓や太い血管の形に違いがある病気で、1,000人あたり約9人の赤ちゃんにみられます[1]。その原因は、染色体の数の変化、22q11.2欠失症候群のような微小欠失、ヌーナン症候群などの単一遺伝子の病気、そして妊娠中の要因などに分かれ、遺伝が関わるものと関わらないものがあります。「私のせいだったのでは」「次の子も同じになるのでは」という問いには、原因がわかってはじめて具体的に答えられます。このページでは、先天性心疾患と遺伝の関係、二人目に起こる確率、そして先天性心疾患に関わる115の遺伝子をまとめて調べる遺伝子パネル検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 先天性心疾患は遺伝しますか?この検査で何がわかりますか?

遺伝が関わるものと関わらないものがあります。この検査は、先天性心疾患に関わる115の遺伝子をまとめて調べ、ヌーナン症候群・ホルト・オーラム症候群・CHARGE症候群・アラジール症候群・原発性線毛運動不全症など、単一遺伝子が原因の先天性心疾患を探します。染色体の数の変化や微小欠失は、別の検査(マイクロアレイなど)で調べます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

お子さんに先天性心疾患があり原因と次のお子さんの確率を知りたい親御さん、心臓以外の特徴(顔立ち・手・発達など)もあって症候群が疑われる方、先天性心疾患のある方で妊娠・出産を考えている方、ご家族に先天性心疾患の方が複数いる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは2〜3週間(至急オプション55,000円で約7日短縮)。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、唾液・頬粘膜ならオンライン診療でも受けられます。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、次のお子さんの確率と、次の妊娠での出生前診断(羊水検査・絨毛検査を院内で)の計画まで具体的に考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 原因がわかると、次の一歩が具体的になります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 心臓と血管の病気を広く調べる検査(264遺伝子)

1. 先天性心疾患は遺伝する?原因は4つに分かれる

先天性心疾患には、遺伝が関わるものと関わらないものがあります。原因は大きく「染色体の数の変化」「微小欠失などの染色体の一部の変化」「単一遺伝子の病気」「遺伝以外の要因」に分けられ、どれに当たるかで、次のお子さんの確率も、受けるべき検査も変わります。このページの遺伝子パネル検査が調べるのは、このうちの「単一遺伝子の病気」です。

先天性心疾患とは:どれくらい多い病気か

先天性心疾患は、心臓の壁の穴(心室中隔欠損症・心房中隔欠損症)、弁や血管の狭さ、血管のつながり方の違いなど、生まれつき心臓や太い血管の形が違う病気の総称です。世界の114の研究(出生約2,410万人)をまとめた解析では、1995年以降の出生数1,000人あたりの頻度は約9.1人で、その後15年ほど大きな変化はありませんでした[1]。

型ごとに見ると、もっとも多いのは心室中隔欠損症で、心房中隔欠損症、動脈管開存症が続きます。1970〜2017年の研究をまとめた解析では、心室中隔欠損症は出生1,000人あたり約3.1人でした[2]。ファロー四徴症のように、いくつかの形の違いが組み合わさった病気もあります。

原因の内訳:染色体・微小欠失・単一遺伝子・遺伝以外

🧬 先天性心疾患の主な原因と、調べる検査

原因 どんなものか 主な検査
染色体の数の変化 21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーなど。染色体が1本多い 染色体検査(Gバンド法)・マイクロアレイ/妊娠中はNIPT・羊水検査
染色体の一部の欠失・重複 22q11.2欠失症候群など。顕微鏡では見えない小さな欠け(微小欠失) マイクロアレイ染色体検査/妊娠中はNIPT・羊水検査
単一遺伝子の病気 ヌーナン症候群・ホルト・オーラム症候群・CHARGE症候群・アラジール症候群など。1つの遺伝子の変化で起こる このページの遺伝子パネル検査(115遺伝子)・全エクソーム検査
遺伝以外の要因 母親の風疹、フェニルケトン尿症、妊娠前からの糖尿病、一部の薬など 遺伝子検査ではわからない

※染色体の異常の内訳は文献[3]、単一遺伝子の割合は文献[4]、遺伝以外の要因は文献[5]による。

米国の住民を対象にした研究では、先天性心疾患のある赤ちゃん4,430人のうち12.3%、つまり約8人に1人に染色体の異常がありました。その内訳は、21トリソミーが52.8%、18トリソミーが12.8%、22q11.2欠失が12.2%、13トリソミーが5.7%でした[3]。

単一遺伝子の変化については、先天性心疾患のお子さん2,871人の遺伝子を調べた研究で、お子さんで新しく起きた変化(新生突然変異(de novo))が全体の8%の原因と考えられ、親から受け継いだまれな変化が1.8%に関わっていました。新しく起きた変化が原因だった割合は、心臓だけの病気(孤立性)では約3%でしたが、発達の遅れと心臓以外の先天異常の両方があるお子さんでは約28%と高くなっていました[4]。

これらを合わせても、原因がわかるのは一部です。多くの先天性心疾患では、一つの原因を特定できません。だからこそ、どの原因が考えられるかを整理し、合った順番で検査を選ぶことが大切です。心臓以外の特徴があるか、発達の遅れがあるか、ご家族に同じ病気の方がいるかで、まず染色体を調べるか、遺伝子を調べるかの判断が変わると考えています。

お母さんのせい?妊娠中の要因として知られているもの

先天性心疾患の原因を、妊娠中のお母さんの過ごし方と決めつけることはできません。米国心臓協会の声明では、原因として確かめられている遺伝以外の要因に、母親の風疹、フェニルケトン尿症、妊娠前からの糖尿病、サリドマイドやビタミンAの仲間(レチノイド)への曝露、早産を防ぐためのインドメタシンが挙げられ、周産期のマルチビタミン・葉酸は先天性心疾患を減らす方向の要因とされています[5]。

一方で、22q11.2欠失症候群は主に、卵子や精子ができるときの染色体の組み換えの際に新しく起きる欠失によるものとされています[11]。お子さんで新しく起きた単一遺伝子の変化も、親から受け継いだものではありません。遺伝子や染色体の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因がわかることで、そのことがはっきりする場合もあります。

発達との関係:心臓以外の症状にも目を向ける

米国心臓協会の声明は、先天性心疾患のあるお子さんは発達の遅れや発達障害のリスクが高いとしています。また、先天性心疾患のお子さんの最大30%に遺伝性の病気や症候群がみつかることがあるとし、乳児期に心臓の手術が必要だったお子さんや、遺伝性の症候群を伴うお子さんを、発達を定期的に確かめるべき群に挙げています[6]。

上で紹介したように、心疾患に加えて発達の遅れや心臓以外の先天異常があるお子さんでは、遺伝子の変化が見つかる割合が高くなります[4]。原因の病名がわかると、心臓以外に確かめておくべきこと(聴力・腎臓・内分泌・発達など)が見えてきます。

2. 二人目も心臓病になる?次のお子さんの確率

次のお子さんに先天性心疾患が起こる確率は、原因によって大きく変わります。原因がわからない場合は家族の調査から得られた数字が目安になり、原因がわかれば遺伝のしかたからより具体的な確率をお伝えできます。

家族での再発:デンマークの全国調査

デンマークで1977〜2005年に生まれた約176万人を追った研究では、先天性心疾患のある人の親・きょうだい・子ども(第1度近親)は、一般と比べて、同じ型の心疾患が約8.2倍、別の型の心疾患が約2.7倍起こりやすいと報告されています。再発しやすさは型によって違い、内臓錯位では約79倍、右室流出路の狭窄では約49倍、房室中隔欠損では約24倍だった一方、心臓だけの心室中隔欠損では約3.4倍でした[7]。

親御さんご自身が先天性心疾患をもつ場合については、同じデンマークの研究グループが、お子さんの先天性心疾患のリスクは、母親に心疾患がある場合は一般の約5.4倍、父親の場合は約3.0倍で、母親のほうが高いと報告しています[8]。

これらは「一般と比べて何倍か」という相対的な数字です。ご家族一人ひとりの確率は、原因と、ご家族の心疾患の型によって変わります。

原因がわかると、確率が具体的になる

👨‍👩‍👧 原因・遺伝のしかたと、次のお子さんの確率の考え方

原因・遺伝のしかた 次のお子さんの確率の考え方
常染色体顕性(優性)遺伝で、親御さんが同じ変化をもつ お子さん1人ごとに2分の1。症状の重さは親子で違うことがある
常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親とも保因者 お子さん1人ごとに4分の1
X連鎖遺伝で、お母さんが保因者 男の子か女の子かで確率が変わる
お子さんで新しく起きた変化(de novo) 多くは低いが、ゼロではない(下の注意を参照)
原因がわからない 上のデンマークの研究などの家族調査の数字が目安になる

※遺伝のしかた全般は遺伝形式のページで解説しています。

⚠️ 「新しく起きた変化だから、次は大丈夫」とは言い切れません

お子さんで新しく起きたと考えられる変化でも、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ同じ変化がある「性腺モザイク」のことがあります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。血液で親御さんに変化が見つからなかったことは、生殖細胞に変化がないことの証明にはなりません。

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんに同じ変化があるかを、羊水検査・絨毛検査で調べることを計画できます(第7章・第8章)。原因がわからないままでは、出生前に調べる的を決められません。これが、原因を調べておくことのいちばん大きな意味だと考えています。

3. 先天性心疾患を伴う主な症候群と「顔つき」

先天性心疾患そのものに決まった顔つきはありません。ただし、心疾患を伴いやすい症候群には、特徴的な顔立ちや、手・耳・肝臓など心臓以外の特徴がみられるものがあります。下の表は、このページの検査で原因遺伝子を調べられる主な症候群と、比べるために、染色体の検査で調べる症候群をまとめたものです。

❤️ 先天性心疾患を伴う主な症候群

症候群 心臓の病気の頻度・特徴 心臓以外の主な特徴 原因・調べる検査
ヌーナン症候群 もっとも多いのは弁の形の違いを伴う肺動脈弁狭窄(50〜62%)。肥大型心筋症は約20%[12] 低身長、特徴的な顔立ち、胸の形の違いなど PTPN11(約50%)ほか。このパネルで調べる。常染色体顕性
CHARGE症候群 CHD7の病的変化をもつ299人のうち74%に先天性心疾患。円錐動脈幹異常と房室中隔欠損が多い[13] 目・耳・鼻の後ろ(後鼻孔)・成長・性腺などの特徴 CHD7。このパネルで調べる。常染色体顕性
ホルト・オーラム症候群 欧州の登録研究で78.7%に先天性心疾患(多くは心房・心室中隔欠損)[14] 親指・腕など上肢の形の違い TBX5。厳格な診断基準を満たす人の74%で変化が見つかった[15]。このパネルで調べる。常染色体顕性
アラジール症候群 200人のうち94%に心血管の病変。もっとも多いのは肺動脈の枝の狭窄・低形成(76%)[16] 胆汁がうっ滞する肝臓の病気、背骨・目の特徴 JAG1(このパネルで調べる)。常染色体顕性
22q11.2欠失症候群 乳児期に見つかった43人のうち81%に心疾患[10] 免疫・カルシウム・口蓋・発達など 染色体の微小欠失。マイクロアレイで調べる
ダウン症候群 1,469人のうち44%に主要な心疾患。心疾患のある児の39%が房室中隔欠損[9] 特徴的な顔立ち、筋緊張の低さ、発達の遅れなど 21トリソミー。染色体検査・NIPTで調べる

※頻度は各文献の対象集団での数字で、研究によって変わります。

ヌーナン症候群は出生1,000〜2,500人に1人とされ、常染色体顕性遺伝の病気です[12]。原因遺伝子はPTPN11・SOS1・RAF1・RIT1など複数あり、同じRAS経路の遺伝子の変化で起こるCFC症候群・コステロ症候群などとまとめて「RASopathies(ラソパチー)」と呼ばれます。CHARGE症候群のCHD7、ホルト・オーラム症候群のTBX5、アラジール症候群のJAG1も、このパネルの対象です。

顔つきだけでは判断できない理由

症候群の特徴は人によって現れ方が違い、軽い方では気づかれないこともあります。顔立ちの印象だけで「症候群ではない」「症候群だ」と決めることはできません。お子さんの心臓以外の特徴が気になる場合や、親御さんご自身にも似た特徴がある場合は、検査で確かめることで、はじめて見通しや次のお子さんの確率を考えられます。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

お子さんの先天性心疾患の原因を知りたい親御さん、心臓以外の特徴もあって症候群が疑われる方、先天性心疾患のある方で妊娠・出産を考えている方に向く検査です。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。

お子さんに先天性心疾患があり、原因と次のお子さんの確率を知りたい親御さん

原因がわかると、病名、心臓以外に気をつけること、使える制度、そして次のお子さんの確率が決まります。欧州の希少疾患の患者さん6,507人の調査では、症状が出てから確定診断までの平均は4.7年でした[17]。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)では、全エクソーム解析を終えた5,136家系のうち2,247家系(43.8%)で診断が確定しています[18]。全員に原因が見つかるわけではありませんが、陰性でも次の選択肢があります。

  • ●心疾患に加えて、顔立ち・手や腕・耳・目・腎臓・肝臓などに気になる特徴があるお子さん
  • ●心疾患に加えて、発達の遅れがあるお子さん
  • ●ご家族に先天性心疾患の方が複数いる方
  • ●左右の配置が入れ替わる内臓錯位・内臓逆位を伴う心疾患のお子さん(線毛の遺伝子も調べるため)

先天性心疾患のある方で、妊娠・出産を考えている方

親御さんご自身が先天性心疾患をもつ場合、お子さんのリスクは一般より高いと報告されています[8]。ご自身の心疾患が単一遺伝子の病気によるものとわかれば、お子さんへの確率と、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化を調べられるかを具体的に考えられます。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ってから選ぶことができるよう、当院では検査・遺伝カウンセリング・出生前診断まで続けて支えます。

妊娠中に赤ちゃんの心臓の病気を指摘された方

妊娠中の超音波検査(胎児超音波検査)で心臓の病気を指摘された場合、まず赤ちゃんの染色体を、羊水検査・絨毛検査で調べることを考えます。このページの検査は、ご本人(生まれたお子さんや大人の方)の血液・唾液などで行う検査です。妊娠中の進め方は第8章でご説明します。

この検査より別の検査が向いている場合

このパネルは「遺伝子の配列」を読む検査です。染色体の数や大きな欠失を疑う場合は、先に別の検査を選びます。症状に合わせた選び方の目安は次のとおりです。

🔍 症状・状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
心疾患に加えてダウン症候群などの特徴がある 染色体検査(Gバンド法)
心疾患に加えて発達の遅れ・複数の先天異常がある(まず染色体の小さな欠失・重複を確かめたい) マイクロアレイ染色体検査
ヌーナン症候群などRAS経路の病気を強く疑う Noonan症候群・RASopathies遺伝子パネル検査・CFC症候群パネル
アラジール症候群を疑う(肝臓の症状がある) アラジール症候群遺伝子検査(JAG1/NOTCH2)
内臓錯位・内臓逆位、くり返す呼吸器の感染がある 内臓錯位症・完全内臓逆位 遺伝子検査・原発性線毛機能不全症候群パネル
心筋症・不整脈・大動脈の病気も含めて広く調べたい 心血管疾患包括パネル(264遺伝子)・肥大型心筋症パネル・拡張型心筋症パネル
心臓以外の症状が多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)・全ゲノム検査(WGS)

※どの検査が合うかは、心疾患の型・心臓以外の特徴・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ 妊娠の前に原因を知れば、選べることが増えます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご家族で原因がわかれば、次の妊娠で羊水検査・絨毛検査を院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

5. 調べる115遺伝子と、それぞれの遺伝子でわかる病気

このパネルでは、先天性心疾患に関わる115の遺伝子を一度に調べます。心臓の形づくりに関わる遺伝子、ヌーナン症候群などのRAS経路の遺伝子、CHARGE症候群などの症候群の遺伝子に加えて、体の左右を決める遺伝子や、線毛の遺伝子が含まれています。

線毛の遺伝子が入っているのは、線毛が体の左右の決定にも関わるためです。原発性線毛運動不全症の一部の型は「内臓逆位を伴う・伴わない」と記載されており、左右の配置が乱れる内臓錯位は、デンマークの研究で家族内の再発がもっとも起こりやすかった心疾患のグループでした[7]。表の病名と遺伝のしかたは、遺伝性疾患のデータベースOMIMの登録にもとづいています。

🫀 心臓の形づくりに関わる遺伝子(24遺伝子)

遺伝子 関係する主な病気 遺伝のしかた
ACTC1 心房中隔欠損症5型/肥大型心筋症11型/拡張型心筋症1R型 常染色体顕性(優性)
CITED2 心室中隔欠損症2型/心房中隔欠損症8型 常染色体顕性(優性)
CRELD1 房室中隔欠損症2型(常染色体顕性)/ジェフリーズ・ラカーニ神経発達症候群(常染色体潜性) 常染色体顕性・潜性
GATA4 心房中隔欠損症2型/心室中隔欠損症1型/房室中隔欠損症4型/ファロー四徴症 常染色体顕性(優性)
GATA6 房室中隔欠損症5型/心房中隔欠損症9型/円錐動脈幹異常/膵無形成と先天性心疾患 常染色体顕性(優性)
GDF1 先天性心疾患(複数の型)6型(常染色体顕性)/右側相同(常染色体潜性) 常染色体顕性・潜性
MYH6 心房中隔欠損症3型/肥大型心筋症14型/拡張型心筋症1EE型 常染色体顕性(優性)
NKX2-5 心房中隔欠損症7型(房室伝導障害を伴う)/心室中隔欠損症3型/ファロー四徴症/左心低形成症候群2型 常染色体顕性(優性)
NKX2-6 円錐動脈幹異常(総動脈幹症を含む) 常染色体潜性(劣性)
NOTCH1 大動脈弁疾患1型(大動脈二尖弁など)/アダムス・オリバー症候群5型 常染色体顕性(優性)
NR2F2 先天性心疾患(複数の型)4型/46,XX性分化疾患5型 常染色体顕性(優性)
SMAD6 大動脈弁疾患2型/頭蓋縫合早期癒合症7型(なりやすさ) 常染色体顕性(優性)
TAB2 先天性心疾患(複数の型)2型 常染色体顕性(優性)
TBX20 心房中隔欠損症4型 常染色体顕性(優性)
TLL1 心房中隔欠損症6型 常染色体顕性(優性)
ZFPM2 ファロー四徴症/46,XY性分化疾患9型/先天性横隔膜ヘルニア3型 常染色体顕性(優性)
DTNA 左室緻密化障害1型 常染色体顕性(優性)
FOXF1 肺静脈の配列異常を伴う肺胞毛細血管異形成 常染色体顕性(優性)
ELN 大動脈弁上狭窄症/常染色体顕性皮膚弛緩症1型 常染色体顕性(優性)
MED13L 知的発達障害と特徴的な顔立ち(心疾患を伴うことがある) 常染色体顕性(優性)
CYR61(現在の名前:CCN1) 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) —
FOXH1 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) —
HAND1 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) —
NTRK3 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) —

※OMIMに病名の登録がない遺伝子は「研究中」としています。

🧩 RAS経路の遺伝子:ヌーナン症候群・CFC症候群・コステロ症候群など(12遺伝子)

遺伝子 関係する主な病気 遺伝のしかた
BRAF CFC症候群1型/ヌーナン症候群7型/レオパード症候群3型 常染色体顕性(優性)
CBL CBL遺伝子の変化によるヌーナン症候群様疾患(若年性骨髄単球性白血病を伴うことがある) 常染色体顕性(優性)
HRAS コステロ症候群 常染色体顕性(優性)
KRAS ヌーナン症候群3型/CFC症候群2型 常染色体顕性(優性)
MAP2K1 CFC症候群3型 常染色体顕性(優性)
MAP2K2 CFC症候群4型 常染色体顕性(優性)
NRAS ヌーナン症候群6型 常染色体顕性(優性)
PTPN11 ヌーナン症候群1型/レオパード症候群1型 常染色体顕性(優性)
RAF1 ヌーナン症候群5型/レオパード症候群2型/拡張型心筋症1NN型 常染色体顕性(優性)
RIT1 ヌーナン症候群8型 常染色体顕性(優性)
SHOC2 疎毛性成長期毛を伴うヌーナン様症候群1型 常染色体顕性(優性)
SOS1 ヌーナン症候群4型/遺伝性歯肉線維腫症1型 常染色体顕性(優性)

🧬 心疾患を伴う症候群の遺伝子(14遺伝子)

遺伝子 関係する主な病気 遺伝のしかた
CHD7 CHARGE症候群/低ゴナドトロピン性性腺機能低下症5型 常染色体顕性(優性)
SEMA3E CHARGE症候群(関連は暫定的とされている) 常染色体顕性(優性)
TBX5 ホルト・オーラム症候群 常染色体顕性(優性)
JAG1 アラジール症候群1型/ファロー四徴症/難聴・先天性心疾患・後部胎生環 常染色体顕性(優性)
TBX1 ディジョージ症候群・口蓋心臓顔面症候群(22q11.2欠失症候群の中心となる遺伝子)/ファロー四徴症 常染色体顕性(優性)
NSD1 ソトス症候群 常染色体顕性(優性)
RAI1 スミス・マギニス症候群 常染色体顕性(優性)
BCOR 眼・顔・心臓・歯症候群(症候群性小眼球症2型) X連鎖顕性
OFD1 口腔顔面指症候群1型(X連鎖顕性)/ジュベール症候群10型・シンプソン・ゴラビ・ベーメル症候群2型(X連鎖潜性) X連鎖
GPC3 シンプソン・ゴラビ・ベーメル症候群1型 X連鎖潜性
FLNA X連鎖性心臓弁異形成症/脳室周囲結節状異所性灰白質/FG症候群2型/耳口蓋指症候群 X連鎖(病型により顕性・潜性)
PITX2 アクセンフェルド・リーガー症候群1型 常染色体顕性(優性)
RBM10 TARP症候群 X連鎖潜性
GJA1 眼歯指異形成症 常染色体顕性・潜性

※SEMA3EとCHARGE症候群の関係は、OMIMで暫定的な扱いになっています。

↔️ 体の左右を決める遺伝子:内臓錯位など(7遺伝子)

遺伝子 関係する主な病気 遺伝のしかた
ACVR2B 内臓錯位4型 常染色体顕性(優性)
CFAP53 内臓錯位6型 常染色体潜性(劣性)
MMP21 内臓錯位7型 常染色体潜性(劣性)
PKD1L1 内臓錯位8型 常染色体潜性(劣性)
NODAL 内臓錯位5型 常染色体顕性(優性)
ZIC3 X連鎖性内臓錯位1型/X連鎖性VACTERL連合 X連鎖潜性
LEFTY2 左右軸の形成異常 確立していない

※LEFTY2の病気との関係は、遺伝のしかたが確立していません。

🌀 線毛の動きに関わる遺伝子:原発性線毛運動不全症など(25遺伝子)

遺伝子 関係する主な病気 遺伝のしかた
ARMC4(現在の名前:ODAD2) 原発性線毛運動不全症23型 常染色体潜性(劣性)
CCDC103(現在の名前:DNAAF19) 原発性線毛運動不全症17型 常染色体潜性(劣性)
CCDC114(現在の名前:ODAD1) 原発性線毛運動不全症20型 常染色体潜性(劣性)
CCDC151(現在の名前:ODAD3) 原発性線毛運動不全症30型 常染色体潜性(劣性)
CCDC39 原発性線毛運動不全症14型 常染色体潜性(劣性)
CCDC40 原発性線毛運動不全症15型 常染色体潜性(劣性)
CCDC65(現在の名前:DRC2) 原発性線毛運動不全症27型 常染色体潜性(劣性)
CCNO 原発性線毛運動不全症29型 常染色体潜性(劣性)
CFAP298 原発性線毛運動不全症26型 常染色体潜性(劣性)
DNAAF1 原発性線毛運動不全症13型 常染色体潜性(劣性)
DNAAF2 原発性線毛運動不全症10型 常染色体潜性(劣性)
DNAAF3 原発性線毛運動不全症2型 常染色体潜性(劣性)
DNAAF4 原発性線毛運動不全症25型 常染色体潜性(劣性)
DNAAF5 原発性線毛運動不全症18型 常染色体潜性(劣性)
DNAH11 原発性線毛運動不全症7型 常染色体潜性(劣性)
DNAH5 原発性線毛運動不全症3型(内臓逆位を伴う・伴わない) 常染色体潜性(劣性)
DNAI1 原発性線毛運動不全症1型 常染色体潜性(劣性)
DNAI2 原発性線毛運動不全症9型(内臓逆位を伴う・伴わない) 常染色体潜性(劣性)
DNAL1 原発性線毛運動不全症16型 常染色体潜性(劣性)
DRC1 原発性線毛運動不全症21型/精子形成障害80型 常染色体潜性(劣性)
MCIDAS 原発性線毛運動不全症42型 常染色体潜性(劣性)
NME8 原発性線毛運動不全症6型 常染色体潜性(劣性)
SPAG1 原発性線毛運動不全症28型 常染色体潜性(劣性)
ZMYND10 原発性線毛運動不全症22型 常染色体潜性(劣性)
DNAH8 精子形成障害46型 常染色体潜性(劣性)

※原発性線毛運動不全症は、日本では「線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群を含む)」の名前で指定難病になっています。

🔆 線毛のはたらきに関わる遺伝子:バルデー・ビードル症候群・ジュベール症候群・メッケル症候群・ネフロン癆など(29遺伝子)

遺伝子 関係する主な病気 遺伝のしかた
ALMS1 アルストレーム症候群 常染色体潜性(劣性)
ARL6 バルデー・ビードル症候群3型/網膜色素変性症55型 常染色体潜性(劣性)
BBS1 バルデー・ビードル症候群1型 常染色体潜性(劣性)
BBS2 バルデー・ビードル症候群2型/網膜色素変性症74型 常染色体潜性(劣性)
BBS4 バルデー・ビードル症候群4型 常染色体潜性(劣性)
BBS5 バルデー・ビードル症候群5型 常染色体潜性(劣性)
BBS7 バルデー・ビードル症候群7型 常染色体潜性(劣性)
BBS9 バルデー・ビードル症候群9型 常染色体潜性(劣性)
BBS10 バルデー・ビードル症候群10型 常染色体潜性(劣性)
BBS12 バルデー・ビードル症候群12型 常染色体潜性(劣性)
CCDC28B バルデー・ビードル症候群1型の症状に影響する修飾遺伝子 常染色体潜性(劣性)
CEP290 ジュベール症候群5型/メッケル症候群4型/バルデー・ビードル症候群14型/レーバー先天黒内障10型 常染色体潜性(劣性)
MKKS バルデー・ビードル症候群6型/マキュージック・カウフマン症候群 常染色体潜性(劣性)
MKS1 メッケル症候群1型/バルデー・ビードル症候群13型/ジュベール症候群28型 常染色体潜性(劣性)
TRIM32 バルデー・ビードル症候群11型/肢帯型筋ジストロフィーR8型 常染色体潜性(劣性)
TTC8 バルデー・ビードル症候群8型/網膜色素変性症51型 常染色体潜性(劣性)
WDPCP バルデー・ビードル症候群15型/先天性心疾患・舌の過誤腫・多合指を伴う症候群 常染色体潜性(劣性)
B9D1 メッケル症候群9型/ジュベール症候群27型 常染色体潜性(劣性)
B9D2 メッケル症候群10型/ジュベール症候群34型 常染色体潜性(劣性)
CC2D2A ジュベール症候群9型/メッケル症候群6型 常染色体潜性(劣性)
KIF7 先端脳梁症候群(ジュベール症候群12型)/水無脳症2型 常染色体潜性(劣性)
RPGRIP1L ジュベール症候群7型/メッケル症候群5型 常染色体潜性(劣性)
TCTN2 メッケル症候群8型/ジュベール症候群24型 常染色体潜性(劣性)
TMEM216 ジュベール症候群2型/メッケル症候群2型 常染色体潜性(劣性)
TMEM231 ジュベール症候群20型/メッケル症候群11型 常染色体潜性(劣性)
TMEM67 メッケル症候群3型/ジュベール症候群6型/COACH症候群1型/ネフロン癆11型 常染色体潜性(劣性)
INVS ネフロン癆2型 常染色体潜性(劣性)
NEK8 ネフロン癆9型・腎肝膵異形成2型(常染色体潜性)/多発性嚢胞腎8型(常染色体顕性) 常染色体潜性・顕性
NPHP3 ネフロン癆3型/メッケル症候群7型/腎肝膵異形成1型 常染色体潜性(劣性)

📈 そのほか:過成長・代謝に関わる遺伝子(4遺伝子)

遺伝子 関係する主な病気 遺伝のしかた
AKT3 巨脳症・多小脳回・多指・水頭症症候群2型 常染色体顕性(体の一部の細胞だけの変化〔モザイク〕が多い)
PIK3R2 巨脳症・多小脳回・多指・水頭症症候群1型 常染色体顕性(優性)
PIK3CA PIK3CA関連過成長スペクトラム(CLOVES症候群・巨脳症-毛細血管奇形症候群など) 多くは体の一部の細胞だけに起きる変化(体細胞モザイク)
CPS1 カルバモイルリン酸合成酵素I欠損症 常染色体潜性(劣性)

※PIK3CAの病的変化の多くは体の一部の細胞だけに起きるため、この検査(血液・唾液など)では見つからないことがあります(第6章)。

💡 潜性(劣性)遺伝の病気が多いパネルです

表のうち、線毛の遺伝子(原発性線毛運動不全症・バルデー・ビードル症候群など)の多くは常染色体潜性遺伝で、ご両親が保因者の場合に4分の1の確率でお子さんに起こります。ご夫婦がそれぞれ保因者かどうかは、拡大版保因者スクリーニングで調べられることがあります(対象の遺伝子かどうかは遺伝子一覧でご確認ください)。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(NIPTとは別の検査で、単独では受けられません)。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、115の遺伝子の中の小さな変化(1文字の置き換わり、小さな挿入・欠失)と、遺伝子まるごと、または連続する2つ以上のエクソンの欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●染色体の数の変化は調べられません:ダウン症候群(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーは、染色体検査やNIPTで調べます。
  • ●微小欠失の検査としては作られていません:22q11.2欠失症候群のような染色体の小さな欠失を調べるには、マイクロアレイ染色体検査が向いています。
  • ●見つけにくい変化:染色体の転座や逆位、繰り返し配列の伸長、遺伝子の働きを調節する領域(プロモーター)やエクソンから離れたイントロンの変化は検出されません。ZIC3遺伝子の3塩基の繰り返しの伸長も評価しません。
  • ●欠失・重複の検出範囲:遺伝子まるごとの欠失・重複は血液・頬粘膜で、連続する2つ以上のエクソンの欠失・重複は血液で検出できます。エクソン1つだけの欠失・重複は、ふだんは検出されません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●体の一部の細胞だけの変化(体細胞モザイク):この検査はモザイクを見つけるようには作られていません。とくにPIK3CAの変化の多くは体の一部の細胞だけに起きるため、見つからなくてもPIK3CA関連の過成長の診断は否定されず、複数の組織を調べる必要があることがあります。腫瘍の組織は検査の対象外です。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、遺伝が関わっていないとは言えません。調べていない遺伝子や、この検査で検出できない変化が原因のこともあります。

遺伝子が読み取れている範囲の目安(カバレッジ)は、99%以上の領域を20回以上読み取る(≥99% at 20x)設計です。読み取りの質が低い部分は、サンガー法という別の方法で確かめて補います。

7. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。報告書の読み方は検査結果の見かたのページでも解説しています。

陽性だったとき:病名がわかると、次の一手が決まる

原因の遺伝子と病名がわかると、心臓以外に確かめておくこと(たとえばヌーナン症候群なら心筋症や成長、CHARGE症候群なら聴力や目、アラジール症候群なら肝臓)と、使える制度(第9章)が決まります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、お子さんの成長に合わせた健康管理や、ご家族の計画に、この先ずっと使える情報になります。研究が進めば、同じ結果の意味がより詳しくわかることもあります。

ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき

常染色体顕性遺伝の病気が見つかった場合は、親御さんのどちらかが同じ変化をもっていないかを調べることで、お子さんで新しく起きた変化か、受け継いだ変化かがわかります。症状が軽く気づいていなかった親御さんが、同じ変化をもっていたとわかることもあります。親御さんが変化をもっていれば、次のお子さんの確率は2分の1です。潜性遺伝の病気なら、ご両親がそれぞれ保因者かを確かめ、きょうだいが将来、結婚・出産を考えるときの手がかりにもなります。

陰性だったとき

原因が見つからなかった場合も、遺伝が関わっていないとは言えません(第6章)。心臓以外の症状に合わせて、マイクロアレイ染色体検査や全エクソーム検査などを考えます。原因がわからない場合の次のお子さんの確率は、第2章の家族調査の数字が目安になります。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。ご両親の検査結果やお子さんの症状とあわせて、意味を考えることがあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

次の妊娠を考えている方:出生前診断の相談

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

8. 妊娠中・次の妊娠でできること:NIPTと院内の確定検査

先天性心疾患の原因になる染色体の数の変化や22q11.2欠失症候群、そしてこのパネルの遺伝子の一部は、妊娠中に当院のNIPTでも調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性の場合は羊水検査・絨毛検査で確かめる必要があり、当院では確定検査まで院内で受けられます。

染色体の数の変化と微小欠失

21・18・13トリソミーと22q11.2欠失症候群は、スタンダードプランを含む当院のNIPTのすべてのプランで調べられます。スミス・マギニス症候群(17p11.2の欠失)もすべてのプランの対象です。ウィリアムズ症候群(7q11.23の欠失)は、双子マックスプランとインペリアルプランの対象です。

このパネルの遺伝子のうち、NIPTで調べられるもの

当院のNIPTのうち、新しく起きた単一遺伝子の変化を調べられるのは、ダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子)です。このパネルの115遺伝子と照らし合わせると、次のとおりです。

🤰 このパネルの遺伝子のうち、当院のNIPTで調べられるもの

NIPTのプラン このパネルと重なる遺伝子 主な病気
ダイヤモンドプラン・インペリアルプランの両方 BRAF・CBL・CHD7・HRAS・KRAS・MAP2K1・MAP2K2・NRAS・NSD1・PTPN11・RAF1・RIT1・SHOC2・SOS1(14遺伝子) ヌーナン症候群・CFC症候群・コステロ症候群・CHARGE症候群・ソトス症候群など
インペリアルプランだけ AKT3・FLNA・JAG1・MED13L・PIK3CA・PIK3R2・TBX5(7遺伝子) ホルト・オーラム症候群(TBX5)・アラジール症候群(JAG1)・MED13L症候群など

※スタンダード・プレミアム・双子マックスプランは単一遺伝子を調べません。PIK3CAの病気の多くは体の一部の細胞だけの変化(体細胞モザイク)で、NIPTの対象とは性質が違います。NIPTの詳しい内容はNIPTのトップページと各プランのページをご覧ください。

お子さんで新しく起きる単一遺伝子の変化は、ご家族に同じ病気の方がいなくても起こります。父親の年齢とde novo変異のページでも解説しています。

妊娠中に赤ちゃんの心臓の病気を指摘されたとき

超音波検査で赤ちゃんの心臓の病気を指摘された場合は、羊水検査・絨毛検査で赤ちゃんの染色体を確かめることを考えます。先天性心疾患のお子さんの約8人に1人に染色体の異常があったという報告があるためです[3]。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っており(2025年6月から産婦人科を併設)、染色体やマイクロアレイで原因が見つからない場合には、出生前全エクソーム(WES)検査・出生前全ゲノム(WGS)検査という選択肢もあります。どの順番で何を調べるかは、心臓の所見と妊娠週数によって変わるため、遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

9. 日本の制度(2026年10月時点)

一部の重い先天性心疾患は指定難病で、多くの先天性心疾患は小児慢性特定疾病の「慢性心疾患」の対象です。厚生労働省の指定難病の一覧(348疾病)では、総動脈幹遺残症(207)、修正大血管転位症(208)、完全大血管転位症(209)、単心室症(210)、左心低形成症候群(211)、三尖弁閉鎖症(212)、肺動脈閉鎖症(213・214)、ファロー四徴症(215)、両大血管右室起始症(216)、エプスタイン病(217)が指定難病です。

このパネルで原因を調べる症候群では、ヌーナン症候群(195)、CFC症候群(103)、コステロ症候群(104)、チャージ症候群(105)、アラジール症候群(297)、ソトス症候群(194)、ジュベール症候群関連疾患(177)、線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群を含む)(340)が指定難病です。22q11.2欠失症候群(203)・ウィリアムズ症候群(179)も指定難病です。ホルト・オーラム症候群とバルデー・ビードル症候群は指定難病の一覧にはありませんが、小児慢性特定疾病の対象です(ホルト・オーラム症候群は慢性心疾患、バルデー・ビードル症候群は内分泌疾患)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。病名が遺伝子検査で確定していることが、申請の手がかりになることがあります。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・抽出したDNA・頬の内側の粘膜・唾液で、唾液・頬粘膜の場合は、遠方の方でもクリニックにお越しにならずにオンライン診療で受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 先天性心疾患に関わる115遺伝子(遺伝子の配列と欠失・重複を含む)
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
至急オプション 55,000円(結果までの期間が約7日短くなります)
VUS除外オプション 無料(意義がまだわからない変化を報告に含めない)
結果までの期間 2〜3週間
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本、紫色のキャップ)、抽出したDNA(EBバッファー中3μg)、頬の内側の粘膜、唾液(ご希望により採取キットをお送りします)
オンライン診療 唾液・頬粘膜の場合は可能。遠隔診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングをしたのち、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

検体はご自身の判断で採取せず、遺伝カウンセリングのあとに当院の案内に沿って採取してください。検体の取り違えや品質の低下を防ぐためです。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【見た目や家族歴だけでは、次の計画は立てられない】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

お子さんに先天性心疾患があるとわかると、「妊娠中の何かが悪かったのでは」と考えてしまう親御さんもいるかもしれません。けれども、遺伝子や染色体の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因がわかると、そのことがはっきりし、次のお子さんのことを具体的に考えられるようになります。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。家族歴が濃いものの、ご本人は大学を卒業して会社に勤めていた方が、念のため検査を受けたところ、染色体の微小欠失が見つかったことがあります。顔立ちや家族歴の印象だけで「大丈夫」「症候群だ」と決めることはできません。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、次の妊娠でNIPTや羊水検査・絨毛検査をどう組み合わせるかまで、当院で続けて一緒に考えられます。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 先天性心疾患は遺伝しますか?

遺伝が関わるものと、関わらないものがあります。染色体の数の変化(21トリソミーなど)、22q11.2欠失症候群のような微小欠失、ヌーナン症候群などの単一遺伝子の病気が原因になることがある一方、多くの先天性心疾患では原因が一つに特定できません。デンマークの全国調査では、先天性心疾患のある人の親・きょうだい・子どもは、同じ型の心疾患になるリスクが一般の約8倍と報告されています。原因がわかれば、遺伝のしかたと次のお子さんの確率を具体的にお伝えできます。

Q2. 二人目も心臓病になりますか?

確率は原因によって大きく変わります。原因がわからない場合でも、デンマークの研究では、先天性心疾患のある人の親・きょうだい・子どもで、同じ型の心疾患は一般の約8倍、別の型は約2.7倍起こりやすいと報告されています。原因が単一遺伝子の病気とわかり、親御さんが同じ変化をもっている常染色体顕性遺伝なら2分の1、ご両親とも保因者の常染色体潜性遺伝なら4分の1です。お子さんで新しく起きた変化でも、親御さんの生殖細胞にだけ変化がある可能性があるため、ゼロとは言えません。

Q3. 先天性心疾患はお母さんのせいですか?

妊娠中のお母さんの過ごし方が原因と決めつけることはできません。妊娠中の要因としては、母親の風疹、フェニルケトン尿症、妊娠前からの糖尿病、サリドマイドやレチノイド(ビタミンAの仲間)などの薬が知られています。一方、22q11.2欠失症候群の多くや、お子さんで新しく起きた単一遺伝子の変化は、親から受け継いだものではなく、卵子や精子ができる過程などで新しく起きる変化によるもので、誰のせいでもありません。原因がわかると、ご家族が自分を責める理由がないことがはっきりすることもあります。

Q4. 先天性心疾患の子は顔つきに特徴がありますか?

先天性心疾患そのものに決まった顔つきはありません。ただし、心疾患を伴いやすいヌーナン症候群、22q11.2欠失症候群、ダウン症候群などの症候群では、特徴的な顔立ちがみられることがあります。顔つきだけで病名を決めることはできないため、気になる場合は遺伝子検査や染色体検査で確かめます。

Q5. 先天性心疾患は発達障害と関係がありますか?

米国心臓協会の声明では、先天性心疾患のあるお子さんは発達の遅れや発達障害のリスクが高いとされ、乳児期に心臓の手術が必要だったお子さんや、遺伝性の症候群を伴うお子さんは特に注意が必要な群とされています。心疾患に加えて発達の遅れや心臓以外の先天異常があるお子さんでは、新しく起きた遺伝子の変化が見つかる割合が高いことも報告されています。

Q6. 妊娠中に赤ちゃんの心臓の病気を指摘されました。何を調べればよいですか?

先天性心疾患のお子さんの約8人に1人に染色体の異常があったという報告があるため、まず羊水検査・絨毛検査で染色体検査・マイクロアレイ検査を行うことを考えます。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っており、原因が見つからない場合には出生前の全エクソーム・全ゲノム検査という選択肢もあります。どの検査が合うかは、心臓の所見や妊娠週数によって変わるので、遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q7. この検査でダウン症候群や22q11.2欠失症候群はわかりますか?

この検査は遺伝子の配列を読む検査なので、ダウン症候群などの染色体の数の変化は調べられません。22q11.2欠失症候群のような微小欠失を調べる検査としては、マイクロアレイ染色体検査が向いています。妊娠中であれば、当院のNIPTで21・18・13トリソミーと22q11.2欠失症候群を調べることもできます(陽性の場合は確定検査が必要です)。

Q8. 先天性心疾患は指定難病・小児慢性特定疾病の対象ですか?

ファロー四徴症、単心室症、左心低形成症候群など一部の重い先天性心疾患は指定難病です。また、多くの先天性心疾患が小児慢性特定疾病の「慢性心疾患」に含まれています。ヌーナン症候群、22q11.2欠失症候群、アラジール症候群、CHARGE症候群なども指定難病です(2026年10月時点)。助成を受けるには、それぞれの認定の条件を満たし、申請する必要があります。

🧬 原因を知って、ご家族のこれからを一緒に考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。先天性心疾患の原因がわかれば、お子さんの健康管理だけでなく、次のお子さんの確率や、次の妊娠での出生前診断の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、NIPT、羊水検査・絨毛検査による確定検査まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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