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拡張型心筋症の遺伝子検査(78遺伝子パネル)|遺伝する確率・原因遺伝子でわかること・ご家族の検査

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

拡張型心筋症の遺伝子検査(78遺伝子パネル)

拡張型心筋症の遺伝子検査は、心臓の筋肉の病気に関わる78の遺伝子をまとめて調べ、拡張型心筋症の原因になっている遺伝子の変化を探す検査です。原因の遺伝子がわかると、不整脈への備え方や、ご家族の誰が定期的な心臓の検査を続けるべきかが、はっきりすることがあります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の健康管理だけでなく、ご家族の健康や、これからの妊娠・出産の計画にも役立つ情報になります。このページでは、拡張型心筋症が遺伝する確率、原因遺伝子でわかること、検査の受け方と費用を、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

拡張型心筋症に関係する78の遺伝子をまとめて調べ、原因の遺伝子の変化を探します。原因によって不整脈への備えや、ご家族の誰が定期的な心臓の検査を続けるべきかが変わることがあります。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

拡張型心筋症と診断された方(周産期心筋症を含む)、ご家族に拡張型心筋症や若い年齢での突然死の方がいる方、結婚や妊娠を考えていて家族歴が気になる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は330,000円(税込)、結果まで2〜3週間です(至急オプションで約7日短縮、55,000円)。検体は血液・唾液・頬粘膜で、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。多くは常染色体顕性遺伝で、お子さんに受け継がれる確率は2分の1です。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

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検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. 拡張型心筋症とは

拡張型心筋症(DCM:dilated cardiomyopathy)は、心臓の主なポンプである左心室が広がり、血液を送り出す力(収縮する力)が弱くなる病気です。冠動脈の病気(心筋梗塞など)、心臓の弁の病気、高血圧などで説明できないものを指し、心不全や不整脈の原因になります。英語の頭文字をとってDCMと呼ばれます。

どれくらいの人がなる病気か

日本では、原因がはっきりしない拡張型心筋症が「特発性拡張型心筋症」として指定難病(57番)になっており、難病情報センターによると、医療費助成の受給者証をもつ方は19,423人(令和元年度)です(2026年10月時点で確認)。これは助成を受けている方の数で、病気のすべての方の数ではありません。拡張型心筋症の遺伝学の総説は、原因となりうる遺伝子の変化をもつ人の割合が、これまで考えられてきた病気の頻度より多いことから、病気の人数は少なく見積もられている可能性があるとしています[3]。

原因:遺伝子が関わる割合

拡張型心筋症の原因の1つが、生まれつきもっている遺伝子の変化です。30を超える遺伝子の変化が拡張型心筋症を起こすことが知られています[3]。遺伝子と病気の関係を評価する国際的な取り組みの報告では、拡張型心筋症に関わるとされてきた遺伝子は250を超えるとされています(そのうち関係の根拠が強いものは一部です)[4]。

米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の指針によると、遺伝子検査で原因が見つかる割合は、顕性遺伝の形でご家族に複数の患者さんがいる場合でおよそ25〜40%、ご家族にほかの患者さんがいない場合で10〜25%と見積もられています[2]。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsは、病的・病的の可能性が高い変化が見つかる割合をおよそ27%としています[1]。つまり、ご家族に患者さんがいなくても、遺伝子が原因のことがあります。見た目や家族歴だけでは判断できないので、検査で確かめる意味があります。

治療と見通し

治療は、心不全の薬物治療と不整脈への対策が中心で、命にかかわる不整脈の危険が高い方には植込み型除細動器(ICD)が検討されます(第3章)。見通し(寿命)は、病気の進み方や不整脈の有無によって一人ひとり大きく違うため、このページでは一律の数字はお示ししません。GeneReviewsは、拡張型心筋症の方は何年も症状がないことがあるとしたうえで、ご家族の検査で早い段階の病気が見つかれば、進んだ段階の症状を防いだり遅らせたりすることをめざした治療を始められるとしています[1]。

症状・診断・治療をさらに詳しく知りたい方は、拡張型心筋症 総論もご覧ください。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

2. 拡張型心筋症は遺伝する?遺伝のしかたと確率

遺伝子が原因の拡張型心筋症の多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、親が原因の変化をもっている場合、お子さん1人あたり2分の1の確率でその変化を受け継ぎます[1]。ただし、原因の遺伝子によっては、潜性(劣性)遺伝やX連鎖遺伝の型もあり、確率は原因の遺伝子で変わります。

多くは常染色体顕性(優性)遺伝:お子さんへは2分の1

常染色体顕性(優性)遺伝では、対になった2本の遺伝子のうち1本に原因の変化があれば発症しうるため、親から子へ伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です。性別には関係しません。上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。GeneReviewsは、遺伝子以外の症状を伴わない拡張型心筋症は、ふつう常染色体顕性遺伝の形をとるとしています[1]。

潜性遺伝・X連鎖遺伝の型もある

一部の遺伝子では、常染色体潜性(劣性)遺伝の型もあります。この場合は、ご両親がともに保因者で、お子さん1人あたり4分の1の確率で発症します。また、この検査の対象のうちDMD(デュシェンヌ型・ベッカー型筋ジストロフィー)、EMD(エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー)、TAZ(バース症候群)、GLA(ファブリー病)、LAMP2(ダノン病)は、X染色体にある遺伝子です(X連鎖遺伝)。GeneReviewsは、DMD遺伝子の変化を1つもつ女性が、筋肉の症状がなく拡張型心筋症だけを示すことがあるとしています[1]。「女性だから関係ない」とは言えないのが、X連鎖の心臓の病気の注意点です。遺伝子ごとの遺伝のしかたは、第5章の表にまとめています。

同じ家族でも、発症の時期や重さが違う

GeneReviewsは、拡張型心筋症では症状の現れ方に幅があり(表現型の多様性)、原因の変化をもっていても発症しない人もいる(不完全浸透)ため、ご家族が何歳で発症するか、どれくらい重くなるかは予測できないとしています[1]。表現型の多様性とは、同じ原因でも症状の重さが人によって違うことをいいます。

⚠️ 「親が軽かったから、子どもも軽い」とは言えません

親御さんが軽い症状で気づいていなかったり、症状がなかったりしても、同じ変化を受け継いだお子さんが同じ経過をたどるとは限りません。拡張型心筋症は、同じ家族の中でも発症の年齢や重さに差がある病気です[1]。だからこそ、ご家族の誰かが拡張型心筋症とわかったときは、症状の有無だけで判断せず、知ったうえで計画することに意味があります。

家族歴がない場合:新しく起きた変化とモザイク

ご家族にほかの患者さんがいなくても、ご本人で新しく起きた変化(新生突然変異)が原因のことがあります。その場合でも、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性は残ります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。血液で調べた結果を、生殖細胞の割合の目安にすることもできません。「新しく起きた変化だから、次は大丈夫」と小さく見積もらないことが大切です。

3. 原因遺伝子がわかると、何が変わるか

拡張型心筋症は、原因の遺伝子によって、不整脈の起こりやすさや、植込み型除細動器(ICD)を考える時期が変わる病気です。ACMGの指針は、心筋症の遺伝子検査を、患者さんの診療と、リスクのあるご家族の管理に役立てるために行うものと位置づけています[2]。病名に原因の遺伝子という「名前」がつくと、次の一手が決まりやすくなります。

LMNA・FLNCなど:不整脈への備えを早めに考える

GeneReviewsは、LMNA・FLNC・DES・SCN5Aなどの遺伝子による拡張型心筋症では、心臓のポンプの働きの低下の程度に比べて、刺激を伝える仕組みの異常(伝導障害)や不整脈が目立つことがあるとしています[1]。

LMNA遺伝子は、ACMGの指針で拡張型心筋症の原因として2番目に多く、遺伝子検査で原因として見つかる割合は5.5%とされています[2]。LMNAの変化をもつ成人839人を対象にした研究では、男性であること、ミスセンス以外の変化であること、房室ブロック、非持続性心室頻拍、左室の収縮の働き(駆出率)から、命にかかわる心室性の不整脈が5年以内に起こる危険性を計算する方法が作られ、ICDを入れるべき人を従来の方法よりよく選べたと報告されています[6]。LMNAによる拡張型心筋症については、拡張型心筋症1A型(CMD1A)でも解説しています。

FLNC遺伝子では、タンパク質が途中で途切れるタイプの変化(ナンセンス変異やフレームシフト変異など)をもつ28家系の研究で、心室性不整脈が82%にみられ、28家系のうち21家系で計40人の心臓突然死があったと報告されました。40歳を超えた変化をもつ人の発症の割合(浸透率)は97%を超えており、著者らはICDを早めに考えるべきとしています[7]。

こうした遺伝子が見つかったからといって、すぐにICDが必要になるわけではありません。どの治療をいつ考えるかは、心臓の検査結果とあわせて循環器の主治医が判断します。遺伝子の結果は、その判断のための大切な材料の1つになります。

TTN:もっとも多く見つかる原因

TTN遺伝子は、心臓の筋肉のばねのような働きをする巨大なタンパク質(タイチン)の設計図です。ACMGの指針は、TTNのタンパク質が途中で途切れるタイプの変化を、拡張型心筋症の遺伝子検査でもっとも多く見つかる結果としています[2]。GeneReviewsは、拡張型心筋症の15〜20%がTTNによるとしています[1]。

一方で、GeneReviewsは、拡張型心筋症のない人の約3%もTTNの途切れるタイプの変化をもっているとして、TTNの結果の解釈は難しいと注意しています[1]。TTNの変化が見つかったときは、変化の場所や種類、ご家族の情報をあわせて、臨床遺伝専門医が意味を判断してご説明します。

心臓以外にも注意が必要な病気がわかることも

この検査の78遺伝子には、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型・ベッカー型、エメリー・ドレイフス型、肢帯型など)、ファブリー病、ダノン病、脂肪酸の代謝の病気(VLCAD欠損症、カルニチンの病気)、ミトコンドリア病など、心臓に症状が出ることがある全身の病気の遺伝子も含まれています。GeneReviewsは、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィーでは伝導障害や不整脈がよくみられるとし、こうした症候群性の病気が見つかった場合は、その病気に合わせた遺伝カウンセリングが必要としています[1]。

こうした病気が見つかると、心臓だけでなく、筋肉・腎臓・神経など、ほかの臓器の検査や専門の診療につなぐ必要が出てきます。「拡張型心筋症」とひとくくりにされていた病気に、本当の病名がつくことで、受けるべき検査や使える制度が変わることがあります。

周産期心筋症と遺伝子

妊娠の終わりごろから出産後に心臓の働きが落ちる周産期心筋症の女性172人を調べた研究では、15%(26人)に拡張型心筋症の原因になる遺伝子の途切れるタイプの変化が見つかり、一般の集団の4.7%より多い結果でした。その約3分の2はTTNの変化で、TTNの途切れるタイプの変化は周産期心筋症の10%にみられました[8]。GeneReviewsも、周産期心筋症を含め、心筋梗塞などによらない拡張型心筋症のすべての方に、年齢を問わず遺伝子検査を提案すべきとしています[1]。周産期心筋症と言われた方の結果は、ご自身の次の妊娠だけでなく、ご家族にとっても手がかりになります。

このパネルの遺伝子と、最新の評価

遺伝子と病気の関係の強さを専門家が評価する国際的な取り組み(ClinGen)は、2021年に51の遺伝子を評価し、拡張型心筋症との関係の根拠が強い遺伝子を19としました[4]。この19遺伝子のうち、このパネルにはJPH2を除く18遺伝子(BAG3・DES・FLNC・LMNA・MYH7・PLN・RBM20・SCN5A・TNNC1・TNNT2・TTN・DSP・ACTC1・ACTN2・NEXN・TNNI3・TPM1・VCL)が含まれています。

2026年9月に公表された更新版では、評価する遺伝子が68に広がり、根拠が強いとされたものが35の評価(遺伝子と遺伝のしかたの組み合わせ)に増えました[5]。このとき新たに加わった遺伝子の一部(BAG5・FLII・LMOD2・MYLK3・MYZAP・NRAP・PPA2・PPP1R13L・RPL3L)は、このパネルには含まれていません。根拠が強まった遺伝子のうちPRDM16とTBX20は、このパネルに含まれています。研究は今も進んでいるため、遺伝カウンセリングでは、この点もふまえて検査の選び方をご説明します。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

拡張型心筋症と診断された方、ご家族に拡張型心筋症や若い年齢での突然死・原因のわからない心不全の方がいる方、結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは、原因が遺伝子にあるかどうかは判断できません。迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

拡張型心筋症と診断された方

GeneReviewsは、心筋梗塞などによらない拡張型心筋症のすべての方に、周産期心筋症も含めて、年齢を問わず遺伝子検査を提案すべきとしています[1]。ACMGの指針も、心筋症では遺伝子検査を行い、まずご家族の中でもっともはっきり発症している方から調べることを勧めています[2]。とくに次のような方では、原因の遺伝子がわかったときに、その後の管理が変わる可能性があります。

  • ●ご家族にも心筋症や、原因のわからない心不全の方がいる方
  • ●心臓の働きの低下に加えて、房室ブロックなどの伝導障害や、心室性の不整脈が目立つ方
  • ●筋力の低下・関節の拘縮・難聴など、心臓以外の症状もある方
  • ●冠動脈の病気・弁膜症・高血圧などでは説明できず、「特発性」と言われてきた方
  • ●妊娠の終わりごろから出産後に心臓の働きが落ちた(周産期心筋症と言われた)方

原因がわからないまま「特発性」として治療を続けてきた方にとって、遺伝子検査は、その回り道を短くできる可能性のある方法です。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)では、全エクソーム解析を終えた5,136家系のうち2,247家系(43.8%)で診断が確定しました(心臓に限らない希少疾患・未診断疾患を対象にした研究)[9]。全員に原因が見つかるわけではありませんが、見つからなかった場合も次の選択肢があります(第7章)。

ご家族に拡張型心筋症の方がいて、ご自身のことを知りたい方(発症前の検査)

ご家族の中で原因の遺伝子の変化がすでにわかっている場合、症状のないご家族は、その同じ変化をもっているかを調べることができます。これは将来の発症の可能性を調べる「発症前の検査(予測的検査)」です。当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。

先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、運動や仕事の選び方・結婚や出産・住まいなど、これからの人生を計画したいと考える方もいます。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[10]。病気は違いますが、「知ることで計画を立てたい」という思いは、心筋症のご家族にも通じるものだと考えています。

一方で、結果を知ったあとの気持ちの変化は、陽性でも陰性でも起こりえます。当院では、結果をお伝えしたあとも、遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。なお、日本医学会の「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(2022年3月改定)は、成年期以降に発症する病気について、未成年者への発症前の検査は原則として本人が成人して自分で判断できるまで延期すべきとしています。一方で、未成年のうちに発症する病気で、発症前に診断することが健康管理に大きく役立つと考えられる場合は、本人の利益を第一に考えたうえで行う、という考え方も示しています。拡張型心筋症には子どものうちに発症する型もあるため、お子さんの検査をどうするかは、ご家族の病気の型と主治医の方針を踏まえて、個別にご相談ください。

結婚・妊娠を考えている方

結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。拡張型心筋症の当事者の方にとっても、ご家族に拡張型心筋症の方がいる方にとっても、ご自身が原因の変化をもっているかを妊娠の前に知っておくと、選べることが増えます。ご家族で原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べることも考えられます(第7章)。

この検査より別の検査が向いている場合

拡張型心筋症と言われているなら、まずこの検査です。ただし、心臓の病気の型がまだはっきりしない場合や、心臓以外の症状が中心の場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類で、どれも当院で受けられます。

🔍 心臓の遺伝子検査の選び方

こんなとき 向いている検査
心臓が広がって動きが弱いと言われた(拡張型心筋症) このページの検査(78遺伝子)
心臓の壁が厚いと言われた(肥大型心筋症) 肥大型心筋症の遺伝子検査
右心室を中心に不整脈が出る心筋症と言われた 不整脈原性右室心筋症(ARVC)の遺伝子検査
心筋症はないが、失神や不整脈があり病気をしぼれない 遺伝性不整脈の遺伝子検査(QT延長・ブルガダ型ならQT延長症候群・ブルガダ症候群の検査、運動や興奮で起こる不整脈ならCPVTの検査)
心筋症・不整脈・大動脈の病気などをまとめて調べたい 心血管疾患包括パネル(264遺伝子)
お子さんが突然亡くなり、原因と次のお子さんのリスクを知りたい 家族性突然死の親子トリオ全ゲノム検査
筋肉の病気が中心で、心臓の症状は一部 神経筋疾患遺伝子パネル検査
心臓以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※どの検査が合うかは、心臓の検査結果・症状・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

\ あなたの1回の検査が、ご家族を守る手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

肥大型心筋症の遺伝子検査 | どの検査がよいか迷う方へ

5. 調べる78遺伝子と、それぞれの遺伝子でわかる病気

この検査では、拡張型心筋症に関係すると報告されている78の遺伝子を、一度にまとめて調べます。心臓の筋肉の収縮の単位であるサルコメアの遺伝子、細胞どうしをつなぐデスモソームの遺伝子、細胞の核を支えるラミンの遺伝子、イオンチャネルの遺伝子のほか、筋ジストロフィーや代謝の病気など、拡張型心筋症に似た心臓の症状を起こす病気の遺伝子も含まれています。

1つずつ順番に調べる方法では、原因が見つかるまでに何度も検査を重ねることになります。最初から78遺伝子をまとめて調べることで、1回の検査で原因にたどり着ける可能性を高められます。表の病名は、遺伝性疾患のデータベースOMIMに登録された病名を日本語にしたものです。1つの遺伝子が複数の病気に関係することも多く、どの病気として現れるかは変化の種類や遺伝のしかたで変わります。

🧬 拡張型心筋症の遺伝子検査で調べる78遺伝子

遺伝子 関係する主な病気(OMIMの登録名を日本語にしたもの) 遺伝のしかた
ABCC9 拡張型心筋症1O型/家族性心房細動12型/多毛性骨軟骨異形成症 常染色体顕性
ACADVL 極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症 常染色体潜性
ACTC1 拡張型心筋症1R型/家族性肥大型心筋症11型/心房中隔欠損症5型 常染色体顕性
ACTN2 拡張型心筋症1AA型(左室緻密化障害を伴うことがある)/先天性・遠位型のミオパチー 常染色体顕性
ALMS1 アルストレーム症候群 常染色体潜性
ANKRD1 OMIMに病名の登録はまだありません。欧州の希少疾患データベース(Orphanet)では、家族性の拡張型心筋症との関係が登録されています —(遺伝のしかたは未確定)
BAG3 拡張型心筋症1HH型/筋原線維ミオパチー6型 常染色体顕性
CASQ2 カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)2型(潜性)・1型(顕性) 常染色体潜性・顕性
CAV3 家族性肥大型心筋症1型/QT延長症候群9型/波打ち筋病/遠位型ミオパチー(立山型) 常染色体顕性
CAVIN4 OMIMに病名の登録はまだありません(拡張型心筋症との関係を研究中の遺伝子) —
CHRM2 OMIMに病名の登録はまだありません(拡張型心筋症との関係を研究中の遺伝子) —
CPT2 カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII欠損症(新生児型・乳児型・ストレス誘発型) 主に常染色体潜性(ストレス誘発型は顕性の報告も)
CRYAB 拡張型心筋症1II型(顕性)/乳児期の筋原線維ミオパチー(潜性)/白内障16型 常染色体顕性・潜性
CSRP3 拡張型心筋症1M型/家族性肥大型心筋症12型 常染色体顕性
CTF1 OMIMに病名の登録はまだありません(拡張型心筋症との関係を研究中の遺伝子) —
DES 拡張型心筋症1I型/筋原線維ミオパチー1型 常染色体顕性(筋原線維ミオパチーは潜性も)
DMD 拡張型心筋症3B型/デュシェンヌ型・ベッカー型筋ジストロフィー X連鎖
DOLK 先天性糖鎖異常症(CDG)1m型 常染色体潜性
DSC2 不整脈原性右室心筋症11型 常染色体顕性・潜性
DSG2 拡張型心筋症1BB型(潜性)/不整脈原性右室心筋症10型(顕性) 常染色体潜性・顕性
DSP 縮毛・角化症を伴う拡張型心筋症(潜性。歯の欠損を伴う型は顕性)/不整脈原性右室心筋症8型(顕性)/線状掌蹠角化症2型 常染色体顕性・潜性
DTNA 左室緻密化障害1型 常染色体顕性
EMD X連鎖エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー1型/拡張型心筋症3C型 X連鎖
EYA4 拡張型心筋症1J型/非症候群性難聴(DFNA10) 常染色体顕性
FHL2 OMIMに病名の登録はまだありません。欧州の希少疾患データベース(Orphanet)では、家族性の拡張型心筋症との関係が登録されています —(遺伝のしかたは未確定)
FKRP ジストログリカン異常症(肢帯型筋ジストロフィーの型・先天性筋ジストロフィーの型) 常染色体潜性
FKTN 拡張型心筋症1X型/福山型先天性筋ジストロフィーなどのジストログリカン異常症 常染色体潜性
FLNC フィラミノパチー(筋原線維ミオパチー)/家族性肥大型心筋症26型/遠位型ミオパチー4型(拡張型心筋症の原因としても確立〔下の表の注〕) 常染色体顕性
GATA4 心房中隔欠損症2型・心室中隔欠損症1型・ファロー四徴症などの先天性心疾患 常染色体顕性
GATA6 膵無形成と先天性心疾患/ファロー四徴症・心房中隔欠損症9型など 主に常染色体顕性
GATAD1 拡張型心筋症2B型 常染色体潜性
GLA ファブリー病 X連鎖
ILK OMIMに病名の登録はまだありません(拡張型心筋症との関係を研究中の遺伝子) —
JUP 不整脈原性右室心筋症12型(顕性)/ナクソス病(潜性) 常染色体顕性・潜性
LAMA4 拡張型心筋症1JJ型 常染色体顕性
LAMP2 ダノン病 X連鎖(顕性)
LDB3 拡張型心筋症1C型(左室緻密化障害を伴うことがある。顕性)・2L型(潜性)/筋原線維ミオパチー4型 常染色体顕性・潜性
LMNA 拡張型心筋症1A型/エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー2型・3型/家族性部分性脂肪萎縮症2型/ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群/マルーフ症候群/心臓手症候群スロベニア型/シャルコー・マリー・トゥース病2B1型 など 主に常染色体顕性(潜性の型もある)
MIB1 左室緻密化障害7型 常染色体顕性
MYBPC3 家族性肥大型心筋症4型/左室緻密化障害10型 常染色体顕性(潜性の報告も)
MYH6 拡張型心筋症1EE型/家族性肥大型心筋症14型/心房中隔欠損症3型 常染色体顕性
MYH7 拡張型心筋症1S型/家族性肥大型心筋症1型/遠位型ミオパチー1型など 常染色体顕性(潜性のミオパチーもある)
MYL2 家族性肥大型心筋症10型(顕性)/心筋症を伴う乳児期発症の筋原線維ミオパチー12型(潜性) 常染色体顕性・潜性
MYL3 家族性肥大型心筋症8型 常染色体顕性・潜性
MYOZ2 家族性肥大型心筋症16型 常染色体顕性
MYPN 拡張型心筋症1KK型(顕性)/ネマリンミオパチー11型(潜性) 常染色体顕性・潜性
NEBL OMIMに病名の登録はまだありません(拡張型心筋症との関係を研究中の遺伝子) —
NEXN 拡張型心筋症1CC型(顕性)・2M型(潜性)/家族性肥大型心筋症20型 常染色体顕性・潜性
NKX2-5 心房中隔欠損症7型(房室伝導障害を伴うことがある)/ファロー四徴症・心室中隔欠損症3型などの先天性心疾患 常染色体顕性
NPPA 家族性心房細動6型(顕性)/心房静止2型(潜性) 常染色体顕性・潜性
PDLIM3 OMIMに病名の登録はまだありません(拡張型心筋症との関係を研究中の遺伝子) —
PKP2 不整脈原性右室心筋症9型 常染色体顕性
PLN 拡張型心筋症1P型/家族性肥大型心筋症18型 常染色体顕性
PRDM16 左室緻密化障害8型 常染色体顕性
PRKAG2 家族性肥大型心筋症6型/WPW症候群/先天性の心臓の糖原病 常染色体顕性
PTPN11 ヌーナン症候群1型/LEOPARD症候群1型 常染色体顕性
RAF1 拡張型心筋症1NN型/ヌーナン症候群5型/LEOPARD症候群2型 常染色体顕性
RBM20 拡張型心筋症1DD型 常染色体顕性
RYR2 カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)1型/心筋リアノジン受容体のカルシウム放出が低下する不整脈 常染色体顕性
SCN5A 拡張型心筋症1E型/ブルガダ症候群1型/QT延長症候群3型/進行性家族性心臓ブロック・家族性心房細動10型(顕性)/洞不全症候群1型(潜性) 主に常染色体顕性(潜性の型もある)
SDHA 拡張型心筋症1GG型(潜性)/ミトコンドリア複合体II欠損症(潜性)/傍神経節腫5型(顕性) 常染色体潜性・顕性
SGCD 拡張型心筋症1L型(顕性)/肢帯型筋ジストロフィー2F型(潜性) 常染色体顕性・潜性
SLC22A5 全身性カルニチン欠乏症(全身性一次性カルニチン欠乏症) 常染色体潜性
TAZ(現在の名前:TAFAZZIN) バース症候群 X連鎖
TBX20 心房中隔欠損症4型 常染色体顕性
TCAP 家族性肥大型心筋症25型(顕性)/肢帯型筋ジストロフィー2G型(潜性)。Orphanetでは家族性の拡張型心筋症との関係も登録 常染色体顕性・潜性
TMEM43 不整脈原性右室心筋症5型/エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー7型 常染色体顕性
TMEM70 ミトコンドリア複合体V(ATP合成酵素)欠損症 核型2型(ミトコンドリア病) 常染色体潜性
TMPO OMIMに病名の登録はまだありません。欧州の希少疾患データベース(Orphanet)では、家族性の拡張型心筋症との関係が登録されています —(遺伝のしかたは未確定)
TNNC1 拡張型心筋症1Z型/家族性肥大型心筋症13型 常染色体顕性
TNNI3 拡張型心筋症1FF型(顕性)・2A型(潜性)/家族性肥大型心筋症7型/拘束型心筋症1型 常染色体顕性・潜性
TNNT2 拡張型心筋症1D型/家族性肥大型心筋症2型/拘束型心筋症3型 常染色体顕性
TPM1 拡張型心筋症1Y型/家族性肥大型心筋症3型 常染色体顕性
TRDN カテコラミン誘発多形性心室頻拍5型(潜性)・1型(顕性) 常染色体潜性・顕性
TTN 拡張型心筋症1G型(顕性)/家族性肥大型心筋症9型(顕性)/遅発型脛骨筋ジストロフィー(顕性)/肢帯型筋ジストロフィーR10・心筋症を伴う先天性ミオパチー5型(潜性) 常染色体顕性・潜性
TTR 遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシス(TTR遺伝子検査) 常染色体顕性
TXNRD2 糖質コルチコイド欠損症5型(潜性)。Orphanetでは家族性の拡張型心筋症との関係も登録 常染色体潜性
VCL 拡張型心筋症1W型/家族性肥大型心筋症15型 常染色体顕性

※病名・遺伝のしかたは、OMIMの登録を収録した公開データ(Human Phenotype Ontologyの2026年9月版。NCBIのOMIM対応表にもとづく)で確かめました(2026年10月時点)。FLNCは、OMIMでは拡張型心筋症の病名で登録されていませんが、遺伝子と病気の関係を評価する国際的な取り組み(ClinGen)で、拡張型心筋症との関係の根拠がもっとも強い区分とされています[4]。「OMIMに病名の登録はまだありません」とした遺伝子は、拡張型心筋症との関係が研究段階のものです。TAZは現在TAFAZZINという名前に変わっています。

NIPT(新型出生前診断)との関係:LMNA・PTPN11・RAF1

この検査の78遺伝子のうち、LMNA・PTPN11・RAF1の3つは、当院のNIPTのダイヤモンドプランとインペリアルプランでも調べる遺伝子に入っています。ただし、NIPTで調べているのは、主に赤ちゃんで新しく起きた変化(新生突然変異)による別の病気です。たとえばLMNAでは早老症(ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群)、PTPN11・RAF1ではヌーナン症候群などがこれに当たります。NIPTで拡張型心筋症そのものを調べられるわけではありません。ほかの75遺伝子は、NIPTのどのプランにも入っていません。

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性だった場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。プランの違いはダイヤモンドプラン・インペリアルプランのページでご確認ください。ご家族で拡張型心筋症の原因がわかっていて、妊娠中に赤ちゃんを調べたい場合は、NIPTではなく、羊水検査・絨毛検査でその変化を直接調べる方法を考えます(第7章)。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、78遺伝子の中の小さな変化(1つの塩基の置き換わり、小さな挿入や欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●調べる場所:遺伝子の中でタンパク質の情報が書かれた部分(エクソン)と、そのつなぎ目のすぐ近くを、次世代シークエンサーで読みます。読み取りが不十分な部分は、別の方法(サンガー法)で補います。
  • ●欠失・重複の見つけ方:遺伝子全体の欠失・重複と、2つ以上続くエクソンの欠失・重複(血液の検体の場合)を見つけられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つからないことがあります。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●見つけられない変化:染色体の一部が入れ替わる・逆向きになる変化、繰り返し配列が伸びる変化、遺伝子の働きを調節する領域やエクソンから離れた場所(イントロンの深い部分)の変化は、この検査では見つけられません。よく似た配列が別の場所にある部分では、読み取りが難しいことがあります。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることを目的にした検査ではありません。がんの組織の検査にも使えません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。78遺伝子と調べる範囲が広いぶん、VUSが見つかる可能性もあります。見つかったときの扱いは第7章でご説明します。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、遺伝の関わる拡張型心筋症ではない、とは言い切れません。ACMGの指針でも、ご家族に複数の患者さんがいる場合に原因が見つかるのは25〜40%程度とされています[2]。この検査で調べていない遺伝子や、見つけられない種類の変化が原因のこともあります。

検査の精度の目安として、調べる範囲の99%以上を20回以上くり返し読み取る設計になっています(読み取りの回数が多いほど、見落としが少なくなります)。オプションとして、VUSを報告から除く指定(無料)もできます。どちらがよいかは、遺伝カウンセリングでご相談ください。

7. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけを郵送やメールでお送りすることはありません。原因が見つかったとき・見つからなかったとき・VUSのときで、次にできることが違います。報告書の読み方は遺伝子検査の結果の見かたで解説しています。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

原因の変化(病的バリアント)が見つかったとき

原因の変化(病的バリアント、または病的の可能性が高いバリアント)が見つかると、拡張型心筋症の原因がはっきりします。原因の遺伝子によっては、不整脈への備え(第3章)や、心臓以外の臓器の検査が必要になります。結果は循環器の主治医と共有していただき、治療や経過観察の方針を考える材料にしてください。結果の分類については病的バリアントとはで解説しています。

ご家族の検査と、定期的な心臓の検査

ACMGの指針は、病的・病的の可能性が高い変化が見つかった場合、リスクのあるご家族に同じ変化を調べる検査(カスケード検査)を勧めています[2]。GeneReviewsも、ご両親・きょうだい・お子さんなどの遺伝子検査を勧め、症状のないご家族には年齢に応じた間隔で心臓の検査を行うとしています[1]。同じ変化をもっていなかったご家族は、拡張型心筋症のリスクが高いとは考えなくてよくなり、ACMGの指針は、定期的な心臓の検査から外れてよいとしています[2]。ただしGeneReviewsは、複数の遺伝子の変化が関わる家系もあるため、検査をやめる前に一人ひとりの評価が必要としています[1]。症状のないご家族の検査は発症前の検査になるため、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます(第4章)。

ご家族の中で最初に原因がわかった方の結果は、ほかのご家族が「同じ場所だけ」を調べるための手がかりになります。ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知ることにつながる、という意味で、あなたの1回の検査が、ご家族を守る手がかりになります。BRCA1/2遺伝子の検査を考える120人を追った研究では、遺伝カウンセリングを受けたあとに、家族や他人のためという理由(利他的な動機)を挙げる人が有意に増えていました[11]。病気は違いますが、知ることの意味が家族に広がることを示す結果です。

原因が見つからなかったとき

原因の変化が見つからなくても、心臓の病気そのものがなくなるわけではありません。治療や定期的な検査は、これまでどおり主治医のもとで続けます。ACMGの指針は、ご本人で原因が見つからなかった場合やVUSだった場合は、ご家族の遺伝子検査ではなく、心臓の検査でご家族を見守ることを勧めています[2]。 症状に合わせて、より広く調べる心血管疾患包括パネルや全エクソーム検査を考えることもあります。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の発症前の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに「病気の原因」または「病気とは関係ない」と分類が変わることもあります。VUSの扱いはVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いで、調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは当院の二次的所見の開示方針で解説しています。

妊娠を考えている方:出生前診断の相談

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。

ただし、拡張型心筋症は、同じ変化をもっていても発症する年齢や重さが人によって大きく違う病気です。その病気で出生前診断を行うかどうかは、病気の型や重さ、国内の指針を踏まえて個別に考えます。妊娠を考えている段階からご相談ください。原因が潜性遺伝やX連鎖の遺伝子だった場合は、パートナーの方の検査や拡大版保因者スクリーニングが役立つことがあります(その遺伝子が対象かどうかは、遺伝子一覧でご確認ください)。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠したあとの絨毛検査・羊水検査です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の推奨では、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書(認定を受けた検査室のもの)、③ご家族の検体、が求められます[12]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(STRやSNPなどの多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[12]。

ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。拡張型心筋症の多くは常染色体顕性遺伝なので、ご夫婦に加えて、患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人の血縁者の検体が目安とされています。潜性遺伝の型では患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方、X連鎖の型では患者さん、および/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)が目安です[12]。血縁者の協力が得られない場合は、ご夫婦で目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法も挙げられていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[12]。ご本人で新しく起きた変化(de novo)の場合、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[12]。

海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。臨床遺伝専門医としての判断では、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の型では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの推奨は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[13]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でも、院内で絨毛検査・羊水検査のご相談ができます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針でいう「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みもあります。拡張型心筋症が日本で対象になるかどうかは、審査で症例ごとに決まります。

どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国によって違います。日本は学会が症例ごとに審査しており、審査が続いている申請も多くあります(学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中。2026年9月発表)。英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを行ってよい病気の一覧を公表していて、2,000を超える病気(2026年9月17日更新の一覧で2,067)が載っています。拡張型心筋症の多くの型は、この一覧に載っています(2026年9月時点)。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[14]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へ(必要な遺伝子検査・家族の検体・英語の検査結果)でくわしく解説しています。

8. 日本の制度(2026年10月時点)

原因がはっきりしない拡張型心筋症は、指定難病57「特発性拡張型心筋症」に当たります(難病情報センター、2026年10月時点で確認)。子どもの拡張型心筋症は、小児慢性特定疾病の「慢性心疾患」の対象疾病に「拡張型心筋症」として載っています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。遺伝子の変化が見つかった場合の認定の扱いは、それぞれの制度の基準によるため、主治医や自治体の窓口でご確認ください。

当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜(頬粘膜)から選べ、オンライン診療でもお受けできます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 拡張型心筋症に関係する78遺伝子の塩基配列と、欠失・挿入(重複)の解析(どちらも料金に含まれます)
検査費用 330,000円(税込)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急:結果までの期間が約7日短くなります(55,000円)/VUS除外:意義がまだわからない変化を報告から除きます(無料)
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出済みのDNA、頬粘膜スワブ、唾液(採取キットをお送りします)
オンライン診療 唾液・頬粘膜・血液のいずれでもオンライン診療でお受けできます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、検体は当院の案内に沿って採取してください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、次の一手を決める材料に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・頬粘膜・血液のいずれでもオンライン診療でお受けできます。結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | 羊水検査・絨毛検査(院内)

10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【心臓の病気こそ、「わかってから備える」】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。拡張型心筋症は、同じ変化をもつご家族の中でも、発症する年齢や重さが大きく違うことがある病気です。だからこそ、「親は軽かったから」「今は症状がないから」という印象だけで、将来の見通しを決めてしまわないでほしいと考えています。

心臓の病気は、遺伝子がわかることで「何に備えるか」が変わりうる分野です。原因の遺伝子によって、不整脈への備えを早めに考えるかどうかが変わり、ご家族の中で、定期的な検査を続けるべき人と、その必要が少ない人を分けて考えられるようになります。名前のつかない不安を抱え続けるより、わかったことから次の一手を考えるほうが前に進める、と考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 拡張型心筋症は遺伝しますか?遺伝する確率は?

遺伝子が原因の拡張型心筋症の多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、親が原因の変化をもっている場合、お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継ぎます。ただし、原因の遺伝子によっては常染色体潜性(劣性)遺伝やX連鎖遺伝の型もあり、確率が変わります。受け継いでも、発症する時期や重さは人によって違います。

Q2. 家族に患者さんがいなくても、遺伝子が原因のことはありますか?

あります。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の指針では、ご家族にほかの患者さんがいない拡張型心筋症でも、遺伝子検査で原因が見つかる割合は10〜25%と見積もられています。ご本人で新しく起きた変化のこともあります。

Q3. 遺伝子検査で原因が見つかる割合はどれくらいですか?

ACMGの指針では、顕性遺伝の形でご家族に複数の患者さんがいる場合でおよそ25〜40%、ご家族にほかの患者さんがいない場合で10〜25%とされています。原因が見つからなくても、遺伝の関わる拡張型心筋症ではないとは言い切れません。

Q4. 家族も検査を受けたほうがよいですか?

ご本人で原因の変化が見つかった場合、ACMGの指針は、ご両親・きょうだい・お子さんなどリスクのあるご家族に同じ変化を調べる検査(カスケード検査)を勧めています。同じ変化をもっていなかったご家族は、定期的な心臓の検査から外れてよいとされています。ご本人で原因が見つからなかった場合は、ご家族は遺伝子検査ではなく心臓の検査で見守ります。

Q5. 原因の遺伝子がわかると、治療は変わりますか?

変わることがあります。LMNAやFLNCなどの遺伝子による拡張型心筋症では、心臓のポンプの働きの低下に比べて不整脈が目立つことがあり、植込み型除細動器(ICD)を考える判断の材料になります。どの治療をいつ考えるかは、心臓の検査結果とあわせて循環器の主治医が判断します。

Q6. 拡張型心筋症は指定難病ですか?

原因がはっきりしない拡張型心筋症は、指定難病57「特発性拡張型心筋症」に当たります。子どもの拡張型心筋症は小児慢性特定疾病の対象疾病にも載っています(2026年10月時点)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。

Q7. NIPTで拡張型心筋症はわかりますか?

わかりません。この検査の対象のうちLMNA・PTPN11・RAF1は当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)でも調べますが、NIPTで調べるのは主に赤ちゃんで新しく起きた変化による早老症やヌーナン症候群などの病気です。ご家族で原因がわかっていて赤ちゃんを調べたい場合は、羊水検査・絨毛検査でその変化を直接調べます。

Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください(英語版と日本語版の双方は追加料金5,500円)。ただし、ご本人の検査結果だけではPGT-Mの準備はふつう整わず、ご家族の検体も必要になります。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。拡張型心筋症の原因の遺伝子がわかれば、不整脈への備えや治療を考える材料になり、ご家族の誰が定期的な心臓の検査を続けるべきかも見えてきます。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、ご家族の遺伝子検査、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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