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家族性突然死症候群の遺伝子検査|お子さんの突然死の原因と次のお子さんのリスクを、親子3人の全ゲノムで調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

家族性突然死症候群の遺伝子検査(親子トリオ全ゲノム検査)

それまで元気だったお子さんが突然亡くなったとき、「なぜ」「次の子どもを考えていいのか」「自分たちの心臓は大丈夫なのか」という問いが残ります。家族性突然死症候群と呼ばれる突然死の一部は、遺伝性の不整脈や心筋症など、受け継がれることがある体質が原因です。乳幼児突然死症候群(SIDS)と言われた場合でも、あとから遺伝子の変化が見つかることがあります。原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる確率と、次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。このページでは、お子さんとご両親の3人の全ゲノムを調べる「親子トリオ全ゲノム検査」でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

お子さんの突然死の原因になりうる遺伝子の変化を、お子さんとご両親3人の全ゲノムで調べます。不整脈・心筋症の遺伝子に限らず、代謝や脳の病気の遺伝子、染色体の小さな欠失・重複(CNV)まで対象です。変化が見つかれば、どちらの親から受け継いだか、お子さんで新しく起きたかもわかります。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

原因がわからないままお子さんを突然亡くされたご両親、乳幼児突然死症候群(SIDS)と診断されたご両親、次のお子さんを考えていて同じことが起こらないか知りたい方、ご家族に若い方の突然死がある方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

親子3人分で税込990,000円、結果までは5〜7週間です。お子さんは保存されている血液・組織など、検体が残っていなければへその緒(臍帯)でも調べられます。ご両親は血液・唾液・口の内側の粘膜で調べます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が見つかれば、次のお子さんへの確率、ご両親・きょうだいの検査、次の妊娠での出生前診断まで具体的に考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。

\ 「なぜ」に向き合うために、3人の遺伝子を一度に調べる /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. 家族性突然死症候群とは:原因のある突然死と、乳幼児突然死症候群(SIDS)の違い

家族性突然死症候群とは、家族の中で若い方の突然死が重なったり、突然死の原因となる体質が親から子へ受け継がれたりするものを指して使われる言葉です。主な原因は、心臓の電気の流れに関わる遺伝性の不整脈と、心臓の筋肉の病気(心筋症)です。どちらも、ふだんは元気に見え、解剖で心臓を調べても異常が見つからないことがあります。

原因になる主な病気:遺伝性不整脈と心筋症

心臓の筋肉の細胞には、ナトリウムやカリウムなどのイオンを出し入れする通り道(イオンチャネル)があり、これが心臓のリズムをつくっています。この通り道の設計図となる遺伝子に変化があると、運動・驚き・睡眠などをきっかけに、命にかかわる不整脈が起こることがあります。こうした病気をまとめてチャネロパチー(イオンチャネル病)と呼びます。

🫀 突然死の原因になりうる主な遺伝性の心臓の病気

病気 特徴 代表的な遺伝子
QT延長症候群 心電図のQT時間が長くなり、運動や驚き、睡眠中などに不整脈が起こる KCNQ1・KCNH2・SCN5A
ブルガダ症候群 特徴的な心電図の形を示し、安静時や睡眠中に不整脈が起こりやすい SCN5A
カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT) 運動や興奮をきっかけに不整脈が起こる。安静時の心電図は正常なことが多い RYR2・CASQ2
QT短縮症候群 心電図のQT時間が短くなる KCNJ2など
肥大型心筋症・拡張型心筋症・不整脈原性右室心筋症 心臓の筋肉が厚くなる・広がる・置き換わるなどして、不整脈の原因になる MYBPC3・MYH7・LMNA・PKP2など

※代表的な遺伝子の例であり、すべてではありません。親子トリオ全ゲノム検査では、これらを含む全ゲノムを調べます。

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは:調べても原因がわからない突然死

乳幼児突然死症候群(SIDS)は、解剖などで調べても原因が見つからない乳幼児の突然死につけられる診断名で、それ自体は「遺伝の病気」という意味ではありません。厚生労働省SIDS研究班の「乳幼児突然死症候群(SIDS)診断ガイドライン(第2版、2012年)」は、SIDSを「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」と定義しています。

つまりSIDSは、「原因がわからなかった」という結論です。うつぶせ寝や受動喫煙など、生活の環境に関わる要因も知られています。一方で、解剖では見えない遺伝子の変化が、あとから原因として見つかることもあります。

SIDSと言われたお子さんで、遺伝子の変化が見つかる割合

SIDSと診断されたお子さん419人のエクソームを調べた米国などの研究では、4.3%(18人)に、心臓の病気の原因となる病的な遺伝子の変化が見つかりました[3]。原因の可能性がある、ごくまれな変化まで含めると12.6%(53人)で、生後4か月を過ぎてから亡くなったお子さんで多い傾向がありました[3]。

裏を返せば、SIDSと言われたお子さんの多くでは、心臓の遺伝子に原因が見つかるわけではありません。「SIDS=遺伝」でも「SIDS=遺伝とは無関係」でもなく、調べてみないとわからないというのが、今の医学で言えることです。

突然死は遺伝するのか

すべての突然死が遺伝するわけではありませんが、若い方の突然死の一部には、受け継がれる原因があります。受け継がれる原因が見つかれば、ご両親やきょうだいが同じ変化を持っていないかを調べ、症状が出る前に備えることができます。次の章で、実際にどれくらいの割合で原因が見つかるのかを紹介します。

2. 遺伝子で調べると、どれくらい原因が見つかるのか

亡くなった方の遺伝子を調べて原因を探すことは、「分子剖検(モレキュラー・オートプシー)」と呼ばれ、解剖で原因がわからなかった突然死で、一部の方に原因が見つかることが示されています。ただし、見つかる割合は、亡くなった年齢・調べる遺伝子の範囲・研究の方法によって違います。

📊 突然死を遺伝子で調べた主な研究

研究 対象 わかったこと
オーストラリア・ニュージーランドの前向き研究(2016年)[1] 1〜35歳の心臓の突然死490人。うち40%は解剖でも原因不明 原因不明で遺伝子検査を受けた113人のうち27%(31人)に、原因として意味のある心臓の遺伝子の変化
米国の小児の突然死の研究(2022年)[2] 原因がはっきりしない子どもの突然死352人(多くは生後2〜6か月)。エクソームで解析し、73人はご両親も一緒に調べた 11%(37人)に原因の可能性が高い変化。心臓の遺伝子だけでなく、てんかんなど脳の病気の遺伝子も
SIDSの研究(2018年)[3] SIDSと診断された419人 4.3%(18人)に心臓の病気の病的な変化

※研究で使われた解析の方法・対象の遺伝子は、当院の親子トリオ全ゲノム検査と同じではありません。割合は目安としてご覧ください。

若い世代の突然死では、4人に1人ほどに原因が見つかった

1〜35歳の心臓の突然死を調べた研究では、解剖でも原因がわからなかった方のうち、遺伝子検査を受けた113人の27%に、原因として意味のある遺伝子の変化が見つかりました。さらに、原因不明の突然死があったご家族を調べると、13%のご家族で受け継がれる心臓・血管の病気が診断されました[1]。

乳幼児・子どもの突然死では、心臓以外の原因も

子どもの突然死352人を調べた研究では、11%に原因の可能性が高い変化が見つかりました。見つかった遺伝子には、心臓のSCN5A・TTN・MYBPC3のほか、てんかんに関わるSCN1Aのような脳の病気の遺伝子も含まれていました[2]。

この研究では、ご両親も一緒に調べた73組で、お子さんにだけ新しく起きた変化(新生突然変異・de novo)が多いことも示されました[2]。心臓の遺伝子だけを調べる検査では、こうした原因は見落とされます。お子さんの突然死の原因を探すときに、調べる範囲を広くし、ご両親と一緒に調べることに意味があるのはこのためです。

3. 親子トリオ全ゲノム検査とは:お子さんとご両親の3人で調べる理由

親子トリオ全ゲノム検査は、お子さん・お父さん・お母さんの3人のDNAを、全ゲノム(約30億塩基対)にわたって同時に調べる検査です。3人を比べることで、お子さんに見つかった変化が、どちらの親から受け継いだものか、お子さんで新しく起きたものかがわかります。

3人で調べると、何が変わるのか

お子さん1人だけを調べると、遺伝子の変化が見つかっても、それが本当に原因なのか、ご両親も持っているのかを判断しにくいことがあります。トリオ解析では、ご両親のゲノムを「比べる相手」にすることで、次のことがはっきりします。

  • ●新しく起きた変化か:ご両親のどちらも持っていない変化なら、お子さんで新しく起きた可能性が高く、ご両親のせいではないことがはっきりします。
  • ●どちらの親から受け継いだか:受け継いだ変化なら、そのご両親自身の心臓の検査や、きょうだいの検査を考える手がかりになります。
  • ●2つそろって起こる病気か:ご両親がそれぞれ1つずつ持つ変化をお子さんが両方受け継いでいる(常染色体潜性(劣性)遺伝)かどうかがわかります。

全ゲノムで調べる理由:心臓の遺伝子だけでは足りないことがある

お子さんの突然死の原因は、心臓の病気だけとは限りません。代謝の病気(MCAD欠損症などの脂肪酸の代謝の病気)や、てんかんなどの脳の病気が関わることもあります(第2章)。全ゲノムで調べれば、特定の病気にしぼらずに原因を探せます。

また、遺伝子の1文字の変化(一塩基の変化)や小さな挿入・欠失だけでなく、染色体の一部が欠けたり増えたりしている変化(コピー数の変化・CNV)、遺伝子のあいだの領域の変化も対象になります。エクソーム検査との違いはエクソーム解析と全ゲノム解析の違いで解説しています。

💡 用語解説:全ゲノムとエクソーム

遺伝子のうち、たんぱく質の設計図になる部分(エクソン)だけを読むのがエクソーム検査、遺伝子のあいだの領域も含めてDNA全体を読むのが全ゲノム検査です。1人の方の全ゲノムを調べる検査については、全ゲノムシークエンス(WGS)のページをご覧ください。

当院で原因がわかったご家族の例

乳幼児期にお子さんを突然亡くされたご両親が、「なぜ亡くなったのかを知らないと、次の子どもを考えられない」と当院の検査を受けられました。保存されていたお子さんの血液と臍帯からDNAを取り出し、ご両親と3人の全ゲノムを調べたところ、ご両親の一方とお子さんに、同じ染色体の微小欠失が見つかりました。

受け継がれる変化だとわかったことで、次の妊娠では、赤ちゃんがこの変化を受け継いでいるかを出生前診断で確かめるという選択肢を、ご両親が具体的に考えられるようになりました。原因がわかることは、次の一歩を考えるための出発点になります。

※ご本人が特定されないよう、内容の一部を変えています。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

お子さんを突然亡くされ、原因がはっきりしないご両親が、まず考えてよい検査です。見た目・家族歴・それまでの経過だけでは、受け継がれる原因があるかどうかは判断できません。

こんな場合に

  • ●原因がわからないまま、お子さんが突然亡くなった
  • ●乳幼児突然死症候群(SIDS)と診断された
  • ●心肺停止の状態で見つかった、または不整脈が疑われた
  • ●それまでにCK(クレアチンキナーゼ)の高値、けいれん、意識を失う発作などを指摘されていた
  • ●ご家族に、若い方の突然死や、原因のわからない失神がある
  • ●次のお子さんを考えているが、同じことが起こらないか知りたい

ご両親の結果は、ご両親自身と、きょうだいのこれからを守る手がかりにもなります。突然死のあったご家族57家系を英国で調べた研究では、ご家族の心臓の検査で53%(30家系)に、QT延長症候群・ブルガダ症候群・不整脈原性右室心筋症などの受け継がれる心臓の病気が見つかりました[4]。原因の遺伝子がわかっていれば、ご家族は同じ場所を調べて、自分が受け継いでいるかを確かめられます。

この検査より、別の検査が向いている場合

🔍 状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
亡くなったお子さんの原因を、ご両親と一緒に調べたい このページの親子トリオ全ゲノム検査
お子さんの検体(へその緒を含む)が残っておらず、ご両親・きょうだいが不整脈の体質を調べたい 遺伝性不整脈遺伝子パネル検査・QT延長症候群/ブルガダ症候群遺伝子検査パネル
運動中に失神した、運動負荷で不整脈が出た カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)遺伝子検査
ご家族に心筋症・大動脈の病気など、複数の心臓の病気がある 心血管疾患包括パネル(264遺伝子)
心筋症と診断されている 肥大型心筋症NGSパネル検査・拡張型心筋症遺伝子検査パネル・ARVC遺伝子検査
けいれん・てんかんがあった てんかん包括的遺伝子検査
低血糖や代謝の病気が疑われた 脂肪酸酸化異常症(FAOD)遺伝子検査
生きているお子さんに、原因のわからない症状がある 全ゲノム検査(WGS)・全エクソーム検査(WES)

※どの検査が合うかは、亡くなったときの状況・解剖の結果・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ ご両親の結果は、きょうだいと次のお子さんを守る手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

ご家族の検査を考えている方は、遺伝カウンセリングを予約する | どの検査がよいか迷う方へ

5. 検体:保存されているお子さんの血液・臍帯・組織で調べる

お子さんの検体は、保存されている血液・臍帯(へその緒)・組織などを使います。DNAが取り出せれば、亡くなってから年数がたっていても検査できます。保存の状態によってはDNAが傷んでいて調べられないこともあるため、どんな検体が残っているかを、まずお知らせください。

お子さんの検体が残っていない場合:へその緒(臍帯)で調べられます

病院に、亡くなったお子さんの血液や組織が残っていない場合でも、ご家庭で保管しているへその緒(臍帯)があれば、そこからDNAを取り出して調べられます。へその緒はお子さん自身の組織なので、お子さんの遺伝子を調べる検体として使えます。「検体がないから調べられない」とあきらめる前に、へその緒が残っていないかを確かめてみてください。

不整脈や突然死の調べ方についての国際的な専門家の合意文書(2020年)は、亡くなる前に採られた血液やDNAの検体は、あとで遺伝子を調べられるよう保存しておくことを勧めています。また、解剖では遺伝子を調べられる組織や血液を採っておくことが大切だとしています[5]。治療を受けていた病院や、解剖が行われた機関に、検体が残っていないかを確かめることが最初の一歩になります。

🧪 検体

対象 使える検体
お子さん 保存されている血液・組織など(病理組織の標本からDNAを取り出せる場合もあります)。これらが残っていなければ、へその緒(臍帯)
ご両親 血液(EDTAチューブ〔紫色のキャップ〕2本)・抽出したDNA(3μg、EBバッファー)・口の内側の粘膜・唾液

※ご両親の検体は、ほとんどの場合、唾液か口の内側の粘膜で調べられます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いしています。

⚠️ 検体はキットが届いてから採ってください

検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。ご自身で先に検体を採らないでください。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つためです。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、お子さんの突然死の原因になりうる遺伝子の変化と、それがご両親から受け継いだものか、新しく起きたものかです。一方で、全ゲノム検査にも限界があります。

わかること

  • ●遺伝子の1文字の変化(一塩基の変化)と、小さな挿入・欠失
  • ●染色体の一部が欠けたり増えたりしている変化(コピー数の変化・CNV)。染色体の微小欠失を含みます
  • ●遺伝子のあいだの領域(イントロン)や、遺伝子の働きを調節する領域の変化
  • ●見つかった変化が、どちらの親から受け継いだか、お子さんで新しく起きたか

わからないこと・苦手なこと

  • ●一部の構造の変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座)や向きが逆になる変化(逆位)は、見つけられないことがあります。
  • ●繰り返し配列が長くなる病気:同じ配列が何回も繰り返して長くなるタイプの変化(リピート伸長)は、多くの場合見つけられません。
  • ●よく似た配列がある場所:よく似た配列(偽遺伝子など)がある場所では、まれに正しく読み取れないことがあります。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけある変化(モザイク)を見つけるようには作られていません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の医学では判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●遺伝子以外の原因:感染症や睡眠の環境など、遺伝子以外の原因はわかりません。

⚠️ 原因が見つからなくても、遺伝の原因が否定されたわけではありません

全ゲノムで調べても、まだ病気との関係がわかっていない遺伝子や、今の技術で読み取れない変化が残る可能性があります。「原因が見つからなかった=遺伝とは関係ない」とは言えません。結果の意味は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明します。

見つかった変化の読み方はNIPT・遺伝子検査結果の見かたで、調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは二次的所見の開示方針で説明しています。

7. 結果が出たあと:次のお子さん・ご両親・きょうだいのために

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。原因が見つかった場合・見つからなかった場合・VUSだった場合で、次にできることが違います。

原因が見つかったとき:次のお子さんで同じことが起こる確率

次のお子さんで同じ原因をもつ確率(再発率)は、原因と遺伝のしかたで大きく変わります。

🧬 遺伝のしかたと、次のお子さんへの確率

わかった原因 次のお子さんへの確率の考え方
ご両親のどちらかから受け継いだ変化(常染色体顕性(優性)遺伝) お子さん1人ごとに2分の1。変化を持つ親御さん自身の心臓の検査も考えます
ご両親がともに保因者(常染色体潜性(劣性)遺伝) お子さん1人ごとに4分の1
お子さんで新しく起きた変化(de novo) 低くなりますが、ゼロではありません(下の説明)
ご両親の一方から受け継いだ染色体の微小欠失など 受け継いだ親御さんの状況で変わります。遺伝カウンセリングでご説明します

お子さんで新しく起きた変化でも、ご両親の卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ同じ変化がある「性腺モザイク」のことがあります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。「新しく起きた変化だから次は大丈夫」と小さく見積もらないことが大切です。

ご両親・きょうだいの検査

受け継がれる原因が見つかった場合、あなたの1回の検査が、ご両親自身・きょうだい・これから生まれるお子さんが自分の状態を知る手がかりになります。原因の遺伝子がわかっていれば、ご家族は同じ場所を調べることで、受け継いでいるかを確かめられます。不整脈の体質が見つかったご家族は、循環器内科の主治医と、運動や薬、日常生活での注意など、予防の方法を相談できます。

国際的な専門家の合意文書(2020年)も、突然死があったご家族の調べ方として、心臓の検査と、原因がわかっている場合の遺伝子のカスケード検査(血縁者を順に調べること)を挙げています[5]。症状のないご家族が受ける検査は、将来のことを知る検査になるため、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます。

次の妊娠:出生前診断で備える

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。原因がわからないままでは、出生前に調べる的を決めることができません。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断するため、妊娠を考えている段階からご相談ください。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。

原因が見つからなかったとき

原因が見つからなかった場合でも、遺伝の原因が否定されたわけではありません(第6章)。ご両親が心電図などの心臓の検査を受けることで、不整脈の体質が見つかることもあります[4]。また、研究が進むと、同じデータを解析し直して新しくわかることもあります。どう考え、次に何ができるかを、遺伝カウンセリングでご説明します。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで原因と判断したり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。

結果の報告書の言語

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数

親子3人分で税込990,000円、結果までは5〜7週間です。1人分の全ゲノム検査と同じ料金で、お子さん・お父さん・お母さんの3人を調べ、結果は3人分を1つの報告書にまとめてお渡しします。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の準備お子さんの保存検体とご両親
▶
結果のご説明5〜7週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 お子さんとご両親3人の全ゲノム解析(トリオ解析)
検査費用 税込990,000円(親子3人分)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 5〜7週間
検体 お子さん:保存されている血液・組織など(残っていなければへその緒〔臍帯〕)/ご両親:血液・唾液・口の内側の粘膜など
オンライン診療 対応しています。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

遠方の方も、オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを受けたうえで、検体をお送りいただけます。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 一生変わらない遺伝子の情報を、ご家族のこれからに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | 全ゲノム検査(WGS)について

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「誰が悪いか」ではなく「次にどうするか」】

私が出生前診断に携わると決めたのは、お子さんを亡くしたお母さんとの出会いがきっかけでした。その話は出生前検査をする原点症例に書いています。お子さんを亡くしたあと、次のお子さんを望む気持ちと、また同じことが起きたらという怖さのあいだで、前に進めなくなるのは当然のことだと思います。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。私たちはつい、わかった事実を「いい・悪い」に結びつけてしまいがちですが、大切なのは「どう対処するか、対処できるか」だと考えています。原因がわかれば、次の妊娠で出生前診断を計画することも、ご家族が自分の心臓を調べることもできます。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 家族性突然死症候群とは何ですか?

家族の中で若い方の突然死が重なる、またはその原因が受け継がれる体質による突然死を指して使われる言葉です。主な原因として、QT延長症候群・ブルガダ症候群・カテコラミン誘発多形性心室頻拍などの遺伝性不整脈や、遺伝性の心筋症が知られています。解剖で心臓に異常が見つからないこともあり、遺伝子検査とご家族の心臓の検査で原因を探します。

Q2. 突然死は遺伝するのですか?

すべての突然死が遺伝するわけではありません。ただし、1〜35歳の突然死を調べたオーストラリアとニュージーランドの研究では、解剖でも原因がわからなかった方のうち遺伝子検査を受けた113人の27%に、原因として意味のある心臓の遺伝子の変化が見つかりました。受け継がれる原因が見つかれば、ご家族が検査を受けて自分の状態を知ることができます。

Q3. 乳幼児突然死症候群(SIDS)と言われましたが、検査を受けられますか?

受けられます。SIDSは、解剖などで調べても原因が見つからない突然死につけられる診断名で、遺伝の病気という意味ではありません。一方で、SIDSと診断された419人を調べた米国の研究では、4.3%に心臓の病気の原因となる遺伝子の変化が見つかっています。SIDSと言われたこと自体は、検査を受けられない理由にはなりません。

Q4. 何年も前に亡くなった子どもでも調べられますか?

保存されている検体(血液・臍帯・組織など)からDNAが取り出せれば、亡くなってから年数がたっていても検査できます。病院に血液や組織が残っていない場合でも、ご家庭で保管しているへその緒(臍帯)があれば、そこから調べられます。保存の状態によってはDNAが傷んでいて調べられないこともあるため、まずはどんな検体が残っているかをお知らせください。

Q5. 検査をしても原因が見つからないことはありますか?

あります。全ゲノムで調べても、すべての方で原因が見つかるわけではありません。研究でも、亡くなったお子さんを遺伝子で調べて原因と考えられる変化が見つかったのは一部です。原因が見つからなかった場合は、ご両親の心臓の検査や、医学が進んでからのデータの見直しなど、次にできることを臨床遺伝専門医がご説明します。

Q6. 次の子どもで同じことが起こる確率はどれくらいですか?

原因と遺伝のしかたで大きく変わります。ご両親のどちらかから受け継いだ常染色体顕性(優性)遺伝の変化なら、次のお子さんが受け継ぐ確率は2分の1です。ご両親がともに保因者の常染色体潜性(劣性)遺伝なら4分の1です。お子さんで新しく起きた変化なら低くなりますが、ゼロではありません。原因がわかってはじめて、具体的な数字でお伝えできます。

Q7. 両親や上の子も検査したほうがよいですか?

受け継がれる原因が見つかった場合は、ご両親やきょうだいが同じ変化を持っていないかを調べる意味があります。突然死のあったご家族57家系を調べた英国の研究では、53%の家系で受け継がれる心臓の病気が見つかりました。症状がなくても、わかれば循環器内科で予防の方法を相談できます。

Q8. 検査結果で、親の責任が問われることはありませんか?

ありません。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。お子さんで新しく起きた変化だとわかれば、ご両親から受け継いだものではないこともはっきりします。検査は責任を問うためではなく、次に何ができるかを考えるために受けるものです。

🧬 お子さんの「なぜ」を知ることが、ご家族の次の一歩に

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。お子さんの突然死の原因がわかれば、次のお子さんへの確率、ご両親・きょうだいの心臓の検査、次の妊娠での出生前診断まで、具体的に考えられるようになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Bagnall RD, Weintraub RG, Ingles J, et al. A prospective study of sudden cardiac death among children and young adults. N Engl J Med. 2016;374:2441-2452. [DOI: 10.1056/NEJMoa1510687]
  • [2] Koh HY, Haghighi A, Keywan C, et al. Genetic determinants of sudden unexpected death in pediatrics. Genet Med. 2022;24(4):839-850. [DOI: 10.1016/j.gim.2021.12.004](PMID: 35027292)
  • [3] Tester DJ, Wong LCH, Chanana P, et al. Cardiac genetic predisposition in sudden infant death syndrome. J Am Coll Cardiol. 2018;71(11):1217-1227. [DOI: 10.1016/j.jacc.2018.01.030](PMID: 29544605)
  • [4] Behr ER, Dalageorgou C, Christiansen M, et al. Sudden arrhythmic death syndrome: familial evaluation identifies inheritable heart disease in the majority of families. Eur Heart J. 2008;29(13):1670-1680. [DOI: 10.1093/eurheartj/ehn219](PMID: 18508782)
  • [5] Stiles MK, Wilde AAM, Abrams DJ, et al. 2020 APHRS/HRS expert consensus statement on the investigation of decedents with sudden unexplained death and patients with sudden cardiac arrest, and of their families. Heart Rhythm. 2021;18(1):e1-e50. [DOI: 10.1016/j.hrthm.2020.10.010]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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