InstagramInstagram

QT延長症候群・ブルガダ症候群の遺伝子検査|34遺伝子で原因と型を調べ、お子さん・ご家族への遺伝まで考える

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

QT延長症候群・ブルガダ症候群の遺伝子検査

QT延長症候群とブルガダ症候群は、心臓の電気の流れにかかわる遺伝子の変化で起こることがある、遺伝性の不整脈です。この検査では、2つの病気に関係するとされる34の遺伝子をまとめて調べます。QT延長症候群では、原因の遺伝子(型)がわかると、発作が起こりやすい場面や気をつけたい薬が具体的に決まります。また、あなたの1回の検査結果は、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知る手がかりにもなります。このページでは、2つの病気の違い、遺伝のしかた、遺伝子検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

QT延長症候群・ブルガダ症候群に関係するとされる34遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。QT延長症候群では、遺伝子検査で原因が見つかるのは70〜85%ほど、ブルガダ症候群では2割ほどとされています。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

心電図でQT延長やブルガダ型の波形を指摘された方、失神やけいれんのような発作があった方、ご家族にこの病気の方や若くして突然亡くなった方がいる方、妊娠を考えていて家族歴が気になる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、唾液・口の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、お子さんに受け継がれる確率は多くの型で2分の1で、ご家族も同じ変化を調べられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 型がわかると、避けたい薬と気をつける場面が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 原因の病気がまだ絞れない方へ(遺伝性不整脈パネル) | どの検査がよいか迷う方へ

1. QT延長症候群・ブルガダ症候群とは

QT延長症候群とブルガダ症候群は、心臓の筋肉の細胞で電気を通す「イオンチャネル」などの働きが変わることで、命にかかわる不整脈が起こりうる病気です。どちらも、心臓の形(構造)には異常が見つからないことが多く、心電図の特徴から見つかります。2つの病気は名前がよく並べて語られますが、心電図の形、発作が起こりやすい場面、遺伝子検査で原因が見つかる割合が大きく違います。

QT延長症候群とは

心電図のQ波の始まりからT波の終わりまでの時間(QT時間)が長くなる病気です。心臓が一回ごとに電気的に「元に戻る」のに時間がかかるため、トルサード・ド・ポアンツと呼ばれる不整脈が起こり、失神やけいれんのような発作、まれに突然死につながることがあります。生まれつきの遺伝子の変化による「先天性」と、薬や血液中のカリウムの低下などで起こる「後天性(二次性)」があり、このページの検査で調べるのは先天性のほうです。病気の詳しい解説はQT延長症候群 総論をご覧ください。

イタリアで新生児約4万4千人の心電図を調べた研究では、先天性QT延長症候群の頻度は2,000人に1人に近い可能性があると報告されています[1]。症状がなく、健康診断や学校の心電図検診で初めて見つかる方も少なくありません。

ブルガダ症候群とは

心電図の右胸のあたりの誘導(V1〜V2)で、ST部分が特徴的な形に上がる病気です。発作は安静時や夜間に起こりやすく、心室細動という不整脈で突然死の原因になることがあります。男性に8〜10倍多いとされ[2]、発熱が発作のきっかけになることも知られています[2]。病気の詳しい解説はブルガダ症候群 総論をご覧ください。

日本では、難病情報センターの資料で、ブルガダ症候群に特徴的な心電図の変化を認める方は1,000〜2,000人に1人とされています。健康診断で「ブルガダ型心電図」と言われても、その全員に発作が起こるわけではありません。失神の有無、ご家族の突然死、心電図の型などから、循環器内科で危険度を判断します。

🫀 QT延長症候群とブルガダ症候群の違い

項目 QT延長症候群 ブルガダ症候群
心電図の特徴 QT時間が長い 右胸の誘導でSTが特徴的な形に上がる
発作が起こりやすい場面 型によって違う(運動・水泳/突然の音/睡眠中) 安静時・夜間、発熱時
性別 性差は型や年齢で変わる 男性に8〜10倍多い
遺伝子検査で原因が見つかる割合 70〜85%ほど 2割ほど(主にSCN5A)
原因として確かな遺伝子 KCNQ1・KCNH2・SCN5A(典型例) SCN5Aのみ

※文献[2][3][4][5][6]による。

2. QT延長症候群の遺伝子検査:型がわかると何が変わるか

QT延長症候群では、遺伝子検査で原因となる変化が見つかるのは70〜85%ほどとされ[3]、原因の遺伝子によって「型」が決まります。型がわかると、発作が起こりやすい場面、日常生活で気をつけること、使われる薬の考え方が具体的になります。これが、QT延長症候群で遺伝子検査を受ける一番の理由です。

主な3つの型と、発作が起こりやすい場面

原因の遺伝子がわかった670人のQT延長症候群の方を調べた研究では、型によって発作のきっかけがはっきり違っていました[7]。

⚡ 型ごとの発作のきっかけ(670人の研究)

型(遺伝子) 発作が起こりやすい場面 気をつけること(専門家の合意文書より)
1型(KCNQ1) 運動中が62%。きっかけがわかった方の33%は水泳中 運動・水泳など交感神経が高ぶる場面。β遮断薬がとくに効きやすいとされる
2型(KCNH2) 感情の高ぶりが43%。突然の音(目覚まし時計など)が26% 睡眠や安静から突然の音で起こされる場面、出産後の時期。血液中のカリウムを保つ
3型(SCN5A) 安静時・睡眠中が39%(運動中は13%) 遅いナトリウム電流を抑える薬(メキシレチン)が検討されることがある

※発作のきっかけは文献[7]、気をつけることは文献[3]による。治療の方針は循環器内科の主治医が決めます。

たとえば同じ「QT延長症候群」でも、1型なら水泳を含む運動の場面、2型なら目覚まし時計や電話の音への配慮が話題になります。3型については、病気のしくみをLQT3(QT延長症候群3型)で詳しく解説しています。2022年の欧州心臓病学会のガイドラインも、臨床的にQT延長症候群と診断された方には遺伝子検査と遺伝カウンセリングを勧めています[6]。

典型的でないQT延長症候群の遺伝子

2020年に国際的な専門家グループが17の遺伝子を見直した研究では、典型的なQT延長症候群の原因として確かな遺伝子はKCNQ1・KCNH2・SCN5Aの3つだけでした。CALM1・CALM2・CALM3・TRDNは、新生児期の房室ブロックなど典型的でない特徴をもつQT延長症候群の原因として強い根拠があるとされました。CACNA1Cはティモシー症候群の原因として、KCNJ2はアンデルセン・タウィル症候群の原因として確かな遺伝子です。一方で、9つの遺伝子は根拠が限られる、または否定的とされました[4]。

このパネルには、根拠の強さが違う遺伝子が一緒に入っています。見つかった変化がどの遺伝子にあるかで結果の重みが変わるため、結果は臨床遺伝専門医が遺伝子ごとの根拠を踏まえてご説明します。

💡 用語解説:QT時間

心電図で、心臓の筋肉が電気的に興奮し始めてから元に戻るまでの時間です。心拍数で値が変わるため、心拍数で補正した値(QTc)で評価します。QTcは測るたびに少しずつ変わるので、1回の心電図だけで診断せず、繰り返し記録して判断します。

3. ブルガダ症候群の遺伝子検査:原因が見つかるのは2割ほど

ブルガダ症候群で遺伝子検査を受けても、原因となる変化が見つかるのは2割ほどです。9つの施設の2,111人を集めた研究では、SCN5A遺伝子にまれな変化が見つかった方は21%(施設ごとに11〜28%)でした[5]。

原因として確かなのはSCN5Aだけ

2018年に専門家グループが、ブルガダ症候群の原因と報告されてきた21の遺伝子を見直したところ、確かな根拠があるとされたのはSCN5Aだけで、残りの20の遺伝子は根拠が否定的と判断されました[8]。国際的な専門家の合意文書も、典型的な心電図(1型)でブルガダ症候群と診断された方に、SCN5Aを調べる遺伝子検査を勧めています[3]。

このパネルには、SCN5Aのほかに、ブルガダ症候群との関係が報告されてきた遺伝子も入っています。CACNA1Cによるブルガダ症候群3のように病名がつけられている型もありますが、SCN5A以外の遺伝子で変化が見つかった場合は、それだけで原因と決めず、慎重に解釈します。

⚠️ 遺伝子検査で原因が見つからなくても、ブルガダ症候群は否定されません

ブルガダ症候群は心電図などで診断する病気です。遺伝子検査で原因が見つからないことのほうが多く、見つからなくても診断や治療の方針は変わりません。原因が見つかった場合には、ご家族が同じ変化をもっているかを調べられる、という大きな意味があります。

避けたほうがよい薬

ブルガダ症候群では、一部の薬で心電図の変化や不整脈が起こることがあります。オランダなどの専門家は、文献506件を見直して薬を「避けるべき薬」「できれば避けたい薬」などに分け、医師向けの情報サイト(BrugadaDrugs.org)を公開しています[9]。QT延長症候群でも、QT時間を延ばす薬は避けるのが基本です。新しく薬を使うときは、病名を伝えて主治医・薬剤師に確認してください。

4. 遺伝のしかた:お子さんへは多くの型で2分の1

QT延長症候群・ブルガダ症候群の多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、親が原因となる変化をもっている場合、お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継ぎます。性別には関係しません。くわしいしくみは常染色体顕性(優性)遺伝で解説しています。

受け継いでも、症状の出方は人によって違う

同じ遺伝子の変化をもっていても、心電図の変化がはっきりしない方、一生発作のない方、若いうちに発作が起こる方がいます。原因をもっていても発症しない人がいることを「浸透率が100%ではない」、同じ原因でも症状の重さが違うことを「表現型の多様性」といいます。

⚠️ 「自分は何ともないから、子どもも大丈夫」とは言えません

親御さんが症状に気づいていなくても、同じ変化を受け継いだお子さんが同じ経過をたどるとは限りません。ご家族の誰かでQT延長症候群やブルガダ症候群の原因がわかったときは、症状の有無だけで判断せず、知ったうえで備えることに意味があります。

常染色体潜性(劣性)遺伝の型もある

KCNQ1やKCNE1の変化を両親から1つずつ受け継ぐと、生まれつきの難聴を伴う重いQT延長症候群(ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群)になります。この場合、ご両親はそれぞれ1つずつ変化をもつ保因者で、次のお子さんで同じ病気になる確率は4分の1です。この病気についてはジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の遺伝子検査で解説しています。TRDNによる不整脈も、常染色体潜性遺伝の形をとります(第6章の表)。

5. どんな人がこの検査を受けるとよいか

心電図でQT延長やブルガダ型の波形を指摘された方と、そのご家族に向く検査です。とくにQT延長症候群では、原因の遺伝子がわかることが、生活や薬の注意に直接つながります。

  • ●心電図でQT延長、またはブルガダ型の波形(とくに1型)を指摘され、循環器内科でQT延長症候群・ブルガダ症候群が疑われている方
  • ●失神、けいれんのような発作、夜間の苦しそうな呼吸などがあった方
  • ●ご家族にQT延長症候群・ブルガダ症候群の方がいる方
  • ●ご家族に、若くして原因がはっきりしないまま突然亡くなった方がいる方
  • ●結婚・妊娠を考えていて、ご自身やパートナーの家族歴が気になる方

ご家族のために:あなたの結果が、家族を守る手がかりになる

ご本人で原因となる変化がわかると、ご両親・きょうだい・お子さんは、同じ場所だけを調べて、受け継いでいるかどうかを確かめられます(カスケード検査)。国際的な専門家の合意文書は、QT延長症候群・ブルガダ症候群とも、原因がわかったご家族の検査を勧めており、関係するお子さんの検査は生まれたときから行えるとしています[3]。受け継いでいないとわかれば、ご家族の定期検査の負担や不安が軽くなることもあります。

症状のないご家族が受ける場合(発症前の検査)

症状のない方が、自分も同じ変化を受け継いでいるかを調べる検査は「発症前の検査(予測的検査)」になります。当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。

先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、運動や仕事の選び方、結婚や出産、ご家族との話し合いなど、これからの人生を計画したいと考える方もいます。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[10]。病気は違いますが、「知って計画を立てたい」という思いは共通するものだと考えています。結果を知ったあとの気持ちの変化は陽性でも陰性でも起こりうるので、当院では結果のあとも遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。

結婚・妊娠を考えている方

結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。QT延長症候群2型(KCNH2)では、出産後の時期に不整脈が起こりやすくなることが知られています[3]。妊娠の前に型を知っておけば、かかりつけの産科・循環器内科と、妊娠中から出産後までの過ごし方を前もって相談できます。当院は分娩を行っていませんが、遺伝カウンセリングと出生前診断のご相談は院内でお受けしています(第8章)。

この検査より別の検査が向いている場合

病名がQT延長症候群・ブルガダ症候群にしぼれているなら、このページの検査が合います。まだ病気がしぼれていない場合や、ほかの病気が疑われる場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。

🔍 状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
心電図でQT延長・ブルガダ型と言われた このページの検査(34遺伝子)
不整脈の原因の病気がまだしぼれない 遺伝性不整脈遺伝子検査パネル
運動や興奮で失神する・心電図は安静時に正常 カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)遺伝子検査
心電図でQT時間が短いと言われた QT短縮症候群NGSパネル検査
生まれつきの難聴があり、QT延長がある ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群遺伝子検査
心臓の筋肉の病気(心筋症)も疑われる 不整脈原性右室心筋症(ARVC)遺伝子検査、肥大型心筋症NGSパネル検査、拡張型心筋症遺伝子検査パネル
心臓・血管の病気を広く調べたい 心血管疾患包括的遺伝子検査パネル(264遺伝子)
お子さんが突然亡くなり、原因と次のお子さんへのリスクを知りたい 親子トリオ全ゲノム検査

※どの検査が合うかは、心電図・症状・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを計画する /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因がわかれば、ご家族は同じ変化だけを調べられます。臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングを院内で行います。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | 原因の病気がまだ絞れない方へ(遺伝性不整脈パネル) | どの検査がよいか迷う方へ

6. この検査で調べる34遺伝子と、関係する病気

この検査では、QT延長症候群・ブルガダ症候群に関係すると報告されている34の遺伝子を、次世代シーケンサーでまとめて調べます。下の表は、それぞれの遺伝子でOMIM(遺伝性疾患のデータベース)に載っている病名と遺伝のしかたです。第2章・第3章のとおり、遺伝子によって病気との関係の確かさには大きな差があります。

🧬 調べる34遺伝子と関係する病気

遺伝子 関係する病気(OMIMの病名を和訳) 遺伝のしかた
ABCC9 カントゥ症候群(多毛・骨軟骨異形成)、拡張型心筋症1O型、家族性心房細動12型(関係は暫定) 常染色体顕性。知的障害とミオパチーの症候群は常染色体潜性
AKAP9 QT延長症候群11型(関係は暫定) 常染色体顕性
ANK2 アンキリンB関連の不整脈(以前はQT延長症候群4型と呼ばれていたもの) 常染色体顕性
CACNA1C ティモシー症候群、QT延長症候群8、ブルガダ症候群3、筋緊張低下・言葉の遅れ・骨格の異常を伴う神経発達症 常染色体顕性
CACNA2D1 発達性てんかん性脳症110型(OMIMにブルガダ症候群の病名は載っていない) 常染色体潜性
CACNB2 ブルガダ症候群4型 常染色体顕性
CALM1 QT延長症候群14型、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍4型(CPVT) 常染色体顕性
CALM2 QT延長症候群15型 常染色体顕性
CALM3 QT延長症候群16型、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍6型(関係は暫定) 常染色体顕性
CAV3 QT延長症候群9型、家族性肥大型心筋症、波打ち筋病2型、遠位型ミオパチー(立山型)、血清CK上昇 常染色体顕性
GPD1L ブルガダ症候群2型 常染色体顕性
HCN4 洞不全症候群2型、ブルガダ症候群8型、特発性全般てんかんのかかりやすさ 常染色体顕性(ブルガダ症候群8型はOMIMに遺伝形式の記載なし)
KCND3 ブルガダ症候群9型、脊髄小脳失調症19型 常染色体顕性
KCNE1 QT延長症候群5型、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群2型 QT延長症候群5型は常染色体顕性、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は常染色体潜性
KCNE2 QT延長症候群6型、家族性心房細動4型 常染色体顕性(心房細動4型はOMIMに遺伝形式の記載なし)
KCNE3 ブルガダ症候群6型(関係は暫定) OMIMに遺伝形式の記載なし
KCNE5 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の記載なし) X染色体にある遺伝子
KCNH2 QT延長症候群2型、QT短縮症候群1型 常染色体顕性
KCNJ2 アンデルセン・タウィル症候群、家族性心房細動9型、ショートQT症候群3型 常染色体顕性
KCNJ5 QT延長症候群13型、家族性高アルドステロン症3型 常染色体顕性
KCNJ8 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の表なし) OMIMに記載なし
KCNQ1 QT延長症候群1型、QT短縮症候群2型、家族性心房細動3型、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群 QT延長症候群1型などは常染色体顕性、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は常染色体潜性
PKP2 不整脈原性右室心筋症(9型) 常染色体顕性
RANGRF 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の記載なし) OMIMに記載なし
SCN10A 家族性発作性疼痛症候群2型(OMIMにブルガダ症候群の病名は載っていない) 常染色体顕性
SCN1B ブルガダ症候群5型、非特異的な心臓伝導障害、家族性心房細動13型、熱性けいれんプラスを伴う全般てんかん1型、発達性てんかん性脳症52型 常染色体顕性(ブルガダ症候群5型はOMIMに遺伝形式の記載なし。てんかん性脳症52型は常染色体潜性)
SCN2B 家族性心房細動14型 常染色体顕性
SCN3B ブルガダ症候群7型、家族性心房細動16型 常染色体顕性
SCN4B QT延長症候群10型、家族性心房細動17型 常染色体顕性
SCN5A QT延長症候群3型、ブルガダ症候群1型、進行性・非進行性の心ブロック、拡張型心筋症1E型、家族性心房細動10型、洞不全症候群1型、家族性心室細動1型 多くは常染色体顕性(洞不全症候群1型は常染色体潜性)
SLMAP 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の記載なし) OMIMに記載なし
SNTA1 QT延長症候群12型 常染色体顕性
TRDN 骨格筋の筋力低下を伴う・伴わない心臓の不整脈症候群 常染色体潜性
TRPM4 進行性家族性心ブロックIB型、進行性変動性紅斑角皮症6型 常染色体顕性

※遺伝子リストは当院の検査内容による。病名・遺伝のしかたはOMIMの各遺伝子の項目による。「関係は暫定」はOMIMで関係がまだ確定していないとされているもの。KCNJ8・RANGRF・SLMAPはOMIMに病名の表がない遺伝子です。

当院のNIPTとの関係

34遺伝子のうち、KCNJ2(アンデルセン・タウィル症候群などの原因)は、当院のNIPTのインペリアルプランでも、赤ちゃんに新しく起きた変化を調べる対象に入っています。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。それ以外の33遺伝子は、当院のNIPTの対象には入っていません。

7. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、34遺伝子の中の、一塩基の置き換わりや小さな挿入・欠失などの変化と、遺伝子全体や連続した複数のエクソンの欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●見つけにくい変化:エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんの検査では検出の対象外です。染色体の転座や逆位、繰り返し配列の伸長、遺伝子の調節領域や、エクソンから離れたイントロンの変化は調べていません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞だけに変化がある状態(モザイク)を調べるようには作られていません。
  • ●よく似た配列:遺伝子とよく似た配列(偽遺伝子など)がある場所では、変化を見つけにくいことがあります。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:とくにブルガダ症候群では、原因が見つからない方が8割ほどです。原因が見つからなくても、心電図などでの診断や治療の方針は変わりません。

検査の精度について:調べる範囲の99%以上を、少なくとも20回ずつ読み取ることを基準にしています。読み取りの質が基準に届かない場所や、見つかった変化を確かめる必要がある場合は、別の方法(サンガー法)でもう一度確かめます。欠失・重複が見つかったときも、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)で確かめてから報告します。

8. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。報告書の見方は遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。

陽性だったとき:型がわかり、次の一手が決まる

QT延長症候群で原因の遺伝子がわかれば、型に合わせた生活の注意(運動・水泳、突然の音、睡眠中)、カリウムを保つこと、使われる薬の考え方を、循環器内科の主治医と具体的に話し合えます。ブルガダ症候群でSCN5Aに原因が見つかった場合も、ご家族の検査に使える情報になります。植込み型除細動器(ICD)などの治療をどうするかは、遺伝子の結果だけでなく、症状や心電図などをあわせて主治医が判断します。

ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき

原因がわかった場合、ご両親・きょうだい・お子さんも同じ変化をもっている可能性があります(多くの型で2分の1)。ご家族は、わかった変化だけを調べることで、受け継いでいるかを確かめられます。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

陰性だったとき

原因が見つからなかった場合も、QT延長症候群・ブルガダ症候群の診断が否定されるわけではありません(第7章)。症状や心電図に合わせて、ほかの不整脈の検査や、より広く調べる検査(全エクソーム検査など)を考えることがあります。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

妊娠を考えている方:出生前診断の相談

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

欧州ヒト生殖学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備として、病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、その変化が書かれた元の報告書、そしてご家族の検体を挙げています[11]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[11]。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。

常染色体顕性遺伝の病気では、指針の目安として、ご夫婦に加えて、患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人のDNAが必要とされています[11]。血縁者がいない場合は、ご夫婦で目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法が挙げられていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[11]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。

臨床遺伝専門医としての判断:意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。また、このパネルにはブルガダ症候群との関係が否定的とされた遺伝子も含まれるため、どの遺伝子のどの変化を対象にするかは慎重に見極める必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[12]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、実施施設の倫理委員会の承認を経て行われます。指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、有効な治療法がないか、あっても高度かつ侵襲度の高いものとされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないものの日常生活が著しく損なわれる疾患は、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。その病気が対象になるかは、審査で個別に決まります。

どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国によって違います。日本では学会が症例ごとに審査しており、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。英国では公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。QT延長症候群は、この一覧に載っています。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[13]。米国生殖医学会の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[14]。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。

9. 日本の制度(2026年10月時点)

QT延長症候群は、小児慢性特定疾病(慢性心疾患)の対象疾病に掲載されています。小児慢性特定疾病情報センターの慢性心疾患の一覧で確認しました(2026年10月時点)。同じ一覧に、ブルガダ症候群の病名は見当たりませんでした。

指定難病については、2024年4月時点の指定難病(341疾病)の一覧に、QT延長症候群・ブルガダ症候群の病名は見当たりませんでした。指定難病は追加されることがあるため、最新の一覧は厚生労働省のページでご確認ください。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。唾液・口の内側の粘膜の検体なら、遠方の方でもクリニックにお越しにならずに、オンライン診療で受けられます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取血液・唾液など
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 34遺伝子(第6章)
検査費用 330,000円(税込)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
至急オプション 結果までの期間が約7日短くなります。55,000円
料金に含まれるもの 遺伝子の配列の解析、欠失・挿入の解析
VUSを報告書に載せない選択 無料
ご家族と一緒の検査 デュオ/トリオ検査:ご家族と一緒に調べることで、より正確な解釈ができます
検体 血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色のキャップ)、抽出したDNA(EBバッファー中3μg)、口の内側の粘膜(頬粘膜スワブ)、唾液(採取キットをお渡しします)
オンライン診療 唾液・口の内側の粘膜の場合は、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを受けたのち、検体を当院にお送りいただけます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 生まれ持った遺伝子は一生変わりません。人生に一度の検査を、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | 原因の病気がまだ絞れない方へ(遺伝性不整脈パネル) | どの検査がよいか迷う方へ

11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「突然死」という言葉の先にある、できること】

QT延長症候群やブルガダ症候群について調べると、「突然死」という言葉が何度も出てきます。その言葉だけで、検査を受けるのが怖くなる方もいると思います。けれども、遺伝子検査は怖さを確かめるためのものではなく、「では、何に気をつければよいか」を決めるためのものだと考えています。QT延長症候群で型がわかれば、水泳を含む運動、突然の音、睡眠中といった場面のうち、どこに気をつけるべきかが具体的になります。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。見た目や家族歴だけでは判断できないことがあるため、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。あなたの結果は、ご家族が自分の状態を知る手がかりにもなります。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. QT延長症候群は遺伝しますか?お子さんに遺伝する確率は?

QT延長症候群の多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、親が原因となる遺伝子の変化をもっている場合、お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継ぎます。ただし、受け継いでも症状の出方には個人差があります。難聴を伴うジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群のように、常染色体潜性(劣性)遺伝の型もあります。

Q2. ブルガダ症候群は遺伝しますか?

ブルガダ症候群は常染色体顕性(優性)遺伝の形をとることが多い病気です。ただし、遺伝子検査で原因の変化が見つかるのは2割ほどで、原因として確かな根拠があるのは今のところSCN5A遺伝子だけとされています。ご本人で原因がわかった場合は、ご家族が同じ変化をもっているかを調べられます。

Q3. ブルガダ症候群の遺伝子検査で原因が見つからなかったら、ブルガダ症候群ではないのですか?

そうとは限りません。ブルガダ症候群は心電図などで診断する病気で、遺伝子検査で原因が見つからなくても診断は変わりません。原因が見つかる割合は2割ほどなので、見つからないことのほうが多い検査です。原因が見つかった場合に、ご家族の検査に使える情報が得られます。

Q4. QT延長症候群・ブルガダ症候群は指定難病ですか?

2024年4月時点の指定難病(341疾病)の一覧には、QT延長症候群・ブルガダ症候群の病名は見当たりませんでした。指定難病は追加されることがあるため、最新の一覧は厚生労働省のページでご確認ください。QT延長症候群は、小児慢性特定疾病(慢性心疾患)の対象疾病に掲載されています(2026年10月時点で確認)。

Q5. 遺伝子検査で型がわかると、何が変わりますか?

QT延長症候群では、型によって発作が起こりやすい場面が違います。1型は運動中、とくに水泳、2型は突然の音や感情の高ぶり、3型は安静時や睡眠中に起こりやすいと報告されています。そのため、生活で気をつけること、カリウムを保つこと、使われる薬の考え方が型ごとに変わります。治療の方針は循環器内科の主治医が決めます。

Q6. 症状のない家族も検査を受けたほうがいいですか?

ご本人で原因となる遺伝子の変化がわかった場合、国際的な専門家の合意文書は、ご家族が同じ変化をもっているかを調べることを勧めています。受け継いでいないとわかれば、ご家族の不安や定期検査の負担が軽くなることがあります。症状のない方の検査は、遺伝カウンセリングで知ることの意味をよく考えてから受けていただきます。

Q7. 妊娠・出産への影響はありますか?

QT延長症候群2型(KCNH2)では、出産後の時期に不整脈が起こりやすくなることが知られています。妊娠を考えている方は、型を知ったうえで、かかりつけの産科と循環器内科で妊娠中・出産後の過ごし方を相談しておくことが大切です。当院は分娩を行っていませんが、遺伝カウンセリングと、絨毛検査・羊水検査による出生前診断のご相談は院内でお受けしています。

Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。海外でPGT-Mを受けるなど英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整わないため、ご家族の検体についても前もってご相談ください。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。QT延長症候群・ブルガダ症候群の原因がわかれば、ご自身の生活や薬の注意だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Schwartz PJ, Stramba-Badiale M, Crotti L, et al. Prevalence of the congenital long-QT syndrome. Circulation. 2009;120(18):1761-1767. [DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.109.863209]
  • [2] Martínez-Barrios E, Arbelo E, Cesar S, et al. Brugada syndrome in women: what do we know after 30 years? Front Cardiovasc Med. 2022;9:874992. [DOI: 10.3389/fcvm.2022.874992]
  • [3] Wilde AAM, Semsarian C, Márquez MF, et al. European Heart Rhythm Association (EHRA)/Heart Rhythm Society (HRS)/Asia Pacific Heart Rhythm Society (APHRS)/Latin American Heart Rhythm Society (LAHRS) Expert Consensus Statement on the state of genetic testing for cardiac diseases. J Arrhythm. 2022;38(4):491-553. [DOI: 10.1002/joa3.12717]
  • [4] Adler A, Novelli V, Amin AS, et al. An international, multicentered, evidence-based reappraisal of genes reported to cause congenital long QT syndrome. Circulation. 2020;141(6):418-428. [DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.119.043132]
  • [5] Kapplinger JD, Tester DJ, Alders M, et al. An international compendium of mutations in the SCN5A-encoded cardiac sodium channel in patients referred for Brugada syndrome genetic testing. Heart Rhythm. 2010;7(1):33-46. [DOI: 10.1016/j.hrthm.2009.09.069](PMID: 20129283)
  • [6] Zeppenfeld K, Tfelt-Hansen J, de Riva M, et al. 2022 ESC Guidelines for the management of patients with ventricular arrhythmias and the prevention of sudden cardiac death. Eur Heart J. 2022;43(40):3997-4126. [DOI: 10.1093/eurheartj/ehac262]
  • [7] Schwartz PJ, Priori SG, Spazzolini C, et al. Genotype-phenotype correlation in the long-QT syndrome: gene-specific triggers for life-threatening arrhythmias. Circulation. 2001;103(1):89-95. [DOI: 10.1161/01.CIR.103.1.89](PMID: 11136691)
  • [8] Hosseini SM, Kim R, Udupa S, et al. Reappraisal of reported genes for sudden arrhythmic death: evidence-based evaluation of gene validity for Brugada syndrome. Circulation. 2018;138(12):1195-1205. [DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.118.035070](PMID: 29959160)
  • [9] Postema PG, Wolpert C, Amin AS, et al. Drugs and Brugada syndrome patients: review of the literature, recommendations, and an up-to-date website (www.brugadadrugs.org). Heart Rhythm. 2009;6(9):1335-1341. [DOI: 10.1016/j.hrthm.2009.07.002](PMID: 19716089)
  • [10] Baig SS, et al. 22 Years of predictive testing for Huntington's disease: the experience of the UK Huntington's Prediction Consortium. Eur J Hum Genet. 2016;24(10):1396-1402. [DOI: 10.1038/ejhg.2016.36]
  • [11] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [12] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [13] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for 'serious' disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
  • [14] Ethics Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Use of preimplantation genetic testing for monogenic adult-onset conditions: an Ethics Committee opinion. Fertil Steril. 2024;122:607-611.

関連記事

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

記事の作り方と生成AIの使い方は、編集方針をご覧ください。