この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群(JLNS)は、生まれつき両耳が聞こえにくい感音難聴と、心電図のQT延長が重なって起こる遺伝性の病気です。原因はKCNQ1またはKCNE1という2つの遺伝子で、ご両親がそろって保因者のときに、お子さんに起こります。原因の遺伝子の変化がわかれば、次のお子さんで同じ病気が起こる確率(4分の1)を踏まえて次の妊娠を計画できるほか、症状のないご両親・きょうだいが心電図で自分の心臓を確かめる手がかりにもなります。このページでは、JLNSとはどんな病気か、遺伝のしかた、KCNQ1・KCNE1を調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の原因となるKCNQ1・KCNE1の2つの遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。この2つの遺伝子で、臨床的にJLNSと診断された方の94%に原因の変化が見つかったと報告されています。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
生まれつきの難聴があり心電図でQT延長を指摘された方、ご家族にJLNSの方がいるご両親・きょうだい、次の妊娠を考えている方です。難聴だけで原因がわからない方は、難聴の遺伝子パネル検査が向くこともあります。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、保因者のご両親・きょうだいの心電図と遺伝子検査、次の妊娠での出生前診断(院内で絨毛検査・羊水検査)へ進めます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群(JLNS)とは:生まれつきの難聴とQT延長が重なる病気
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は、生まれつき両耳が高度に聞こえにくい感音難聴と、心電図のQT延長をあわせもつ遺伝性の病気です。KCNQ1またはKCNE1遺伝子の2つのコピーの両方に変化があると起こり、QT延長症候群のなかでも心臓の症状が重い型とされています[1][2]。
1957年に、ノルウェーの医師ジャーベル(Jervell)とランゲ-ニールセン(Lange-Nielsen)が、生まれつき耳が聞こえず、QT間隔が延び、突然亡くなることのあるきょうだいを報告したのが始まりです[3]。英語名 Jervell and Lange-Nielsen syndrome の頭文字からJLNSと呼ばれ、日本語では「ジャーベル・ランゲ・ニールセン症候群」「ジャーヴェル・ランゲ・ニールセン症候群」と書かれることもあります。
難聴は内耳の感覚の働きによる感音難聴で、心臓の症状はQT延長症候群によるものです。耳と心臓という離れた場所に同時に症状が出るのは、どちらでも同じ遺伝子が働いているためです(このあと説明します)。
病気のしくみや経過をさらにくわしく知りたい方は、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群(JLNS)総論もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
どれくらいの人がなる病気か
JLNSはまれな病気です。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、ノルウェーでは少なくとも20万人に1人(主に4種類の創始者変異による)、スウェーデンでは約20万人に1人と推定されています。また、トルコで先天性難聴のある子ども350人を調べた研究では、175人に1人がJLNSでした[1]。地域や調べ方によって数字は変わるため、目安として受け取ってください。
難聴の特徴:生まれたときから両耳に
JLNSの難聴は、生まれたときから両耳にある高度の感音難聴です[1]。GeneReviewsは、ふつうの新生児聴覚スクリーニングでJLNSの難聴は見つけられるとしています。そのうえで、両耳の高度の感音難聴があり、難聴の原因として最も多いGJB2遺伝子に変化がなく、ほかに目立つ所見がない赤ちゃんでは、JLNSを考えるべきだとしています[1]。つまり、聞こえの検査だけでは、心臓の病気が隠れているかどうかはわかりません。心臓のことは、心電図で確かめる必要があります。
心臓の特徴と、発作が起きやすいきっかけ
JLNSでは、心電図のQT間隔(心臓の心室が興奮してから元に戻るまでの時間)が大きく延びます。186人のJLNSの方を集めた国際的な研究では、心拍数で補正したQT間隔(QTc)の平均は557±65ミリ秒でした[2]。QT間隔が延びると、トルサード・ド・ポワントと呼ばれる危険な不整脈が起きやすくなり、失神や心停止につながることがあります。
同じ研究では、86%の方に失神などの心臓の症状が起こり、半数は3歳までに症状が出ていました。不整脈が起きたときの95%は、気持ちの高ぶりや運動がきっかけでした[2]。GeneReviewsは、避けたほうがよいこととして、競技としてのスポーツ、遊園地の絶叫系の乗り物、怖い映画、冷たい水に飛び込むことなどを挙げています[1]。きっかけがある程度わかっているので、生活の中で備えることができます。
寿命・見通しは、治療と生活の工夫で変えられる
JLNSは、治療をしないと命にかかわることがある病気ですが、早くわかって治療と生活の注意を続けることで、見通しを変えていける病気です。GeneReviewsによると、治療を受けていない子どもの半数以上が15歳までに亡くなるとされています[1]。だからこそ、診断を早く確かめることに意味があります。
一方で、治療の中心であるβ遮断薬の効果は一部にとどまり、先の186人の研究では、β遮断薬を使っていても51%に心臓の症状があり、27%が心停止または突然死に至っていました[2]。この研究では、女性、QTcが550ミリ秒以下、生後1年以内に症状がない、KCNE1遺伝子が原因、のいずれかに当てはまる方は危険が比較的低いグループとされ、反対に危険が高い方では、植込み型除細動器(ICD)を早めに考える必要があると結論しています[2]。どの原因遺伝子か、QT間隔がどれくらいか、によって次の一手が変わることが、遺伝子検査を受ける大きな理由のひとつです。
なぜ耳と心臓に同時に起こるのか
KCNQ1とKCNE1は、組み合わさってカリウムイオンを細胞の外に通す「通り道」(IKsと呼ばれるカリウムチャネル)をつくります。KCNQ1が通り道の本体(αサブユニット)、KCNE1がその働きを調節する部品(βサブユニット)です[4][5]。こうした電位依存性カリウムチャネルの異常で起こる病気は、イオンチャネル病(チャネロパチー)と呼ばれます。
心臓では、この通り道が、心筋が興奮したあと元の状態に戻る(再分極)ときに働きます。通り道がうまく働かないと、心筋の活動電位が長引き、心電図のQT間隔が延びます。内耳では、音を感じる細胞のまわりの液(内リンパ液)のカリウムを保つのに同じ通り道が使われており、これがうまく働かないことが難聴につながります。2つのコピーの両方が働かなくなるJLNSでは、耳と心臓の両方に症状が出ます[1]。
ロマノ・ワード症候群(QT延長症候群1型・5型)との違い
同じKCNQ1・KCNE1の変化でも、2つのコピーの両方に変化があるとJLNS、1つのコピーだけに変化があるとロマノ・ワード症候群(顕性遺伝のQT延長症候群)になります。ロマノ・ワード症候群では難聴はありません[1]。1つの遺伝子から、受け継ぎ方によって違う病気が起こるしくみは、同じ遺伝子で顕性と潜性の両方が起こる理由で解説しています。
🫀 JLNSとロマノ・ワード症候群の違い
※文献[1][2]による。
なお、KCNE1の変化が1つだけの場合については、国際的な遺伝子の再評価(2020年)で、典型的な(薬などのきっかけがない)QT延長症候群の原因としての根拠は「限られている」と判定されました。一方で、薬によってQT間隔が延びる「後天性QT延長症候群」のなりやすさとの関係は「強い」とされています[6]。KCNE1が2つとも変化しているJLNSとの関係は、患者さんの報告で示されています[5][6]。
2. 遺伝のしかた:ご両親は保因者、次のお子さんは4分の1
JLNSは常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です。ご両親がそろって同じ遺伝子の保因者のとき、お子さん1人ごとに、4分の1の確率でJLNS、2分の1の確率で保因者、4分の1の確率でどちらでもない状態になります[1]。
常染色体潜性遺伝のしくみ
遺伝子は、父親由来と母親由来の2つのコピーで1組になっています。常染色体潜性遺伝の病気は、この2つのコピーの両方に変化があるときに起こります。2つが同じ変化の場合もあれば、違う変化が1つずつの場合(複合ヘテロ接合)もあります[2]。1つだけ変化をもつ方を「保因者」と呼びます。保因者と、お子さんに伝わる確率のしくみは、劣性遺伝(潜性遺伝)と保因者のしくみでくわしく解説しています。
👪 ご両親が同じ遺伝子の保因者のとき(お子さん1人ごと)
※確率はGeneReviews[1]による。上のお子さんの結果で、次のお子さんの確率が変わることはありません。
保因者のご両親・きょうだいも、QT延長症候群のことがある
潜性遺伝の病気の保因者は、ふつう症状がないとされます。けれどもJLNSでは、保因者の一部に心電図のQT延長や失神、突然死が起こりうることが知られています。これは、1つのコピーの変化だけで起こる顕性遺伝のQT延長症候群(ロマノ・ワード症候群)にあたります。保因者の方の聴力は、ふつう正常です[1]。
GeneReviewsによると、JLNSの原因となる変化の約67%は、顕性遺伝のQT延長症候群の原因としても報告されています。ご両親にQT延長がある家族もあれば、ない家族もあります。そのため、ご家族の変化がわかっていればご両親の遺伝子検査と心電図を、きょうだいには聴力・心電図・遺伝子の検査を行い、聴力が正常でも、リスクのある血縁者には心電図を考えるべきとされています[1]。同じ変化をもっていても症状が出る人と出ない人がいることを「不完全浸透」といい、見た目や自覚症状だけでは判断できません。
⚠️ 「保因者だから心臓は大丈夫」とは言えません
お子さんがJLNSと診断されたとき、ご両親やきょうだいは「自分は耳も聞こえるし、症状もない」と考えがちです。けれども、保因者の一部はQT延長症候群をもっていることがあり、QT間隔を延ばす薬を避けるなど、知っておけば備えられることがあります[1]。お子さん1人の遺伝子検査の結果が、ご家族みんなの心臓を確かめるきっかけになります。
ご本人がお子さんを持つとき
JLNSの方がお子さんを持つ場合、お子さんは全員が変化を1つ受け継ぐ保因者になり、QT延長症候群のリスクを考える必要があります。パートナーも同じ遺伝子の保因者だった場合は、お子さんがJLNSになる確率は2分の1です[1]。また、ご両親のうち片方だけが保因者という家族では、お子さんがJLNSになることはありませんが、2分の1の確率で変化を受け継ぎ、QT延長症候群のリスクを考える必要があります[1]。
3. どんな人がこの検査を受けるとよいか
生まれつきの難聴とQT延長の両方がある方、ご家族にJLNSの方がいる方、次の妊娠を考えている方に向く検査です。症状によっては、別の検査のほうが向くこともあります(この章の最後の表)。
生まれつきの難聴があり、心電図でQT延長を指摘された方
難聴とQT延長がそろっていれば、JLNSが強く疑われます。KCNQ1とKCNE1の2つの遺伝子で、臨床的にJLNSと診断された方の94%に原因の変化が見つかったと報告されています[1]。原因の遺伝子と変化がわかると、診断がはっきりするだけでなく、KCNQ1かKCNE1かによって見通しの目安が変わり[2]、ご家族の検査や次の妊娠の計画に進めます。
生まれつき難聴のお子さん、人工内耳を考えているお子さん
GeneReviewsは、両耳の高度の感音難聴があり、GJB2遺伝子に原因が見つからず、ほかに目立つ所見のない赤ちゃんではJLNSを考えるべきとし、最初の評価にQTcの計算を含む心臓の診察を挙げています[1]。また、JLNSでは不整脈の危険があるため麻酔のときに特別な注意が必要とされ、人工内耳の手術の前後に心臓の問題が起きた報告もあります[1]。高度の難聴で人工内耳を考えているお子さんでは、手術の前に心電図で心臓を確かめておくことが大切です。心電図でQT延長が見つかった場合に、この検査で原因を確かめます。
ご家族にJLNSの方がいる方(ご両親・きょうだい・パートナー)
ご家族の誰かにJLNSの原因の変化がわかっている場合、ご両親・きょうだいは、同じ変化をもっているかをこの検査で確かめられます。保因者でもQT延長症候群が隠れていることがあるので、遺伝子の結果と心電図をあわせて確かめることが勧められています[1]。症状のない方が将来の発症の可能性を調べる検査は「予測的検査」にあたるため、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味を一緒に考えます。保因者の方が結婚・妊娠を考えるときは、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかを調べることもできます。
この検査より別の検査が向いている場合
難聴とQT延長がそろっている、またはご家族の変化がわかっているなら、このページの検査です。難聴だけ、QT延長だけ、という場合は、もっと多くの遺伝子を一度に調べる検査のほうが向いています。次の検査には、いずれもKCNQ1とKCNE1が含まれています。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※遺伝子数は当院の各検査ページの記載による(2026年10月時点)。どの検査が合うかは、症状・心電図・聴力・ご家族の情報で変わるため、遺伝カウンセリングで一緒に決めます。
4. 調べる遺伝子と、それぞれの遺伝子でわかる病気
この検査では、KCNQ1とKCNE1の2つの遺伝子を調べます。JLNSの約90%はKCNQ1、10%未満がKCNE1によるとされています[1]。186人の研究でも、見つかった変化の90.5%がKCNQ1でした[2]。
🧬 調べる遺伝子と関係する病気
※割合は文献[1]、KCNE1の評価は文献[6]、そのほかの関係する病気は米国国立医学図書館の遺伝情報(MedlinePlus Genetics)による。対象遺伝子は当院の検査内容による。
5. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、KCNQ1・KCNE1の配列の小さな変化と、遺伝子の大きな欠け(欠失)や重なり(重複)の一部です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
わかること
次世代シークエンサー(NGS)で、2つの遺伝子のたんぱく質をつくる部分(エクソン)と、その境目(スプライス部位)を読みます。1文字の置き換わりや、小さな挿入・欠失がわかります。遺伝子全体や2つ以上続くエクソンの欠失・重複(コピー数の変化)も調べます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。読み取りが不十分なところは、サンガー法という別の方法で補います。
▶ 専門家向けの情報(読み取りの精度)
調べる遺伝子の領域の99%以上を、20回以上重ねて読み取ります(≥99% at 20x)。同じ場所を何度も読むほど、読み間違いを見分けやすくなります。単一エクソンの欠失・重複は見つかることがありますが、この検査で決まって見つけられるものではありません。遺伝子全体の欠失・重複は頬の粘膜と血液で、2つ以上続くエクソンの欠失・重複は血液で調べられます。
わからないこと
- ●調べていない場所の変化:遺伝子の働きを調節する領域(プロモーター)や、エクソンから離れたイントロンの奥の変化は調べません。
- ●染色体の組み替わり:転座や逆位など、染色体の並びが入れ替わる変化はわかりません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけある変化を見つけることを目的とした検査ではありません。
- ●ほかの遺伝子:KCNQ1・KCNE1以外の遺伝子は調べません。難聴やQT延長のほかの原因を広く調べたいときは、第3章の表の検査を考えます。
陰性でもJLNSを否定できない理由と、VUS
臨床的にJLNSと診断された方でも、この2つの遺伝子で原因の変化が見つかったのは94%と報告されています[1]。変化が見つからなかったからといって、JLNSではないとは言い切れません。難聴とQT延長がそろっていれば、遺伝子の結果にかかわらず、心臓の治療と生活の注意は続けます。
また、病気の原因かどうかまだ判断できない「意義がまだわからない変化(VUS)」が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断や、ご家族の検査・出生前診断に使うことはしません。
6. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。
陽性だったとき:治療と生活の注意
原因の遺伝子と変化が確かめられると、JLNSの診断がはっきりし、循環器の主治医と治療の方針を決める手がかりになります。GeneReviewsに書かれている主な管理は次のとおりです[1]。
- ●β遮断薬:これまで最初の治療とされてきましたが、効果は一部にとどまります。プロプラノロールとナドロールがメトプロロールより成績がよく、ナドロールが勧められています。成長の速い時期は3〜6か月ごとに量を見直します。
- ●植込み型除細動器(ICD):心停止を起こしたことがある方や、ほかの治療で抑えられない方で考えます。QTcが550ミリ秒を超える、5歳より前に失神がある、KCNQ1が原因の20歳を超える男性、は危険が高いとされます。5歳未満では突然死の危険は低いため、薬の治療を早く始め、ICDは5歳以降に考えます。
- ●左心臓交感神経切除術:一部の方で効果があったとされています。
- ●避けたい薬と体の状態:QT間隔を延ばす薬やトルサード・ド・ポワントを起こしうる薬は避けます(最新の一覧はCredibleMedsで確認できます)。低カリウム血症・低マグネシウム血症・低カルシウム血症も、QT間隔を延ばす原因になります。
- ●生活:競技としてのスポーツ、絶叫系の乗り物、怖い映画、冷たい水に飛び込むことなど、発作のきっかけになりやすい場面を避けます。
ほかの病院で薬を出してもらうときや、手術・麻酔を受けるときに「JLNS(QT延長症候群)がある」と伝えられることが、日々の備えになります。病名がはっきりすると、使える制度(第7章)を確かめるときの手がかりにもなります。
ご家族の検査の流れ
あなたの1回の検査で原因の変化がわかれば、ご両親・きょうだいは同じ場所を確かめることで、自分の状態を知ることができます。GeneReviewsは、ご両親には遺伝子検査と心電図を、きょうだいには聴力・心電図・遺伝子の検査を勧めています[1]。保因者とわかった方は、QT間隔を延ばす薬を避けるなど、知っておけば備えられることがあります。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。心電図は、お近くの循環器内科・小児科でお受けください。
次の妊娠を考えるとき
ご両親がそろって保因者の場合、次のお子さんがJLNSになる確率は、お子さん1人ごとに4分の1です[1]。ご家族の原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます[1]。
絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。
出生前診断を受けるかどうかの考え方は人によって違い、どの選択も尊重されるべきものです。行えるかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えるため、妊娠を考えている段階からご相談ください。また、GeneReviewsは、JLNSの赤ちゃんを妊娠しているお母さんご自身がQT延長症候群をもっていないかを考えることも挙げています[1]。
なお、当院の拡大版保因者スクリーニングや、NIPTと同時に行うカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」の対象遺伝子には、KCNQ1・KCNE1は含まれていません(2026年10月時点の遺伝子一覧で確認)。保因者のきょうだいが結婚・妊娠を考えるときに、パートナーが同じ遺伝子の保因者かを知りたい場合は、このページの検査でパートナーの方を調べます。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。
陰性・VUSだったとき
原因の変化が見つからなかった場合でも、難聴とQT延長がそろっていれば、心臓の治療と生活の注意はそのまま続けます(第5章)。必要に応じて、より多くの遺伝子を調べる検査(第3章の表)を考えます。VUSが見つかった場合は、それだけで診断やご家族の検査には使わず、研究が進んで意味がはっきりするのを待ちます。
結果のお渡しと報告書
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで、調べた目的とは別の病気の原因が見つかったときの扱いは、当院の二次的所見の開示方針でご確認いただけます。
7. 日本の制度(2026年10月時点)
QT延長症候群は、小児慢性特定疾病の「慢性心疾患」の対象疾病に含まれています。小児慢性特定疾病情報センターのQT延長症候群の概要には、常染色体潜性遺伝の型としてJLNS(先天性聾を伴う)が記載されています(2026年10月時点で確認)。
医療費の助成を受けるには、制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法、ほかに使える制度は、小児慢性特定疾病情報センター・難病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。唾液・口の内側の粘膜の検体なら、オンライン診療でも受けられます。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取唾液・粘膜・血液
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【1人の検査が、家族みんなの次の一手を決める】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は、ご両親がそろって同じ遺伝子の保因者だったときに起こる病気です。保因者であることは、ふつう本人も気づいていません。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。そのうえで、この病気には、保因者のご両親やきょうだいもQT延長症候群をもっていることがある、という大切な特徴があります。お子さんの診断をきっかけに、ご家族それぞれが自分の心臓を確かめられることは、知ったからこそできる備えだと考えています。
原因の遺伝子と変化がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる確率を具体的に考えられ、次の妊娠でどう備えるかを計画できます。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかも決められません。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群とはどんな病気ですか?
生まれつき両耳が高度に聞こえにくい感音難聴と、心電図のQT延長をあわせもつ遺伝性の病気です。KCNQ1またはKCNE1遺伝子の2つのコピーの両方に変化があると起こる常染色体潜性遺伝の病気で、QT延長症候群のなかでも心臓の症状が重い型とされています。不整脈は、気持ちの高ぶりや運動がきっかけで起こることが多いと報告されています。
Q2. ロマノ・ワード症候群との違いは何ですか?
どちらもKCNQ1・KCNE1などの変化で起こるQT延長症候群ですが、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群は2つのコピーの両方に変化がある常染色体潜性遺伝で、生まれつきの難聴を伴います。ロマノ・ワード症候群は1つのコピーの変化で起こる常染色体顕性遺伝で、難聴はありません。
Q3. 保因者の親なのに、心電図を受けたほうがよいのはなぜですか?
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の保因者の一部には、心電図のQT延長や失神が起こることがあり、これは顕性遺伝のQT延長症候群(ロマノ・ワード症候群)にあたります。保因者の聴力はふつう正常なので、聴力だけでは判断できません。そのため、ご家族の変化がわかっていれば、ご両親には遺伝子検査と心電図が勧められています。
Q4. 次の子が同じ病気になる確率はどれくらいですか?
ご両親がそろって同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率でジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群、2分の1の確率で保因者になります。ご家族の原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんに同じ変化があるかを調べられます。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っていますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
Q5. 寿命はどれくらいですか?治療で変わりますか?
治療を受けていない子どもの半数以上が15歳までに亡くなるとされ、早く診断して治療を始めることが大切です。治療の中心はβ遮断薬ですが効果は一部にとどまるため、危険が高い方では植込み型除細動器(ICD)も考えます。女性、QTcが550ミリ秒以下、生後1年以内に症状がない、KCNE1が原因、の方は危険が比較的低いと報告されています。
Q6. 人工内耳の手術の前に、心臓の検査は必要ですか?
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群では不整脈の危険があるため、麻酔のときに特別な注意が必要とされています。高度の難聴で人工内耳を考えているお子さんでは、手術の前に心電図で心臓を確かめておくことが大切です。QT延長が見つかった場合は、遺伝子検査で原因を確かめます。
Q7. 難聴の遺伝子パネル検査とどちらを受ければよいですか?
難聴とQT延長がそろっている方や、ご家族の変化がわかっている方は、このページの検査が向いています。難聴の原因がまだわからず心電図も受けていない方は、KCNQ1・KCNE1を含む多くの難聴の遺伝子を一度に調べる難聴遺伝子パネル検査が向くことがあります。どちらがよいかは遺伝カウンセリングで一緒に決めます。
Q8. 小児慢性特定疾病の対象ですか?
QT延長症候群は、小児慢性特定疾病の慢性心疾患の対象疾病に含まれており、その概要にジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群も記載されています(2026年10月時点)。医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たして申請する必要があります。くわしくは小児慢性特定疾病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
🧬 一度の検査で、ご本人とご家族の心臓を守る手がかりに
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の原因がわかれば、ご本人の治療の方針だけでなく、保因者のご両親・きょうだいの心電図や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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