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カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)の遺伝子検査|9遺伝子でわかること・受けるとよい人・結果のあと

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)の遺伝子検査

カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)は、運動や興奮をきっかけに危険な不整脈が起こり、失神することがある遺伝性の病気です。ふだんの心電図は正常なことが多く、見た目や安静時の検査だけでは気づきにくい病気でもあります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査で原因がわかれば、ご自身の治療や生活の方針が決まるだけでなく、ご両親・きょうだい・お子さんが自分のことを考える手がかりにもなります。このページでは、CPVTの症状・治療・遺伝のしかたと、原因となる遺伝子をまとめて調べる遺伝子検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

CPVTに関係する9つの遺伝子(RYR2・CASQ2など)に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。CPVTの方の多くはRYR2遺伝子の変化が原因ですが、約25%の方では既知の遺伝子に原因が見つかりません。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

運動中や興奮したときに失神したことがある方、運動負荷試験でCPVTが疑われた方、ご家族にCPVTの方や、若くして突然亡くなった方がいる方、結婚・妊娠を考えていて家族歴が気になる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。検査費用はお問い合わせください。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が見つかれば、ご家族も同じ場所を調べて、症状が出る前に備えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 不整脈の種類をしぼれない方へ(遺伝性不整脈パネル)

1. カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)とは

カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)は、運動や強い感情で体内のカテコラミン(アドレナリンなど)が増えたときに、心室から危険な不整脈が起こる遺伝性の病気です。英語の catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia の頭文字をとって、CPVTと呼ばれます。「カテコラミン感受性多形性心室頻拍」と書かれることもあります。

心臓の構造には異常がないことが多く、ふだんの心電図も正常なことが多いため、気づかれにくい病気です。一方で、診断がつけば、使う薬・避けたい運動・ご家族の検査など、次にすることがはっきり決まる病気でもあります。

どれくらいの人がなる病気か

遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは、CPVTの有病率は1万人に1人かそれ以下と推定されています。ただし、正確な数はわかっていないとされています[1]。症状(多くは失神)が出はじめる年齢の平均は7〜12歳ですが、30歳代になって初めて症状が出た例も報告されています[1]。

原因:心臓の細胞のカルシウムの出し入れ

CPVTは、心臓の筋肉の細胞の中でカルシウムを出し入れするしくみがうまく働かなくなることで起こります。心臓の筋肉の細胞には、カルシウムをためておく袋(筋小胞体)があり、心臓が縮むたびにそこからカルシウムが放出されます。CPVTの原因として最も多いのは、この放出口をつくるRYR2遺伝子の変化で、CPVTの60〜70%を占めます。次に多いのは、袋の中でカルシウムを抱えておくタンパク質をつくるCASQ2遺伝子の変化で、約5%です[1]。

こうした変化があると、運動や興奮でアドレナリンが増えたときに、カルシウムが余計に漏れ出し、それが引き金になって不整脈が起こると考えられています。CASQ2による型はカテコラミン誘発性多形性心室頻拍2型(CPVT2)と呼ばれます。

2. 症状と診断:ふだんの心電図では見つかりにくい

CPVTの症状は、運動中や興奮したときの失神が代表的です。治療を受けていない場合、最大80%の方が失神を経験し、約30%の方が少なくとも一度は心停止を起こすとされています[1]。だからこそ、早く気づき、診断をつけることに意味があります。

運動・興奮がきっかけの失神

CPVTの不整脈は、体を動かしたときや、驚いたり緊張したりして気持ちが高ぶったときに起こります。動悸やめまいのあとに意識を失うことがあり、多くは小児期に最初の症状が出ます[1]。運動中の失神を「ただの貧血」「疲れ」と思わず、一度は循環器の専門医に相談することが大切です。

安静時の心電図は正常なことが多い

CPVTの方の安静時の心電図は、ふつう正常です[1]。心拍数がやや少ない、U波が目立つといった報告もありますが、診断に使えるほどはっきりした所見ではないとされています[1]。

GeneReviewsは、運動負荷試験を「最も重要な診断のための検査」としています。心拍数が1分間に90〜120回ほどに上がると不整脈が出はじめ、心室のリズムの向きが1拍ごとに入れ替わる「二方向性心室頻拍」が、CPVTを見分ける手がかりになります[1]。遺伝子検査は、この臨床の検査とあわせて診断を確かなものにし、ご家族の検査につなげる役割をもちます。

💡 用語解説:多形性心室頻拍・二方向性心室頻拍

心室頻拍は、心室(心臓の下の部屋)から速いリズムが続く不整脈です。心電図の波の形が1つに決まらず次々に変わるものを「多形性」、波の向きが1拍ごとに上下に入れ替わるものを「二方向性」と呼びます。どちらも、心室細動という、心臓が血液を送り出せなくなる状態につながることがあります。

3. 治療と生活:診断がつくと決まること

CPVTは、診断がつけば治療の方針がはっきりしている病気です。中心になるのはβ遮断薬で、必要に応じてフレカイニドという薬や、植込み型除細動器(ICD)を組み合わせます[1]。病名がわかることが、ご本人の安全につながります。

薬:β遮断薬とフレカイニド

β遮断薬は、アドレナリンが心臓に働きかけるのを抑える薬です。GeneReviewsでは、CPVTの症状がある方に使い、なかでもナドロールが最も効果的で、心臓だけに選んで効くタイプより、選ばずに効くタイプのβ遮断薬のほうが優れているとされています[1]。β遮断薬を使っていても失神をくり返す方や、運動で複雑な不整脈が出る方には、フレカイニドを加えることがあります[1]。

植込み型除細動器(ICD)と交感神経の手術

心停止を起こしたことがある方や、薬を十分に使っても失神や危険な不整脈が続く方には、植込み型除細動器(ICD)が検討されます。心臓の交感神経を手術で切る方法(左心臓交感神経切除術)も、薬物療法やICDの適応とあわせて検討される治療選択肢です[1]。どの治療を選ぶかは、症状や検査の結果をもとに、循環器・不整脈の専門医が判断します。

運動と生活の注意

GeneReviewsは、CPVTの方には競技スポーツや激しい運動は勧められないとし、ジギタリスという薬も避けるべきとしています[1]。どこまでの運動なら続けられるかは、一人ひとりの状態で変わるため、主治医とよく相談して決めます。学校の体育や部活動をどうするかも、診断がついていれば具体的に相談できます。

4. 遺伝のしかた:原因の遺伝子で確率が変わる

CPVTの遺伝のしかたは、原因の遺伝子によって違います。RYR2やCALM1〜3による型は常染色体顕性(優性)遺伝、CASQ2やTRDNによる型は主に常染色体潜性(劣性)遺伝です[1][2]。どの遺伝子に原因があるかがわかると、ご家族それぞれの確率が具体的に考えられるようになります。

RYR2・CALMによる型:お子さんへは2分の1

常染色体顕性(優性)遺伝では、対になった2本の遺伝子のうち1本に変化があれば発症しうるため、変化をもつ親から子へ伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です[1]。性別には関係しません。

CASQ2・TRDNによる型:ご両親とも保因者なら4分の1

常染色体潜性(劣性)遺伝では、2本の遺伝子の両方に変化があるときに発症します。ご両親がともに変化を1つずつもつ保因者の場合、お子さん1人ごとに、発症する確率が4分の1、保因者になる確率が2分の1、どちらの変化も受け継がない確率が4分の1です[1]。なお、CASQ2の変化を1つだけもつ方でも軽い症状が見られることがあり、GeneReviewsは顕性遺伝のふるまいも否定できないとしています[1]。

家族歴がなくても:新しく起きた変化とモザイク

ご家族にCPVTの方がいなくても、CPVTになることはあります。GeneReviewsは、RYR2による型の30〜40%がご本人の代で新しく起きた変化(新生突然変異(de novo))と見積もっていますが、正確な頻度のデータはないとしています[1]。

お子さんに新しく起きた変化が見つかり、ご両親の血液から同じ変化が見つからなくても、ご両親の卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性は残ります[1]。その細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化をもちますが、生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは人によって違い、実際の診療ではわかりません。血液で調べた結果も、生殖細胞の割合の目安にはなりません。そのため、次のお子さんへの確率は「最大で2分の1」と考えます。「新しく起きた変化だから次は大丈夫」と小さく見積もらないことが大切です。

⚠️ 遺伝子の変化は、誰のせいでもありません

お子さんの診断をきっかけに、ご自身も同じ変化をもっていたとわかることがあります。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、親御さんのせいではありません。前もって知っておくことは、ご家族それぞれが治療や生活の準備をする選択肢を増やすことにつながります。

5. どんな人がこの検査を受けるとよいか

運動や興奮で失神したことがある方、CPVTと診断された・疑われた方、ご家族にCPVTの方や若くして突然亡くなった方がいる方、結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは判断できないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

症状があり、原因を確かめたい方

  • ●運動中や、驚いた・緊張したときに失神したことがある方
  • ●運動負荷試験で、二方向性・多形性の心室頻拍が出た方
  • ●CPVTと診断された方、またはCPVTが疑われている方
  • ●原因のわからない心停止から回復された方

名前がつくと、次の一手が決まります。CPVTと確定すれば、使う薬、避けたい運動と薬、使える制度(第9章)が具体的になり、ご家族の検査にもつなげられます。

ご家族にCPVTの方や、若くして突然亡くなった方がいる方

GeneReviewsは、ご家族の原因の変化がわかっている場合、第一度近親者(ご両親・きょうだい・お子さん)に、診察と遺伝子検査を受ける機会を提供すべきとしています[1]。症状のないご家族が受ける検査は、将来の発症の可能性を調べる「発症前の検査(予測的検査)」になります。CPVTは子どものうちに発症することが多く、変化をもつとわかれば治療で備えられる病気なので、お子さんも検査の対象になりえます。

あなたの1回の検査が、ご家族が自分の状態を知る手がかりになります。米国でBRCA遺伝子検査を受けた人を追った研究では、検査の理由に「家族のため」を挙げた人は遺伝カウンセリングの前に112人中28人(25%)でしたが、遺伝カウンセリングと検査のあとには118人中57人に増えていました[3]。病気は違いますが、知ることがご家族を守ることにつながる、という考え方はCPVTにも通じます。

結婚・妊娠を考えている方

結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。CPVTの当事者の方にとっても、きょうだいにCPVTの方がいる方にとっても、ご自身が原因の変化をもっているかどうかを妊娠の前に知っておくと、選べることが増えます。とくにCASQ2・TRDNによる型では、ご夫婦それぞれが保因者かどうかで、お子さんへの確率が大きく変わります(第4章)。妊娠の前にできることは第8章でご説明します。

この検査より別の検査が向いている場合

運動負荷試験などでCPVTが強く疑われているなら、まずこの検査です。一方で、運動中の失神は、QT延長症候群など別の遺伝性不整脈でも起こります。GeneReviewsは、QT延長症候群1型でも運動に関係した失神が起こりうるとしています[1]。どの不整脈か、まだしぼれていない場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。

🔍 状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
運動負荷試験などでCPVTが疑われる・診断された このページの検査(CPVTの9遺伝子)
失神や不整脈があるが、どの病気かしぼれていない 遺伝性不整脈遺伝子検査パネル(77遺伝子)。CPVT・QT延長症候群・ブルガダ症候群・QT短縮症候群などをまとめて調べます。このページの9遺伝子もすべて含まれます
心電図でQT延長やブルガダ型の所見がある QT延長症候群/ブルガダ症候群遺伝子検査パネル
お子さんが突然亡くなり、原因と次のお子さんへの影響を知りたい 親子トリオ全ゲノム検査(突然死の原因究明)
心臓以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※どの検査が合うかは、症状・検査所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ あなたの1回の検査が、ご家族を守る手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

6. 調べる9つの遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、ANK2・CALM1・CALM2・CALM3・CASQ2・KCNJ2・KCNQ1・RYR2・TRDNの9つの遺伝子をまとめて調べます。この9遺伝子のうち、CPVTの原因としての根拠がはっきりしているのは6つです。CPVTの原因として根拠が十分と評価された7遺伝子のうち、TECRLはこのパネルに含まれていません。残りの3遺伝子は、CPVTと似た症状を起こす別の病気との鑑別などを目的に含まれています。

🧬 調べる9つの遺伝子と関係する病気

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた CPVTの原因としての根拠
RYR2 CPVT(最も多い型。CPVTの60〜70%) 常染色体顕性 確立している
CASQ2 CPVT2(約5%) 主に常染色体潜性(顕性のふるまいも否定できない) 確立している
CALM1 CPVT(カルモジュリンの変化による型。1%未満) 常染色体顕性 確立している
CALM2 CPVT(カルモジュリンの変化による型。1%未満) 常染色体顕性 確立している
CALM3 CPVT(カルモジュリンの変化による型。1%未満) 常染色体顕性 確立している
TRDN CPVT(トリアジンの変化による型。1%未満) 常染色体潜性 確立している
KCNJ2 アンデルセン・タウィル症候群(二方向性心室頻拍を起こすことがある) 常染色体顕性 CPVTとは別の病気を見分けるための遺伝子
KCNQ1 QT延長症候群1型(運動に関係した失神が起こりうる) 常染色体顕性 CPVTとは別の病気を見分けるための遺伝子
ANK2 — — 一般の人にも多い変化のため、CPVTの原因とは考えにくいと評価された

※遺伝子の一覧は当院の検査内容による。割合・遺伝のしかた・関係する病気はGeneReviews[1]、CPVTの原因としての根拠は2022年の専門家パネルの評価[2]による。

9つの遺伝子は、すべてが同じ重みではない

2022年に、国際的な専門家パネルが、CPVTの原因とされてきた11の遺伝子の根拠を評価し直しました。その結果、根拠が十分とされたのは、常染色体顕性のRYR2・CALM1・CALM2・CALM3と、常染色体潜性のCASQ2・TRDN・TECRLの7つでした。KCNJ2などはCPVTとは違う病気の特徴をもつとされ、ANK2の変化は一般の人にも多くみられるため、病気の原因とは考えにくいと判断されています[2]。

この評価から読みとれることは2つあります。1つは、この検査は、根拠がはっきりしたCPVTの遺伝子の多くを含み、さらにCPVTと見分けたい病気(アンデルセン・タウィル症候群やQT延長症候群1型)の遺伝子も一緒に調べられる、ということです。もう1つは、根拠が十分とされたTECRLは、この検査の9遺伝子に含まれていないということです。結果の説明では、こうした遺伝子ごとの違いもふまえてお伝えします。

7. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、9つの遺伝子の中の、遺伝子の文字(塩基)の小さな変化や、小さな挿入・欠失です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

検査は、次世代シーケンサーという機械で、遺伝子のうちタンパク質の設計図にあたる部分と、そのつなぎ目(スプライス部位)を読みます。読む深さの目安は、調べる範囲の99%以上を20回以上読むことです。読みとりの質が低い部分は、サンガー法という別の方法で確かめます。

  • ●大きな欠失・重複:遺伝子1つ分まるごとの欠失・重複(口の内側の粘膜・血液)と、2つ以上続くエクソンの欠失・重複(血液のみ)は見つけられます。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふつうは検出できません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●見つけられない変化:染色体の一部が入れかわる転座や逆位、同じ配列の繰り返しが長くなる変化、遺伝子のスイッチにあたる部分(プロモーター)や、つなぎ目から20塩基より奥の部分(深部イントロン)の変化は、この検査ではわかりません。
  • ●よく似た配列:遺伝子とよく似た配列(偽遺伝子など)があると、変化を正しく見つけにくいことがあります。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(体細胞モザイク)を見つけるためには作られていません。がんなどの腫瘍の組織も、この検査の対象外です。
  • ●調べていない遺伝子:CPVTの原因として根拠が十分とされるTECRLは、この検査には含まれていません[2]。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でもCPVTは否定できません:CPVTの約25%の方では、既知の遺伝子に原因が見つかりません[1]。遺伝子に原因が見つからなくても、症状と運動負荷試験などの結果からCPVTと診断されることがあります。

8. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。

陽性だったとき:診断の確定と治療の方針

原因の変化が見つかると、CPVTの診断がより確かになり、治療や生活の方針を立てやすくなります。GeneReviewsは、CPVTの原因遺伝子に病気の原因となる変化をもつ方には、運動負荷試験で不整脈が出なかった場合でもβ遮断薬を使うとしています[1]。症状が出る前から備えられることが、遺伝子で原因を知ることの大きな意味です。

ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき

ご家族の中で原因の変化がわかっていると、ほかのご家族は同じ場所を調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。このように、見つかった方から血縁の方へ順に調べていく方法をカスケード検査といいます。原因の変化がわかっていない場合は、ご家族は安静時心電図・ホルター心電図・心エコー・運動負荷試験などで調べることになります[1]。

陰性だったとき

9つの遺伝子に原因が見つからなくても、CPVTではないとは言えません(第7章)。症状や検査の結果からCPVTが疑われる場合は、引き続き循環器の主治医のもとで治療と経過観察を続けることが大切です。ほかの不整脈の可能性も考える場合は、遺伝性不整脈遺伝子検査パネルや全エクソーム検査が次の選択肢になります。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

妊娠を考えている方:保因者検査と出生前診断

妊娠の前に知れば、選べることが増えます。GeneReviewsは、ご家族の原因の変化がわかっている場合、リスクのある妊娠で出生前検査が可能としています。出生前検査についての考え方は人によって違い、ご本人とご家族が決めることとされています[1]。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。ご家族の原因を前もって確かめておくことが、出生前診断を計画するための出発点になります。

CASQ2・TRDNによる常染色体潜性の型では、ご夫婦がともに保因者かどうかが大切です。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の遺伝子一覧には、CASQ2とTRDNが含まれています(2026年10月時点で一覧を確認)。保因者スクリーニングで、おふたりがともに保因者だった場合、妊娠したときの赤ちゃんの出生前診断まで当院で行えます。すでに妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(NIPTと一緒に受ける検査で、単独では受けられません。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます)。

9. 日本の制度(2026年10月時点)

カテコラミン誘発多形性心室頻拍は、小児慢性特定疾病の対象疾病です。小児慢性特定疾病情報センターの対象疾病の一覧で、「慢性心疾患」の群に、告示番号32として掲載されています(2026年10月時点で確認)。小児慢性特定疾病情報センターの診断の目安では、ご本人またはご家族にCPVTに関係する遺伝子の変化を認めることが、確定診断の条件の1つに挙げられています。

医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・オンライン可
▶
検体の採取唾液・粘膜・血液
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 ANK2, CALM1, CALM2, CALM3, CASQ2, KCNJ2, KCNQ1, RYR2, TRDN(9遺伝子)
調べる変化 塩基配列の変化、欠失・挿入(いずれも料金に含まれます)
検体 血液(EDTA採血管 4mL×2本)、抽出したDNA、口の内側の粘膜(頬粘膜スワブ)、唾液(採取キットをお送りします)
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急:結果までの期間が約7日短くなります(55,000円)/VUS除外:意義がまだわからない変化(VUS)を報告に含めない(無料)
検査費用 お問い合わせください(自費診療)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれでも可能。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご夫婦とも保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「心電図が正常だから大丈夫」では、先は決められない】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。CPVTは、ふだんの心電図が正常なことが多く、ご家族の中にも、症状がないまま同じ変化をもっている方がいることがある病気です。だからこそ、「心電図で何も言われなかったから」「家族に症状のある人はいないから」という印象だけで、ご自身やお子さんの将来を決めてしまわないでほしいと考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、家族歴が濃いものの、ご本人は大学を卒業して会社に勤めていた方が、念のため検査を受けたところ、染色体の微小欠失が見つかったことがあります。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。CPVTは、診断がつけば薬や生活の工夫で備えられる病気です。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、保因者検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. カテコラミン誘発性多形性心室頻拍は何人に1人の病気ですか?

遺伝性疾患の解説書(GeneReviews)では、有病率は1万人に1人かそれ以下と推定されています。ただし、正確な数はわかっていないとされています。症状が出はじめる年齢の平均は7〜12歳ですが、30歳代になって初めて症状が出た例も報告されています。

Q2. CPVTの原因は何ですか?

心臓の筋肉の細胞の中でカルシウムを出し入れするしくみに関わる遺伝子の変化が原因です。最も多いのはRYR2遺伝子の変化でCPVTの60〜70%、次に多いのはCASQ2遺伝子の変化で約5%とされています。約25%の方では、既知の遺伝子に原因が見つかりません。

Q3. ふだんの心電図が正常でもCPVTのことはありますか?

あります。CPVTの方の安静時の心電図は、ふつう正常です。診断に最も大切なのは運動負荷試験で、心拍数が上がったときに二方向性・多形性の心室頻拍が出るかどうかを確かめます。遺伝子検査は、この検査とあわせて診断を確かなものにし、ご家族の検査につなげる役割をもちます。

Q4. 運動はやめなければいけませんか?

GeneReviewsでは、CPVTの方には競技スポーツや激しい運動は勧められないとされています。どこまでの運動なら続けられるかは一人ひとりの状態で変わるため、循環器の主治医とよく相談して決めます。

Q5. 家族も検査を受けたほうがよいですか?

ご家族の原因の変化がわかっている場合、ご両親・きょうだい・お子さんには、診察と遺伝子検査を受ける機会が勧められています。CPVTは子どものうちに発症することが多く、変化をもつとわかれば、運動負荷試験で不整脈が出なくてもβ遮断薬で備えることがあります。検査の前に、遺伝カウンセリングで知ることの意味をよく考えていただきます。

Q6. 検査で原因が見つからなければ、CPVTではないのですか?

そうとは言えません。CPVTの約25%の方では、既知の遺伝子に原因が見つかりません。症状と運動負荷試験などの結果からCPVTと診断されることがあるので、引き続き循環器の主治医のもとで治療と経過観察を続けてください。

Q7. 子どもへの遺伝や、妊娠への影響はありますか?

原因の遺伝子によって違います。RYR2やCALM1〜3による型は常染色体顕性(優性)遺伝で、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎます。CASQ2やTRDNによる型は主に常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親とも保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っていますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

Q8. 遺伝性不整脈パネル(77遺伝子)とどちらを選べばよいですか?

運動負荷試験などでCPVTが強く疑われている場合は、このCPVTの9遺伝子の検査が向いています。失神や不整脈があってもどの病気かしぼれていない場合は、CPVT・QT延長症候群・ブルガダ症候群などをまとめて調べる遺伝性不整脈パネル(77遺伝子)が向いています。どちらが合うかは、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。カテコラミン誘発性多形性心室頻拍の原因がわかれば、ご自身の治療や生活の方針が決まるだけでなく、ご家族が症状の出る前に備えたり、結婚・妊娠の計画を考えたりする手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Napolitano C, Mazzanti A, Bloise R, Priori SG. Catecholaminergic Polymorphic Ventricular Tachycardia. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2004 (Updated 2022 Jun 23). [NCBI Bookshelf NBK1289]
  • [2] Walsh R, Adler A, Amin AS, et al. Evaluation of gene validity for CPVT and short QT syndrome in sudden arrhythmic death. Eur Heart J. 2022;43(15):1500-1510. [DOI: 10.1093/eurheartj/ehab687](PMID: 34557911)
  • [3] Garg R, Vogelgesang J, Kelly K. Impact of genetic counseling and testing on altruistic motivations to test for BRCA1/2: a longitudinal study. J Genet Couns. 2016;25(3):572-582. [DOI: 10.1007/s10897-015-9911-z]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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