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ヌーナン症候群とは?特徴・顔つき・寿命を専門医が解説|東京・ミネルバクリニック

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

「ヌーナン症候群の顔つきにはどんな特徴があるの?」「寿命は?」「芸能人や有名人にもいるの?」——診断を受けたばかりの方、健診で可能性を指摘された方、家族の顔立ちが気になって調べている方など、このページにたどり着く理由はさまざまだと思います。最初にお伝えしたいのは、ヌーナン症候群の顔の特徴は乳児期にいちばんはっきりしていて、大人になると目立たなくなることが多いということ、そして重い心臓病がなければ、寿命は一般の方とほぼ同じと考えられているということです。この記事では、顔つき・症状・原因遺伝子・遺伝のしかた・寿命から、NIPTで調べられる範囲までを、臨床遺伝専門医の立場から順に解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🩺 単一遺伝子疾患・出生前診断
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤ヌーナン症候群の顔つき・顔貌の特徴と、年齢による変化
  • ➤先天性心疾患・低身長など主な症状の頻度と、指定難病195であること
  • ➤PTPN11をはじめとする原因遺伝子と、遺伝のしかた(新生突然変異)・次の子への再発リスク
  • ➤寿命・予後、気づかないまま大人になる軽症例、芸能人・有名人の情報の読み方
  • ➤ヌーナン症候群はいつわかるか、NIPTで調べられる原因遺伝子と限界

⏱️ 30秒でわかる要約

👤 Q. ヌーナン症候群の顔つきの特徴は?

両目の間が広い・まぶたが下がる・目尻が下がる・耳の位置が低く後ろに傾く・首が短く両側にひだがある(翼状頸)などが特徴です。乳児期にいちばんはっきりし、大人になると目立たなくなるため、軽症の方は気づかないまま成人することもあります。

🧬 Q. NIPTはダウン症候群だけで大丈夫?

ヌーナン症候群は染色体の数の異常ではなく、1つの遺伝子の変化で起こる病気なので、ダウン症候群などを調べる染色体のNIPTでは分かりません。ミネルバクリニックのダイヤモンドプランでは、PTPN11・SOS1・RAF1・RIT1など12のヌーナン症候群の原因遺伝子を含む56遺伝子を調べます。

💗 Q. 寿命は?公表している芸能人・有名人は?

重い心臓病(特に乳児期の肥大型心筋症)がなければ、寿命は一般の方とほぼ同じと考えられています。ヌーナン症候群を公表している芸能人・有名人は少なく、確かめられる情報は限られます。

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1. ヌーナン症候群とは|基本情報と発症頻度

ヌーナン症候群は、RAS/MAPKシグナル伝達経路に関わる遺伝子の変化によって起こる生まれつきの病気です。発症頻度は1,000〜2,500人に1人と推定され、男女の差はありません[1][2]。先天性心疾患の原因となる症候群としては、ダウン症候群に次いで多いものの一つです[1]。

ヌーナン症候群は1963年に、小児循環器医のJacqueline Noonan医師が報告したことから名前がつきました。特徴的な顔立ち、先天性心疾患、低身長を主な特徴とし、症状の重さには大きな個人差があります。心臓や成長の管理を続けながら、多くの方が学校生活や仕事を送っています。病気の全体像はヌーナン症候群 総論でもまとめています。

📊 ヌーナン症候群の基本データ

疾患名 ヌーナン症候群(Noonan syndrome)
発症頻度 1,000〜2,500人に1人(男女同等)
遺伝形式 主に常染色体顕性(優性)遺伝。多くは新生突然変異(ご両親にはない新しい変化)
原因 RAS/MAPKシグナル伝達経路に関わる遺伝子の変化
難病指定 指定難病195(重症度などの基準を満たすと医療費助成の対象)[12]

RASopathy(ラソパチー)とは何か

ヌーナン症候群は「RASopathy(ラソパチー、RAS病)」と呼ばれる病気のグループの一つです。RAS/MAPK経路に関わる遺伝子の変化で起こる病気の総称で、細胞の増殖や分化、成長に広く影響します[5][6]。

💡 用語解説:RASopathy(ラソパチー)

RAS/MAPK経路は、細胞が「増えろ」「分化しろ」「止まれ」という指令を受け取るための幹線道路のようなしくみで、心臓・骨・皮膚・脳など多くの組織の発達に関わっています。この経路の遺伝子が変化すると、指令が強く出すぎてしまいます。RASopathyには、ヌーナン症候群(最も頻度が高い)のほか、CFC症候群(心臓・顔・皮膚症候群)、コステロ症候群、多発性黒子を伴うヌーナン症候群(旧名LEOPARD症候群)などが含まれ、顔立ちや心臓の病気が似ていますが、原因遺伝子と症状の詳細は異なります。経路のしくみはRAS/MAPK経路(RASopathies)で解説しています。

2. ヌーナン症候群の特徴・症状

ヌーナン症候群の主な特徴は、特徴的な顔立ち、先天性心疾患、低身長の3つです。ただし、すべての方に同じ症状が出るわけではなく、軽症のまま気づかれずに大人になる方もいます[2][3]。主な症状と頻度を表にまとめます。

🔍 ヌーナン症候群の主な症状と頻度

症状 頻度の目安 補足
特徴的な顔立ち ほぼ全員 年齢とともに変化し、大人では目立たないことが多い
先天性心疾患 約50〜80% 肺動脈弁狭窄症が最も多く(約50〜60%)、肥大型心筋症は約20%
低身長 約50〜70% 成長ホルモン治療の対象になることがある
胸の形の変化 多い 胸の上部が出て下部がへこむ形(鳩胸・漏斗胸)
停留精巣(男の子) 約60〜80% 男性の妊よう性(子どもをもつ力)に影響することがある
出血しやすさ・凝固の異常 約半数 手術や抜歯の前に凝固機能を確認する
知的障害 一部(報告では約6〜23%) 多くは軽度。知能が正常範囲の方が大半で、学習面の支援が必要なことがある

出典:GeneReviews[2]、Romanoら[3]、Robertsら[1]。頻度は報告によって幅があります。

このほか、リンパ管の形成の異常(胎児期の首のむくみや胎児水腫、リンパ浮腫)、斜視や屈折異常などの目の症状、哺乳の弱さもみられます[2]。心臓の病気がいちばん生活と予後に関わるため、診断がついたら心臓エコーで確認し、その後も定期的に経過をみていきます[3]。肥大型心筋症については肥大型心筋症 総論で解説しています。

⚠️ ヌーナン症候群に「気づかない」ことがあるのはなぜ?

症状の幅がとても広く、心臓の病気がなく、背が少し低い・顔立ちが少し独特という程度の方もいるためです。顔の特徴は大人になると目立たなくなるので、お子さんが診断されたことをきっかけに、親御さんも同じ遺伝子の変化をもっていると分かることも珍しくありません[2]。

3. ヌーナン症候群の顔つき・顔貌の特徴

ヌーナン症候群の顔つき(顔貌)には共通する特徴がありますが、年齢によって大きく変わるのが大きなポイントです。乳児期にいちばんはっきりしていて、成長とともにやわらぎ、大人になると目立たなくなることが多いとされています[2][7]。

👤 ヌーナン症候群の顔つきの特徴

部位 医学用語 どういう見た目か
目 眼間開離(がんかんかいり) 両目の間が広い
目 眼瞼裂斜下(がんけんれつしゃか) 目尻が下がっている
目 眼瞼下垂(がんけんかすい) まぶたが下がり、重く見える
耳 低位耳介・耳介後傾 耳の位置が低く、後ろに傾いている。耳たぶの縁が厚い
鼻 鼻根部の平坦 鼻の付け根が低く、鼻先が上を向いて見える
首 翼状頸(よくじょうけい)・短頸 首が短く、両側に皮膚のひだがある。うなじの髪の生え際が低い

年齢による顔つきの変化

📅 年齢ごとの顔つきの変化

年齢 顔つきの特徴
新生児期 額が高く、両目の間が広い。耳の位置が低く、首の後ろの皮膚が余ってたるんで見えることがある
乳児期 特徴が最もはっきりする時期。頭が大きめで、目が大きく、まぶたが厚い・下がって見える
幼児期〜学童期 顔がやや細長く、表情が乏しく見えることもある。特徴は少しずつやわらぐ
思春期〜成人 顔は逆三角形に近づき、特徴は目立たなくなることが多い。首のひだや鼻と唇の間のしわ(鼻唇溝)が目立つことがある

出典:GeneReviews[2]、Robertsら[1]。

写真や見た目で、ヌーナン症候群かどうか判断できる?

「ヌーナン症候群 写真」と検索して、お子さんやご自身の顔と見比べている方もいると思います。けれども、顔つきだけでヌーナン症候群かどうかを判断することはできません。両目の間が広い、耳の位置が低いといった特徴は、ヌーナン症候群でない方にもみられますし、年齢や家族の顔立ちによっても印象は変わります。逆に、ヌーナン症候群でも特徴がほとんど目立たない方もいます。

診断は、顔立ちに加えて、心臓の病気・身長・胸の形・発達などを総合的にみて、遺伝子検査で原因遺伝子の変化を確かめて行います[3]。気になる点があれば、写真で見比べるより、小児科や臨床遺伝専門医に相談するほうが確実です。

💡 ターナー症候群との違い

ヌーナン症候群は、翼状頸や低身長が似ていることから、かつて「男性版ターナー症候群」と呼ばれたことがありますが、これは正確ではありません。ヌーナン症候群は男女どちらにも起こり、原因は遺伝子の変化です。ターナー症候群は女性に起こる性染色体(X染色体)の数や形の変化で、染色体検査で分かります。

4. ヌーナン症候群の原因遺伝子

ヌーナン症候群の原因は、RAS/MAPK経路に関わる遺伝子の変化です。最も多いのはPTPN11遺伝子(約50%)で、ほかにSOS1、RAF1、RIT1、KRAS、LZTR1など、これまでに10種類以上の原因遺伝子が見つかっています[2][4]。どの遺伝子に変化があるかで、症状の傾向が少しずつ違います。

🧬 主な原因遺伝子と症状の傾向

遺伝子 頻度の目安 症状の傾向
PTPN11 約50% 肺動脈弁狭窄症が多い。出血しやすさ、低身長
SOS1 約10〜13% 心臓の病気は比較的軽いことが多く、身長は比較的高め。皮膚・髪の特徴が出やすい
RAF1 約5% 肥大型心筋症との関連が強い
RIT1 約5% 心臓の病気(肥大型心筋症を含む)が多い。胎児期のむくみなど周産期の所見が多い
KRAS 5%未満 発達の遅れが比較的多い
LZTR1・その他 数%ずつ NRAS、SHOC2、CBL、SOS2、MAP2K1、BRAF、PPP1CB、MRAS、RRAS2など

出典:GeneReviews[2]、Tartagliaら[4]、Aokiら[6]。

💡 用語解説:PTPN11遺伝子

PTPN11は、SHP2というタンパク質の設計図にあたる遺伝子です。SHP2はRAS/MAPK経路の中で細胞を増やす信号を調整しており、ヌーナン症候群で見つかる変化の多くは、この信号を強めすぎる方向に働きます。ヌーナン症候群の約半数でこの遺伝子の変化が見つかります。詳しくはPTPN11遺伝子とはをご覧ください。

なお、遺伝子検査をしても原因遺伝子が見つからない方も1〜2割ほどいます[2]。遺伝子検査で変化が見つからなくても、症状からヌーナン症候群と診断されることがある点も知っておいてください。

5. ヌーナン症候群の遺伝のしかた

ヌーナン症候群は主に常染色体顕性(優性)遺伝の形をとります。ただし、ご両親のどちらにも変化がなく、精子や卵子ができる過程で新しく生じた変化(新生突然変異・de novo変異)で起こる場合が多いとされています[2]。「ヌーナン症候群は遺伝するの?」「次の子も同じ病気になる?」という疑問に、遺伝のしかたから答えます。

💡 用語解説:常染色体顕性遺伝・de novo変異

常染色体顕性(優性)遺伝とは、2本ある遺伝子のうち片方に変化があれば症状が出る遺伝のしかたです。変化をもつ親から子に受け継がれる確率は、子ども1人ごとに50%です。de novo変異(新生突然変異)は、ご両親には変化がなく、精子や卵子ができるときに偶然生じた変化です。父親の年齢が高いほど起こりやすくなることが知られています。詳しくはDe Novo変異(新生突然変異)とはで解説しています。

👪 遺伝のしかたと次の子への影響

ケース 何が起きているか 次の子への影響
新生突然変異(多い) ご両親には変化がなく、精子や卵子ができるときに偶然生じた 再発の確率は低い。ただし生殖細胞モザイクの可能性があるため、ゼロとは言えない
親から受け継いだ ご両親のどちらかが同じ変化をもつ(軽症で気づいていないこともある) 子ども1人ごとに50%
LZTR1の一部 両親から1つずつ受け継ぐ常染色体潜性(劣性)遺伝の形をとることがある 子ども1人ごとに25%

出典:GeneReviews[2]。

お子さんがヌーナン症候群と診断されたときは、ご両親の遺伝子検査を行うと、新生突然変異か受け継いだものかが分かり、次の妊娠の確率をより正確に見積もれます。次の子の再発リスクについてはヌーナン症候群は遺伝する?次の子の再発リスクで詳しく解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「次の子も?」という不安に向き合うとき】

上のお子さんがヌーナン症候群と分かったご家族が、次の妊娠を考えるときにまず知りたいのは「また同じことが起こるのか」だと思います。ヌーナン症候群の多くは新生突然変異で、その場合、次のお子さんが同じ病気になる確率は高くありません。

ただし、ご両親の遺伝子を調べないまま「新生突然変異だから大丈夫」と言い切ることはできません。親御さん自身が軽症で気づいていないこともありますし、ごくまれに、精子や卵子の一部にだけ変化がある「生殖細胞モザイク」で次の子にも起こることがあります。だからこそ、まず家族の中で何が起きているのかを確かめ、そのうえで次の妊娠でどこまで調べるかを決めることが大切だと考えています。

6. ヌーナン症候群はいつわかる?診断時期と方法

ヌーナン症候群は、妊娠中から大人になるまで、さまざまな時期に分かる可能性があります。生まれた後に心雑音や発育の遅れで気づかれることが多い一方、軽症の方は大人になるまで分からないこともあります。妊娠中には、エコーの所見をきっかけに疑われたり、単一遺伝子まで調べるNIPTで可能性が分かったりします。

妊娠中エコー所見・NIPT・羊水検査
▶
新生児〜乳児心雑音・顔立ち・哺乳
▶
幼児〜学童低身長・発達
▶
成人子の診断で親も判明

🔍 診断される時期ときっかけ

時期 きっかけ・方法
妊娠中 エコーで首のむくみ(NT肥厚)・嚢胞性ヒグローマ・胎児水腫・羊水過多・心臓の異常などが見つかる。単一遺伝子まで調べるNIPTで可能性が分かる。確定には羊水検査・絨毛検査で遺伝子を調べる
新生児〜乳児期 心雑音、特徴的な顔立ち、哺乳の弱さや体重の増えにくさから疑われることが多い
幼児期〜学童期 低身長や発達・学習面の心配をきっかけに分かる
成人期 軽症では大人まで分からないことも。子どもの診断をきっかけに親が分かることもある

妊娠中に疑われるエコー所見

妊娠中のエコーで次のような所見があるとき、ヌーナン症候群を含むRASopathyが原因の一つとして考えられます[2]。染色体検査で異常がなかったのに首のむくみが強かった場合は、染色体の検査だけでは分からない単一遺伝子の病気を考える意味があります。

  • 首のむくみ(NT)の肥厚・嚢胞性ヒグローマ
  • 胎児水腫・胸水
  • 羊水過多
  • 心臓の異常(肺動脈弁狭窄・心筋の肥厚など)

💡 用語解説:NT(首のうしろのむくみ)

NT(Nuchal Translucency)は、妊娠11〜13週ごろにエコーで測る、赤ちゃんの首のうしろの皮下の液体のたまりの厚さです。NTが厚い場合、ダウン症候群などの染色体の病気のほか、ヌーナン症候群などの単一遺伝子の病気の可能性も高くなることが知られています。何ミリから気をつけるかはエコーで首のむくみ(NT肥厚)は何ミリから?で、胎児水腫については胎児水腫の原因で解説しています。

生まれた後の診断方法

生まれた後は、顔立ちや体の特徴を診察で確認し、心臓エコー、身長や発達の評価、血液の凝固検査などを行います。そのうえで、ヌーナン症候群・RASopathyの原因遺伝子をまとめて調べる遺伝子パネル検査で原因遺伝子の変化を確かめます[3]。ミネルバクリニックではNoonan症候群・RASopathies遺伝子パネル検査も扱っています。

7. ヌーナン症候群の寿命・平均寿命と予後

ヌーナン症候群の寿命について、まとまった統計は多くありません。そのうえで、重い心臓の病気がなければ、寿命は一般の方とほぼ同じと考えられています[1][2]。予後をいちばん左右するのは心臓の病気、特に乳児期に心不全を伴う肥大型心筋症で、この場合は注意深い管理が必要です[2]。

英国で112人を平均12年ほど追跡した研究では、成人になった方の多くは大きな医療的問題なく生活しており、心臓の病気は長期にわたって経過をみる必要があることが報告されています[8]。ヌーナン症候群は「治す」病気ではなく、心臓・成長・発達などを定期的に確認しながら付き合っていく病気です。

📊 予後に関わる要因と対策

要因 影響 対策
先天性心疾患 重い場合は生命予後に関わる 定期的な心臓エコー、必要に応じてカテーテル治療や手術
肥大型心筋症 乳児期に心不全を伴うと予後が悪い 小児循環器医による管理
血液の腫瘍 小児期の白血病(若年性骨髄単球性白血病など)がやや多い 乳幼児期の血液検査や診察での確認
出血しやすさ 手術や抜歯で出血が多くなることがある 事前の凝固機能の検査

出典:GeneReviews[2]、Romanoら[3]。

身長と成長ホルモン治療

ヌーナン症候群では、生まれたときの身長は正常範囲でも、その後の伸びがゆるやかになり、大人の身長は一般より低めになることが多いとされています(欧米の報告で男性約162cm、女性約152cm前後)[2]。日本では、ヌーナン症候群による低身長に対する成長ホルモン治療が保険で認められています。効果には個人差があり、肥大型心筋症がある場合は慎重に判断するため、適応は小児内分泌の専門医と相談します。

学校・仕事・結婚・出産

知能が正常範囲の方が多く、通常学級で学ぶお子さんも多くいます。学習面や運動面で支援が必要な場合は、通級指導や特別支援教育を組み合わせます。大人になってから仕事をし、結婚・出産をしている方もいます。ただし、ご本人がヌーナン症候群の場合、お子さんに受け継がれる確率は1人ごとに50%なので、妊娠を考える段階で遺伝カウンセリングを受けておくと選択肢を整理しやすくなります。

8. ヌーナン症候群の芸能人・有名人

「ヌーナン症候群 芸能人」「ヌーナン症候群 有名人」と検索する方は多いのですが、ヌーナン症候群を公表している芸能人・有名人は少なく、確かめられる情報は限られます。このページでは、本人が公表し、出典を示せる情報だけを扱う方針にしているため、個人名は挙げていません。

インターネット上には、顔立ちや身長から「あの人はヌーナン症候群では」と推測する書き込みもありますが、前の章でお伝えしたとおり、ヌーナン症候群は見た目だけで判断できず、大人では特徴が目立たないことも多い病気です。本人が公表していない病名を推測することは、誤りである可能性が高いうえ、ご本人や同じ病気をもつ方を傷つけることにもつながります。

一方で、ヌーナン症候群をもちながら、心臓や成長の管理を続けて、学業・仕事・家庭生活を送っている方は国内外に大勢います。患者会や家族会では、当事者やご家族が経験を発信しています。ヌーナン症候群があるかどうかは、その人の可能性を決めるものではありません。

9. NIPTでヌーナン症候群を検査できる?

一般的なNIPTは、ダウン症候群(21トリソミー)などの染色体の数の変化を調べる検査です。ヌーナン症候群は染色体の数ではなく、1つの遺伝子の変化で起こるため、染色体だけを調べるNIPTではヌーナン症候群は分かりません。調べるには、単一遺伝子まで対象にしたNIPTが必要です。

ミネルバクリニックでは、ダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子)で、ヌーナン症候群の原因遺伝子を調べられます。ただし、調べられるのは各プランの遺伝子リストに入っている原因遺伝子だけです。

🧬 当院のNIPTで調べられるヌーナン症候群の原因遺伝子

プラン 遺伝子リストに入っているヌーナン症候群の原因遺伝子
ダイヤモンドプラン(56遺伝子) PTPN11・SOS1・SOS2・RAF1・RIT1・KRAS・NRAS・SHOC2・CBL・MAP2K1・MAP2K2・BRAF(12遺伝子)。コステロ症候群のHRASも含む
インペリアルプラン(最大155遺伝子) PTPN11・SOS1・RAF1・KRAS・BRAF・MAP2K1・MAP2K2(リストで確認できたもの)。コステロ症候群のHRASも含む
ダイヤモンドプランの対象外 LZTR1・PPP1CB・MRAS・RRAS2

※PTPN11・SOS1・RAF1・RIT1・KRASで、ヌーナン症候群の原因の大部分を占めます[2]。ただし、リストにない遺伝子が原因のヌーナン症候群や、原因遺伝子が分からないヌーナン症候群は、この検査では分かりません。

単一遺伝子NIPTの精度と限界

ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※で検査します。

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

超音波検査で赤ちゃんの異常が疑われた妊婦さんを対象にした研究では、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件、60.7%増)に増えたと報告されています。この研究での単一遺伝子の検査の感度は98.5%、特異度は99.3%でした[9]。ハイリスクの妊婦さんでの結果で、すべての妊婦さんに同じ数字があてはまるわけではありません。

一方で、知っておいていただきたい限界もあります。

  • NIPTはスクリーニング検査です。陽性の場合は、羊水検査や絨毛検査で確かめる必要があります。
  • 母体の血液にはお母さん自身のDNAも含まれるため、お母さんがもつ変化を赤ちゃんが受け継いだ場合は、この方法では見分けにくいとされています[11]。ご両親のどちらかがヌーナン症候群と分かっている場合は、確定検査での遺伝子検査を検討してください。
  • 陰性はヌーナン症候群を完全に否定するものではありません。リストにない遺伝子や、検査で拾えない種類の変化は分かりません。
仲田洋美院長

🩺 院長コラム【出生前に「知る」ことの意味】

NIPTでヌーナン症候群を調べるかどうかは、ご夫婦が決めることです。そのうえで医師として伝えたいのは、出生前に分かっていれば、生まれる施設を心臓の診療ができる病院にする、生まれた直後から心臓の検査を受けられるよう準備する、といった備えができるという点です。ヌーナン症候群は半数以上に心臓の病気を伴います。知ることが、赤ちゃんを守る最初の一歩になりうると考えています。

一方で、「陽性と言われたらどうしたらいいか分からない」という不安も自然な感情です。だからこそ、検査を受ける前に、何が分かり、何が分からないのか、陽性だったらどうするのかまで一緒に考えておくことが大切だと考えています。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

NIPTというとダウン症候群を思い浮かべる方が多いのですが、出生前に見つかる病気はダウン症候群だけではありません。ヌーナン症候群のような単一遺伝子の病気は、1つひとつはまれでも、わずか30遺伝子・25疾患を合わせただけで約600人に1人(0.17%)の頻度になると報告されています[10][11]。これは、ダウン症候群の出生頻度(全体で約700人に1人)と同じくらいです。

三大トリソミー(13・18・21番)は出生前検査で広く調べられている基本の項目です。ミネルバクリニックでは、いちばん基本のスタンダードプランでも、22q11.2欠失症候群を含む微小欠失まで調べます。また、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは、レット症候群やソトス症候群など、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因になる遺伝子の変化も調べられます(すべての自閉症・発達障害が分かるわけではなく、陰性でもその心配がなくなるわけではありません)。

料金は調べる範囲が広いほど上がりますが、1つの病気あたりで考えると、範囲が広いプランほど1項目あたりの費用は下がります。

🧮 1つの病気あたりで考える(仮に三大トリソミーのみを10万円とした場合との比較)

プラン 主な検査範囲 項目数 料金 1項目あたり
(仮)三大トリソミーのみ 13・18・21番 3 100,000円(仮) 約33,333円
スタンダード 13・18・21番+性染色体4種類+微小欠失6種類 13 220,000円 約16,923円
プレミアム 13・18・21・15・16・22番+性染色体4種類+微小欠失12種類 22 264,000円 約12,000円
ダイヤモンド プレミアムの範囲+単一遺伝子56(ヌーナン症候群を含む) 78 407,000円 約5,218円
インペリアル 全常染色体+性染色体+微小欠失・重複92種類+5Mb超の構造異常+単一遺伝子最大155遺伝子(202疾患) 320+α 550,000円 約1,719円

※料金は事前学習動画を見てご来院いただいた場合の当日割引後の税込金額です。三大トリソミーのみの10万円は比較のための仮の金額です。項目数は染色体の数の変化・微小欠失の種類・単一遺伝子の数を足したもので、検査範囲を比べる目安です。双子の方は双子マックスプランをご覧ください。陰性の結果は、すべての病気がないことを保証するものではありません。

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10. ミネルバクリニックのサポート体制

ミネルバクリニックは、臨床遺伝専門医が常駐する遺伝専門のクリニックです。ヌーナン症候群を含む単一遺伝子の病気について、検査の選び方から陽性時の確定検査まで、次の体制で対応しています。

🏥 NIPTを受ける前に知っておきたい当院の体制

受けられる時期 妊娠9週から。妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます
結果までの目安 基本は10〜14日。インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間(ダイヤモンドプランは単一遺伝子も10〜14日)
担当する医師 常駐する臨床遺伝専門医が、90分の受診枠の中で遺伝カウンセリングを行います
陽性だったとき 陽性のカウンセリングは何度でも無料。確定検査(羊水検査・絨毛検査)も院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます
互助会 カトレア会(8,000円)で陽性時の羊水検査の費用を上限なく補助。安心検査結果保障制度(6,000円)は、流産で再検査ができず結果が出ない場合に備える互助会です。どちらもNIPTを受ける方の全員加入です
遠方の方 オンラインNIPTで、全国110か所の提携施設で採血できます

まとめ

ヌーナン症候群は、RAS/MAPK経路の遺伝子の変化で起こる生まれつきの病気で、1,000〜2,500人に1人と比較的よくみられ、指定難病195に指定されています。

  • 顔つき:両目の間が広い・目尻が下がる・耳の位置が低い・翼状頸など。乳児期にいちばんはっきりし、大人では目立たないことが多い
  • 主な症状:先天性心疾患(肺動脈弁狭窄症が最多)・低身長・胸の形の変化
  • 遺伝のしかた:多くは新生突然変異。親がもっている場合は子ども1人ごとに50%
  • 寿命:重い心臓の病気がなければ一般の方とほぼ同じと考えられている
  • 芸能人・有名人:公表している人は少なく、確かめられる情報は限られる
  • NIPT:染色体だけのNIPTでは分からない。ダイヤモンドプラン・インペリアルプランで、遺伝子リストに入っている原因遺伝子を調べられる

よくある質問(FAQ)

Q1. ヌーナン症候群の顔つきにはどんな特徴がありますか?

両目の間が広い、目尻が下がる、まぶたが下がる、耳の位置が低く後ろに傾く、首が短く両側に皮膚のひだがある(翼状頸)などが特徴です。乳児期にいちばんはっきりし、成長とともにやわらいで、大人では目立たなくなることが多いとされています。顔つきだけで診断することはできず、心臓の病気や身長などとあわせて、遺伝子検査で確かめます。

Q2. NIPTはダウン症候群だけで大丈夫ですか?

ダウン症候群などの染色体の数の変化を調べるNIPTでは、ヌーナン症候群のような単一遺伝子の病気は分かりません。単一遺伝子の病気は1つひとつはまれでも、30遺伝子・25疾患を合わせると約600人に1人と報告され、ダウン症候群の出生頻度と同じくらいです。ミネルバクリニックのダイヤモンドプランは、ヌーナン症候群の原因遺伝子12個を含む56遺伝子を、インペリアルプランは最大155遺伝子を調べます。

Q3. ヌーナン症候群の寿命はどのくらいですか?

まとまった統計は多くありませんが、重い心臓の病気がなければ、寿命は一般の方とほぼ同じと考えられています。予後をいちばん左右するのは心臓の病気、特に乳児期に心不全を伴う肥大型心筋症です。定期的に心臓の検査を受け、必要に応じて治療を行います。

Q4. ヌーナン症候群を公表している芸能人・有名人はいますか?

ヌーナン症候群を公表している芸能人・有名人は少なく、確かめられる情報は限られます。インターネット上には見た目から推測した書き込みもありますが、ヌーナン症候群は見た目だけで判断できず、大人では特徴が目立たないことも多いため、本人が公表していない情報は誤りの可能性が高いと考えてください。

Q5. ヌーナン症候群に気づかないまま大人になることはありますか?

あります。症状の幅が広く、心臓の病気がなく、背が少し低い・顔立ちが少し独特という程度の方もいるためです。顔の特徴は大人になると目立たなくなるので、お子さんが診断されたことをきっかけに、親御さんも同じ遺伝子の変化をもっていると分かることもあります。

Q6. ヌーナン症候群はいつわかりますか?

妊娠中から大人になるまで、さまざまな時期に分かります。妊娠中はエコーで首のむくみや胎児水腫などが見つかったり、単一遺伝子まで調べるNIPTで可能性が分かったりして、羊水検査・絨毛検査で確かめます。生まれた後は、心雑音や顔立ち、体重の増えにくさ、低身長などをきっかけに分かることが多く、軽症の方は大人まで分からないこともあります。

Q7. 写真を見れば、ヌーナン症候群かどうか分かりますか?

写真や見た目だけでは判断できません。両目の間が広いなどの特徴はヌーナン症候群でない方にもみられ、年齢や家族の顔立ちでも印象は変わります。気になる点があれば、小児科や臨床遺伝専門医に相談してください。

Q8. 第1子がヌーナン症候群でした。次の子どもも同じ病気になりますか?

多くは新生突然変異で、ご両親に変化がなければ、次のお子さんが同じ病気になる確率は高くありません。ただし、生殖細胞モザイクの可能性があるためゼロとは言えず、親御さんが軽症で気づいていない場合は1人ごとに50%になります。ご両親の遺伝子検査で、どちらの場合かを確かめることができます。

Q9. NIPTでヌーナン症候群が陽性だった場合、どうすればいいですか?

NIPTはスクリーニング検査なので、羊水検査や絨毛検査で確かめる必要があります。ミネルバクリニックでは確定検査も院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性のカウンセリングは何度でも無料で、互助会(カトレア会)で羊水検査の費用が補助されます。

Q10. ヌーナン症候群は指定難病ですか?医療費助成は受けられますか?

はい、ヌーナン症候群は指定難病195です。重症度などの基準を満たす場合に医療費助成を受けられます。お子さんの場合は小児慢性特定疾病の制度が使えることもあります。手続きはお住まいの地域の保健所などにご確認ください。

Q11. ヌーナン症候群とターナー症候群は同じ病気ですか?

いいえ、異なる病気です。ヌーナン症候群は男女どちらにも起こり、RAS/MAPK経路の遺伝子の変化が原因です。ターナー症候群は女性に起こるX染色体の数や形の変化が原因です。翼状頸や低身長など似た特徴はありますが、原因も調べ方も異なります。

Q12. 成長ホルモン治療は受けられますか?

日本では、ヌーナン症候群による低身長に対する成長ホルモン治療が保険で認められています。効果には個人差があり、肥大型心筋症がある場合は慎重に判断するため、適応は小児内分泌の専門医と相談してください。

🏥 ヌーナン症候群の原因遺伝子まで調べるNIPTを選ぶために

臨床遺伝専門医が常駐し、ダイヤモンドプランではヌーナン症候群の原因遺伝子12個を含む56遺伝子を調べます。陽性なら確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。

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参考文献

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や検査については、主治医・専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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