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ヌーナン症候群はNIPTでわかる – 検査と診断時期について


ヌーナン症候群は、顔の特徴的な外見や心臓の問題、低身長などを特徴とする比較的多い遺伝性疾患です。この記事では、ヌーナン症候群がいつ診断できるのか、特にNIPT(非侵襲的出生前検査)での検出可能性について解説します。

ヌーナン症候群とは

ヌーナン症候群は、約1,000〜2,500人に1人の割合で発症する常染色体優性の遺伝性疾患です。主な特徴には

  • 特徴的な顔貌(広く離れた目、低位耳介など)
  • 先天性心疾患(特に肺動脈弁狭窄症)
  • 低身長
  • 発達の遅れや学習障害
  • その他の身体的特徴(首のひだ、胸郭の異常など)

ヌーナン症候群はいつわかるのか?

ヌーナン症候群の診断時期は症状の程度によって大きく異なります。

出生前診断

  • 妊娠中のエコー検査:胎児のむくみ、頚部浮腫、心臓の異常などが見られた場合に疑われることがあります
  • 羊水検査やCVS:侵襲的な検査で遺伝子検査が可能です
  • NIPT:新しい検査方法として注目されています

出生後の診断

  • 新生児期:明らかな特徴がある場合(心臓の異常、特徴的な外見など)
  • 乳幼児期:発育や発達の遅れが目立ってきた場合
  • 学童期以降:軽症例では成長障害や学習の問題が表面化してから診断されることも

NIPTでヌーナン症候群は検出できるのか?

最近の研究と技術の進歩により、NIPTでヌーナン症候群の原因となる遺伝子変異を検出できるようになってきました。特に超音波検査で異常が見られる胎児において有効性が示されています。

NIPTの特性

  • 母体の血液から胎児のDNAを検査する非侵襲的方法
  • 従来はダウン症候群などの染色体異常の検出に使用されていた
  • 技術の進歩により単一遺伝子疾患の検出も可能に

ミネルバクリニックのNIPT検査

ミネルバクリニックでは、ヌーナン症候群の主要な原因遺伝子を含むNIPT検査を提供しています。

検査可能な遺伝子一覧

  • PTPN11:ヌーナン症候群の約50%を占める最も一般的な原因遺伝子
  • SOS1:10〜15%の症例に関連、特徴的な顔貌と皮膚の異常
  • RAF1:心筋肥大が多い症例に関連
  • RIT1:新生児期からの心疾患が多い
  • KRAS:重症例に多い、神経発達の遅れも目立つ
  • NRAS:比較的まれ
  • SHOC2:ヌーナン様症候群(特有の髪の特徴と発達障害)
  • CBL:白血病などの血液異常と関連
  • SOS2:最近追加された原因遺伝子
  • MAP2K1:RAS/MAPK経路関連遺伝子
  • MAP2K2:ヌーナン症候群関連症候群(CFC症候群)
  • HRAS:コステロ症候群
  • BRAF:カルジオフェイシャルカタラクター(CFC)症候群

NIPTの感度と特異度

NIPTによるヌーナン症候群の検出は、特に超音波検査で異常が見られる胎児において有効です。

  • 頚部嚢胞性水腫(cystic hygroma)がある胎児での検出率は約17%
  • 羊水過多、胎児水腫、腎臓の異常などを伴う場合は検出率が高まる

ヌーナン症候群を疑うべき出生前の所見

妊娠中に以下の所見があると、ヌーナン症候群の可能性が高まります。

  1. 増加した頚部透明帯(NT):最も一般的な所見
  2. 拡張した頚部リンパ嚢/嚢胞性水腫
  3. 腹水や胎児水腫
  4. 腎臓の異常(水腎症など)
  5. 心筋肥大や先天性心疾患
  6. 羊水過多
  7. 四肢の軽度短縮
  8. 相対的な頭囲拡大

ヌーナン症候群の合併症

ヌーナン症候群は全身に影響を及ぼす可能性があり、以下のような合併症が知られています。

心臓の問題

患者の80%以上に心臓の異常が見られます。

  • 肺動脈弁狭窄症(最も一般的)
  • 心房中隔欠損症
  • 肥大型心筋症(約20%)
  • その他の心臓異常

発達と行動の問題

  • 発達の遅れ(特に運動発達と言語発達)
  • 学習障害
  • 注意欠陥多動性障害(ADHD)
  • 自閉症スペクトラム障害

その他の合併症

  • 出血傾向と凝固障害
  • リンパ浮腫
  • 眼の異常(斜視、乱視など)
  • 聴覚障害
  • 悪性腫瘍リスクの上昇(特にJMML:若年性骨髄単球性白血病)

出生後の確定診断

ヌーナン症候群の確定診断には、以下のアプローチが使用されます。

  1. 臨床的評価:特徴的な身体的特徴の評価
  2. 遺伝子検査:「ヌーナン症候群」または「RASopathy」パネル検査で多くの関連遺伝子を一度に検査

まとめ

ヌーナン症候群は、出生前(特に妊娠20週前後の超音波検査)から成人期まで、様々な時期に診断される可能性があります。NIPTは、特に胎児エコーで異常が見られる場合に、侵襲的な検査の前に考慮できる選択肢となっています。ミネルバクリニックのNIPTでヌーナン症候群の原因遺伝子が見つかると、お子さんは発症すると考えられます。

胎児に異常所見がある場合や、家族にヌーナン症候群の既往がある場合は、専門の医療機関での遺伝カウンセリングを受けることが重要です。早期診断によって、適切な医療管理と支援を早期から開始することができます。

遺伝カウンセリングの予約

参考文献

  1. Mendez HM, Opitz JM. Noonan syndrome: a review. Am J Med Genet 1985; 21:493.
  2. Sharland M, Burch M, McKenna WM, Paton MA. A clinical study of Noonan syndrome. Arch Dis Child 1992; 67:178.
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  4. Croonen EA, Nillesen WM, Stuurman KE, et al. Prenatal diagnostic testing of the Noonan syndrome genes in fetuses with abnormal ultrasound findings. Eur J Hum Genet 2013; 21:936.
  5. Lee KA, Williams B, Roza K, et al. PTPN11 analysis for the prenatal diagnosis of Noonan syndrome in fetuses with abnormal ultrasound findings. Clin Genet 2009; 75:190.

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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