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CPM(限局性胎盤モザイク)診断の最新エビデンス | 羊水穿刺検査の有効性とNIPTとの関連

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

絨毛検査(CVS)やNIPTで染色体の異常が見つかったとき、「赤ちゃんに異常があるのか、それとも胎盤だけの変化なのか」は、とても切実な問いです。このとき関わってくるのがCPM(限局性胎盤モザイク:Confined Placental Mosaicism)です。CPMは、胎盤の細胞にだけ染色体の変化があり、赤ちゃん本人の染色体は正常という状態で、絨毛検査の約1〜2%にみられます[1]。この記事では、CPMが疑われたときの確定診断――羊水検査をいつ・なぜ受けるのか、UPD(片親性ダイソミー)の追加検査はどの染色体で必要か――を、臨床遺伝専門医の立場から順に解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約10分
🧬 CPM・羊水検査・UPD
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤CPM(限局性胎盤モザイク)の定義、見つかる確率、3つのタイプ
  • ➤NIPTが陽性でも胎児は正常なことがある理由と、確定検査が必要な理由
  • ➤CPMが疑われたときに絨毛検査ではなく羊水検査で確かめる理由と、受ける時期(妊娠15週以降)
  • ➤16トリソミーのCPMと胎児の発育・妊娠高血圧腎症の関係
  • ➤UPD(片親性ダイソミー)の追加検査が勧められる6・7・11・14・15・20番と関連する症候群

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 胎盤モザイク(CPM)とは?どのくらいの確率で見つかる?

胎盤の細胞にだけ染色体の変化があり、赤ちゃん本人の染色体は正常な状態です。絨毛検査を受けた妊娠の約1〜2%にみられると報告されています。NIPTが陽性なのに赤ちゃんは正常だった、という「偽陽性」の原因の一つでもあります。

🔬 Q. CPMが疑われたら、どう確かめる?

絨毛は胎盤の組織なので、妊娠15週以降の羊水検査で赤ちゃん本人の細胞の染色体を調べます。異常が6・7・11・14・15・20番の染色体にあった場合は、UPD(片親性ダイソミー)の追加検査も勧められています。

👶 Q. 羊水検査が正常なら、赤ちゃんへの影響は?

赤ちゃんの染色体は正常と考えられます。ただし16トリソミーのCPMでは、出生体重が3パーセンタイル未満になる割合が高いと報告されており、超音波で発育を見ていきます。16番以外のCPMでは、妊娠経過が悪くなる割合は低いとされています。

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当院は羊水検査・絨毛検査を院内で行い、主要な検査項目は3日以内に結果をお返しします。

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CPM(限局性胎盤モザイク)とは

CPM(Confined Placental Mosaicism:限局性胎盤モザイク、胎盤性モザイクとも呼ばれます)とは、胎盤の細胞に染色体の変化がみられるものの、赤ちゃん(胎児)本人の染色体は正常である状態を指します[1]。もともとは、原因の分からない胎児発育不全で生まれた赤ちゃんの胎盤を調べる中で見つかった現象です[2]。現在は、絨毛検査(CVS)やNIPTをきっかけに見つかることが多く、妊娠の管理に関わる大切な所見です。

💡 用語解説:モザイクとは

モザイク(Mosaicism)とは、同じ一人の体の中に、染色体の構成が違う細胞の集まりが混ざっている状態です。受精後の細胞分裂の途中で、一部の細胞の染色体がうまく分かれないことなどで生じます。CPMは、その「違う細胞」が胎盤にだけあり、赤ちゃん本人にはない、というパターンです。モザイク全体の考え方はNIPTのモザイクとは?胎盤限局性モザイクが偽陽性・偽陰性を起こすしくみで解説しています。

CPMはどのくらいの確率で見つかる?

日本産婦人科医会の解説では、絨毛検査で染色体を調べた妊娠の1〜2%にCPMが報告されているとされています[1]。CPMの概念をまとめたKalousekらの総説でも、絨毛検査を受けた妊娠の約2%とされています[2]。ここでいう確率は「絨毛検査を受けた妊娠」の中での割合で、すべての妊娠で同じ割合とは限りません。

CPMができるしくみは大きく2つあります。1つは、受精後の体細胞分裂で胎盤側の細胞にだけ染色体の数の変化が起こる場合です。もう1つは、受精卵の段階ですでにトリソミー(染色体が1本多い状態)だったものが、細胞分裂の途中で余分な1本を失って赤ちゃん側だけ正常に戻る「トリソミーレスキュー」による場合です[1]。後者は、あとで述べるUPD(片親性ダイソミー)につながることがあります。

CPMの3つのタイプ

CPMは、絨毛のどの細胞層に染色体の変化があるかで3つのタイプに分けられます[1]。タイプによって、羊水検査で赤ちゃんにも同じ変化が確かめられる割合が違うため、確定診断の考え方に関わる分類です。

🧬 CPMのタイプと、羊水で胎児にも確認された割合

タイプ 染色体の変化がある細胞 羊水でも変化が確かめられた割合
タイプⅠ 細胞性栄養膜(直接法で調べる層)だけ 約4%
タイプⅡ 間葉系の芯(培養法で調べる層)だけ 約12%
タイプⅢ 細胞性栄養膜と間葉系の芯の両方 約35%

出典:Grati(J Clin Med, 2014)の絨毛検査モザイク886例の集計[3]。「羊水でも変化が確かめられた割合」は、同じ層に変化があった例のうち、羊水でも異常があった(真の胎児モザイクだった)例の割合です。タイプⅡの値は、論文の表の件数から当院で計算したものです。

同じ集計では、絨毛でモザイクが見つかった886例のうち、タイプⅠが34.8%、タイプⅡが42.3%、タイプⅢが10.2%で、羊水にも異常があった真の胎児モザイクは計12.8%でした[3]。つまり、絨毛でモザイクが見つかっても、多くは胎盤だけの変化です。一方で、両方の層に変化があるタイプⅢでは、胎児にも及んでいる割合が高くなります。

🔬 用語解説:絨毛検査(CVS)とは

絨毛検査(CVS:Chorionic Villus Sampling)とは、胎盤のもとになる組織(絨毛)を少量採って、染色体を調べる検査です。早い時期に結果を出せる利点がある一方、調べているのは胎盤の細胞なので、CPMがあると赤ちゃん本人の染色体と違う結果が出ることがあります。この食い違いを確かめるために、羊水検査を追加します[1]。検査の流れは絨毛検査についてで解説しています。

NIPTとCPMの関係――偽陽性の原因として

NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液に流れている胎児由来のDNAの断片(cell-free DNA)を調べる検査です。ところが、この「胎児由来」のDNAの大部分は、赤ちゃん本人ではなく胎盤の絨毛の細胞から出てきたものです[1]。そのため、胎盤と赤ちゃんの染色体が食い違うCPMがあると、NIPTの結果が赤ちゃんの実際と一致しないことがあります。

CPMがNIPT偽陽性の原因となるメカニズム

胎盤だけに染色体の変化がある場合、お母さんの血液中のDNAには、その変化をもつ胎盤由来のDNAが混ざります。NIPTはこれを赤ちゃんの染色体の変化として検出することがあり、結果として偽陽性(実際には赤ちゃんの染色体は正常なのに陽性と出ること)になります[1]。偽陽性の原因全体はNIPT偽陽性の確率は?原因を専門医が解説で整理しています。

⚠️ NIPTが「偽陽性」になりやすいケース

13・18・21番以外の染色体のトリソミー(まれな常染色体トリソミー)でNIPTが陽性になった場合は、CPMが背景にあることが多いとされています[4]。陽性の結果だけで判断せず、確定検査で赤ちゃん本人の染色体を確かめることが欠かせません。

確定検査(羊水穿刺)が不可欠な理由

NIPTはスクリーニング検査で、陽性の結果が出たときには、それが本当に赤ちゃんの染色体の変化を表しているのかを確かめる確定検査が必要です。羊水の中には赤ちゃんの皮膚や尿路などからはがれた細胞が浮かんでおり、これを調べることで赤ちゃん本人の染色体を直接調べることができます。胎盤の細胞を調べるわけではないので、CPMなのか、赤ちゃんにも変化があるのかを見分けられます[1]。陽性後の流れはNIPT陽性結果の意味するもので解説しています。

💡 用語解説:cell-free DNA(セルフリーDNA)と胎児分画

cell-free DNA(cfDNA)とは、血液中に浮かんでいる、細胞の外に出たDNAの断片のことです。妊娠中は、胎盤の細胞が入れ替わるたびにそのDNAがお母さんの血液に出てきます。胎児分画(Fetal Fraction)は、血液中のcfDNA全体に占める胎児・胎盤由来のDNAの割合です。CPMでは、この胎児・胎盤由来のDNAに胎盤だけの染色体の変化が含まれるため、偽陽性につながることがあります。

当院のNIPTでCPMが関わる場面

CPMは、どの染色体を調べるNIPTを受けたかで、出会う可能性が変わります。ミネルバクリニックのプレミアムプランとダイヤモンドプランは、13・18・21番に加えて15・16・22番のトリソミーも対象にしています。この3つは、流産や胎盤のモザイクとの関わりが知られている染色体です。16番は胎盤の機能と赤ちゃんの発育に、15番はUPD(プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群)に関係するため、陽性になったときは「CPMかどうか」と「UPDの追加検査が必要かどうか」までを考えます。22番のトリソミーでNIPT陽性となり羊水検査が正常だった事例はトリソミー22のNIPT陽性から羊水検査陰性へで、16トリソミーそのものについては16トリソミーは流産原因No.1【全染色体検査ガイドVol.2】で解説しています。

全常染色体を調べる双子マックスプラン・インペリアルプランでも、まれなトリソミーが陽性になれば同じ考え方をします。13・18・21番と性染色体を調べるスタンダードプランでも、陽性の結果がCPMによることはあります。どのプランでも、陽性なら羊水検査・絨毛検査を院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイは2週間ほどで結果が出ます。陽性のときのカウンセリングは何度でも無料です。

CPM診断における羊水穿刺検査の役割

標準的な診断プロトコルの妥当性

絨毛検査で染色体のモザイクが見つかった場合は、羊水検査で赤ちゃん本人の染色体を調べ直すことが必要とされています[1]。羊水の染色体が正常であれば、変化は胎盤に限られたもの(CPM)と診断され、赤ちゃんの染色体は正常と判断されます。反対に羊水でも同じ変化があれば、赤ちゃん本人にもモザイクがある「真の胎児モザイク」です。

NIPTで陽性になった場合も同じ考え方です。特に13・18・21番以外のまれなトリソミーや、モザイクが疑われる結果では、胎盤の組織を調べる絨毛検査では同じCPMを拾ってしまう可能性があるため、羊水検査で確かめることを考えます。絨毛検査と羊水検査の選び方はNIPT陽性後の確定検査:絨毛検査と羊水検査の選び方で解説しています。

羊水検査はいつ受ける?――妊娠15週以降が基本

羊水検査は、妊娠15週以降に行うのが基本です。妊娠15週より前に行う早期羊水穿刺は、15週以降の羊水検査に比べて安全性が劣り、生まれた赤ちゃんの内反足(足が内側に曲がる状態)が4.7%対2.7%と多かったことが、複数の臨床試験をまとめたコクランレビューで示されています[6]。絨毛検査でモザイクが見つかった場合も、NIPTが陽性だった場合も、15〜16週以降の羊水検査で赤ちゃんの染色体を確かめる流れになります。受ける時期の詳細は羊水検査はいつからいつまで?で解説しています。

診断の流れと各検査の役割

絨毛検査やNIPTで染色体の変化が見つかったとき、それが胎盤だけのもの(CPM)なのか、赤ちゃんにも及んでいるのかを見分けることが重要です。この見分けで決め手になるのが羊水検査です。

CPM診断の流れ(CVS→羊水穿刺→核型確認)

① 絨毛・NIPTで変化胎盤由来の細胞・DNAの結果
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② 羊水検査妊娠15週以降、胎児の細胞を調べる
▶
③ 結果の解釈正常ならCPM、異常なら胎児モザイク
▶
④ 追加の確認染色体によりUPD検査・超音波で発育

🔬 用語解説:核型(カリオタイプ)とは

核型とは、細胞の中の染色体を染め分けて、その数と形を顕微鏡で確かめたものです。正常な核型は46本(22対の常染色体と2本の性染色体)です。羊水検査で得た赤ちゃんの細胞を培養して核型を調べることで、赤ちゃん本人に染色体の変化があるかどうかを判定できます。小さな欠失・重複まで調べる場合はマイクロアレイを使います。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【CVSの結果に染色体異常が出ても、すぐに絶望しないでほしい】

「絨毛検査で13トリソミーと言われた」。その言葉の重さは十分に理解しているつもりです。そのうえで、臨床遺伝の立場から正確にお伝えしたいのは、絨毛検査の結果がそのまま赤ちゃんの診断になるわけではないということです。絨毛は胎盤の組織であり、絨毛でモザイクが見つかった例の多くは胎盤だけの変化です。だからこそ、羊水検査で赤ちゃん本人の細胞を確かめる必要があります。

「また検査をするの?」と感じるお気持ちも自然なものだと思います。けれども、羊水検査は赤ちゃんの細胞を調べる方法であり、CPMであれば赤ちゃんの染色体は正常です。その事実を確かめるための検査だと考えて、次の一歩に進んでいただきたいと考えています。

CPMが胎児に与える影響

⚠️ 胎盤機能と発育への注意点

CPMは、赤ちゃん本人の染色体に変化がなければ、先天的な病気の直接の原因にはなりません。ただし、胎盤の働きに影響して赤ちゃんの発育に関わることがあります。16トリソミーのCPMでは、CPMのない妊娠と比べて出生体重が3パーセンタイル未満になるオッズが約11倍(オッズ比11.2)、早産のオッズが約10倍(オッズ比10.2)と報告されています[4]。羊水検査で赤ちゃんの染色体が正常と分かったあとも、超音波で発育を見ていくことが大切です。

CPMの影響は、どの染色体の変化か、胎盤のどのくらいの範囲に変化があるかで違います。まれなトリソミーや四倍体のCPMがあった181例を調べたイタリアの研究では、16トリソミーを除けば、CPMのある妊娠で経過が悪くなる割合は低いと結論づけています[4]。

CPMに関連する主な妊娠合併症

  • 胎盤機能不全:胎盤の働きが十分でなく、赤ちゃんへの栄養が足りなくなることがあります。日本産婦人科医会の解説では、胎盤の重量が小さい傾向があるとされています[1]。
  • 胎児発育不全(FGR):赤ちゃんの成長が週数の標準より遅れる状態です。特に16トリソミーのCPMで報告が多くあります[4]。
  • 低出生体重:正期産でも体重が標準より少なく生まれることがあります。
  • 妊娠高血圧腎症:16トリソミーのCPMでは、24%で妊娠高血圧腎症を発症したとの報告があります[1]。妊娠高血圧症候群については妊娠高血圧症候群とはをご覧ください。

赤ちゃん本人に染色体のモザイクがなければ、生まれたあとの発育は通常期待でき、予後は良好と考えられています[1]。CPMと発育の関係は限局性胎盤モザイク(CPM)と胎児発育不良(FGR)の関係で詳しく解説しています。

💡 用語解説:胎児発育不全(FGR)とパーセンタイル

胎児発育不全(FGR、以前はIUGRとも呼ばれました)とは、赤ちゃんの発育が妊娠週数に比べて正常範囲を下回っている状態です。パーセンタイルは、同じ週数の赤ちゃん100人を小さい順に並べたときに何番目にあたるかを示す目安で、「3パーセンタイル未満」は100人中3番目より小さいことを意味します。

例外ケースと追加検査の必要性

真の胎児モザイク(TFM)について

絨毛でみつかった変化が赤ちゃん本人の細胞にも及んでいる場合を、真の胎児モザイク(TFM:True Fetal Mosaicism)と呼びます。先の886例の集計では、絨毛でモザイクが見つかった例の12.8%が真の胎児モザイクでした[3]。羊水検査は赤ちゃんの細胞を調べるため、CPMと真の胎児モザイクを見分ける中心になる検査です。ただし、羊水の細胞はすべての臓器の細胞を代表しているわけではないため、ごく一部の組織だけにあるモザイクを、羊水検査だけで完全に否定することはできません[5]。

❗ TFMとCPMの違い

CPM:染色体の変化が胎盤だけにある → 赤ちゃん本人の染色体は正常。胎盤の働きを通じて発育に影響することがある
TFM:染色体の変化が赤ちゃん本人の細胞にもある → 変化の種類と割合によって、症状が出る可能性がある
羊水検査で赤ちゃんの細胞を調べることで、この2つを見分けます。

UPD(片親性ダイソミー)検査が推奨されるケース

羊水検査で赤ちゃんの染色体の本数が正常でも、確かめておきたいことがあります。それがUPD(片親性ダイソミー)です。トリソミーレスキューで余分な1本が失われるとき、残った2本がどちらも同じ親から来たものになる可能性が、理論上3分の1あります[1][5]。

米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の指針は、絨毛検査または羊水検査で6・7・11・14・15・20番のトリソミーやモノソミーのモザイクが見つかった場合に、UPDの検査を勧めています。絨毛でモザイクがあり、羊水検査の核型が正常だった場合も対象です[5]。これらは、どちらの親から受け継いだかで働きが変わる遺伝子(インプリンティング遺伝子)をもつ染色体です。検査は、赤ちゃんのDNA(羊水など)と、少なくとも片方の親のDNAを比べて行います[5]。通常の核型検査では判定できません。

実際の頻度として、Gratiの集計では、インプリンティングに関わる染色体などのモザイクでUPDを調べた243例のうち6例(2.5%)でUPDが見つかっています[3]。なお、ACMGの指針は、胎児発育不全だけを理由にUPD検査を行うことは勧めていません[5]。

🔬 用語解説:UPD(片親性ダイソミー)とインプリンティング

UPD(Uniparental Disomy:片親性ダイソミー)とは、ふつうは父親と母親から1本ずつ受け継ぐ染色体が、どちらか一方の親からだけ2本受け継がれている状態です。
インプリンティング(ゲノム刷り込み)とは、父親由来か母親由来かによって遺伝子の働き方が違う現象です。インプリンティング遺伝子をもつ染色体でUPDが起こると、働くはずの遺伝子が働かなかったり、働きすぎたりして、特定の症候群につながることがあります。詳しくはゲノムインプリンティング関連疾患で解説しています。

ACMGの指針にあげられている、UPDで起こる主な症候群は次のとおりです[5]。

🧬 UPDの検査が勧められる染色体と関連する症候群

染色体 UPDのタイプ 関連する症候群
6番 父親性UPD 一過性新生児糖尿病
7番 母親性UPD シルバー・ラッセル症候群
11番 父親性UPD(11p15の部分的なもの)/母親性UPD(まれ) ベックウィズ・ヴィーデマン症候群/シルバー・ラッセル症候群
14番 母親性UPD/父親性UPD テンプル症候群/鏡-緒方症候群
15番 母親性UPD/父親性UPD プラダー・ウィリー症候群/アンジェルマン症候群
20番 母親性UPD/父親性UPD ムルチャンダニ・ボージ・コンリン症候群/偽性副甲状腺機能低下症1B型

出典:ACMG Points to Consider(Genet Med, 2020)[5]。16番は、UPDそのものが症状を起こすかどうかについて議論が続いており、この一覧には含まれていません。16トリソミーのCPMでは、主に胎盤の働きと赤ちゃんの発育に注意します。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【CPM後のUPD検査――「異常なし」の先にある確認事項】

羊水検査で赤ちゃんの染色体の本数が正常と分かることは、大きな安心材料です。そのうえで、変化が見つかった染色体が6・7・11・14・15・20番のどれかであれば、UPDの可能性も確かめておく必要があると考えています。

UPDは、染色体の「本数」ではなく「どちらの親から来たか」の問題なので、通常の核型検査では分かりません。逆に、16番などそれ以外の染色体であれば、UPDの検査より赤ちゃんの発育を見ていくことのほうが大切になります。どの染色体の変化だったかによって次に確かめることが変わる、という点を、結果の説明の中で整理してお伝えすることが臨床遺伝専門医の役割だと考えています。

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結論:16週羊水穿刺検査の有効性とCPM診断

絨毛検査やNIPTで染色体の変化が見つかったときに、妊娠15〜16週以降の羊水検査で赤ちゃん本人の染色体を確かめるという流れは、CPMを見分けるための標準的な方法です[1]。羊水検査で正常な核型が確認されれば、変化は胎盤に限られたもの(CPM)と診断でき、赤ちゃんの染色体は正常と判断できます。

ただし、それで確認がすべて終わるわけではありません。変化が6・7・11・14・15・20番であればUPDの追加検査を[5]、16トリソミーのCPMであれば超音波で赤ちゃんの発育を[4]、それぞれ確かめていきます。どの染色体の変化だったかで、次に確かめることが変わります。

📌 まとめ

・CPM(限局性胎盤モザイク)は、胎盤の細胞にだけ染色体の変化がある状態で、絨毛検査の約1〜2%にみられます
・NIPTが調べるDNAの多くは胎盤由来のため、CPMはNIPT偽陽性の原因の一つです
・確かめるには、妊娠15週以降の羊水検査で赤ちゃん本人の染色体を調べます
・羊水検査が正常ならCPMと診断でき、赤ちゃんの染色体は正常と判断できます
・16トリソミーのCPMでは、出生体重が小さくなる割合が高く、超音波で発育を見ていきます
・6・7・11・14・15・20番の変化では、UPD(片親性ダイソミー)の追加検査が勧められています

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よくある質問(FAQ)

Q1. CPM(限局性胎盤モザイク)とはどのような状態ですか?

胎盤の細胞に染色体の変化がみられるものの、赤ちゃん本人の染色体は正常な状態です。絨毛検査やNIPTをきっかけに見つかることが多く、赤ちゃんの染色体が正常であれば先天的な病気の直接の原因にはなりません。ただし、胎盤の働きを通じて赤ちゃんの発育に影響することがあるため、超音波で経過を見ていきます。

Q2. 胎盤モザイクになる確率はどのくらいですか?

絨毛検査で染色体を調べた妊娠の約1〜2%にCPMがみられると報告されています。これは絨毛検査を受けた妊娠の中での割合です。絨毛でモザイクが見つかった例のうち、赤ちゃん本人にも同じ変化があった(真の胎児モザイクだった)のは約13%で、多くは胎盤だけの変化でした。

Q3. NIPTで陽性になった場合、CPMの可能性はありますか?

あります。NIPTで調べる胎児由来のDNAの多くは胎盤の細胞から出てきたものなので、胎盤だけに染色体の変化があるCPMでも陽性と出ることがあります。特に13・18・21番以外のまれなトリソミーで陽性になった場合は、CPMが背景にあることが多いとされています。陽性のときは、羊水検査で赤ちゃん本人の染色体を確かめることが大切です。

Q4. 絨毛検査(CVS)でCPMが疑われた場合、必ず羊水検査を受けるべきですか?

絨毛検査でモザイクが見つかった場合は、羊水検査で赤ちゃん本人の染色体を調べ直す必要があるとされています。絨毛は胎盤の組織なので、胎盤だけの変化(CPM)なのか、赤ちゃんにも及んでいる変化なのかは、羊水検査で確かめます。羊水検査は妊娠15週以降に行うのが基本です。

Q5. 16週の羊水検査で正常核型が確認されれば、赤ちゃんは安心と考えてよいですか?

染色体の本数という点では、CPMと診断でき、赤ちゃんの染色体は正常と判断できます。ただし、16トリソミーのCPMでは出生体重が小さくなる割合が高いため、超音波で発育を見ていきます。また、変化が6・7・11・14・15・20番の染色体であれば、UPD(片親性ダイソミー)の追加検査が勧められています。ごく一部の組織だけにあるモザイクは、羊水検査だけで完全には否定できない点も知っておいてください。

Q6. UPD(片親性ダイソミー)検査はどのような場合に必要ですか?

米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の指針では、絨毛検査や羊水検査で6・7・11・14・15・20番のトリソミーやモノソミーのモザイクが見つかった場合に勧められています。絨毛でモザイクがあり、羊水検査の核型が正常だった場合も対象です。これらの染色体のUPDは、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群、シルバー・ラッセル症候群などの原因になります。赤ちゃんと親のDNAを比べる検査で、通常の核型検査では判定できません。

Q7. CPMと診断された後、妊娠管理はどのように変わりますか?

胎盤の働きが十分でないことによる胎児発育不全や低出生体重、妊娠高血圧腎症に注意した管理になります。具体的には、超音波で赤ちゃんの発育や羊水の量、血流などを主治医が定期的に確かめていきます。16トリソミー以外のCPMでは、妊娠経過が悪くなる割合は低いと報告されています。

関連記事

参考文献

  • [1] 日本産婦人科医会. 産婦人科ゼミナール「2.胎盤性モザイク(confined placental mosaicism:CPM)について」. [日本産婦人科医会]
  • [2] Kalousek DK, Vekemans M. Confined placental mosaicism. J Med Genet. 1996;33(7):529. [DOI 10.1136/jmg.33.7.529]
  • [3] Grati FR. Chromosomal Mosaicism in Human Feto-Placental Development: Implications for Prenatal Diagnosis. J Clin Med. 2014;3(3):809-837. [DOI 10.3390/jcm3030809]
  • [4] Grati FR, Ferreira J, Benn P, et al. Outcomes in pregnancies with a confined placental mosaicism and implications for prenatal screening using cell-free DNA. Genet Med. 2020;22(2):309-316. [DOI 10.1038/s41436-019-0630-y]
  • [5] del Gaudio D, Shinawi M, Astbury C, et al. Diagnostic testing for uniparental disomy: a points to consider statement from the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genet Med. 2020;22(7):1133-1141. [DOI 10.1038/s41436-020-0782-9]
  • [6] Alfirevic Z, Navaratnam K, Mujezinovic F. Amniocentesis and chorionic villus sampling for prenatal diagnosis. Cochrane Database Syst Rev. 2017;(9):CD003252. [DOI 10.1002/14651858.CD003252.pub2]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査結果の解釈や妊娠中の管理については、主治医・専門医にご相談ください。

プロフィール

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

Google公認:仲田洋美 公式プロフィール

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

記事の作り方と生成AIの使い方は、編集方針をご覧ください。

▶ 仲田洋美の詳細プロフィールはこちら

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