目次
- 1 NIPTの精度は「4つの数字」で読む ― 感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率
- 2 陽性的中率(陽性が本当である確率)は年齢で変わる ― 1万人で考える
- 3 病気ごと・プランごとのNIPTの精度
- 4 ほかの出生前検査と比べた精度 ― クアトロテスト・コンバインド検査・羊水検査
- 5 偽陽性・偽陰性が起こる理由
- 6 判定保留と再検査 ― 当院の判定保留0%と、妊娠週数・胎児分画
- 7 陽性的中率が低いと「無駄な確定検査」が増える? ― がん検診と比べて考える
- 8 自閉症・発達障害・知的障害もNIPTで一部わかる ― 当院で調べられること
- 9 ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
- 10 よくある質問(FAQ)
- 11 関連記事
- 12 参考文献

📍 クイックナビゲーション
NIPT(新型出生前診断)の精度は、ダウン症候群(21トリソミー)で見つける力(感度)99.7%、本当は病気がないのに陽性になる割合(偽陽性率)0.04%と報告されています[1]。ただし、「陽性と言われた人が本当に病気である確率(陽性的中率)」は、この数字とは別物です。陽性的中率は、お母さんの年齢や調べる病気によって大きく変わります。この記事では、精度を表す4つの数字の読み方、年齢で陽性的中率が変わる理由、病気・プランごとの精度、偽陽性・偽陰性が起こるしくみまでを、臨床遺伝専門医が数字の由来とともに解説します。
- ➤感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率の違いと、「精度99%」が何の数字か
- ➤陽性的中率が年齢で変わる理由を、1万人の妊婦さんで計算した例
- ➤21・18・13トリソミー、性染色体、微小欠失、単一遺伝子疾患ごとの精度
- ➤クアトロテスト・コンバインド検査・羊水検査と比べた精度
- ➤偽陽性・偽陰性・判定保留が起こるしくみと、陽性のときの確定検査
⏱️ 30秒でわかる要約
🎯 Q. NIPTの精度はどのくらい?
ダウン症候群では、見つける力(感度)が99.7%、病気がないのに陽性になる割合(偽陽性率)が0.04%と報告されています。ただし「陽性が本当である確率(陽性的中率)」は年齢で変わり、妊娠10週の時点で20歳は38〜80%、35歳は73〜95%、40歳は91〜99%が目安です。陽性のときは確定検査で確かめます。
🧩 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
大丈夫とは言えません。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。それを伴いやすいのは、ダウン症候群よりも微小欠失症候群や単一遺伝子疾患で、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。
🧠 Q. NIPTで自閉症や発達障害はわかりますか?
一部はわかります。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる染色体や遺伝子の変化の一部を調べられます。ただし陰性でも、自閉症や発達障害がないとは言えません。
🔍 Q. 陰性なら安心してよい?陽性なら確定?
陰性の結果の信頼性はとても高いものの、まれですが偽陰性の可能性はあります。陽性は確定ではないので、羊水検査・絨毛検査で確かめてから考えます。当院では確定検査まで院内で受けられます。
⏳ Q. 結果が出ない(判定保留)ことはありますか?
当院のNIPTの判定保留は0%です。赤ちゃん由来のDNAが足りないときは判定せずに再検査(再採血)になり、妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。
\ ダウン症候群だけで大丈夫ですか? /
当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。陽性でも、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。
まだプランを決めていない方は、調べられる範囲と費用を比べたページからご覧ください:プラン別の費用と調べられる範囲 | ダイヤモンドプラン
NIPTの精度は「4つの数字」で読む ― 感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率
NIPTの精度は、1つの数字では表せません。「検査そのものの力」を表す感度・特異度と、「結果を受け取った人にとっての意味」を表す陽性的中率・陰性的中率の4つを分けて読む必要があります。
NIPTは、お母さんの血液に含まれる、胎盤から流れ出た赤ちゃん由来のDNAの断片を調べる検査です。採血だけで済み、流産の心配はありませんが、赤ちゃんの細胞そのものを調べる検査ではありません。そのため、NIPTは「確定検査」ではなく「スクリーニング検査」です。可能性のある赤ちゃんを拾い上げ、陽性なら羊水検査・絨毛検査で確かめる、という使い方をします。
「精度99%」は何の数字か
広告や記事でよく見る「精度99%」は、多くの場合感度や特異度を指しています。これは「病気の赤ちゃんをどれだけ見逃さないか」「病気でない赤ちゃんをどれだけ正しく陰性にできるか」という、検査そのものの力です。
一方で、妊婦さんが本当に知りたいのは「陽性と言われた私の赤ちゃんは、本当に病気なのか」という問いです。これに答えるのが陽性的中率で、感度が99%でも、陽性的中率が99%になるとは限りません。この違いが、次の章で説明する「年齢で陽性的中率が変わる」理由につながります。
💡 用語解説:感度(かんど)と特異度(とくいど)
感度は「病気のある人を見つける力」、特異度は「病気のない人を正しく除外する力」です。どちらも検査を受ける人の年齢には左右されにくい、検査そのものの性能を表す数字です。一方、陽性的中率と陰性的中率は、検査を受ける人の中にどれくらい病気の人がいるか(事前の確率)によって変わります。
陰性的中率 ― 陰性の結果はどれくらい信頼できるか
NIPTの陰性の結果は、とても信頼性が高いことが分かっています。たとえば、妊娠10週の時点でダウン症候群の頻度が1万人あたり53人とされる35歳の妊婦さん[2]1万人が、感度99.7%のNIPTを受けたと仮定して計算すると、見逃されるダウン症候群の赤ちゃんは計算上0.2人程度です(当院の計算)。
ただし、ゼロではありません。まれですが偽陰性の可能性はあります。陰性のあとも妊婦健診の超音波検査は続け、気になる所見があれば担当の医師に伝えてください。偽陰性が起こるしくみは、後半の章で説明します。
陽性的中率(陽性が本当である確率)は年齢で変わる ― 1万人で考える
同じNIPTでも、陽性的中率はお母さんの年齢によって変わります。検査の性能が変わるのではなく、検査を受ける人の中にもともと病気の赤ちゃんがどれくらいいるか(事前の確率)が、年齢によって違うためです。
年齢別の陽性的中率(妊娠10週の時点)
米国産科婦人科学会(ACOG)の診療指針は、感度・特異度をおよそ99%としたときの、妊娠10週時点の年齢別の陽性的中率を示しています[2]。幅があるのは、検査会社によって数字が違うためです。
📈 年齢別:妊娠10週時点の頻度とNIPTの陽性的中率
| お母さんの年齢 | ダウン症候群の頻度 | ダウン症候群の陽性的中率 | 18トリソミーの陽性的中率 | 13トリソミーの陽性的中率 |
|---|---|---|---|---|
| 20歳 | 1/804 | 38〜80% | 11〜41% | 5〜13% |
| 35歳 | 1/187 | 73〜95% | 34〜75% | 17〜40% |
| 40歳 | 1/51 | 91〜99% | 66〜92% | 43〜71% |
出典:ACOG Practice Bulletin No.226(2020)の表[2]。頻度は妊娠10週時点のもので、出生時の頻度とは異なります(妊娠の途中で自然に流産する赤ちゃんがいるため、出生時の頻度はこれより低くなります)。陽性的中率の幅は検査会社によって異なることを示しています。
この表から分かるのは、18トリソミーや13トリソミーは、ダウン症候群より陽性的中率が低いということです。これも検査の性能の差ではなく、もともとの頻度がダウン症候群より低いことが主な理由です。
なぜ若いと陽性的中率が下がるのか ― 1万人の妊婦さんで計算する
数字の由来を、1万人の妊婦さんで計算してみます。感度99.7%・偽陽性率0.04%[1]と、上の表の妊娠10週時点の頻度[2]を使った当院の計算例です。
🧮 1万人がNIPTを受けたときの計算例(ダウン症候群)
| 年齢 | ダウン症候群の赤ちゃん | 正しく陽性になる人 | 病気がないのに陽性になる人 | 陽性的中率 |
|---|---|---|---|---|
| 20歳 | 12人 | 約12人 | 約4人 | 約75% |
| 35歳 | 53人 | 約53人 | 約4人 | 約93% |
| 40歳 | 196人 | 約195人 | 約4人 | 約98% |
当院の計算例です。偽陽性率0.04%は、病気のない約9,800〜9,990人に掛けると、どの年齢でも約4人になります。実際の陽性的中率は検査会社・調べる項目によって異なります。
ポイントは、「病気がないのに陽性になる人」の数は、年齢にかかわらずほぼ同じ(約4人)だということです。違うのは「本当に病気の赤ちゃん」の数で、20歳では12人、40歳では196人です。そのため、陽性の中に占める「外れの陽性」の割合が、若いほど大きくなります。
ご自身の結果の確率をどう読むかは、NIPTで陽性・陰性と言われたときの確率の読み方で詳しく説明しています。陽性的中率という言葉そのものの意味は、陽性的中率(PPV)の用語解説をご覧ください。年齢ごとのダウン症候群の確率はダウン症候群の確率と母体年齢の関係にまとめています。
🩺 院長コラム【「若いのに陽性」は、検査が外れやすいということ?】
若い方の陽性的中率が低いのは、検査の質が落ちるからではありません。もともと病気の赤ちゃんが少ない集団では、ごく少ない「外れの陽性」が目立ちやすくなる、という統計のしくみです。あなたの体や選択に原因があるわけではありません。
臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、だからこそ若い方ほど「陽性=確定」と受け取らず、確定検査で確かめてから考えることです。陽性的中率は低くても、陽性の結果の中には本当に病気の赤ちゃんが含まれています。確かめないまま判断することが、いちばん避けたいことです。ご自身に合った選択を考えるための材料として、この数字を使っていただきたいと考えています。
病気ごと・プランごとのNIPTの精度
NIPTの精度は、調べる病気の種類によって違います。染色体の数の異常(トリソミー)は精度が高く、微小欠失・重複は陽性的中率が低めになります。どの病気を調べるかで、結果の読み方も変わります。
21・18・13トリソミー(ダウン症候群・18トリソミー・13トリソミー)
35の研究をまとめたメタ解析では、単胎妊娠での感度と偽陽性率は次のとおりでした[1]。
🧬 病気ごとの感度と偽陽性率(単胎妊娠)
| 病気 | 感度(検出率) | 偽陽性率 | 解析に含まれた病気の例数 |
|---|---|---|---|
| 21トリソミー(ダウン症候群) | 99.7% | 0.04% | 1,963例 |
| 18トリソミー | 97.9% | 0.04% | 563例 |
| 13トリソミー | 99.0% | 0.04% | 119例 |
| ターナー症候群(45,X) | 95.8% | 0.14% | 36例 |
| そのほかの性染色体の数の異常 | 100% | 0.004% | 17例 |
出典:Gilら(Ultrasound Obstet Gynecol, 2017)のメタ解析[1]。性染色体の数の異常は例数が少なく、著者らも「精度を正確に評価するには例数が少ない」としています。
双子の妊娠では、双子の妊娠をまとめた解析で、ダウン症候群の検出率98.2%・偽陽性率0.05%と、単胎とおおむね同じ精度が報告されています。18トリソミー・13トリソミーは例数が少なく、精度を正確に評価できていません[3]。当院で双子の妊娠に対応しているのは、スタンダードプランと双子マックスプランです。
ダウン症候群がどのような病気かはダウン症はいつわかる?出生前・出生後の診断の違い、18トリソミー・13トリソミーは18トリソミー(エドワーズ症候群)・13トリソミー(パトウ症候群)で解説しています。
性染色体の数の異常
ターナー症候群などの性染色体の数の異常は、トリソミーに比べて陽性的中率が低めです。胎盤だけに変化がある場合や、お母さん自身の細胞に変化がある場合があるためです。性染色体の数の異常の多くは知的障害を伴わない一方、ことばや学習面の支援が役立つことがあります。詳しくはNIPTの性染色体検査の精度をご覧ください。
微小欠失・重複
染色体のごく一部が欠けたり重なったりする微小欠失・重複は、数の異常より陽性的中率が低め(項目によって60〜70%程度)です。陽性なら必ず確定検査で確かめます。微小欠失の確定には、羊水や絨毛の細胞で染色体の微細な欠失・重複を調べるマイクロアレイ検査が必要になることがあります。項目ごとの詳しい数字はNIPTの微小欠失の陽性的中率にまとめています。
当院のNIPTで調べる微小欠失は、スタンダードプランが6種類7疾患、プレミアムプラン・ダイヤモンドプランが12種類13疾患、インペリアルプラン・双子マックスプランが92種類の微小欠失・重複+5Mbを超える構造異常です。
単一遺伝子疾患(新しく起こる遺伝子の変化)
ダイヤモンドプランとインペリアルプランでは、親から受け継いだのではなく新しく起こる遺伝子の変化(de novo変異)による病気も調べます。ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※を使っています。
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
💎 単一遺伝子疾患まで調べるプランの精度データ
ダイヤモンドの研究[4]では、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件)に増えたと報告されています。超音波検査で異常が疑われた妊婦さん(ハイリスク)を対象にした研究で、すべての妊婦さんで1.6倍になるわけではありません。
ほかの出生前検査と比べた精度 ― クアトロテスト・コンバインド検査・羊水検査
ダウン症候群を見つける力は、NIPTがほかの非確定検査より高いことが分かっています。ACOGの診療指針は、検査ごとの検出率を次のように示しています[2]。
⚖️ 出生前検査の種類ごとの比較(ダウン症候群)
| 検査 | 受ける時期 | ダウン症候群の検出率 | 検査の位置づけ |
|---|---|---|---|
| NIPT | 妊娠9〜10週以降 | 99%(メタ解析では99.7%、偽陽性率0.04%[1]) | 非確定検査(スクリーニング) |
| コンバインド検査(妊娠初期の血液検査+超音波) | 妊娠10〜13週 | 82〜87% | 非確定検査(スクリーニング) |
| クアトロテスト(母体血清マーカー) | 妊娠15〜22週 | 81% | 非確定検査(スクリーニング) |
| 羊水検査・絨毛検査 | 絨毛検査は妊娠初期、羊水検査は妊娠中期 | 赤ちゃん側の細胞を直接調べる | 確定検査 |
出典:ACOG Practice Bulletin No.226(2020)[2]。コンバインド検査とクアトロテストの検出率は、陽性と判定される人の割合を5%に設定したときの値です。
クアトロテストやコンバインド検査は、陽性と判定される人を5%程度出しても、ダウン症候群の約2割を見逃すことになります。NIPTは見逃しが少なく、病気がないのに陽性になる人もずっと少ない検査です。クアトロテストとの違いはクアトロテストとNIPTの違い、コンバインド検査はコンバインド検査とはで詳しく説明しています。
一方、羊水検査・絨毛検査は赤ちゃん側の細胞を直接調べる確定検査です。ただし確定検査にも、モザイクなどによる限界があります。確定検査の正確さと限界は羊水検査・絨毛検査の精度をご覧ください。
偽陽性・偽陰性が起こる理由
NIPTで偽陽性・偽陰性が起こる主な理由は、NIPTが調べているDNAの多くが赤ちゃん本人ではなく胎盤から来ていることです。胎盤と赤ちゃんの染色体は、ふつうは同じですが、まれに違うことがあります。
偽陽性:胎盤だけの変化・消えた双子・お母さん側の要因
- ➤胎盤限局性モザイク:胎盤の細胞だけに染色体の変化があり、赤ちゃん本人にはない状態です。NIPTは陽性になりますが、羊水検査では正常と分かります。
- ➤バニシングツイン:双子の一人が妊娠のごく初期に育たなくなった場合、その子の胎盤由来のDNAが残って結果に影響することがあります。
- ➤お母さん側の要因:お母さん自身の細胞に染色体の変化(モザイクなど)がある場合です。ACOGの診療指針も、偽陽性の原因としてモザイク、バニシングツイン、お母さん側の状態を挙げています[2]。
💡 用語解説:胎盤限局性モザイク(たいばんげんきょくせいモザイク)
モザイクとは、同じ体の中に染色体の数が違う細胞が混ざっている状態です。胎盤限局性モザイクは、その「違う細胞」が胎盤だけにあり、赤ちゃん本人にはない状態をいいます。NIPTの偽陽性の代表的な原因です。
しくみの詳細は、胎盤限局性モザイクが偽陽性・偽陰性を起こすしくみ、バニシングツインとは、偽陽性の原因:母体側の要因で解説しています。偽陽性があるからこそ、陽性のときは確定検査で確かめることが前提になります。
偽陰性:まれですが可能性はあります
偽陰性は、赤ちゃんに病気があるのに陰性と出ることです。血液中の赤ちゃん由来のDNA(胎児分画)が少ない場合や、赤ちゃんには変化があるのに胎盤ではその変化をもつ細胞がわずかしかない場合(モザイク)などに起こりえます[2]。頻度はまれですが、可能性はあります。偽陰性の確率と原因はNIPTの偽陰性で詳しく説明しています。
判定保留と再検査 ― 当院の判定保留0%と、妊娠週数・胎児分画
当院のNIPTの判定保留は0%です。血液中の赤ちゃん由来のDNAの割合(胎児分画)が足りないときは、判定をせずに再検査(再採血)になります。当院ではこれを「判定保留」とは呼びません。
論文やほかの施設では、胎児分画が足りずに結果が出なかった場合も「判定保留(No-Call)」に含めることが多く、言葉の使い方が違います。当院で「判定保留0%」というのは、十分な胎児分画で解析した検体で、陽性・陰性を判定できなかったものがないという意味で、再採血が一度もないという意味ではありません。
💡 用語解説:胎児分画(たいじぶんかく)
お母さんの血液に含まれるDNAのうち、赤ちゃん(胎盤)由来のDNAが占める割合です。この割合が低いと正確に判定できないため、検査会社はそれぞれ正確さを保証できる基準を決めています。当院のプランでは、スタンダード・プレミアム・ダイヤモンドが3%、インペリアル・双子マックスが3.5%です。
妊娠週数が早いほど、血液中の赤ちゃん由来のDNAは少なく、再検査になることがあります。妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。再検査が必要になったのに流産して再検査ができず結果が出なかったときは、安心検査結果保障制度で検査代金(諸費用を除く)が返金されます。胎児分画については胎児分画が低いとどうなる?、早い時期のNIPTは早期NIPTとはをご覧ください。
陽性的中率が低いと「無駄な確定検査」が増える? ― がん検診と比べて考える
「陽性的中率が低い検査は、体に負担のかかる確定検査を無駄に増やす」という批判があります。この心配はもっともです。ただ、同じ考え方をがん検診に当てはめると、少し違った姿が見えてきます。
がん検診の陽性的中率は数%
胸部X線で行う日本の自治体の肺がん検診では、「要精密検査」とされた人のうち実際に肺がんだった人の割合(陽性反応適中度)について、国の報告書が示した許容値は「1.3%以上」です[8]。米国の大規模試験(NLST)では、低線量CTの陽性的中率は2.4〜5.2%、胸部X線は4.4%からでした[6]。それでも低線量CTによる検診は、肺がんによる死亡を減らすことが示されています[7]。
X線は「怪しい」と判定する人がCTより少ないぶん陽性的中率は少し高いものの、そのかわり見逃しも多くなります。CTは拾い上げを広げたぶん陽性的中率が下がりましたが、死亡を減らしました。「陽性的中率が低い=悪い検査」ではないということです。
がん検診の精密検査にも危険はあります。米国の診療データを使った調査では、肺の異常を調べる精密検査のあとの合併症の割合は、臨床試験で報告された割合のおよそ2倍だったと報告されています[9]。一方、出生前検査の確定検査について、英国の医療施設で行われた研究(1施設のコホート研究)では、絨毛検査・羊水検査を受けた人と受けなかった人で、流産の割合に統計的な差は見られませんでした(絨毛検査0.29%、羊水検査−0.36%で、どちらも統計的な差なし)[10]。研究の規模や方法が違うので数字を直接並べることはできませんが、「陽性的中率が低いと、体に負担のかかる精密検査が増える」という心配は、がん検診にも同じように当てはまり、それでもがん検診は行われています。
それでも出生前検査で慎重論が出る理由
出生前検査で慎重な意見が出るのには、もっともな理由があります。
- ➤検査の結果が、妊娠を続けるかどうかの判断に直結します。
- ➤いちばん大きな危険は、陽性のあと確定検査を受けずに妊娠をやめる選択をしてしまうことです。陽性的中率が低いと、本当は病気のない赤ちゃんが失われるおそれがあります。
- ➤結果を待つ間の不安が大きく、判断できる期間にも限りがあります。
- ➤微小欠失などは症状の幅が広く、分かっても見通しが立てにくいことがあり、学会によって考え方が分かれています。
見逃しの重さ
一方で、陽性的中率だけを見ると「外れの陽性」ばかりに目が向きますが、拾い上げなければ、本当に病気がある赤ちゃんについて、ご家族が生まれる前に知り、出産する施設や生まれてすぐの治療を準備するか、妊娠を続けるかどうかを考える機会そのものがなくなります。見逃しにも、外れの陽性と同じように重い結果があります。
🩺 院長コラム【がん検診と同じ物差しで、NIPTを考える】
総合内科専門医・がん薬物療法専門医として内科とがんの医療に携わってきた立場から見ると、がん検診では「要精密検査のうち実際にがんだった人は数%」という前提が受け入れられています。検診の役割は、可能性のある人を見逃さずに拾い上げ、精密検査につなげることだからです。
NIPTも同じで、確定検査ではなくスクリーニング検査です。スクリーニング検査に確定検査ほどの陽性的中率は必要ない、と当院は考えています。大切なのは、陽性になったときに確定検査で本当にそうかを確かめてから考えることで、弱点は検査そのものではなく「確かめる前に決めてしまうこと」にあると考えています。
当院の答え:陽性なら、確定検査まで院内で
だから当院は、陽性になったときに院内で確定検査(絨毛検査・羊水検査)を受けられる体制をとっています。2025年6月から産婦人科を併設し、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、確定検査の費用は羊水検査互助会(カトレア会)で補助されます(補助の上限はありません)。
NIPTを選ぶときは、精度の数字だけでなく、次の4つを確かめておくと比べやすくなります。
- ➤調べる項目ごとの精度(陽性的中率)の根拠が示されているか
- ➤陽性のとき、どこで・いつ確定検査を受けられるか
- ➤結果が出ないとき(再検査・判定保留)の扱いと費用
- ➤検査の前後に、結果の意味を説明する医師がいるか
当院では、常駐する臨床遺伝専門医が90分の受診枠の中で遺伝カウンセリングを行い、結果の判定、陽性後のケア、確定検査まで院内で責任をもって支援しています。NIPTは、可能性のある赤ちゃんを見逃さずに拾い上げるための検査です。陽性になったときに大切なのは、確定検査で本当にそうかを確かめてから考えることです。当院では、その確定検査まで院内で受けられます。
自閉症・発達障害・知的障害もNIPTで一部わかる ― 当院で調べられること
自閉症・発達障害・知的障害の一部は、当院のNIPTでわかります。心配するのは自然なことです。原因はさまざまですが、一部は染色体や遺伝子の変化が原因だと分かっており、その変化の一部をNIPTで調べられるためです。
ダウン症候群だけを調べればよいわけではない
出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんの命や発達、そしてご家族の暮らしに大きくかかわるものです。ただ、その中身は病気によって大きく異なります。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いと報告されています[11]。ストレスを最も強く左右していたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷などの行動の問題、睡眠の問題でした[11]。
アンジェルマン症候群やスミス・マゲニス症候群では他人への攻撃的な行動が、コルネリア・デ・ランゲ症候群やスミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群では自傷が多いことが分かっています[12]。スミス・マゲニス症候群・プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群はすべてのプランで、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンドプラン・インペリアルプランで、ウィリアムズ症候群はインペリアルプラン・双子マックスプランで調べられます。ダウン症候群だけを調べればよいのか、検査を選ぶ前に考えていただきたい点です。
🧠 プラン別:自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある主な病気
| プラン | 微小欠失・重複 | 単一遺伝子 | 自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある主な病気 |
|---|---|---|---|
| スタンダード | 6種類7疾患 | ― | 22q11.2欠失症候群、アンジェルマン症候群、プラダー・ウィリー症候群、スミス・マゲニス症候群 |
| プレミアム | 12種類13疾患 | ― | スタンダードの病気に加え、調べる微小欠失が12種類13疾患に広がる |
| ダイヤモンド | 12種類13疾患 | 56遺伝子(de novo変異) | 上記に加え、レット症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、CHARGE症候群 |
| 双子マックス | 92種類+5Mbを超える構造異常 | ― | 微小欠失の病気に加え、ウィリアムズ症候群、16p11.2欠失・重複 |
| インペリアル | 92種類+5Mbを超える構造異常 | 最大155遺伝子(202疾患) | 上記に加え、フェラン・マクダーミッド症候群、ピット・ホプキンス症候群 |
双子マックスは単胎・双胎、スタンダードは単胎・双胎、プレミアム・ダイヤモンド・インペリアルは単胎のみです。
正直にお伝えしておきたい限界もあります。陰性でも、自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。脆弱X症候群のようにNIPTで調べられない原因もあり、症状の重さを検査で予測することもできません。陽性なら確定検査が必要で、微小欠失は陽性的中率が低めです。詳しくは自閉症はNIPTでわかりますか?をご覧ください。
\ 調べる範囲から選びたい方へ /
ダウン症候群だけでなく、18・13トリソミーや微小欠失症候群、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因まで、当院のNIPTでわかります。来院が難しい方は、オンラインNIPT(Zoomでのカウンセリング+全国110か所の提携施設で採血)もご利用いただけます。
まだ決めていない方は、プランごとの調べられる範囲をご覧ください:インペリアルプラン | ダイヤモンドプラン | オンラインNIPT
ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[11]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[11][12]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。
出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。『安さ』だけで選んで大丈夫でしょうか。
三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。
当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,719円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。
| プラン | 主に調べる範囲 | 数えた病気の数 | 1つの病気あたり |
|---|---|---|---|
| 三大トリソミーだけを調べる検査 (仮に10万円とした場合) |
13・18・21トリソミー | 3 | 約33,333円 |
| スタンダード(220,000円) | 13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 | 14 | 約15,714円 |
| プレミアム(264,000円) | 13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 | 23 | 約11,478円 |
| ダイヤモンド(407,000円) | プレミアムの範囲+単一遺伝子56 | 79 | 約5,152円 |
| 双子マックス(440,000円) | 全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 | 114+α | 約3,860円 |
| インペリアル(550,000円) | 全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 | 320+α | 約1,719円 |
※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※『三大トリソミーだけを調べる検査』は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。
ただし、病気の数が多いほど良い検査、というわけではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。この記事で見てきたように、項目によって陽性的中率も違います。だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングで、ご家族に合ったプランを選ぶことが大切です。各プランの内容はスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルの各ページをご覧ください。
🏥 精度の数字を、正しく使える検査を選ぶために
どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。陽性でも、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられ、主要項目は3日以内に結果が出ます。
よくある質問(FAQ)
Q1. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高く、ストレスを最も強く左右していたのは知的障害の程度よりも行動の問題でした。こうした病気は三大トリソミーだけを調べる検査ではわかりません。当院ではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。
Q2. NIPTでダウン症候群はどのくらい正確にわかりますか?
35の研究をまとめたメタ解析では、ダウン症候群の感度(見つける力)は99.7%、病気がないのに陽性になる割合(偽陽性率)は0.04%でした。ただし、陽性と言われた人が本当にダウン症候群である確率(陽性的中率)は年齢で変わり、妊娠10週の時点で20歳は38〜80%、35歳は73〜95%、40歳は91〜99%が目安です。陽性のときは羊水検査・絨毛検査で確かめます。
Q3. NIPTの「精度99%」は何を指していますか?
多くの場合、感度(病気の赤ちゃんを見つける力)や特異度(病気でない赤ちゃんを正しく陰性にする力)を指しています。陽性と言われたときに本当に病気である確率は陽性的中率といい、お母さんの年齢や調べる病気によって変わります。感度が99%でも、陽性的中率が99%になるとは限りません。
Q4. NIPTで陽性なら、確定ですか?
確定ではありません。NIPTはスクリーニング検査で、胎盤だけに染色体の変化がある場合などに偽陽性が起こります。陽性のときは、羊水検査・絨毛検査などの確定検査で確かめてから考えます。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
Q5. 陰性なら、ダウン症候群の可能性はゼロですか?
陰性の結果の信頼性はとても高いものの、ゼロではありません。まれですが偽陰性の可能性はあります。血液中の赤ちゃん由来のDNAが少ない場合や、赤ちゃんには変化があるのに胎盤ではその変化をもつ細胞がわずかしかない場合などに起こりえます。陰性のあとも妊婦健診の超音波検査は続けてください。
Q6. クアトロテストとNIPTは、どちらが精度が高いですか?
ダウン症候群を見つける力は、NIPTのほうが高い検査です。米国産科婦人科学会の診療指針では、ダウン症候群の検出率はNIPTが99%、クアトロテストが81%(陽性と判定される人の割合を5%に設定したとき)とされています。クアトロテストは妊娠15〜22週に受ける検査で、NIPTは妊娠9〜10週以降から受けられます。
Q7. 20代や35歳未満でも、NIPTを受ける意味はありますか?
感度・特異度は年齢にかかわらず変わりません。若い方は病気の赤ちゃんがもともと少ないため陽性的中率は下がりますが、陰性の結果の信頼性は高いままです。また、22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、新しく起こる遺伝子の変化による病気は、お母さんの年齢とは関係なく起こります。陽性のときは確定検査で確かめることが前提です。
Q8. 早い週数で受けると、精度は下がりますか?
週数が早いほど血液中の赤ちゃん由来のDNA(胎児分画)が少なく、判定できずに再検査(再採血)になることがあります。当院では、妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。胎児分画が基準に届いた検体で判定するため、当院のNIPTの判定保留は0%です。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。
Q9. 双子でもNIPTの精度は同じですか?
双子の妊娠をまとめた解析では、ダウン症候群の検出率は98.2%、偽陽性率は0.05%で、単胎とおおむね同じと報告されています。18トリソミー・13トリソミーは例数が少なく、精度を正確に評価できていません。当院で双子の妊娠に対応しているのは、スタンダードプランと双子マックスプランです。
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査結果の解釈については、検査を受けた医療機関の医師にご相談ください。



