モザイクとは?NIPTの結果が偽陽性・偽陰性になるため注意が必要です

モザイクとは?

モザイクとは、一つの接合子(受精卵)に由来するが、遺伝型や核型染色体の型)が異なる複数の細胞系列が存在する個体あるいは組織のことをいいます。つまり、一つの個体に同じ細胞を起源として、違う性質の細胞が混在することを言います。
これに対してこれに対して、二つ以上の接遇子が偶然一つになってできたものをキメラといいます。つまり、もともと違う性質のものがくっついて一つの個体を作ることをキメラといい、実在はしませんがわかりやすい例ではスフィンクスがそうです。

モザイク

限局性胎盤モザイクとは?

限局性胎盤モザイク症(CPM)とは、胎盤と胎児がそれぞれ異なる染色体を持っていて、胎児は正常で、胎盤だけにモザイクがある状態です。この状態は、絨毛検査で発見されることもあります。限局性モザイク症は、妊娠の約1-2%にしかみられない、まれなもので、あまり意味をなさないことも多いです。

限局性胎盤モザイク症はどのように診断されるのですか?

絨毛膜絨毛採取(CVS)で、サンプルを分析して胎児の核型(染色体数の可視化)を調べます。通常、核型の結果は正常では染色体数は46本です。不幸なことに、核型が異常で、余分な染色体があったり、足らなかったりすることもあります。  しかし、約1%の確率で、正常なものと異常なものの2つの細胞集団を示すことがあり、これはモザイク型と呼ばれています。

モザイクはどうしてできるのですか?

ヒトの受精胚は胚盤胞と呼ばれる状態で着床します。
ヒト胚盤胞の切片
Aヒト胚盤胞(107細胞)の切片。内細胞塊と栄養膜細胞とが示されています。
B 子宮腔から得られた受精後約4.5日のヒトの腔盤胞の模式図。青色が内細胞塊(胚結節)、緑色が外細胞塊(栄養膜)を表しています。
C 発生第6日の胚盤胞の模式図。胚盤胞の胚子極(動物極)に位置している栄養膜細胞が子宮粘膜に侵入し始めている様子が描かれています。ヒト胚盤胞は発生の第6日までに子宮粘膜に侵入し始めます。

青色の部分が赤ちゃんになっていく部分です。
栄養膜の部分が胎盤を形成していきます。

ヒトの細胞一つ一つには、あらゆるものになれる遺伝子が同じように存在するのですが、この時点で胎盤になる細胞たちは胎盤にしかなれないように身体の部分を作る遺伝子たちは眠らされて働かなくなっています。
逆に、青い部分の赤ちゃんを作る細胞たちは、胎盤を作る遺伝子が眠らされています。
胎盤を作る遺伝子はこのように、発生の早い段階でロックがかかるのです。

限局性胎盤モザイクとは、胎盤を作る細胞だけでモザイクが生じた場合に起こります。

胎盤の核型と胎児の核型は同じ胚盤胞(発生初期に形成され、後に胚となる構造)からの組織であるため、同一の核型であると通常は仮定されるのですが、すべての胎盤の核型の約1~2%は胎児の核型と一致しません。
原因としては、
1⃣胎盤細胞株のみの突然変異
2⃣もともと胚盤胞全体でモザイクが存在していたが、胎児だけで突然変異が起こり、異常が修正された(細胞分裂するときにトリソミーが外れてしまった:トリソミーレスキューと言います)
が考えられます。

いずれの場合も、胎盤は異常なモザイク核型を持ち、胎児は正常な核型を持ちます。この状態は限局性胎盤モザイク症と呼ばれ、健康に見える胎児が絨毛検査の結果だけで異数体(細胞内の染色体数の異常、通常トリソミー)を示す場合に疑われます。例えば、胎児は健康で異常に見えるが、絨毛検査で胎盤の核型が通常流産や死産に関連するものであることが示された場合、限局性胎盤モザイク症の疑いがあると判断されるでしょう。

絨毛検査でたとえば10サンプル中9つ正常で1個がトリソミーなど部分的に異なる結果が出た場合、これは「胎盤の染色体核型」なので赤ちゃん自体の核型を知るために羊水穿刺をしなければなりません。
羊水穿刺とは、染色体異常を診断するために羊水を検査することです。羊水検査で検査される細胞は胎盤ではなく胎児から直接採取されます。
羊水検査の結果が正常であれば、限局性胎盤モザイク症と診断され、絨毛検査の異常な結果は胎盤のみであり、胎児は正常である可能性が高いことを示しています。

限局性胎盤モザイク症の診断は何を意味するのか?

閉塞性胎盤モザイク症と診断された場合、他にもいくつかの考慮すべき点があります。

正常な羊水穿刺の結果は一般的に正常な胎児の核型を示唆していますが、実際の胎児モザイク症が存在する可能性はまだ少ないながらあります。超音波検査で正常な胎児が出ている場合には、特に問題はないでしょう。
羊水検査は赤ちゃんの皮膚の細胞を培養して核型検査するので、モザイクがあっても皮膚に異常がなければ正常となる可能性があります。
したがって、羊水検査の精度も100%ではありません。
皮膚以外の内部にモザイクがある可能性を減らすために、さらなる侵襲的な胎児検査が推奨されることもあります。
特に染色体異常では、限局性胎盤モザイク症は片親性ダイソミー(UPD)と関連しています。UPDは、胎児の2本の染色体が両方とも同じ親から来た場合に起こります。これらの状態を診断するためのさらなる検査として、遺伝カウンセリングが推奨されています。
また、胎盤モザイク症は胎児の子宮内での発育不良と関連しているので、この条件を持つ女性にはあかちゃんの成長をフォローアップするためにシリーズ化した超音波検査が推奨されます。

モザイクはNIPTの偽陽性、偽陰性の原因になります。

胎盤のみにモザイクがある場合、NIPTでは陽性になる可能性があり、この場合、赤ちゃんは正常で、偽陽性となります。
逆に、胎盤のみが正常で赤ちゃんがモザイクな場合には、偽陰性になります。つまり、陰性の結果ですが、生まれる赤ちゃんには異常があるということです。

NIPTの結果はこれらを踏まえて、100%ではない、と理解して受けることが大切です。

この記事の著者:仲田洋美

医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号