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妊娠がわかると、赤ちゃんの健康について調べる出生前検査という選択肢を耳にします。その中でも、妊娠のごく初期に受けられるのがコンバインド検査(妊娠初期・第1三半期スクリーニング)です。超音波と採血を組み合わせ、ダウン症などの染色体の変化について「どれくらいの可能性があるか」を確率で示す検査ですが、結果を確定するものではありません。この記事では、コンバインド検査とは何か、何がわかって何がわからないのか、いつ受けるのか、精度やNIPTとの違い、費用まで、臨床遺伝専門医の視点で正確にわかりやすく解説します。
Q. コンバインド検査とは何ですか?まず結論だけ知りたいです
A. コンバインド検査とは、妊娠11週0日〜13週6日(=第1三半期の後半)に、胎児の首の後ろのむくみ(NT)を測る超音波検査と、母体の採血(PAPP-A・free β-hCG)、そして母体年齢を組み合わせて、21トリソミー(ダウン症候群)などの染色体の変化のリスクを「確率」で示す検査です。「コンバインド(combined)」は「組み合わせる」という意味で、超音波と血液検査を組み合わせることからこう呼ばれます。あくまでリスクを推定する非確定的検査で、診断を確定するものではありません。陽性(高リスク)と出ても、その多くは実際には染色体の変化がありません。
- ➤正体 → NT(超音波)+母体血清マーカー(PAPP-A・free β-hCG)+母体年齢でリスクを確率算出する非確定的検査
- ➤時期 → 妊娠11週0日〜13週6日。NTがこの時期にしか適切に測れないため
- ➤対象 → おもに21トリソミー・18トリソミー(アルゴリズムにより13トリソミーも)。性別や単一遺伝子の病気は対象外
- ➤精度 → 21トリソミー検出率はおおむね85〜90%。陽性でも多くは非罹患(陽性的中率は低い)で、陰性の確からしさは高い
- ➤NIPTとの違い → 染色体の検出精度・偽陽性の少なさではNIPTが上回る。目的で使い分ける
🩺 コンバインド検査の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 読み方・関連する呼称 | コンバインド検査(combined test)。OSCAR(オスカー)は同日評価を行う運用の呼称として使われます。施設によっては「初期胎児ドック」等の名称の検査メニューに、NT計測や母体血清マーカーを組み合わせた評価が含まれることがありますが、検査項目は施設ごとに異なります |
| 検査の種類 | 非確定的検査(スクリーニング検査)。リスクを確率で示し、診断は確定しない |
| 組み合わせる項目 | 超音波(NT=胎児後頸部のむくみ)+母体血清マーカー(PAPP-A・free β-hCG)+母体年齢 |
| おもな対象疾患 | 21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー(アルゴリズムにより13トリソミーも) |
| 実施時期 | 妊娠11週0日〜13週6日(頭殿長CRLでおよそ45〜84mm) |
| 検出率の目安 | 21トリソミーで約85〜90%(偽陽性率およそ3〜5%)。数値は条件で変動[1] |
| 費用 | 自費(保険適用外)。目安として3〜5万円程度(施設により差がある) |
※本記事は一般の方に向けた出生前検査の用語解説です。特定の検査を勧めたり、個人のリスクを判定したりするものではありません。

コンバインド検査は、妊娠初期の超音波によるNT計測と母体血清マーカーなどを組み合わせ、21トリソミーなどの可能性を確率として評価する非確定的検査です。
1. コンバインド検査とは?
コンバインド検査とは、妊娠初期(第1三半期)に、超音波(NT)と母体の採血(PAPP-A・free β-hCG)、母体年齢を組み合わせて、赤ちゃんの染色体の変化のリスクを確率で示す非確定的検査です。母体年齢・NT・血清マーカーを組み合わせるこの検査は、偽陽性率およそ5%で21トリソミー(ダウン症候群)のおよそ9割を見つけ出せることが報告されています[1]。ただし、結果は「1:○○」という確率で示されるだけで、診断を確定するものではありません。ここが、後で解説する精度の話とあわせて、最も誤解されやすい点です。
「コンバインド」=組み合わせるという意味
「コンバインド(combined)」は英語で「組み合わせた」という意味です。以前は別々に行われていた超音波検査と母体血清マーカー検査を組み合わせることで、それぞれ単独よりも精度を高めたのが、この検査の要点です。超音波では胎児の首の後ろのむくみ(NT)を測り、採血では胎盤由来のタンパク質・ホルモンであるPAPP-A(妊娠関連血漿タンパク質A)とfree β-hCG(遊離型ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット)を測定します。これらに母体年齢を加え、専用のソフトウェアでリスクを計算します。
💡 用語解説:NT(後頸部透亮像)と母体血清マーカー
NT(Nuchal Translucency:胎児後頸部のむくみ)は、妊娠初期に赤ちゃんの首の後ろにみられる透明な部分の厚みです。すべての赤ちゃんにみられますが、通常より厚い場合、染色体の変化や心臓の形の違いなどの可能性が相対的に高くなります。PAPP-Aとfree β-hCGは、いずれも胎盤でつくられ母体の血液中に出てくる物質で、染色体の変化があると平均的な値からずれる傾向があります。詳しくは胎児の首のむくみ(NT)とはをご覧ください。
第1三半期(妊娠初期)とはいつ?
第1三半期(first trimester)とは、妊娠13週6日までの時期を指します。妊娠期間は3つの「三半期(トライメスター)」に分けられ、第1三半期はその最初の区分にあたります。コンバインド検査の超音波(NT計測)は、このうち妊娠11週0日〜13週6日に行います。この時期に限られるのは、NTがこの週数でしか適切に評価できないためです。第1三半期という時期そのものの詳しい説明は、第1三半期とはのページにまとめています。
OSCAR検査・初期胎児ドックとの関係
コンバインド検査に関連して、施設によって「OSCAR(オスカー)」「初期胎児ドック」などの名称が使われることがあります。ただし、これらをすべてコンバインド検査の同義語と考えるのは正確ではありません。OSCARは「One-stop Clinic for Assessment of Risk(リスク評価のワンストップ外来)」の略で、超音波と血液検査などを組み合わせて同日にリスク評価を行う運用を指します。一方、初期胎児ドックは施設によって検査内容が異なり、NTに加えて鼻骨、静脈管血流、三尖弁逆流などの超音波所見を評価する場合や、母体血清マーカーを組み合わせる場合があります。実際に何を測定して、どのアルゴリズムでリスクを算出するかを確認することが重要です。
2. コンバインド検査で何がわかる?対象となる病気
コンバインド検査でわかるのは、おもに21トリソミー(ダウン症候群)と18トリソミー(エドワーズ症候群)の「リスクの確率」です。使うアルゴリズムによっては13トリソミー(パトウ症候群)のリスクも計算します。いずれも「ある・なし」を確定するのではなく、赤ちゃんがその染色体の変化を持つ可能性が高いか低いかを、数値で示します。各トリソミーの詳しい解説は、ダウン症候群(21トリソミー)総論・エドワーズ症候群(18トリソミー)総論・パトウ症候群(13トリソミー)総論をご覧ください。
トリソミーごとに変わるマーカーの動き方
なぜ超音波と採血の組み合わせでリスクがわかるのでしょうか。それは、染色体の変化があると、NTと血清マーカーの値が特徴的なパターンを示すからです。21トリソミーでは、free β-hCGが平均より高く、PAPP-Aが低くなる傾向があります。一方、18トリソミーと13トリソミーでは、free β-hCGとPAPP-Aの両方が低くなる傾向があります。NT(むくみ)は3つのトリソミーいずれでも厚くなる傾向があります。たとえば18トリソミーでは、free β-hCGが症例の6割ほどで、PAPP-Aが8割近くで基準値を大きく下回り、NTも約8割で厚くなると報告されています[3]。こうした値の「ずれ方」のパターンから、疾患ごとに別々のアルゴリズムでリスクを計算します。
コンバインド検査でわからないこと
⚠️ ここは誤解されやすい点です
コンバインド検査は染色体の「数」の変化のリスクを見る検査です。次のことはわかりません。
・赤ちゃんの性別(この検査で性別は判定できません)
・形態異常(体の構造の異常)の確定診断
・単一の遺伝子による病気(遺伝性疾患の多く)
・21・18・13トリソミー以外の多くの染色体の変化
また、陽性(高リスク)と出ても病気が確定したわけではなく、逆に陰性でもゼロにはなりません。
「エコーで首のむくみが見えたから性別もわかるのでは」と思われることがありますが、コンバインド検査は染色体の数的な変化のリスク評価が目的であり、性別の判定を目的とした検査ではありません。また、超音波で赤ちゃんの体の形を細かく見る「胎児ドック(精密超音波)」とも目的が異なります。混同しやすいので、次章以降で他の検査との違いも整理します。
3. コンバインド検査はいつ受ける?検査の流れ
コンバインド検査は、妊娠11週0日〜13週6日に受けます。この時期は、NTを正確に測れる週数であると同時に、早い時期に結果が得られるという利点もあります。当日は超音波でNTなどを計測し、同じ日または近い日に採血を行い、多くの場合は数日〜1週間ほどで結果が出ます。
なぜ11〜13週なのか、そして11週が有利な理由
NTは、妊娠11週より前では小さすぎて、14週を過ぎると自然に吸収されていくため、この限られた時期でしか適切に評価できません。頭殿長(CRL)でおよそ45〜84mmに相当する週数が目安です。さらに、同じ第1三半期でも早めの11週に受けるほうが、13週よりも検出率がやや高くなることが、大規模研究で示されています。ある代表的な試験では、偽陽性率5%のときの21トリソミー検出率が、妊娠11週・12週・13週でそれぞれ約87%・85%・82%と、11週と13週で約5%の差がありました[1]。血清マーカーの分離(正常と異常の差)は妊娠9〜10週ごろに最大になるため、採血を少し早めに行う運用もあります。
結果の見方(1:○○という確率とカットオフ)
結果は「1:○○」というリスク表記で示されます。たとえば「21トリソミーのリスク 1:1,000」であれば、同じ結果の人1,000人のうち1人が実際に21トリソミーという意味です。施設ごとに「1:270」や「1:300」といったカットオフ(境目)が決められており、それより高いリスクだと「スクリーニング陽性(高リスク)」、低いと「スクリーニング陰性(低リスク)」と判定されます。カットオフはあくまで振り分けの線引きであり、「陽性=病気」でも「陰性=100%大丈夫」でもない、という理解が大切です。
4. コンバインド検査の精度と的中率
コンバインド検査の21トリソミー検出率は、おおむね85〜90%(偽陽性率およそ3〜5%)です。ただし、これはあくまで「病気のある赤ちゃんをどれだけ拾えるか(検出率・感度)」の話であり、「陽性と出た人のうち実際に病気の人がどれくらいか(陽性的中率)」とは別物です。ここを分けて理解することが、精度を正しく読むうえで最も重要です。
陽性的中率は低く、陰性的中率は高い
コンバインド検査は、病気のある赤ちゃんを拾う力(検出率)は高い一方で、陽性と出た人の多くは実際には染色体の変化がありません。これは、もともと染色体の変化を持つ赤ちゃんが少数であるうえ、偽陽性率が数%あるためで、「陽性(高リスク)」の中に多くの「実際は正常」が含まれる、という統計上の性質によります。逆に、「陰性(低リスク)」と出た場合の確からしさ(陰性的中率)は非常に高いのが特長です。つまりこの検査は、「陰性で安心材料を得る」ことには向いていますが、「陽性だから病気」と考えるのは誤りで、陽性の場合は確定検査での確認が必要になります。
検出率の実データ ─ 大規模研究・母体年齢・双胎
検出率をめぐっては、10万人規模を含む複数の大規模研究が積み重ねられてきました。偽陽性率5%のときの21トリソミー検出率は、研究によっておよそ80〜90%と幅があります[1][2]。NT(と母体年齢)のみでも偽陽性率5%で約77%を検出でき、血清マーカーを加えることでさらに精度が上がります[2]。数値に幅があるのは、カットオフの設定・使うアルゴリズム・対象集団の年齢構成によって結果が変わるためで、単一の数字に決めつけないことが大切です。
母体年齢も結果に影響します。年齢が上がるほど、あらかじめのリスク(事前確率)が高くなるため、高年齢の妊婦さんでは検出率が上がる一方で、偽陽性率も高くなる傾向があります。逆に若い妊婦さんでは、全体より検出率がやや低くなる方向に働きます。双胎(ふたご)の場合は運用が変わります。双胎では血清マーカーの値が単胎より高く、古典的な研究ではfree β-hCGは約2.1倍、PAPP-Aは約1.86倍と報告されています[6]。そのため、単胎と同じ値をそのまま用いるのではなく、双胎であることを考慮した補正が必要です。さらに絨毛膜性によって血清マーカーの分布が異なることも報告されており、双胎では単胎とは異なる方法でリスク評価を行います。
「コンバインド検査は意味ない?」と言われる理由と正しい理解
「コンバインド検査は意味ない」という言葉を目にすることがあります。これは半分正しく、半分は言い過ぎです。染色体(特にダウン症)の検出精度で比べると、NIPT(新型出生前検査)のほうが大きく上回ります。NIPTの21トリソミー感度は一般集団でおよそ99%、偽陽性率も1%未満で、検出率85〜90%・偽陽性率数%のコンバインド検査より明確に高精度です[4]。この意味で、「染色体の可能性を精度よく調べたいならNIPTでよく、コンバインド検査はあえて選ぶ意義が小さい」と語られることがあるのです。
💡 とはいえ「完全に無意味」ではない
コンバインド検査の超音波部分には、染色体スクリーニングとは別の役割があります。NT計測を通じて正確な妊娠週数の確認、多胎(ふたご)の把握、明らかな形態の異常への気づきにつながることがあり、これはNIPT(採血のみ)では得られません。したがって、「染色体の精度を最優先するならNIPT、超音波で赤ちゃんの様子も一緒に見たいなら初期の超音波を含む検査」というように、目的で使い分けるのが正確な理解です。「意味がない/ある」という二択ではなく、何を知りたいかで変わる、と考えてください。NIPTとの詳しい比較は胎児ドック受けるべきか?NIPTとの違いで解説しています。
🩺 臨床遺伝専門医の視点【「検出率」と「的中率」を分けて読む】
出生前検査の結果を読むときに、医学的にとても大切なのが「検出率(感度)」と「陽性的中率」を混同しないことです。検出率が高い検査でも、対象となる病気がもともと少なければ、「陽性」と出た人の多くが実際には病気ではない、ということが普通に起こります。これは検査が悪いのではなく、確率の性質です。
だからこそ、コンバインド検査で「高リスク」と言われても、それだけで結論を出す必要はありません。医学的には、まず落ち着いて、確定検査を含めた次の選択肢を一つずつ整理して考えることが大切だと考えています。数字の意味を正しく知ることが、不要な不安を避ける助けになります。
5. コンバインド検査とNIPT・他の出生前検査の違い
「コンバインド検査とNIPTはどちらがよいか」は、目的によって答えが変わります。どちらも非確定的検査ですが、染色体の検出精度と偽陽性の少なさではNIPTが上回り、超音波で赤ちゃんの様子も同時に確認できる点はコンバインド検査(や胎児ドック)の利点です。まずは主な検査を一覧で比べてみましょう。
🔬 妊娠初期に関わる主な出生前検査の比較
| 検査 | 時期 | おもな対象・特徴 | 精度の目安 | 確定/非確定 |
|---|---|---|---|---|
| コンバインド検査 | 11〜13週 | NT+血清マーカーで21・18トリソミー等のリスクを算出 | 検出率 約85〜90% | 非確定 |
| NIPT | 10週ごろ〜 | 母体血中の胎児由来DNAで染色体を調べる(採血のみ) | 21トリソミー感度 約99% | 非確定 |
| クアトロテスト | 15〜18週 | 母体血清マーカー4項目。神経管閉鎖障害も対象 | 検出率 コンバインドより低め | 非確定 |
| 胎児ドック(精密超音波) | 初期〜後期 | 超音波で形態(体の構造)を詳しく評価 | 形態評価が主目的 | 非確定 |
| 絨毛検査・羊水検査 | 絨毛11〜14週/羊水16週〜 | 胎児細胞を直接調べる確定検査 | ほぼ確定診断 | 確定 |
※精度・時期・費用は施設や検査項目により異なります。数値は目安です。NIPT・確定検査の詳細は各内部リンク先をご覧ください。
NIPTとの違いと使い分け
最大の違いは、染色体を調べる精度と偽陽性の少なさです。NIPTは母体の血液中に含まれる胎児由来のDNA(セルフリーDNA)を分析するため、21トリソミーで感度約99%・偽陽性率1%未満と高精度で、「陽性」の的中率もコンバインド検査より高くなります[4]。その分、不要な確定検査(羊水検査など)を減らせるのが強みです。一方でNIPTも非確定的検査であり、陽性なら確定検査が必要な点は同じです。染色体の可能性を精度よく知りたいならNIPT、超音波で赤ちゃんの様子も同時に見たいなら初期の超音波を含む検査、という整理になります。
クアトロテストとの違い
同じ母体血清マーカーを使う検査にクアトロテストがあります。違いは時期と項目です。クアトロテストは妊娠15〜18週ごろに採血のみで行い、AFPなど4項目を測って21・18トリソミーと神経管閉鎖障害のリスクを見ます。一方コンバインド検査は、より早い11〜13週に超音波(NT)を組み合わせるぶん、時期が早く、血清マーカー単独より精度が高い傾向があります。検査を選ぶ際は、妊娠週数だけでなく、対象疾患、検出率、超音波評価の有無、その後に選択できる検査まで含めて検討します。
6. 検査結果が陽性(高リスク)だったら
コンバインド検査は非確定的検査なので、「陽性(高リスク)」と出ても、それだけでは診断は確定しません。診断を確定するには、胎児の細胞を直接調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)が必要です。前述のとおり陽性の多くは実際には非罹患のため、慌てて結論を出す必要はありません。まずは結果の意味を整理し、確定検査を受けるかどうかを含めて、次の選択肢を落ち着いて検討します。
確定検査には、妊娠11〜14週ごろに行う絨毛検査と、16週以降に行う羊水検査があります。いずれも胎児の染色体を直接調べてほぼ確定的に診断できますが、わずかながら流産などのリスクを伴うため、受けるかどうかは十分な情報のもとで検討します。ミネルバクリニックでは、羊水検査・絨毛検査を実施しており、当院で行う出生前検査について臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを行っています。
7. コンバインド検査の費用と受けられる場所
コンバインド検査は自費(保険適用外)で、費用は施設により異なりますが、目安として3〜5万円程度です。出生前の染色体スクリーニング検査は病気の治療を目的とするものではないため公的医療保険の対象外で、全額が自己負担となります。別途、超音波の判読やカウンセリングにかかる費用が加わる施設もあります。
医療費控除の扱い
確定申告の医療費控除については注意が必要です。出生前の染色体スクリーニング検査は、原則として医療費控除の対象になりません。国税庁は、母体血を用いた出生前遺伝学的検査について、胎児の染色体の数的異常を調べる「診断の一種」であり、結果が治療につながらないことから、医療費控除の対象とはならないとの見解を示しています[7]。コンバインド検査も同じく染色体の数的異常のリスクを調べる検査であり、同様の位置づけと考えられます(ただし国税庁が明示的に取り上げているのは母体血を用いた検査です)。一方で、妊娠と診断されてからの妊婦健診の費用や、通院のための公共交通機関の運賃などは医療費控除の対象になり得ます。詳しくはNIPTは医療費控除の対象になる?で解説しています。
💡 補足:PAPP-A低値と妊娠高血圧腎症の予防
コンバインド検査で測るPAPP-Aは、値が低いと早産や胎児発育不全、妊娠高血圧腎症などと関連することが知られています(ただしPAPP-A単独では予測の的中率は高くありません)。近年は、母体因子・血圧・子宮動脈の血流・PAPP-Aなどを組み合わせた第1三半期の妊娠高血圧腎症スクリーニングで高リスクと判定された妊婦さんに、低用量アスピリン(150mg/日)を11〜14週から予防的に投与すると、早産型の妊娠高血圧腎症が有意に減ることが大規模試験で示されています[5]。これは染色体を調べるコンバインド検査とは別の「妊娠高血圧腎症スクリーニング」の話ですが、第1三半期の検査が染色体以外の情報にもつながりうる一例です。実施の有無は施設によって異なります。
🏥 ミネルバクリニックで受けられる出生前検査
ミネルバクリニックでは、NIPTなどの出生前検査に加え、確定検査である羊水検査・絨毛検査を実施しています。検査前後には、当院で行う検査の内容・限界・結果の意味について臨床遺伝専門医が説明します。各検査の違いを確認したい方は、出生前診断の種類一覧もあわせてご覧ください。
まとめ
コンバインド検査(妊娠初期・第1三半期スクリーニング)は、NT(超音波)+母体血清マーカー(PAPP-A・free β-hCG)+母体年齢で、21・18トリソミーなどのリスクを確率で示す非確定的検査です。妊娠11〜13週に受け、21トリソミー検出率はおおむね85〜90%。ただし陽性の多くは実際には非罹患で、陰性の確からしさは高い、というスクリーニング検査の性質を正しく理解することが大切です。
染色体を調べる精度と偽陽性の少なさではNIPTが上回るため、「染色体を精度よく知りたいならNIPT」というのが医学的に妥当な考え方です。一方で、初期の超音波には週数確認や形態の気づきという別の役割があり、「意味がある・ない」ではなく、何を知りたいかで使い分けるのが正確な理解です。いずれの検査も、受けるかどうか、結果をどう受け止めるかを決めるのはご本人です。判断に迷うときは、臨床遺伝専門医による説明を活用してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. コンバインド検査とNIPTはどちらがよいですか?
目的によって変わります。染色体(特にダウン症)の検出精度と偽陽性の少なさではNIPTが上回り、21トリソミー感度は約99%です。一方、コンバインド検査は超音波を含むため、週数の確認や赤ちゃんの様子も同時に見られる利点があります。染色体の可能性を精度よく知りたいならNIPT、超音波で様子も見たいなら初期の超音波を含む検査、という使い分けが基本です。どちらも非確定的検査で、陽性なら確定検査が必要です。
Q2. コンバインド検査は意味がないのですか?
「無意味」ではありません。ただし染色体スクリーニングの精度ではNIPTに劣ります(検出率約85〜90%に対しNIPTは約99%)。この点で「染色体を精度よく調べたいならNIPTでよい」と語られることがあります。一方でコンバインド検査の超音波部分には、正確な妊娠週数の確認、多胎の把握、形態の異常への気づきといった別の役割があります。目的次第で価値が変わる、というのが正確な理解です。
Q3. 費用はいくらですか?保険や医療費控除は使えますか?
自費(保険適用外)で、費用の目安は3〜5万円程度です(施設により異なります)。医療費控除については、出生前の染色体スクリーニング検査は治療につながらない検査として原則対象外とされており、国税庁も母体血を用いた出生前遺伝学的検査を対象外としています。コンバインド検査も同様の位置づけと考えられます。なお、妊婦健診や通院の交通費などは医療費控除の対象になり得ます。
Q4. 何がわかりますか?性別はわかりますか?
おもに21トリソミー(ダウン症候群)と18トリソミーのリスクを確率で示します(アルゴリズムにより13トリソミーも)。性別はわかりません。また、形態異常の確定診断や、単一の遺伝子による病気の多くも対象外です。あくまで染色体の数の変化について「可能性が高いか低いか」を推定する検査です。
Q5. いつ受けますか?結果はどう見ればよいですか?
妊娠11週0日〜13週6日に受けます。NTがこの時期にしか適切に測れないためで、早めの11週のほうが13週より検出率がやや高い傾向があります。結果は「1:○○」という確率で示され、施設ごとのカットオフ(例:1:270など)より高いと「陽性(高リスク)」、低いと「陰性(低リスク)」と判定されます。カットオフは振り分けの線引きで、陽性=病気でも陰性=100%大丈夫でもありません。
Q6. 陽性(高リスク)だったらどうすればよいですか?
コンバインド検査は非確定的検査なので、陽性でも診断は確定していません。実際には陽性の多くが非罹患です。診断を確定するには、胎児の細胞を直接調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)が必要です。確定検査にはわずかな流産などのリスクがあるため、受けるかどうかを含めて、十分な情報のもとで検討します。判断に迷うときは臨床遺伝専門医にご相談ください。
参考文献
- [1] Malone FD, et al. First-Trimester or Second-Trimester Screening, or Both, for Down’s Syndrome (FASTER trial). N Engl J Med. 2005;353(19):2001-2011. [PubMed 16282175]
- [2] Wapner R, et al. First-Trimester Screening for Trisomies 21 and 18 (BUN study). N Engl J Med. 2003;349(15):1405-1413. [DOI 10.1056/NEJMoa025273]
- [3] Kagan KO, Wright D, Valencia C, Maiz N, Nicolaides KH. Screening for trisomies 21, 18 and 13 by maternal age, fetal nuchal translucency, fetal heart rate, free β-hCG and pregnancy-associated plasma protein-A. Hum Reprod. 2008;23(9):1968-1975. doi:10.1093/humrep/den224. [PubMed 18544579]
- [4] Iwarsson E, et al. Analysis of cell-free fetal DNA in maternal blood for detection of trisomy 21, 18 and 13: a systematic review and meta-analysis. Acta Obstet Gynecol Scand. 2017;96(1):7-18. [PubMed 27779757]
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- [7] 国税庁 質疑応答事例「母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用」. https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/80.htm



