ダウン症候群

更新日06/09/2019

ダウン症候群とは

文責:仲田洋美
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号

ダウン症候群(Down syndrome)は、ヒトの22対の常染色体(1~22番染色体)と2本の性染色体(X,Y染色体)のうち、21番染色体が1本多く存在し、合計3本(モノ・ジ・トリと数えるのでトリソミーといます)になることで発症する先天性疾患です。

多くは配偶子を作る為の第1減数分裂時の不分離によるものだといわれており、
新生児で最も多い遺伝性疾患となっています。

症状としては、
身体的発達の遅延、特徴的な顔つき(目と目の間が広いなど)、知的障害が特徴です。

知的障害の程度はばらつきは大きく、現時点で治療法は存在しません。

早期からの療育によりQOLが改善されることが見込まれています。

ダウン症は、ヒトにおいて最多の遺伝性疾患で、
年間1,000人に1人という頻度ですが、母体の年齢とともにリスクが上がります。

蒙古症(もうこしょう)という黄色人種に対する人種差別的名称で呼ばれたことも

ダウンは最初、目尻が上がっているなどという特徴を捉えて「Mongolism(蒙古人症)」または「mongolian idiocy(蒙古痴呆症)」と称し、発生時障害により人種的に劣ったアジア人のレベルで発育が止まったのだと仮説されました。アジア人にもこの病気がある事から、これは明らかな誤りだとされ、現在では「ダウン症候群」、「Trisomy 21」と名称されます。

症状

知的障害

先天性心疾患(50%)

低身長・肥満・筋力が弱い・頸椎が不安定

閉塞性睡眠時無呼吸(50-75%)

特異的顔貌・翼状頚 など

男性の場合、全て不妊。
女性の場合多くは妊娠が可能であるが、多くは自然流産。

また、母親(または父親)がダウン症候群患者の場合、
胎児のダウン症候群発症率は50%であるため高確率で遺伝する。

40歳以降にアルツハイマー病を高確率で発症

顔の中心部があまり成長しないが、
外側は成長するため、
吊り上った小さい目を特徴とする顔貌(特異的顔貌)となる。

高率に、鎖肛・先天性心疾患・先天性食道閉鎖症・白血病・円錐角膜・斜視・甲状腺機能亢進症・
甲状腺機能低下症などを合併する。

原因

21番染色体のトリソミーが原因です。
トリソミーとなった理由は3タイプに分けられ、
生殖細胞の減数分裂時の失敗(染色体の不分離と転座)
によるものです。

標準型21トリソミー(95%):

21番染色体の減数分裂時の不分離(ちゃんと分かれる事が出来なくて、
2本が1本ずつにならずに2本とも一つの細胞に移行してしまう)
によるものです。

転座型(3%):

21番染色体が他の染色体に付着しているものを指します。

転座型の半数は親に均衡型転座があるとされ、
ダウン症候群全体の1.5%を占める事となります。

モザイク型(1-2%):

個体の中に正常核型の細胞と21トリソミー(21番目の染色体が3本ある核型)の細胞とが
混在していることを指します。

モザイクというのは、
同じ1つのものから違う性質のものが出来る事を言います。

余談ですが、

これに対してキメラというのは、
違う性質のものが一緒になっていることを指し、
有名なのは頭が人間、体はライオンというスフィンクスがあります。

標準型は精子、卵子という配偶子形成のときに
減数分裂において染色体が分離できなかった
ことが原因です。

転座型は親の片方が均衡転座保因者であり、
適切な遺伝カウンセリングを受ける必要があります。

モザイク型は受精後の卵分裂の過程で
染色体の不分離が起こり、
正常な細胞とトリソミーの細胞が混在するようになるもので、
正常な細胞も多数あるので、
重度な障害は見られないとされていますが、
どの臓器を作る細胞にモザイクがあるかによって症状が異なります。

異常な細胞は分裂能力に問題があり、
生後、末梢血のなかのトリソミーの細胞の割合を見ていくと
経時的に下がっていくとか、消えたという報告もあります。

しかし特徴的顔貌などの表現型が正常になることはありません。
骨格などは発生の途中で決まっていくからです。

染色体トリソミーは21番染色体以外にも起こるのですが、

常染色体(1~22の番号がついている染色体をこう呼びます)には

生命活動に必須の遺伝情報が含まれるため、
トリソミーは流産または死産となることが多くなるのですが、
21番染色体は染色体の中で遺伝子が一番少ない為、
障害を残すものの致命的とならない場合があるのです。

それでも生まれてこられるのは20-30%と言われています。

検査

妊娠11週頃に絨毛検査で確定的に診断できるのですが、
絨毛検査は採取した場所しか検査出来ないので、
モザイクが見逃されることがあります。
絨毛検査をしている医療機関が羊水検査に比べて少ない
という難点もあります。

妊娠15-16週頃に行う母体血清マーカー検査(クワトロテスト等)
は確率しかわからず、
例えば同年齢の人の通常より3倍と言われても、
実際に自分が該当するのかどうなのかが全く分からず、
結果が出るまでに2-3週間を要する、
つまり陽性と出た時点で18週なため、
あわただしく羊水検査を受ける事につながります。

これに対してNIPTは、
陽性・陰性ははっきり出るのですが、

スクリーニング検査
(正常と考えられる集団から以上のある可能性のある人をはじき出して、
確定診断に結び付ける機会を付与するための検査、
肺がん検診と同じと考えて頂くとちょうどいいです。
異常なしは、異状なし。
異常があれば別の検査で確定しますよね?)

であるため、陽性の場合は確定のための検査が必要になります。

しかし、NIPTは10週から可能で1-2週間で結果が出る、
という違いは大きなものだと思います。

 

わが国では血清マーカーを導入するときに、
当時の厚生労働省出生前診断に関する専門委員会では、母体となった古山研究班の「医療者側から勧める事はしない」という結論をまとめました。
裁判所の判決も、高齢出産であるからということで、こうした検査があることを説明しなくても医療側の過失ではないとされています。(京都地裁平成9年1月24日判決

イギリスでは国策として2004年以降は全妊婦に出生前診断を推進しているのですが、
血清マーカーに対して公費が負担されるのであり、
NIPTは自費で行うということはあまり知られていないように思います。
(ミネルバクリニックに来たイギリス人のかたやイギリス在住時に受けた事のある人たちから伺いました)

倫理的問題点

2002年の人工妊娠中絶率を報告した論文では、
イギリスとヨーロッパでダウン症候群と診断された妊婦のうち、
91-93%が妊娠中絶しています。
アメリカでも同様に中絶率は高く87-98%と報告されています。

ダウン症のお子さんが生まれた際、
無償の愛と存在することの喜びを感じたあるジャーナリストの夫は、
妻が検査を受けていれば中絶できた、
という雑音に怒りを表明したそうです。

しかし、そのお子さんへの態度は素晴らしいものだと思いますが、
果たして出生前検査と発見時に中絶をすすめる医師や
助産師を攻撃したりすることはどうなのでしょうか?

現実は辛いですよね?

障害を持った個人の支援をするということは、
マンパワー・共感的感情・エネルギー、
そして有限の資源である財源を要すると言う事は事実ですよね。

自分が他人(社会)にその重荷を背負わせる権利があるのか、
という意見もあります。

しかし、行き過ぎると優性思想の復権につながり、
果てはデザイナーズベビーにつながっていきます。

果たして我々は一体どこで線引きをすべきなのか?

何を許容し、何を許容しないのか?

人類は一体どこまで神に近づこうとしているのか?
深刻な問題が横たわっています。

ちなみに、ミネルバには出生前診断をせずに生まれたお子さんが
ダウン症候群だったという患者さんたちも検査に来ます。

いろんな思いを伝えていただいたり、
実際にダウン症候群のお子さんにあわせていただいたりしておりますが、
天使ちゃんのようなその可愛らしさに感動します💛

でも、口をそろえておっしゃることは、

この子は愛しくて仕方がないのだけど、
2人目の同じ疾患のお子さんを持ちたくないということなんです。

障害のあるお子さんをお持ちの御夫婦は、
別にその子が生まれてこなければよかったと思って出生前診断を受けに来るわけではありません。

人それぞれいろんな事情があります。
だから、外野が一方的に自分たちの価値観で非難すべきではない、
とわたしは思っています。
家族の一生の問題ですから。

 

治療

根本的な治療方法はありません。
心疾患等の合併症に対しては外科的な医療介入が行われます。

 

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