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【医師監修】NIPT陰性でも染色体異常を疑われた体験談と検査の信頼性|出生前診断のメリットと精度

目次



【医師監修】NIPT陰性でも染色体異常を疑われた体験談と検査の信頼性|出生前診断のメリットと精度

NIPTで染色体異常が陰性と判定されたにも関わらず、出生後に赤ちゃんに染色体異常を疑われるケースがあります。この記事では実際の患者さんの体験談をもとに、NIPT検査の信頼性と限界、そして検査を受けるメリットについて臨床遺伝専門医が解説します。

この記事でわかること
  • NIPT検査で陰性でも出生後に染色体異常を疑われることがある理由
  • 実際の体験談から学ぶNIPT検査の限界と価値
  • フルコースNIPT検査で検出できる異常の範囲
  • 出生後に赤ちゃんに異常が疑われた場合の対処法
  • 心の準備としてのNIPTのメリット

NIPTで陰性判定後に染色体異常を疑われた実際の体験談

ミネルバクリニックで当時のフルコースNIPT検査を受けられた患者さんから、出産後の体験についてメールをいただきました。この体験談は多くの妊婦さんや新米ママにとって参考になる貴重な情報です。

生まれた赤ちゃんは哺乳がうまくいかず、哺乳しても吐いてしまい、どんどん体重が減り、脱水をおこして点滴しないと行けなくなりました。停留睾丸、哺乳力不足、筋力低下などの症状から、プラダーウィリ症候群が疑われました。

不安でたまらない時間でしたが、ミネルバクリニックでフルコースの新型出生前診断を受けていたことが心の支えになっていました。「ミネルバクリニックで検査をフルコースしたのだからこれに関しては大丈夫かな」と落ち着こうとしていました。

この患者さんは、出生後の赤ちゃんの状態から染色体異常、特にプラダーウィリ症候群の可能性を疑われました。しかし、最終的な染色体検査の結果では異常は見つからず、時間とともに赤ちゃんの哺乳力も向上しました。

検査結果と回復過程

「◇月◆日に、染色体検査の結果を告知されまして、染色体異常はなしでした。Gバンド法の検査と、15q11-13に関して、FISH法の検査を行ったとのことでした。(やっぱりプラダーウィリを疑われていました。)」

「本人は、哺乳に関しては問題なくできるようになり、うるさく泣いて暴れるようになって、結局は、適応障害で、哺乳が下手な子という診断でした。精巣も降りてきて、二つとも袋の中にあります。」

なぜNIPT検査で陰性でも染色体異常が疑われることがあるのか

NIPT検査は高い検出率を誇りますが、100%の精度ではありません。ここでは、なぜNIPT陰性でも出生後に染色体異常を疑われることがあるのかを解説します。

NIPT検査の原理と検出可能な染色体異常

NIPT(新型出生前診断)は、母体血液中に存在する胎児由来のDNAを分析して染色体異常の可能性を調べる非侵襲的な検査です。主にダウン症(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)などの染色体数的異常を高い精度で検出できます。

NIPT検査の検出率
  • ダウン症(21トリソミー):99%以上
  • エドワーズ症候群(18トリソミー):98%以上
  • パトー症候群(13トリソミー):99%以上

NIPTの精度と限界

NIPTは高い検出率を持つ一方で、いくつかの限界があります。まず、偽陰性(実際には染色体異常があるのに検査では陰性と判定される)の可能性があります。また、NIPT検査では検出できない染色体異常も存在します。

NIPTでは検出できない可能性がある染色体異常
  • 染色体の微小欠失・微小重複
  • モザイク型染色体異常(体の一部の細胞だけに異常がある場合)
  • 均衡型転座(染色体の一部が別の染色体に付着しているが、遺伝情報の過不足はない場合)
  • 三倍体、四倍体などの極めてまれな染色体異常
  • 胎盤限局性モザイク(胎盤のみに染色体異常がある場合)

特に微小欠失症候群などの小さな染色体異常は、通常のNIPT検査では検出が難しい場合があります。プラダーウィリ症候群もその一つで、15番染色体長腕の特定領域(15q11-13)の欠失や片親性ダイソミー(両方の染色体が同じ親由来)が原因で発症します。

本ケースで疑われたプラダーウィリ症候群とは

今回の体験談で疑われたプラダーウィリ症候群について詳しく見ていきましょう。

プラダーウィリ症候群の主な症状と特徴

プラダーウィリ症候群は、15番染色体長腕の一部(15q11-13領域)に異常がある先天性疾患です。この症候群の特徴的な症状には以下のようなものがあります。

プラダーウィリ症候群の主な症状
  • 新生児期・乳児期:筋緊張低下(筋肉の弱さ)、哺乳困難、成長障害、停留睾丸(男児)
  • 幼児期以降:過食、肥満傾向、低身長、知的発達の遅れ、性腺機能低下
  • その他の特徴:特徴的な顔貌、手足の小ささ、行動上の問題(かんしゃく、強迫性障害など)
プラダーウィリ症候群の原因と診断

15番染色体長腕の欠失

父親由来の15番染色体の欠如

FISH法による診断
特定の領域の欠失を検出

メチル化解析
片親性ダイソミーの検出

遺伝子診断の方法

プラダーウィリ症候群の診断には、主に以下のような遺伝子検査が用いられます:

  • 1 FISH法(fluorescence in situ hybridization):15q11-13領域の欠失を検出する方法
  • 2 Gバンド法:染色体全体の構造異常を広く検出できる方法
  • 3 メチル化解析:片親性ダイソミーなど、FISH法では検出できない異常を調べる方法
  • 4 マイクロアレイ解析:染色体の微小な欠失・重複を検出する方法

今回の体験談では、生後に「Gバンド法の検査と、15q11-13に関して、FISH法の検査」が行われたと記載されています。これらの検査によって、染色体異常はないという結果が出ています。

NIPTによるプラダーウィリ症候群の検出可能性

通常の基本的なNIPT検査では、プラダーウィリ症候群のような微小欠失症候群を検出することは難しいとされています。しかし、近年の拡張型NIPT検査(ミネルバクリニックのフルコースNIPTなど)では、一部の微小欠失症候群も検査対象に含まれています。

重要なポイント

微小欠失症候群の検査を含むNIPT検査でも、すべての微小欠失や微小重複を検出できるわけではありません。また、検出率も主要な3トリソミーよりは低くなる傾向があります。

フルコースのNIPT検査で検査できる範囲と限界

ここでは、体験談の患者さんが受けた「フルコースのNIPT検査」の内容と、その検査範囲・限界について解説します。

第1世代から第3世代までのNIPT検査の違い

NIPT検査は技術の進歩とともに進化し、検査できる範囲が広がってきました。

世代 検査内容 検出可能な異常
第1世代 基本3トリソミー検査 ダウン症候群(21トリソミー)
エドワーズ症候群(18トリソミー)
パトー症候群(13トリソミー)
第2世代 全染色体検査 基本3トリソミーに加えて
すべての常染色体(1〜22番)の数的異常
性染色体(X, Y)の数的異常
第3世代 全染色体+微小欠失症候群 第2世代の内容に加えて
特定の微小欠失症候群
(DiGeorge症候群、Prader-Willi/Angelman症候群など)

ミネルバクリニックのフルコースNIPT検査の内容

体験談の中で患者さんが受けたフルコースNIPT検査の内容は以下の通りです:

フルコースNIPT検査の内容
  • 1 第3世代の基本検査(13トリソミー・18トリソミー・21トリソミー)
  • 2 4種類の微小欠失症候群検査
  • 3 100遺伝子2000か所の遺伝子変異検査
  • 4 第1世代の全染色体検査
  • 5 4か所5疾患の微小欠失症候群検査

このように、体験談の患者さんは当時可能だった最も包括的なNIPT検査を受けていたことがわかります。しかし、それでも検査の限界は存在します。

検査では発見できない異常について

上記のような包括的なNIPT検査でも、以下のような異常は検出が難しい場合があります:

  • 特定の検査パネルに含まれていない微小欠失・微小重複
  • 一塩基置換(SNV)などの点突然変異
  • 低頻度モザイク(体の一部の細胞だけに生じている異常)
  • 胎盤限局性モザイク(胎盤のみに生じている異常で、胎児には影響がない場合)
  • 単一遺伝子疾患(特定の遺伝子パネルに含まれていないもの)
  • 後天的な疾患や環境要因による発達の問題
NIPT検査の限界を理解する

どんなに包括的なNIPT検査でも、すべての先天異常や遺伝的疾患を検出できるわけではありません。NIPT検査は「確率的な検査」であり、陰性結果は「異常がない確率が高い」ことを示すものです。100%の保証ではないことを理解しておくことが重要です。

NIPTを受けるメリット:心の準備と安心材料として

今回の体験談からは、NIPTを受けることのメリットの一つとして「心の支え」になるという側面が浮かび上がってきました。

「染色体検査の結果が出るまでの間は、先生と先生にしていただいた検査結果を支えにして過ごしていました。フルコースの新型出生前診断をやっていて本当に良かったです。」

染色体異常の可能性を事前に知ることの価値

NIPT検査を受ける最も一般的な理由は、胎児の染色体異常の可能性を事前に知ることです。これにより、以下のようなメリットがあります:

1

出産・育児の準備時間の確保

陽性の場合、出産や育児の準備をする時間を持つことができます。専門家に相談し、必要な情報を収集することで、精神的な準備が可能になります。

2

専門家のサポート体制構築

必要に応じて専門家のサポートを早期に受けることができます。医療チームとの連携を早期に構築できることが大きなメリットです。

3

家族・周囲のサポート体制整備

家族や周囲へのサポート体制を整える時間を確保できます。特別なニーズがある場合、家族全体で対応の準備ができます。

4

医学的準備と治療計画

追加の医学的検査や治療の計画を立てることができます。出生後すぐに必要となる可能性のある医療的ケアの準備ができます。

体験談から見る「心の支え」としてのNIPT

今回の体験談からは、NIPT検査のもう一つの側面が見えてきます。それは「陰性結果が出ている検査項目については、一定の安心感を持つことができる」という点です。

出生後に赤ちゃんに何らかの症状や異常が見られた場合でも、NIPT検査で陰性だった異常については「その可能性は低い」と考えることができ、不安な時期の「心の支え」になります。

体験談より

「ミネルバクリニックでフルコースの新型出生前診断を受けていたことが彼女の心の支えになっていました。ご本人は『ミネルバクリニックで検査をフルコースしたのだからこれに関しては大丈夫かな』と落ち着こうとしている、とおっしゃっていました。」

医師のサポートを受けることの意義

NIPT検査を受ける際には、適切な遺伝カウンセリングと医師のサポートが重要です。今回の体験談でも、患者さんは不安な時期に担当医師からの電話に支えられたと述べています。

「先生がお電話をくださったとき、仲田先生は、やっぱり仲田先生だなと感じました。不安でいっぱいの時期に、お心にかけてくださってありがとうございました。」

このように、NIPT検査のメリットは単に検査結果を得るだけではなく、専門医のサポートや心理的な安心感も含まれます。

出生後に赤ちゃんに異常が疑われた場合の対処法

出生後に赤ちゃんに何らかの異常が疑われた場合、どのように対処すべきでしょうか。今回の体験談を参考に、実践的なアドバイスをご紹介します。

症状が見られた時に相談すべき専門家

赤ちゃんに気になる症状がある場合、以下の専門家に相談することが推奨されます:

  • 1 小児科医:赤ちゃんの全般的な健康状態を評価
  • 2 新生児科医:特に早産児や新生児期の問題に詳しい専門医
  • 3 臨床遺伝専門医:遺伝的な疾患が疑われる場合
  • 4 小児神経科医:筋緊張低下や神経学的な症状がある場合
  • 5 小児内分泌科医:ホルモン関連の問題(性腺機能など)がある場合
症状の例と相談すべき専門家
症状 相談すべき専門家
哺乳困難・体重増加不良 小児科医、新生児科医、授乳コンサルタント
筋緊張低下・活動性の低下 小児神経科医、リハビリ専門医
停留睾丸 小児泌尿器科医
特徴的な顔貌・先天奇形 臨床遺伝専門医

必要な検査と診断プロセス

染色体異常が疑われる場合、以下のような検査が行われることがあります:

  • 染色体検査(Gバンド法):染色体の数や大きな構造異常を調べる
  • FISH法:特定の染色体領域の欠失や重複を検出する
  • マイクロアレイ解析:より小さな染色体の欠失・重複を検出する
  • 遺伝子パネル検査:特定の遺伝子群の変異を調べる
  • 全エクソーム解析・全ゲノム解析:より網羅的に遺伝子変異を調べる

今回の体験談では、Gバンド法とFISH法による検査が行われました。

医師からの説明を引き出すコミュニケーション方法

医師とのコミュニケーションは非常に重要です。以下のようなアプローチが役立ちます:

  • 検査の目的と内容について具体的に質問する
  • わからない専門用語があれば、遠慮なく説明を求める
  • 検査結果が出た場合の対応や治療法について事前に聞いておく
  • 必要に応じてメモを取るか、会話を録音する許可をもらう
  • 不安なことや疑問点をリストアップしておき、診察時に忘れずに質問する
体験談より

「医師は何の検査をするとか説明しなかったそうです。」

医師から十分な説明がない場合は、積極的に質問することが大切です。どのような検査をするのか、なぜその検査が必要なのか、結果はいつ出るのかなど、遠慮せずに確認しましょう。

親の心理的ケアと支援リソース

赤ちゃんに異常が疑われる状況は、親にとって大きなストレスとなります。以下のような心理的ケアや支援が役立ちます:

  • 信頼できる医療者や家族との対話
  • 同じような経験をしている親のサポートグループへの参加
  • 必要に応じて心理カウンセリングを受ける
  • 正確な情報を得て、最悪のシナリオを想定しすぎないようにする
  • 自分自身のケア(十分な休息、栄養、サポートを得ること)も忘れない

今回の体験談では、検査結果が出るまでの不安な期間に、NIPT検査の結果と担当医師のサポートが心の支えになったことがわかります。

NIPT検査の選び方と検査前に知っておくべきこと

NIPT検査を検討する際には、適切な検査を選び、事前に十分な情報を得ることが重要です。

基本検査とオプション検査の違い

NIPT検査には様々な種類があり、基本検査とオプション検査に分けられます:

NIPT検査の種類
  • A 基本検査:13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症)の3つの主要な染色体異常
  • B オプション検査
    • 性染色体の数的異常(ターナー症候群、クラインフェルター症候群など)
    • その他の常染色体の数的異常(全染色体検査)
    • 微小欠失症候群(DiGeorge症候群、Prader-Willi症候群など)
    • 単一遺伝子疾患の検査(特定の遺伝子パネル)

今回の体験談の患者さんは、複数のオプション検査を含む「フルコース」のNIPT検査を受けていました。

検査機関選びのポイント

NIPT検査を受ける医療機関を選ぶ際のポイントは以下の通りです:

1

専門医の在籍

臨床遺伝専門医が在籍しているかを確認しましょう。専門的な知識を持つ医師からの説明を受けられます。

2

遺伝カウンセリング

検査前後の遺伝カウンセリングが充実しているかを確認します。検査の意味や結果の解釈について理解を深められます。

3

検査の精度と実績

検査数や陽性的中率などの実績を確認しましょう。経験豊富な医療機関は、より信頼性の高い検査を提供できます。

4

サポート体制

陽性結果が出た場合のサポート体制や、出産後も含めたフォローアップ体制が整っているかも重要なポイントです。

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングと包括的なNIPT検査を提供しています。

遺伝カウンセリングの重要性

NIPT検査を受ける前の遺伝カウンセリングは非常に重要です。以下のような点について事前に理解を深めておくことが大切です:

  • 1 検査で何がわかり、何がわからないか(検査の範囲と限界)
  • 2 検査結果の解釈方法(陽性・陰性の意味、偽陽性・偽陰性の可能性)
  • 3 陽性結果が出た場合の確定検査と選択肢
  • 4 検査結果が家族や今後の妊娠に与える影響

検査結果の解釈について知っておくべきこと

NIPT検査の結果を正しく理解するために、以下の点を知っておくことが重要です:

  • NIPT検査は確率的な検査であり、100%の確実性はない
  • 陰性結果は「異常がない確率が高い」ことを示すもので、絶対的な保証ではない
  • 陽性結果が出た場合でも、必ず確定検査(羊水検査など)が必要
  • 検査では検出できない染色体異常や遺伝子疾患が存在する
重要

今回の体験談のように、NIPT検査で陰性だった場合でも、出生後に赤ちゃんに何らかの症状が見られることがあります。NIPT検査はスクリーニング検査であり、すべての遺伝的・先天的な問題を検出できるわけではありません。

まとめ:NIPT検査を考える妊婦さんへのアドバイス

この記事で紹介した体験談と専門的な知識をもとに、NIPT検査を検討中の妊婦さんへのアドバイスをまとめます。

検査の限界を理解した上での意思決定の重要性

NIPT検査は優れた検査ですが、限界があることを理解しておくことが重要です:

  • ! NIPT検査は確率的な検査であり、100%の確実性はない
  • ! 陰性結果は「異常がない確率が高い」ことを示すもので、絶対的な保証ではない
  • ! 検査では検出できない染色体異常や遺伝子疾患が存在する
  • ! NIPT検査の結果だけで確定診断はできず、陽性の場合は確定検査が必要

これらの限界を理解した上で、自分にとって最適な検査を選ぶことが大切です。

専門医のサポートを受けることの意義

NIPT検査を受ける際には、臨床遺伝専門医などの専門家からの適切なサポートを受けることが重要です:

  • 検査前後の遺伝カウンセリングで十分な情報と心理的サポートを得る
  • 検査結果の詳細な説明を受け、疑問点を解消する
  • 陽性結果が出た場合の次のステップについて相談する
  • 今回の体験談のように、出産後も必要に応じてサポートを求める






【医師監修】NIPT陰性でも染色体異常を疑われた体験談と検査の信頼性|出生前診断のメリットと精度(続き)

医師のサポートを受けることの意義

NIPT検査を受ける際には、適切な遺伝カウンセリングと医師のサポートが重要です。今回の体験談でも、患者さんは不安な時期に担当医師からの電話に支えられたと述べています。

「先生がお電話をくださったとき、仲田先生は、やっぱり仲田先生だなと感じました。不安でいっぱいの時期に、お心にかけてくださってありがとうございました。」

このように、NIPT検査のメリットは単に検査結果を得るだけではなく、専門医のサポートや心理的な安心感も含まれます。

出生後に赤ちゃんに異常が疑われた場合の対処法

出生後に赤ちゃんに何らかの異常が疑われた場合、どのように対処すべきでしょうか。今回の体験談を参考に、実践的なアドバイスをご紹介します。

症状が見られた時に相談すべき専門家

赤ちゃんに気になる症状がある場合、以下の専門家に相談することが推奨されます:

  • 1 小児科医:赤ちゃんの全般的な健康状態を評価
  • 2 新生児科医:特に早産児や新生児期の問題に詳しい専門医
  • 3 臨床遺伝専門医:遺伝的な疾患が疑われる場合
  • 4 小児神経科医:筋緊張低下や神経学的な症状がある場合
  • 5 小児内分泌科医:ホルモン関連の問題(性腺機能など)がある場合
症状の例と相談すべき専門家
症状 相談すべき専門家
哺乳困難・体重増加不良 小児科医、新生児科医、授乳コンサルタント
筋緊張低下・活動性の低下 小児神経科医、リハビリ専門医
停留睾丸 小児泌尿器科医
特徴的な顔貌・先天奇形 臨床遺伝専門医

必要な検査と診断プロセス

染色体異常が疑われる場合、以下のような検査が行われることがあります:

  • 染色体検査(Gバンド法):染色体の数や大きな構造異常を調べる
  • FISH法:特定の染色体領域の欠失や重複を検出する
  • マイクロアレイ解析:より小さな染色体の欠失・重複を検出する
  • 遺伝子パネル検査:特定の遺伝子群の変異を調べる
  • 全エクソーム解析・全ゲノム解析:より網羅的に遺伝子変異を調べる

今回の体験談では、Gバンド法とFISH法による検査が行われました。

医師からの説明を引き出すコミュニケーション方法

医師とのコミュニケーションは非常に重要です。以下のようなアプローチが役立ちます:

  • 検査の目的と内容について具体的に質問する
  • わからない専門用語があれば、遠慮なく説明を求める
  • 検査結果が出た場合の対応や治療法について事前に聞いておく
  • 必要に応じてメモを取るか、会話を録音する許可をもらう
  • 不安なことや疑問点をリストアップしておき、診察時に忘れずに質問する
体験談より

「医師は何の検査をするとか説明しなかったそうです。」

医師から十分な説明がない場合は、積極的に質問することが大切です。どのような検査をするのか、なぜその検査が必要なのか、結果はいつ出るのかなど、遠慮せずに確認しましょう。

親の心理的ケアと支援リソース

赤ちゃんに異常が疑われる状況は、親にとって大きなストレスとなります。以下のような心理的ケアや支援が役立ちます:

  • 信頼できる医療者や家族との対話
  • 同じような経験をしている親のサポートグループへの参加
  • 必要に応じて心理カウンセリングを受ける
  • 正確な情報を得て、最悪のシナリオを想定しすぎないようにする
  • 自分自身のケア(十分な休息、栄養、サポートを得ること)も忘れない

今回の体験談では、検査結果が出るまでの不安な期間に、NIPT検査の結果と担当医師のサポートが心の支えになったことがわかります。

NIPT検査の選び方と検査前に知っておくべきこと

NIPT検査を検討する際には、適切な検査を選び、事前に十分な情報を得ることが重要です。

基本検査とオプション検査の違い

NIPT検査には様々な種類があり、基本検査とオプション検査に分けられます:

NIPT検査の種類
  • A 基本検査:13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症)の3つの主要な染色体異常
  • B オプション検査
    • 性染色体の数的異常(ターナー症候群、クラインフェルター症候群など)
    • その他の常染色体の数的異常(全染色体検査)
    • 微小欠失症候群(DiGeorge症候群、Prader-Willi症候群など)
    • 単一遺伝子疾患の検査(特定の遺伝子パネル)

今回の体験談の患者さんは、複数のオプション検査を含む「フルコース」のNIPT検査を受けていました。

検査機関選びのポイント

NIPT検査を受ける医療機関を選ぶ際のポイントは以下の通りです:

1

専門医の在籍

臨床遺伝専門医が在籍しているかを確認しましょう。専門的な知識を持つ医師からの説明を受けられます。

2

遺伝カウンセリング

検査前後の遺伝カウンセリングが充実しているかを確認します。検査の意味や結果の解釈について理解を深められます。

3

検査の精度と実績

検査数や陽性的中率などの実績を確認しましょう。経験豊富な医療機関は、より信頼性の高い検査を提供できます。

4

サポート体制

陽性結果が出た場合のサポート体制や、出産後も含めたフォローアップ体制が整っているかも重要なポイントです。

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングと包括的なNIPT検査を提供しています。

遺伝カウンセリングの重要性

NIPT検査を受ける前の遺伝カウンセリングは非常に重要です。以下のような点について事前に理解を深めておくことが大切です:

  • 1 検査で何がわかり、何がわからないか(検査の範囲と限界)
  • 2 検査結果の解釈方法(陽性・陰性の意味、偽陽性・偽陰性の可能性)
  • 3 陽性結果が出た場合の確定検査と選択肢
  • 4 検査結果が家族や今後の妊娠に与える影響

検査結果の解釈について知っておくべきこと

NIPT検査の結果を正しく理解するために、以下の点を知っておくことが重要です:

  • NIPT検査は確率的な検査であり、100%の確実性はない
  • 陰性結果は「異常がない確率が高い」ことを示すもので、絶対的な保証ではない
  • 陽性結果が出た場合でも、必ず確定検査(羊水検査など)が必要
  • 検査では検出できない染色体異常や遺伝子疾患が存在する
重要

今回の体験談のように、NIPT検査で陰性だった場合でも、出生後に赤ちゃんに何らかの症状が見られることがあります。NIPT検査はスクリーニング検査であり、すべての遺伝的・先天的な問題を検出できるわけではありません。

まとめ:NIPT検査を考える妊婦さんへのアドバイス

この記事で紹介した体験談と専門的な知識をもとに、NIPT検査を検討中の妊婦さんへのアドバイスをまとめます。

検査の限界を理解した上での意思決定の重要性

NIPT検査は優れた検査ですが、限界があることを理解しておくことが重要です:

  • ! NIPT検査は確率的な検査であり、100%の確実性はない
  • ! 陰性結果は「異常がない確率が高い」ことを示すもので、絶対的な保証ではない
  • ! 検査では検出できない染色体異常や遺伝子疾患が存在する
  • ! NIPT検査の結果だけで確定診断はできず、陽性の場合は確定検査が必要

これらの限界を理解した上で、自分にとって最適な検査を選ぶことが大切です。

専門医のサポートを受けることの意義

NIPT検査を受ける際には、臨床遺伝専門医などの専門家からの適切なサポートを受けることが重要です:

  • 検査前後の遺伝カウンセリングで十分な情報と心理的サポートを得る
  • 検査結果の詳細な説明を受け、疑問点を解消する
  • 陽性結果が出た場合の次のステップについて相談する
  • 今回の体験談のように、出産後も必要に応じてサポートを求める
体験談より

「不安でいっぱいの時期に、お心にかけてくださってありがとうございました。染色体検査の結果が出るまでの間は、先生と先生にしていただいた検査結果を支えにして過ごしていました。」

心の準備としてのNIPTの価値

今回の体験談からわかるように、NIPT検査は単に染色体異常の有無を調べるだけでなく、心の準備や安心感を得るという価値もあります:

  • 検査で陰性結果が出た項目については、一定の安心感を持つことができる
  • 出生後に何らかの異常が疑われた場合でも、検査結果が「心の支え」になることがある
  • 検査を通じて専門医とのつながりができ、不安な時期のサポートを得られる可能性がある

このような心理的な側面も、NIPT検査を検討する上での重要な要素の一つと言えるでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q NIPTの偽陰性率はどのくらいですか?

A NIPTの偽陰性率(実際には染色体異常があるのに検査では陰性と判定される確率)は、検査する染色体異常の種類によって異なります。主要な3トリソミー(21、18、13)に関しては、偽陰性率は1%未満と非常に低いとされています。しかし、微小欠失症候群や他の染色体異常については、偽陰性率がやや高くなる可能性があります。特に、低頻度モザイクや胎盤限局性モザイクの場合は、検出が難しくなることがあります。

Q NIPTでわかる染色体異常と分からない染色体異常の違いは?

A NIPTで検出しやすい染色体異常は、染色体全体の数的異常(トリソミーなど)や大きな構造異常です。特に21、18、13番染色体のトリソミーの検出率は非常に高いです。一方、NIPTで検出が難しい染色体異常には、小さな欠失や重複(特定のパネルに含まれていないもの)、低頻度モザイク、均衡型転座(染色体の一部が別の染色体に付着しているが、遺伝情報の過不足はない場合)などがあります。また、単一遺伝子の変異による疾患は通常のNIPTでは検出できませんが、特定の遺伝子パネル検査を追加することで一部の変異を検出できる場合があります。

Q フルコースのNIPT検査とは具体的に何を検査するのですか?

A 「フルコース」という表現は医療機関によって内容が異なりますが、一般的には基本的なNIPT検査に複数のオプション検査を追加した包括的な検査パッケージを指します。ミネルバクリニックの場合、記事内で紹介した患者さんが受けたフルコースは以下を含んでいました:

  • 基本3トリソミー(21、18、13番染色体)
  • 全染色体検査(1〜22番の常染色体とX、Y染色体)
  • 複数の微小欠失症候群検査
  • 100遺伝子2000か所の遺伝子変異検査

最新のフルコース内容についてはクリニックに直接お問い合わせください。技術の進歩により、検査内容は定期的に更新されています。

Q 出生後に染色体異常が疑われた場合、どのような検査を行いますか?

A 出生後に染色体異常が疑われる場合、一般的に以下のような検査が行われます:

  • Gバンド法:最も一般的な染色体検査で、染色体の数や大きな構造異常を調べます
  • FISH法:特定の染色体領域(例:15q11-13領域)の欠失や重複を調べます
  • マイクロアレイ解析:より小さな染色体の欠失・重複を網羅的に調べます
  • 遺伝子パネル検査:特定の遺伝子群の変異を調べます
  • 全エクソーム解析・全ゲノム解析:より網羅的に遺伝子変異を調べます

疑われる疾患や症状によって、適切な検査が選択されます。今回の体験談では、プラダーウィリ症候群が疑われたため、Gバンド法と15q11-13領域のFISH法が行われました。

Q 赤ちゃんの哺乳力不足は染色体異常のサインですか?

A 哺乳力不足は様々な原因で起こり得るため、単独では必ずしも染色体異常を示すものではありません。しかし、哺乳力不足が筋緊張低下(筋肉の弱さ)や他の症状(停留睾丸、特徴的な顔貌など)と組み合わさっている場合は、プラダーウィリ症候群などの染色体異常が疑われることがあります。今回の体験談のケースでは、哺乳力不足や停留睾丸などの症状からプラダーウィリ症候群が疑われましたが、最終的な検査結果では染色体異常はなく、「適応障害で、哺乳が下手な子」という診断でした。哺乳困難がある場合は、小児科医や授乳コンサルタントに相談し、適切な評価と支援を受けることが重要です。

Q NIPT検査の費用はどのくらいですか?

A NIPT検査の費用は、検査内容や医療機関によって異なります。基本的なNIPT検査(3トリソミーのみ)は約10〜15万円程度、オプション検査を追加するとさらに費用が加算されます。フルコースのNIPT検査は、内容によって20〜30万円程度かかることがあります。ミネルバクリニックの最新の料金体系については、公式サイトの料金ページをご確認いただくか、直接お問い合わせください。なお、現在日本では一部の条件を満たす場合を除き、NIPT検査は自費診療となります。

Q 検査結果が出るまでの期間はどのくらいですか?

A NIPT検査の結果が出るまでの期間は、検査内容や医療機関によって異なりますが、一般的には採血後1〜2週間程度です。基本的な3トリソミー検査は比較的早く結果が出る傾向がありますが、微小欠失症候群検査や遺伝子パネル検査などのオプション検査を追加した場合は、結果が出るまでやや時間がかかることがあります。ミネルバクリニックでの最新の結果報告期間については、クリニックに直接お問い合わせください。検査結果を待つ期間は不安に感じることもあるかもしれませんが、検査前の遺伝カウンセリングで予想される待機期間について確認しておくと安心です。

NIPT検査・遺伝カウンセリングのご予約・お問い合わせ

ミネルバクリニックでは、検査前後の充実した遺伝カウンセリングと
専門医による丁寧な診療を提供しています。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田 洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。


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