目次
- 1 1. 【結論】早発閉経でも妊娠は起こり得ます。ただし「確率の整理」が必要です
- 2 2. 自然妊娠率は?「ゼロではない」を現実的に理解する
- 3 3. 不妊治療をした場合の妊娠確率:選択肢を知る
- 4 4. 早発閉経と染色体・遺伝:不安の「正体」を医学的にほどく
- 5 5. 出生前診断(NIPT)でわかること・わからないこと
- 6 6. 確定検査は「羊水検査・絨毛検査」:マイクロアレイ検査も含めて
- 7 7. 当院のNIPTプラン:「調べられる範囲」で選ぶ
- 8 8. 施設選びで大切なこと:検査は「結果の後」まで含めて考える
- 9 9. 臨床遺伝専門医からのメッセージ:希望を守りながら、備えを作れます
- 10 よくある質問(FAQ)
- 11 関連記事
- 12 参考文献
📍 クイックナビゲーション
早発閉経(早発卵巣不全/POI)と告げられたあと、「もう妊娠できないのでは」と感じてしまうのは自然なことです。けれども、早発閉経でも妊娠が成立する可能性はあります。フランスの358人の研究では、診断後に約4%の方が自然に妊娠していました。この記事では、自然妊娠率と治療の選択肢、そして妊娠したあとに知っておきたい染色体・遺伝の話と出生前検査(NIPT・確定検査)を、臨床遺伝専門医の視点で順番に整理します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🌱 Q. 早発閉経でも妊娠できますか?妊娠率は?
妊娠できる可能性はあります。早発卵巣不全と診断された358人を追った研究では、24%に卵巣の働きが戻る兆しがあり、4.4%(15人)が自然に妊娠しました。ただし確率は低く、卵子提供が確立した選択肢とされています。
🧬 Q. 早発閉経は遺伝と関係がありますか?
原因の一部に、X染色体などの染色体の変化(中国の531人の研究で12.1%)や、脆弱X症候群の遺伝子(FMR1)の前変異(孤発例の約3%)があります。国際ガイドラインは、原因が治療によらない早発卵巣不全のすべての方に、染色体検査とFMR1の検査を勧めています。
🏥 Q. 妊娠したら、出生前検査はどうすればいい?
当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます(当院のおすすめは8週)。陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。卵子提供による妊娠では、受けられるプランがスタンダードと双子マックスに限られます。
\ 授かった妊娠のために、検査の選択肢を知っておきたい方へ /
臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。
卵子提供の妊娠で受けられるNIPT | オンラインNIPT(全国110か所で採血)
1. 【結論】早発閉経でも妊娠は起こり得ます。ただし「確率の整理」が必要です
まず、心を守るために大事な前提があります。早発閉経(POI)は「妊娠できない」という宣告ではありません。一方で、排卵が予測しにくくなるため、妊娠の“確率”は一定ではなく、条件で動きます。希望と現実の間で揺れるのは、真剣だからです。
【結論】早発閉経(POI)でも妊娠が成立する可能性はあります。「妊娠できるか」ではなく「どの条件で、どの選択肢があり、どう備えるか」を順番に見ていきましょう。
💡 用語解説:早発閉経と早発卵巣不全(POI)
40歳未満で卵巣の働きが低下し、月経不順や無月経が続く状態です。英語ではPOI(Premature Ovarian Insufficiency)と呼ばれます。日本では「早発閉経」という言葉が広く使われてきましたが、卵巣の働きが一時的に戻り、排卵する方もいるため、「閉経」と言い切らない「早発卵巣不全」という呼び方が使われるようになっています。2024年の国際ガイドラインでは、頻度は約3.5%と報告されています[1]。早発閉経の原因や症状は早発閉経(早期閉経)とは?原因と症状で詳しく解説しています。
不安が強いほど、最初に整えたいのは「情報の順番」です
ネットで調べれば調べるほど、数字や体験談が混ざって頭がいっぱいになりがちです。そこでこの記事では、①自然妊娠の考え方、②治療後の妊娠の選択肢、③染色体と遺伝の視点、④出生前検査(NIPT→必要なら確定検査)という順番で整理します。
2. 自然妊娠率は?「ゼロではない」を現実的に理解する
🩺 早発卵巣不全(POI)の診断はどのように行われる?
2024年の国際ガイドライン(ESHRE・ASRMなど)では、40歳未満で、月経が来ない・不規則な状態が4か月以上続き、FSH(卵胞刺激ホルモン)が25 IU/Lを超えることで診断するとしています。FSHの高値は1回で診断でき、判断に迷うときは4〜6週後に測り直します[1]。
POIの診断を受けた方が一番知りたいのは、「自然妊娠はあるのか」という点だと思います。ここは希望を守りつつ、数字で正確にお伝えします。
📊 早発卵巣不全と診断された358人のその後(フランス)
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 卵巣の働きが戻る兆しがあった人 | 86人(24%)。その88%は診断から1年以内 |
| 自然に妊娠した人 | 15人(4.4%)、妊娠は計21回 |
| 妊娠の結果 | 出産16回・流産5回 |
| 戻りやすさと関係した条件 | 早発卵巣不全の家族歴・続発性無月経(一度は月経があった)・超音波で卵胞が見える・インヒビンBとエストラジオールの値 |
出典:Bidetら(J Clin Endocrinol Metab, 2011)[2]。1つの専門施設の研究の数字で、一人ひとりの確率を示すものではありません。AMHの値は、この研究では卵巣の働きが戻るかどうかの予測には役立ちませんでした。
【結論】早発閉経(POI)でも、排卵が散発的に起こり、自然妊娠が成立することがあります。研究では約4〜5%でした。ただし、排卵が毎月規則的ではないため、「いつ起こるか」の予測が難しいのが特徴です。国際ガイドラインも、POIは自然妊娠の可能性を大きく下げる一方で、卵巣の働きが戻ることがあると説明するよう求めています[1]。
「早発閉経で妊娠できた」のはどんな人?
上の研究では、一度は月経があったあとに止まった方(続発性無月経)、超音波で卵胞が見える方、ご家族に早発卵巣不全の方がいる場合などで、卵巣の働きが戻りやすい傾向がありました[2]。また、卵巣の働きが戻った方の多くは診断から1年以内でした。「妊娠できた」という体験談は、こうした条件が重なった方のものであることが多い、と考えておくと、数字と気持ちの距離を保ちやすくなります。
Q. 無月経でも排卵は起こりますか?
起こる場合があります。POIでは卵巣の働きが一定でなく、月経がない期間でも散発的に排卵が起こることがあります。ただし頻度や時期は個人差が大きく、「期待して待つ」だけが正解とは限りません。
Q. AMHが低いと妊娠できませんか?
AMHは卵巣に残っている卵胞の目安の一つで、卵子の質を直接示す検査ではありません。数値だけで将来を断定せず、年齢・月経・超音波所見・FSHなどを合わせて考えます。AMHと早発卵巣不全の関係は低AMHと早発卵巣不全(POI)で解説しています。
ここが大切
「自然妊娠はある」と聞くと、希望が湧く一方で、待つ時間が長くなり心が疲れてしまうこともあります。“希望を守る”ことと“現実的な選択肢を持つ”ことは両立できます。年齢や卵巣の状態によっては、体外受精などの生殖医療を早めに検討したほうがよい場合もあり、どの段階で治療に進むかは、生殖医療の主治医とご本人の希望の両方をふまえて決めていきます。
3. 不妊治療をした場合の妊娠確率:選択肢を知る
治療の話は、希望と痛みが混ざりやすい領域です。ここで大切なのは、どれかを押しつけることではなく、どういう選択肢があるかを知ることです。なお、当院は体外受精・人工授精・卵子提供などの生殖医療は行っていません。治療は生殖医療の専門施設でご相談ください。
🧭 治療の方向性(全体像)
・排卵が確認できる:タイミング法・排卵誘発・人工授精など、状態に合わせた検討
・採卵ができる:体外受精を含めた選択肢(採れる卵子の数が限られることも)
・自分の卵子での妊娠が難しい:卵子提供。国際ガイドラインは「卵子提供は妊娠を得るための確立した選択肢」と説明するよう求めています[1]
妊娠の確率を左右するのは、年齢(卵子の年齢)、無月経の期間、FSHやAMHなどのホルモン値、採卵ができるかどうかです。「確率」は一律ではなく、ご自身の条件を整理してはじめて、現実的な見通しが見えてきます。
国際ガイドラインは、卵子提供による妊娠はハイリスク妊娠として、対応できる産科施設で管理するよう求めています[1]。卵子提供の基本は卵子提供の基礎知識にまとめています。
卵子提供で妊娠したら、NIPTはどうなる?
早発閉経のあとの妊娠は、卵子提供によることも少なくありません。その場合、赤ちゃんの染色体の数の変化のなりやすさは、妊娠したご本人の年齢ではなく、卵子を提供した方(ドナー)の年齢で考えます。若いドナーでもゼロにはなりません。
当院では、卵子提供による妊娠で受けられるNIPTはスタンダードプランと双子マックスプランです。プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・インペリアルプランは、卵子提供による妊娠ではお受けしていません。詳しくは卵子提供の妊娠でNIPTは受けられる?をご覧ください。
4. 早発閉経と染色体・遺伝:不安の「正体」を医学的にほどく
早発閉経の原因の多くははっきりしませんが、一部には染色体や遺伝子の変化が関わっています。妊娠を考えるとき、この「遺伝の視点」は、ご本人の診断だけでなく、生まれてくる赤ちゃんやご家族の話にもつながります。
FMR1遺伝子の前変異をもつ女性の約20%に、早発卵巣不全(FXPOI)が起こると報告されています[4]。前変異はお子さんに伝わるときにくり返しの数がさらに伸び、脆弱X症候群(知的障害の遺伝性の原因として知られる病気)になることがあります。伸びやすさは、くり返しの数やその中の配列(AGGの割り込み)によって変わります[4]。くわしくはFXPOI(脆弱X関連原発性卵巣不全)と脆弱X症候群とはで解説しています。
大切なのは、NIPTはFMR1遺伝子のくり返しの伸びを調べる検査ではないということです。ご自身が前変異をもつと分かっている、またはまだ調べていない状態でご自身の卵子で妊娠した場合は、妊娠の早い時期に臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングを受け、必要に応じて絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんを調べるかどうかを考えることになります。当院ではFMR1遺伝子リピート伸長検査を行っています。妊娠前・治療を始める前に調べておきたい方は、FMR1を含むX連鎖の病気の遺伝子まで調べる拡大版保因者検査(女性版787遺伝子)も選べます。パートナーの方には男性版(714遺伝子)があります。
NIPTと一緒に受けられる保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」
妊娠してからFMR1を調べたい方には、NIPTと同時に申し込むご夫婦の保因者検査ファミリーセーフティ プラスもあります。女性787遺伝子・男性714遺伝子を調べる拡大版の保因者検査で、脆弱X症候群(FMR1)も対象に含まれています。NIPTと同じ日に採血でき、結果は検体の到着後約3〜4週間で出ます。NIPTの一部ではなく、NIPTと一緒に受ける別の検査で、単独では受けられません。原則としてご夫婦お二人で受けていただきます。
早発卵巣不全の原因がまだ調べられていない方にとっては、NIPTで赤ちゃんの染色体の変化を、ファミリーセーフティ プラスでご自身のFMR1の前変異やご夫婦の保因者の状態を、同じ日の採血で調べられることになります。前変異が見つかった場合は、赤ちゃんを絨毛検査・羊水検査で調べるかどうかを、臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングで考えます。
🩺 院長コラム【「怖い」の中身を言葉にすると、少し楽になります】
早発閉経と診断され、つらい治療を乗り越えてようやく授かった妊娠では、「せっかく授かったのに、また失うのが怖い」と感じるのは自然なことだと考えています。その怖さは弱さではありません。喪失を経験した人ほど、次の喪失を恐れるのは自然な反応です。
臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、「早発閉経だから赤ちゃんに何かある」と一括りにしないことです。国際ガイドラインは、原因不明の早発卵巣不全のあとの自然妊娠では、産科的・新生児のリスクが一般の妊娠より高いとは言えないとしています[1]。一方で、FMR1の前変異や染色体の変化が原因の場合は、話が変わります。どちらに当たるのかを先に確かめることが、恐怖の中身を整理する第一歩だと考えています。
染色体の数の変化(ダウン症候群など)のなりやすさは、主に卵子の年齢とともに上がります。年齢別の考え方は40歳妊娠のダウン症・自閉症リスクとNIPT/43歳の妊娠・出産とNIPTで整理しています。ターナー症候群の方の妊娠についてはターナー症候群と妊娠・体外受精をご覧ください。
5. 出生前診断(NIPT)でわかること・わからないこと
NIPTは、お母さんの採血で、血液中に含まれる赤ちゃん側(主に胎盤由来)のDNAを調べ、染色体の数の変化などの可能性を調べる検査です。確定診断ではありません。ここを誤解しないことが、心の安全につながります。
【結論】NIPTは「可能性」を知る検査で、確定診断は羊水検査・絨毛検査です。受ける前から“陽性だった場合の次の行動”まで含めて考えておくことが大切です。
早発閉経のあとの妊娠で、NIPTはいつから受けられる?
当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。当院のおすすめは8週で、妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。週数が早いほど赤ちゃん由来のDNAが少なく、再検査になることがあります。10週を過ぎても、16週でも受けられますが、陽性だったときの確定検査や、その後を考える時間を確保するためにも、早めに受けることをおすすめしています。結果は基本10〜14日で、陰性の結果はマイページでお知らせします(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間)。
🔎 NIPTでわかること・わからないこと
| わかること | わからないこと |
|---|---|
| プランで決まった範囲の染色体の数の変化・微小欠失などの可能性 | プランの対象に入っていない病気(脆弱X症候群のくり返しの伸びなど) |
| 結果に応じて、確定検査が必要かどうか | 陽性=確定ではありません(確定検査で確かめます) |
| 妊娠中に何を備えればよいかを考える材料 | 将来の発達や生活のすべて |
陽性なら確定検査で確かめます。当院では確定検査まで院内で受けられます。数字の読み方はNIPT精度は本当に高い?的中率と限界をご覧ください。
⚠️ 大事な前提
出生前検査で見つかる所見の中には、症状の幅が広く、生まれる前に予後をはっきり決められないものも含まれます。そのため当院では、検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、何を調べ、何を調べないかも含めて、ご本人が選べるようにしています。遺伝カウンセリングは、90分の受診枠の中で行います。
6. 確定検査は「羊水検査・絨毛検査」:マイクロアレイ検査も含めて
NIPTはスクリーニング検査で、陽性だった場合などに、出生前の確定検査が必要になります。確定検査の中心は、羊水検査・絨毛検査です。
🧪 検査の位置づけ
| 検査 | 位置づけ | わかること(概要) |
|---|---|---|
| NIPT | スクリーニング | プランで決まった範囲の染色体の変化などの可能性 |
| 羊水検査・絨毛検査 | 出生前の確定検査 | 赤ちゃん側の細胞で染色体の変化を確かめる |
| 羊水・絨毛でのマイクロアレイ検査 | 出生前の確定検査 | ふつうの染色体検査(Gバンド法)では見えない小さな欠失・重複まで確かめる |
当院では2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査とも院内で行っています。結果は、主要な項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどでお返しします。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。ほかの施設でNIPTを受けて陽性になった方の確定検査もお受けしています(他院でNIPT陽性だった方へ)。
7. 当院のNIPTプラン:「調べられる範囲」で選ぶ
出生前検査は、数字だけで完結する検査ではありません。当院では、調べる範囲の違うプランを用意し、何を調べるかをご本人が選べるようにしています。
🧬 当院のNIPTプランと調べられる範囲
| プラン | 染色体の数 | 微小欠失など | 単一遺伝子 | 単胎・双胎 | 卵子提供の妊娠 |
|---|---|---|---|---|---|
| スタンダード | 13・18・21トリソミー+性染色体の数の異常 | 6種類7疾患 | ― | 単胎・双胎 | 受けられる |
| プレミアム | 13・18・21・15・16・22トリソミー | 12種類13疾患 | ― | 単胎のみ | 受けられない |
| ダイヤモンド | プレミアムと同じ | プレミアムと同じ | de novo 56遺伝子 | 単胎のみ | 受けられない |
| 双子マックス | 全常染色体の数の異常 | 92種類の微小欠失・重複+5Mbを超える構造異常 | ― | 単胎・双胎 | 受けられる |
| インペリアル | 全常染色体の数の異常 | 92種類の微小欠失・重複+5Mbを超える構造異常 | 最大155遺伝子(202疾患) | 単胎のみ | 受けられない |
胎児分画(赤ちゃん由来のDNAの割合)が、スタンダード・プレミアム・ダイヤモンドプランで3%、インペリアル・双子マックスプランで3.5%に届かないときは、再検査(再採血)になります。当院ではこれを判定保留とは呼ばず、判定保留は0%です。料金はNIPTの費用・料金のページでご確認ください。料金には臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定が含まれます。
ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※で検査します。超音波検査で赤ちゃんの異常が疑われた妊婦さんを対象にした研究では、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件)に増えたと報告されています[5]。詳しくはCOATE法のエビデンスをご覧ください。
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
陽性のときの備え:2つの互助会
NIPTを受ける方は全員、2つの互助会に加入します。羊水検査互助会(カトレア会)は1回のNIPTにつき8,000円で、陽性のときの確定検査の費用を補助します(補助の上限なし)。安心検査結果保障制度は1回6,000円で、再検査が必要になったのに流産して再検査ができず結果が出なかったときに、検査代金(諸費用を除く)を返金します。詳しくは羊水検査互助会(カトレア会)をご覧ください。
8. 施設選びで大切なこと:検査は「結果の後」まで含めて考える
NIPTには、日本医学会の認証を受けた施設と、認証外の施設があります。当院は認証外の施設ですが、臨床遺伝専門医が常駐し、検査前の遺伝カウンセリングから、結果の判定、陽性後のカウンセリング、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で行っています。施設を選ぶときに確かめたいのは、次の3つのつながりです。
💡 確認したい「3つのチェックポイント」
・検査の意味づけ:スクリーニングと確定検査の関係が説明されるか
・陽性後の流れ:確定検査(羊水・絨毛)まで見通せるか
・調べる範囲:何を調べて、何を調べないのかが分かるか
遠方の方は、Zoomでの遺伝カウンセリングと全国110か所の提携施設での採血を組み合わせたオンラインNIPTもご利用いただけます。
9. 臨床遺伝専門医からのメッセージ:希望を守りながら、備えを作れます
早発閉経と診断された方ほど、妊娠できたときの喜びは大きく、そのぶん不安も大きくなります。「また失うのでは」「何かが見つかったらどうしよう」。その気持ちは自然です。
【結論】不安を消すことは難しくても、不安の“正体”を整理し、次の一手を作ることはできます。早発閉経の原因に染色体やFMR1遺伝子が関わっていないかを確かめること、そして妊娠したら、調べられる範囲を知ったうえで検査を選ぶこと。検査は「未来を決める道具」ではなく、「準備を作る医療」だと考えています。
🏥 授かった妊娠のために、検査の選択肢を知る
ダウン症候群のほかに、子育ての負担につながりやすい病気まで調べられることも知っておいてください。当院のNIPTは、プランにより微小欠失や単一遺伝子の変化まで調べられ、臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。
まだ決めていない方は:NIPTを受けるべきか迷う方へ(3つの判断基準) | 卵子提供の妊娠で受けられるNIPT
よくある質問(FAQ)
Q1. 早発閉経(POI)でも自然妊娠はありますか?妊娠率は?
あります。早発卵巣不全と診断された358人を追ったフランスの研究では、24%に卵巣の働きが戻る兆しがあり、4.4%(15人)が自然に妊娠しました。ただし確率は低く、時期の予測も難しいため、年齢・無月経の期間・FSH・超音波所見などを合わせて、生殖医療の主治医と見通しを立てることが大切です。
Q2. AMHが低いと妊娠はできないのでしょうか?
AMHは卵巣に残っている卵胞の目安の一つで、卵子の質を直接示す検査ではありません。上の研究でも、AMHの値は卵巣の働きが戻るかどうかの予測に役立ちませんでした。数値だけで将来を断定せず、年齢や月経、FSH、超音波所見などを合わせて判断します。
Q3. 早発閉経は遺伝しますか?
原因の多くははっきりしませんが、一部に遺伝の要因があります。中国の531人の研究では12.1%に染色体の変化があり、脆弱X症候群の遺伝子(FMR1)の前変異は、孤発の早発卵巣不全の約3.2%、家族内に複数いる場合の約11%にみられます。国際ガイドラインは、治療によらない早発卵巣不全のすべての方に、染色体検査とFMR1前変異の検査を勧めています。当院では、FMR1の単独の検査のほか、FMR1を含む拡大版保因者検査(女性版787遺伝子)や、NIPTと一緒に受けるご夫婦の保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」でも調べられます。
Q4. 妊娠したらNIPTを受けた方がいいですか?
NIPTは選択肢の一つで、受けるかどうかはご本人が決めます。スクリーニング検査で確定診断ではないため、陽性なら羊水検査・絨毛検査で確かめます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。受ける前に、陽性だった場合の次の行動まで考えておくことが大切です。
Q5. 卵子提供で妊娠した場合もNIPTを受けられますか?
当院では、卵子提供による妊娠で受けられるのはスタンダードプランと双子マックスプランです。プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・インペリアルプランは、卵子提供による妊娠ではお受けしていません。染色体の数の変化のなりやすさは、ドナーの年齢で考えます。
Q6. ダウン症候群のほかにも、調べておいたほうがよい病気はありますか?
ダウン症候群のほかにも、子育ての負担につながりやすい病気があります。当院のNIPTでは、スタンダードプランでも22q11.2欠失症候群などの微小欠失を調べ、ダイヤモンドプランやインペリアルプランでは単一遺伝子の変化まで調べられます。また、FMR1の前変異をおもちの方では脆弱X症候群が問題になりますが、これはNIPTでは調べられません。NIPTと一緒に受けるご夫婦の保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」では、FMR1も調べられます(NIPTと同じ日に採血でき、結果は約3〜4週間)。前変異が見つかったときは、遺伝カウンセリングで確定検査を含めて考えます。
Q7. 羊水検査でマイクロアレイ検査も受けられますか?
受けられます。羊水検査・絨毛検査は出生前の確定検査で、マイクロアレイ検査では、ふつうの染色体検査(Gバンド法)では見えない小さな欠失・重複まで確かめられます。当院では羊水検査・絨毛検査とも院内で行い、主要な項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果をお返しします。
Q8. 互助会は別に費用がかかりますか?
NIPTを受ける方は全員、2つの互助会に加入します。羊水検査互助会(カトレア会)は1回8,000円で、陽性のときの確定検査の費用を補助します(補助の上限なし)。安心検査結果保障制度は1回6,000円で、再検査が必要になったのに流産して再検査ができず結果が出なかったときに、検査代金(諸費用を除く)を返金します。
Q9. 「検査を受けるか迷う」段階でも受診できますか?
できます。当院では90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。検査の意味、結果の受け止め方、陽性だった場合の選択肢をお伝えし、ご理解いただいたうえで、受けるかどうか・どのプランにするかを決めていただけます。
関連記事
参考文献
- [1] Panay N, Anderson RA, Bennie A, et al. Evidence-based guideline: premature ovarian insufficiency. Hum Reprod Open. 2024;2024(4):hoae065. [DOI 10.1093/hropen/hoae065・PMID 39660328]
- [2] Bidet M, Bachelot A, Bissauge E, et al. Resumption of ovarian function and pregnancies in 358 patients with premature ovarian failure. J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(12):3864-3872. [DOI 10.1210/jc.2011-1038]
- [3] Jiao X, Qin C, Li J, et al. Cytogenetic analysis of 531 Chinese women with premature ovarian failure. Hum Reprod. 2012;27(7):2201-2207. [DOI 10.1093/humrep/des104]
- [4] Hunter JE, Berry-Kravis E, Hipp H, Todd PK. FMR1 Disorders. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-2026. Last revised May 16, 2024. [GeneReviews NBK1384]
- [5] Zhang J, Wu Y, Chen S, et al. Prospective prenatal cell-free DNA screening for genetic conditions of heterogenous etiologies. Nat Med. 2024;30(2):470-479. [DOI 10.1038/s41591-023-02774-x]
※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療・検査の選択を示すものではありません。早発卵巣不全の治療は生殖医療・婦人科の主治医に、出生前検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。






