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ターナー症候群と妊娠・体外受精 | 専門医が解説する成功率と最新治療法

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

「ターナー症候群でも妊娠できるの?」「性行為はできる?」「赤ちゃんに遺伝しない?」。結論からお伝えすると、ターナー症候群でも妊娠・出産できる可能性はあります。自然妊娠は全体の2〜5%ほどで、多くはモザイク型の方です。卵子提供による体外受精を選ぶ方もいます。ただし、どの方法でも妊娠の前に心臓と大動脈の評価を受けることが欠かせません。この記事では、自然妊娠の可能性、卵子提供、妊娠中と出産のリスク、性行為とホルモン療法、赤ちゃんへの遺伝とNIPTまでを、臨床遺伝専門医の立場から順に解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🩺 染色体異常・生殖医療
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤ターナー症候群とは:X染色体の全部または一部が欠けている女性の染色体の変化
  • ➤自然妊娠:全体で2〜5%。主にモザイク型(45,X/46,XX)の方
  • ➤卵子提供:妊娠を目指す現実的な方法の一つ。移植する胚は1つが勧められる
  • ➤妊娠中・出産のリスク:大動脈解離と妊娠高血圧に注意。妊娠前の心臓MRIが必要
  • ➤性行為:ホルモン補充療法を受けていれば、多くは支障なく送れる
  • ➤遺伝とNIPT:自然妊娠では赤ちゃんの染色体の検査を考える。お母さん自身のモザイクに注意

⏱️ 30秒でわかる要約

🤰 Q. ターナー症候群でも妊娠できる?

可能性はあります。自然妊娠は全体の2〜5%で、多くは卵巣の働きが残っているモザイク型の方です。卵巣の働きがない場合は、卵子提供による体外受精で妊娠・出産する方もいます。どの方法でも、妊娠前に心臓MRIなどで大動脈を調べることが条件になります。

💞 Q. 性行為はできる?

できます。ホルモン補充療法(エストロゲン)で腟や子宮が発育し、低身長であっても性行為には支障がないことがほとんどです。潤いが足りないときは潤滑剤を使えます。

🫀 Q. 妊娠中・出産でいちばん気をつけることは?

大動脈解離(血管の壁が裂ける病気)です。米国生殖医学会は、妊娠中に大動脈解離などで亡くなるリスクが2%にのぼる可能性があるとしています。妊娠中は血圧と大動脈を定期的に確かめ、出産方法も心臓の状態をみて決めます。

ターナー症候群は、性染色体の数の異常の一つです。

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1. ターナー症候群とは?原因と遺伝のメカニズム

【結論】 ターナー症候群は、X染色体の全部または一部が欠けていることで起こる女性の染色体の変化です。生まれる女の子の約2,000〜2,500人に1人にみられ[1][8]、ほとんどは親から受け継いだものではありません。

通常、女性の染色体は46,XX(X染色体が2本)ですが、ターナー症候群では45,X(X染色体が1本)のほか、一部の細胞だけがX染色体1本になっているモザイク型や、X染色体の形が変わっているタイプなど、いくつかのパターンがあります。精子や卵子ができるとき、または受精卵が分裂するときに、偶然X染色体がうまく分かれなかったり失われたりして起こります。

染色体タイプ別の特徴

どのタイプかによって、症状の程度や妊娠の可能性が変わります。割合は報告によって幅があります[1]。

🧬 ターナー症候群の染色体のタイプ

タイプ 染色体の構成 割合の目安 特徴
モノソミーX 45,X 約40〜50% 卵巣の働きが早くから失われやすい
モザイク型 45,X/46,XX など 約15〜25% 症状が比較的軽く、月経や自然妊娠がみられることがある
構造の変化を含むタイプ 46,X,i(Xq) など 残りの多く X染色体の一部が欠けたり、形が変わったりしている

主な特徴は、低身長、卵巣の働きの低下(無月経・早発閉経・思春期が来ない)、心臓や腎臓の形の違い、首の皮膚のひだ(翼状頸)、手足のむくみ(リンパ浮腫)などです。知的能力は多くの場合通常の範囲です。症状や寿命の詳しい解説はターナー症候群とは?原因・症状・知的障害・寿命で、赤ちゃんのころの顔つきや特徴はターナー症候群の特徴とは?顔つき・かわいいと言われる理由でまとめています。このページでは、妊娠・出産・性行為と赤ちゃんへの遺伝に絞って解説します。

💡 用語解説:モザイク型(もざいくがた)

同じ体の中に、染色体の数が違う細胞が混ざっている状態です。ターナー症候群のモザイク型では、X染色体が2本ある細胞(46,XX)と1本の細胞(45,X)が混ざっています。X染色体が2本ある細胞が卵巣に多く残っていると、卵巣の働きが保たれやすいと考えられています。

2. ターナー症候群と「自然妊娠」のリアル

【結論】 ターナー症候群の女性の多くは卵巣の働きが早くから失われますが、モザイク型(45,X/46,XX)の方などでは卵巣の働きが残っていることがあり、自然妊娠は全体の2〜5%と報告されています[1]。

卵子のもとになる細胞(卵母細胞)は、お母さんのおなかの中にいる胎児の時期につくられます。ターナー症候群では、この卵母細胞が胎児期から急速に失われていくため、思春期のころには卵巣が働かなくなっていることが多いのです。卵巣の働きが失われる割合は、全体の9割を超えます[1]。

染色体タイプ別の妊娠の可能性

🤰 タイプ別にみた自然妊娠の可能性の目安

タイプ 自然妊娠の可能性 月経
45,X(モノソミーX) きわめて低い ほとんどない
モザイク型(45,X/46,XX) ある(自然妊娠した方の多くがこのタイプ) 自然に来ることがある
構造の変化を含むタイプ 欠けている部分による 欠けている部分による

※全体での自然妊娠は2〜5%と報告されています[1]。タイプごとの確率は報告が少なく、一人ひとりで大きく異なります。

月経がある方でも、卵子の減り方は一般より速いため、妊娠を考えられる期間が短い傾向があります。また、自然妊娠では流産が多く、生まれた赤ちゃんに染色体の変化がみられる割合も一般より高いと報告されています[1][4]。このため、妊娠を望む場合は早めに卵巣の働きを調べ、妊娠の時期や方法を考えておくことが大切です。

卵巣の働きを調べる方法

妊娠の可能性を知るには、いまの卵巣の働きを評価します。

🔬 卵巣の働きを評価する主な検査

検査 分かること
AMH(抗ミュラー管ホルモン) 卵巣に残っている卵子の量の目安(卵巣予備能)
FSH(卵胞刺激ホルモン) 高いほど卵巣の働きが落ちている。早発卵巣不全の診断では、4週間以上あけて2回測り、どちらも25 IU/Lを超えることが目安[9]
経腟超音波検査 卵巣の大きさや、育っている卵胞の数(胞状卵胞数)
エストラジオール 卵巣から出ている女性ホルモンの量

卵巣の働きが残っている若い方では、将来に備えて卵子を凍結保存する(妊よう性温存)ことが検討される場合もあります[1]。卵巣の働きが落ちる病気の全体像は卵巣機能不全は年齢が若くてもなるの?で解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「月経がある」なら、時間を味方にする】

ターナー症候群と聞くと「妊娠はできない」と思い込んでしまう方がいますが、すべての方がそうではありません。とくにモザイク型では、卵巣にX染色体が2本ある細胞が残り、月経が自然に来ることがあります。

ただし、卵子の減り方は一般より速いので、「いつか」ではなく「いつまでに」を考えることが大切だと考えています。AMHなどで卵巣の働きを早めに確かめ、妊娠の時期、卵子凍結、卵子提供といった選択肢を、元気なうちに並べておく。そのうえで、ご本人とパートナーが納得できる道を選んでいただきたいと考えています。

3. 妊娠を目指す選択肢:卵子提供による体外受精

【結論】 卵巣の働きがない場合、妊娠・出産を目指す現実的な方法の一つが、卵子提供(ドナーの卵子)による体外受精です。ご自身の子宮で赤ちゃんを育て、出産することができます。一方で、ターナー症候群の方の卵子提供による妊娠は、流産や妊娠高血圧症候群が多いことが知られています[4][6]。

卵子提供は、健康なドナーから提供された卵子とパートナーの精子を受精させ、できた受精卵(胚)をご本人の子宮に戻す方法です。子宮が小さい場合も、ホルモン補充療法で子宮を育ててから移植します。なお、ミネルバクリニックでは体外受精や卵子提供は行っていません。ここでは一般的な流れとしてご説明します。

卵子提供による体外受精の一般的な流れ

🥚 卵子提供による体外受精の流れ(一般的な例)

ステップ 内容
1. 事前の評価 心臓MRI・心エコーなどで、妊娠に耐えられるかを評価する
2. ドナーの選定 実施施設の基準に沿ってドナーを決める
3. 子宮内膜の準備 ホルモン剤で、子宮内膜を着床しやすい状態に整える
4. 採卵・受精 ドナーから採卵し、パートナーの精子と受精させる
5. 胚移植 受精卵を子宮に戻す。戻す胚は1つが勧められる[3]
6. 妊娠判定 移植の約2週間後に、血液検査で妊娠を確かめる

💡 卵子提供の妊娠率について

卵子提供では、若いドナーの卵子を使うため、ご自身の年齢による卵子の質の低下の影響を受けにくくなります。ターナー症候群の方でも、移植あたりの妊娠率はほかの理由で卵子提供を受ける方と大きく変わらないとする報告がある一方、流産や妊娠中の合併症は多いとされています[4][6]。妊娠率だけで判断せず、心臓の評価と妊娠中の管理まで含めて考えることが大切です。

日本での卵子提供の現状

国内で卵子提供を実施できる施設は限られており、海外で治療を受ける方もいます。費用や手続き、生まれた子どもの親子関係など、検討すべき点は多くあります。卵子提供の全体像は卵子提供の基礎知識|メリットやリスク・日本の卵子提供事情で解説しています。どの施設で治療を受ける場合でも、移植の前に心臓と大動脈の評価を済ませておくことが前提になります。

ターナー症候群と双子

ターナー症候群の方が双子を妊娠すると、心臓と血管への負担はさらに大きくなります。米国生殖医学会は、ターナー症候群の方の体外受精では戻す胚を1つにする(単一胚移植)ことを勧めています[3]。卵子提供で双子を望む場合も、まず心臓の評価をもとに慎重に話し合う必要があります。

また、「ターナー症候群」と「双子」は、まったく別の形でも結びつきます。一卵性双生児は1つの受精卵から生まれるので、ふつうは性別も染色体も同じです。ところが、受精卵が分かれる前後に一部の細胞でY染色体が失われると、男の子(46,XY)とターナー症候群の女の子(45,X)という、性別の違う一卵性双生児が生まれることがあります。きわめてまれですが、性別の違う双子でも一卵性ということがありうるのは、この仕組みによるものです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【遺伝的なつながりと「親」になること】

卵子提供と聞くと、「自分とは遺伝的なつながりがない」と悩まれる方もいます。それは自然な葛藤です。

けれども、10か月間おなかの中で赤ちゃんを育て、出産するのはご本人です。お母さんの体の中の環境は、赤ちゃんの育ち方に影響します(エピジェネティクス)。また、妊娠中にはお母さんと赤ちゃんの細胞が少しずつ行き来する「マイクロキメリズム」という現象も知られています。親子のつながりは、遺伝子の配列だけで決まるものではないと考えています。

4. 命に関わる「心血管系リスク」と妊娠中・出産・寿命の話

【結論】 妊娠できるかどうかの前に、妊娠・出産に心臓と大動脈が耐えられるかを確かめることが先です。米国生殖医学会は、ターナー症候群の方が妊娠した場合、大動脈解離や大動脈の破裂で亡くなるリスクが2%にのぼる可能性があるとしています[3]。

最大のリスク「大動脈解離」

妊娠中は体を流れる血液の量が増え、心臓と血管に大きな負担がかかります。ターナー症候群の方は、生まれつき大動脈やその弁に違いがあることが多く、妊娠による負担で大動脈解離(大動脈の壁が裂ける病気)を起こすことがあります。

⚠️ ターナー症候群でみられる主な心臓・血管の変化

変化 頻度の目安 妊娠との関係
大動脈二尖弁 約15〜30% 大動脈が太くなる原因になる
大動脈縮窄症 約7〜14% 高血圧の原因になる
大動脈の拡張 年齢とともに増える 大動脈解離の前ぶれになる
高血圧 成人の最大で約半数 妊娠高血圧症候群・大動脈解離のリスクを高める

出典:[1][2][5]。頻度は報告によって幅があります。

妊娠前に必要な心臓の検査

妊娠を希望する場合は、次のような検査で心臓と大動脈を評価します[1][2]。

🫀 妊娠前の心血管評価

検査 目的
心臓MRI 大動脈全体の太さを正確に測る。体の大きさで補正した値(ASI)で評価する
心エコー 大動脈二尖弁の有無、弁と心臓の働き
血圧測定 高血圧の有無。手足で測り、大動脈縮窄症も確かめる
心電図 不整脈やQT延長の有無

🚨 妊娠を避けるよう勧められる場合

米国生殖医学会は、心臓MRIで大きな異常がある場合や、ASIが2cm/m²を超える場合は妊娠を避けるべきとし、心臓に記録された異常がある場合も同様としています[3]。基準は指針によって少しずつ違うため、循環器の専門医を含むチームで判断します[1]。

妊娠中の管理と出産

妊娠できた後も、血圧と大動脈を定期的に確かめ続けることが大切です。妊娠中は血圧が上がりやすく、妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧腎症を含む)が一般より多いと報告されています[4][6]。欧州心臓病学会の指針も、大動脈の病気がある方の妊娠では、妊娠中から出産後まで心エコーなどで大動脈を見守ることを求めています[7]。

出産方法は、大動脈の太さや血圧の状態をみて決めます。骨盤が小さいことも多く、帝王切開が選ばれることが多いとされています[4]。出産後もしばらくは大動脈解離のリスクが続くため、産後の血圧管理も欠かせません。妊娠中から出産まで、循環器内科と産科の両方で診てもらえる施設を選ぶことが大切です。

ターナー症候群の寿命について

ターナー症候群の方の寿命は、一般の女性より短いとされ、その主な原因は心臓・血管の病気です[1][8]。逆にいえば、大動脈と血圧を定期的に確かめ、ホルモン補充療法を続けることが、寿命を守ることにつながります。寿命や大人になってからの健康管理はターナー症候群とは?原因・症状・知的障害・寿命で詳しく解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「妊娠できるか」より先に「妊娠に耐えられるか」】

厳しいことを言うようですが、お母さんの命が守られてこその妊娠・出産です。ターナー症候群の方の妊娠では、心臓MRIと心エコーによる評価を、妊娠の前に必ず受けていただきたいと考えています。

大動脈が太くなっている場合には、妊娠を見送るという判断が大切になることもあります。一方で、心臓と血管の状態が良好で、ホルモン補充療法で子宮も育っていれば、妊娠を目指せる可能性は十分にあります。正確な評価にもとづいて、冷静に判断することがいちばん大切だと考えています。

5. 性行為とホルモン療法について

【結論】 ターナー症候群の女性も性行為をすることができます。ホルモン補充療法で思春期の体の変化を促し、腟や子宮の発育を支えることで、パートナーとの親密な関係を築くことが可能です[1]。

「ターナー症候群でも普通に性行為はできますか?」「パートナーとの関係に支障はありませんか?」という疑問を持つ方は少なくありません。結論からいえば、適切なホルモン療法を受けていれば、性行為に大きな支障はありません。

ホルモン補充療法の役割

ターナー症候群の方は卵巣から出る女性ホルモン(エストロゲン)が足りないため、ホルモン補充療法(HRT)が大きな役割を果たします[1]。

💊 ホルモン補充療法の主な役割

役割 内容
思春期の体の変化 乳房の発育、体つきの変化を促す
腟・子宮の発育 性行為や妊娠に必要な発育を促す
骨の健康 骨密度を保ち、骨粗しょう症を防ぐ
心臓・血管 エストロゲンによる血管への良い影響が期待される
心の健康 自己イメージや生活の質の改善

性行為で気をつけたいこと

体の面では、ホルモン療法で腟の粘膜が潤いやすくなります。低身長であっても性行為に支障はありません。潤いが足りないときは潤滑剤を使えます。痛みが続く場合は、婦人科で腟や子宮の発育の状態を確かめてもらいましょう。

心の面では、パートナーに伝えるかどうか、いつ伝えるかに悩む方もいます。信頼できる関係の中で、ご自身のタイミングで伝えることが大切です。妊娠の選択肢(卵子提供など)についても、一緒に情報を集めて話し合うことをお勧めします。

💡 用語解説:ホルモン補充療法(HRT)

体の中で足りない女性ホルモンを、飲み薬や貼り薬などで補う治療です。ターナー症候群では、思春期の年齢から始め、一般的な閉経の年齢ごろまで続けることが勧められています[1]。妊娠を目指す場合は、子宮を育てる意味でも大切な治療です。

6. 子どもへの遺伝とNIPT(出生前診断)

【結論】 ターナー症候群は、ほとんどが親から受け継いだものではなく、偶然起こります。卵子提供の場合、赤ちゃんの染色体はドナーの卵子とパートナーの精子からなるため、ご本人のターナー症候群が赤ちゃんに受け継がれることはありません。一方、自然妊娠では流産や赤ちゃんの染色体の変化が一般より多いと報告されており[1][4]、出生前検査について説明を受けておくことが勧められます。

妊娠の方法別にみた赤ちゃんへの影響

🧬 妊娠の方法と赤ちゃんの染色体

妊娠の方法 赤ちゃんの染色体 考えておきたいこと
自然妊娠(主にモザイク型) 多くは通常の染色体。ただし変化が見つかる割合は一般より高い 流産が多い。出生前検査について説明を受けておく
卵子提供 ご本人のターナー症候群は受け継がれない 赤ちゃんの染色体の変化の起こりやすさは、ドナーの年齢などで考える

NIPTで早い時期に分かること

NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAの断片を調べ、赤ちゃんの染色体の変化の可能性を推定する検査です。ミネルバクリニックのNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。結果は基本10〜14日で出ます(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間)。

ターナー症候群を含む性染色体の数の変化は、スタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアルの各プランで調べられます(双子マックスは性染色体を調べません)。13・18・21トリソミーに加えて、スタンダードプランから22q11.2欠失症候群などの微小欠失も調べられます。

お母さん自身がターナー症候群のときの注意点

NIPTで調べる血液のDNAには、赤ちゃん(胎盤)由来のものと、お母さん由来のものが混ざっています。お母さん自身がモザイク型のターナー症候群だと、お母さん由来のDNAでX染色体の量が少なく見え、赤ちゃんの性染色体の結果に影響することがあります。このため、検査の前にご自身の染色体の結果を伝えておくこと、性染色体で陽性や判定保留が出たときは確定検査で確かめることが大切です。お母さんのモザイクとNIPTの関係は母体モザイクで解説しています。

NIPTはスクリーニング検査です。陽性の場合は、羊水検査・絨毛検査などの確定検査で確かめます。ミネルバクリニックでは確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性的中率など精度の考え方はNIPTの精度(陽性的中率)で解説しています。

子育ての負担を左右するものと、22q11.2欠失症候群

知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、子育てのストレスと最も一貫して関係していたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動などの行動の問題や睡眠の問題でした。こうした特徴を伴いやすい病気には、スミス・マゲニス症候群やプラダー・ウィリー症候群などの微小欠失症候群も含まれています[10]。また、微小欠失症候群の中で最も多い22q11.2欠失症候群は、妊娠中の赤ちゃんのおよそ1,000人に1人にみられ、お母さんの年齢とは関係なく起こります[11]。これらは三大トリソミーだけを調べる検査では分かりませんが、ミネルバクリニックではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群・スミス・マゲニス症候群・プラダー・ウィリー症候群を含む微小欠失を調べられます。

7. 検査は「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ ― 1つの病気あたりで考えると

出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。

ひとつの目安として、調べられる病気の数で割って考えてみます。三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、調べる病気は3つなので、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,700円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。

🧬 調べられる範囲と「1つの病気あたり」の目安

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード
(220,000円)
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム
(264,000円)
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド
(407,000円)
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス
(440,000円)
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル
(550,000円)
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。
※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。
※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

ただし、病気の数が多いほどよい検査というわけではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。だからこそ、検査の前に遺伝カウンセリングで、ご家族にとって必要な範囲を一緒に考えることが大切です。

\ どこまで調べたいかは、ご家族によって違います /

📅 NIPTを予約する

90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。

8. ミネルバクリニックのサポート体制

ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が常駐し、検査前の遺伝カウンセリングから、陽性のときの確定検査まで院内で対応しています。体外受精・卵子提供・分娩は行っていないため、妊娠前の評価や治療、出産は、それぞれの専門施設と連携して進めていただくことになります。

🔬 プランごとの検査方式

スタンダードプランは標的捕捉濃縮法で検査します(精度のデータはスタンダードプランのエビデンス)。ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※で、インペリアルプランは低深度全ゲノムシーケンスとターゲット法を組み合わせて検査します。

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

🏥 院内で確定検査まで対応

2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性の場合は、陽性のカウンセリングを何度でも無料で受けられます。

💰 互助会2つ(NIPTを受ける方は全員加入)

羊水検査互助会(カトレア会)は会費8,000円で、陽性のときの羊水検査の費用を上限なく補助します。安心検査結果保障制度(6,000円)は、結果が出ず再検査が必要なのに、流産で再検査ができない場合に備える互助会で、検査料金(諸費用を除く)が返金されます。どちらも収益を目的としない事業のため、消費税の対象外です。

🌐 オンラインNIPT

遠方の方はオンラインNIPTを利用でき、遺伝カウンセリングはオンラインで、採血は全国110か所の提携施設で受けられます。お電話でのご相談はNIPT専用ダイヤル(03-3408-3768)へどうぞ。

🏥 ターナー症候群の方の妊娠、赤ちゃんの検査まで見すえて

臨床遺伝専門医が常駐し、NIPTの前の遺伝カウンセリングから、陽性のときの羊水検査・絨毛検査まで院内で行います。お母さん自身の染色体の結果もふまえて、検査の範囲と結果の読み方をお伝えします。

よくある質問(FAQ)

Q1. ターナー症候群の女性は全員が不妊なのですか?

いいえ、全員ではありません。9割を超える方は卵巣の働きが失われますが、モザイク型(45,X/46,XX)の方などでは卵巣の働きが残っていることがあり、全体の2〜5%で自然妊娠が報告されています。卵子の減り方が速いため、妊娠を望む場合は早めに卵巣の働きを調べておくことをお勧めします。

Q2. ターナー症候群で自然妊娠できる確率はどのくらいですか?

全体で2〜5%と報告されており、自然妊娠した方の多くはモザイク型です。45,X(モノソミーX)の方では非常にまれです。自然妊娠では流産や赤ちゃんの染色体の変化が一般より多いとされるため、妊娠したら出生前検査について説明を受けておくことをお勧めします。

Q3. 卵子提供による体外受精の成功率はどのくらいですか?

ターナー症候群の方でも、移植あたりの妊娠率はほかの理由で卵子提供を受ける方と大きく変わらないとする報告があります。ただし、流産や妊娠高血圧症候群などの合併症は多く、心臓と大動脈の状態や子宮の発育によっても結果は変わります。双子は心臓への負担が大きいため、戻す胚は1つが勧められています。

Q4. 妊娠する上で最も注意すべきリスクは何ですか?

大動脈解離などの心臓・血管の合併症です。米国生殖医学会は、妊娠中に大動脈解離や破裂で亡くなるリスクが2%にのぼる可能性があるとしています。妊娠の前に心臓MRIと心エコーで大動脈を評価し、心臓MRIで大きな異常がある場合や、体の大きさで補正した大動脈の太さ(ASI)が2cm/m²を超える場合は、妊娠を避けるよう勧められています。

Q5. ターナー症候群の妊娠中や出産では、どんな管理が必要ですか?

妊娠中は血圧と大動脈を定期的に確かめます。妊娠高血圧症候群が一般より多いため、血圧の管理がとくに大切です。出産方法は大動脈の状態や血圧をみて決め、帝王切開が選ばれることが多いとされています。出産後もしばらくは大動脈解離のリスクが続くため、循環器内科と産科の両方で診てもらえる施設を選ぶことが大切です。

Q6. ターナー症候群でも性行為はできますか?

はい、できます。ホルモン補充療法で腟や子宮の発育が促され、多くの方は性行為に支障がありません。低身長であっても性行為には影響しません。潤いが足りないときは潤滑剤を使うことができ、痛みが続く場合は婦人科で相談してください。

Q7. ターナー症候群は子どもに遺伝しますか?

ターナー症候群のほとんどは、親から受け継いだものではなく偶然起こります。卵子提供の場合、赤ちゃんの染色体はドナーの卵子とパートナーの精子からなるため、ご本人のターナー症候群が受け継がれることはありません。自然妊娠の場合、多くの赤ちゃんは通常の染色体をもって生まれますが、染色体の変化が見つかる割合は一般より高いと報告されています。

Q8. ターナー症候群と双子にはどんな関係がありますか?

ターナー症候群の方が双子を妊娠すると心臓と血管への負担がさらに大きくなるため、体外受精では戻す胚を1つにすることが勧められています。また、受精卵が分かれる前後に一部の細胞でY染色体が失われると、男の子とターナー症候群の女の子という、性別の違う一卵性双生児が生まれることがあります。きわめてまれな現象です。

Q9. モザイク型ターナー症候群とは何ですか?

体の細胞の一部がX染色体2本(46,XX)、一部が1本(45,X)という状態で、全体の約15〜25%を占めます。X染色体が2本ある細胞が混ざっているため症状が比較的軽く、月経があったり、自然妊娠できたりすることがあります。ただし、妊娠を考えられる期間が短い傾向があるため、早めに卵巣の働きを調べておくことが大切です。

Q10. お母さんがターナー症候群だと、NIPTの結果に影響しますか?

影響することがあります。NIPTで調べる血液のDNAにはお母さん由来のものも含まれるため、お母さん自身がモザイク型のターナー症候群だと、赤ちゃんの性染色体の結果に影響することがあります。検査の前にご自身の染色体の結果を伝え、性染色体で陽性や判定保留が出たときは羊水検査などの確定検査で確かめてください。

Q11. 遠方ですが相談できますか?

はい。オンラインNIPTでは、遺伝カウンセリングをオンラインで受け、採血は全国110か所の提携施設で受けられます。お電話でのご相談はNIPT専用ダイヤル(03-3408-3768)へどうぞ。

関連記事

参考文献

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。妊娠の可否や治療については、主治医・専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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