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胎児ドック(胎児スクリーニング)は受けるべき?受ける人の割合は?

胎児ドックを受けるべきか悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか?赤ちゃんの状態を知るために受けてみたいけれど、検査結果が陽性だったらどうしようという不安もありますよね。胎児ドックを受けることでメリットもありますが、デメリットもあります。今回は胎児ドックとはどのような検査か、受けるべきか迷うときの判断要素、検査のメリット・デメリットなどを解説します。

胎児ドックとは

胎児ドックとは、出生前診断の非確定的検査のひとつです。胎児ドックは母体や胎児への影響がない安全な検査ですが、胎児に疾患があるかどうかの可能性を調べる検査になります。そのため結果が陽性だった場合、診断を確定させるには羊水検査や絨毛検査などの確定的検査が必要です。

胎児ドックは、「胎児スクリーニング検査」「胎児形態異常スクリーニング検査」「「胎児初期精密検査」「ベビードッグ」などとも呼ばれます。

胎児ドックでは、超音波機器を用いてお腹の中の赤ちゃんを総合的に診断し、疾患の有無を検査します。胎児ドックで使われる超音波機器は、妊娠健診で使用される超音波機器と比較してより精密な機器です。そのため、受診できる医療機関が限られています。

胎児ドックの実施時期と回数は、日本産婦人科学会によって以下のように提言されています。

  • ・妊娠初期(10~13週)
  • ・妊娠中期(18~20週)
  • ・妊娠後期(28~31週)

それぞれの時期で赤ちゃんの発育状態も異なるため、検査で分かる内容も異なります。胎児ドックは妊婦さんやパートナーの希望により遺伝カウンセリングなどを受け、十分な納得と理解が得られてから実施される検査です。

胎児ドックについての詳細は、「胎児ドックとは|検査時期や分かること、メリット・デメリットまで徹底解説」をご覧ください。

胎児ドックでわかること

胎児ドックでわかる主な先天性疾患には、下記のものがあります。

  • ・ダウン症候群(21トリソミー)
  • 通常2本ある21番染色体が3本ある先天性疾患

  • ・エドワーズ症候群(18トリソミー)
  • 通常2本ある18番染色体が3本ある先天性疾患

  • ・パトー症候群(13トリソミー)
  • 通常2本ある13番染色体が3本ある先天性疾患

また、胎児ドックで見つかるその他の先天性異常の例として、頭蓋骨内欠損(無脳症)や脊椎の変形(二分脊椎)などがあります。

その他にも、赤ちゃんの性別や推定体重、発育状態、羊水量、主な臓器や胎盤・臍帯などの異常の有無もわかります。

胎児ドックの受診をおすすめするのは、下記に該当する方です。

  • ・高齢出産のため、赤ちゃんの染色体異常などが心配な方
  • ・近親者に遺伝子疾患がある方
  • ・前回の妊娠で赤ちゃんに異常が見つかった方
  • ・上の子どもに病気や障害がある方
  • ・赤ちゃんに病気があれば早く見つけて対処してあげたいと考えている方

胎児ドックの受検時期と回数

前述のように、胎児ドックは妊娠初期、中期、後期の3回受けることができます。

検査名 検査時期 チェック項目
妊娠初期胎児ドック 妊娠10~13週 全身の形態
脳や顔の構造
心臓の構造
四肢の確認
妊娠中期胎児ドック 妊娠18~20週 大脳や小脳

心臓

胃腸
肝臓
腎臓
外性器
妊娠後期胎児ドック 妊娠28~31週 大脳や小脳

心臓

胃腸
肝臓
腎臓
外性器

胎児ドックでかかる費用

胎児ドックの費用相場は、約2~5万円です。保険適用外であるため、全額自己負担となります。非確定的検査のため、診断を確定させる確定的検査を受ける場合は追加で約10~20万円かかることにも注意が必要です。

同じ非確定的検査であるNIPT(新型出生前診断)の費用相場が約20万円であることから考えると、胎児ドックの費用負担は少ないといえるでしょう。

胎児ドックを受けるべきか

胎児ドックを受けるべきかは、妊婦さんの年齢など個々のケースで異なります。

胎児ドックを受けるか迷ったときは、下記の要素を参考に判断してください。

  • ● 高齢出産である
  • ● 夫婦のいずれかが染色体異常の保因者である
  • ● 染色体異常児を妊娠、出産したことがある
  • ● 胎児が重篤な疾患に罹患する可能性がある

出生前診断の受診は、胎児の疾患の有無がわかるだけではありません。生むか生まないかという倫理的問題も同時に発生するため、検査の目的などを十分に理解したうえで受診する必要があります。検査結果の受け止め方など、まずは妊婦さんとパートナーでしっかりと話し合いましょう。

胎児ドックを受ける人の割合

1998年から2016年までの日本における出生前遺伝学的検査の動向に関する佐々木らの報告によると、日本の出生前診断受診数(延べ人数)は、出生数97.7万件において7.2%、高齢妊婦数27.8万人において25.1%という結果でした。

確定的検査である羊水検査の件数は1998年の10,419件以降増加傾向を示していましたが、2014年の20,700件を境に減少傾向となり、2016年には18,600件となっています。これは、2013年に導入されたNIPTの影響と考えられています。

NIPTを導入した目的のひとつが流産などのリスクの低減であったように、より安全な非確定的検査の受診数は今後も増えていくことが予想されます。胎児ドックも母体、胎児に影響がない検査であるため、同じ傾向にあるといえるでしょう。

胎児ドックは、下記のような方が多く受けています。

  • ・高齢出産の方
  • ・近親者に遺伝子疾患がある方
  • ・夫婦のいずれかが染色体異常の保因者である方
  • ・前回の妊娠・出産で赤ちゃんに異常が見つかった方
  • ・NIPTの受診前に胎児ドックを受けたい方
  • ・羊水検査や絨毛検査を考えている方
  • ・赤ちゃんに病気があるなら早く対処してあげたいと考えている方

胎児ドックのメリット

胎児ドックを受けるメリットは、下記の通りです。

  • ・流産のリスクがない
  • ・胎児の異常が早期にわかる
  • ・当日に結果が出る

胎児ドックは、超音波を用いて検査を行います。超音波による影響は、母体にも胎児にもありません。羊水穿刺を行う羊水検査や母体から絨毛を採取する絨毛検査には、若干の流産や死産のリスクが伴います。羊水検査による流産のリスクは0.3%、絨毛検査による流産のリスクは1%ほどです。胎児ドックは羊水検査や絨毛検査と比べて、リスクがない安全な検査といえるでしょう。

また胎児ドックでは、赤ちゃんの形態の異常も見つけることができます。先天性心疾患など内臓の奇形も早期に把握することが可能です。ダウン症候群の検出率も比較的高く、約70%といわれています。

出生前にこのような情報がわかることで早くから心の準備ができると同時に、適切な医療施設の情報収集も可能となるでしょう。

NIPTでは、検査結果がわかるまで約1~2週間かかりますが、胎児ドックでは当日に結果がわかります。そのため、赤ちゃんに疾患が見つかった場合でも、結果を受け止め、その後の対応を考える十分な時間があるでしょう。

胎児ドックのデメリット

胎児ドックを受けるデメリットは、下記の通りです。

  • ・精度がNIPTよりも低い
  • ・陽性診断時の心理的負担が大きい
  • ・検査費用の負担が大きい

NIPTの精度は99%です。これは、胎児に疾患があった場合、結果が陽性となったときの異常がある確率が99%という意味です。例えば、ダウン症候群(21トリソミー)に対する精度がNIPTでは99%であるのに対し、胎児ドックでは70%と低くなります。

また、検査結果が陽性であった場合の妊婦さんやパートナーの心理的負担も大きいでしょう。胎児ドックは非確定的検査であるため、結果が陽性であっても「疾患がある可能性が高い」ことを示しているに過ぎません。しかし陽性結果を受けて、生むか生まないか、確定的検査で診断を確定させるかを悩む方もいるでしょう。

前述のように、胎児ドックの検査費用は保険適用外であるため、全額自己負担です。妊娠初期、中期、後期と3回受診すれば経済的な負担は大きいでしょう。また、結果が陽性であった場合、確定的検査で約10~20万円かかることも考えると、全体でかかる費用は家計に大きな影響を与えるといえます。

まとめ

超音波で胎児の状態を総合的に診断できる胎児ドック。リスクがない検査ですが、検査の結果次第では「命の選別」など倫理的問題も発生します。受診に迷う場合は、妊婦さんとパートナーでしっかりと話し合うことが大切です。加えて、遺伝カウンセリングで専門家の意見を聞くことも参考になります。そのうえで、生まれてくる赤ちゃんにとってベストな選択をすることが望まれるでしょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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