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卵子提供とは?日本で受けられる条件・費用・リスクと、子どもが受け継ぐ遺伝子を臨床遺伝専門医が解説

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

卵子提供とは、第三者(ドナー)から提供された卵子と夫の精子で体外受精を行い、できた胚を妻の子宮に移植して、妻自身が妊娠・出産する治療です。日本には卵子提供を禁止する法律はありませんが、実施のルールを定めた法律もまだなく、学会や団体の自主的な指針のもとで行われています。生まれた子どもは、核の遺伝情報の半分とミトコンドリアDNAを提供者から受け継ぎます。妊娠中は、妊娠高血圧腎症が自分の卵子による体外受精の約2〜3倍に増えることがわかっています。[1]この記事では、卵子提供のしくみ、日本で受けられる条件と制度の現状、費用の考え方、妊娠率とリスク、そして臨床遺伝専門医の立場から、子どもが受け継ぐ遺伝子と提供者の遺伝学的検査について解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🥚 条件・費用・リスク・遺伝子
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 卵子提供で生まれた子どもは、誰の遺伝子を受け継ぎますか?

A. 核の遺伝情報は半分が提供者、半分が夫から、ミトコンドリアDNAは提供者から受け継ぎます。妊娠・出産する母親と子どもの間に遺伝的なつながりはありませんが、法律上は出産した女性が母となります。そのため、提供者の家族歴や保因者検査の結果は、子どもの健康を考えるうえで直接意味を持ちます。

  • ➤日本で受けられる? → 禁止する法律はないが専用の法律もない。JISARTやOD-NETの指針のもとで実施
  • ➤費用 → 保険適用外の自由診療。施設や国によって大きく異なる
  • ➤主なリスク → 妊娠高血圧腎症が自分の卵子による体外受精の約2〜3倍
  • ➤遺伝子 → 子どもは提供者の遺伝子を受け継ぐ。提供者の家族歴と保因者検査が国際的な標準

1. 卵子提供とは?しくみと対象になる人

卵子提供は、自分の卵子では妊娠が望めない女性が、第三者の卵子を使って自ら妊娠・出産する生殖補助医療です。英語では oocyte donation や egg donation と呼ばれます。卵子を提供する女性を提供者(ドナー)、卵子を受け取る女性をレシピエントといいます。

卵子提供のしくみ

卵子提供の治療そのものは、体外受精の技術の組み合わせです。提供者は排卵誘発剤で卵巣を刺激し、複数の卵子を育てたうえで採卵を受けます。採取した卵子は夫の精子と体外受精または顕微授精で受精させ、数日培養して胚(受精卵)にします。一方、妻はホルモン剤で子宮内膜を着床に適した状態に整え、胚の移植を受けます。胚をいったん凍結し、妻の準備が整った周期に移植する方法もあります。

提供者が採卵排卵誘発のうえ採取
▶
夫の精子と受精体外受精・顕微授精
▶
胚を妻の子宮へ移植ホルモン剤で内膜を準備
▶
妻が妊娠・出産法律上の母は妻

胎児の遺伝情報は提供者と夫に由来し、妊娠・出産は妻が担うという、自然妊娠とは異なる組み合わせになります。この「遺伝上の母」と「産む母」が分かれることが、妊娠中のリスク、子どもの遺伝、出自を知る権利のすべてに関わります。

卵子提供の対象になる人

卵子提供の対象は、医学的な理由で自分の卵子による妊娠が望めない女性に限られます。日本で卵子提供を行う不妊治療施設の団体JISART(ジサート、日本生殖補助医療標準化機関)のガイドラインは、対象を次の3つとしています[2]。

  • 卵子が存在しない場合
  • 夫婦間の体外受精で妊娠・出産に至らず、その原因が卵子にあり、今後妊娠できる可能性が極めて低いと医師が判断した場合
  • 妻が重い遺伝性疾患の保因者または患者で、着床前検査や出生前検査、妊娠中絶を望まない場合

「卵子が存在しない」代表的な状態が、40歳未満で卵巣の働きが止まる早発卵巣不全(POI)です。20代・30代で月経が止まる早発閉経も、この中に含まれます。X染色体の数や構造の変化によるターナー症候群では、思春期前後から卵巣の働きが失われることが多く、卵子提供が妊娠の選択肢として検討されます。このほか、がん治療のための卵巣摘出や化学療法・放射線治療で卵巣の機能が失われた場合も対象になります。

一方で、年齢によって妊娠しにくくなったことだけを理由にした卵子提供は、指針上は対象としていません。JISARTは妻の年齢について「50歳程度」を目安として判断するとしており、自然閉経の平均年齢を超えて妊娠できないことは加齢によるものと考える立場です[2][3]。

生まれた子は法律上だれの子?

卵子提供で生まれた子どもの母は、法律上、出産した女性です。提供者は母になりません。2020年12月に成立した「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」の第9条は、女性が自分以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療で子を懐胎し出産したときは、その出産をした女性をその子の母とする、と定めています[4]。父は、精子を用いた夫です。

この親子関係の規定は2021年12月11日に施行され、それ以降に生まれた子どもに適用されます[4]。つまり戸籍の上では、卵子提供で生まれた子どもは夫婦の実子として扱われます。ただし、この法律が定めたのは親子関係だけです。誰が提供できるか、どの施設が行えるか、提供者の情報をどう管理するかといった実施のルールは、附則で「おおむね2年を目途に検討する」とされたまま、2026年9月時点でも法律になっていません[4]。

2. 日本で卵子提供は受けられる?現状と条件

日本でも卵子提供は受けられますが、行っている施設は限られ、法律ではなく学会・団体の自主的な指針に沿って実施されています。第三者の精子を使う方法については、医療機関での精子提供(AID)の現状と法律で解説しています。

違法ではないが、専用のルールはまだない

日本に卵子提供を禁止する法律はなく、卵子提供そのものは違法ではありません。参議院の調査室の資料も、日本には生殖補助医療を規制する法律が存在せず、日本産科婦人科学会が会告の形で定める指針によって行われてきたと説明しています[5]。学会の会告は会員医師への自主規制で、法的な強制力はありません。

日本産科婦人科学会は1983年の会告で体外受精の対象を夫婦に限ったため、第三者の卵子は国内の臨床では長く使われてきませんでした[6]。国の審議会は2003年に、条件付きで卵子提供を認める報告書をまとめています。その内容は、提供者は子のいる35歳未満の人に限る、採卵は3回まで、同じ提供者から妊娠した子が10人に達したら使用しない、提供は匿名とする、15歳以上の子は提供者を特定できる情報の開示を請求できる、というものでした[3]。しかし、この報告書をもとにした法律は制定されませんでした。

こうした状況のなかで、国内でもエージェント(仲介業者)を通じた卵子提供が広がっていることが報道されています[7]。仲介や提供者への支払いを直接規制する法律はありません。

JISARTの条件とOD-NET

国内の卵子提供の主な枠組みは、JISARTのガイドラインと、匿名の提供者を募るNPO法人OD-NET(オーディーネット、卵子提供登録支援団体)です。JISARTの最新のガイドライン(2026年6月改定)では、提供者は原則として35歳未満の20歳以上の成人で、同じ人からの採卵は3回以内、同じ提供者から生まれる子どもは4人以内とされています[2]。提供者は原則として匿名の第三者ですが、匿名の提供者が見つからない場合には、倫理委員会の承認を条件に、姉妹や友人など身近な人からの提供も認めています。実施には、施設の倫理委員会とJISARTの倫理委員会の二段階の承認が必要です。

受ける側の夫婦は、戸籍で法律上の夫婦であることを確認する必要があります[2]。日本産婦人科医会の資料によると、2023年1月までに日本で卵子提供を受けて出産した夫婦は約70組とされています[6]。OD-NETは2013年に設立された団体で、提供者は原則35歳未満の成人女性、採卵は3回まで、その提供で生まれる子どもは10人までとしています[8]。

📋 国内の卵子提供に関する主なルールの比較

項目 JISART(2026年改定) OD-NET 国の審議会報告書(2003年)
提供者の年齢 原則35歳未満(20歳以上) 原則35歳未満の成人 35歳未満・既に子がいる人
採卵の回数 3回以内 3回まで 3回まで
同じ提供者から生まれる子 4人以内 10人まで 妊娠した子が10人で使用中止
提供者 原則匿名(例外的に知人・親族) 匿名 匿名(兄弟姉妹は当分認めない)
子への情報開示 15歳以上で請求可(特定情報を含む) 18歳以降、提供者の承諾で開示 15歳以上で請求可(特定情報を含む)

※JISARTガイドライン[2]、OD-NET[8]、厚生科学審議会報告書[3]による。いずれも法律ではなく、指針・報告書です。

特定生殖補助医療法案の状況

卵子・精子の提供を規制する法案は国会に提出されたことがありますが、2026年9月時点で成立していません。2025年2月5日、超党派の議員による「特定生殖補助医療に関する法律案」が参議院に提出されました。同年5月30日に内閣委員会に付託されたものの、審議されないまま会期を終え、結果は「未了」となっています[9]。

この法案には、提供の記録を100年間保存して国立成育医療研究センターが管理すること、成人した子どもが提供者の身長・血液型・年齢など個人を特定しない情報の開示を請求できること、提供者の氏名の開示は提供者が同意した場合などに限ること、提供者への対価の授受を禁止すること、あっせん機関を許可制にすることなどが盛り込まれていました[10]。対象は法律上の夫婦に限られていました。

2026年5月には、議員連盟が修正した骨子案で法律婚の夫婦に限る規定を削除し、出自を知る権利に重点を置いた内容に改めたと報じられています[11]。ただし、修正案の詳しい内容や国会への提出時期は、現時点では明らかになっていません。制度は今後変わる可能性があるため、実際に検討する際には最新の状況を確認してください。

海外で受ける場合に確認したいこと

海外で卵子提供を受ける場合は、国ごとに、提供者の匿名性、子どもへの情報開示、同じ提供者から生まれる子どもの数の上限が大きく異なる点に注意が必要です。たとえば英国では、1人の提供者の卵子・精子・胚を使える家族を最大10家族までとし、提供で生まれた子どもは16歳で提供者の個人を特定しない情報を、18歳で氏名などを請求できる仕組みがあります[12]。

一方、提供者の情報を子どもが将来知る方法が用意されていない国や、1人の提供者の卵子が多数の家族に使われうる国もあります。欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)は2026年、国境を越えた配偶子の流通を踏まえ、1人の提供者あたりの家族数に国際的な上限を設けるよう提言しました[13]。海外での治療を検討する場合は、子どもが将来、提供者の情報にたどり着けるかどうかも確認してください。

💡 当院について

ミネルバクリニックでは卵子提供(採卵・体外受精・胚移植)を行っていません。卵子提供の実施や仲介についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。この記事は、卵子提供を正しく知っていただくための解説です。

3. 卵子提供の費用はいくら?

卵子提供は保険が適用されない自由診療で、費用は実施する施設や国、仲介の有無によって大きく異なります。公的な統計による「相場」は示されていません。ここでは、確認できる事実をもとに、費用の考え方を整理します。

保険適用の対象外

2022年4月から不妊治療の多くが保険適用になりましたが、第三者の卵子を用いる生殖補助医療は対象外です。中央社会保険医療協議会の資料では、第三者の卵子または精子を用いた生殖補助医療は、現時点では保険適用外とする方針が示されています[14]。保険適用の年齢や回数の条件については、不妊治療の保険適用の条件で詳しく解説しています。

費用の内訳と、施設・国による違い

費用の内訳の一例として、OD-NETでは、受ける側の夫婦が倫理審査の費用20万円と体外受精の費用に加え、提供者の検査費用・カウンセリング費用・交通費などを負担するとしています[8]。提供は無償のボランティアとされ、提供者への謝礼はありませんが、採卵に伴う休業の補償が設けられています。

エージェントを通じた国内での卵子提供や、海外での卵子提供の費用は、公的機関の調査や信頼できる統計で確認できる数字がありません。インターネット上の金額の多くは仲介業者や海外施設の案内によるもので、渡航費、提供者への支払い、仲介手数料などの含み方もさまざまです。総額に何が含まれるか、移植がうまくいかなかった場合の追加費用はどうなるかを、書面で確認してください。

4. 卵子提供の妊娠率と、妊娠しなかったとき

卵子提供の妊娠率は、主に卵子の年齢、つまり提供者の年齢で決まります。受ける側の年齢が高くても、若い提供者の卵子を使えば、胚そのものの妊娠しやすさは提供者の年齢に近づきます。それでも、1回の移植で妊娠・出産に至らないことは珍しくありません。

妊娠率は提供者の年齢で決まる

卵子の年齢が妊娠率を左右するのは、年齢とともに染色体の数に異常のある胚が増えるためです。体外受精でできた胚盤胞15,169個の染色体を調べた研究では、染色体の数の異常(異数性)は26歳以降に年齢とともに増え、正常な胚が1つも得られない割合は26〜37歳では2〜6%だったのに対し、42歳で33%、44歳で53%に達しました[15]。卵子提供では、この年齢による影響を提供者の年齢に置き換えることができます。

米国の全国データで2018〜2020年の提供卵子による治療成績を分析した研究では、移植1回あたりの生児獲得率は、採卵したばかりの提供卵子でつくった胚の新鮮胚移植で55.9%、凍結胚移植で45.8%でした。凍結保存した提供卵子を使った場合は、それぞれ46.2%、41.3%とやや低くなっていました[16]。米国生殖医学会(ASRM)は、提供卵子の周期では移植する胚の数を提供者の年齢で判断し、条件がよければ1個の胚を移植するよう推奨しています[17]。

これらは米国の集団の平均で、日本の施設の成績や、個々の夫婦が妊娠できる確率を示す数字ではありません。

卵子提供で妊娠しなかったときに考えること

若い提供者の卵子を使っても、胚の染色体異常がなくなるわけではありません。先の研究では、23歳以下の若い女性の胚でも異数性が一定の割合で見られました[15]。見た目の良い胚を移植しても、染色体の数の異常があれば着床しなかったり、流産したりすることがあります。

胚に問題がなくても、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、内膜の厚さ、ホルモン補充の状態など、受ける側の子宮の要因で着床しないことがあります。移植した胚の染色体を事前に調べる方法としてPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)がありますが、検査の精度や限界、実施の条件を理解したうえで検討する必要があります。妊娠しなかった理由は1つに絞れないことも多いため、治療を行った施設で、胚の状態と子宮側の要因の両方について説明を受けることが次の判断の材料になります。

5. 卵子提供のメリット

卵子提供の医学的なメリットは、卵子の年齢に伴う妊娠のしにくさや流産の要因を、若い提供者の卵子の水準に近づけられることです。そのしくみを理解するには、卵子がどのように作られ、なぜ年齢の影響を受けるのかを知っておく必要があります。

卵子のもとになる細胞は、女性がまだ母親のおなかの中にいる胎児期に作られ、減数分裂(染色体の数を半分にする特別な細胞分裂)の途中で止まった状態のまま、出生後に新しく作られることはありません。卵子は排卵の直前に減数分裂を再開しますが、40歳で排卵される卵子は、40年以上分裂を止めていたことになります。この長い停止の間に、染色体を正しく分ける仕組みが弱まり、染色体不分離が起こりやすくなると考えられています。その結果、染色体の数の異常をもつ胚が増え、着床しない、流産する、あるいはダウン症候群などの染色体の数の異常をもって生まれる可能性が高くなります。

卵子提供では、若い提供者の卵子を使うため、胚の染色体の数の異常が起こる割合は、受ける側の年齢ではなく提供者の年齢の水準になります[15]。ただし、染色体の数の異常やダウン症候群などの可能性がゼロになるわけではありません。受ける側の女性は、排卵誘発や採卵に伴う身体的な負担もありません。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「卵子の年齢」と「母体の年齢」を分けて考える】

卵子提供の話をするとき、私は「卵子の年齢」と「母体の年齢」を分けて考えることが大切だと考えています。若い提供者の卵子を使えば、染色体の数の異常による着床しにくさや流産の要因は、提供者の年齢の水準に近づきます。これは卵子提供の大きな医学的な利点です。

一方で、妊娠を支える子宮や血管、心臓や腎臓は、受ける側の女性の年齢のままです。卵子を若くしても、母体の年齢に伴う妊娠中の合併症のリスクは変わりません。どちらか一方だけを見て判断しないことが、この治療を理解するうえで欠かせないと考えています。

6. 卵子提供のデメリット・リスク

卵子提供による妊娠で、確実に増えることがわかっている最大のリスクは妊娠高血圧腎症(にんしんこうけつあつじんしょう)です。このほか、受ける側の年齢に伴う合併症、費用や心理的な負担、提供する側の身体的な負担も考える必要があります。

妊娠高血圧腎症が約2〜3倍に増える

卵子提供による妊娠では、自分の卵子による体外受精と比べて、妊娠高血圧腎症が約2〜3倍に増えます。16の研究グループから患者一人ひとりのデータを集めて解析した2026年の研究(卵子提供による妊娠2,747例)では、妊娠中の高血圧の合併症全体の調整オッズ比が2.62、妊娠高血圧腎症が2.28で、この結果は確実性の高いエビデンスと評価されています[1]。単胎妊娠を対象とした2019年のメタ解析でも、妊娠高血圧腎症のオッズ比は2.64、重症の妊娠高血圧腎症は3.22でした[18]。

比較の相手を自然妊娠にすると、差はさらに大きくなります。2016年のメタ解析では、自然妊娠と比べた妊娠高血圧腎症のオッズ比は4.34、妊娠高血圧は7.94と報告されていますが、後者は研究間のばらつきが非常に大きい数字です[19]。倍率を見るときは、何と比べた数字なのかを確認してください。

なぜ卵子提供で妊娠高血圧腎症が増えるのかについては、免疫学的な説明が有力です。通常の妊娠では、胎児の遺伝情報の半分は母親自身のものです。しかし血縁のない提供者の卵子による妊娠では、胎児の遺伝情報はすべて母親にとって「他人」のものになり、胎盤に対する母体の免疫の反応がより強く現れることが報告されています[20]。卵子提供による妊娠76例を調べた研究では、母親と胎児の間でHLA(組織の型)のクラスIIの不一致が多いほど、妊娠高血圧腎症が多いという関連が示されました[21]。

🩺 卵子提供による妊娠の主なリスク(自分の卵子による体外受精との比較)

項目 オッズ比(95%信頼区間) 出典
妊娠中の高血圧の合併症全体 2.62(2.22〜3.10) 個別データの統合解析 2026
妊娠高血圧腎症 2.28(1.88〜2.78) 個別データの統合解析 2026
重症の妊娠高血圧腎症 3.22(2.30〜4.49) メタ解析 2019(単胎)
早産 1.57(1.33〜1.86) メタ解析 2019(単胎)
妊娠糖尿病 1.27(1.03〜1.56) メタ解析 2019(単胎)
帝王切開 2.28(2.14〜2.42) メタ解析 2019(単胎)

※van Bentemら 2026[1]、Moreno-Sepulvedaら 2019[18]による。集団のデータであり、個人の発症確率を示すものではありません。

妊娠高血圧症候群は、現在の日本産科婦人科学会の定義では、妊娠中に収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上になった状態を指します[22]。かつての「妊娠中毒症」ではむくみも診断の要素でしたが、現在は高血圧を中心に定義され、たんぱく尿や臓器の障害を伴うものが妊娠高血圧腎症です。予防については、米国予防医療専門委員会(USPSTF)が、体外受精による妊娠を低用量アスピリンの使用を検討する中等度のリスク因子に挙げています[23]。卵子提供の妊娠でアスピリンやヘパリンを使った場合に高血圧の合併症が少なかった可能性も示されていますが、効果を確かめるにはさらに研究が必要とされています[1]。

高年齢での妊娠そのもののリスク

卵子提供は卵子を若くしますが、妊娠する女性の年齢に伴うリスクは変わりません。ASRMの2025年の倫理委員会見解が引用するデータでは、妊娠高血圧は45〜49歳で16.7%、50歳以上で33.3%、妊娠糖尿病は45〜49歳で14.7%、50歳以上で29.6%に見られました[24]。ASRMは一律の年齢上限は設けていませんが、各施設が文献を検討したうえで、一定の年齢以上の女性への胚移植を断る方針を持つことを強く検討すべきだとしています。

妊娠糖尿病については、卵子提供そのものによる増加は小さく、自分の卵子による体外受精と比べたオッズ比は1.27でした[18]。卵子提供の妊娠で妊娠糖尿病が多く見えるのは、主に受ける側の年齢が高いことによると考えられます。卵子提供を検討する際には、妊娠前に血圧や血糖、腎臓の機能などを確認し、周産期の管理ができる医療機関で妊婦健診を受けられるよう準備しておくことが重要です。

多胎・費用・心の負担

複数の胚を移植すると双子などの多胎妊娠が増え、母体と赤ちゃんのリスクがさらに高くなります。もともと合併症のリスクが高い卵子提供の妊娠では、1個の胚を移植する方法が推奨されています[17]。移植する胚の数と多胎の関係は、不妊治療で双子になる確率で詳しく解説しています。

費用は第3章で述べたとおり保険の対象外で、治療が1回で終わらない場合は負担が重なります。また、提供者を待つ期間や、夫婦の間での考え方の違い、周囲への説明、将来子どもにどう伝えるかといった心理的な課題もあります。JISARTでは、専門の知識を持つカウンセラーが中立的な立場でカウンセリングを行うことを条件にしています[2]。

提供する側の負担

卵子を提供する女性は、排卵誘発剤の注射と採卵を受けるため、身体的なリスクがあります。代表的なものが、卵巣が過剰に反応して腫れたり腹水がたまったりする卵巣過剰刺激症候群(OHSS)です。スペインの提供者4,052周期を調べた研究では、中等症から重症のOHSSが0.87%、採卵に伴う出血などの合併症が0.42%でした[25]。ASRMは重症のOHSSを採卵1回あたり約1〜2%とし、提供者1人の採卵は6周期までを目安としています[26]。この上限は安全性が証明された数字ではなく、長期的な影響についてのデータが十分でないことを踏まえた慎重な目安です。

7. 卵子提供と遺伝子:子どもはだれの遺伝子を受け継ぐ?

卵子提供で生まれた子どもは、遺伝的には提供者と夫の子どもです。妊娠・出産する母親の遺伝子は受け継ぎません。ここでは臨床遺伝専門医の立場から、子どもが受け継ぐもの、産む母親が関わりうること、提供者の遺伝学的な検査について整理します。

核DNAの半分とミトコンドリアDNAは提供者から

子どもの核の遺伝情報(核DNA)は、半分が提供者の卵子から、半分が夫の精子から受け継がれます。卵子と精子はそれぞれ23本の染色体を持ち、受精で合わさって子どもの46本の染色体になります。見た目や体質に関わる遺伝子も、遺伝性疾患の原因となるバリアント(遺伝子の配列の違い)も、提供者と夫の両方から受け継がれる可能性があります。

さらに、細胞の中でエネルギーを作る小器官ミトコンドリアにも、独自のDNAがあります。ミトコンドリアは卵子を通じて受け継がれ、子どもは母親からミトコンドリアDNAを受け継ぎます[27]。卵子提供の場合、この「母親」は卵子を提供した女性です。つまり子どものミトコンドリアゲノムは、提供者に由来します。

🧬 卵子提供で生まれた子どもが受け継ぐもの

項目 提供者 夫 妊娠・出産する妻
核DNA(46本の染色体) 半分(23本) 半分(23本) 受け継がない
ミトコンドリアDNA 受け継ぐ 受け継がない 受け継がない
妊娠中の子宮環境 関わらない 関わらない 関わる
法律上の親子関係 親ではない 父 母

※法律上の親子関係は2020年の「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」による[4]。

産む母親が関わりうること:子宮環境とエピジェネティクス

産む母親は子どもに遺伝子を渡しませんが、子宮の環境を通じて、胚や胎児の遺伝子の働き方に影響する可能性が基礎研究で示唆されています。遺伝子の配列そのものは変えずに、どの遺伝子をどれだけ働かせるかを調整する仕組みをエピジェネティクスといいます。

2015年の研究では、ヒトの子宮内膜から分泌される小さなRNA(miR-30d)が、着床前の胚に取り込まれることが示されました。マウスの胚をこのRNAと一緒に培養すると、胚の遺伝子の働き方が変化し、子宮への接着能力も高まりました[28]。また、卵子提供を受けた女性932人を調べた観察研究では、受ける側のBMIが35以上の場合に低出生体重児が多いという関連が見られています[29]。

ただし、これらはマウスの胚を用いた実験や観察研究の結果です。産む母親が子どもの遺伝子の働きを長期的に変えることが、ヒトで証明されたわけではありません。「遺伝子は受け継がないが、妊娠中の環境を通じて子どもに関わる可能性がある」という理解にとどめておくのが、現時点では正確です。

提供者の家族歴と保因者検査

子どもは提供者の遺伝子を受け継ぐため、提供者の家族歴と保因者検査は、子どもの健康を考えるうえで直接の意味を持ちます。ASRMの2024年の指針は、卵子の提供者は21〜34歳が望ましいとし、すべての提供者に3世代にわたる詳しい家族歴の聴取と、嚢胞性線維症・脊髄性筋萎縮症・異常ヘモグロビン症の保因者検査を求めています。さらに、民族を問わない拡大保因者検査を推奨しています[30]。

保因者とは、常染色体潜性(劣性)遺伝やX連鎖潜性遺伝の病気の原因となるバリアントを1つ持っていても、自身は発症しない人のことです。保因者であることは珍しくなく、多くの人が何らかの潜性遺伝病のバリアントを持っています。問題になるのは、提供者と夫が同じ遺伝子に病的バリアントを持っていた場合で、その組み合わせでは子どもが4分の1の確率で発症します。そのため、提供者だけでなく夫の保因者検査も合わせて考える必要があります。米国産婦人科学会(ACOG)は、保因者と判明した場合にはパートナーにも検査を提示し、保因者の組み合わせでは提供配偶子や着床前検査、出生前診断などの選択肢を遺伝カウンセリングで検討するよう勧めています[31]。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、妊娠を計画しているすべての人に113遺伝子の保因者検査を提示すべきだとしています[32]。

当院では、妊娠前の夫婦向けに遺伝子ブライダルチェック(保因者検査)を行っています。提供者側の検査の範囲は実施する施設によって異なるため、提供者がどの遺伝子を調べているかを確認することが、夫側の検査の範囲を考える参考になります。

💡 用語解説:拡大保因者検査

拡大保因者検査とは、民族や家族歴にかかわらず、数十から数百の潜性遺伝病の原因遺伝子について、保因者かどうかを一度に調べる検査です。どの民族でも保因者は一定の割合で存在するため、範囲を広げて調べる方法が国際的に推奨されています。調べていない遺伝子もあるため、陰性でもリスクがゼロになるわけではありません。

同じ提供者から生まれる子どもの数と近親婚

同じ提供者から生まれた子どもたちは、互いに遺伝的な異母きょうだいです。そのため、1人の提供者から生まれる子どもの数には上限が設けられています。国内ではJISARTが4人以内、OD-NETが10人まで[2][8]、英国では10家族まで[12]とされています。ESHREは2026年、国際的な上限としてまず50家族から始め、段階的に15家族以下へ下げるよう提言しました。その主な理由として、近親婚の懸念よりも、多数の異母きょうだいがいることによる提供で生まれた人の心理的・社会的な負担を挙げています[13]。

知らずに異母きょうだい同士が結婚する確率は、上限が守られていれば非常に低いと考えられています。フランスの精子提供を前提にした推計では、提供が原因となる血縁者同士の結婚による出生は0.46%、それによる潜性遺伝病は0.01%とされています[33]。ただしこれは、1人あたりの上限が低い国の精子提供を前提としたモデルであり、上限のない国際的な卵子の流通にそのまま当てはめることはできません。子どもが将来、提供者の情報や異母きょうだいの存在を知る手段があるかどうかは、遺伝の面からも重要な意味を持ちます。

8. 出自を知る権利と、子どもへの告知

出自を知る権利とは、提供された卵子や精子で生まれた人が、自分の遺伝上の親である提供者について知ることができる権利のことです。日本には、この権利を保障する法律上の制度がまだありません。

出自を知る権利の現状

日本では、出自を知る権利の扱いは卵子提供を行う団体ごとに異なります。JISARTは、15歳以上になった子どもが、氏名や住所など提供者を特定できる情報を含めて開示を請求できるとしています[2]。OD-NETでは、子どもが18歳以降に申し出た場合に、提供者の承諾を得て特定情報を開示する仕組みです[8]。2003年の国の審議会報告書も、15歳以上の子どもに提供者を特定できる情報の開示請求を認めていました[3]。

2025年に提出された法案では、提供の記録を国立成育医療研究センターが100年間保存し、成人した子どもが個人を特定しない情報の開示を請求でき、氏名の開示は提供者の同意がある場合などに限るとされていました[10]。子どもが知ることのできる範囲をどこまでにするかは、法制化の議論の中心的な論点の1つです。海外の施設で卵子提供を受けた場合は、その国の制度によって、子どもが提供者の情報にたどり着けるかどうかが大きく変わります。

告知の時期と伝え方

ASRMの倫理委員会は、提供で生まれたことを子どもに伝えることを「強く推奨する」としています。ただし、最終的に決めるのは親です[34]。JISARTも、親に対して子どもが幼いうちから伝えていくことを求めています[2]。

告知の時期については、英国で卵子・精子提供などで生まれた子どもの家族を1歳から14歳まで追跡した研究があります。伝えた家族の中では、7歳より前に伝えられた子どものほうが、思春期の家族関係や心理的な状態が良好でした[35]。87家族という小さな規模の研究で、伝える時期によって結果が決まると言い切れるものではありません。遺伝の面から見ると、子どもが自分の家族歴を正しく知っていることは、将来の病気のリスクや、自身が子どもを持つときの判断に関わります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【子どもにとっての「家族歴」】

遺伝の相談では、家族歴がとても重要な情報になります。どの病気が家系にあるかで、検査の選び方も、結果の読み方も変わるからです。卵子提供で生まれた子どもにとって、遺伝上の家族歴は提供者の側にあります。

だからこそ私は、出自を知る権利を感情の問題だけでなく、子ども自身の健康に関わる医学的な情報の問題としても考えるべきだと考えています。治療を選ぶ時点で、提供者の情報がどこに、どのくらいの期間、どこまで残されるのかを確かめておくことは、生まれてくる子どもの将来の医療に直結します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 日本では卵子提供は違法ですか?

違法ではありません。日本には卵子提供を禁止する法律はありません。ただし、実施のルールを定めた法律もまだなく、JISARTやOD-NETなど団体の自主的な指針のもとで、限られた施設が行っています。2025年に提出された法案は成立せず、2026年9月時点で専用の法律はありません。

Q2. 卵子提供で生まれた子どもは実子になりますか?

はい。2020年に成立した「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」により、他の女性の卵子を用いて出産した女性が、その子の母とされます。精子を用いた夫が父となるため、戸籍上は夫婦の実子として扱われます。

Q3. 卵子提供は何歳まで受けられますか?

JISARTの指針では、受ける側の妻の年齢は50歳程度が目安とされています。年齢が高くなるほど、妊娠高血圧や妊娠糖尿病など妊娠中の合併症が増えることがわかっており、米国生殖医学会も各施設が年齢の上限を設ける方針を検討すべきだとしています。

Q4. 卵子提供で近親婚になる確率はどのくらいですか?

同じ提供者から生まれる子どもの数に上限が設けられていれば、非常に低いと考えられています。フランスの精子提供を前提とした推計では、提供が原因となる血縁者同士の結婚による出生は0.46%とされています。ただし、上限のない国際的な卵子の流通にそのまま当てはめることはできず、子どもが提供者の情報を知る手段があるかどうかも関わります。

Q5. 卵子提供で妊娠しなかったのはなぜですか?

若い提供者の卵子でも胚に染色体の数の異常が一定の割合で起こり、着床しないことや流産することがあります。子宮筋腫や子宮内膜の状態など、受ける側の子宮の要因も影響します。

Q6. ミネルバクリニックで卵子提供を受けることはできますか?

いいえ、当院では卵子提供(採卵・体外受精・胚移植)を行っておらず、卵子提供の実施や仲介についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。卵子提供は、生殖補助医療を専門とする医療機関にご相談ください。

まとめ

卵子提供は、第三者の卵子と夫の精子で体外受精を行い、妻自身が妊娠・出産する治療です。日本では禁止する法律はありませんが、実施のルールを定めた法律もまだなく、JISARTやOD-NETの指針のもとで行われています[2][8]。生まれた子どもの母は法律上、出産した女性です[4]。費用は保険の対象外で、施設や国によって大きく異なります[14]。

妊娠率は主に提供者の年齢で決まる一方、妊娠高血圧腎症は自分の卵子による体外受精の約2〜3倍に増え、受ける側の年齢に伴う合併症のリスクもそのまま残ります[1][24]。子どもは核DNAの半分とミトコンドリアDNAを提供者から受け継ぐため、提供者の家族歴と保因者検査、同じ提供者から生まれる子どもの数、そして子どもが将来提供者の情報を知る手段があるかどうかは、生まれてくる子どもの健康と人生に関わる大切な確認事項です[30][13]。

🏥 卵子提供をお考えの方へ

当院では、卵子提供(採卵・体外受精・胚移植)を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
卵子提供を検討される場合は、生殖補助医療を専門とする医療機関へご相談ください。この記事は卵子提供を正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、提供者や夫の遺伝学的な評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。

参考文献

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  • [2] JISART(日本生殖補助医療標準化機関). 精子又は卵子の提供による生殖補助医療(ART)に関するJISARTガイドライン(令和8年6月13日改定). [JISART]
  • [3] 厚生科学審議会生殖補助医療部会. 精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書(2003年4月28日). [厚生労働省]
  • [4] 法務省. 生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律の成立について. [法務省]
  • [5] 参議院常任委員会調査室・特別調査室. 立法と調査 No.431(2021年2月). [参議院]
  • [6] 日本産婦人科医会. (1)卵子提供. [日本産婦人科医会]
  • [7] NHK クローズアップ現代. “卵子提供”国内で広がる背景は(2024年1月30日放送). [NHK]
  • [8] NPO法人OD-NET(卵子提供登録支援団体). よくあるご質問. [OD-NET]
  • [9] 参議院. 第217回国会 特定生殖補助医療に関する法律案 議案情報. [参議院]
  • [10] 衆議院. 特定生殖補助医療に関する法律案(本文). [衆議院]
  • [11] 共同通信(琉球新報掲載). 生殖法案、法律婚限定の規定削除 出自知る権利重点に修正(2026年5月14日). [琉球新報]
  • [12] Human Fertilisation and Embryology Authority (HFEA). Using donated eggs, sperm or embryos in treatment. [HFEA]
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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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