目次
多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん/PCOS)と診断されても、妊娠できないわけではありません。PCOSで妊娠しにくくなるいちばんの理由は排卵が起こりにくいことです。排卵が時々ある人では自然妊娠も起こりえますし、排卵が止まっている人でも、排卵を促す治療で排卵が起こることが多い病気です。ただし「あなたが自然妊娠できる確率は何%」と個人ごとに言い切れるデータはありません。この記事では、自然妊娠の可能性、レトロゾールなど治療ステップ別の妊娠率、体外受精と卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク、着床・流産・妊娠後の注意点までを、臨床試験とガイドラインをもとに解説します。
Q. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)でも自然妊娠はできますか?
A. 排卵がある周期であれば、自然妊娠は十分に起こりえます。フィンランドの出生コホート研究では、PCOSの典型的な症状(月経不順と多毛)がある女性の75.2%が40代半ばまでに子どもを持っていて、症状のない女性の79.0%と大きな差はありませんでした[1]。一方で、子どもの数は少なめで、不妊治療を受けた割合は高く、PCOSが妊娠のしにくさにつながることも事実です。排卵が起きない場合は、レトロゾールという飲み薬による排卵誘発が第一選択になります。
- ➤自然妊娠 → 排卵の頻度・年齢・体重によって見込みが変わる
- ➤排卵誘発の第一選択 → レトロゾール(日本では2022年4月から保険適用)
- ➤臨床試験の生児獲得率 → レトロゾール27.5%、クロミフェン19.1%
- ➤体外受精 → PCOSはOHSSが起こりやすく、予防策をとって行う
- ➤妊娠後 → 妊娠糖尿病・妊娠高血圧などの合併症に注意が必要
1. 多嚢胞性卵巣症候群でも自然妊娠はできる?
多嚢胞性卵巣症候群でも、排卵がある周期であれば自然妊娠は起こりえます。妊娠しにくくなる主な理由は、排卵の回数が少ない、または排卵が止まっていることです。卵子が排卵されなければ受精の機会そのものがありません。逆にいえば、数か月に1回でも排卵があれば、その周期には妊娠の可能性があります。どのくらい排卵しているかには個人差が大きく、それが妊娠の見込みの差になって表れます。
PCOSは、生殖年齢の女性の10〜13%にみられるとされる、頻度の高い病気です[2]。けっしてまれな病気ではなく、月経不順で婦人科を受診して初めて指摘される人も少なくありません。
💡 名称について:PCOSから「PMOS」へ
2026年5月、国際的な合意にもとづいて、PCOSの新しい英語名として「Polyendocrine Metabolic Ovarian Syndrome(PMOS)」が発表されました[3]。卵巣の「嚢胞」だけでなく、内分泌や代謝にまたがる病気であることを名前に反映させたものです。国際的な実装に向けた移行・教育・医療制度や疾患分類との整合化が進められており、日本の診断基準や保険の病名は、現時点ではこれまでどおり多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)です。この記事でもPCOSと表記します。
妊娠しにくい理由は「排卵が起きにくい」こと
PCOSでは、卵巣の中で卵胞(卵子を包む袋)が育ち始めても途中で成長が止まり、排卵まで進みにくくなっています。通常の月経周期では、脳の下垂体から出る卵胞刺激ホルモン(FSH)の働きで複数の卵胞が育ち始め、そのうち1個が主席卵胞として大きくなって排卵に至ります。PCOSでは、黄体形成ホルモン(LH)が高めであったり、卵巣の中で男性ホルモン(アンドロゲン)がつくられやすかったりするため、この選抜がうまく進みません。その結果、直径数mmの小さな卵胞が卵巣の中にたくさん残り、超音波で見るとネックレスのように並んで見えます。これが「多嚢胞性卵巣」です。
日本では、日本産科婦人科学会が2024年に改訂した診断基準が使われています。次の3つをすべて満たす場合にPCOSと診断します[4]。
📋 多嚢胞性卵巣症候群の診断基準(日本産科婦人科学会、2024年)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 1. 月経周期異常 | 無月経、希発月経、無排卵周期症のいずれか |
| 2. 多嚢胞卵巣 または AMH高値 | 少なくとも一方の卵巣で、直径2〜9mmの小卵胞が10個以上ある。代わりにAMH(抗ミュラー管ホルモン)の高値でもよい |
| 3. アンドロゲン過剰症 または LH高値 | 血中の男性ホルモンの高値や多毛、またはLH基礎値高値かつLH/FSH比高値 |
※AMHの基準値は測定系と年齢によって異なります[4]。症状・原因・診断の詳細は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?症状・原因と遺伝、痩せ型でもなる理由、診断基準と治療までで解説しています。
1の月経周期異常の中身が、そのまま妊娠のしやすさに関わります。月経がまったく来ない人と、周期は長くても排卵を伴う月経が来る人とでは、自然妊娠の見込みは大きく違います。PCOSの診断名が同じでも、妊娠に向けた状況は人によって異なると考えてください。
💡 用語解説:希発月経(きはつげっけい)・無排卵周期症
希発月経とは、月経の間隔が39日以上あいてしまう状態を指します。無排卵周期症は、出血は周期的にあっても排卵を伴っていない状態です。どちらも月経の回数や出血の有無だけでは排卵の有無がわからないため、基礎体温や超音波検査、ホルモン検査を組み合わせて確かめます。
自然妊娠の可能性を左右する要素
PCOSの人の自然妊娠の見込みを左右するのは、主に「排卵の頻度」「年齢」「体重」「それ以外の不妊の要因」の4つです。
1つ目は排卵の頻度です。年に数回でも排卵があれば、その周期にタイミングが合えば妊娠は起こりえます。一方、排卵がほとんどない場合は、待っていても妊娠の機会が増えにくいため、排卵を促す治療を早めに考えることになります。
2つ目は年齢です。PCOSかどうかにかかわらず、卵子の数と質は年齢とともに低下し、妊娠率は下がります。PCOSの人は卵胞の数が多いため「卵子の老化は起こりにくい」と誤解されることがありますが、年齢による妊娠率の低下はPCOSでも起こると考えるべきです。年齢ごとの妊娠率の目安は年齢別の妊娠確率で解説しています。
3つ目は体重です。PCOSでは肥満やインスリン抵抗性があると排卵障害が強くなりやすく、逆に体重が減ると排卵が戻ることがあります。4つ目は、卵管の通り具合や精液所見など、PCOS以外の不妊の要因です。PCOSがあっても、妊娠しない原因がほかにある場合もあるため、不妊の検査は夫婦ともに一通り受けておくことが大切です。
自然妊娠した人に多いパターン
PCOSで自然妊娠した人には、「排卵が時々は起きていた」「体重が減って排卵が戻った」というパターンがよくみられます。ここでは個人の体験談ではなく、集団を追跡した研究のデータから考えます。
北フィンランド出生コホート研究(1966年生まれの女性を長期に追跡した研究)では、月経不順と多毛の両方がある女性の75.2%が子どもを持っており、症状のない女性(79.0%)とほぼ同じでした。初めて出産した年齢の平均もそれぞれ27.7歳と27.3歳で、大きな差はありませんでした[1]。
ただし同じ研究では、症状のある女性の子どもの数は平均1.9人と、症状のない女性の2.4人より少なく、不妊治療を受けた割合も6.1%と、症状のない女性の2.4%より高くなっていました[1]。つまり「多くの人は最終的に子どもを持てるが、妊娠までに時間がかかったり、治療が必要になったりする人が多い」というのが実態です。また、この研究は自己申告の症状で群を分けており、診断が確定したPCOSだけを集めたものではない点にも注意が必要です。
体重については、日本産科婦人科学会の治療指針が、BMI25以上の人には3〜6か月で5〜10%の減量を排卵誘発より先に行うよう示しています[5]。わずかな減量でも排卵が戻ることがあるため、「痩せたら治る」という言葉はこの意味で使われています。ただし病気そのものが消えるわけではなく、体重が戻れば排卵障害も戻りうると考えてください。
2. PCOSの妊娠率はどれくらい?治療ステップ別に比較
PCOSの人の妊娠率は、どの治療をどのくらいの期間行うかで変わります。大規模なランダム化比較試験では、排卵誘発剤の飲み薬で最大5周期治療した場合の生児獲得率(出産まで至った割合)が、レトロゾールで27.5%、クロミフェンで19.1%でした。体外受精では、初回の治療で約4〜5割が出産に至ったという試験があります[6][7]。
ここで大切なのは、これらの数字は試験ごとに対象者・治療の周期数・評価の方法が違い、そのまま横に並べて比べることはできないという点です。体外受精の試験の対象は体外受精まで進んだ人で、飲み薬の試験とは背景が異なります。数字は「その条件で治療したときの集団の成績」として読み、個人の確率とは考えないでください。
📊 PCOSの人を対象とした主な臨床試験の成績
| 試験 | 対象と条件 | 主な結果(生児獲得率) |
|---|---|---|
| レトロゾール対クロミフェン(2014年) | 18〜40歳のPCOS女性750人、最大5周期 | レトロゾール27.5%、クロミフェン19.1% |
| クロミフェン・メトホルミン・併用(2007年) | 不妊のPCOS女性626人 | クロミフェン22.5%、メトホルミン7.2%、併用26.8% |
| 全胚凍結対新鮮胚移植(2016年) | 初回体外受精のPCOS女性1,508人 | 全胚凍結49.3%、新鮮胚移植42.0% |
※出典:2014年試験[6]、2007年試験[8]、2016年試験[7]。試験間で条件が異なるため、行どうしの単純比較はできません。
タイミング法や人工授精、ゴナドトロピン注射、腹腔鏡下卵巣多孔術については、PCOSの人だけを対象に同じ条件で比べた生児獲得率のデータが限られており、上の表には入れていません。これらは次の章で、どんな場面で選ばれるのかを中心に説明します。
日本産科婦人科学会の治療指針では、妊娠を希望するPCOSの人の治療は、おおむね次の順で進めるとされています[5]。年齢やほかの不妊要因によっては、途中の段階を飛ばして体外受精に進むこともあります。
費用の面では、2022年4月から不妊治療の保険適用が広がり、レトロゾールによる排卵誘発も保険で行えるようになりました[5]。制度の全体像は不妊治療の保険適用の記事にまとめています。
3. 排卵誘発の第一選択はレトロゾール(2023年国際ガイドライン)
現在、PCOSで排卵がない人の排卵誘発では、レトロゾールが第一選択です。2023年の国際ガイドラインも、日本産科婦人科学会の治療指針(2025年)も、同じ位置づけをしています[2][5]。以前はクロミフェンが第一選択でしたが、大規模な試験の結果を受けて順番が入れ替わりました。
レトロゾールとクロミフェンの違い
レトロゾールもクロミフェンも、脳にエストロゲンが少ないと感じさせてFSHの分泌を増やし、卵胞を育てる薬です。違うのは、そのしくみと作用の続く長さです。レトロゾールはアロマターゼという酵素を止めて、体内でつくられるエストロゲンを一時的に減らします。クロミフェンは、脳のエストロゲン受容体をふさいで、エストロゲンが効いていないように見せかけます。クロミフェンは体に長く残り、子宮内膜や頸管粘液にも抗エストロゲン作用が及ぶことがあると考えられています。
💡 用語解説:アロマターゼ阻害薬
アロマターゼは、男性ホルモン(アンドロゲン)をエストロゲンに変える酵素です。レトロゾールはこの酵素の働きを止める薬で、もともとは閉経後の乳がんの治療薬として使われてきました。排卵誘発では、月経周期の初めに5日間だけ飲むことで、脳からのFSHの分泌を一時的に高め、卵胞の発育を促します。
2014年に米国で行われた試験では、PCOSの女性750人をレトロゾールとクロミフェンに分けて、最大5周期治療しました。生児獲得率はレトロゾールで27.5%、クロミフェンで19.1%と、レトロゾールのほうが高い結果でした。周期ごとに見た排卵率も、レトロゾール61.7%、クロミフェン48.3%でした[6]。
双子の妊娠はレトロゾール3.4%、クロミフェン7.4%で、大きな先天異常はレトロゾール群で4例、クロミフェン群で1例と、統計的な差はみられませんでした[6]。日本産科婦人科学会の指針では、月経周期3日目から5日間、1日1回2.5mgを飲み、効果が不十分なら5mgに増やす方法が示されています。吐き気や頭痛が強い場合は、クロミフェンに切り替えることがあります[5]。
クロミフェンが効かないとき
クロミフェンを飲んでも排卵しない、あるいは排卵しても妊娠しない場合でも、打つ手がなくなるわけではありません。次の選択肢として、レトロゾールへの切り替え、メトホルミンの併用、注射による排卵誘発(ゴナドトロピン療法)、腹腔鏡下卵巣多孔術があります。
これまでクロミフェンで治療してきた人では、先に述べた試験の結果から、レトロゾールに切り替えることが自然な次の一手になります。肥満やインスリン抵抗性がある人では、メトホルミンを組み合わせることがあります。それでも排卵しない場合に、注射の薬や手術が検討されます。どの段階で次に進むかは、年齢、治療を続けてきた期間、卵管や精液の状態などを踏まえて決めます。
クロミフェンを使ったタイミング法の実際の流れや、飲み方の注意点については、クロミッドを使ったタイミング法の記事で解説しています。
メトホルミンの位置づけ
メトホルミンは、単独で使うより、排卵誘発剤と組み合わせる補助的な薬と考えてください。もともとは2型糖尿病の薬で、体のインスリンの効きをよくする作用があります。PCOSではインスリン抵抗性があると、血中のインスリンが高くなり、それが卵巣での男性ホルモンの産生を強めて排卵障害を悪化させると考えられています。メトホルミンはこの悪循環を和らげることを狙った薬です。
💡 用語解説:インスリン抵抗性
インスリン抵抗性とは、血糖を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなっている状態です。体は血糖を下げるためにインスリンを多く分泌するので、血中のインスリン濃度が高くなります。PCOSでは肥満がなくてもインスリン抵抗性を伴うことがあり、排卵障害や将来の糖尿病のリスクと関係しています。
2007年の試験では、PCOSの女性626人を3群に分けて比べたところ、生児獲得率はクロミフェン単独22.5%、メトホルミン単独7.2%、両者の併用26.8%でした[8]。メトホルミン単独では妊娠に結びつきにくいことがはっきりしたため、現在は排卵誘発の主役ではなく、併用薬として使われています。日本産科婦人科学会の指針でも、内服の排卵誘発剤が効かず、肥満・耐糖能異常・インスリン抵抗性がある場合に、レトロゾールまたはクロミフェンと組み合わせるとされています[5]。
ゴナドトロピン療法と腹腔鏡下卵巣多孔術
飲み薬で排卵しない場合の次の段階が、注射によるゴナドトロピン療法と、手術による腹腔鏡下卵巣多孔術(ふくくうきょうからんそうたこうじゅつ)です。
ゴナドトロピンは、卵巣を直接刺激して卵胞を育てるホルモンです。PCOSの卵巣は刺激に敏感で、一度に多くの卵胞が育ちやすいため、少ない量から始めて少しずつ増やす「FSH低用量漸増療法」が用いられます。日本産科婦人科学会の指針は、卵巣過剰刺激症候群と多胎妊娠を防ぐため、直径16mm以上の卵胞が4個以上育った周期では、排卵を起こす注射(hCG)を行わずに中止することを推奨しています[5]。
腹腔鏡下卵巣多孔術は、腹腔鏡で卵巣の表面に熱やレーザーで小さな穴を複数あけ、男性ホルモンをつくる組織を減らして排卵を起こしやすくする手術です。薬の効かない人の選択肢で、2020年のコクラン・レビュー(38試験の統合解析)では、薬による排卵誘発と比べて出産に至る割合はわずかに低い可能性がある一方、多胎妊娠はおそらく減らすと評価されています。ただし根拠の確実性は「非常に低い〜中等度」で、手術である以上、麻酔や感染、癒着といったリスクも考える必要があります[9]。
🩺 院長コラム【治療の順番には理由がある】
PCOSの治療が「体重管理 → 飲み薬 → 注射 → 手術や体外受精」という順番になっているのは、体への負担が小さく、多胎やOHSSといった合併症の少ない方法から試すためです。第一選択がクロミフェンからレトロゾールに変わったのも、試験で出産に至る割合と双子の少なさの両方が確かめられたからだと考えています。
一方で、順番どおりに一段ずつ進むことだけが正解ではありません。年齢が上がると、待つこと自体が妊娠率を下げる要因になります。ご自身の年齢と、ほかの不妊の要因を合わせて、どこまで段階を踏むかを主治医と具体的に決めていくことが大切だと考えています。
4. 体外受精の成功率と卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク
排卵誘発で妊娠しない場合や、年齢・ほかの不妊要因がある場合には、体外受精などの生殖補助医療に進みます。PCOSは体外受精で卵子が多くとれやすい一方、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こりやすいため、それを防ぐ工夫をしながら行います。体外受精の流れそのものは体外受精の流れと成功率で解説しています。
PCOSの体外受精の成績
初回の体外受精を受けるPCOSの女性1,508人を対象にした2016年の試験では、出産に至った割合が、全胚凍結で49.3%、新鮮胚移植で42.0%でした。この試験は、採卵したその周期に胚を戻す「新鮮胚移植」と、胚をいったんすべて凍結して別の周期に戻す「全胚凍結」を比べたものです[7]。
💡 用語解説:全胚凍結(フリーズオール)
全胚凍結とは、体外受精でできた胚を、その周期には子宮に戻さず、すべて凍結保存しておく方法です。排卵誘発の影響でホルモン値が高くなった周期を避け、体が落ち着いた別の周期に胚を融解して移植します。OHSSを起こしやすい人で、重症化を避ける目的でも使われます。
PCOSの人は小さな卵胞が多いため、排卵誘発の注射に反応して一度に多くの卵胞が育ち、採卵できる卵子の数が多くなりやすい特徴があります。卵胞の数と関係するAMH(抗ミュラー管ホルモン)も高い傾向があり、診断基準の一部にもなっています[4]。卵子が多くとれることは、凍結して何回か移植できる胚が増えるという利点になる一方、次に述べるOHSSの起こりやすさにもつながります。
なお、PCOSの人の体外受精について「累積の出産率は何%」とひとつの数字で示せる確立したデータは、今回確認した範囲にはありません。成績は年齢や胚の状態で大きく変わるため、施設ごとの成績の見方も含めて、治療を受ける医療機関で確認してください。
PCOSでOHSSが起こりやすい理由
PCOSでOHSSが起こりやすいのは、刺激に反応する小さな卵胞が多く、排卵誘発の薬で一度にたくさんの卵胞が育ってしまうためです。卵巣過剰刺激症候群(らんそうかじょうしげきしょうこうぐん/OHSS)は、育ちすぎた卵巣から出る物質の影響で、血管から水分が漏れ出しやすくなり、卵巣が腫れたり、お腹や胸に水がたまったりする状態です。重くなると、血液が濃くなって血栓ができやすくなることもあります。症状や重症度、受診の目安は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の解説で詳しく扱っています。
先の2016年の試験では、OHSSは全胚凍結の群で1.3%、新鮮胚移植の群で7.1%に起こりました[7]。新鮮胚移植で妊娠すると、胎盤からのhCGが卵巣をさらに刺激するため、OHSSが長引いたり重くなったりしやすいと考えられています。
卵巣が刺激にどう反応するかには、卵胞刺激ホルモンの受け手である受容体の性質も関わっています。遺伝子の面からの話はFSH受容体(FSHR)遺伝子の解説で扱っています。
OHSSを防ぐ工夫
PCOSの体外受精では、刺激の方法、排卵を起こす注射の種類、胚を戻すタイミングを工夫して、OHSSを防ぎます。2023年の国際ガイドラインは、その方法として、GnRHアンタゴニスト法、GnRHアゴニストによる排卵の引き金(トリガー)、全胚凍結、メトホルミンの補助的な使用を挙げています[2]。
刺激法の比較では、2017年のメタ解析で、PCOSの女性ではGnRHアンタゴニスト法のほうがロングアゴニスト法よりOHSSが少なく(リスク比0.53)、継続妊娠率には差がみられませんでした(リスク比0.97)[10]。このため、PCOSではアンタゴニスト法が標準的な選択肢と考えられています。
⚠️ 全胚凍結は「良いことばかり」ではありません
2016年の試験では、全胚凍結のほうが出産に至る割合が高く、OHSSも少なかった一方で、妊娠高血圧腎症は全胚凍結で4.4%、新鮮胚移植で1.4%と、凍結胚移植のほうが多くなっていました[7]。どの方法にも利点と注意点があるため、移植の方法は主治医とよく相談して決めてください。
5. PCOSは着床しにくい?流産しやすい?
PCOSでは、子宮内膜の働きに違いがあることが研究で示されており、着床や流産に影響する可能性があります。ただし、その影響が一人ひとりにどのくらいあるのかは、現時点では数字で示せません。排卵の問題だけでなく、受精卵を受け止める側の子宮内膜にも目を向けておくことは、治療を考えるうえで役に立ちます。
着床への影響
PCOSの人の子宮内膜は、そうでない人と性質が異なることが、実験と臨床の両方のデータから示されています。2021年の総説は、その主なしくみとして、エストロゲン受容体の働きが強くプロゲステロン(黄体ホルモン)が効きにくいこと、内膜そのもののインスリン抵抗性、慢性的な炎症、局所での男性ホルモンの作用を挙げています[11]。
💡 用語解説:脱落膜化(だつらくまくか)
脱落膜化とは、排卵後にプロゲステロンの働きで子宮内膜が変化し、受精卵を受け入れて胎盤をつくる準備が整うことを指します。プロゲステロンが効きにくい状態や、内膜のインスリン抵抗性があると、この変化が十分に進まず、着床や妊娠の維持に影響する可能性があると考えられています。
同じ総説は、こうした内膜の違いが、着床の障害や流産、妊娠高血圧腎症や早産などの妊娠合併症につながりうると述べています。そして、内膜の働きを改善する根拠がある方法として、生活習慣の改善、メトホルミン、(高度肥満の人での)減量手術を挙げています[11]。
「PCOSは着床しにくい」という言い方は、この意味で方向としては誤りではありません。ただし「PCOSの人は着床率が何%低い」と示せる確立したデータはなく、着床しないことをすべてPCOSのせいにはできません。胚の染色体や、子宮・卵管の形の問題など、ほかの要因も合わせて考える必要があります。
流産率と、肥満・インスリン抵抗性との関係
PCOSの人は流産が多いという関連が、大規模なメタ解析で示されています。2024年に発表された104研究・10万6,690件の妊娠をまとめた解析では、PCOSの人の流産のオッズ比は1.49(95%信頼区間1.20〜1.85)でした。年齢やBMIをそろえた比較でも、体外受精などによる妊娠でも、この関連は残っていました[12]。
💡 用語解説:オッズ比
オッズ比は、ある条件がある集団とない集団で、出来事の起こりやすさを比べる指標です。1より大きければ、その条件がある集団で起こりやすい傾向を示します。オッズ比1.49は「流産する確率が1.49倍」とそのまま読むものではなく、集団としての関連の強さを表す数字です。個人の流産の確率を示すものではありません。
一方で、先に紹介した北フィンランドの研究では、症状のある女性とない女性の流産率に差はみられませんでした[1]。研究によって結果にばらつきがあることも知っておいてください。また、体外受精の試験では、妊娠が途中で失われた割合が新鮮胚移植で32.7%、全胚凍結で22.0%と、移植の方法によっても違いが出ていました[7]。
妊娠初期の流産の多くは、PCOSとは関係なく、受精卵の染色体の数の違いなど、胚の側の偶然の変化で起こります。流産の頻度とその原因については流産の確率と染色体異常で解説しています。PCOSの人が流産したとき、それがPCOSのためなのか、胚の側の要因なのかは、個々の妊娠では区別できないことがほとんどです。
6. 妊娠できた後に気をつけたいこと
PCOSの人は、妊娠した後も、妊娠糖尿病や妊娠高血圧などの合併症が起こりやすいことがわかっています。2023年の国際ガイドラインは、妊娠を考えている人や妊娠中の人にPCOSがあるかを確認し、合併症の予防と早期発見につなげるよう推奨しています[2]。妊娠が成立したら、PCOSがあることを妊婦健診の医療機関に伝えておきましょう。
妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群・早産
2024年のメタ解析では、PCOSの人で、妊娠糖尿病、妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症、帝王切開のオッズがいずれも高くなっていました。これらの関連は年齢とBMIをそろえた比較でも有意で、肥満だけでは説明できないと考えられています[12]。
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めてわかる血糖の上がりやすい状態です。PCOSではもともとインスリン抵抗性を伴うことが多く、妊娠によって胎盤から出るホルモンの作用が加わると、血糖が上がりやすくなります。妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に血圧が上がる状態で、たんぱく尿などを伴うものは妊娠高血圧腎症(子癇前症)と呼ばれます。
早産についても、PCOSの内膜や胎盤の形成の違いが関わる可能性が指摘されています[11]。いずれも「PCOSだから必ず起こる」ものではなく、起こりやすい傾向があるという意味です。妊婦健診での血糖や血圧のチェックを、通常どおり、あるいは医師の判断でより丁寧に受けることが対策になります。
排卵誘発による多胎妊娠
PCOSという病気そのものが双子を生みやすくするわけではありませんが、排卵誘発の治療で複数の卵胞が育つと、多胎妊娠が増えます。2014年の試験では、双子の妊娠はレトロゾールで3.4%、クロミフェンで7.4%でした[6]。2007年の試験では、多胎妊娠はクロミフェン単独で6.0%、併用で3.1%、メトホルミン単独で0%でした[8]。
多胎妊娠は、早産や妊娠高血圧症候群などの母体と赤ちゃんの合併症が増えるため、不妊治療ではできるだけ避けたいものとされています。ゴナドトロピン療法で卵胞が育ちすぎた周期に排卵の注射を中止するのも、このためです[5]。腹腔鏡下卵巣多孔術は、薬による排卵誘発より多胎が少ないと評価されています[9]。双子妊娠のしくみやリスクは双子妊娠の仕組みと確率で解説しています。
生まれてくる子どもへの影響
PCOSのお母さんから生まれた子どもで、精神・神経発達の診断がつく割合がやや高いという関連が、大規模な研究で報告されています。ただしこれは関連であり、PCOSが原因だと証明されたわけではありません。
フィンランドで1996〜2014年に生まれた約110万人を追跡した研究では、PCOSのお母さんから生まれた子どもの、何らかの精神・神経発達の診断のハザード比は1.32でした。内訳では、ADHDと行為障害が1.42、自閉スペクトラム症が1.40、知的障害が1.41でした。お母さんがPCOSで重度の肥満もある場合は、全体で2.11と高くなっていました[13]。
💡 用語解説:ハザード比
ハザード比は、追跡している期間の中で、ある出来事がどのくらい起こりやすいかを2つの集団で比べる指標です。1.32は、比べた集団より起こりやすさが3割ほど高い傾向を示しますが、もともとの頻度が低いものでは、実際の人数の差は小さくなります。個人の確率を示す数字ではありません。
相対的な数字だけを見ると大きく感じますが、実際の割合の差は大きくありません。この研究の詳しい内容と、数字の読み方については、院長ページのPCOSのお母さんから生まれる子どもの神経発達で解説しています。
🩺 院長コラム【「関連」と「原因」を分けて読む】
妊娠の合併症や子どもの発達との関連の研究は、数字だけが独り歩きしやすい分野です。オッズ比やハザード比は集団どうしを比べた指標で、「あなたの赤ちゃんに何%起こる」という意味ではありません。重度の肥満や妊娠糖尿病が重なると関連が強くなることからも、PCOSという診断名そのものより、体の状態の積み重ねが影響していると考えられます。
臨床遺伝専門医としては、こうした数字を不安の材料にするのではなく、体重や血糖など、妊娠前から整えられる部分に目を向けるための情報として使っていただきたいと考えています。
7. 妊娠に向けて今からできること
妊娠を考えているPCOSの人が今からできることは、体重と生活習慣を整えること、排卵の有無を正しく確かめること、年齢を踏まえて治療の進め方を決めることの3つです。
体重と生活習慣
BMIが25以上の人では、3〜6か月で体重の5〜10%を減らすことが、排卵誘発の前に行う最初の治療とされています。日本産科婦人科学会の治療指針はこの減量を治療の第一段階に置いており、体重が減るだけで排卵が戻る人もいます[5]。
2023年の国際ガイドラインは、体重にかかわらず、すべてのPCOSの人に健康的な生活習慣を勧めています。体重が落ちなくても、お腹まわりの脂肪や代謝の状態が改善すれば意味があるとされ、減量は必須ではないという立場です[2]。痩せ型のPCOSの人が、さらに体重を落とす必要はありません。無理な食事制限は、かえって月経を乱す原因になります。
排卵検査薬がPCOSで「あてにならない」理由
市販の排卵検査薬は、尿中のLH(黄体形成ホルモン)の急な上昇を見て排卵が近いことを知らせるものです。PCOSではもともとLHが高めの人がいるため、陽性が続いたり、陽性でも排卵していなかったりすることがあります。LHの高値は、日本の診断基準の項目にも入っている、PCOSの特徴のひとつです[4]。
PCOSの人を対象に、排卵検査薬の誤判定がどのくらい起こるかを調べた確かなデータは、今回確認した範囲にはありません。そのため「必ず外れる」とはいえませんが、結果の読み方には注意が必要です。排卵しているかどうかを確かめたいときは、基礎体温の二相性や、医療機関での超音波による卵胞の観察、黄体期のホルモン検査を組み合わせると確実です。排卵検査薬の正しい使い方は排卵検査薬の正しい使い方にまとめています。
年齢を考えたステップアップ
PCOSの治療は段階を追って進めるのが基本ですが、年齢によっては早めに次の段階へ進むことを考えます。日本産科婦人科学会の指針も、生殖補助医療への移行は年齢や治療歴を考慮して判断するとしています[5]。
たとえば20代で排卵誘発によく反応している人と、30代後半で飲み薬を何周期も続けている人とでは、同じ段階にとどまることの意味が違います。卵子の数と質は年齢とともに変わるため、治療を始めた時点で、何周期までこの方法を続けるか、その後どうするかの目安を決めておくと、判断に迷いにくくなります。体外受精に進む場合の流れは体外受精とはで確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 多嚢胞性卵巣症候群で自然妊娠した人はいますか?
はい、います。排卵が時々ある人では、治療をしなくても妊娠することがあります。フィンランドの長期研究では、PCOSの典型的な症状がある女性の75.2%が子どもを持っていました。ただし、妊娠までに時間がかかったり、不妊治療が必要になったりする人の割合は、症状のない人より高くなっています。
Q2. 生理が来なくても妊娠できますか?
月経が来ないのは、排卵が起きていないことが多いためです。その状態のままでは妊娠の機会がほとんどありませんが、レトロゾールなどの排卵誘発で排卵が起これば妊娠は可能です。月経がしばらく来ない場合は、妊娠の可能性を確かめたうえで、婦人科で排卵の状態を調べてもらってください。
Q3. PCOSでも妊娠しやすい時期や体質になることはありますか?
排卵が戻った周期は、PCOSがあっても妊娠の機会になります。体重が減って排卵が戻ることがあるのは、その一例です。一方で、「PCOSだから妊娠しやすい」ということを示すデータは確認されていません。
Q4. PCOSだと双子になりやすいですか?
PCOSという病気そのものが双子を増やすわけではありません。排卵誘発の治療で複数の卵胞が育つと多胎妊娠が増えます。臨床試験では、双子の妊娠はレトロゾールで3.4%、クロミフェンで7.4%でした。
Q5. PCOSだと妊娠検査薬が陽性になりやすいですか?
いいえ。妊娠検査薬はhCGというホルモンを調べるもので、PCOSだから陽性になりやすいということはありません。PCOSで結果に注意が必要なのは、LHを調べる排卵検査薬のほうです。LHがもともと高めの人では、陽性が続いたり、陽性でも排卵していなかったりすることがあります。
Q6. 妊娠したらPCOSは治りますか?
妊娠や出産によってPCOSが治るという根拠はありません。出産後に月経不順が戻ることもあり、インスリン抵抗性などの代謝の特徴も続くと考えられます。出産後も、体重や血糖の管理を続けることが大切です。
Q7. ミネルバクリニックで多嚢胞性卵巣症候群の検査や不妊治療はできますか?
いいえ、当院では多嚢胞性卵巣症候群の検査・診断・不妊治療は行っておりません。この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしておりません。婦人科、または生殖医療(不妊治療)を専門とする医療機関へご相談ください。
まとめ
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵が起こりにくくなることで妊娠しにくくなる病気ですが、排卵がある周期なら自然妊娠は起こりえます。長期の研究でも、症状のある女性の多くが最終的に子どもを持っていました[1]。排卵がない場合の排卵誘発はレトロゾールが第一選択で、試験での生児獲得率はクロミフェンを上回っていました[6]。
体外受精では卵子が多くとれやすい一方、OHSSが起こりやすいため、アンタゴニスト法や全胚凍結などで予防します[2][10]。妊娠後は、流産や妊娠糖尿病・妊娠高血圧との関連が知られているため、PCOSがあることを健診先に伝え、血糖や血圧の確認を受けてください[12]。病気そのものについては多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?症状・原因と遺伝、痩せ型でもなる理由、診断基準と治療までもあわせてご覧ください。
🏥 多嚢胞性卵巣症候群の検査・治療をお考えの方へ
当院では、多嚢胞性卵巣症候群の検査・診断・不妊治療を行っておりません。この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。多嚢胞性卵巣症候群が疑われる場合や、妊娠に向けた治療をお考えの場合は、婦人科、または生殖医療(不妊治療)を専門とする医療機関へご相談ください。
この記事は病気を正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、他の診療の過程で具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。
参考文献
- [1] The impact of self-reported oligo-amenorrhea and hirsutism on fertility and lifetime reproductive success: results from the Northern Finland Birth Cohort 1966. Hum Reprod. 2014;29(3):628-633. [DOI 10.1093/humrep/det437]
- [2] Recommendations From the 2023 International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome. J Clin Endocrinol Metab. 2023;108(10):2447-2469. [PubMed 37580314]
- [3] Teede HJ, Bahri Khomami M, Morman R, et al. Polyendocrine metabolic ovarian syndrome, the new name for polycystic ovary syndrome: a multistep global consensus process. Lancet. 2026;407(10545):2329-2339. doi:10.1016/S0140-6736(26)00717-8. [PubMed 42119588]
- [4] 日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会. 多囊胞性卵巣症候群の診断基準(2024). [日本産科婦人科学会]
- [5] 日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会. 本邦における多囊胞性卵巣症候群の治療指針(2025). [日本産科婦人科学会]
- [6] Letrozole versus clomiphene for infertility in the polycystic ovary syndrome. N Engl J Med. 2014;371(2):119-129. [PubMed 25006718]
- [7] Fresh versus Frozen Embryos for Infertility in the Polycystic Ovary Syndrome. N Engl J Med. 2016;375:523-533. [PubMed 27509101]
- [8] Clomiphene, metformin, or both for infertility in the polycystic ovary syndrome. N Engl J Med. 2007;356(6):551-566. [PubMed 17287476]
- [9] Laparoscopic ovarian drilling for ovulation induction in women with anovulatory polycystic ovary syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2020. [Cochrane CD001122.pub5]
- [10] GnRH antagonist versus long agonist protocols in IVF: a systematic review and meta-analysis accounting for patient type. Hum Reprod Update. 2017;23(5):560-579. [PubMed 28903472]
- [11] Endometrial function in women with polycystic ovary syndrome: a comprehensive review. Hum Reprod Update. 2021;27(3):584-618. [DOI 10.1093/humupd/dmaa051]
- [12] Systematic review and meta-analysis of pregnancy outcomes in women with polycystic ovary syndrome. Nat Commun. 2024;15:5591. [DOI 10.1038/s41467-024-49749-1]
- [13] Association of polycystic ovary syndrome or anovulatory infertility with offspring psychiatric and mild neurodevelopmental disorders: a Finnish population-based cohort study. Hum Reprod. 2020;35(10):2336-2347. [PubMed 32866965]





