目次
📍 クイックナビゲーション
胚盤胞移植のあとのフライング検査は、早期妊娠検査薬ではBT7前後から反応する例が増え、一般的な妊娠検査薬ではBT9〜10前後になると反応する例が増えます。ただし、尿中hCGには個人差があり、BT日数だけで陽性・陰性を断定することはできません。BTは移植日を0日目として数えた日数のことです。5日目の胚盤胞を移植した場合、数日かけて着床が進み、そこから血液中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が増えていきます。BT5〜8の陰性は珍しくありません。一方で、BT10〜11になっても陰性が続く場合は、妊娠が続いている可能性は低くなります。最終的な判断は、移植を受けた医療機関での判定日の血液検査で行います。この記事では、BTごとのhCGの目安と、陰性から陽性になる可能性を日数別に解説します。
Q. 胚盤胞移植のフライング検査は何日目からできますか?
A. 早期妊娠検査薬(感度25 IU/L)ではBT7前後から反応する例が増え、一般的な妊娠検査薬ではBT9〜10前後になると反応する例が増えます。ただし、尿中hCGには個人差があります。BT3〜4での陰性は当たり前で、BT5〜8の陰性もまだ結論ではありません。妊娠の判定は、判定日の血液検査で行います。
- ➤BTの数え方 → 移植日がBT0。翌日がBT1
- ➤着床のタイミング → 5日目胚盤胞ではBT1〜2ごろにくっつき始め、BT3〜5ごろにhCGが出始める
- ➤BT別hCGの目安 → 国内の凍結胚盤胞移植のデータでBT7〜11の目安値が示されている
- ➤陽性でも注意 → 薄い陽性、hCG注射の影響、化学流産、子宮外妊娠
1. 胚盤胞移植後の「BT」とは|数え方と着床までの流れ
BTは「Blastocyst Transfer(胚盤胞移植)」の略で、移植した日からの経過日数を表すときに使われます。「BT7」なら移植から7日目という意味です。フライング検査の結果を考えるときは、BTの数え方と、その日に子宮の中で何が起きているかを合わせて知っておくと、陰性や薄い陽性の意味を落ち着いて読み取れます。
胚盤胞は、受精卵が分割を重ね、受精後5〜6日ほどで内部に液体のたまった空間をもつまで育った段階の胚です。のちに赤ちゃんになる内細胞塊と、のちに胎盤になる外側の細胞の層(栄養外胚葉)に分かれています。
BT0は移植日|BT1・BT5の数え方
移植した日がBT0、翌日がBT1です。たとえば月曜日に移植した場合、火曜日がBT1、土曜日がBT5、翌週の月曜日がBT7になります。移植日を「1日目」と数えると1日ずれるため、ほかの人の経過やネットの情報と比べるときは注意が必要です。
同じ「BT」でも、移植した胚が受精後何日目の胚かによって、体の中の進み具合は変わります。5日目胚盤胞(受精から5日目に胚盤胞になった胚)と6日目胚盤胞では、同じBT日数でも胚の日齢が1日違います。初期胚(受精後2〜3日目の胚)を移植した場合は、ET(Embryo Transfer)と表記して区別することもあります。この記事では、主に5日目胚盤胞を移植した場合の目安で説明します。
移植した医療機関が「移植後○日目に判定」と指示する場合も、多くはこの数え方です。判定日がBTで何日目にあたるかをあらかじめ確認しておくと、フライング検査の結果と判定日までの残りの日数を照らし合わせやすくなります。
5日目胚盤胞はBT1〜2で着床が始まり、BT5ごろに完了する
5日目胚盤胞を移植したあとは、胚が透明帯から孵化して子宮内膜へ接着・侵入し、着床の進行に伴ってhCGの分泌が始まります。自然妊娠のデータを移植後の日数へ単純換算するとBT3〜5ごろが一つの目安になりますが、実際の着床時期には個人差があります。胚盤胞は、透明帯という殻に包まれています。着床するには、まずこの殻を破って外に出る必要があり、これを孵化(ハッチング)と呼びます。
💡 用語解説:孵化(ハッチング)と栄養外胚葉
孵化(ハッチング)は、胚盤胞が大きくなって透明帯を破り、外に出てくる現象です。外に出た胚は、外側の細胞の層である栄養外胚葉で子宮内膜にくっつき、内膜の中へ入り込んでいきます。この栄養外胚葉はのちに胎盤の一部になる細胞で、ここからhCGが分泌されます。妊娠検査薬が調べているのは、このhCGです。
着床のタイミングを直接調べた研究として、自然妊娠を目指す女性221人の尿を毎日採取し、排卵日と着床日(尿中hCGが上がり始めた日)を調べた米国の研究があります。妊娠が続いた例では、着床は排卵後8〜10日に起こることが多く、全体の84%がこの期間に集中していました[1]。
排卵後の日数は、受精後の胚の日齢とほぼ同じです。5日目胚盤胞は移植の時点で受精後5日目にあたるため、「排卵後8〜10日」は移植後3〜5日、つまりBT3〜5ごろに相当します。hCGが血液中に出始めるのはこのころからで、市販の検査薬で測れる量になるまでには、さらに数日かかります。
同じ研究では、着床が遅いほど早期流産の割合が高くなることも示されました。着床が排卵後9日までだった場合の早期流産は13%でしたが、10日では26%、11日では52%、12日以降では82%でした[1]。これは自然妊娠のデータで、移植周期にそのまま当てはめることはできません。ただ、「hCGが出始めるのが遅い妊娠ほど続きにくい傾向がある」という点は、BTの後半で陰性が続くときの考え方の土台になります。
6日目胚盤胞・初期胚を移植した場合の数え方のずれ
6日目胚盤胞は培養上の到達日が5日目胚盤胞より1日遅い胚ですが、移植後の着床やhCG上昇が一律に1日早くなるとは限りません。自然妊娠の「排卵後8〜10日」という着床時期を、6日目胚盤胞移植へ機械的に1日前倒しして解釈することはできません。胚の発育速度や移植後の着床時期には個人差があります。
初期胚(受精後3日目の胚)を移植した場合は反対に、子宮の中で胚盤胞まで育つ時間が必要です。「排卵後8〜10日」は移植後5〜7日ごろにあたり、同じ移植後の日数でも胚盤胞移植より検査薬の反応は遅くなります。初期胚を移植した場合の着床時期は初期胚移植の場合の着床時期で詳しく解説しています。
このように、フライング検査の結果をBT日数だけで比べると、胚の日齢の違いによる1〜2日のずれが入り込みます。ブログやQ&Aサイトで「BT5で陽性だった」という話を見かけても、6日目胚盤胞だったのか、何の検査薬を使ったのかで意味は変わります。
2. 胚盤胞移植のフライングはいつから?【BT別早見表】
胚盤胞移植後は、早期妊娠検査薬ではBT7前後から反応する例が増え、一般的な妊娠検査薬ではBT9〜10前後になると反応する例が増えます。ただし、尿中hCGの立ち上がりには個人差があります。これより前でも陽性になる人はいますが、陰性でも妊娠していないとは言えない時期です。以下で、検査薬のしくみとBTごとの目安を整理します。
妊娠検査薬が反応するしくみ|尿中hCG 25と50の違い
妊娠検査薬は、尿の中のhCGが一定の濃さを超えると線が出るように作られています。その基準の濃さ(感度)が低いほど、少ないhCGでも反応するため、早い時期から陽性が出やすくなります。hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、着床した胚の栄養外胚葉(のちの胎盤)から分泌されるホルモンで、妊娠初期には急速に増えていきます。
日本の検査薬には、大きく2つのタイプがあります。1つは、ドラッグストアで買える一般的な妊娠検査薬で、生理予定日のおおむね1週間後から使うように設計されています[2]。多くは尿中hCG 50 IU/L前後で反応する作りです。もう1つは早期妊娠検査薬で、感度を25 IU/Lに高め、月経予定日当日から検査できるとされています。薬局で扱う医療用の検査薬です[3]。
🧪 一般的な妊娠検査薬と早期妊娠検査薬の違い
| 項目 | 一般的な妊娠検査薬 | 早期妊娠検査薬 |
|---|---|---|
| 反応する尿中hCGの目安 | 50 IU/L前後 | 25 IU/L |
| 使える時期(自然妊娠の場合) | 生理予定日のおおむね1週間後から | 月経予定日当日から |
| 胚盤胞移植後の反応の目安 | BT9〜10前後 | BT7前後 |
| 入手先 | ドラッグストアなど | 薬局 |
検査薬は各製品の添付文書に従って使用することが重要です。たとえばドゥーテスト・hCGaは朝・昼・夜いずれの尿でも検査できるとされています[2]。一方、水分を多くとったあとの薄い尿では、hCGがあっても基準に届かず、陰性や判別しにくい薄い線になることがあります。検査薬の選び方の違いは早期妊娠検査薬と一般的な検査薬の違いでも解説しています。
BT1〜BT12早見表|血中hCGの目安と検査薬の反応
国内で凍結融解胚盤胞移植1万8,491周期を調べた研究では、出産に至るかどうかを予測する血中hCGの目安が、BT7で31.05、BT8で46.6、BT9で72.05、BT10で95.4、BT11で159.9 mIU/mLと報告されています。予測の精度を示すAUC(1に近いほど精度が高い指標)は0.954〜0.962と高く、著者らは移植後7〜8日目の時点で転帰を予測できると結論づけています[4]。
この数字は「妊娠が続いた人の多くはこの値を上回っていた」という境目です。正常値の範囲ではなく、この値を少し下回ったからといって妊娠が続かないと決まるわけではありません。それでも、BTごとに血液中のhCGがどの程度まで増えているかをつかむ手がかりになります。
📅 胚盤胞移植後のBT別早見表(5日目胚盤胞の目安)
| BT | 体の中で起きていること | 血中hCGの目安 | 検査薬の反応の目安 |
|---|---|---|---|
| BT0 | 胚盤胞を移植 | - | 反応しない |
| BT1〜2 | 透明帯から孵化し、子宮内膜にくっつき始める | ほぼ測れない | 反応しない |
| BT3〜5 | 内膜に入り込み、hCGの分泌が始まる | ごく低い値から上がり始める | 陰性が普通 |
| BT6 | hCGが増えていく | まだ低い | 早期検査薬で薄く出ることがある |
| BT7 | hCGが増えていく | 31 mIU/mL前後が境目[4] | 早期検査薬で反応する人が増える |
| BT8 | hCGが増えていく | 47 mIU/mL前後が境目[4] | 早期検査薬で反応しやすい |
| BT9 | hCGが増えていく | 72 mIU/mL前後が境目[4] | 一般的な検査薬でも反応する人が増える |
| BT10 | hCGが増えていく | 95 mIU/mL前後が境目[4] | 一般的な検査薬でも反応しやすい |
| BT11〜12 | 判定日を迎える施設が多い | BT11で160 mIU/mL前後が境目[4] | 陰性なら妊娠継続の可能性は低い |
※血中hCGの値は、凍結融解胚盤胞移植で出産を予測するカットオフ値[4]です。着床の時期は自然妊娠の研究[1]からの目安です。尿中の濃さは血液とは一致せず、尿の濃さでも変わります。
表の「検査薬の反応の目安」は、血液中のhCGと検査薬の感度を照らし合わせた目安です。尿の中のhCGの濃さは血液と同じではなく、飲んだ水分の量や測る時間帯でも変わります。同じ日に血液のhCGが基準を超えていても、尿の検査では陰性になることがあります。
凍結胚移植でもフライングの目安は同じ?
凍結した胚盤胞を融解して移植する場合も、BTごとの目安の考え方は同じです。検査薬の反応が出るタイミングを決めるのは、胚の日齢と着床の進み方だからです。上の早見表のhCGの目安も、もともと凍結胚移植(凍結融解胚盤胞移植)のデータから得られたものです[4]。
凍結胚移植では、子宮内膜を整える方法によって注意点が変わります。1つは、女性ホルモンと黄体ホルモンの薬で内膜を準備するホルモン補充周期です。この方法では排卵を起こすための注射を使わないことが多く、検査薬がhCG注射の影響を受ける心配は小さくなります。
もう1つは、自分の排卵に合わせて移植する自然周期です。排卵を確実にするためにhCG注射を使う施設もあり、その場合は注射のhCGが検査薬に反応することがあります。検査薬の製品情報でも、不妊治療でhCG製剤を使っている場合は正しい結果が得られないことがあるため、医師に相談するよう注意が書かれています[2]。自分の周期でhCG注射を使ったかどうかは、フライング検査の前に確認しておくと安心です。
🩺 院長コラム【BTの数字は「胚の日齢」とセットで読む】
「BT5で陽性の人がいたのに、自分は真っ白だった」という比べ方は、同じ条件どうしの比較になっていないことがよくあります。胚が5日目か6日目か、使った検査薬の感度はいくつか、朝の尿だったか。これだけで1〜2日の差は簡単に生まれます。
検査薬の線は、hCGが基準の濃さを超えたかどうかだけを示しています。その日の陰性は「まだ基準に届いていない」ことを意味するだけで、胚の状態を直接見ているわけではない、と考えています。
3. BT日数別|陰性から陽性になる可能性
フライング検査で陰性でも、BTが早いほど、あとから陽性になる余地は大きく残っています。逆にBTが進むほど、陰性が意味するものは重くなります。ここでは、BTの時期ごとに陰性の受け止め方を整理します。なお、BTごとに「陰性から陽性になった人の割合」をまとめた信頼できるデータは、現時点では見当たりません。以下は、着床のタイミングとBT別のhCGの目安[1][4]から考えた目安です。
BT3〜BT4のフライング|陰性で当たり前の時期
BT3〜4は、胚が子宮内膜に入り込み始めたばかりの時期で、陰性が出るのが普通です。5日目胚盤胞では、hCGの分泌が始まるのがBT3〜5ごろにあたります[1]。血液中にごくわずかに出始めていても、尿の検査薬が反応する濃さにはまだ届きません。
この時期に陽性が出る場合は、hCG注射の成分が残っている可能性も考えます。BT3〜4の結果は、陰性でも陽性でも妊娠の判断材料にはなりにくいと考えてください。「4日目のフライングが真っ白だった」というのは、ほとんどの人に起こることです。
この時期の検査は、結果に一喜一憂するだけで終わりやすく、検査薬も無駄になりがちです。どうしても試したい場合も、次に検査する日を決めておき、1回の結果で判断しないようにします。
BT5〜BT6で陰性|まだ可能性は十分ある
BT5〜6の陰性は、まだ妊娠していないという意味にはなりません。この時期は着床が完了してhCGが増え始めたばかりで、血液中のhCGもまだ低い値です。早期妊娠検査薬で薄い線が出る人もいれば、真っ白な人もいます。
6日目胚盤胞であっても、移植後のhCG上昇が5日目胚盤胞より一律に1日早まるとは限りません。反対に、着床がBT5ごろまでかかった場合は、BT6ではまだ検査薬の基準に届かないことが珍しくありません。
BT6で陰性だったあとにBT7〜8で陽性になる経過は、hCGの増え方から見て自然なものです。「BT6で陰性なら可能性なし」と考える必要はありません。この時期の陰性は、2〜3日あけて検査し直すか、判定日を待つことで答えが出ます。
BT7〜BT8で陰性から陽性になることはある?
BT7〜8で陰性だったあと、判定日に陽性になることはあります。国内の凍結融解胚盤胞移植のデータでは、出産を予測する血中hCGの境目がBT7で31、BT8で47 mIU/mL前後でした[4]。ただし、これは血清hCGによる出生予測のカットオフ値であり、尿中hCG検査薬の感度25 IU/Lと直接比較して陽性・陰性を予測できる値ではありません。血中hCGと尿中hCGは同じ濃度として扱えず、尿の濃さにも左右されます。
とくに一般的な検査薬(50 IU/L前後)を使った場合は、BT7〜8での陰性は珍しくありません。BT7〜8では尿中hCGが検出感度に達していない場合があり、その後に陽性となることがあります。ただし、個々のhCG増加速度には幅があるため、特定の線の変化を標準的な経過として扱うことはできません。
一方で、BT7〜8の時点でhCGが境目を大きく下回っていると、妊娠が続く見込みは低くなります[4]。検査薬の線の有無だけでは、その違いまでは分かりません。BT7〜8で陰性だった場合は、早期検査薬を使ったかどうかを確認し、BT9〜10ごろにもう一度確認するか、判定日の血液検査を待つのが現実的です。
BT9〜BT10で陰性でも妊娠していることはある?
BT9〜10で陰性でも、あとから陽性になる例はあります。ただし、BT7〜8での陰性より可能性は下がります。出産を予測する血中hCGの境目はBT9で72、BT10で95 mIU/mL前後で[4]、妊娠が順調に続いている多くの人では、一般的な検査薬の基準も超えている時期です。
それでも陰性になる理由としては、尿が薄かった、検査薬の感度が低めだった、胚が6日目以降にゆっくり育ったため着床が遅れた、といったことが考えられます。着床が遅れた場合は、hCGの立ち上がりも遅れます。自然妊娠の研究では、着床が遅いほど早期流産の割合が高くなっていました[1]。BT10の陰性から陽性になった場合も、判定日やその後の血液検査でhCGがきちんと増えていくかを確認していくことになります。
BT9で陰性、BT10で薄い陽性といった経過では、翌日以降に線が濃くなっていくかどうかが1つの目安になります。ただし線の濃さは尿の濃さや検査薬の個体差でも変わるため、濃さの比較で結論は出せません。
BT11以降・判定日で陰性だったら
BT11以降、とくに判定日の血液検査でhCGが陰性なら、その周期で妊娠が成立した可能性は低いと考えられます。BT11では、出産を予測する血中hCGの境目が160 mIU/mL前後まで上がっており[4]、妊娠が順調に続いている場合は尿の検査でもはっきり反応するのが一般的な時期です。
ただし、判定日に尿の検査薬で陰性でも、血液検査ではごく低い値のhCGが検出されることがあります。その場合は数日後に再検査して、値が増えているか、減っていくかで判断します。自己判断で黄体ホルモンの薬をやめず、移植した医療機関の指示に沿って判定を受けてください。
判定が陰性だった場合は、次の移植に向けて、胚の状態や子宮内膜の条件などを主治医と見直していくことになります。移植前の準備やスケジュールは移植前から判定日までのスケジュールで解説しています。
4. 判定日の血液検査とBT別hCGの目安
胚盤胞移植の妊娠判定は、尿の検査薬ではなく、血液中のhCGの値で行うのが一般的です。血液検査は尿の濃さに左右されず、hCGの量を数値で確認できます。そのため、「陽性か陰性か」だけでなく、「妊娠が続く見込みがどのくらいあるか」まで考える材料になります。
判定日はBT何日目?(施設によってBT7〜BT12)
判定日は施設ごとに異なり、BT7〜12ごろに設定されることが多いです。早めの判定日を設ける施設では、BT7〜8でhCGを測り、必要に応じて数日後に再検査します。遅めの判定日では、BT11〜12で1回目の血液検査を行うこともあります。
早い判定日でも転帰を予測できることは、先ほどの国内データでも示されています。BT7〜11のどの日でもAUCは0.95以上で、BT7〜8の時点で出産に至るかどうかをかなりの精度で予測できました[4]。判定日がBT7でもBT11でも、それぞれの日に合った目安の値で判断されるということです。
判定日の前にフライング検査をするかどうかは、本人の自由です。ただ、判定日の血液検査のほうが情報量ははるかに多いことは知っておいてください。
hCGの数値の読み方|BTごとの目安と約2日で増えるペース
hCGの値は、1回の数字だけでなく、2日ほどあけてどれだけ増えたかで評価します。妊娠初期のhCGは急速に増えるため、1回目の値が境目付近でも、2回目に十分増えていれば妊娠が続く可能性があります。
妊娠初期に出血や腹痛で受診した女性285人を調べた米国の研究では、子宮内で妊娠が続いた人でも、2日間のhCGの増え方の最低ラインは最初の値によって違っていました。1,500 mIU/mL未満では49%、3,000 mIU/mLを超える場合は33%です。増え方には人種などによる差もみられました[5]。hCGの値が低い時期ほど、2日間でより大きく増えるのが普通だということです。
この研究は胚移植後の人を対象にしたものではありませんが、「1回の値だけで決めず、増え方を見る」という考え方は移植後も同じです。境目付近の値で再検査を指示された場合は、2回目の値と増え方をあわせて主治医から説明を受けてください。
hCGが低い・伸びないときに考えること(化学流産、子宮外妊娠)
hCGが陽性でも値が低い、または増え方が鈍い場合は、化学流産や子宮外妊娠の可能性を考えて経過をみます。化学流産は、医学的には生化学的妊娠喪失(biochemical pregnancy loss)と呼ばれます。欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の専門部会は、超音波で確認される前に、血液または尿のhCGが減っていき陰性になる妊娠の終わり方と定義しています[6]。
子宮外妊娠(異所性妊娠)は、胚が子宮の内側以外の場所、多くは卵管に着床した状態です。胚を子宮の中に直接移植しても、子宮外妊娠は起こりえます。米国の生殖補助医療による妊娠の調査では、子宮外妊娠の割合は2001年の2.0%から2011年には1.6%に下がっていました。新鮮胚を1個だけ移植した周期でも1.6%でした[7]。
⚠️ 判定日を待たずに移植先へ連絡したい症状
強い下腹部痛、片側だけの痛み、出血が続く・量が多い、肩の痛み、ふらつきや気が遠くなる感じがある場合は、判定日を待たずに移植を受けた医療機関へ連絡してください。子宮外妊娠では、hCGが陽性でも伸びが鈍く、こうした症状が出ることがあります。
hCGが低めという結果だけで、どちらかに決まるわけではありません。再検査での増え方と、妊娠5〜6週ごろの超音波検査で胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が子宮の中に見えるかどうかをあわせて判断します。
5. 陽性・陰性の結果で気をつけたいこと
フライング検査の結果は、陽性でも陰性でも、それだけで妊娠の成否は決まりません。ここでは、結果を読むときに誤解しやすい点をまとめます。
薄い陽性と蒸発線
判定時間内に出た薄い線は、多くの場合hCGに反応した陽性ですが、判定時間を過ぎてから浮かんできた線は蒸発線の可能性があります。蒸発線は、尿が乾いていく過程で判定窓に現れる色の薄い線で、hCGとは関係ありません。判定は必ず、説明書に書かれた時間内に行ってください。
薄い陽性が出たあとは、1〜2日あけてもう一度検査し、線が濃くなっていくかを確認する方法があります。hCGが順調に増えていれば、線は徐々にはっきりしていきます。ただし、線の濃さは尿の濃さや検査薬の個体差にも左右されます。濃さの比較はあくまで参考で、確実な判断は血液検査の数値の増え方で行います。
判定日前に何本も検査薬を使い、毎日線の濃さを見比べると、わずかな違いに気持ちが揺れやすくなります。薄い陽性が出た時点で、判定日を待つという選択も十分に合理的です。
hCG注射のあとは偽陽性に注意
排卵を起こすためのhCG注射や、黄体を助けるためのhCG注射を使った周期では、注射のhCGに検査薬が反応して、妊娠していなくても陽性になることがあります。検査薬の製品情報でも、不妊治療でhCG製剤を使っている場合は正しい結果が得られないことがあるとして、医師に相談するよう注意喚起されています[2]。
注射したhCGがどのくらいの期間体に残るかは、注射の量や時期、体格などによって変わります。hCG注射を使った周期で早い時期に陽性が出た場合は、注射の影響と区別がつきにくいと考えてください。ホルモン補充周期でhCG注射を使っていない場合は、この心配は小さくなります。
自分の周期で使った薬の中にhCG製剤が含まれているか分からない場合は、移植を受けた医療機関に確認しておくと、フライング検査の結果を読み違えずにすみます。
化学流産と胚の染色体の数の異常|臨床遺伝専門医の視点
フライング検査で陽性が出たあとに陰性に戻る化学流産では、胚側の要因を含む複数の要因が関与し、染色体の数の異常も重要な要因の一つと考えられています。染色体の数の異常(異数性)とは、本来2本ずつある染色体が1本だったり3本だったりする状態です。重い染色体数の異常の多くは、着床不成功や妊娠初期の流産につながります。
胚盤胞の外側の細胞(栄養外胚葉)を一部採取して染色体を調べた1万5,169件の解析では、染色体の数の異常をもつ胚は珍しくなく、その割合は女性の年齢とともに上がっていくことが示されています[8]。見た目のグレードが良い胚盤胞でも、染色体の数の異常がないとは限りません。その関係は胚盤胞のグレードと染色体異常の関係で詳しく解説しています。
卵子で染色体の数の異常が起こるのは、減数分裂という特殊な細胞分裂で染色体の分かれ方がずれるためで、女性の年齢とともに起こりやすくなります。このしくみは卵子で染色体の数の異常(異数性)が起こるしくみで解説しています。化学流産は、ESHREの定義でも妊娠の終わり方の1つとして位置づけられています[6]。移植した側の過ごし方が原因であることはまれだと考えられます。
🩺 院長コラム【陽性から陰性に戻ったとき】
化学流産には複数の要因が関与し、胚の染色体数の異常も重要な要因の一つです。移植後に仕事をした、重いものを持った、といった行動が原因になるものではありません。
化学流産を繰り返す場合には、胚の染色体を調べる選択肢や、ご夫婦の染色体の検査が話題に上ることがあります。臨床遺伝専門医としては、何を調べると何が分かり、何が分からないのかを整理したうえで判断することが大切だと考えています。
黄体ホルモンの補充は自己判断でやめない
フライング検査で陰性が出ても、医師から指示された黄体ホルモンの薬は自己判断でやめないでください。黄体ホルモン(プロゲステロン)は、子宮内膜を着床と妊娠の維持に向いた状態に保つホルモンです。とくにホルモン補充周期では、自分の卵巣からは黄体ホルモンがほとんど分泌されないため、薬がその役割を担っています。
フライング検査の陰性は、BTが早いほど妊娠していないことを意味しません。この時期に薬をやめると、妊娠していた場合に内膜の状態を保てなくなるおそれがあります。薬の中止は、判定日の結果を受けて医師が指示します。
黄体ホルモンの薬を使っていると、眠気や胸の張り、下腹部の張りなど、妊娠初期と似た症状が出ることがあります。そのため、症状の有無で妊娠を判断することはできません。症状がないことを理由に悲観する必要も、症状があることで妊娠を確信する必要もありません。
6. 胚盤胞移植のあとに知っておきたい関連記事
この記事では、胚盤胞移植のあとのフライング検査と判定日のhCGを中心に解説しました。移植の前の準備や、着床率、胚の染色体、妊娠が分かったあとの妊娠週数の数え方など、関連する内容は別の記事でまとめています。
移植の前に知っておきたい流れは移植前から判定日までのスケジュールで解説しています。胚盤胞移植でどのくらい着床するかは胚盤胞移植の着床率をご覧ください。
陰性や化学流産が続く場合に話題になる、胚の染色体を調べる検査についてはPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)で、費用や限界を含めて解説しています。陽性が確定したあとに出てくる「今は妊娠何週なのか」という疑問には、胚盤胞移植で妊娠した場合の妊娠週数の数え方で答えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 胚盤胞移植のフライングは何日目からできますか?
5日目胚盤胞を移植した場合、早期妊娠検査薬(感度25 IU/L)ならBT7前後、一般的な妊娠検査薬ならBT9〜10前後から反応が出やすくなるのが目安です。BT3〜4の陰性は当たり前で、BT5〜8の陰性もまだ結論ではありません。最終的な判断は判定日の血液検査で行います。
Q2. BT7で陰性でも判定日に陽性になりますか?
なることがあります。BT7は、妊娠が続く人でも血中hCGが30 mIU/mL前後の境目にある時期で、尿の検査薬ではまだ基準に届かないことがあります。とくに一般的な検査薬ではBT7〜8の陰性は珍しくありません。BT9〜10ごろにもう一度確認するか、判定日の血液検査を待ってください。
Q3. 胚盤胞移植10日目で陰性だったら妊娠していない?
可能性は低くなりますが、ゼロではありません。BT10は、妊娠が順調に続いている多くの人で一般的な検査薬も反応する時期です。一方、尿が薄かった場合や、着床が遅れた場合には陰性になることがあります。黄体ホルモンの薬は自己判断でやめず、判定日の血液検査で確認してください。
Q4. 症状がなくても陽性になりますか?
なります。移植後に使う黄体ホルモンの薬でも、眠気や胸の張り、下腹部の張りなど妊娠初期と似た症状が出ることがあるため、症状の有無で妊娠を判断することはできません。症状がないことだけで悲観する必要はありません。
Q5. 双子だとhCGは高くなりますか?
hCGの値だけで双子かどうかを判断することはできません。双子かどうかは、妊娠が進んでからの超音波検査で胎嚢の数を見て確認します。体外受精で双子になる確率や仕組みは体外受精で双子になる確率で解説しています。
Q6. ミネルバクリニックで胚移植や妊娠判定(hCG検査)はできますか?
いいえ、当院では体外受精・胚移植・移植後の妊娠判定(hCG検査)は行っておりません。この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。判定やhCGの値については、移植を受けた医療機関にご相談ください。
まとめ
胚盤胞移植のあとは、移植日をBT0として数えます。5日目胚盤胞ではBT1〜2ごろに着床が始まり、BT3〜5ごろからhCGが出始めます[1]。フライング検査は、早期妊娠検査薬ならBT7前後、一般的な検査薬ならBT9〜10前後から反応が出やすくなります。国内の凍結融解胚盤胞移植のデータでは、出産を予測する血中hCGの境目がBT7で31、BT9で72、BT11で160 mIU/mL前後と示されています[4]。
BT5〜8の陰性は珍しくなく、BT9〜10の陰性でもあとから陽性になる例はあります。ただしBTが進むほど可能性は下がり、BT11以降や判定日の陰性は、その周期での妊娠の可能性が低いことを示します。陽性の場合も、hCGの増え方、化学流産や子宮外妊娠の可能性、hCG注射の影響をふまえて判断します。黄体ホルモンの薬は自己判断でやめず、判定日の血液検査で確認してください。
🏥 胚移植後の妊娠判定をお考えの方へ
当院では、体外受精・胚移植・移植後の妊娠判定(hCG検査)を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
判定の結果やhCGの値については、移植を受けた医療機関にご相談ください。
この記事は胚盤胞移植後の検査の目安を正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、胚や妊娠の染色体について具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。
参考文献
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