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受精卵が胚盤胞へ成長する可能性は?|成長に大切な取組を詳細解説

近年の若者の恋愛意欲の低下、男女の社会進出機会の均等化、将来への経済的な不安や子育てへの不安の増大などをきっかけに、日本では晩婚化が進んできています。晩婚化によって経済的な安定性を獲得したうえでの結婚生活を実現できる一方で、赤ちゃんを望まれるカップルにとって心配に感じるのが「不妊症」。

不妊症の原因はさまざまなものであり、20~30代前半のカップルにおいても不妊症が生じることもある一方で、加齢にともなった細胞(特に卵子精子といった精細胞)の老化も原因となります。

そんな社会的背景が見られるものの不妊症に対する医療技術は進展を図っており、体外受精等による高齢での妊娠や出産もより安全なものへとなってきています。

この記事では、体外受精の際によく耳にする「胚盤胞(はいばんほう)」に関して、胚盤胞の概要、受精卵が胚盤胞へと成長する確率と確率を高めるために重要となる要素、胚盤胞のグレードに関してご説明していきます。ぜひ最後までご覧ください。

胚盤胞とは

疑問
「胚盤胞」とは、精子と卵子の受精によって生まれた受精卵が細胞分裂を繰り返した後に、「子宮に着床できる準備が整った状態」まで成長した受精卵のことを指しています。

受精卵は精子と卵子がひとつになる(受精する)ことによって生まれますが、1つの丸々とした受精卵は細胞分裂を繰り返していきます。受精後1日目くらいのタイミングで1回目の細胞分裂が行われ、1つであった細胞は2つに分割されます。

受精後2日目には2度目の細胞分裂が分割された細胞それぞれに生じ4つに分割されます。このようにして3度目には8つ(受精後3日目)に、4度目には16(受精後4日目)というふうに倍々で細胞が分割されていきます。

そして、分割によって細胞の数を増やした後にそれぞれの細胞がくっつき合い、受精卵を包み込むように「外細胞塊(がいさいぼうかい)」が、その内側では「胚胞腔(はいほうくう)」という液体で満たされた空間と「内細胞塊(ないさいぼうかい)」が形成され、それぞれの細胞群へと分化していきます。外細胞塊は後の胎盤となる細胞群であり、内細胞塊は後の赤ちゃんとなっていく細胞群です。

分割されている細胞数が8つ未満(受精後3日目まで)の受精卵を「初期胚(しょきはい)」、細胞数が8~16の受精卵を「桑実胚(そうじつはい)」、細胞数が16以上の受精卵を「胚盤胞」と呼びます。

体外受精の際には、受精卵がどの状態のときに子宮へ戻すかによって、「初期胚移植」や「胚盤胞移植」などがありますが、胚盤胞移植の方が移植の成功率は高い傾向にあります。

胚盤胞へと成長する確率

確率

これまでの医療技術では受精卵を胚盤胞まで培養することが難しかったため、体外受精における主流は初期胚移植でした。

しかしながら初期胚のうちに子宮へ戻すというのは自然妊娠のケースと照らし合わせてみると不自然な状態となってしまっており、着床の準備ができている胚盤胞を子宮へと戻す方が自然であると言えます。

現在では医療技術の発達によって受精卵を胚盤胞まで培養する技術も整ってきたため胚盤胞移植が主流となっています。

ここで確認するのは受精卵が胚盤胞へと成長する確率に関してです。率直に伝えますと、「受精卵が胚盤胞へと成長する確率は約30%」と言われています。これは体外受精のケースに限った話ではなく、自然妊娠の場合にも同様です。

しかしながら、体外受精の場合には女性から卵子を、男性から精子を提供してもらい複数の受精卵をつくるということが一般的であるため、受精卵が胚盤胞へと成長しているか否かの確率を割り出せてしまえるのです。その結果として、平均の数値である30%を下回っているということが分かってしまうケースもあります。

そのため、この次には受精卵が胚盤胞へと成長していくために大切となる要素に関して確認していきます。

胚盤胞へと成長する可能性を高めるために

可能性を高めるために
受精卵が胚盤胞へと成長するために重要となる要素は以下の2つです。

  • 卵子と精子の質が良質であること
  • 排卵の質が良好であること(排卵誘発法が適切であること)

つまり、胚盤胞へとしっかりと成長するためには「卵子と精子の質」がとても重要であるという事です。

受精卵が胚盤胞へと育つのは受精後5日目ほどのタイミングですが、受精後3日後以降の胚(受精卵)の成長には精子の質が大きく影響するということも分かってきています。

また、卵子の質の向上は、排卵の質の向上と密接に関係しているため、卵子そのものに対するアプローチと併せて排卵に対する適切なアプローチも心掛ける必要があります。

では、実際にどのような方法を用いることによって卵子や排卵、精子の質を高められるのかに関して詳しく見ていきましょう。

卵子・排卵・精子の質を高める方法

卵子や排卵、精子の質を高めるための方法には以下のものが挙げられます。

  • 食事内容の見直しを行う
  • 漢方薬やサプリメントを摂取する
  • 十分な睡眠をとる
  • 適度な運動を取り入れる
  • 身体を冷やさない
  • ストレスをためない
  • 禁煙をする

それぞれに関して見ていきましょう。

食事内容の見直しを行う

まず前提となるのは、さまざまな食材から多くの栄養をバランスよく摂取することが大切であるということです。この前提を踏まえたうえで卵子や排卵、精子の質の向上に重要となるのは「抗酸化作用」のある栄養素を含んだ食物を積極的に摂取することです。

卵子の質には日頃の生活習慣や食事による栄養などが影響を与えますが、加齢による卵子の老化は質の低下に大きな影響をもたらします。抗酸化作用は身体を老化させる活性酸素から細胞を守る働きを持つため、卵子の老化防止にも寄与します。

抗酸化作用を持つ栄養素としてはビタミンエース(ビタミンA・C・Eをまとめた呼び方)が有名であり、これらのビタミンはお互いに相乗効果を発揮するためバランスの良い摂取を心掛けましょう。

加えて、ビタミンAとEは油分に溶けやすい脂溶性ビタミンであること、ビタミンCは水に溶けやすい水溶性ビタミンであること、ビタミンEとCは身体への滞留時間が短く体外へと流出しやすいという特性があるため、摂取の際の調理方法や、摂取頻度にも目を向けてみるようにしましょう。

漢方薬やサプリメントを摂取する

食事内容の見直しを行っていたとしても必要な栄養素を毎日適切に摂取するというのは非常に難しいものです。そこで検討したいひとつの方法が漢方薬やサプリメントの利用です。

日常的な生活において不足している栄養素を補えることはもちろん、十分な量を摂取することが難しい栄養素を手軽に摂取できることがサプリメントの魅力です。バランスの良い食事と併せて上手に取り入れて、食事効果の更なる効果アップを図ってみましょう。

漢方薬の利用も同じような理由からお勧めされます。漢方薬を取り入れることで期待される効果としては虚弱体質の改善や血行促進に伴う平均体温の改善・安定化などが挙げられます。

十分な睡眠をとる

身体の老化は活性酸素によって生じてしまいますが、この酸化ストレスから卵子や精子を守ってくれるメラトニンというホルモンは午後10時~午前2時の間に多く分泌されます。

メラトニンの分泌量は目が光の刺激を受けることで減少してしまうため、寝る際には部屋を暗くするようにしましょう。また、睡眠への導入を良くする方法として食後2~3時間空ける、眠る前に目に入る光の刺激を少なくするなどがあるため、これらの方法も試されてみて下さい。

適度な運動を取り入れる

健康な生活のために必要なことでもありますが、適度な運動による筋肉量の増加、血行の促進による体温上昇などが卵子や精子の質を向上させるうえで重要となります。

特に、肥満は卵子や精子の質を低下させるということが明らかとなっています。適度な運動を通じた肥満の防止を心掛けましょう。

身体を冷やさない

身体のさまざまな器官がきちんと機能するためには適切な体温を維持していることが重要となります。卵子を生み出す卵巣や、精子を生み出す精巣も例外ではありません。

暑い時期には、冷たい飲み物の飲みすぎや、エアコン環境下での過度な生活などに気を付けるようにしましょう。寒い時期であれば、身体を温める食材を取り入れてみたり、お風呂で身体の芯まで温まるようにしてみましょう。

また、適度な運動による筋肉の増加も基礎代謝の向上や血行の促進による体温の向上・安定化に関係するので日常生活における無理のない運動も検討してみて下さい。

ストレスをためない

ストレスが身体へともたらす影響は一時的なものであればまだしも、慢性的な場合には目に見えないということもあります。

ストレスの増加は体温の低下や血流の悪化を引き起こしたり、ホルモンバランスを乱すこともあり、結果として卵子や精子の質の低下を招いてしまいます。

ストレスを溜め込まない生活を送るためにも、自分に合うと思えるストレスの解消法を見つけてみましょう。

禁煙をする

たばこの煙には多くの有害物質が含まれています。それら有害物質は卵巣や精巣の機能を低下させ、着床率を低下させたり、流産リスクを高めるということが明らかとされています。

受動喫煙による副流煙の吸い込みもまた有害物質を身体に取り入れることとなってしまうため、ご自身だけでなくパートナーにも禁煙の協力を仰いで見るようにしてください。

まとめ

ここまで胚盤胞の概要、受精卵が胚盤胞に成長する確率と、その確率を向上するために重要となる卵子と精子の状態、卵子と精子の質を向上させる方法に関してご説明してきましたがご理解いただけたでしょうか?

体外受精に取り組む中でひとつの関門となるのが、受精卵が無事に胚盤胞へと育ってくれるかということです。体外受精のために発生する費用は決して安価なものではなく何度も取り組むには大きな決心が必要となります。

胚盤胞へと成長するために重要となることが「卵子と精子の質」であることを理解し、それぞれの質の向上に向けた取り組みを行うことで体外受精の成功率も上昇させることが出来るようになります。

この記事を参考に体外受精に関する知識や、赤ちゃんを授かるためにカップルのお互いが取り組むことのできる行動への理解を深めてもらえれば幸いです。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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