InstagramInstagram

精子形成とは?精祖細胞から精子ができるまでの過程・ホルモン・期間(約74日)を解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

精子形成(spermatogenesis)とは、精巣の精細管の中で、精祖細胞(精原細胞)が体細胞分裂で数を増やし、精母細胞として減数分裂を経て精子細胞になり、最後に泳ぐ形の精子へと変わっていく一連の過程です。思春期に始まり、その後は生涯にわたって続きます。ひとつの精祖細胞から精子ができるまでには約74日かかるとされています[1]。この記事では、細胞が変わっていく順番、それを支えるセルトリ細胞とホルモン、かかる期間、精子の形の異常までを順に解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約10分
🧬 精祖細胞・精母細胞・精子細胞・精細管
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 精子はどのようにつくられるのですか?

A. 精巣の精細管で、精祖細胞 → 一次精母細胞 → 二次精母細胞 → 精子細胞 → 精子の順につくられます。精祖細胞は体細胞分裂で増え、精母細胞は減数分裂で染色体の数を半分(23本)にします。できた精子細胞が形を大きく変えて精子になる最後の段階を「精子完成」と呼びます。全体で約74日かかり、FSH・LH・テストステロンといったホルモンがこの過程を支えています[1][6]。

  • ➤精祖細胞(精原細胞) → 精子のもとになる細胞。体細胞分裂で増える
  • ➤精母細胞 → 減数分裂をする細胞。一次・二次の2段階がある
  • ➤精子細胞・精子完成 → 丸い細胞が頭部・中片部・尾部をもつ精子に変わる
  • ➤期間 → 約74日。1日に数千万〜2億個ほどの精子がつくられる

1. 精子形成(spermatogenesis)とは

精子形成とは、精巣の中で精子のもとになる細胞(精祖細胞)が、分裂と変形を重ねて精子になるまでの過程全体を指します。卵子がつくられる過程とあわせて「配偶子形成」と呼ばれ、配偶子形成の全体像と受精のしくみは配偶子形成と受精・減数分裂のしくみで解説しています。この記事は、そのうち精子の側を詳しく見ていくものです。

精子形成が行われる場所は、精巣の中に折りたたまれて詰まっている細い管、精細管です。精細管の壁では、外側(基底膜側)から内側(管の中心)に向かって、精祖細胞、精母細胞、精子細胞、精子の順に並んでいます。細胞は成熟するにつれて管の中心へ移動し、完成した精子は管の内腔に放たれます。精細管と精細管のすき間(間質)には、テストステロンをつくるライディッヒ細胞があります。

似た言葉に「精子完成(spermiogenesis)」があります。精子形成が精祖細胞から精子までの全体を指すのに対し、精子完成は、減数分裂を終えた丸い精子細胞が、頭・首・尾をもつ精子の形に変わる最後の段階だけを指します。精子完成については第4章で説明します。

🧬 精子形成の各段階の細胞と染色体の数

細胞 英語 染色体の数 この段階で起こること
精祖細胞(精原細胞) spermatogonium 46本(2倍体) 体細胞分裂で数を増やす。一部は幹細胞として残る
一次精母細胞 primary spermatocyte 46本(DNAは複製済み) 減数第一分裂。相同染色体の間で組換えが起こる
二次精母細胞 secondary spermatocyte 23本 すぐに減数第二分裂に入る
精子細胞 spermatid 23本(1倍体) 精子完成で形を変える。分裂はしない
精子 spermatozoon 23本(X または Y を1本) 精細管の内腔に放たれ、精巣上体で成熟する

※1個の一次精母細胞から、減数分裂によって4個の精子細胞ができます。精子がもつ性染色体(X か Y か)によって、受精した子の性染色体の組み合わせが決まります。

2. 精祖細胞から精母細胞・精子細胞へ(体細胞分裂と減数分裂)

精子形成は、精祖細胞が「体細胞分裂(有糸分裂)」で数を増やす段階と、精母細胞が「減数分裂」で染色体を半分にする段階に分かれます。体細胞分裂では、46本の染色体をもつ細胞から同じく46本をもつ細胞が2つできます。減数分裂では、2回続けて分裂することで、23本の染色体をもつ細胞が4つできます。

精祖細胞体細胞分裂で増える
▶
一次精母細胞減数第一分裂
▶
二次精母細胞減数第二分裂
▶
精子細胞精子完成
▶
精子精巣上体で成熟

生まれたときからある「精子のもと」と、思春期の始まり

男の子は、生まれたときにすでに精子のもとになる生殖細胞を精巣にもっています。胎児期に原始生殖細胞として精巣に入ったこれらの細胞は、出生時には、将来の精細管にあたる「精巣索」の中で、セルトリ細胞に囲まれた大きな細胞として存在しています。ただし、この時点ではまだ精子はつくられません。

思春期が近づくと、精巣索の中に空間ができて精細管となり、生殖細胞からは精子をつくり続けるための幹細胞(精祖幹細胞)が準備されます。そして思春期に入ってホルモンの分泌が高まると、精子形成が本格的に始まります。

新生男児の精巣索と思春期の精細管の断面の比較図

A:新生男児の精巣索の断面。原始生殖細胞と、それを囲む支持細胞(セルトリ細胞)が見られる。B:思春期の精細管の断面。精祖細胞から分裂した細胞、一次精母細胞、精子細胞、精子が、セルトリ細胞の細胞質の突起の中に埋まるようにして並んでいる。

精祖細胞(精原細胞)の体細胞分裂

精祖細胞は、精原細胞とも呼ばれ、精細管のいちばん外側に並んでいる精子のもとの細胞です。ヒトの精祖細胞には、形の違いからA型とB型があります。A型精祖細胞の一部は幹細胞として分裂を続けて自分自身を補い、別の一部は精子へ向かう道に進みます。この「自分を残しながら次の細胞もつくる」しくみのおかげで、精子は思春期以降、生涯にわたってつくられ続けます。

精子に向かうことになったA型精祖細胞は、決まった回数の体細胞分裂(有糸分裂)で数を増やし、最後の分裂でB型精祖細胞になります。B型精祖細胞が分裂すると、一次精母細胞ができます。ここまでの分裂はすべて体細胞分裂なので、細胞の染色体は46本のままです。

一次精母細胞・二次精母細胞の減数分裂

精母細胞は、減数分裂によって染色体の数を半分にする段階の細胞です。一次精母細胞はDNAを複製したあと減数第一分裂に入り、父方由来と母方由来の相同染色体が対をつくって一部を交換(組換え)します。この組換えによって、1個1個の精子がもつ遺伝情報の組み合わせは少しずつ異なるものになります。

減数第一分裂が終わると、染色体を23本もつ二次精母細胞が2個できます。二次精母細胞はすぐに減数第二分裂に入り、精子細胞を2個ずつつくります。結果として、1個の一次精母細胞から4個の精子細胞ができます。減数分裂のくわしいしくみや、染色体の数の異常(不分離)が起こる理由は減数分裂とはで解説しています。

細胞質の橋でつながったまま分裂する

精子形成の特徴のひとつは、分裂した細胞どうしが完全には離れず、細胞質の橋(細胞間橋)でつながったまま成熟していくことです。1個のA型精祖細胞から生まれた細胞のグループ(クローン)は、精子として切り離されるまで橋でつながっており、そのおかげで同じ段階の細胞が足並みをそろえて成熟できると考えられています。

A型精祖細胞から精子までが細胞質の橋でつながったまま分裂していく模式図

男性の生殖細胞がクローンとして増えていく様子の模式図。精祖幹細胞から生じたA型精祖細胞が精子形成の最初の細胞として示されている。個々の精子が切り離されるまで、分裂した細胞は細胞質の橋でつながっている。

\ 精子の数や形の異常と遺伝の関係が気になる方へ /

📅 遺伝カウンセリングを予約する

お問い合わせはこちら | 男性不妊症遺伝子検査について

3. 精子形成を支えるセルトリ細胞と精細管

精子形成は、精細管の壁をつくる「セルトリ細胞」に支えられて進みます。セルトリ細胞は、精細管の外側から内腔まで伸びる背の高い細胞で、精祖細胞から精子細胞までの生殖細胞は、成熟のあいだずっとセルトリ細胞の深いくぼみに埋もれるようにして過ごします。

セルトリ細胞の主な役割は次のとおりです。

🔬 セルトリ細胞の主な役割

役割 内容
支える・栄養する 生殖細胞を物理的に支え、成長に必要な物質を届ける
守る(血液精巣関門) 隣りあうセルトリ細胞どうしが強く結合して仕切りをつくり、減数分裂以降の細胞を血液中の物質や免疫から隔てる
ホルモンの受け手 FSHとテストステロンの作用を受け取り、生殖細胞に伝える
片づける・送り出す 精子完成で捨てられた細胞質を取り込んで処理し、完成した精子を内腔へ放出する

1個のセルトリ細胞が支えられる生殖細胞の数には限りがあるため、セルトリ細胞の数は、つくられる精子の数を左右する要因のひとつとされています。セルトリ細胞そのものについてはセルトリ細胞の用語解説をご覧ください。

4. 精子完成(spermiogenesis):精子細胞が精子の形になるまで

精子完成とは、減数分裂を終えた丸い精子細胞が、分裂せずに形だけを大きく変えて、頭部・中片部・尾部をもつ精子になる過程です。このあいだに、卵子にたどり着いて受精するための道具がそろえられ、泳ぐのにじゃまな部分は捨てられます。

精子細胞が先体・核の濃縮・尾部の形成を経て精子になる精子完成の段階図

① 先体(アクロソーム)ができる

核の前半分を帽子のように覆う「先体」がつくられます。先体には、受精のときに卵子の周りの層を通り抜けるのを助ける酵素が入っています。

② 核が小さく固く濃縮される

核のDNAは、ふつうの細胞とは違うタンパク質に巻き直されて、きわめて小さく固くまとめられます。これによって精子の頭部は小さく流線形になり、中の遺伝情報も守られます。

③ 頸部・中片部・尾部ができ、ミトコンドリアが中片部に集まる

泳ぐための尾(鞭毛)がつくられます。このときミトコンドリアは中片部にらせん状に集められ、尾部を動かすためのエネルギーを供給します。精子のミトコンドリアがなくなるわけではありません。

💡 補足:父親のミトコンドリアは子に伝わるの?

精子は中片部にミトコンドリアをもっていますが、受精後、精子由来のミトコンドリアは受精卵の中で分解されるため、ミトコンドリアDNAは通常、母親からだけ子に受け継がれます(母系遺伝)。父親由来のミトコンドリアDNAが子に受け継がれていた例外的な報告もありますが[5]、きわめてまれです。ミトコンドリアDNAについてはミトコンドリアゲノムで解説しています。

④ 余分な細胞質が捨てられる

最後に、細胞質の大部分が「残余小体」として切り離されます。捨てられた細胞質はセルトリ細胞に取り込まれて処理されます。こうして身軽になった精子が、精細管の内腔へ放たれます。

\ 無精子症・乏精子症の遺伝的な原因を知りたい方へ /

📅 遺伝カウンセリングを予約する

お問い合わせはこちら | Y染色体AZF微小欠失について

5. 精子形成を促すホルモン(GnRH・LH・FSH・テストステロン)

精子形成は、脳の視床下部と下垂体から出るホルモンによって調節されています。視床下部から出るゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が下垂体を刺激すると、下垂体から2種類のゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)、すなわち黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されます[6]。名前は女性の卵巣での働きに由来しますが、男性では精巣に作用します。

LHは、精細管のすき間にあるライディッヒ細胞に働いてテストステロンをつくらせます。精巣の中のテストステロンは、セルトリ細胞がもつアンドロゲン受容体に結合し、セルトリ細胞を介して精子形成を進めます。生殖細胞自身ではなくセルトリ細胞がテストステロンの受け手になっている点が大切で、マウスでセルトリ細胞だけのアンドロゲン受容体をなくすと、精子形成は減数分裂の段階で止まってしまいます[4]。

FSHはセルトリ細胞に直接働き、セルトリ細胞の増殖や、精子形成を支えるさまざまな物質の産生を促します[6]。セルトリ細胞からはインヒビンBが、ライディッヒ細胞からはテストステロンが血液中に出て、それぞれ脳にフィードバックし、FSHやLHの分泌量を調節しています。

⚗️ 精子形成にかかわる主なホルモン

ホルモン 出るところ 主な作用
GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン) 視床下部 下垂体からのLH・FSHの分泌を促す
LH(黄体形成ホルモン) 下垂体 ライディッヒ細胞にテストステロンをつくらせる
FSH(卵胞刺激ホルモン) 下垂体 セルトリ細胞に働き、精子形成を支える
テストステロン ライディッヒ細胞 セルトリ細胞のアンドロゲン受容体を介して精子形成を進める
インヒビンB セルトリ細胞 下垂体にフィードバックし、FSHの分泌を抑える

※「黄体形成ホルモン(LH)」は、女性ホルモンの「黄体ホルモン(プロゲステロン)」とは別のホルモンです。

このホルモンの流れのどこかがうまく働かないと、精子はつくられにくくなります。たとえば、視床下部や下垂体からの信号が足りない「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」には、遺伝子の変化が原因となるものがあります。詳しくは低ゴナドトロピン性性腺機能低下症関連遺伝子検査をご覧ください。

6. 精子形成にかかる期間は約74日

ヒトでは、精祖細胞が成熟した精子になるまでに約74日かかるとされています[1]。この値は1960年代に放射性物質で細胞に目印をつけて追跡した研究から導かれたもので、測定方法によってはもう少し短い値も報告されており、個人差もあります[1]。

精細管から放たれた精子は、精細管の周りの筋肉の働きで精巣上体へ送られます。精細管を出たばかりの精子はほとんど泳ぐことができず、精巣上体を通るあいだに、前に進む運動能力と受精する能力の土台を身につけます。

1日につくられる精子の数については、20〜50歳の男性の約3分の2で、1日あたり4,500万〜2億700万個と推定されています[2]。

💡 約74日という期間が意味すること

いま射精される精子は、2〜3か月前に精子形成を始めた細胞です。そのため、禁煙や発熱からの回復、薬の中止など、精子形成に影響する条件が変わっても、その結果が精液検査に表れるまでには2〜3か月ほどかかります。精液検査の結果を見直すときには、この時間差を考えに入れる必要があります。精子が体の中でどのくらい生きられるかは精子の寿命で解説しています。

7. 精子の形の異常(異常精子)はどのくらいあるのか

精子の形の異常は、健康な男性でもごく普通に見られます。卵子と比べて、精子は形に異常のあるものの割合がずっと高く、頭部・中片部・尾部のそれぞれに、大きさや形の異常、2つの頭や尾をもつものなどが見られます。

世界保健機関(WHO)の2021年版の精液検査マニュアルでは、正常な形の精子の割合の基準下限は4%です[3]。これは、パートナーが1年以内に妊娠した男性の精液のうち、下から5%にあたる値です。言いかえれば、厳しい基準で見ると、健康な男性でも精子の大半には何らかの形の異常があるということです。

📊 WHO 2021年版の精液所見の基準下限(主なもの)

項目 基準下限
精液量 1.4 mL
精子濃度 1,600万/mL
総精子数 3,900万/射精
前進運動率 30%
正常形態率 4%

※WHO laboratory manual 6th edition(2021)[3]による。基準下限を下回っても直ちに妊娠できないという意味ではなく、上回っていても妊娠を保証するものではありません。

形に異常のある精子は、泳ぐ力や卵子に入る力が弱いことが多いものの、形の異常があるからといって、その1個が必ず受精できないとは限りません。形の異常の割合が高い状態を奇形精子症と呼び、原因や考え方は精子の奇形率・奇形精子症で詳しく解説しています。運動率については精子の運動率と妊娠率をご覧ください。

精子形成がうまくいかない遺伝的な原因

精子形成には多くの遺伝子がかかわっているため、遺伝的な原因で精子がつくられにくくなることがあります。代表的なものは、染色体の数の異常(クラインフェルター症候群など)と、Y染色体上の精子形成にかかわる領域の欠失(Y染色体AZF微小欠失)です。どちらも、精子がまったく見つからない無精子症や、精子の数がとても少ない状態の原因として調べられます。精巣で精子がつくられないタイプの無精子症については非閉塞性無精子症(NOA)で解説しています。

また、精子完成の段階がうまくいかず、ほとんどの精子が同じ形の異常をもつ場合があり、先体ができない円頭精子症や、頭と尾が離れてしまう断頭精子症では、原因となる遺伝子が見つかっています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「形の異常が多い」は珍しいことではない】

精液検査の結果で「正常な形の精子が数%しかない」と書かれていると、とても悪い結果のように感じられるかもしれません。けれども、WHOの基準下限が4%であることからわかるように、精子の大半に形の異常があるのは、ごく普通のことです。

大切なのは、1回の検査の数字だけで判断しないことだと考えています。精子形成には約74日かかるので、体調や生活の影響が数か月遅れて結果に表れます。数や形の異常が続く場合や、無精子症・高度の乏精子症の場合には、染色体やY染色体の検査で原因がわかることがあり、それが治療方針やご家族への影響を考える手がかりになります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 精原細胞と精祖細胞は違うものですか?

同じ細胞です。英語の spermatogonium の訳語で、「精原細胞」と「精祖細胞」の両方が使われています。精細管のいちばん外側にある精子のもとの細胞で、体細胞分裂で数を増やし、やがて精母細胞になります。

Q2. 精母細胞と精子細胞の違いは何ですか?

精母細胞は減数分裂をする段階の細胞で、一次精母細胞(染色体46本)と二次精母細胞(23本)があります。精子細胞は減数分裂を終えた染色体23本の丸い細胞で、もう分裂はせず、精子完成によって精子の形に変わります。

Q3. 精子形成と精子完成の違いは?

精子形成(spermatogenesis)は、精祖細胞から精子ができるまでの過程全体を指します。精子完成(spermiogenesis)は、そのうち最後の段階で、精子細胞が先体・頭部・中片部・尾部をもつ精子の形に変わる過程だけを指します。

Q4. 精子はつくられるまでにどのくらいかかりますか?

ヒトでは、精祖細胞から成熟した精子になるまで約74日かかるとされています。このため、生活習慣の改善や薬の変更などの影響が精液検査に表れるまでには、2〜3か月ほどかかります。

Q5. 精細管とは何ですか?

精細管は、精巣の中に折りたたまれて詰まっている細い管で、精子がつくられる場所です。管の壁にはセルトリ細胞と、成熟の段階の異なる生殖細胞が並んでおり、完成した精子は管の内腔に放たれて精巣上体へ送られます。

まとめ

精子形成は、精巣の精細管の中で、精祖細胞(精原細胞)が体細胞分裂で増え、一次精母細胞・二次精母細胞として減数分裂を経て染色体23本の精子細胞になり、精子完成によって精子の形になる過程です。セルトリ細胞がこの過程を支え、下垂体からのLH・FSHと、精巣でつくられるテストステロンが調節しています[4][6]。

精子ができるまでには約74日かかり[1]、健康な男性でも精子の大半には形の異常があります。WHO 2021年版の正常形態率の基準下限は4%です[3]。卵子を含めた配偶子形成の全体像は配偶子形成と受精をご覧ください。

🧬 男性不妊と遺伝について専門医に相談する

無精子症や高度の乏精子症には、染色体の数の異常やY染色体の微小欠失、遺伝子の変化が見つかることがあります。検査で何がわかるのか、結果がご本人やお子さんにとってどういう意味を持つのかを、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明します。

参考文献

  • [1] Amann RP. The cycle of the seminiferous epithelium in humans: a need to revisit? J Androl. 2008;29(5):469-487. [DOI]
  • [2] Amann RP, Howards SS. Daily spermatozoal production and epididymal spermatozoal reserves of the human male. J Urol. 1980;124(2):211-215. [DOI]
  • [3] World Health Organization. WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen. 6th ed. Geneva: WHO; 2021. [WHO]
  • [4] De Gendt K, Swinnen JV, Saunders PT, et al. A Sertoli cell-selective knockout of the androgen receptor causes spermatogenic arrest in meiosis. Proc Natl Acad Sci U S A. 2004;101(5):1327-1332. [PubMed]
  • [5] Schwartz M, Vissing J. Paternal inheritance of mitochondrial DNA. N Engl J Med. 2002;347(8):576-580. [PubMed]
  • [6] Chen H, Mruk D, Xiao X, Cheng CY. Human Spermatogenesis and Its Regulation. In: Male Hypogonadism. Springer; 2017. [Springer]

関連記事

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

関連記事