NTとは|エコー写真でわかる胎児の首のむくみ(浮腫)|NTあればNIPTを推奨

NTとは

NT
NIとはエコー写真でわかる《胎児の首のうしろのむくみ(浮腫)》のことですが、胎児ドックや産婦人科の妊婦検診でエコー検査をして突然、「NTが厚いです。ダウン症21トリソミー)の疑いがあります。」と言われ、びっくりしてパニックになる妊婦さんたちも多いのではないでしょうか?
そこで、このページではそうなってからでも慌てないために知っておきたいことをまとめてみたいと思います。実際にNTが厚い胎児の超音波エコー写真が上の画像ですが、矢印の黒く抜けているところが頸部浮腫ともいわれるNT肥厚となります。米国産科婦人科学会ではNT肥厚があればNIPTを推奨しています。

NTとは後頸部透亮像nuchal translucency (NT)の略です。

妊娠初期の胎児を超音波検査で観察する際、エコー写真の胎児矢状面(身体を前後で切る面をいいます)でみえる、後頸部(首のうしろ)に存在する低エコー域(黒く抜けて見えるところ)をNTと呼びます。

NTにはどういう意味がある?

NTはすべての胎児に認められ、これがあること自体は正常なことです。
しかし、エコー写真でNTが通常の胎児より厚くなっているときには染色体異常や心臓の異常などの可能性が高まります
染色体異常の可能性が高まるといっても、似たような首の後ろの浮腫(透亮像)があり、よくNTと混同される嚢胞性ヒグローマではなんと染色体異常の可能性が約70%と非常に高いものです。NTが厚くても正常なお子さんの場合もあることにご留意ください。

NTは一時的なリンパの流れがわるくなってあかちゃんの首の皮下のリンパ管がむくんだり拡張したりしておこるものとされています。

NTは自然に消失する

NTとは実は染色体異常の有無とは関係なく妊娠l6~18週には消失することが多いものなのですが、これは、14週を過ぎると胎盤のリンパ系が余分な流体を排出するために十分に発達するため、胎盤の循環動態の変化は、末梢抵抗の低下をもたらして、首のうしろのリンパの流れが良くなるためにNTが消失するのだと言われています。NTが自然焼失したからと言って染色体異常の可能性が否定されるわけではないため、必要と判断されたら羊水検査絨毛検査などを受けるkとになるのですが、昨今ではその前にスクリーニング検査としてNIPT(新型出生前診断)を米国産婦人科学会が推奨していることはお伝えした通りです。羊水検査や絨毛検査は出生前診断検査の中でも確定的検査といって診断に直結する検査なのですが、侵襲が大きいため、実際にそういう侵襲的な検査が必要かどうかを非確定的ではあるが非侵襲的な(侵襲のない)出生前診断検査であるNIPTでスクリーニングして、本当に必要があれば羊水検査などの侵襲的検査に進む、という考え方が主流になっています。どんどん変わっていくので情報はマメに自分自身でアップデートしないといけないですね。

NTを計測するのに適した時期は?

上記のような理由で、NTを計測するのに適した時期は14週まで、つまり、赤ちゃんの頭殿長CRLが45~84mm(およそ妊娠11週0日~13週6日) と定められています。

NTの正常値(基準値)、異常値とは?

NTとは正常な赤ちゃんたちも全員に認められるエコー所見なのですが、それでは、NTの正常範囲はそれくらいなのでしょうか?実は、NTの正常値は赤ちゃんの頭殿長CRLの値により異なっていて、NTが95パーセンタイル(95%の赤ちゃんが入っている値を95パーセンタイルといいます)を超える場合をNT増加とし、頭殿長にかかわらずNTが3.5mm以上であれば99パーセンタイルを越えたとして扱います。NTが増加と判断されなければ正常値ということです。
しかし、NTが増加しているからといって直ちにお子さんに異常があると決められるものでもありません。NTが6mmという著明に肥厚した場合であっても、染色体疾患異常は50%で、正常が30%です。
つまり、NTが肥厚しているからと言って、お子さんが染色体異常の可能性が確定される程度に高いわけではありません

NTでは3mm以上の肥厚が認められたら母体血清マーカーでの染色体異数性のリスクは正常となりにくいと報告されています(Comstock,2006)。
NTがもっとも大きな群(6.5mm以上)ではその65%が染色体異常を原因としていて、この大きさでは致死率は19%と報告されています。
Increased nuchal translucency with normal karyotype
NT肥厚

この図の見方
胎児の頭臀長が45㎜ならば以下のようになります。正常値(基準値)は3.0までです。

頭臀長 mmNT mm染色体異常の可能性%
451-1.90.2
2-3.43.5
3.5-4.420
4.5~5.433
5.5~6.450
6.5以上65

 

 

NT肥厚が消えたからと言って染色体異常疑いが消えるわけではない

上記のように、NTとは14週すぎてあかちゃんのリンパの流れがよくなると改善して16週あたりで自然に消失するものなので、NT肥厚が消失したからといって、染色体異常の疑いがなくなったわけではないのです。

NTが厚いと産婦人科で言われました、どうすればいいですか?

NTとはそれ自体で赤ちゃんが何の疾患なのかを決定できるものではないことについては述べてきました。しかし、NTが少なくとも3mmまたは99パーセンタイルを超えるようであれば遺伝カウンセリングを受け、また心臓も含めた精査超音波も受けるべきでしょう。
さらに、NT(後頚部透亮像・首のうしろのむくみ(浮腫・肥厚)頸部浮腫)肥厚が陽性の場合はNIPT(新型出生前診断)および診断的検査を提供されるべきだと米国産科婦人科学会では推奨されています(ACOG、2016c)

NT肥厚でリスクが高まる赤ちゃんの病気とは?

NTの肥厚を認めた場合、胎児染色体異常または胎児のさまざまな形態異常、特に心奇形のリスクが有意に上昇します(Simpson. 2007) 。
しかし、上述したように、関係があるだけで、そうと決まるわけではありません。NTが肥厚していても、健常にうまれてくるお子さんはいます。
3.5㎜なら93%が正常にうまれてきます。つまり、NTとは厚くてもなにか決定的にこれが異常だと決められるものでもないのです。
NTが厚くなっていると心血管系の問題があると疑われ、染色体異常は心血管系の発育に障害をもたらすことがあるため、NT肥厚があればダウン症候群(21トリソミー)、パタウ症候群13トリソミーパトー症候群)、エドワーズ症候群(18トリソミー)などの胎児の染色体異常が疑われます。

ダウン症候群(21トリソミー)

全体として最も多い染色体異常はダウン症候群(21トリソミー)(トリソミー21)となっています。ダウン症候群(21トリソミー)のリスクは母体年齢とともに上昇し、25歳以下の妊娠では1400人に1人、35歳では350人に1人、40歳では200人に1人となります。ダウン症候群(21トリソミー)は、NT肥厚に関連する染色体異常として2番目に多いとされています。
妊娠11~14週目の胎児における母体年齢とNTの厚さの組み合わせによるダウン症候群(21トリソミー)のスクリーニングは、1990年代に導入されました。この方法では、ダウン症候群(21トリソミー)に罹患した胎児の約75%を特定することができます。12週目にNT肥厚陽性と判定を受けた後の自然流産率は約30%となっています。
関連記事:ダウン症候群(21トリソミー)
エドワーズ症候群(18トリソミー)
パタウ症候群(13トリソミー、パトー症候群)

ターナー症候群(モノソミーX)(45,X)

NT肥厚と関係するその他の染色体異常

NT肥厚を来す最も多い疾患はターナー症候群モノソミーX)となっています。
18トリソミー
13トリソミー
三倍体(染色体のセットが3つある)
正常な核型を持っているがその他の異常がある
正常な染色体数の胎児では、NT肥厚はその他の胎児異常や遺伝性症候群と関係します

NTの計測はどれくらい正確なもなのでしょうか?その精度はいかに?

NT肥厚があると、胎児の染色体異常、先天性心疾患、または子宮内胎児死亡となる確率が高くなりますが、一般的に、染色体異常のスクリーニング検査としては、NTだけでは不十分です。
カットオフ値についても、単一のカットオフ値(2.5mmまたは3.0mmなど)を使用することは不適切です。 なぜなら、NTは通常、10~13週目から妊娠週あたり約15%~20%増加する、つまり妊娠週数とともに増加することが知られているからです。
妊娠12週目では、NT値の平均は2.18mmとなっています。しかし、染色体が正常な胎児の約13%が2.5mmを超えるNTを呈するのです。
染色体異数性を正確に検出するためにはNT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))を高い精度で描出して計測しなければならないりません。これによりアメリカでは標準化された訓練検定、継続した復習プログラムが実現しています。
したがって、NT測定の精度を最も左右するのは、超音波検査をする医師の技術力だと言えます。
下手な医師にかかると、斜めに測定してしまい、NTが高く出る傾向があります。

NT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))を単一マーカーとして使用する場合

単一マーカーとしてのNTは偽陽性率5%、Down症候群の2/3を検出可能(感度62%)です。
しかし一般的にNT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))は、血清スクリーニングで精度が低いまたは結果を出せないとされる多胎においてのみ単独で使用されます。
NT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))値の分布は双胎と単胎で同等なのでカットオフ値も同じです。

NTを測定するときに何か決まりはあるものでしょうか?

NT測定は以下のガイドラインを厳密に守って行います。
・NTの縁は正確にキャリパーがおけるように明瞭でなければならない
・胎児は正中矢状断でなければならない
・胎児の頭部、頸部,上部胸郭が全体をみたすようにするため、画面を拡大する
・胎児の頸部は屈曲や伸展をしていないニュートラルな位置であること
・羊膜がNTのラインと分離して描出されなければならない
・計測には検査機器のキャリパーを用いること
・+キャリパーは後頸部のスペースの境界線内側に置きキャリパーの水平方向の横棒自体はこのスペースにはみ出ないようにする
・キャリパーは胎児の長軸と垂直に置く
・NTの測定は幅が最も大きい部位で測定する

このエコー写真は実際にNTが厚いという写真です。当院症例をお出ししています。
NT陽性

NT計測の精度高めるために:NT計測のための産婦人科医の資格

NT計測はダウン症候群(21トリソミー)などの可能性を示す超音波マーカーであり、これもまた出生前診断の要素を持つということを重くみて、欧米では行うにあたり質を担保するために、資格を創設しています。また、NT測定を行うための専門的資格認定を受けた後も、更新を受けるために症例を報告して審査を受けることが義務付けられていて、日本とは全く異なる体制と質で行われています。
その資格を付与しているFMFという団体のHPがこちらです。

fetalmedicine.org/fmf-certification/certificates-of-competence/nuchal-translucency-scan

日本にはこうした資格はありません。つまり、日本ではNTを計測する医師たちの質が担保されていないので、技術力に大きなばらつきがあるのです。
こうした事象一つをとっても、日本の医療制度の問題点が浮き彫りになります。

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この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号