NTとは|赤ちゃんの首のむくみ(浮腫・肥厚)慌てないために知っておきたい9つのポイント

NTとは

NTとは後頸部透亮像nuchal translucency (NT)の略です。

妊娠初期の胎児を超音波検査で観察する際、胎児矢状面(身体を前後で切る面をいいます)でみえる、後頸部に存在する低エコー域をNTと呼びます。NTはすべての胎児に認められ、これがあること自体は正常なことです。
しかし、NTが通常の胎児より厚くなっているときには染色体異常や心臓の異常などの可能性が高まります。
NTが厚くても正常なお子さんの場合もあることにご留意ください。

一時的なリンパ流の停滞による項部皮下のリンパ管の浮腫や拡張がNTの原因とされています。染色体異常の有無とは関係なく妊娠l6~18週には消失することが多いのですが、これは、14週を過ぎると胎盤のリンパ系が余分な流体を排出するために十分に発達するため、胎盤の循環動態の変化は、末梢抵抗の低下をもたらして、首のうしろのリンパの流れが良くなるためだと言われています。

つまり、NT肥厚が消失したからといって、染色体異常の疑いがなくなったわけではないのです。

上記のような理由で、NTを計測する時期は14週まで、つまり、CRLが45~84mm(およそ妊娠11週0日~13週6日) と定められています。

NTの正常値、異常値

NTの正常範囲は頭殿長の値により異なり、NTが95パーセンタイルを超える場合をNT増加とし、頭殿長にかかわらずNTが3.5mm以上であれば99パーセンタイルを越えたとして扱います
NTが6mmという著明に肥厚した場合であっても、染色体疾患異常は50%で、正常が30%です。
つまり、NTが肥厚しているからと言って、お子さんが染色体異常の可能性が高いわけではありません。
NT肥厚

NTの評価第1三半期における染色体異常のスクリーニングの一つで、2000年代初頭あたりから産婦人科診療に導入されています。

ポイント1.あかちゃんの首のむくみNTはどうして起こるの?

NTは後頸部の皮膚と脊髄に沿った軟部組織間の半透明な領域の晟大の厚みを指します。
半透明な体液と見られる部分の実際の解剖学的構造は、首の後ろの正常な皮膚である可能性が高く、浮腫性になるか、または場合によっては、正常組織構造の変化により拡張したリンパ嚢によって体液で満たされることがあります。
超音波所見上の後頚部の透明な構造(nuchal translucency)は胎児のリンパ系が成長し、胎盤の末梢抵抗が高い妊娠の11週と14週の間で測定することのみが有用です。
14週を過ぎるとリンパ系は、余分な流体を排出するために十分に発達する可能性が高く、胎盤の循環動態の変化は、末梢抵抗の低下をもたらします。そのため、14週を過ぎると、体液の蓄積を引き起こす異常はなくなっていくように見える可能性があり、超音波スキャンによってNTが検出されなくなることがあります。
超音波で透明に見える液体の貯留は、発達している胎児のリンパ系の液体が閉塞していることが原因です。11~14週目の測定期間中に半透明領域の幅が徐々に増加することは、先天性リンパ浮腫を示唆するものです。

ポイント2.NT測定のタイミングとは?

11~14週の間に矢状断(身体の左右と90度に交差する前後の面)で明確な診断基準に則って計測されます。
NTの肥厚を認めた場合、胎児染色体異常または胎児のさまざまな形態異常、特に心奇形のリスクが有意に上昇します。

NTは矢状断面で胎児頭殿長が38~45mmから84mmのときに測定されますが、最低値は施設によって異なります。
可能な限り、NTの増大と膿胞性ヒグローマを区別することが有用で、膿胞性ヒグローマは背中に
沿って伸びる、後頚部の隔壁を伴った低エコー領域として現れる静脈―リンパ系の奇形です。
嚢胞性ヒグローマは第1三半期に認められると染色体異数性のリスクが5倍になると報告されています。(Malone,2005a)

ポイント3.NTの測定値、どれくらいなら心配なの?

3mm以上のNT肥厚が認められたら母体血清マーカーでの染色体異数性のリスクは正常となりにくいと報告されています(Comstock,2006).
NTがもっとも大きな群(6.5mm以上)ではその65%が染色体異常を原因としていて、この大きさでは致死率は19%と報告されています。
Increased nuchal translucency with normal karyotype

ポイント4.NT肥厚陽性の意味するところとは?

染色体異数性に加えて、NT肥厚は他の遺伝性疾患やさまざまな先天異常、特に心奇形と関連いたします(Simpson. 2007) 。
しかし、上述したように、関係があるだけで、そうと決まるわけではありません。NTが肥厚していても、健常にうまれてくるお子さんはいます。
3.5㎜なら93%が正常にうまれてきます。

ポイント5.NT肥厚陽性、どうすればいいの?

したがってNTが少なくとも3mmまたは99パーセンタイルを超えるようであれば遺伝カウンセリングを受け、また心臓も含めた精査超音波も受けるべきでしょう。
さらに、NT(後頚部透亮像・首のうしろのむくみ(浮腫・肥厚))陽性の場合はNIPT(新型出生前診断)および診断的検査を提供されるべきだと米国産科婦人科学会では推奨されています(ACOG、2016c)

ポイント6.NTを計測して何がわかるのでしょうか?

心血管系の問題でNT肥厚が起こり、染色体異常は心血管系の発育に障害をもたらすことがあるため、NT肥厚があればダウン症候群、パタウ症候群、エドワーズ症候群などの胎児の染色体異常が疑われます。

関連記事:ダウン症候群
エドワーズ症候群
パタウ症候群

ターナー症候群(45,X)

NT肥厚を来す最も多い疾患はターナー症候群となっています。

ダウン症候群

全体として最も多い染色体異常はダウン症候群(トリソミー21)となっています。ダウン症候群のリスクは母体年齢とともに上昇し、25歳以下の妊娠では1400人に1人、35歳では350人に1人、40歳では200人に1人となります。ダウン症候群は、NT肥厚に関連する染色体異常として2番目に多いとされています。
妊娠11~14週目の胎児における母体年齢とNTの厚さの組み合わせによるダウン症候群のスクリーニングは、1990年代に導入されました。この方法では、ダウン症候群に罹患した胎児の約75%を特定することができます。12週目にNT肥厚陽性と判定を受けた後の自然流産率は約30%となっています。

NT肥厚と関係するその他の染色体異常

トリソミー18
トリソミー13
三倍体(染色体のセットが3つある)
正常な核型を持っているがその他の異常がある
正常な染色体数の胎児では、NT肥厚はその他の胎児異常や遺伝性症候群と関係します

ポイント7.NT計測はどれくらい正確なのでしょうか?その精度はいかに?

NT肥厚があると、胎児の染色体異常、先天性心疾患、または子宮内胎児死亡となる確率が高くなります。一般的に、染色体異常のスクリーニング検査としては、NTだけでは不十分です。
カットオフ値についても、単一のカットオフ値(2.5mmまたは3.0mmなど)を使用することは不適切です。 なぜなら、NTは通常、10~13週目から妊娠週あたり約15%~20%増加する、つまり妊娠週数とともに増加することが知られているからです。
妊娠12週目では、NT値の平均は2.18mmとなっています。しかし、染色体が正常な胎児の約13%が2.5mmを超えるNTを呈するのです。
染色体異数性を正確に検出するためにはNT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))を高い精度で描出して計測しなければならないりません。これによりアメリカでは標準化された訓練検定、継続した復習プログラムが実現しています。
したがって、NT測定の精度を最も左右するのは、超音波検査をする医師の技術力だと言えます。
下手な医師にかかると、斜めに測定してしまい、NTが高く出る傾向があります。

NT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))を単一マーカーとして使用する場合

単一マーカーとしてのNTは偽陽性率5%、Down症候群の2/3を検出可能(感度62%)です。
しかし一般的にNT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))は、血清スクリーニングで精度が低いまたは結果を出せないとされる多胎においてのみ単独で使用されます。
NT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))値の分布は双胎と単胎で同等なのでカットオフ値も同じです。

ポイント8.NT測定のガイドライン

・NTの縁は正確にキャリパーがおけるように明瞭でなければならない
・胎児は正中矢状断でなければならない
・胎児の頭部、頸部,上部胸郭が全体をみたすようにするため、画面を拡大する
・胎児の頸部は屈曲や伸展をしていないニュートラルな位置であること
・羊膜がNTのラインと分離して描出されなければならない
・計測には検査機器のキャリパーを用いること
・+キャリパーは後頸部のスペースの境界線内側に置きキャリパーの水平方向の横棒自体はこのスペースにはみ出ないようにする
・キャリパーは胎児の長軸と垂直に置く
・NTの測定は幅が最も大きい部位で測定する

NT陽性

ポイント9.NT計測の精度高めるために:NT計測のための資格

NT計測はダウン症候群などの可能性を示す超音波マーカーであり、これもまた出生前診断の要素を持つということを重くみて、欧米では行うにあたり質を担保するために、資格を創設しています。また、NT測定を行うための専門的資格認定を受けた後も、更新を受けるために症例を報告して審査を受けることが義務付けられていて、日本とは全く異なる体制と質で行われています。

その資格を付与しているFMFという団体のHPがこちらです。

fetalmedicine.org/fmf-certification/certificates-of-competence/nuchal-translucency-scan

日本にはこうした資格はありません。つまり、日本ではNTを計測する医師たちの質が担保されていないので、技術力に大きなばらつきがあるのです。
こうした事象一つをとっても、日本の医療制度の問題点が浮き彫りになります。

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この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号