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レジウス症候群とは|NF1との鑑別ポイント・SPRED1遺伝子・2021年改訂国際診断基準を臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医として、世界基準の出生前診断と遺伝カウンセリングを提供。

この記事でわかること

Q. 6個以上のカフェ・オ・レ斑があったら必ずNF1ですか?

A. いいえ。「カフェ・オ・レ斑+雀卵斑様色素斑」だけが揃う患者さんの1〜4%はレジウス症候群(SPRED1遺伝子変異)です。神経線維腫・視神経膠腫・Lisch結節などの腫瘍性病変を欠くため、NF1とは予後と医学的監視の必要性が大きく異なります。鑑別には遺伝子検査が必須です。

この記事の要点

  • レジウス症候群はSPRED1遺伝子の機能喪失型変異で発症する常染色体顕性(優性)遺伝疾患
  • 2007年にBremsらが報告。多発カフェ・オ・レ斑と腋窩・鼠径部の雀卵斑様色素斑が主徴
  • NF1と異なり神経線維腫・視神経膠腫・Lisch結節・特徴的骨病変・MPNSTを伴わない
  • 2021年改訂国際診断基準でレジウス症候群の独立した分子診断基準が確立
  • CALMs主体の小児では構成的ミスマッチ修復欠損(CMMRD)の鑑別が決定的に重要
  • 当院の神経線維腫症NGSパネルはNF1/NF2/SPRED1を一括解析、確定診断に直結

レジウス症候群(Legius syndrome)とは

レジウス症候群(Legius syndrome、OMIM #611431)は、2007年にベルギーのLeuven大学のEric Legius・Hilde Bremsらが初めて報告した比較的新しい遺伝性疾患です。15番染色体長腕(15q14)に位置するSPRED1遺伝子のヘテロ接合性機能喪失型変異により発症し、常染色体顕性(優性)遺伝形式をとります。

本疾患の臨床像は神経線維腫症1型(NF1)に非常によく似ており、多発性のカフェ・オ・レ斑と腋窩・鼠径部の雀卵斑様色素斑を主徴としますが、NF1の特徴である神経線維腫・視神経膠腫・Lisch結節・特徴的な骨病変・悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)を欠く点が決定的に異なります。発見以前は色素斑のみが目立つ軽症NF1として扱われていた患者群の一定割合が、実はレジウス症候群であったことが現在では明らかになっています。

有病率はNF1(出生3,000人に1人)よりはるかに低く、Bremsらの推定で1/46,000〜1/75,000程度と報告されていますが、軽症のCALMs型NF1様症状を呈する患者の中に少なからず含まれているため、実数はもう少し多い可能性があります。NIH診断基準でNF1とされた患者の1〜2%、CALMsが主訴の小児では1〜4%がレジウス症候群と推定されています。

💡用語解説

アレル(対立遺伝子)

同じ遺伝子座に存在する遺伝子のバリエーション。ヒトは父親と母親から1コピーずつ受け継ぐため、各遺伝子につき2つのアレルを持ちます。レジウス症候群のSPRED1変異は片方のアレルのみの変異(ヘテロ接合性)で発症します。

SPRED1遺伝子と分子病態

SPRED1(Sprouty-related EVH1 domain-containing protein 1)はRAS/MAPK経路の負の制御因子として機能するタンパク質をコードしています。SPRED1タンパク質はN末端のEVH1ドメインを介してNF1遺伝子産物であるニューロフィブロミンのGAP関連ドメイン(GRD)と物理的に結合し、活性型RAS(RAS-GTP)の不活性化(RAS-GDPへの変換)を促進します。

RAS/MAPK経路とSPRED1-ニューロフィブロミン複合体

増殖因子受容体(RTK)
RAS-GTP(活性型)
⊣ 負の制御(GTP→GDP加水分解で不活性化)
SPRED1(EVH1ドメイン)ニューロフィブロミン(GAPドメイン)
↑ この複合体が物理的に結合してRAS-GTPを分解
RAF
MEK
ERK
細胞増殖・分化
▶ SPRED1またはニューロフィブロミンの機能喪失でRAS-GTPの不活性化が遅延し、MAPK経路が過剰活性化されます。色素細胞の増殖が亢進した結果、レジウス症候群(SPRED1変異)またはNF1(NF1変異)の多発CALMs・雀卵斑様色素斑が生じます。どちらの遺伝子変異でも複合体の機能が損なわれるため、皮膚色素症状が酷似します。

SPRED1遺伝子に病的バリアントが生じると、機能性のSPRED1タンパク質が不足し(ハプロ不全)、ニューロフィブロミンとの複合体形成が損なわれます。その結果、RAS-GTPの分解が遅延しMAPK経路が慢性的に過剰活性化されます。色素細胞ではメラニン産生と局所増殖が亢進し、特徴的なカフェ・オ・レ斑と雀卵斑様色素斑が形成されます。

これまでに報告されたSPRED1の病的バリアントは多岐にわたります。ナンセンス変異フレームシフト変異スプライシング異常、エクソン欠失、全遺伝子欠失などの機能喪失型変異が主体です。一部のミスセンス変異(p.Thr102Arg、p.Trp31Cysなど)もEVH1ドメインの構造を破壊し、ニューロフィブロミンとの結合を阻害することが示されています。

Messiaenら(2009年)の大規模解析では、家族性発症の家系では約19%、孤発例では約2%という検出率が報告されており、家族歴の有無で検出率が10倍近く異なる点は本疾患の重要な特徴です。レジウス症候群はSPRED1遺伝子の分子的証明によってのみ確定診断が可能で、これは2021年改訂国際診断基準にも明記されています。

主な臨床症状

レジウス症候群の表現型はNF1の皮膚症状と酷似していますが、腫瘍性病変を欠く点が異なります。主な臨床症状は以下の通りです:

皮膚症状(ほぼ全例)

  • 多発性カフェ・オ・レ斑(CALMs):6個以上のミルクコーヒー色の色素斑。NF1と区別がつかない外観・分布
  • 雀卵斑様色素斑(freckling):腋窩・鼠径部などの間擦部位の小色素斑(Crowe徴候)。発現率はNF1とほぼ同等
  • 脂肪腫:成人期に皮下に多発することがある

その他の所見(頻度は低い)

  • 大頭症(NF1より頻度は低い)
  • 学習障害・注意欠如多動症(ADHD):NF1より軽度
  • 軽度の発達遅滞(一部の症例)
  • ヌーナン症候群様顔貌(ごく一部)

注目すべきは、本疾患では皮膚または深部の神経線維腫が発生しないことです。NF1で問題となる視神経膠腫、Lisch結節(虹彩過誤腫)、脈絡膜異常、特徴的骨病変(脛骨偽関節・蝶形骨欠損)、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)などの腫瘍性合併症は基本的に発生しないと考えられています。寿命はおおむね正常で、定期的な悪性腫瘍スクリーニングや専門医による全身フォローは原則として不要です。

仲田洋美 医師

院長コラム:軽症NF1か、レジウスか

私が遺伝外来でCALMsの患者さんを診るとき、一番気をつけるのは「NF1だから経過観察と説明していた家系の中に、実はSPRED1変異の方が混じっているかもしれない」という視点です。色素斑だけがあって40代・50代になっても神経線維腫が出ない方、家系全体が皮膚症状だけで完結しているように見える方は、SPRED1解析の良い適応です。確定診断によって、本人もご家族も「ずっと悪性腫瘍を心配しなくてよい」と理解できることの精神的な意義は本当に大きいのです。

逆に、小児で6個以上のCALMsだけが目立つ場合は、安易にレジウス症候群と決めつけてはいけません。後述するCMMRD(構成的ミスマッチ修復欠損)という、極めて高い悪性腫瘍リスクを伴う別の疾患が紛れている可能性があるからです。CALMsの鑑別は、「軽症だから簡単」ではなく、むしろ専門医の知識と検査体制を要する領域です。

NF1との鑑別ポイント

レジウス症候群とNF1は、皮膚色素症状だけを見ると区別が困難ですが、腫瘍性病変の有無で予後と医学的監視が大きく異なります。鑑別の要点を以下に整理します。

所見 NF1 レジウス症候群
多発カフェ・オ・レ斑 あり あり
雀卵斑様色素斑 あり あり
皮膚・皮下神経線維腫 あり なし
叢状神経線維腫 あり なし
視神経膠腫(OPG) あり(約15%) なし
Lisch結節(虹彩過誤腫) あり(成人ほぼ全例) なし
脈絡膜異常 あり(小児60〜79%) なし
特徴的骨病変(脛骨偽関節・蝶形骨欠損) あり なし
悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST) あり(生涯8〜13%) なし
原因遺伝子 NF1(17q11.2) SPRED1(15q14)
遺伝形式 常染色体顕性 常染色体顕性

なお、NF1にも軽症型のバリアントが存在します。NF1遺伝子のp.Met992del(3塩基インフレーム欠失)やp.Arg1809ミスセンス変異を持つ患者では、色素症状のみが目立ち神経線維腫が乏しい「Watson症候群様の軽症NF1」を呈することが報告されています。このため、SPRED1陰性であってもNF1の特殊バリアントを見逃さないよう、NF1とSPRED1を同時に解析する戦略が推奨されます。

2021年改訂国際診断基準

2021年、Legius E、Messiaen Lらを中心とする国際コンセンサスグループは、NF1とレジウス症候群の改訂診断基準をGenetics in Medicine誌に発表しました(Legius E, et al. Genet Med. 2021)。この改訂は、1987年のNIH診断基準以来初めての本格的な見直しで、以下の重要な変更を含みます。

レジウス症候群の2021年改訂診断基準

以下のABの両方を満たす場合に診断確定:

  • A. 6個以上のカフェ・オ・レ斑、または6個以上のCALMsと腋窩・鼠径部の雀卵斑様色素斑、かつNF1の他の診断項目を満たさない
  • B. SPRED1遺伝子のヘテロ接合性病的バリアントが分子遺伝学的検査で同定されている、または親がレジウス症候群と確定診断されている

NF1側の改訂のうち、レジウス症候群との鑑別に直接関わる主な変更点は次の通りです:

  • 脈絡膜異常(choroidal abnormalities)が新たな診断項目として追加(赤外光眼底検査で評価、小児NF1の60〜79%で陽性)
  • NF1の家族歴の項目に「親がNF1の診断基準を満たす」に加え「親がNF1遺伝子の病的バリアントを保有」が明記
  • 遺伝子検査(NF1の病的バリアント検出)が単独で診断基準の1項目として明示
  • モザイク型NF1の診断基準が独立して整備

最も重要な点は、レジウス症候群の診断にはSPRED1の分子的証明が必須であることです。臨床所見のみではNF1と区別できないため、CALMsを主訴とする患者では遺伝子検査が事実上の確定診断手段となります。

CMMRD:見逃してはいけない重要な鑑別疾患

CALMsを主訴とする小児の鑑別診断において、レジウス症候群以上に医学的に重要なのが構成的ミスマッチ修復欠損症候群(Constitutional Mismatch Repair Deficiency: CMMRD)です。これはMLH1、MSH2、MSH6、PMS2のいずれかのDNAミスマッチ修復遺伝子の両アレル性変異(biallelic variants)により発症する常染色体潜性遺伝疾患です。

CMMRD患者の40〜60%でNF1様の多発CALMsが出現し、雀卵斑様色素斑も伴うため、皮膚科では「軽症NF1」と誤診される危険性が極めて高い疾患です。しかしCMMRDの本質はNF1ではなく、小児期から極めて若年の血液腫瘍(リンパ腫・白血病)、脳腫瘍(神経膠芽腫・髄芽腫)、消化器癌、その他のリンチ症候群関連腫瘍を多発する致死性の悪性腫瘍症候群です。

CMMRDを疑うレッドフラッグ

  • 両親が血縁関係(consanguineous marriage)にある
  • リンチ症候群関連腫瘍の家族歴(大腸癌・子宮内膜癌・尿路系癌など)
  • 非典型的なCALMs(境界が不整、形が異常、内部に色素斑あり)
  • 低色素斑を伴うCALMs
  • NF1遺伝子・SPRED1遺伝子の両方が陰性
  • 小児期に悪性腫瘍の発症
💡用語解説

ミスマッチ修復(MMR)

DNA複製時に生じる塩基ミスマッチを修復する細胞内システム。ミスマッチ修復遺伝子の片アレル変異は成人発症のリンチ症候群を、両アレル変異(CMMRD)は小児期からの極めて若年の悪性腫瘍多発を引き起こします。診断にはマイクロサテライト不安定性(MSI)解析とMMRタンパク質の免疫染色が用いられます。

CMMRDが疑われる場合は、NF1/SPRED1のみのパネル検査では不十分で、4つのMMR遺伝子(MLH1・MSH2・MSH6・PMS2)を含む拡張パネルが必要になります。当院の遺伝外来では、CALMsを主訴とする患者の家族歴・近親婚の有無・腫瘍既往を丁寧に聴取し、必要に応じてMMR遺伝子も含めた多遺伝子パネル検査を提案しています。CMMRDの確定診断ができれば、極めて厳重な悪性腫瘍サーベイランスにより救命率が大きく改善することが報告されています。

神経線維腫症NGSパネル検査

当院の神経線維腫症NGSパネル検査は、NF1・NF2・SPRED1の3つの原因遺伝子を次世代シーケンサー(NGS)により一括解析する検査です。CALMsを主訴とする患者の鑑別診断において、現時点でもっとも効率的かつ網羅的なアプローチです。

本パネルの適応

  • 6個以上のCALMsまたは雀卵斑様色素斑があるが、神経線維腫など他のNF1所見が乏しい方
  • 家系内にCALMs主体の遺伝歴があり、確定診断を希望する方
  • NF1の臨床診断基準を満たすが、遺伝子レベルでの確定が必要な方
  • 挙児希望があり、保因者診断・出生前診断に進む可能性がある家系

RASopathy全般を視野に入れた検査をご希望の場合は、より広範なNIPTインペリアルプラン(154遺伝子218疾患)にもNF1が含まれており、出生前の段階でリスク評価が可能です。挙児希望のご夫婦には、拡大保因者スクリーニングもご案内しています。

マネジメントと遺伝カウンセリング

レジウス症候群が確定診断された場合、NF1で必要とされる定期的なMRI、視神経膠腫スクリーニング、神経線維腫の外科的管理、MPNSTの監視といった医学的サーベイランスは原則として不要です。これは患者さんとご家族にとって極めて大きな安心材料となります。

一方で、確定診断によって明らかになる次のような点については継続的なフォローが望まれます:

  • 子への50%の遺伝確率と、家系内の保因者確認
  • 学習面・発達面の軽度な困難がある場合の早期介入
  • 成人期の脂肪腫など軽微な合併症への対応
  • 「軽症NF1」として誤診されている可能性がある家族員の再評価

当院では、1.5時間の枠を確保した個別の遺伝カウンセリングを通じて、診断結果の医学的・心理的・家族的含意を丁寧にお伝えしています。臨床遺伝専門医の立場から、検査前の意思決定支援、検査結果の解釈、今後の家族計画まで一貫して支援いたします。

NIPTで本疾患関連の検査を受けたい方には、出生前診断費用の自己負担を軽減するNIPT互助会もご活用いただけます。

仲田洋美 医師

院長コラム:診断の「軽さ」が持つ重さ

レジウス症候群と診断された患者さんの多くが、外来で同じ言葉を口にされます。「これまで何十年もNF1だと思って生きてきました」と。神経線維腫がいつ出るか、悪性化しないか、子どもにも同じ思いをさせるのか――そうした不安を抱えて生活してきた方々にとって、「あなたの病気は神経線維腫ができない病気でした」と伝える瞬間は、診療の中でもとても忘れがたい時間です。

私が大切にしているのは、「予後は良い」という事実だけを伝えて終わりにしないことです。お子さんへの遺伝確率は50%、雀卵斑様色素斑は同じように出る、学習面のサポートが必要な場合もある。良いことも、留意すべきことも、全部一緒にお伝えすることで、ご家族が将来を主体的に設計できるようになります。診断とは、結果を告げることではなく、その後の人生に伴走することだと思っています。

CALMsが気になる方・ご家族に診断歴のある方へ

臨床遺伝専門医が、検査前の説明から結果解釈まで一貫して対応いたします。
NF1・レジウス症候群・CMMRDの鑑別が必要な方はご相談ください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. レジウス症候群と診断されたら、悪性腫瘍のスクリーニングは必要ですか?

レジウス症候群では、NF1のような神経線維腫・視神経膠腫・MPNSTなどの腫瘍性病変は基本的に発生しません。したがって、NF1で必要とされる定期的なMRI検査や視神経評価は原則として不要です。ただし、小児期にCALMs主体で経過する症例ではCMMRDの可能性も完全には除外できないため、家族歴・臨床経過によっては追加の検査を提案する場合があります。

Q2. レジウス症候群の遺伝確率はどのくらいですか?

本疾患は常染色体顕性(優性)遺伝形式をとるため、患者さんの子へ50%の確率で遺伝します。父親由来・母親由来どちらでも同じ確率で、性別による差はありません。家系内に同じCALMsの所見がある血縁者がいる場合は、確定診断のために遺伝子検査を受けることをご検討ください。

Q3. 子どもにCALMsがあり、SPRED1検査で陰性でした。次の検査は何ですか?

SPRED1陰性の場合、まずNF1遺伝子の全領域シーケンスとMLPA(大規模欠失・重複の検出)を行います。NF1にも軽症型のバリアント(p.Met992del、p.Arg1809ミスセンスなど)が存在するためです。NF1も陰性であれば、家族歴や臨床所見によってCMMRDの可能性を検討し、4つのMMR遺伝子(MLH1・MSH2・MSH6・PMS2)の解析を提案する場合があります。

Q4. SPRED1の遺伝子検査はどのくらいの精度で病的バリアントを検出できますか?

家族性発症(複数世代でCALMsの遺伝歴がある)の場合は約19%、孤発例では約2%という検出率が報告されています(Messiaen L, et al. JAMA 2009)。検出率の差が大きいため、家族歴の聴取は検査適応の判断に欠かせません。当院では検査前の遺伝カウンセリングで詳細な家族歴をうかがい、最適な検査戦略をご提案します。

Q5. レジウス症候群の出生前診断は可能ですか?

原因となるSPRED1の病的バリアントが家系内で同定されている場合、絨毛検査・羊水検査による出生前確定診断は技術的に可能です。ただし、本疾患は予後がきわめて良好で寿命にも影響しないため、出生前診断の倫理的位置付けについては事前の慎重な遺伝カウンセリングが必須です。当院では家族計画の選択肢を中立的にご説明します。

Q6. NF1とレジウス症候群、見た目だけで判別する方法はありますか?

小児期の皮膚所見だけでは両者の鑑別は困難です。年齢が上がり、神経線維腫やLisch結節が出現してきた場合はNF1の可能性が高くなりますが、40代まで色素症状のみで経過する場合は遺伝子検査による分子診断が必要です。脈絡膜異常(赤外光眼底検査)はNF1で60〜79%、レジウス症候群では認められないため、参考所見として有用です。

Q7. レジウス症候群と診断された場合、保険適用は受けられますか?

日本では現時点でレジウス症候群は指定難病に含まれていません。NF1は指定難病34に該当しますが、SPRED1変異のみのレジウス症候群は別疾患として扱われます。ただし、本疾患は予後がきわめて良好で日常生活への影響も限定的であるため、医療費補助の必要性そのものが小さい点が他のNF1関連疾患と異なります。

Q8. 当院での検査の流れを教えてください

①初診(1.5時間枠の遺伝カウンセリング)で病歴・家族歴を詳細にうかがい、検査の意義・限界・費用についてご説明します。②同意書取得後、採血または口腔粘膜採取で検体を採取します。③解析期間は約4〜6週間です。④結果説明は再度1.5時間の枠でお時間を確保し、医学的・心理的・家族的含意を丁寧にお伝えします。検査後のフォローアップ体制も整えています。

ミネルバクリニックの遺伝外来

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参考文献

  1. Brems H, Chmara M, Sahbatou M, et al. Germline loss-of-function mutations in SPRED1 cause a neurofibromatosis 1-like phenotype. Nat Genet. 2007;39(9):1120-1126.
  2. Legius E, Messiaen L, Wolkenstein P, et al. Revised diagnostic criteria for neurofibromatosis type 1 and Legius syndrome: an international consensus recommendation. Genet Med. 2021;23(8):1506-1513.
  3. Messiaen L, Yao S, Brems H, et al. Clinical and mutational spectrum of neurofibromatosis type 1-like syndrome. JAMA. 2009;302(19):2111-2118.
  4. Pasmant E, Sabbagh A, Hanna N, et al. SPRED1 germline mutations caused a neurofibromatosis type 1 overlapping phenotype. J Med Genet. 2009;46(7):425-430.
  5. Stowe IB, Mercado EL, Stowe TR, et al. A shared molecular mechanism underlies the human rasopathies Legius syndrome and Neurofibromatosis-1. Genes Dev. 2012;26(13):1421-1426.
  6. Wimmer K, Kratz CP, Vasen HF, et al. Diagnostic criteria for constitutional mismatch repair deficiency syndrome: suggestions of the European consortium ‘care for CMMRD’ (C4CMMRD). J Med Genet. 2014;51(6):355-365.
  7. Yap YS, McPherson JR, Ong CK, et al. The NF1 gene revisited – from bench to bedside. Oncotarget. 2014;5(15):5873-5892.
  8. Hirbe AC, Gutmann DH. Neurofibromatosis type 1: a multidisciplinary approach to care. Lancet Neurol. 2014;13(8):834-843.

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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