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ヘモクロマトーシス遺伝子検査|原因7遺伝子・遺伝のしかた・フェリチンが高いと言われた方へ

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

ヘモクロマトーシスの遺伝子検査

健診で「フェリチンが高い」「トランスフェリン飽和度が高い」と言われた方へ。ヘモクロマトーシスは、生まれつきの体質で食事の鉄を吸収しすぎ、肝臓・すい臓・心臓などに少しずつ鉄がたまっていく病気です。鉄がたまっていても、臓器が傷む前に見つけて治療を始めれば、将来の肝臓や糖尿病の心配に前もって備えることができます。このページでは、原因になる7つの遺伝子を一度に調べる遺伝子検査でわかること、日本人ならではの注意点、結果が出たあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

ヘモクロマトーシスの原因になる7つの遺伝子(BMP2・FTH1・HAMP・HFE・HJV・SLC40A1・TFR2)を一度に調べ、鉄が体にたまる原因が生まれつきの遺伝子の変化かどうかを確かめます。日本人ではHFE以外の遺伝子が原因のこともあります。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

トランスフェリン飽和度とフェリチンが高く、輸血など鉄がたまるほかの原因が見当たらない方、若いうちから鉄過剰がある方、ご家族にヘモクロマトーシスの方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が見つかれば、治療を始める判断や、きょうだいなどご家族の検査につながります。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、肝臓と体の将来に備える /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 遺伝性ヘモクロマトーシスの詳しい解説

1. ヘモクロマトーシスとは:遺伝子検査を考える前に

ヘモクロマトーシスは、生まれつきの遺伝子の変化によって腸から鉄を吸収しすぎ、トランスフェリン飽和度が高くなり、肝臓などに鉄がたまっていく病気です[1]。欧州肝臓学会(EASL)の診療ガイドライン(2022年)は、ヘモクロマトーシスを「遺伝が原因で、トランスフェリン飽和度の上昇と肝臓の鉄過剰を特徴とする病気」と定義しています[1]。病気そのものの詳しい解説は、遺伝性ヘモクロマトーシス 総論にまとめています。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

鉄がたまるしくみ:ヘプシジンというブレーキ

体には、余った鉄を外に出すしくみがほとんどありません。そのため、腸から吸収する鉄の量を、肝臓で作られる「ヘプシジン」というホルモンがブレーキのように調節しています。ヘモクロマトーシスでは、ヘプシジンが十分に作られないか、まれに体の組織がヘプシジンに反応しないために、鉄を吸収しすぎてしまいます[3]。

このページの検査で調べる7つの遺伝子は、どれもこの鉄の調節に関わっています。たとえばHFE・HJV・TFR2はヘプシジンを作る指令に関わり、HJVやBMP2はBMPシグナルという信号の通り道を通して働きます。HAMPはヘプシジンそのものの遺伝子、SLC40A1は細胞から鉄を外へ運び出すフェロポルチンの遺伝子です。

鉄がたまると起こること

ヘモクロマトーシスでたまった鉄は、関節・すい臓・心臓・肝臓などに影響し、肝臓のがんにつながることもあります[3]。一方で、鉄がたまっていても症状が出ない方も多く、同じ遺伝子の型でも、どこまで進むかは人によって大きく違います。

  • ●肝臓:肝硬変になってから診断された場合、肝臓のがんのリスクは10〜30%とされ、これが寿命を縮める主な理由とされています。肝硬変になる前に治療を始めた方の寿命は、ふつうの方と変わらないとされています[2]。
  • ●すい臓(糖尿病):HFE関連のヘモクロマトーシスで肝硬変や肝不全のある方の約50%が糖尿病を合併していて、すい臓のインスリンを作る細胞の集まり(膵島)に鉄がたまることが関係するとされています[2]。
  • ●関節:関節の症状は最初のサインになることが多く、とくに手の人さし指・中指の付け根の関節(第2・第3中手指節関節)や足首に起こりやすいとされています[1][2]。
  • ●心臓・ホルモン:若いうちに発症する型(若年性ヘモクロマトーシス)では、心不全や、下垂体に鉄がたまることによる性腺の働きの低下が報告されています[5]。

遺伝性のものと、輸血などで鉄がたまるもの(二次性)の違い

鉄過剰には、生まれつきの遺伝子が原因のもの(遺伝性ヘモクロマトーシス)と、輸血などで外から入った鉄がたまるもの(二次性)があり、日本では二次性がほとんどです。日本の全国調査では、鉄過剰症1,109例のうち93.1%が輸血による鉄過剰と考えられました[4]。

輸血がくり返し必要になる病気には、骨髄異形成症候群やサラセミアなどがあります。こうした二次性の鉄過剰は、この遺伝子検査では見つかりません。治療も違い、くり返し採血して鉄を抜く瀉血(しゃけつ)ができない場合には、鉄を体の外へ出す薬を使う鉄キレート療法が選ばれることがあります[1]。

日本人では、HFE以外の遺伝子が原因のことがある

欧米で多い「HFE遺伝子のC282Y」という変化は、日本人を含むアジアの人ではまれです。そのため、日本では「HFEだけ調べれば十分」とは言えません。ヨーロッパ系の多くの集団では、C282Yを2本ともにもつ人は約200〜500人に1人とされています。一方、北米に住むアジア系の人では約25,000人に1人とされています[2]。

日本の全国調査では、原因がわからなかった鉄過剰症76例のうち27例で遺伝子を調べ、HJV・TFR2・SLC40A1(フェロポルチン)の遺伝子に変化が見つかりました[4]。さらにFTH1遺伝子の変化による顕性遺伝の鉄過剰症は、日本の家系で最初に報告されています[6]。HFE以外の遺伝子も一緒に調べられることが、日本の方がこのパネル検査を受ける大きな意味です。

2. フェリチン・トランスフェリン飽和度が高いと言われた方へ:遺伝子検査を考える目安

フェリチンが高いだけでは、ヘモクロマトーシスとは決まりません。遺伝子検査を考えるのは、トランスフェリン飽和度も高く、ほかの原因で説明できない状態が続くときです[1]。

フェリチンが高くなる原因は、鉄の病気だけではない

フェリチンは体にたまった鉄の量の目安になりますが、鉄以外の理由でも上がります。EASLのガイドラインは、お酒の飲みすぎやメタボリックシンドロームのような脂肪肝に関係する状態、ウイルス性肝炎、炎症、腫瘍、血液の病気などでもフェリチンが上がることを示し、フェリチンは「特異的でない」指標だとしています[1]。

また、遺伝性高フェリチン血症・白内障症候群のように、ヘモクロマトーシスとは別の遺伝性の病気でフェリチンが高くなることもあります。この病気の原因のFTL遺伝子は、このページの検査の対象には入っていません。

遺伝子検査を考える目安

EASLのガイドラインは、次のような方でヘモクロマトーシスを疑い、遺伝子検査を勧めています[1]。

🩸 ヘモクロマトーシスを疑う血液検査の目安(EASL 2022)

対象 トランスフェリン飽和度 血清フェリチン
女性 45%を超える 200µg/Lを超える
男性 50%を超える 300µg/Lを超える

※EASLの診療ガイドライン(2022年)[1]による。数字は疑うための目安で、この値だけで診断が決まるわけではありません。

ガイドラインは、ほかに説明のつかないトランスフェリン飽和度の高い状態が続く方や、若いうちから鉄過剰の血液検査の異常と症状がある方にも、遺伝子検査を勧めています。とくに若い方では、HFE以外のまれな遺伝子の変化も調べることが勧められています[1]。遺伝子検査で原因がはっきりすると、鉄を抜く治療を始めるかどうか、どれくらい続けるかの判断がしやすくなり、次の一手が決まります。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

鉄過剰の原因が遺伝子にあるかを確かめたい方、ご家族にヘモクロマトーシスの方がいる方に向く検査です。一方で、鉄がたまる原因によっては、別の検査のほうが向いていることもあります。

この検査が向いている方

  • ●トランスフェリン飽和度とフェリチンが高く、輸血やお酒など、ほかの原因が見当たらない方
  • ●若いうちから鉄過剰があり、肝臓・心臓・ホルモンなどの症状がある方
  • ●ほかの検査でヘモクロマトーシスを疑われたものの、原因の遺伝子がわかっていない方
  • ●ご家族(親・きょうだい・お子さん)にヘモクロマトーシスの方がいる方

この検査より別の検査が向いている場合

🔍 鉄がたまる原因に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
トランスフェリン飽和度とフェリチンが高く、ほかの原因がない このページの検査(ヘモクロマトーシスの7遺伝子)
生まれつきの貧血があり、輸血などで鉄がたまっている 貧血そのものの原因を調べる検査:骨髄不全症候群パネル/先天性赤血球形成異常性貧血(CDA)パネル/遺伝性鉄芽球性貧血の遺伝子検査/αサラセミアの遺伝子検査
脳に鉄がたまり、体の動きや神経の症状がある 脳内鉄沈着神経変性症(NBIA)遺伝子検査パネル
フェリチンだけが高い(遺伝性高フェリチン血症・白内障症候群など)、無セルロプラスミン血症が疑われる 原因の遺伝子がこのパネルに入っていないため、遺伝カウンセリングで検査を選びます

※どの検査が合うかは、血液検査・画像検査・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

ご家族にヘモクロマトーシスの方がいる方

あなたの1回の検査結果が、ご家族の健康を守る手がかりになります。常染色体潜性(劣性)遺伝の型では、ご両親がともに変化を1つずつもっている場合、きょうだいが同じ組み合わせ(変化を2つ)をもつ確率は4分の1です[2]。EASLのガイドラインは、ヘモクロマトーシスの方の大人の第一度近親者(親・きょうだい・子)に、説明と同意のうえで遺伝子検査を行うことを勧めています[1]。

\ あなたの結果が、ご家族の健康を守る手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

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4. 調べる7つの遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、ヘモクロマトーシスに関わる7つの遺伝子を一度に調べます。遺伝子によって型と遺伝のしかたが違い、ご家族への伝わり方も変わります。

🧬 調べる遺伝子と関係する病気

遺伝子 関係する病気(型) 遺伝のしかた 特徴
HFE ヘモクロマトーシス1型(HFE関連) 常染色体潜性(劣性) 欧米でいちばん多い型。日本人ではまれ
HJV 若年性ヘモクロマトーシス(2型) 常染色体潜性(劣性) 若い年代から強い鉄過剰を起こしやすい。日本の全国調査でも変化が見つかっている
HAMP 若年性ヘモクロマトーシス(2B型) 常染色体潜性(劣性) ヘプシジンそのものの遺伝子
TFR2 ヘモクロマトーシス3型 常染色体潜性(劣性) 日本の全国調査でも変化が見つかっている
SLC40A1 ヘモクロマトーシス4型、フェロポルチン病 常染色体顕性(優性) フェロポルチン病は症状や検査の特徴がほかと違い、新しい分類ではヘモクロマトーシスと分けて扱われる
FTH1 ヘモクロマトーシス5型/NBIA9(脳に鉄がたまる神経の病気) 常染色体顕性(優性) 5型は日本の家系で最初に報告された
BMP2 HFE関連ヘモクロマトーシスの重さを変える遺伝子(修飾遺伝子)/低身長・顔の特徴・骨格の異常を伴う病気、短指症A2型 骨格の病気は常染色体顕性(優性)。鉄過剰では、単独で病気を起こすのではなく重さに影響する遺伝子として扱われる HFEの変化がある方で鉄のたまり方に関わる

※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気と遺伝のしかたは、OMIMの遺伝子と病気の対応(NCBI Gene・PanelAppで確認、2026年10月)と文献[3][5][6]による。

型によって、ご家族への伝わり方が違う

HFE・HJV・HAMP・TFR2による型は常染色体潜性(劣性)遺伝で、対になった2本の遺伝子の両方に変化があると発症します。一方、遺伝性ヘモクロマトーシスの中でも4型(SLC40A1)は常染色体顕性(優性)遺伝です[5]。FTH1による型も顕性遺伝で、日本の家系では7人中4人に同じ変化が見つかっています[6]。顕性遺伝の型では、親から子へ伝わる確率はお子さん1人ごとに2分の1です。

FTH1の別の変化は、子どもの脳に鉄がたまる神経の病気(NBIA9)の原因にもなります。同じ遺伝子でも、変化の場所によって起こる病気が違うことがある、という例です。くわしくはFTH1遺伝子のページで解説しています。FTH1の5型は、鉄の量に応じてフェリチンの作られ方を変える鉄応答エレメント(IRE)という部分の変化で起こります[6]。

HFE(C282Y)について:変化があっても全員が発症するわけではない

C282Yを2本ともにもっていても、多くの方は症状のあるヘモクロマトーシスにはなりません。GeneReviewsによると、3つの長期の住民研究で、C282Yを2本ともにもつ人のうちフェリチンが高くなったのは38〜50%、症状のあるヘモクロマトーシスになったのは10〜33%でした。ある研究では、症状のあるヘモクロマトーシスになったのは男性28%に対して女性1%と、男性でずっと多い結果でした[2]。

このように、変化をもっていても発症しない人がいることを「浸透率が100%ではない」といいます。C282YとH63Dのように、2本の遺伝子に別々の変化をもつ状態は複合ヘテロ接合と呼ばれます。どの組み合わせで、どの程度の鉄過剰になりうるかは、遺伝カウンセリングで結果とあわせてご説明します。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、7つの遺伝子の小さな変化と、一部の大きな欠失・重複です。輸血などによる二次性の鉄過剰や、ほかの遺伝子が原因の病気はわかりません。遺伝子検査のメリットとデメリットもあわせてご覧ください。

わかること

  • ●7つの遺伝子のタンパク質を作る部分(エクソン)と、その境目(スプライス部位)の、塩基1つの変化や小さな挿入・欠失
  • ●遺伝子1つ全体の欠失・重複(血液・頬の粘膜の検体)と、2つ以上続くエクソンの欠失・重複(血液の検体のみ)。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します

わからないこと

  • ●二次性の鉄過剰:輸血・鉄剤・肝臓の病気などで鉄がたまっている場合、この検査では見つかりません。
  • ●調べていない遺伝子:7つの遺伝子以外が原因の鉄の病気(FTLやセルロプラスミンの遺伝子など)は調べていません。
  • ●見つけにくい変化:染色体の一部の入れ替わり(転座・逆位)、遺伝子の働きを調節する部分や、エクソンから離れたイントロンの奥の変化、単一のエクソンだけの欠失・重複は、ふつうは見つかりません。体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)を見つける目的の検査でもありません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で検出できない原因が残る可能性があります。また、変化が見つかっても、必ず発症するとは限りません(第4章)。
🔬 検査の精度について(専門的な内容)

調べる部分の99%以上を、それぞれ20回以上読み取ります(カバレッジ:≥99% at 20x)。同じ場所を何度も読むほど、読み間違いと本当の変化を見分けやすくなります。読み取りの質が基準に届かない部分は、別の方法(サンガー法)で確かめます。

6. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけを郵送やメールでお送りすることはありません。

原因が見つかったとき:診断の確定と、治療を始める判断

原因の遺伝子がわかると診断がはっきりし、鉄を抜く治療を始める判断につながります。EASLのガイドラインでは、治療の中心は瀉血で、はじめは1〜2週間ごとに行い、フェリチン50µg/Lを目標にします(鉄が足りなくならないよう、それより下げすぎない)。その後は、フェリチンを50〜100µg/Lくらいに保つ方法が示されています。瀉血ができない場合には、利益と危険をよく考えたうえで鉄キレート療法を始めることもあります[1]。

肝硬変のある方には、鉄が減ったあとも6か月ごとの肝臓がんの検査が勧められています[1]。なお、関節の症状は瀉血ではよくならないとされています[1]。当院では瀉血などの治療は行っていないため、治療は肝臓・血液の専門の医療機関で受けていただきます。当院では、結果をもとに、どの専門の医療機関へつなぐかをご説明します。

ご家族への影響と、ご家族の検査

潜性遺伝の型と確定した場合、きょうだいは4分の1の確率で同じ組み合わせをもちます。ご本人のお子さんは、変化を1つ受け継ぐ保因者になります。顕性遺伝の型(SLC40A1・FTH1)では、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎます。

EASLのガイドラインは、まれな遺伝子の変化が見つかった方の大人の第一度近親者に、同じ変化を調べることを勧めています[1]。GeneReviewsも、C282Yを2本もつ方の18歳以上のきょうだいに遺伝子検査を勧め、同じ組み合わせだったきょうだいにはトランスフェリン飽和度とフェリチンを測るとしています[2]。ご家族の中で原因がわかっていれば、ほかのご家族は同じ場所を調べることで、自分の状態を早く確かめられます。

原因が見つからなかったとき・VUSだったとき

7つの遺伝子に原因が見つからなかった場合は、二次性の鉄過剰や、このパネルに入っていない遺伝子の病気を、血液検査・画像検査とあわせて考えます。鉄過剰が続く場合は、主治医のもとでトランスフェリン飽和度とフェリチンの経過を見ていくことが大切です。

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気に関わる変化が見つかったときの扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

妊娠・出産を考えている方

潜性遺伝の型では、ご夫婦がともに保因者のときに、お子さんが変化を2つ受け継ぐ可能性があります。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の遺伝子一覧には、HFE・HJV・HAMP・TFR2が入っています(SLC40A1・FTH1・BMP2は入っていません)。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラスもあります(対象かどうかは遺伝子一覧でご確認ください)。

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行うかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えるため、妊娠を考えている段階からご相談ください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

7. 日本の制度(2026年10月時点)

ヘモクロマトーシスは、国の指定難病(告示番号1〜348)には含まれていません(厚生労働省の指定難病の一覧で、2026年10月時点で確認)。指定難病の一覧には「遺伝性鉄芽球性貧血」や「脳内鉄沈着神経変性症」がありますが、これらはヘモクロマトーシスとは別の病気です。

指定難病ではなくても、病名がはっきりすると、どの診療科で何を定期的に調べればよいかが決まります。制度の対象かどうかは改定されることがあるため、最新の情報は難病情報センターや厚生労働省のページでご確認ください。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液や頬の内側の粘膜の検体なら、オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを受けてから、検体を当院へお送りいただけます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・オンライン可
▶
検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 BMP2・FTH1・HAMP・HFE・HJV・SLC40A1・TFR2(7遺伝子)
調べる内容 塩基配列、欠失・挿入(料金に含まれます)
検体 血液(紫色のキャップのEDTA採血管4mL×2本)、抽出済みのDNA(EBバッファー中3µg)、頬の内側の粘膜(スワブ)、唾液(ご希望により採取キットをお送りします)
結果までの期間 2〜3週間
検査費用 税込330,000円
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります):55,000円/VUS除外(VUSを報告に含めない):無料
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれでも可能(血液の場合は全国の提携医療機関で採血)

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、これからの健康管理に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。唾液や頬の粘膜の検体なら、オンライン診療で全国から受けられます。

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9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【知っていれば、備えられる病気】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。そのうえでヘモクロマトーシスは、遺伝の病気の中でも「知っていれば備えられる」ことがはっきりしている病気だと考えています。肝硬変になる前に治療を始めた方の寿命はふつうの方と変わらないとされており、原因がわかることが、そのまま次の行動につながるからです。

日本では鉄過剰の多くが輸血などによるもので、遺伝性のものはまれです。だからこそ、「フェリチンが高い」と言われたまま原因がわからずにいる方や、HFEを調べて何も見つからなかった方こそ、HFE以外の遺伝子まで一度に確かめる意味があると考えています。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度わかったことは、ご自身の健康管理にも、きょうだいやお子さんが自分のことを考えるときにも、ずっと使える情報になります。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知る・知らないのどちらを選ばれても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ヘモクロマトーシスは指定難病ですか?

いいえ。ヘモクロマトーシスは、国の指定難病(告示番号1〜348)には含まれていません(厚生労働省の指定難病の一覧で、2026年10月時点で確認)。指定難病にある「遺伝性鉄芽球性貧血」や「脳内鉄沈着神経変性症」は、ヘモクロマトーシスとは別の病気です。

Q2. 輸血でたまる鉄過剰とはどう違いますか?

ヘモクロマトーシスは、生まれつきの遺伝子の変化によって腸から鉄を吸収しすぎる病気です。輸血などで外から入った鉄がたまる場合は二次性の鉄過剰として区別され、この遺伝子検査では見つかりません。日本の全国調査では、鉄過剰症1,109例のうち93.1%が輸血による鉄過剰と考えられました。

Q3. ヘモクロマトーシスで糖尿病になるのはなぜですか?

すい臓のインスリンを作る細胞の集まり(膵島)に鉄がたまることが関係するとされています。GeneReviewsによると、HFE関連のヘモクロマトーシスで肝硬変や肝不全のある方の約50%が糖尿病を合併しています。一方で、ヘモクロマトーシスの方の糖尿病でいちばん多いのは2型糖尿病で、その割合は一般の方と同じくらいとされています。

Q4. ヘモクロマトーシスの治療法は?

治療の中心は、くり返し採血して鉄を抜く瀉血です。欧州肝臓学会のガイドライン(2022年)では、はじめは1〜2週間ごとに行ってフェリチン50µg/Lを目標にし、その後は50〜100µg/Lくらいに保つ方法が示されています。瀉血ができない場合は、鉄キレート療法を考えることもあります。当院では治療は行っていないため、肝臓・血液の専門の医療機関で受けていただきます。

Q5. 何歳ごろに発症しますか?

型によって違います。HFE関連の型は鉄が少しずつたまり、症状のあるヘモクロマトーシスになるのは男性でずっと多いとされています。若年性ヘモクロマトーシスは若い年代から強い鉄過剰を起こしやすく、96例をまとめた報告では、発症年齢の中央値は25歳(4〜60歳)でした。

Q6. HFE遺伝子だけ調べれば十分ですか?

日本人では十分とは言えません。欧米で多いHFEのC282Yはアジアの人ではまれで、日本の全国調査で見つかったのはHJV・TFR2・SLC40A1(フェロポルチン)の変化でした。この検査では、HFEを含む7つの遺伝子を一度に調べます。

Q7. 家族も検査を受けたほうがよいですか?

欧州肝臓学会のガイドラインは、ヘモクロマトーシスの方の大人の第一度近親者(親・きょうだい・子)に、説明と同意のうえで遺伝子検査を行うことを勧めています。潜性遺伝の型では、ご両親がともに変化を1つずつもっている場合、きょうだいが同じ組み合わせをもつ確率は4分の1です。ご家族の中で原因がわかっていれば、同じ場所を調べて確かめられます。

Q8. 検査で異常が見つからなかったら、ヘモクロマトーシスではないのですか?

そうとは言い切れません。この検査は7つの遺伝子を調べるもので、ほかの遺伝子が原因の病気や、輸血などによる二次性の鉄過剰はわかりません。鉄過剰が続く場合は、主治医のもとでトランスフェリン飽和度とフェリチンの経過を見ながら、ほかの原因を考えていきます。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからに備える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ヘモクロマトーシスの原因がわかれば、鉄を抜く治療を始める判断や、肝臓の定期的な検査だけでなく、きょうだいやお子さんの検査、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では、検査の前後の遺伝カウンセリングから、保因者検査、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Zoller H, Schaefer B, Vanclooster A, et al. EASL Clinical Practice Guidelines on haemochromatosis. J Hepatol. 2022;77(2):479-502. [DOI: 10.1016/j.jhep.2022.03.033]
  • [2] Barton JC, Parker CJ. HFE-Related Hemochromatosis. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle (Updated 2024 Apr 11). [NCBI Bookshelf NBK1440]
  • [3] Girelli D, Busti F, Brissot P, et al. Hemochromatosis classification: update and recommendations by the BIOIRON Society. Blood. 2022;139(20):3018-3029. [DOI: 10.1182/blood.2021011338]
  • [4] Ikuta K, Hatayama M, Addo L, et al. Iron overload patients with unknown etiology from national survey in Japan. Int J Hematol. 2017;105(3):353-360. [DOI: 10.1007/s12185-016-2141-9]
  • [5] Takami A, Tatsumi Y, Sakai K, et al. Juvenile Hemochromatosis: A Case Report and Review of the Literature. Pharmaceuticals (Basel). 2020;13(8):195. [DOI: 10.3390/ph13080195]
  • [6] Kato J, Fujikawa K, Kanda M, et al. A mutation, in the iron-responsive element of H ferritin mRNA, causing autosomal dominant iron overload. Am J Hum Genet. 2001;69(1):191-197. [DOI: 10.1086/321261](PMID: 11389486)

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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