この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

家族性高コレステロール血症(FH)は、生まれつき血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高くなる、遺伝する病気です。日本では約300人に1人とされる身近な病気で、症状がないまま動脈硬化が進み、治療しないと若いうちに心筋梗塞を起こしやすくなります[2]。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。原因の遺伝子がわかれば、早くから治療を始める根拠になり、ご家族(お子さんやきょうだい)が自分の状態を確かめる手がかりにもなります。このページでは、診断基準・寿命・子どもに遺伝する確率と、LDLR・APOB・PCSK9・LDLRAP1の4遺伝子を調べる遺伝子検査でわかること、わかったあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 家族性高コレステロール血症の遺伝子検査で何がわかりますか?
LDLコレステロールが高い原因が、生まれつきの遺伝子の変化(LDLR・APOB・PCSK9・LDLRAP1の4遺伝子)によるものかを調べます。原因がわかれば、FHの診断が確定し、ご家族を順に調べることもできます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
健診でLDLコレステロールがとても高いと言われた方、親やきょうだいが若くして心筋梗塞になった方、アキレス腱が太い・黄色腫がある方、コレステロールの遺伝がお子さんに伝わるか気になる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の粘膜などで、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。常染色体顕性遺伝の型で片方の遺伝子に病的な変化がある場合、お子さんがその変化を受け継ぐ確率は2分の1です。LDLRAP1による潜性遺伝の型では、ご本人とパートナーの遺伝子の状態によって確率が変わります。ご家族の検査、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 家族性高コレステロール血症(FH)とは:生まれつきLDLコレステロールが高い、遺伝する病気
家族性高コレステロール血症は、血液中のLDLコレステロールを肝臓に取り込むしくみが、生まれつきの遺伝子の変化でうまく働かず、子どものころからLDLコレステロールが高い状態が続く病気です。英語の familial hypercholesterolemia の頭文字をとって、FHと呼ばれます。食べすぎや運動不足で起こる「ふつうの高コレステロール血症」とは原因が違い、生活習慣を整えるだけでLDLコレステロールを目標まで下げられる人は、ほとんどいないとされています。
LDLコレステロールは、血液の中をリポタンパク質という粒に包まれて運ばれています。この粒を細胞が取り込むときの「受け取り口」や、その働きを調節するたんぱく質の設計図に変化があると、LDLコレステロールが血液中にたまり、血管の壁に沈着して動脈硬化が進みます。病気のしくみ・国際的な診断基準の比較・新しい治療薬の詳細は、家族性高コレステロール血症(FH)の詳しい解説にまとめています。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
何人に1人?日本で多い遺伝の病気
日本動脈硬化学会の成人FH診療ガイドライン(2022年版)では、片方の遺伝子に変化があるFH(ヘテロ接合体)は日本で約300人に1人、患者さんは30万人以上と推定されています。北陸地方の解析では約208人に1人という報告もあります[2]。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsも、世界的にはヘテロ接合体を約250人に1人としています[1]。
一方、両方の遺伝子に変化がある重い型(ホモ接合体)はまれで、GeneReviewsでは16万〜40万人に1人とされ[1]、難病情報センターは日本のホモ接合体の患者さんを340人程度と推定しています(2026年10月時点で確認)。身近な病気であるにもかかわらず、日本の正確な診断率の報告はなく、診断されていない人が多いと考えられています[2]。
治療しないとどうなる?心筋梗塞と寿命
FHは、治療しないと冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)を若いうちに起こしやすくなりますが、早くから治療を続ければ、そのリスクを大きく下げられることがわかっています。日本のガイドラインでは、FHの方の冠動脈疾患のリスクはFHでない方の10〜20倍、治療していないヘテロ接合体では約13倍とされています[2]。GeneReviewsでは、治療していない場合、男性は50歳までに50%、女性は60歳までに30%が、命にかかわる、またはかかわらない冠動脈のイベントを起こすとされています[1]。
「家族性高コレステロール血症は寿命が短いのか」と心配される方は多いのですが、大切なのは、寿命が最初から決まっているわけではないことです。オランダで子どものころからスタチン(コレステロールを下げる薬)を飲んできたFHの214人を約20年追いかけた研究では、39歳までに心血管の病気を起こした人は1%で、同じFHでも子どものころに治療を受けられなかった親の世代の26%を大きく下回りました。心血管の病気で亡くなった人も、子どもの世代は0%、親の世代は7%でした[5]。「治るかどうか」でいえば、遺伝子の変化そのものはなくなりませんが、治療を続けることで、心筋梗塞を防ぎながら暮らしていくことをめざせる病気です。
症状:アキレス腱が太くなる・黄色腫・角膜輪
FHの多くの方は、LDLコレステロールが高いこと以外に自覚する症状がありません。そのため、健診の血液検査で初めて気づかれることが多い病気です。年齢とともに、次のような所見が出てくることがあります[1][2]。
- ●アキレス腱が太くなる(アキレス腱肥厚):腱にコレステロールがたまってできる腱黄色腫のひとつです。日本の診断基準では、X線で男性8.0mm以上・女性7.5mm以上、超音波で男性6.0mm以上・女性5.5mm以上を肥厚としています[2]。
- ●黄色腫:手の甲・肘・膝などの腱や皮膚に、黄色っぽいしこりができることがあります[2]。
- ●角膜輪(目の黒目のふちの白い輪):GeneReviewsでは、45歳未満で見られる場合はFHを疑うとされています[1]。
子どものFH(ヘテロ接合体)では、腱黄色腫や若いうちの冠動脈疾患はまれです。子どもに皮膚や腱の黄色腫がある場合は、重い型(ホモ接合体)を強く疑います[3]。
家族性高コレステロール血症の診断基準と、遺伝子検査の位置づけ
日本動脈硬化学会の診断基準(2022年版)では、成人(15歳以上)は「LDLコレステロール」「黄色腫」「家族歴」の3項目のうち2項目以上でFHと診断し、FHの原因となる遺伝子の病的な変化が見つかった場合も、それだけでFHと診断します。
📋 成人FH(15歳以上)の診断基準(日本動脈硬化学会 2022年版)
※ほかの原因による脂質異常症を除いたうえで判断します。薬で治療中の方は、治療を始めるきっかけになった値で判断します。日本動脈硬化学会の成人FH診療ガイドライン[2]による。
15歳未満の子どもでは基準が違い、治療していないLDLコレステロールが140mg/dL以上(複数回確認)で、親かきょうだいにFHがいる場合などにFHと診断します。子どもでも、FHの原因遺伝子の病的な変化があればFHと診断されます[3]。
日本のガイドラインは、臨床的にFHと診断された方で遺伝子の変化が見つかる割合を約60〜80%としています[2]。血液検査の数値だけでは「FHなのか、ふつうの高コレステロール血症なのか」の境目がはっきりしない方がいるため、遺伝子検査で原因を確かめることに意味があります。
2. 家族性高コレステロール血症は遺伝する?子どもに伝わる確率
FHの多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、親の一方がFHの場合、お子さん1人あたり2分の1の確率で原因の遺伝子の変化を受け継ぎます[1][3]。「LDLコレステロールは遺伝するのか」という疑問には、FHの場合は「遺伝する」とはっきり答えられます。
LDLR・APOB・PCSK9の変化によるFHは常染色体顕性(優性)遺伝で、対になった2本の遺伝子のうち1本に変化があれば発症します。性別には関係せず、上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。一方、LDLRAP1の変化によるものは常染色体潜性(劣性)遺伝で、2本とも変化があるときに発症します[1]。
片方だけ(ヘテロ接合体)と両方(ホモ接合体)の違い
2本ある遺伝子の片方だけに変化がある状態をヘテロ接合といいます。同じ遺伝子の両方に同じ病的な変化がある状態がホモ接合、両方に異なる病的な変化がある状態が複合ヘテロ接合です。臨床上の「ホモ接合体FH」には、複合ヘテロ接合や、異なる原因遺伝子の変化をあわせもつ型も含まれます。病気の重さは、変化の数だけでなく、遺伝子や変化の種類によっても異なります。
🧬 ヘテロ接合体とホモ接合体の違い
※頻度はガイドライン[2]・GeneReviews[1]・難病情報センター、LDLコレステロールと特徴は文献[1][2][3]、制度は難病情報センター・日本動脈硬化学会による(2026年10月時点)。
親がFHなら、お子さんに伝わる確率は2分の1
親の一方がFHのヘテロ接合体なら、お子さんがFHになる確率は2分の1です[1][3]。FHは子どものうちに見つけて、必要なら10歳ごろから薬を始められる病気なので(第6章)、親がFHとわかっていることは、お子さんの診断の大きな手がかりになります。反対に、お子さんが先に見つかり、それをきっかけに親御さんのFHがわかることもあります[3]。
健診でLDLが高いのは体質?ふつうの高コレステロール血症との違い
LDLコレステロールが高い人のすべてがFHというわけではありません。米国の複数の研究集団を調べた報告では、LDLコレステロールが190mg/dL以上だった1,386人のうち、FHの原因遺伝子の変化が見つかったのは24人(1.7%)でした[4]。多くの方は、たくさんの小さな遺伝の違い(多遺伝子性)と、食事などの生活習慣が重なって高くなっていると考えられます。
ただし、同じ報告では、LDLコレステロールが190mg/dL以上でも遺伝子の変化がない人の冠動脈疾患のリスクは、LDLコレステロール130mg/dL未満で変化のない人の6.0倍だったのに対し、変化がある人では22.3倍でした。同じLDLの値でも、FHの遺伝子の変化をもつ人のほうが冠動脈疾患のリスクが高いと報告されています[4]。生まれたときからLDLが高い期間が長いぶん、血管がLDLにさらされてきた量(コレステロール・イヤー(累積LDL曝露量))が多くなるためと考えられています。「体質だから仕方ない」「生活習慣病だから食事で何とかなる」で済ませず、原因を確かめる意味はここにあります。
3. どんな人がこの検査を受けるとよいか
名前がつくと、次の一手が決まります。FHと確定すれば、治療をいつ始めるか、どこまで下げるか、ご家族の誰を調べるかがはっきりします。次のような方に向く検査です。
- ●健診でLDLコレステロールがとても高いと言われた方(成人で治療前180mg/dL以上が目安。20代・30代で高いと言われた方も)[2]
- ●親・きょうだい・子どもが若くして心筋梗塞や狭心症になった方(男性55歳未満・女性65歳未満)[2]
- ●アキレス腱が太いと言われた方、腱や皮膚に黄色腫がある方
- ●ご家族がFHと診断されている方、お子さんのLDLコレステロールが高いと言われた方
- ●数値が境界で、FHかどうか決めきれないと言われた方
- ●結婚・妊娠の前に、ご自身やパートナーのことを知っておきたい方
米国心臓病学会誌の専門家パネル(2018年)も、LDLコレステロールが高く、家族歴がある方には遺伝子検査を勧め、原因がわかった場合は第一度近親者への検査を勧めています[6]。
「自分もなるかもしれない」と不安な方へ
親やきょうだいが若くして心筋梗塞になったり、FHと診断されたりした方の中には、「自分も同じように倒れるのでは」という不安を抱えながら暮らしている方もいます。FHは、ほかの多くの遺伝の病気と違って、血液検査でLDLコレステロールを測ればある程度の見当がつき、わかれば治療で備えられる病気です。
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、ご自身がその変化を受け継いでいるかを、同じ場所だけ調べて確かめられます(予測的検査)。受け継いでいないとわかれば、ご家族と同じ原因によるFHを心配し続けなくてよくなります。ただし、それでLDLコレステロールや心臓の病気の心配がすべてなくなるわけではないので、ふつうの健診は続けます。受け継いでいるとわかった場合は、第6章のように治療や見張りの計画を立てられます。知らないでいることも選べます。検査の前後で、臨床遺伝専門医と時間をかけて考えていただけます。
先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、これからの人生を計画したいと考える方もいます。病気は違いますが、英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[7]。FHは、わかれば心筋梗塞を防ぐための行動につなげられる病気です。
この検査より別の検査が向いている場合
LDLコレステロールが高く、FHを確かめたいなら、まずこの検査です。症状やご家族の病気によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は、当院で受けられる検査の種類です。
🔍 目的に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、検査値・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
4. 調べる4つの遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、家族性高コレステロール血症に関係する4つの遺伝子(LDLR・APOB・PCSK9・LDLRAP1)を一度に調べます。GeneReviewsによると、遺伝子の原因がわかるFHの多くはLDLRの変化によるもので、原因の遺伝子がわからない方も約40%います[1]。
🧬 家族性高コレステロール血症の遺伝子検査で調べる4遺伝子
※対象遺伝子は当院の検査内容による。遺伝のしかたと割合はGeneReviews[1]による(約40%は原因遺伝子が不明)。
LDLR・APOB・PCSK9の変化は、片方の遺伝子だけでFHを起こします。LDLRAP1の変化は、両方の遺伝子に変化があるときに重い高コレステロール血症を起こし、GeneReviewsでは100万人に1人未満とまれな型です[1]。どの遺伝子のどの変化かがわかると、ご家族の検査で調べる場所が決まります。
5. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、4つの遺伝子の中の小さな変化(1文字の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子全体や複数のエクソンにわたる大きな欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●見つけにくい変化:1つのエクソンだけの欠失・重複は、ふだんの解析では見つからないことがあります。また、よく似た配列がゲノムの別の場所にある部分は、読み取りが難しいことがあります。
- ●調べていない場所:遺伝子の働きを調節する場所(プロモーター)の多くや、エクソンから離れたイントロンの奥(深部イントロン変異)、染色体の組み替わり(転座・逆位)、繰り返し配列ののびは調べていません。
- ●モザイク・がん組織:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つける目的の検査ではありません。腫瘍の組織を調べる検査にも使えません。
- ●4遺伝子以外の原因:多くの小さな遺伝の違いが重なって起こる高コレステロール血症(多遺伝子性)や、まだわかっていない遺伝子による高コレステロール血症は、この検査では判定できません。
- ●陰性でも否定はできません:臨床的にFHと診断された方でも、遺伝子の変化が見つからない方が約20〜40%います[1][2]。
6. 病的変異が見つかったら、次にできること
FHは、わかったあとにできることがはっきりしている病気です。原因の遺伝子の変化が見つかったら、読む人の立場ごとに、次のことを考えられます。治療は、脂質や循環器の専門の医療機関で受けていただきます。
① ご本人:早く治療を始めるほど、心筋梗塞を防ぎやすい
FHと確定すると、治療を始める根拠がはっきりします。日本のガイドラインでは、ヘテロ接合体のFHではスタチンを第一選択薬とした厳格な脂質管理が勧められています[2]。日本動脈硬化学会によると、多くの方はスタチンの増量や2種類以上の薬の組み合わせで十分な効果が得られ、重い方には注射薬(PCSK9阻害薬)、最も重い方にはLDLアフェレーシスが使われます。難病情報センターでは、ホモ接合体の治療として、飲み薬に加えてPCSK9阻害薬・ANGPTL3阻害薬・MTP阻害薬やLDLアフェレーシスが挙げられています(2026年10月時点で確認)。LDLコレステロールをどこまで下げるかの目標値は、ご本人の状態に合わせて主治医と決めます。
血管がLDLにさらされる量は「濃度×時間」でたまっていくので、同じ治療でも早く始めるほど、生涯にたまる量を少なくできます(コレステロール・イヤーの考え方)。子どものころから治療を始めた人で、39歳までの心血管の病気が1%にとどまったという研究(第1章)は、その裏づけのひとつです[5]。禁煙・食事・運動など、生活習慣を整えることも、薬と並んで大切です。
② 症状のないお子さん:子どもの診断と、治療を始める年齢
日本動脈硬化学会の小児FH診療ガイドライン(2022年版)では、FHの可能性が高いお子さんは遅くとも10歳までにLDLコレステロールを調べ、LDLコレステロール180mg/dL以上が続く場合は10歳で薬物療法を考え、第一選択薬はスタチン、管理目標は140mg/dL未満とされています[3]。GeneReviewsでは、2歳から脂質の値を見ていくこと、スタチンは8歳ごろから使えることが記載されています[1]。親の原因遺伝子がわかっていると、お子さんが同じ変化を受け継いでいるかを確かめられ、診断の迷いが減ります。
③ ご家族を順に調べる(カスケードスクリーニング)
あなたの1回の検査結果が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知る手がかりになります。ご家族の中で原因がわかったら、血縁者は同じ場所だけを調べて、受け継いでいるかどうかを確かめられます。これをカスケードスクリーニングといいます。日本のガイドラインは、FHと診断されたら血縁者のスクリーニングを常に考えるべきとし[2]、米国心臓病学会誌の専門家パネルも、原因がわかった場合は第一度近親者への検査を勧めています[6]。お子さんが先に見つかったときに親を調べる「リバースカスケード」も大切とされています[3]。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のもとで行います。
④ 結婚・妊娠を考えるとき:パートナーもFHだったら
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。FHであることは、結婚や妊娠をあきらめる理由にはなりません。そのうえで、知っておくと選べることが増える事実があります。
ご夫婦がともにFHのヘテロ接合体の場合、お子さんが重い型(ホモ接合体)で生まれる確率は4分の1です。ヘテロ接合体になる確率は2分の1、どちらも受け継がない確率は4分の1です(難病情報センターの解説による。2026年10月時点で確認)。LDLRAP1による潜性の型では、ご夫婦がともに保因者の場合、お子さんが発症する確率は4分の1です[1]。
当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)の対象遺伝子には、LDLRとLDLRAP1が含まれています。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラスもあります。パートナーの方の検査も含めて、妊娠の前から一緒に考えられます。
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんに同じ変化があるかを調べることもできます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ただし、FHの出生前診断を行うかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて慎重に考えることとされており[3]、ご家族ごとの判断になります。妊娠を考えている段階からご相談ください。また、スタチンは妊娠中には使わない薬とされ、妊娠を考えるときは前もって中止を相談します[1]。薬の調整は主治医とご相談ください。自然に妊娠して出産を迎えることも、出生前診断を受けないことも、どれも尊重される選択です。
⑤ 当院でのその後
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明し、ご本人の治療の進め方(専門の医療機関への紹介を含む)、ご家族の検査、結婚や妊娠の計画について、次にどうするかを一緒に考えます。ご家族の検査も、遺伝カウンセリングのうえで当院でお受けしています。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)です。
7. 陰性・VUSだったとき
遺伝子の変化が見つからなくても、FHではないとは言いきれず、LDLコレステロールが高いなら治療は続けます。結果は、陽性・陰性・VUSのどれでも、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明してから、マイページにアップします。
陰性だったとき:治療はやめない
臨床的にFHと診断された方でも、遺伝子の変化が見つからない方が少なくありません(第5章)。そのときは、多遺伝子性の高コレステロール血症や、まだわかっていない原因が考えられます[1]。臨床遺伝専門医としての判断:遺伝子が陰性でも、高いLDLコレステロールそのものが動脈硬化を進めることに変わりはないので、「陰性だったから薬はいらない」とは考えません。また、アキレス腱が太いのにLDLコレステロールがそれほど高くない場合は、脳腱黄色腫症のような別の病気を考えることもあります。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
病気の原因かどうか、まだ判断できない変化をVUSといいます。VUSは、それだけで診断を確定したり、ご家族の発症リスクを判断したりする根拠にはしません。ただし、その変化が病気の原因かどうかを調べるために、ご家族にも同じ変化があるかを検査することがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
8. 日本の制度:家族性高コレステロール血症は指定難病?(2026年10月時点)
家族性高コレステロール血症のうち、指定難病の対象になっているのはホモ接合体(指定難病79)です。ヘテロ接合体は指定難病の対象ではありません。難病情報センターの「家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)(指定難病79)」のページ(情報更新日:令和7年11月)と、日本動脈硬化学会の一般向けページで確認しました。
18歳未満のお子さんでは、小児慢性特定疾病の対象疾病に「家族性高コレステロール血症」が含まれており(先天性代謝異常の群)、厚生労働省の医療意見書にはヘテロ接合体・ホモ接合体の区分があります。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。指定難病の申請や認定の基準は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。遺伝子検査はどこで受けられるのか、と迷われている方も、予約から結果のご説明まで当院で受けていただけます。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取血液・唾液など
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。遺伝カウンセリングの内容もあわせてご覧ください。ご来院の方は診療時間・アクセスをご確認ください。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【「症状がないから大丈夫」ではなく、わかったから備えられる】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。家族性高コレステロール血症は、症状がないまま進むからこそ、「自分は元気だから」「健診の数字が少し高いだけ」と後回しにされやすい病気だと考えています。けれども、この病気は、わかれば治療を始められ、ご家族を順に調べることもできる病気です。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
仕事、結婚や出産、ご家族との話し合い。知ったうえでこれからを計画したい方には、パートナーの保因者検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 家族性高コレステロール血症は治りますか?
遺伝子の変化そのものはなくならないため、完治する病気ではありません。ただし、スタチンなどの薬でLDLコレステロールを下げ続けることで、心筋梗塞などを防ぎながら暮らすことをめざせます。子どものころから治療を始めた方で、39歳までに心血管の病気を起こした人が1%にとどまったというオランダの研究があります。
Q2. 家族性高コレステロール血症の寿命は短くなりますか?
治療しない場合、男性は50歳までに50%、女性は60歳までに30%が冠動脈のイベントを起こすとされています。一方で、早くから治療を続ければリスクを大きく下げられることがわかっており、寿命が最初から決まっているわけではありません。
Q3. 家族性高コレステロール血症は難病指定されていますか?難病申請はできますか?
指定難病の対象はホモ接合体(指定難病79)で、ヘテロ接合体は対象ではありません(2026年10月時点)。18歳未満では、小児慢性特定疾病の対象疾病に家族性高コレステロール血症が含まれています。申請や認定の条件は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
Q4. 家族性高コレステロール血症は何人に1人ですか?
日本動脈硬化学会のガイドラインでは、ヘテロ接合体は日本で約300人に1人とされています。両方の遺伝子に変化があるホモ接合体はまれで、16万〜40万人に1人とされています。
Q5. 家族性高コレステロール血症の遺伝子検査はどこで受けられますか?費用は?
当院では、LDLR・APOB・PCSK9・LDLRAP1の4遺伝子を調べる検査を、税込330,000円・結果まで2〜3週間でお受けしています。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。唾液・頬の粘膜の検体なら、オンライン診療でも受けられます。
Q6. 子どもは何歳から検査や治療を考えますか?
日本動脈硬化学会の小児FH診療ガイドラインでは、FHの可能性が高いお子さんは遅くとも10歳までにLDLコレステロールを調べ、180mg/dL以上が続く場合は10歳で薬物療法を考えるとされています。親の原因の遺伝子がわかっていれば、お子さんが同じ変化を受け継いでいるかを確かめられます。
Q7. 家族性高コレステロール血症は結婚や妊娠に差し支えますか?
結婚や妊娠をあきらめる理由にはなりません。知っておくとよいのは、ご夫婦がともにヘテロ接合体の場合、お子さんが重い型(ホモ接合体)になる確率が4分の1になることです。当院の保因者検査にはLDLRとLDLRAP1が含まれ、パートナーの検査から出生前診断のご相談まで当院でお受けしています。スタチンは妊娠中には使わない薬とされているので、妊娠を考えるときは主治医にご相談ください。
Q8. 遺伝子に変化が見つからなければ、FHではないのですか?
そうとは言いきれません。臨床的にFHと診断された方でも、遺伝子の変化が見つからない方が少なくありません。陰性でもLDLコレステロールが高いことに変わりはないので、治療は続けます。結果の意味は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明します。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族の心臓を守る計画を
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。家族性高コレステロール血症の原因がわかれば、早くから治療を始める根拠になり、お子さんやきょうだいが自分の状態を確かめる手がかりにもなります。当院では、LDLR・APOB・PCSK9・LDLRAP1の4遺伝子を税込330,000円・2〜3週間で調べ、結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明します。パートナーの保因者検査や、絨毛・羊水からの出生前診断のご相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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