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家族性高トリグリセリド血症の遺伝子検査|中性脂肪1000超え・膵炎をくり返す原因を14遺伝子で調べる

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

家族性高トリグリセリド血症の遺伝子検査

中性脂肪(トリグリセリド)が1,000mg/dLを超える、子どものころから高い、膵炎をくり返す。そんなとき、原因が遺伝子1つの変化(家族性高カイロミクロン血症など)であることがあります。一方で、中性脂肪が高い人の多くは、生活習慣とたくさんの遺伝子の小さな影響が重なって起こり、遺伝子1つで決まるわけではありません。原因の遺伝子がわかると、脂肪をとても少なくする食事や膵炎の予防など、次の一手がはっきりします。このページでは、家族性高トリグリセリド血症に関わる14遺伝子を一度に調べる遺伝子検査で何がわかり、結果のあと何ができるかを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

中性脂肪がとても高くなる原因として知られるLPL・APOC2・APOA5・GPIHBP1・LMF1など14遺伝子を一度に調べ、家族性高カイロミクロン血症など、遺伝子1つで起こる型かどうかを確かめます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

中性脂肪が1,000mg/dLを超える方、子どものころから中性脂肪が高い方、膵炎をくり返す方、ご家族に同じような方がいる方、妊娠を考えていて中性脂肪が気になる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は唾液・頬の内側の粘膜・血液から選べ、唾液と頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、食事・膵炎の予防・妊娠中の管理・ご家族の検査を具体的に考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったときの扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、膵炎を防ぐ計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 膵炎の遺伝子検査(慢性膵炎パネル)

1. 中性脂肪が高いのは遺伝? まず知っておきたいこと

中性脂肪が高い人の多くは、遺伝子1つで決まるわけではありません。生活習慣と、たくさんの遺伝子の小さな影響が積み重なって高くなります。欧州動脈硬化学会の専門家のまとめでは、よくある軽い〜中くらいの高トリグリセリド血症は、30を超える遺伝子のよくある変化とまれな変化が積み重なった結果とされています[2]。こうした「たくさんの遺伝子が少しずつ関わる」しくみは、多遺伝子リスクスコアの考え方につながっています。

中性脂肪は、ほかの病気や生活でも上がります。日本の公的なデータベースKEGGは、メタボリックシンドローム・2型糖尿病・飲酒・薬・腎臓の働きの低下・妊娠などで上がるものを「二次性」としています。難病情報センターも、脂肪の多い食事、糖質や炭水化物のとりすぎ、食べすぎ、お酒、処方された薬が中性脂肪を上げることがあると注意を呼びかけています(2026年10月時点で確認)。中性脂肪は、血液の中をリポタンパク質(カイロミクロンやVLDLなど)という粒に入って運ばれています。

中性脂肪の値の目安:1,000mg/dL前後が分かれ目

同じ専門家のまとめは、高トリグリセリド血症を、軽い〜中くらい(2〜10 mmol/L=175〜885mg/dL)と、重い(10 mmol/L=885mg/dLを超える)の2つに分けることを提案しています。重いほうが、遺伝子1つの原因をもっている可能性が高くなります[2]。ただし重い場合でも、とくに大人では、遺伝子1つの原因が見つからないことが多いとされています[2]。

日本の難病情報センターは、中性脂肪が通常1,000mg/dL以上になると血液が白くにごり(乳び血清)、急性膵炎を起こす可能性が高まるとしています(2026年10月時点)。値の高さは、遺伝子検査を考えるかどうかの大事な手がかりになります。

遺伝子1つで起こる型:家族性高カイロミクロン血症(LPL欠損症など)

遺伝子1つで起こるいちばん重い型が、家族性高カイロミクロン血症(家族性カイロミクロン血症症候群、FCS)です。原因の遺伝子として、LPL・APOC2・APOA5・GPIHBP1・LMF1が知られています(難病情報センター)。このうち最も多いのは、LPL遺伝子の変化によるリポ蛋白リパーゼ欠損症(LPL欠損症)です[1]。

まれな病気で、頻度の推定は資料によって違います。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsは約30万人に1人[1]、欧州の専門家のまとめは約100万人に1人[2]、難病情報センターは、遺伝子の変化が原因の場合で50〜100万人に1人程度としています。

  • ●始まる時期:LPL欠損症では、お子さんの約25%が1歳になる前に症状が出て、多くは10歳までに症状が出ます。妊娠中に初めてわかる方もいます[1]。
  • ●中性脂肪の値:治療をしていないとき2,000mg/dLを超えると、この病気が疑われます[1]。
  • ●症状:中性脂肪が高いだけでは、自覚症状はほとんどありません。急性膵炎(おなかや背中の痛み・吐き気・嘔吐)が最も重い合併症で、ほかに網膜脂血症、発疹性黄色腫、肝臓や脾臓の腫れがみられることがあります(難病情報センター)。
  • ●遺伝のしかた:常染色体潜性(劣性)遺伝です[1][2]。両親から受け継いだ2つの遺伝子の両方に変化があると発症します(2つが別々の変化のときは複合ヘテロ接合といいます)。

💡 用語解説:片方だけに変化がある人(ヘテロ)

LPLの変化を片方だけもつ人は、発症はしなくても中性脂肪が上がりやすくなります。その程度は、正常から重いものまでほかの要因しだいで幅があり、脂質の値から遺伝子の状態を予想することはできません。たくさんの遺伝子が関わって中性脂肪がとても高くなる人の約10%は、LPLの変化を片方にもっていたとされています[1]。

家族性高トリグリセリド血症とは(たくさんの遺伝子が関わる型との違い)

「家族性高トリグリセリド血症」という名前は、家族の中に中性脂肪の高い人が多い状態を広く指して使われることがあります。その中には、遺伝子1つで起こる重い型と、たくさんの遺伝子の影響と生活が重なる型が混ざっています。欧州の専門家のまとめは、なりやすさの遺伝子と、生活などの二次的な要因が家族の中で集まりやすいことを指摘しています。そのため、ご家族も血液検査で中性脂肪を測り、相談することが大切です。一方で、高い人全員に遺伝子検査が必要なわけではない、としています[2]。

この検査が役に立つのは、「値がとても高い」「子どものころから高い」「膵炎をくり返す」「生活を見直しても下がらない」など、遺伝子1つの型を考える手がかりがあるときです。

2. 中性脂肪1,000超えと膵炎:なぜ原因を知ることが大切か

中性脂肪がとても高いと、急性膵炎を起こすことがあります。難病情報センターは、1,000mg/dL以上で急性膵炎を起こす可能性が高まるとしたうえで、それより低くても膵炎のリスクはあるとしています(2026年10月時点)。急性膵炎は、ときに命にかかわります。

欧州の専門家のまとめも、重い高トリグリセリド血症(10 mmol/L=885mg/dLを超える)は膵炎の危険があるため、すぐにしっかり下げる治療が必要だとしています[2]。原因が遺伝子1つの型だとわかると、なぜこれほど高いのかが説明でき、食事の制限の強さや、妊娠のときの備えなど、膵炎を防ぐための計画を具体的に立てられます。膵臓の病気そのものが原因の膵炎については、遺伝性膵炎のページで解説しています。

妊娠中に中性脂肪が上がるとき

妊娠すると中性脂肪は上がりやすく、とても高くなると急性膵炎のリスクになります(難病情報センター)。GeneReviewsは、家族性高カイロミクロン血症の女性では、妊娠中の急性膵炎のリスクが、そうでない妊婦さんの約120倍と推定されると記載しています[1]。

同じ解説書には、妊娠中期・後期に脂肪を1日2g未満まで減らし、中性脂肪をこまめに測ることで、健康なお子さんが生まれた症例報告も載っています[1]。ただし、これは限られた症例の報告で、すべての妊婦さんに勧められる脂肪の量ではありません。同じ解説書には、赤ちゃんの必須脂肪酸が不足しないかという心配があったことも書かれています(その報告では、へその緒の血液の必須脂肪酸は正常でした)[1]。難病情報センターも、妊娠中に脂肪をとても少なくする制限は、専門医と管理栄養士の管理のもとで行うとしています。また、妊娠前から主治医と相談して中性脂肪を管理すること、妊娠中は定期的に検査し、産科と連携して早めに治療を強めることを勧めています。妊娠を考えている方は、妊娠の前に原因を知っておくと、こうした準備を前もって整えられます。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

中性脂肪がとても高い、子どものころから高い、膵炎をくり返すなど、遺伝子1つの原因が隠れているかもしれない方に向く検査です。原因がわからないまま食事や薬を続けてきた方が、「なぜ自分はこれほど高いのか」に答えを得る手がかりになります。

  • ●中性脂肪が1,000mg/dLを超えたことがある方、血液が白くにごっていると言われた方
  • ●お酒や胆石では説明のつかない急性膵炎をくり返している方
  • ●子どものころから中性脂肪が高い方、お子さんの中性脂肪がとても高いと言われた方
  • ●発疹性黄色腫や網膜脂血症を指摘された方
  • ●ご家族(きょうだいなど)に、中性脂肪がとても高い方や膵炎の方がいる方
  • ●妊娠を考えていて、中性脂肪の高さが気になる方

受けなくてよい場合・別の検査が向く場合

健診で中性脂肪が少し高めと言われ、お酒や食事、体重などはっきりした理由がある場合は、まずは生活の見直しと、必要に応じた治療が先です。この検査は、中性脂肪が高い人すべてに勧めるものではありません。症状や検査の結果によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。

🔍 症状・検査の結果から、どのパネルを選ぶか

こんなとき 向いている検査
中性脂肪がとても高い・膵炎(中性脂肪が主な原因と考えられる) このページの検査(14遺伝子。APOA5・LMF1も含む)
中性脂肪は高くないのに膵炎をくり返す、若くして膵炎、家族に膵炎が多い 慢性膵炎の遺伝子パネル検査(15遺伝子。PRSS1・SPINK1・CFTRなど膵臓の遺伝子に加え、LPL・APOC2・GPIHBP1も含む)
中性脂肪よりLDLコレステロールが高い 家族性高コレステロール血症の遺伝子検査
手足の脂肪が少ない、糖尿病や脂肪肝を伴う リポジストロフィー(脂肪萎縮症)の遺伝子パネル検査/先天性全身性脂肪萎縮症1型/2型のパネル検査
赤ちゃんのころから代謝の病気がいくつも疑われる 包括的代謝疾患の遺伝子検査(795遺伝子。このページの14遺伝子のうち6つを含む)
中性脂肪と膵臓の遺伝子の両方を調べたい カスタマイズ遺伝子パネル検査(必要な遺伝子を組み合わせて調べる)

※各検査の遺伝子は当院の各検査ページによる(2026年10月時点)。どれが合うかは、値の経過・膵炎の有無・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。LDLコレステロールが高い病気は家族性高コレステロール血症(FH)総論で、脂肪肝はMASH・MASLDのページで解説しています。

\ 妊娠の前に知れば、備えられることが増えます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

4. 調べる14遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、中性脂肪の高さに関わる14遺伝子(APOA5・APOC2・APOC3・APOE・CREB3L3・GCKR・GPD1・GPIHBP1・LMF1・LPL・PCDH15・PNPLA2・SLC25A40・TRIB1)を一度に調べます。家族性高カイロミクロン血症の原因として知られる遺伝子に加え、中性脂肪の高さに関わる遺伝子や、研究が進んでいる遺伝子も含まれています。

🧬 家族性高トリグリセリド血症パネルの14遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
LPL 家族性高カイロミクロン血症(LPL欠損症)/家族性複合型高脂血症(LPL関連) 常染色体潜性(片方の変化でも中性脂肪が上がりやすい)
APOC2 家族性高カイロミクロン血症(アポC-II欠損症) 常染色体潜性
GPIHBP1 家族性高カイロミクロン血症(I型高脂血症1D型) 常染色体潜性
LMF1 家族性高カイロミクロン血症(複合型リパーゼ欠損症) 常染色体潜性
APOA5 家族性高カイロミクロン血症の原因のひとつ(遅発性高カイロミクロン血症を含む)/高トリグリセリド血症1型(なりやすさ) 常染色体潜性の型と、なりやすさに関わる型がある
GPD1 乳児一過性高トリグリセリド血症(赤ちゃんのころの高トリグリセリド血症と肝腫大) 常染色体潜性
CREB3L3 高トリグリセリド血症2型(なりやすさ) なりやすさに関わる
APOE III型高脂血症(異常βリポ蛋白血症)/アルツハイマー病のなりやすさ III型高脂血症は常染色体潜性
APOC3 アポC-III欠損症(高αリポ蛋白血症2型。働きが落ちると中性脂肪は低くなる側に働く) 中性脂肪の高さの調節に関わる
PNPLA2 ミオパチー(筋肉の病気)を伴う中性脂肪蓄積症 常染色体潜性
PCDH15 アッシャー症候群1F型/常染色体潜性の非症候群性難聴23型 常染色体潜性
GCKR 空腹時の血糖値や中性脂肪の個人差に関わる遺伝子 なりやすさに関わる
TRIB1 病気との関係を研究中の遺伝子(中性脂肪の個人差との関わりが調べられている) 研究中
SLC25A40 病気との関係を研究中の遺伝子(中性脂肪との関わりが報告されている) 研究中

※遺伝子は当院の検査内容による(2026年10月に検査会社の一覧と照合)。病名と遺伝のしかたは、日本の公的データベースKEGG DISEASEと米国の遺伝学的検査の登録(NCBI GTR)、家族性高カイロミクロン血症の原因遺伝子は難病情報センターと文献[1][2]で確かめました。

遺伝子1つで中性脂肪がとても高くなる型の原因として、欧州の専門家のまとめは、LPL・APOC2・APOA5・LMF1・GPIHBP1・GPD1の6遺伝子を挙げています[2]。この6つは、いずれもこの検査に含まれています。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、14遺伝子の中の小さな変化(1文字の変化や小さな挿入・欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●欠失・重複:遺伝子まるごとの欠失・重複は、唾液・頬の粘膜でも血液でも調べられます。2つ以上続いたエクソンの欠失・重複は、血液のときだけ調べられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、ふつうは見つかりません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●調べていない場所:遺伝子の働きを調節する領域の多くや、エクソンから離れたイントロンの深い場所、染色体の組み換え(転座・逆位)は調べていません。
  • ●自己抗体などが原因の場合:難病情報センターは、原発性高カイロミクロン血症が自己抗体(GPIHBP1に対する抗体など)で起こることもあり、疑われる人のうち原因を特定できるのは30〜40%以下としています。遺伝子以外の原因は、この検査ではわかりません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:たくさんの遺伝子の小さな影響が重なって高くなる型は、この検査で「原因」として示すことはできません。原因が見つからなくても、中性脂肪が高いこと自体への治療と生活の見直しは続ける必要があります。

APOE・PCDH15の結果について

この検査に含まれるAPOEは、III型高脂血症の原因になるだけでなく、アルツハイマー病のなりやすさにも関わる遺伝子として知られています。また、PCDH15は、主に耳と目の病気であるアッシャー症候群1F型や難聴の原因遺伝子です。PCDH15の変化が片方だけに見つかった場合は、多くは症状のない保因者です。将来お子さんを考えるときには、パートナーの検査を含めて考えることになり、アッシャー症候群の遺伝子検査も選択肢になります。

中性脂肪とは別の病気に関わる情報が結果に含まれることがあるので、何を知りたいか・知りたくないかを、検査の前の遺伝カウンセリングでご相談ください。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。

6. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子がわかると、「なぜこれほど高いのか」に名前がつき、食事・薬・膵炎の予防・妊娠の計画・ご家族の検査を、具体的に考えられるようになります。GeneReviewsは、LPL欠損症を治す方法はまだないとしたうえで、食事と治療で中性脂肪を管理できるとしています[1]。治療は、脂質や代謝の専門の医療機関で受けていただきます。

① ご本人(中性脂肪が高い方):食事・薬・膵炎の予防

治療の中心は、脂肪をとても少なくする食事です。GeneReviewsは、脂肪を1日20g以下、または食事全体のエネルギーの15%以下にすると、多くの方は症状なく過ごせるとしています[1]。難病情報センターは1日15〜20g以下または総エネルギーの15%以下、小児慢性特定疾病情報センターは1日20g以下を目安とし、赤ちゃんには中鎖脂肪酸(MCT)のミルクなどを使うとしています。

薬は、フィブラート系薬、選択的PPARαモジュレーター、n-3系多価不飽和脂肪酸製剤などが使われます。ただし、GeneReviewsは、LPL欠損症では、ほかの脂質異常症に使われる薬は効果がないとしています[1]。どの薬を使うかは、原因の遺伝子と病型に応じて専門の医療機関で決めます。難病情報センターは、魚油のサプリメントで悪化した報告もあるため量に注意すること、急な減量はかえって悪化させることがあること、自己判断で薬をやめないことも挙げています(2026年10月時点)。

家族性高カイロミクロン血症に対しては、新しい薬も開発されています。遺伝子で確かめられたこの病気の66人を対象にした試験では、オレザルセン80mgで6か月後の中性脂肪が43.5%下がり、53週までの急性膵炎は、偽薬の群で11回、オレザルセンの2つの群でそれぞれ1回でした[3]。持続する高カイロミクロン血症の75人を対象にしたプロザシランの試験でも、10か月後の中性脂肪は約8割下がりました(偽薬では17%)[4]。オレザルセンは米国(2024年12月)と欧州(2025年9月)、プロザシランは米国(2025年11月)と欧州(2026年6月)で承認されています。ただし、どちらも日本ではまだ承認されていません(2026年10月時点で確認した範囲)。

② 症状のないご本人(片方だけに変化がある・保因者だった方)

潜性遺伝の遺伝子(LPL・APOC2・GPIHBP1・LMF1など)の変化を片方だけもつ方は、多くは発症しませんが、中性脂肪が上がりやすいことがあります[1]。お酒・食事・体重など、中性脂肪を上げる要因に気をつけ、定期的に値を測ることが手がかりになります。将来お子さんを考えるときは、潜性遺伝と保因者のしくみのとおり、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんへの確率が変わります。

③ 子どもを持つときの選択肢

家族性高カイロミクロン血症のような潜性遺伝の病気では、ご夫婦がともに同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。LPLは、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)の対象遺伝子です。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(単独では受けられません)もあります。なお、APOC2・GPIHBP1・LMF1は、この保因者検査の遺伝子一覧には入っていません。

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ただし、この病気は食事と治療で管理できる面もあるため、出生前診断を行うかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えます。妊娠を考えている段階からご相談ください。出生前診断を受けずに、そのまま出産を迎えることも、尊重される選択です。お子さんが生まれたあと早めに中性脂肪を確かめ、必要なら赤ちゃんのころから食事の管理を始められることも、原因を知っておく意味のひとつです。

④ ご家族:同じ変化があるかをピンポイントで調べられる

ご本人で原因の変化がわかると、きょうだい・ご両親・お子さんは、同じ変化があるかどうかを、その場所だけ調べることで確かめられます。潜性遺伝の病気では、ご両親がともに同じ遺伝子の保因者である場合、きょうだいも発症する確率は、お子さん1人ごとに4分の1です。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のうえで、遺伝カウンセリングを経て行います。欧州の専門家のまとめも、ご家族の中性脂肪を血液検査で確かめることを大切だとしています[2]。

⑤ 当院でのその後

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明し、ご本人の治療をどこで受けるか、ご家族の検査をどうするか、妊娠のときにどう備えるかを一緒に考えます。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)です。

陰性・VUSだったとき

原因の変化が見つからなかった場合は、たくさんの遺伝子と生活が重なって高くなっている可能性や、自己抗体などほかの原因を考えます。中性脂肪を下げる治療と生活の見直しは、そのまま続けてください。膵炎が主な問題なら、膵臓の遺伝子を調べる慢性膵炎の遺伝子パネル検査も考えられます。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。

7. 日本の制度:指定難病・小児慢性特定疾病(2026年10月時点)

原発性高カイロミクロン血症は、指定難病262に指定されています。難病情報センターのページ(2026年10月更新)では、原因としてLPL・APOC2・APOA5・GPIHBP1・LMF1の遺伝子の変化と自己抗体が挙げられています。また、小児慢性特定疾病でも、先天性代謝異常の群に「原発性高カイロミクロン血症」が掲載されています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。遺伝子検査で原因が確かめられていることは、診断の手がかりのひとつになります。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液や頬の内側の粘膜で検査する場合は、オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを受け、ご自宅で採った検体をお送りいただけます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取唾液・頬の粘膜・血液
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 14遺伝子(遺伝子の配列と、欠失・重複)
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間(至急オプション55,000円で約7日短くなります)
検体 唾液・頬の内側の粘膜・血液(EDTA採血管4mL×2本)・抽出済みのDNA
オンライン診療 受けられます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
VUSの報告 意義がまだわからない変化(VUS)を報告に含めない選択もできます(無料)

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。検体採取キットは、検査料金のお支払いのあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は、遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・頬の粘膜の検体なら、遠方の方もオンライン診療で受けられます。結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【数値を下げるためではなく、膵炎を防ぐために原因を知る】

中性脂肪がとても高いと言われると、「食べすぎ」「お酒の飲みすぎ」と自分を責めてしまう方がいます。もちろん生活は大切ですが、なかには、どれだけ気をつけても下がりにくい体質を、遺伝子として生まれ持っている方もいます。原因がわかれば、自分のせいだと思い込まずに、必要な治療と備えに目を向けられます。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の膵炎の予防だけでなく、妊娠の計画やご家族の健康を考えるときにも、ずっと役に立ちます。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 中性脂肪が1,000を超えたら、遺伝を疑うべきですか?

中性脂肪が高い人の多くは、生活習慣とたくさんの遺伝子の小さな影響が重なって高くなります。ただ、10 mmol/L(885mg/dL)を超えるような重い高トリグリセリド血症では、遺伝子1つの原因をもっている可能性が高くなるとされています。とくに、子どものころから高い、膵炎をくり返す、生活を見直しても下がらない、ご家族にも同じような方がいる場合は、遺伝子検査を考えるきっかけになります。

Q2. 中性脂肪がどのくらいで膵炎になりますか?

難病情報センターは、中性脂肪が1,000mg/dL以上で急性膵炎を起こす可能性が高まるとしています。ただし、それより低くても膵炎のリスクはあるとされています。急性膵炎はときに命にかかわるため、とても高い値が続く場合は、原因を確かめ、膵炎を防ぐ治療を続けることが大切です。

Q3. 中性脂肪が高いのは親からの遺伝ですか?子どもに遺伝する確率は?

多くは、たくさんの遺伝子と生活が重なって起こるため、決まった確率で遺伝するものではありません。一方、家族性高カイロミクロン血症のような常染色体潜性遺伝の型では、ご夫婦がともに同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。どの型かは遺伝子検査でわかることがあり、確率はご家族ごとに考えます。

Q4. 妊娠中に中性脂肪が上がりました。検査を受けたほうがよいですか?

妊娠すると中性脂肪は上がりやすく、とても高くなると急性膵炎のリスクになります。家族性高カイロミクロン血症の女性では、妊娠中の急性膵炎のリスクがそうでない妊婦さんの約120倍と推定されています。まずは産科の主治医と値を確かめ、とても高い場合や以前から高い場合は、原因を知るために遺伝子検査を考えます。次の妊娠を考えている方は、妊娠の前に調べておくと準備を整えられます。

Q5. 慢性膵炎の遺伝子検査とどちらを受ければよいですか?

膵炎のときに中性脂肪がとても高い場合は、このページの検査(14遺伝子)が向いています。中性脂肪は高くないのに膵炎をくり返す場合は、膵臓の遺伝子(PRSS1・SPINK1・CFTRなど)を調べる慢性膵炎の遺伝子パネル検査が向いています。慢性膵炎のパネルにもLPL・APOC2・GPIHBP1は含まれますが、APOA5とLMF1は含まれていません。両方を調べたい場合は、カスタマイズ遺伝子パネル検査もご相談いただけます。

Q6. 検査で何も見つからなかったらどうなりますか?

たくさんの遺伝子と生活が重なって高くなっている可能性や、自己抗体など遺伝子以外の原因を考えます。陰性でも、中性脂肪が高いこと自体が変わるわけではないので、中性脂肪を下げる治療と生活の見直しは続けてください。症状によっては、膵臓の遺伝子を調べる検査など、ほかの検査も選択肢になります。

Q7. 家族に中性脂肪の高い人が多いのですが、結婚や子どもに影響しますか?

中性脂肪が高い家族が多いことの多くは、なりやすさの遺伝子と生活の重なりによるもので、それだけで結婚や出産をあきらめる理由にはなりません。遺伝子1つで起こる型かどうかは検査でわかることがあり、わかれば、パートナーの保因者検査やお子さんへの確率、妊娠中の備えを具体的に考えられます。知ったうえでどうするかは、おふたりで選べます。

🧬 一度の検査で、膵炎を防ぐ計画とご家族のこれからを

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。中性脂肪がとても高い原因がわかれば、食事や膵炎の予防、妊娠中の備えに加えて、ご家族の検査を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

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参考文献

  • [1] Burnett JR, Hooper AJ, Hegele RA. Lipoprotein Lipase Deficiency. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 1999 (Updated 2026 Jul 23). [NCBI Bookshelf NBK1308]
  • [2] Hegele RA, Ginsberg HN, Chapman MJ, et al. The polygenic nature of hypertriglyceridaemia: implications for definition, diagnosis, and management. Lancet Diabetes Endocrinol. 2014;2(8):655-666. [DOI: 10.1016/S2213-8587(13)70191-8]
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  • [4] Watts GF, Rosenson RS, Hegele RA, et al. Plozasiran for Managing Persistent Chylomicronemia and Pancreatitis Risk. N Engl J Med. 2025;392(2):127-137. [DOI: 10.1056/NEJMoa2409368]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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