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アッシャー症候群の遺伝子検査|難聴のあと目の症状が出る前に、原因を17遺伝子まとめて調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

アッシャー症候群の遺伝子検査

アッシャー症候群は、生まれつき(または子どものころから)の難聴に、あとから網膜色素変性症(暗いところで見えにくい夜盲・視野が狭くなる)が加わる遺伝の病気です。目の症状は10歳ごろから出ることが多く、難聴だけが先に見つかります。だからこそ、目の症状が出る前に原因の遺伝子がわかれば、人工内耳の判断、目の見張り、進学や仕事の計画を早く始められます。このページでは、アッシャー症候群の症状・1〜3型の違い・遺伝のしかたと、原因の17遺伝子をまとめて調べる当院の遺伝子パネル検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

アッシャー症候群は、難聴に網膜色素変性症を伴う病気で、遺伝性の盲ろう(視覚と聴覚の両方の障害)の約50%を占めるとされます。この検査は、MYO7A・USH2A・CDH23などアッシャー症候群とその近い病気に関わる17遺伝子を一度に調べ、原因と型(1型・2型など)の手がかりを探します。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

難聴と網膜色素変性症の両方がある方、生まれつきの難聴に平衡感覚の異常や歩き始めの遅れがあるお子さん、目の症状が出る前に原因を知っておきたい方、ご家族にアッシャー症候群の方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。血液・唾液・頬の粘膜で調べられ、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でもお受けできます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、目の見張りや人工内耳の判断を早く始められます。常染色体潜性(劣性)遺伝なので、両親がともに保因者ならきょうだいは4分の1の確率で発症し、患者さんご本人のパートナーが同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに2分の1の確率で発症します。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 目の症状が出る前に、原因を知って計画を /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 難聴の原因を広く調べたい方へ(難聴パネル181遺伝子)

1. アッシャー症候群とは|難聴に、あとから網膜色素変性症が加わる病気

アッシャー症候群(Usher syndrome)は、感音難聴に、目の病気である網膜色素変性症を伴う遺伝の病気です。難聴の多くは生まれつきで、網膜色素変性症は10歳ぐらいから出て、少しずつ進みます。難病情報センターはこのように説明しています(2026年10月時点で確認)。

難聴は、音を感じる内耳の細胞の働きが弱い感音難聴です。網膜色素変性症は、目の奥で光を感じる網膜の細胞(視細胞)が少しずつ弱っていく病気で、暗いところで見えにくい「夜盲」から始まり、視野のまわりから見えない範囲が広がっていきます[1]。耳と目は別々の器官ですが、どちらの細胞も同じグループの遺伝子に支えられているため、1つの遺伝の病気として両方に症状が出ます。病気のしくみや研究の詳しい話は、アッシャー症候群(病気の詳しい解説)のページで扱っています。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

盲ろう(視覚と聴覚の両方の障害)の原因として最も多い病気

米国国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)は、アッシャー症候群が遺伝性の盲ろうの約50%を占めるとしています。「盲ろう」とは、見えにくさと聞こえにくさの両方をあわせ持つ状態です。また同じ機関は、米国で耳の聞こえない子どもの3〜6%にアッシャー症候群があると考えられるとしています。

これは、生まれつき難聴のあるお子さんのなかに、目の症状がまだ出ていないアッシャー症候群の方が一定の割合で含まれる、ということを意味します。難聴だけの時期には、耳の病気とだけ考えられていることも少なくありません。

日本の患者数と指定難病303

日本では、2018年の全国疫学調査で、アッシャー症候群の患者数は約510人、人口10万人あたり約0.40人と推計されました。この調査は、耳鼻咽喉科と眼科の医療機関に送った調査票の一次集計で、両方の科から重複して報告された可能性があるとされています(厚生労働科学研究「難治性聴覚障害に関する調査研究」平成30年度総括研究報告書)。アッシャー症候群は、指定難病303に指定されています(難病情報センター)。

米国国立医学図書館のMedlinePlus Geneticsでは、アッシャー症候群は10万人あたり4〜17人とされています(2026年10月時点で確認)。日本の推計との差は、調べた方法(医療機関から報告された人数か、集団を調べた推計か)や地域の違いによるもので、どちらか一方が正しいというものではありません。いずれにしても、まれな病気であるために診断までに時間がかかりやすく、原因の遺伝子を調べる意味が大きい病気です。

2. アッシャー症候群の症状|1型・2型・3型の違い

アッシャー症候群は、難聴の重さ、平衡感覚の働き(前庭機能)、目の症状が出る時期によって、1型・2型・3型に分けられます。型によって、補聴器か人工内耳か、運動の発達はどうか、目の見張りをいつから始めるか、が変わります。

タイプ別の早見表

👂👁️ アッシャー症候群1型・2型・3型の違い

項目 1型 2型 3型
聞こえ 生まれつき重い難聴 生まれつき、高い音ほど聞こえにくい難聴(中等度が多い) 少しずつ進む難聴(生まれつきでないこともある)
平衡感覚 働かないことが多い。歩き始めが遅れやすい ふつうのことが多い 障害があるかどうかは人によって違う
夜盲が出る時期 10歳前後から 思春期以降が多い 人によって違う
日本人に多い原因遺伝子 MYO7A、CDH23 USH2A (既知の遺伝子が少ない)

※症状は難病情報センター「アッシャー症候群(指定難病303)」、日本人に多い遺伝子は厚生労働科学研究「難治性聴覚障害に関する調査研究」平成30年度報告による。歩き始めの時期は文献[1]による。

1型は、生まれつき重い難聴があり、平衡感覚をつかさどる内耳の前庭の働きがないことが特徴です。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、そのためにお座りや歩き始めが遅れやすく、歩き始めは1歳6か月〜2歳ごろになることが多いとされています[1]。網膜色素変性症は思春期までに始まり、早い場合は幼児期から出ることもあります[1]。

2型は、生まれつき高い音ほど聞こえにくい難聴で、補聴器で十分な聞こえを得られることが多い型です。平衡感覚はふつうのことが多く、運動の発達に遅れはありません。夜盲は思春期以降に出ることが多いとされています(難病情報センター)。

3型は、聞こえが少しずつ悪くなっていく型で、生まれたときには聞こえていることもあります(難病情報センター)。海外の資料では、3型はアッシャー症候群全体の約2%ですが、フィンランドでは約40%を占めるとされています(MedlinePlus Genetics)。

型の割合は、国や調べ方によって違います。欧州の希少疾患データベースOrphanetは1型約40%・2型約60%・3型3%未満としていますが、日本の研究班のレジストリ(疑い例を含む114例)では、1型・2型・3型は「ほぼ同程度の頻度」でした(厚生労働科学研究 平成30年度報告)。

目の症状の進み方:夜盲から視野、そして中心の視力へ

目の症状は、暗いところで見えにくい夜盲から始まり、次に視野のまわりが欠けていき、のちに中心の視力も落ちていくのが一般的です[1]。網膜には、暗いところで働く杆体(かんたい)細胞と、明るいところで色や細かいものを見る錐体(すいたい)細胞があり、網膜色素変性症では杆体細胞から先に弱るためです。

進み方の速さは人によって違い、同じ型、同じ家族のなかでも差があります。また、経過のなかで白内障や、網膜の中心にむくみが出る嚢胞様黄斑浮腫(CME)が起こることがあり、これらは治療の対象になるため、定期的に眼科で調べます[1][2]。目の病気そのものについては網膜色素変性症のページで詳しく解説しています。

4型(ARSG)と、典型的でないアッシャー症候群

1〜3型に当てはまらない型も報告されています。ARSG遺伝子による4型は、大人になってから始まる網膜色素変性症(網膜の中心寄りの変化が中心)と、遅れて始まる感音難聴があり、平衡感覚の障害はないとされています(ClinGenなどの評価をまとめたGenCCとUniProt、2026年10月時点で確認)。CEP78やCEP250の変化では、錐体と杆体の両方が弱る錐体杆体ジストロフィーに難聴を伴う、典型的でないアッシャー症候群のような病気が起こります。錐体杆体ジストロフィーについては錐体杆体ジストロフィーのページをご覧ください。

このように、アッシャー症候群は型がはっきり分かれる病気というより、耳と目の症状の組み合わせに幅がある病気です。症状だけでは型を決めきれないときに、遺伝子の情報が手がかりになります。

3. アッシャー症候群の原因遺伝子と遺伝のしかた

アッシャー症候群は、内耳の有毛細胞と網膜の視細胞を支える遺伝子の変化で起こり、すべての型が常染色体潜性(劣性)遺伝です[1]。難病情報センターは、原因として10種類の遺伝子(MYO7A、USH1C、CDH23、PCDH15、USH1G、USH2A、ADGRV1、WHRN、CLRN1、HARS1)を挙げています。当院の遺伝子パネルは、これに近い病気の遺伝子を加えた17遺伝子を調べます。

17遺伝子と病名の表

🧬 アッシャー症候群パネルの17遺伝子と関係する病気

遺伝子 アッシャー症候群の型 ほかに起こす病気・補足 遺伝のしかた
MYO7A 1B型(1型の60〜70%) 難聴だけの型:DFNB2(潜性)、DFNA11(顕性) 常染色体潜性(DFNA11は顕性)
CDH23 1D型(1型の10〜20%) 難聴だけの型:DFNB12 常染色体潜性
PCDH15 1F型(1型の7〜15%) 難聴だけの型:DFNB23。CDH23との組み合わせは1D/F二遺伝子遺伝型として報告 常染色体潜性
USH1C 1C型(1型の5〜10%) 難聴だけの型:DFNB18A 常染色体潜性
USH1G 1G型(1型の1〜4%) まれ 常染色体潜性
USH2A 2A型(2型の57〜79%) 網膜色素変性症だけの型(RP39) 常染色体潜性
ADGRV1 2C型(2型の6.6〜19%) 家族性熱性けいれん4型(顕性)との関係も報告されている 常染色体潜性
WHRN 2D型(2型の0〜9.5%) 難聴だけの型:DFNB31 常染色体潜性
CLRN1 3A型(3型の主な原因) 網膜色素変性症だけの型(RP61) 常染色体潜性
ARSG 4型 遅く始まる網膜の変化と難聴。平衡感覚の障害なし 常染色体潜性
CEP78 典型的でない型 錐体杆体ジストロフィーと難聴1型(CRDHL1) 常染色体潜性
CEP250 典型的でない型(報告は少数) 錐体杆体ジストロフィーと難聴2型(CRDHL2) 常染色体潜性
ABHD12 (アッシャー症候群に似た病気) PHARC(多発神経障害・難聴・運動失調・網膜色素変性症・白内障) 常染色体潜性
RPGR (アッシャー症候群とは別の病気) X連鎖の網膜色素変性症。難聴を伴う型も報告 X連鎖
CIB2 以前は1J型とされたが、現在は否定的 難聴だけの型:DFNB48 常染色体潜性
HARS1 3B型として報告されたが、現在は否定的 シャルコー・マリー・トゥース病2W型(顕性) 常染色体潜性(CMT2Wは顕性)
PDZD7 単独では原因とされていない(網膜症状の修飾因子の可能性) 難聴だけの型:DFNB57 常染色体潜性

※1型の遺伝子ごとの割合は文献[1]、2型は文献[2]による。遺伝子と病気の関係の評価は、ClinGenなどの判定をまとめたGenCCによる(2026年10月時点)。検査の対象遺伝子は当院の検査内容による。

表の下の3つ(CIB2・HARS1・PDZD7)は、以前はアッシャー症候群の原因として報告されましたが、その後の検証で、アッシャー症候群の原因としては否定的、または単独の原因ではないと評価されています[2]。パネルに入っている遺伝子に変化が見つかっても、「アッシャー症候群」とすぐに決めるのではなく、どの病気の原因として評価されている遺伝子かを踏まえて結果を読みます。ここは、結果の説明で臨床遺伝専門医が丁寧にお伝えする部分です。

日本人に多い遺伝子:1型はMYO7A・CDH23、2型はUSH2A

日本の研究班のレジストリでは、1型ではMYO7AとCDH23、2型ではUSH2Aの変化が多く見つかっています。3型は症状だけでは見分けにくく、既知の原因遺伝子も少ないため、3例にとどまりました(厚生労働科学研究 平成30年度報告)。海外では、3型のCLRN1がフィンランドで多いなど、地域によって多い遺伝子が違います。こうした地域ごとの偏りは創始者効果で説明されることがあります。

常染色体潜性遺伝:「親は聞こえるのに、なぜ」

アッシャー症候群の患者さんのご両親は、ほとんどの場合、聞こえも見え方もふつうです。これは、アッシャー症候群が常染色体潜性(劣性)遺伝だからです。遺伝子は父親と母親から1本ずつ受け継いで2本1組で持っており、潜性遺伝の病気は、2本の両方に病気の原因となる変化があるときに発症します。1本だけ変化を持っている人は「保因者」で、症状はありません。

ご両親がともに同じ遺伝子の保因者のとき、お子さん1人ごとに、発症する確率は25%、保因者になる確率は50%、変化を受け継がない確率は25%です[1]。この確率は、上のお子さんが発症したかどうかに関係なく、妊娠のたびに同じです。2本の変化が同じ種類のこともあれば、別々の種類(複合ヘテロ接合)のこともあります。保因者のしくみについては劣性遺伝(潜性遺伝)とは?保因者の仕組みと子どもへ遺伝する確率で詳しく解説しています。

父:保因者症状なし
+
母:保因者症状なし
▶
発症 25%
保因者 50%
受け継がない 25%

同じ遺伝子で「難聴だけ」「網膜だけ」になることもある

アッシャー症候群の遺伝子の一部は、変化の種類によって、難聴だけの病気や、網膜色素変性症だけの病気を起こします。たとえば、MYO7AやCDH23は難聴だけの型(DFNB2、DFNB12)を、USH2Aは網膜色素変性症だけの型(RP39)を起こすことが知られています[1]。GeneReviewsは、USH1Cでは影響の軽い変化だと網膜色素変性症を伴わない難聴になることがある、とも記載しています[1]。

そのため、遺伝子名だけで「将来、目の症状が出るか」を決めることはできません。見つかった変化の種類、ご本人の症状、眼科の検査をあわせて判断します。難聴だけの遺伝の病気については非症候群性感音難聴(DFN)総論、遺伝性難聴全体については遺伝性難聴 総論で解説しています。

4. なぜ目の症状が出る前に遺伝子を調べるのか

アッシャー症候群では、難聴が先に見つかり、目の症状は数年〜十数年あとから出てきます。目の症状が出る前に原因がわかれば、聞こえの手段の選び方、目の見張り、学び方や進路の準備を、時間に余裕をもって始められます。

新生児聴覚スクリーニングで難聴が見つかったお子さん

難病情報センターは、アッシャー症候群の1型と2型は新生児聴覚スクリーニング検査で見つかることが多いとしています。生まれてすぐに難聴がわかったとき、その原因がアッシャー症候群かどうかは、聞こえの検査だけではわかりません。目の症状はまだ出ていないからです。

1型では、早い時期から人工内耳を使い、将来見えにくくなることに備えて両耳につけることが重要と考えられています(難病情報センター)。「将来、目からの情報が少なくなるかもしれない」とわかっていれば、聞こえを守る手段を選ぶときの考え方も変わります。また、歩き始めが遅いお子さんでは、平衡感覚の働きを調べることが1型を考える手がかりになります[1]。

難聴だけの時期には、ほかの遺伝性難聴と見分けにくい

前の章で見たように、同じ遺伝子が難聴だけの病気も起こします。難聴だけの時期には、アッシャー症候群か、目の症状が出ない遺伝性難聴かを、症状で見分けるのは難しいことがあります[1]。遺伝子の変化の種類がわかれば、その見通しを立てる大きな手がかりになります。

一方で、すでに網膜色素変性症と診断されている大人の方が、聞こえにくさが気になって受けることもあります。網膜色素変性症の原因として潜性遺伝で最も多い遺伝子はUSH2Aとされており(MedlinePlus Genetics)、目の病気と耳の症状が同じ原因かどうかを確かめることにも意味があります。難病情報センターも、まれに難聴と網膜色素変性症の原因が別々のことがあるため、確定診断には聴力検査と遺伝学的検査が必要としています。

こんな方に向いている検査です

  • ●難聴と網膜色素変性症の両方がある方
  • ●生まれつきの難聴があり、夜盲や視野の狭さが出てきた方
  • ●生まれつきの難聴に加えて、平衡感覚の異常や歩き始めの遅れがあるお子さん
  • ●網膜色素変性症があり、聞こえにくさがある方、またはご家族に難聴の方がいる方
  • ●きょうだいなどご家族にアッシャー症候群の方がいる方
  • ●盲ろうの原因を調べたい方

この検査は、モザイク(体の一部の細胞にだけ変化がある状態)を見つけることを目的としておらず、腫瘍の組織を調べる検査にも使えません。

\ 難聴のうちに、目の見通しまで知っておく /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でもお受けいただけます。結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 目の病気が中心の方へ(網膜色素変性症の遺伝子検査)

5. ミネルバクリニックのアッシャー症候群遺伝子パネル(17遺伝子)

当院のアッシャー症候群遺伝子パネル検査は、アッシャー症候群とその近い病気に関わる17遺伝子を、次世代シークエンサーで一度に調べる検査です。結果までは2〜3週間で、唾液や頬の粘膜でも調べられるため、オンライン診療でもお受けいただけます。

対象遺伝子(17遺伝子)

ABHD12、ADGRV1、ARSG、CDH23、CEP250、CEP78、CIB2、CLRN1、HARS1(HARS)、MYO7A、PCDH15、PDZD7、RPGR、USH1C、USH1G、USH2A、WHRN(17遺伝子)。それぞれの遺伝子と病気の関係は、第3章の表にまとめています。RPGRは、網膜色素変性症の原因として大事な「ORF15」という領域のほとんどの変化を検出できますが、配列が複雑なため、その一部の領域の変化は完全には否定できません。

💡 用語解説:遺伝子パネル検査

病気に関わる複数の遺伝子を、次世代シークエンサーでまとめて読む検査です。1つずつ順番に調べる方法と比べて、原因がどの遺伝子にあっても1回で見つけられる可能性があります。アッシャー症候群のように原因の遺伝子が多い病気で向いている調べ方です。

オプション

塩基配列の解析と、欠失・挿入の解析は検査料金に含まれます。結果を急ぐ場合は、至急オプション(55,000円)で結果までの期間が約7日短くなります。病気との関係がまだわからない変化(VUS)を報告から外すこともできます(無料)。

検査の限界:陰性でもアッシャー症候群を否定できない

どの遺伝子検査にも限界があります。この検査で注意していただきたいのは次の点です。

  • ●調べている範囲:遺伝子のたんぱく質をつくる部分(コード領域)と、その境目(スプライス部位)を読みます。遺伝子から離れた場所(エクソンから20塩基より奥のイントロンや、多くの調節領域)の変化、転座・逆位、繰り返し配列の伸び(リピート伸長)は検出できません。
  • ●欠失・重複:遺伝子まるごとの欠失・重複は検出できます。2つ以上続くエクソンの欠失・重複は血液の検体でのみ検出でき、1つのエクソンだけの欠失・重複はふつうは検出されません。見つかった欠失・重複は別の方法(qPCRやMLPA)で確かめます。
  • ●よく似た配列:よく似た配列(偽遺伝子など)があると、変化を見つけにくいことがあります。RPGRのORF15の一部も完全には否定できません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。VUSはそれだけで診断やご家族の発症予測の根拠にはしません。ただし、病的意義を調べるため、ご家族の同意のもとで同じ変化の有無と症状を照合する検査(家族内分離解析)を行うことはあります。
  • ●陰性でも否定はできません:この17遺伝子のほかに、まだ見つかっていない原因があるかもしれません。聴力検査・平衡機能の検査・眼科の検査(眼底検査・視野検査・網膜電図など)にもとづく診断と見張りは、引き続き大切です。

見つかった変化が病気の原因かどうかの判断は、国際的な基準で5段階に分けて評価されます。詳しくは病的バリアントとは?をご覧ください。

検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査費用 税込330,000円(当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間(至急オプションで約7日短くなります)
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出DNA(3μg)、頬の粘膜(頬粘膜スワブ)、唾液
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で可能。血液の場合は全国の提携医療機関で採血
調べ方 次世代シークエンサーによる17遺伝子の塩基配列と、欠失・挿入の解析

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。ご自身で先に検体を採らないでください。

ご予約来院・オンライン
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取唾液・頬の粘膜・血液
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。オンライン診療のご案内もあわせてご覧ください。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、目と耳のこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

6. 難聴・網膜の検査ページの選び方

アッシャー症候群を疑う症状がそろっているなら、まずこの検査です。症状の中心が耳か目か、ほかの症状があるかによって、別の検査のほうが向いていることもあります。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
難聴+網膜色素変性症(夜盲・視野が狭い)、またはご家族にアッシャー症候群の方 このページの検査(アッシャー症候群パネル17遺伝子)
難聴の原因を、できるだけ広く調べたい 難聴遺伝子パネル検査(181遺伝子)
難聴だけで、ほかの症状がない 非症候群性難聴NGS遺伝子パネル検査
難聴に、目以外の症状(腎臓・甲状腺・心臓・髪や皮膚の色など)も伴う 症候性難聴NGS遺伝子検査(92遺伝子)
難聴に、髪や目の色の変化(白い前髪・青い目など)を伴う ワーデンブルグ症候群NGS遺伝子パネル検査
目の症状が中心で、網膜色素変性症の原因を広く調べたい 網膜色素変性症遺伝子検査
中心の視力や色の見え方から悪くなった 円錐杆体ジストロフィー遺伝子検査
目・耳に加えて腎臓・肥満・指の形など多くの臓器に症状がある 繊毛病症候群(Ciliopathies)NGS遺伝子検査パネル
症状が多く、病気をしぼれない/パネルで原因が見つからなかった クリニカルエクソーム検査、全エクソーム検査(WES)

※どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。網膜の遺伝の病気の全体像は遺伝性網膜ジストロフィで解説しています。

7. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子がわかると、診断が確かになり、型の見通しが立ち、目と耳の見張りを予定どおりに始められます。アッシャー症候群には、2026年10月時点で承認された根本の治療はありません。それでも、わかったあとにできることは、ご本人にもご家族にもたくさんあります。治療や見張りは、耳鼻咽喉科・眼科などの専門の医療機関で受けていただきます。

ご本人:目の見張り・人工内耳・生活で気をつけること

目の見張り:GeneReviewsは、1型では目の症状が出る前から年1回、眼底写真・視力・視野・網膜電図(ERG)・光干渉断層計(OCT)・眼底自発蛍光で網膜を調べることを勧めています[1]。2型では、10歳(またはわかった時点)から年1回、同じように網膜を調べ、白内障と嚢胞様黄斑浮腫については20歳(またはわかった時点)から年1回、眼科で調べることが勧められています[2]。白内障や黄斑のむくみは治療できる変化なので、見張ることに意味があります。

人工内耳と補聴器:日本の小児人工内耳適応基準(2022年。日本耳科学会・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が承認)では、手術の時期は原則として体重8kg以上または1歳以上とされています。両耳の人工内耳は、患者さんと保護者の希望によって同じ日にも、時期をずらしても行えますが、強制してはならないとされています。難病情報センターは、1型では早い時期からの人工内耳と両耳の装用が重要、2型では補聴器で十分な聞こえを得られることが多く早くからの装用が重要としています。GeneReviewsは、1型のお子さんでは手話も生まれたときから始められるとしています[1]。

生活で気をつけること:GeneReviewsは、網膜色素変性症の進みを早めるおそれのある強い日差しと喫煙を避けること、視野が大きく欠けてからの運転や、見守りのない水泳を避けることを挙げています[1]。網膜色素変性症に使われることがあったビタミンAは、1型では効果が示されなかったため勧められていません[1]。

進路・仕事・運転・スポーツの計画

目の症状が出る前にわかることのいちばんの意味は、時間に余裕をもって将来の計画を立てられることです。見え方が変わっていくことを前提に、学び方(聞こえと見え方の両方を使える手段)、進路や仕事の選び方、運転免許の取り方、続けるスポーツの選び方を、早いうちから考えられます。指定難病の医療費助成など公的な制度を使うときも、遺伝子検査で原因が確かめられていることが手がかりになります。認定の条件や申請の方法は、難病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。

研究中の治療(2026年10月時点で、どれも未承認)

アッシャー症候群の網膜に対しては、遺伝子ごとの治療の研究が進んでいます。治験に参加するには、原因の遺伝子と変化が特定されていることが必要になるのが一般的です。

  • ●USH2Aのエクソン13を対象にした薬(ultevursen):変化のあるエクソン13を読み飛ばさせるアンチセンスオリゴヌクレオチドで、少し短いけれど働くたんぱく質をつくらせる考え方です(エクソンスキッピング)。第2b相試験(LUNA)で、目標の81人を超えて参加者の登録が終わりました(米国の財団Foundation Fighting Blindness、2026年7月の報告)。
  • ●MYO7Aの遺伝子治療:大きな遺伝子を2つのベクターに分けて届ける方法(AAVB-081)の第1/2相試験が、参加者を募集中とされています(GeneReviews、2026年6月更新)[1]。
  • ●遺伝子を問わない治療:重い視力低下のある網膜色素変性症に対する光遺伝学の治療(MOGENRY、MCO-010)について、2026年9月に米国食品医薬品局(FDA)が承認申請を受理し、審査中です(開発企業の2026年9月の発表)。アッシャー症候群に限った治療ではなく、日本での承認もありません。

研究や治験の状況は時期によって変わります。最新の情報は、眼科の主治医にご確認ください。

ご両親・きょうだい

お子さんがアッシャー症候群と確定した場合、ご両親はふつう、それぞれ保因者です。きょうだいは、4分の1の確率で同じ病気、2分の1の確率で保因者です[1]。GeneReviewsは、リスクのあるきょうだいの聞こえを、生まれたらすぐに調べることを勧めています[1]。ご家族のなかで原因の変化がわかっていれば、ほかのご家族は同じ変化を調べることで、保因者かどうかを確かめられます。

子どもを持つとき:保因者検査・出生前診断・着床前診断

ご本人や保因者の方が子どもを持つことを考えるときは、まずパートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかを調べると、お子さんへの確率がはっきりします(第8章)。ご夫婦がともに保因者とわかった場合や、患者さんのパートナーが保因者だった場合は、次のような選択肢があります。

  • ●妊娠中に赤ちゃんを調べる(出生前診断):ご家族の原因の変化がわかっていれば、絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんの遺伝子を調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。
  • ●体外受精の胚を調べる(着床前遺伝学的検査・PGT-M):日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。
  • ●そのまま妊娠・出産する:生まれてすぐに聞こえを調べ、早くから聞こえの手段と見張りを始める準備をしておく、という選択もあります。

どの選択が正しいということはありません。どれを選んでも、その選択を尊重します。

当院でのその後

結果をお伝えしたあとも、遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。ご家族の検査、パートナーの保因者検査、妊娠したときの羊水検査・絨毛検査まで、院内で続けてご案内できます。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。

\ わかったあとの見張り・家族・妊娠まで、続けて支えます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

パートナーの保因者検査を考えている方へ | 遺伝カウンセリング・遺伝診療

8. 家族にアッシャー症候群の人がいる方へ|結婚と子どもへの遺伝

ご家族にアッシャー症候群の方がいても、潜性遺伝の病気なので、ご自身のお子さんが発症するのは、ふつう、ご自身とパートナーの両方が同じ遺伝子の病的変異を持っている場合です。結婚や出産を考えるときに知っておきたい確率を、立場ごとに整理します。

患者さんご本人のお子さんに伝わる確率

患者さんは2本とも病的変異を持っているので、お子さんは、原因となる病的変異を少なくとも1つ受け継ぎます。パートナーが同じ遺伝子の病的変異を持っていなければ、お子さんは保因者になり、発症しません。パートナーが同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに2分の1の確率で発症します。

👪 立場別:お子さんがアッシャー症候群になる確率

あなた パートナー お子さんが発症する確率(1人ごと)
患者さん 保因者でない 発症しない(全員が保因者)
患者さん 同じ遺伝子の保因者 2分の1
保因者 同じ遺伝子の保因者 4分の1
保因者 保因者でない 発症しない(2分の1で保因者)

※常染色体潜性遺伝の原則にもとづく確率(文献[1])。RPGRによるX連鎖の病気は、伝わり方が異なります。

きょうだいが患者さんのとき:ご自身が保因者である確率

きょうだいがアッシャー症候群で、ご両親がともに同じ遺伝子の保因者の場合、ご自身が非発症と判断できれば、保因者である確率は3分の2です。発症する25%を除き、「受け継がない25%」と「保因者50%」のなかで考えるためです。ただし、症状が遅れて出る型もあるため、現在症状がないことだけで非発症とは判断できません。ご家族の原因の変化がわかっていれば、ご自身がその変化を持っているかを直接調べられます。遺伝性難聴のお子さんがいるご夫婦のNIPT遺伝カウンセリングも、ご家族の検査を考えるときの参考になります。

パートナーの保因者検査とファミリーセーフティ プラス

パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかは、保因者検査で調べられます。当院の拡大版保因者スクリーニング女性版(1009遺伝子)には、このパネルの17遺伝子のうちMYO7A・USH2A・CDH23・PCDH15・USH1C・USH1G・CLRN1・ADGRV1・WHRN・CIB2・RPGRの11遺伝子が、男性版(911遺伝子)にはRPGRを除く10遺伝子が含まれています。ABHD12・ARSG・CEP250・CEP78・HARS1・PDZD7は、どちらにも含まれていません。ご家族の原因の遺伝子がわかっている場合は、その遺伝子が対象に入っているかを確かめてから選びます。

妊娠中の方には、ファミリーセーフティ プラスもあります。NIPTと同じ日に採血するカップルの拡大版保因者スクリーニング(女性787遺伝子・男性714遺伝子)で、単独では受けられません。対象の病気のなかに、聴覚・視覚関連としてアッシャー症候群が挙げられています。女性版787遺伝子・男性版714遺伝子の拡大版保因者スクリーニングで、ご家族の原因の遺伝子が対象かどうかは、遺伝子一覧でご確認ください。保因者検査の全体は遺伝子ブライダルチェック(保因者検査)でご案内しています。

妊娠したら

ご家族の原因の変化がわかっていれば、妊娠中に絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。なお、このパネルの17遺伝子は、当院のNIPT(妊娠9週から、6〜8週は臨床研究として受けられます)で単一遺伝子を調べるダイヤモンドプラン(56遺伝子)にも、インペリアルプラン(最大155遺伝子)にも含まれていません。妊娠を考えている段階で原因の変化を確かめておくことが、出生前診断を計画するための出発点になります。

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【目の症状が出る前に知ることは、選べる時間を増やすこと】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。アッシャー症候群の両親は、ほとんどがご自身の聞こえも見え方もふつうの保因者です。お子さんの病気がわかるまで、誰も気づいていないのがふつうです。

アッシャー症候群は、難聴が先に、目の症状があとからやってくる病気です。この時間の差は、見方を変えれば、準備のための時間です。聞こえの手段をどう選ぶか、目の見張りをいつから始めるか、どんな学び方や仕事を選ぶか。目の症状が出てから慌てて決めるより、わかったうえで、時間をかけて考えるほうが、ご本人とご家族の選べる道は広がると考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、保因者検査から出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. アッシャー症候群は治せますか?

2026年10月時点で、アッシャー症候群の根本の治療として承認されたものはありません。難聴は補聴器や人工内耳で聞こえを補い、目は定期的に調べて、白内障や黄斑のむくみなど治療できる変化に対応します。USH2AやMYO7Aなど遺伝子ごとの治療の臨床試験が進んでおり、参加するには原因の遺伝子と変化がわかっていることが必要になるのが一般的です。

Q2. アッシャー症候群は何人に1人の病気ですか?

日本では、2018年の全国疫学調査で患者数は約510人、人口10万人あたり約0.40人と推計されています。海外の資料では10万人あたり4〜17人とされており、調べ方や地域によって数字が違います。

Q3. 何歳ごろから目の症状が出ますか?

難病情報センターによると、夜盲は1型では10歳前後から、2型では思春期以降に出ることが多く、3型では人によって違います。1型では、早い場合は幼児期から網膜の変化が始まることもあります。

Q4. 視力はどのくらいになりますか?

夜盲から始まり、視野のまわりが欠け、のちに中心の視力も落ちていくのが一般的ですが、進む速さは人によって違い、同じ家族のなかでも差があります。白内障や黄斑のむくみは治療できるので、年1回の眼科の検査で見張ることが勧められています。

Q5. 寿命や知的発達に影響はありますか?

アッシャー症候群の主な症状は、難聴・平衡感覚の障害・網膜色素変性症で、遺伝性疾患の解説書(GeneReviews)や難病情報センターが示す症状に、知的発達や寿命に関わるものは挙げられていません。ただし、似た症状を示す別の病気もあるため、診断は遺伝子検査と診察で確かめます。

Q6. アッシャー症候群は指定難病ですか?

はい。指定難病303に指定されています(2026年10月時点、難病情報センターの情報)。医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たして申請する必要があります。

Q7. 子どもに遺伝しますか?結婚のとき何を調べればよいですか?

常染色体潜性遺伝です。患者さんのお子さんは、原因となる病的変異を少なくとも1つ受け継ぎます。パートナーが同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに2分の1の確率で発症します。結婚や妊娠を考えるときは、パートナーの検査で同じ遺伝子の病的変異の有無を調べると、確率を考える手がかりになります。

Q8. 検査で異常が見つからなければ、アッシャー症候群ではないのですか?

否定はできません。この17遺伝子のほかに、まだ見つかっていない原因があるかもしれず、検査で検出できない種類の変化もあります。聴力検査・平衡機能の検査・眼科の検査にもとづく診断と見張りは、引き続き大切です。

Q9. 費用はいくらですか?

検査費用は税込330,000円です。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは2〜3週間で、至急オプション(55,000円)を使うと約7日短くなります。

Q10. NIPTでアッシャー症候群はわかりますか?

当院のNIPT(妊娠9週から、6〜8週は臨床研究として受けられます)で単一遺伝子を調べるダイヤモンドプラン(56遺伝子)・インペリアルプラン(最大155遺伝子)のどちらにも、アッシャー症候群パネルの17遺伝子は含まれていません。ご家族の原因の変化がわかっている場合は、絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんを調べます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。

🧬 難聴のうちに、目と家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。アッシャー症候群の原因がわかれば、聞こえの手段の選び方や目の見張りを早く始められ、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりにもなります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、保因者検査、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けてご案内できます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Usher Syndrome Type I. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle (Updated 2026 Jun 9). [NCBI Bookshelf NBK1265]
  • [2] Koenekoop RK, et al. Usher Syndrome Type II. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle (Revised 2023 Mar 23). [NCBI Bookshelf NBK1341]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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