目次

錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーは、網膜の中で「明るいところで色や細かいものを見る細胞(錐体細胞)」から弱っていく、遺伝性の網膜の病気です。中心が見えにくい、まぶしい、色が見分けにくいといった症状から始まり、錐体杆体ジストロフィーでは、のちに暗いところの見えにくさや周りの視野の狭さが加わります。原因となる遺伝子は30種類以上あり、どの遺伝子かによって、見通しも、ご家族への影響も変わります。希少な病気は、診断がつくまでに平均4.7年かかったという欧州の調査があります[4]。原因の遺伝子がわかれば、その遠回りを短くし、これからの計画を立てる手がかりになります。このページでは、見え方・失明の心配・遺伝のしかたと、29遺伝子を調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーに関係する29の遺伝子(ABCA4・GUCY2D・CRXなど)を一度に調べ、原因となる遺伝子の変化があるかを確かめます。原因がわかると、病型・遺伝のしかた・ご家族への影響がはっきりします。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーと診断された方、原因のわからない視力低下・まぶしさ・色の見えにくさがある方、ご家族に同じ病気の方がいて、結婚や妊娠を考えている方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜で、唾液・粘膜ならオンライン診療で受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因の遺伝子がわかると、今後の治験や研究の対象になりうるかを考える手がかりになり、ご家族の検査や妊娠の計画にも使えます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /
検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。
1. 錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーとは
錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーは、網膜の錐体細胞が先に弱っていく遺伝性の病気です。中心の視力・色の見分け・まぶしさの症状が先に出て、錐体杆体ジストロフィーではあとから杆体細胞も弱り、暗いところや周りの見え方にも影響します[1][2]。英語では cone dystrophy(COD)、cone-rod dystrophy(CORD/CRD)と呼ばれます。「杆体」は「桿体」と書かれることもありますが、同じものです。
網膜の遺伝性の病気(遺伝性網膜ジストロフィ)にはたくさんの種類があり、この病気はそのひとつです。病気そのものの詳しいしくみは錐体杆体ジストロフィー(疾患の解説)で扱っています。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
錐体細胞と杆体細胞:網膜にある2種類の視細胞
目に入った光は、眼球の奥にある網膜で受け止められ、電気の信号に変えられて脳に送られます。光を受け止める細胞(視細胞)には2種類あります。
👁️ 錐体細胞と杆体細胞の違い
| 項目 | 錐体細胞 | 杆体(桿体)細胞 |
|---|---|---|
| 働く場面 | 明るいところ | 暗いところ |
| 得意なこと | 色を見分ける・細かいものを見る | わずかな光を感じる |
| 多い場所 | 網膜の中心(黄斑) | 網膜の周り |
| 弱ったときの症状 | 中心の見えにくさ・まぶしさ・色の見分けにくさ | 暗いところで見えにくい(夜盲)・周りの視野が狭くなる |
錐体ジストロフィーと錐体杆体ジストロフィーの違い
錐体ジストロフィーは主に錐体細胞だけが弱る病気、錐体杆体ジストロフィーは錐体細胞のあとに杆体細胞も弱っていく病気です。英国の総説は、両者は「早い時期から夜盲(暗いところで見えにくい)があるかどうか」で区別でき、早い時期に夜盲がないのが錐体ジストロフィーだと説明しています[2]。
ただし、両者ははっきり分かれた別の病気というより、同じ流れの上にある病気です。同じ遺伝子が両方の原因になることもあり、最初は錐体ジストロフィーと考えられていた方が、経過とともに錐体杆体ジストロフィーの形になることもあります。そのため、このページでは2つをまとめて扱い、遺伝子検査も同じ検査で調べます。
網膜色素変性症との違い:弱る順番が逆
網膜色素変性症は、杆体細胞が先に弱り、夜盲から始まる病気です。錐体杆体ジストロフィーはその逆で、錐体細胞が先に弱るため、早いうちから視力が下がり、夜盲はあとから出ます。フランスの総説は、錐体杆体ジストロフィーでは網膜色素変性症より早い時期に強い視力低下が起こると説明しています[1]。
どれくらいの人がなる病気か
錐体杆体ジストロフィーの有病率は約4万人に1人と推定され、網膜色素変性症の10分の1ほどとされています[1]。英国の総説では、錐体ジストロフィーと錐体杆体ジストロフィーをあわせた頻度を2万〜10万人に1人としています[2]。
日本では、錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーは、指定難病301「黄斑ジストロフィー」に含まれる病気のひとつです。難病情報センターによると、厚生労働省の研究班の2020年時点の調査で、黄斑ジストロフィー全体として4,423人が診断を受けていました(調査の外にも患者さんが多くいると考えられています。2026年10月時点で確認)。
2. 症状と見え方:初期症状から進んだときまで
最初に出やすいのは、視力の低下(中心が見えにくい)です。まぶしさ(羞明)や色の見分けにくさも早くから出て、錐体杆体ジストロフィーでは、のちに暗いところの見えにくさと周りの視野の狭さが加わります[1][2]。
初期症状:中心の見えにくさ・まぶしさ・色の見分けにくさ
フランスの総説は、視力の低下が最も早い症状で、まぶしさも早い時期から出て、色の見分けにくさ(色覚異常)もよくみられると説明しています[1]。英国の総説では、視力の低下はふつう10歳までに始まり、ある長期の研究では症状が出はじめた年齢は錐体杆体ジストロフィーで約12歳、錐体ジストロフィーで約16歳だったと紹介されています[2]。
見え方として多いのは、「見たいところ(真ん中)がぼやける」「明るい屋外のほうが見えにくい」「色が似て見える」といった訴えです。眼鏡で視力が上がらない、明るいところで目を細める、といったことがきっかけで見つかることもあります。
進むと:暗いところ・周りの視野
錐体杆体ジストロフィーでは、病気が進むと杆体細胞も弱り、暗いところで見えにくくなり(夜盲)、周りの視野も狭くなっていきます。読むことが難しくなり、目が揺れる「眼振」がみられることも多いとされています[1]。一方、錐体ジストロフィーでは、早い時期の夜盲はありません[2]。
失明するのか:見通しには大きな個人差
「失明」の心配は、多くの方が最初に気にされることです。見通しは、病型と原因遺伝子によって大きく違います。英国の総説で紹介されている長期の研究では、錐体杆体ジストロフィーの方の半数以上が約23歳までに法的な失明(社会的に失明とみなされる視力)の基準に達したのに対し、錐体ジストロフィーでは約48歳で、どちらも個人差がとても大きかったとされています[2]。
💡 用語解説:法的失明
「法的失明」は、海外で福祉や制度の対象を決めるために視力の数字で引かれた線のことで、まったく見えなくなる状態とは限りません。フランスの総説は、矯正視力が20分の1(0.05)未満を法的失明と説明しています[1]。日本の身体障害者手帳の基準とは別のものです(第8章)。
この数字は、ある集団の平均的な傾向です。お一人おひとりの経過は、原因遺伝子・変化の種類・年齢などで変わります。「どの遺伝子の変化か」がわかることは、ご自身の見通しを考えるための大きな手がかりになります。
診断に使う検査:網膜電図・OCTなど
眼科では、網膜の電気的な反応を測る網膜電図(ERG)が診断の中心になります。フランスの総説は、錐体杆体ジストロフィーでは、明るいところの反応(錐体)が暗いところの反応(杆体)より強く障害されると説明しています[1]。網膜の断面を撮る光干渉断層計(OCT)や眼底の写真もあわせて使います。
ただし、これらの検査で「錐体ジストロフィー」と診断できても、どの遺伝子が原因かは、眼科の検査だけではわかりません。原因遺伝子を確かめるのが、このページの遺伝子検査です。
3. 遺伝のしかた:3つの型で、ご家族への影響が変わる
錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーには、常染色体潜性(劣性)遺伝・常染色体顕性(優性)遺伝・X連鎖遺伝の3つの型があります[1][2]。どの型かによって、お子さんやきょうだいに同じ病気が起こる確率がまったく違います。そして、どの型かは原因の遺伝子がわかってはじめて確かめられます。
常染色体潜性(劣性)遺伝:ABCA4が最も多い
常染色体潜性(劣性)遺伝では、両親から1つずつ、合わせて2つの変化を受け継いだときに発症します。両親はふつう症状のない保因者で、次のお子さんが同じ病気になる確率は4分の1です。
英国の総説によると、潜性遺伝の錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーの62.2%はABCA4遺伝子が原因でした[2]。ABCA4は、スターガルト病の原因遺伝子でもあり、ABCA4による錐体杆体ジストロフィーは錐体杆体ジストロフィー3型(CORD3)と呼ばれます。
常染色体顕性(優性)遺伝:GUCY2Dなど
常染色体顕性(優性)遺伝では、1つの変化で発症しうるため、親から子へ伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です。英国の総説では、顕性遺伝の型で最も多い原因はGUCY2D遺伝子(顕性の型の34.6%)で、GUCY2D・GUCA1A・PRPH2・CRXの4つで顕性の型の75%以上を占めていました[2]。GUCY2Dによる型は錐体杆体ジストロフィー6型(CORD6)と呼ばれます。
顕性遺伝の病気では、同じ変化をもっていても、症状の重さや出はじめる年齢が人によって違うことがあります(表現型の多様性)。
⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません
親御さんの見え方が保たれていても、同じ変化を受け継いだお子さんの経過が同じになるとは限りません。原因の遺伝子と遺伝のしかたがわかってはじめて、ご家族それぞれの確率を具体的に考えられます。
X連鎖遺伝:主に男性が発症
X連鎖遺伝の型は、X染色体にある遺伝子の変化で起こり、主に男性が発症します。お母さんが保因者の場合、息子さんは2分の1の確率で発症し、娘さんは2分の1の確率で保因者になります。英国の総説では、X連鎖の型の73.0%はRPGR遺伝子が原因でした[2]。RPGRは、このページの29遺伝子には含まれていません(第6章)。
家族歴がなくても起こる理由
ご家族に同じ病気の方がいなくても、この病気になることは珍しくありません。潜性遺伝の型では、両親が症状のない保因者で、これまで家系に患者さんがいないことがよくあります。顕性遺伝の型では、ご本人の代で新しく起きた変化(新生突然変異)による場合もあります。
新しく起きた変化と考えられる場合でも、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞にだけ同じ変化がある「生殖細胞系列モザイク」の可能性は残ります。その細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化をもちますが、生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは人によって違い、実際の診療ではわかりません。そのため、次のお子さんへの確率は「最大で2分の1」と考え、「新しく起きた変化だから大丈夫」と小さく見積もらないことが大切です。
4. どんな人がこの検査を受けるとよいか
錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーと診断された方、原因のわからない視力低下・まぶしさ・色の見えにくさがある方、ご家族に同じ病気の方がいる方、結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは遺伝のしかたは判断できないので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
診断された方・原因のわからない視力低下がある方
- ●眼科で錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィー・黄斑ジストロフィーと診断された方
- ●眼鏡で視力が上がらない、まぶしさが強い、色が見分けにくいなどの症状があり、原因を知りたい方
- ●今後の治験や研究に参加できるかを考えるために、原因遺伝子を知っておきたい方
ご家族に同じ病気の方がいる方
ご家族の中で原因の遺伝子がわかっていれば、ほかのご家族は同じ遺伝子の同じ場所を調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。症状のない方が将来の発症を調べる検査は「発症前の検査」になるため、当院では検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます。
当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。
見え方が変わっていくかもしれない病気だからこそ、先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、仕事の選び方・運転・住まい・お子さんの教育など、これからの暮らしを計画したいと考える方もいます。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[5]。病気は違いますが、「知ることで計画を立てたい」という思いは、目の病気のご家族にも通じるものだと思います。
結婚・妊娠を考えている方
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。錐体ジストロフィーの当事者の方にとっても、きょうだいに同じ病気の方がいる方にとっても、ご自身の原因遺伝子や保因者かどうかを妊娠の前に知っておくと、選べることが増えます。潜性遺伝の型なら、パートナーの方が同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんの確率が変わります(第7章)。
この検査より別の検査が向いている場合
眼科で錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーと診断されているなら、まずこの検査が候補です。一方で、症状や診断名によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類で、どれが合うかは遺伝カウンセリングで一緒に決めます。
🔍 症状・診断名に合わせた検査の選び方
| こんなとき | 向いている検査 |
|---|---|
| 錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーと診断されている | このページの検査(29遺伝子) |
| 目の病気の種類をしぼりきれない/X連鎖の家族歴がある | 包括的眼疾患遺伝子検査(510遺伝子) |
| 夜盲から始まり、周りの視野が狭くなってきた | 網膜色素変性症遺伝子検査 |
| 黄斑(中心)だけに変化がある | 黄斑変性症NGS遺伝子検査パネル |
| 生まれつき色がわからず、まぶしさと眼振がある | 1色覚(全色盲)NGS遺伝子検査パネル |
| 眼底に白い点が散らばっている | 斑状網膜(白点状眼底)NGS遺伝子検査 |
| 視神経の萎縮もある | 網膜症・視神経萎縮遺伝子パネル検査 |
| 目以外の症状(聴こえ・腎臓・発達など)もある | 全エクソーム検査(WES) |
※どの検査が合うかは、症状・眼科の検査結果・ご家族の情報で変わります。
\ あなたの1回の検査が、ご家族の手がかりにも /
顕性遺伝やX連鎖の型では、あなたの結果がご両親・きょうだい・お子さんが自分のことを考える手がかりになります。ご夫婦とも保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内でご相談いただけます。海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。海外でPGT-Mを受ける前に必要なこと
5. 調べる29遺伝子と、関係する病気
この検査では、錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーに関係する29の遺伝子をまとめて調べます。遺伝子によって、関係する病気(錐体杆体ジストロフィーのほか、スターガルト病・レーバー先天性黒内障・1色覚など)と遺伝のしかたが違います。
対象遺伝子:ABCA4、ADAM9、AIPL1、BEST1、C8orf37、CACNA1F、CACNA2D4、CDHR1、CERKL、CNGB3、CNNM4、CRX、DRAM2、GUCA1A、GUCY2D、KCNV2、PDE6C、PDE6H、PITPNM3、POC1B、PROM1、RAB28、RAX2、RDH5、RIMS1、RPGRIP1、SEMA4A、TTLL5、UNC119(29遺伝子)
🧬 調べる29遺伝子と、主に関係する目の病気
| 遺伝子 | 主に関係する病気 | 遺伝のしかた |
|---|---|---|
| ABCA4 | 錐体杆体ジストロフィー3型(CORD3)、スターガルト病1型、黄色斑眼底 | 常染色体潜性 |
| ADAM9 | 錐体杆体ジストロフィー9型 | 常染色体潜性 |
| AIPL1 | レーバー先天性黒内障など(AIPL1遺伝子関連疾患)、錐体杆体ジストロフィー | 常染色体潜性(レーバー先天性黒内障) |
| BEST1 | 卵黄状黄斑ジストロフィー(ベスト病)、常染色体潜性ベストロフィノパチー | 常染色体顕性(ベスト病)/常染色体潜性 |
| C8orf37(CFAP418) | 錐体杆体ジストロフィー、網膜色素変性症 | 常染色体潜性(網膜色素変性症) |
| CACNA1F | 不完全型のX連鎖先天性停止性夜盲、錐体杆体ジストロフィー | X連鎖 |
| CACNA2D4 | 錐体ジストロフィー4型 | 遺伝形式は結果の説明時に個別にご説明 |
| CDHR1 | 錐体杆体ジストロフィー | 遺伝形式は結果の説明時に個別にご説明 |
| CERKL | 網膜色素変性症、錐体杆体ジストロフィー | 常染色体潜性(網膜色素変性症) |
| CNGB3 | 1色覚(全色盲)3型、錐体ジストロフィー、錐体杆体ジストロフィー | 常染色体潜性 |
| CNNM4 | ジャリリ症候群 | 常染色体潜性 |
| CRX | 錐体杆体ジストロフィー、レーバー先天性黒内障 | 常染色体顕性(潜性の報告もあり) |
| DRAM2 | 錐体杆体ジストロフィー | 遺伝形式は結果の説明時に個別にご説明 |
| GUCA1A | 錐体ジストロフィー、錐体杆体ジストロフィー | 常染色体顕性 |
| GUCY2D | 錐体杆体ジストロフィー6型(CORD6)、レーバー先天性黒内障1型 | 常染色体顕性(CORD6)/常染色体潜性(レーバー先天性黒内障1型) |
| KCNV2 | 杆体反応の増大を伴う錐体ジストロフィー | 常染色体潜性 |
| PDE6C | 1色覚、錐体ジストロフィー | 常染色体潜性 |
| PDE6H | 1色覚、錐体ジストロフィー | 常染色体潜性 |
| PITPNM3 | 錐体杆体ジストロフィー | 遺伝形式は結果の説明時に個別にご説明 |
| POC1B | 錐体杆体ジストロフィー | 遺伝形式は結果の説明時に個別にご説明 |
| PROM1 | 錐体杆体ジストロフィー、網膜色素変性症 | 常染色体潜性(網膜色素変性症) |
| RAB28 | 錐体杆体ジストロフィー | 遺伝形式は結果の説明時に個別にご説明 |
| RAX2 | 錐体杆体ジストロフィー | 遺伝形式は結果の説明時に個別にご説明 |
| RDH5 | 白点状眼底 | 常染色体潜性 |
| RIMS1 | 錐体杆体ジストロフィー | 遺伝形式は結果の説明時に個別にご説明 |
| RPGRIP1 | レーバー先天性黒内障、錐体杆体ジストロフィー | 常染色体潜性 |
| SEMA4A | 錐体杆体ジストロフィー、網膜色素変性症 | 常染色体顕性(網膜色素変性症) |
| TTLL5 | 錐体杆体ジストロフィー | 遺伝形式は結果の説明時に個別にご説明 |
| UNC119 | 錐体杆体ジストロフィー | 遺伝形式は結果の説明時に個別にご説明 |
※病気と遺伝のしかたは、英国の総説[2]と、米国国立医学図書館の遺伝性疾患データベース(MedlinePlus Genetics・MedGen・GeneReviews)で確かめた範囲で記載しています。かっこ内は、確かめられた病気についての遺伝のしかたです。同じ遺伝子でも、変化の種類によって遺伝のしかたや病気が変わることがあります。
表のとおり、同じ遺伝子が錐体杆体ジストロフィーのほか、スターガルト病・レーバー先天性黒内障・網膜色素変性症など別の病気の原因になることがあります。CNGB3・PDE6C・PDE6Hは主に1色覚の原因ですが、錐体ジストロフィーの原因にもなることが報告されています[2]。KCNV2による型は、網膜電図で杆体の反応が強く出る特徴的な所見から診断の手がかりが得られるとされています[2]。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、29の遺伝子にある小さな変化(1つの文字の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複の一部です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があり、原因が見つからない方もいます。
わかること
- ●遺伝子のたんぱく質をつくる部分(コード領域)と、そのつなぎ目(スプライス部位)の変化
- ●遺伝子1つ分がまるごと欠けたり増えたりしている変化(血液・口の内側の粘膜の検体)と、となり合う2つ以上のエクソンにわたる欠失・重複(血液の検体のみ)
- ●調べる範囲の99%以上を、20回以上くり返し読み取って確かめます(読み取りの回数が多いほど、見落としが少なくなるため)
見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。読み取りの質が十分でない変化は、サンガー法という別の方法で確かめます。
わからないこと
- ●29遺伝子以外の原因:英国の総説では錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーの原因遺伝子として32個が挙げられていますが、そのうちX連鎖の型で最も多いRPGR、顕性の型の主な原因のひとつPRPH2は、この検査に含まれていません[2]。日本人の遺伝性網膜疾患1,210家系の研究で、潜性遺伝の黄斑ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーの方に多くみられたRP1遺伝子の変化も、この検査の対象外です[3]。
- ●調べていない種類の変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、同じ配列のくり返しが伸びる変化、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)の多く、エクソンから離れたイントロンの奥(20塩基より先)の変化は調べていません。1つのエクソンだけの欠失・重複も、ふつうは見つけられません。
- ●よく似た配列:遺伝子とよく似た配列(偽遺伝子など)があると、変化を正しく読み分けられないことがあります。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけある変化(体細胞モザイク)を見つけるようには作られていません。
陰性でも否定できない・意義がまだわからない変化(VUS)
原因が見つからなくても、錐体ジストロフィーではないという意味ではありません。英国の総説では、錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーで原因遺伝子が特定できたのは56.3%でした[2]。日本の1,210家系の研究でも、遺伝性網膜疾患全体で原因が見つかったのは37%(448家系)でした(全エクソーム解析による)[3]。どちらも検査の方法や対象が違う研究ですが、「調べても原因がわからない方が少なくない」ことを示しています。
また、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSは、それだけで確定診断やご家族の発症リスクの判定には使いません。ただし、病気との関係を調べるため、ご家族にも同じ変化があるかを確認することがあります。
7. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。
陽性だったとき:病型の確定と、治験・研究への手がかり
原因の遺伝子がわかると、病型と遺伝のしかたがはっきりし、見通しを考える手がかりになります。英国の総説は、錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーには今のところ進行を止めたり失った視力を取り戻したりする治療は確立していないとしたうえで、遺伝子診断は、今後予想される臨床試験(治験)への参加に役立つと述べています[2]。
遺伝子を対象にした治療の研究は、原因遺伝子ごとに進められます。原因の遺伝子がわかっていなければ、そうした研究の対象になりうるかどうかも判断できません。研究や治験の状況は時期によって変わるため、最新の情報は眼科の主治医にご確認ください。まぶしさを和らげる遮光眼鏡や拡大鏡などのロービジョンケアは、病型にかかわらず早くから使えます[1]。
ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき
原因の遺伝子と遺伝のしかたがわかると、ご家族それぞれの確率を具体的に考えられます。
- ●潜性遺伝の型:ご両親は保因者で、次のお子さんが同じ病気になる確率は4分の1です。症状のないきょうだいは、3分の2の確率で保因者です。ご本人のお子さんは、パートナーの方が同じ遺伝子の保因者でなければ、ふつう保因者になるだけで発症しません。
- ●顕性遺伝の型:お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎます。ご両親のどちらかが同じ変化をもっていないかも確かめます。
- ●X連鎖の型:お母さんが保因者の場合、息子さんは2分の1の確率で発症し、娘さんは2分の1の確率で保因者になります。
ご家族の中で原因がわかっていると、ほかのご家族は同じ場所を調べるだけで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。
陰性だったとき
29遺伝子に原因が見つからなかった場合は、この検査に含まれていない遺伝子(RPGR・PRPH2・RP1など)や、調べていない種類の変化が原因の可能性があります。症状とご家族の情報に合わせて、包括的眼疾患遺伝子検査や全エクソーム検査などの次の選択肢を考えます。
VUSだったとき
VUSは、それだけで確定診断やご家族の発症リスクの判定には使いません。ただし、病気との関係を調べるため、ご家族にも同じ変化があるかを確認することがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。
妊娠を考えている方:保因者検査と出生前診断
潜性遺伝の型と分かった場合、パートナーの方が同じ遺伝子の保因者かどうかを調べると、お子さんの確率がわかります。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子、さらに女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子)の遺伝子一覧には、この検査の対象遺伝子のうちABCA4・AIPL1・CERKL・C8orf37などが含まれています。そのほかの遺伝子が対象かどうかは、遺伝子一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。
ご家族の原因がわかっている場合、妊娠中に赤ちゃんを調べる出生前診断を検討することもできます。出生前診断ができるかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断されるため、妊娠を考えている段階からご相談ください。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。あらかじめご家族の原因を確かめておくことが、出生前診断を考えるための出発点になります。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
海外でPGT-Mを受けたいというお問い合わせを、多くいただいています。当院では、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます。ご希望の方は、検査の時にお申し出ください。
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受ける前に必ず読んでほしい
「PGT-Mに必要な準備」
ご本人の検査結果だけでは足りない理由、ご家族の検体、英語の検査結果、妊娠したあとの確定検査まで、臨床遺伝専門医がまとめました。
PGT-M(単一遺伝子疾患を対象とした着床前遺伝学的検査)は、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている病的な遺伝子の変化について胚の遺伝子型を評価し、対象疾患を発症しないと考えられる胚を移植候補として選ぶ検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でお手伝いできるのは、その前提となる原因遺伝子の確定と、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリングです。
欧州ヒト生殖胎生学会(ESHRE)のPGT-Mの指針は、PGT-Mの準備として、次のようなことを挙げています[6]。
- ●病気の原因と確かめられた変化があること:対象は、病気の原因になると証明された遺伝子の変化です。可能な限り、その変化を確かめておくことが勧められています。
- ●元の遺伝子検査の報告書:見つかった変化の内容(どの遺伝子のどの変化か)が書かれた元の報告書を、認定を受けた検査室から取り寄せることが勧められています。
- ●ご家族の検体(とても大切です):受精卵から取れるDNAはごくわずかで、遺伝子の変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのためPGT-Mでは、変化のある場所の両側にある目印(STRやSNPなどの多型マーカー)を使い、「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[6]。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要です。指針の目安は、顕性遺伝では患者さん少なくとも1人(できれば2人)と発症していない方、潜性遺伝では患者さん・保因者・保因者でない方、X連鎖では患者さんや発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)です[6]。
ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。血縁者の検体が用意できない場合について、指針は、ご夫婦で目印を調べたうえで、実際の治療周期の受精卵や、1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法を挙げていますが[6]、できるかどうかは施設や家系の状況によって大きく変わり、受けられないこともあります。新しく起きた変化(de novo)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[6]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査(同じ変化があるかを調べる検査)も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
臨床遺伝専門医としての判断を加えると、意義がまだわからない変化(VUS)は、病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。また、潜性遺伝の型では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。パートナーの方の検査も、当院でご相談いただけます。海外の施設によって求められる書類や検体は違うため、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。
なお、日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会の承認を得て行われます。この指針では、対象となる「重篤」な疾患を、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、としています(2026年10月時点)。
PGT-Mの対象にする病気の決め方は、国によって大きく違います。19か国の制度を比べた総説は、法律で厳しく制限する国から比較的ゆるやかな国まで、規制のしかたに大きな幅があると報告しています[8]。たとえば英国では、公的機関(HFEA:ヒト受精・胚機構)が承認した病気でなければPGT-Mは行えず、病気ごとに承認されます(2026年10月時点)。一方、日本は病名ではなく症例ごとに、ご家族の状況も含めて審査されます。日本産科婦人科学会が公表した2023年の症例審査結果では、72例のうち58例が承認、3例が不承認で、不承認の主な理由として「重篤性の定義を満たしていない」ことなどが挙げられ、同じ病気でも結果が異なることがあると説明されています。
錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーについて、臨床遺伝専門医として率直な見通しをお伝えすると、日本で承認を得るのは簡単ではないと考えます。根本的な治療法がない点は指針の条件に当てはまります。ただ、主な症状は見え方の低下で、命に関わる病気ではなく、「成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる」と言えるかは、病型やご家族の経過によって判断が分かれるためです。2023年の症例審査結果でも、目の病気で承認されていたのは網膜芽細胞腫の1例で、網膜ジストロフィーの症例は載っていませんでした。とはいえ、審査は症例ごとなので、対象にならないと決まっているわけではありません。こうした事情から海外でのPGT-Mを考える方もいらっしゃいますが、どこで受ける場合も、上に挙げた準備(原因と確かめられた変化・元の報告書・ご家族の検体)が必要です。
日本では審査に時間がかかることがあり、承認されるかどうかも申請の時点では見通せません。日本学術会議の提言(2023年8月)も、規制の厳しい国から緩やかな国へ行ってPGTを受けるケースや、費用を負担できる方が海外へ行くケースが増えていると指摘しています。費用をかけてでも海外を選ぶ方がいるのは、こうした事情によるものです。
🧭 海外で受けると決めた方へ:最初の一歩は、日本での遺伝子検査です
どの国で受ける場合も、PGT-Mの前に①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化 ②その内容が書かれた英語の報告書 ③ご家族の検体をそろえる必要があります。渡航してから「原因が確かめられていない」「家族の検査が済んでいない」とわかると、計画そのものが止まってしまいます。
当院では、原因遺伝子を確かめる検査、ご家族・パートナーの検査、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果のご用意まで、日本にいるうちに進められます(英語の検査結果は、検査の時にお申し出ください)。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは、受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[7]。臨床遺伝専門医としては、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えます。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
8. 日本の制度(2026年10月時点)
錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーは、指定難病301「黄斑ジストロフィー」に含まれる病気のひとつです。難病情報センターの黄斑ジストロフィーのページには、この病気の別名・含まれる病気として「錐体ジストロフィー、および錐体-杆体ジストロフィー」が載っており、原因遺伝子は30種類以上、遺伝のしかたは常染色体顕性・常染色体潜性・X連鎖潜性があると説明されています(2026年10月時点で確認)。
医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たして申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
また、身体障害者手帳(視覚障害)は、病名ではなく視力と視野の程度で等級が決まります。たとえば1級は「視力の良い方の眼の視力(矯正視力)が0.01以下のもの」と定められています(身体障害者福祉法施行規則 別表第5号)。申請の方法は、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜のいずれかで、唾液・粘膜の場合はクリニックにお越しいただかずに、オンライン診療で受けられます。
💴 費用・日数・検体
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調べる遺伝子 | 29遺伝子 |
| 検査費用 | 330,000円(税込) |
| 遺伝カウンセリング料 | 30分22,000円(税込)※検査費用とは別。検査を受けない場合も診察料としてかかります |
| その他の料金 | マイページ使用料550円、検査結果作成手数料3,300円、翻訳手数料5,500円(ご希望の場合) |
| 結果までの期間 | 2〜3週間 |
| 検体 | 血液・唾液・口の内側の粘膜(口腔粘膜ぬぐい液) |
| オンライン診療 | 唾液・口腔粘膜の検体なら可能。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。 |
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります。
オンライン診療の場合は、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
\ 人生に一度の遺伝子検査を、これからの暮らしの計画に /
臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。唾液・口の粘膜の検体ならオンライン診療で受けられます。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【見え方が変わっていく病気だからこそ、原因を知って計画を】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーは、同じ「錐体ジストロフィー」という名前でも、原因遺伝子によって遺伝のしかたが3通りあり、ご家族への影響がまったく違います。眼科の検査で病名がついても、どの型かは遺伝子を調べなければわかりません。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、仕事や暮らしの準備、今後の治験への備え、ご家族の検査、結婚や妊娠の計画まで、具体的に考えられるようになります。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 錐体ジストロフィーの初期症状は?
最も早い症状は視力の低下(中心が見えにくい)で、まぶしさや色の見分けにくさも早い時期から出やすいとされています。英国の総説では、視力の低下はふつう10歳までに始まると説明されています。錐体杆体ジストロフィーでは、のちに暗いところの見えにくさや周りの視野の狭さが加わります。
Q2. 錐体ジストロフィーは失明しますか?
見通しは病型と原因遺伝子によって大きく違います。英国の総説で紹介された長期の研究では、錐体杆体ジストロフィーの方の半数以上が約23歳までに、錐体ジストロフィーでは約48歳までに法的な失明の基準に達しましたが、個人差がとても大きかったとされています。法的な失明は、まったく見えなくなる状態とは限りません。
Q3. 錐体ジストロフィーの見え方は?
網膜の中心に多い錐体細胞が弱るため、「見たいところ(真ん中)がぼやける」「明るいところでまぶしく、かえって見えにくい」「色が似て見える」といった見え方になりやすい病気です。錐体杆体ジストロフィーでは、進むと暗いところの見えにくさや周りの視野の狭さも加わります。
Q4. 錐体ジストロフィーは遺伝しますか?
遺伝性の病気で、常染色体潜性(劣性)遺伝・常染色体顕性(優性)遺伝・X連鎖遺伝の3つの型があります。お子さんやきょうだいに起こる確率は型によって違い、潜性なら次のお子さんで4分の1、顕性ならお子さん1人ごとに2分の1です。どの型かは、原因の遺伝子がわかってはじめて確かめられます。
Q5. 錐体ジストロフィーは指定難病ですか?
はい。指定難病301「黄斑ジストロフィー」に含まれる病気のひとつとして、「錐体ジストロフィー、および錐体-杆体ジストロフィー」が難病情報センターのページに載っています(2026年10月時点)。医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たして申請する必要があります。
Q6. 錐体ジストロフィーで障害者手帳はもらえますか?
身体障害者手帳(視覚障害)は、病名ではなく視力と視野の程度で等級が決まります。基準に当てはまれば、錐体ジストロフィーの方も対象になります。申請の方法は、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
Q7. 治療法や遺伝子治療はありますか?
今のところ、進行を止めたり失った視力を取り戻したりする治療は確立していません。遺伝子を対象にした治療の研究は原因遺伝子ごとに進められていて、遺伝子診断は今後の治験への参加に役立つとされています。まぶしさを和らげる遮光眼鏡や拡大鏡などのロービジョンケアは、早くから使えます。
Q8. 錐体ジストロフィーは何人に1人ですか?
錐体杆体ジストロフィーの有病率は約4万人に1人と推定されています。英国の総説では、錐体ジストロフィーと錐体杆体ジストロフィーをあわせて2万〜10万人に1人としています。日本では、指定難病の黄斑ジストロフィー全体として、2020年時点の調査で4,423人が診断を受けていました。
Q9. 海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。当院では、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます。ご希望の方は、検査の時にお申し出ください。PGT-Mの準備には、病気の原因と確かめられた変化と、その内容が書かれた元の報告書に加えて、ふつう同じ変化をもつ方を含むご家族の検体が必要です。受精卵のDNAはごくわずかなため、家族のDNAで変化の乗った染色体をたどる方法を組み合わせるからで、ご本人の結果だけでは準備が整わないことが多くあります。当院は体外受精・PGT-Mを行っていないため、受ける予定の施設の条件も前もってご確認ください。PGT-Mは診断ではなくスクリーニング検査なので、妊娠したら絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんを確かめることが望ましく、当院の院内で受けられます。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーの原因遺伝子がわかれば、ご自身の見通しや治験への備えだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断のご相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Hamel CP. Cone rod dystrophies. Orphanet J Rare Dis. 2007;2:7. [DOI: 10.1186/1750-1172-2-7](PMID: 17270046)
- [2] Gill JS, Georgiou M, Kalitzeos A, Moore AT, Michaelides M. Progressive cone and cone-rod dystrophies: clinical features, molecular genetics and prospects for therapy. Br J Ophthalmol. 2019;103(5):711-720. [DOI: 10.1136/bjophthalmol-2018-313278]
- [3] Suga A, Yoshitake K, Minematsu N, et al. Genetic characterization of 1210 Japanese pedigrees with inherited retinal diseases by whole-exome sequencing. Hum Mutat. 2022;43(12):2251-2264. [DOI: 10.1002/humu.24492](PMID: 36284460)
- [4] Faye F, Crocione C, Anido de Peña R, et al. Time to diagnosis and determinants of diagnostic delays of people living with a rare disease: results of a Rare Barometer retrospective patient survey. Eur J Hum Genet. 2024;32(9):1116-1126. [DOI: 10.1038/s41431-024-01604-z]
- [5] Baig SS, Strong M, Rosser E, et al. 22 Years of predictive testing for Huntington’s disease: the experience of the UK Huntington’s Prediction Consortium. Eur J Hum Genet. 2016;24(10):1396-1402. [DOI: 10.1038/ejhg.2016.36]
- [6] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
- [7] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
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