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難聴は遺伝する?先天性難聴の原因を181遺伝子で調べる難聴遺伝子パネル検査|子どもに伝わる確率・結婚・避けたい薬まで臨床遺伝専門医が解説

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

難聴は遺伝する?難聴遺伝子パネル検査(181遺伝子)

難聴は遺伝することがあります。先進国では、言葉を覚える前に見つかる難聴の約65%が遺伝の原因とされています[1]。それでも、ご家族に難聴の方がいないことは珍しくありません。聞こえるご両親が、同じ遺伝子の変化を1つずつ持っている場合があるからです。難聴遺伝子パネル検査は、難聴に関わる181の遺伝子を一度に調べ、2〜3週間で結果をお返しします。原因がわかると、聞こえの見通し、あとから出てくる症状への備え、避けたい薬、お子さんに伝わる確率まで、次に何をすればよいかが具体的になります。このページでは、先天性難聴の原因と遺伝のしかた、結婚・妊娠を考えるときのこと、そしてこの検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 難聴は遺伝しますか?

遺伝することがあります。先進国では、言葉を覚える前に見つかる難聴の約65%が遺伝の原因とされています。聞こえるご両親から生まれることも多く、家族に難聴の方がいないから遺伝ではない、とは言えません。

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

難聴に関わる181遺伝子を一度に調べ、難聴だけの型(非症候群性)か、目・腎臓・甲状腺・心臓などの症状を伴う型(症候群性)かの手がかりを探します。

🧬 Q. 子どもに伝わる確率は?

原因の遺伝子と遺伝のしかたで変わります。潜性(劣性)なら保因者どうしのご夫婦で4分の1、顕性(優性)なら2分の1です。原因がわかると、ご家族ごとの確率をお伝えできます。

🧬 Q. わかると何が変わりますか?

聞こえが進む型かどうか、あとから出る目や腎臓などの症状に備える見張り、補聴器・人工内耳の検討、パートナーの保因者検査や出生前診断まで、次に打てる手がはっきりします。

🧬 Q. 費用・日数・受け方は?

税込330,000円(遺伝カウンセリング料は30分22,000円で別)。結果までは2〜3週間です。唾液・頬の粘膜ならオンライン診療で受けられます。

\ 原因がわかれば、次の一手が決まります /

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検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

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1. 難聴は遺伝する?先天性難聴の原因と遺伝の割合

難聴は遺伝することがあり、生まれつきの難聴では遺伝の原因がいちばん多いと考えられています。遺伝性難聴のまとめ(GeneReviews、2026年6月改訂)では、先進国で言葉を覚える前に見つかる難聴の約65%が遺伝の原因とされています[1]。京都府の新生児聴覚検査の案内では、生まれつき難聴のある子どもは1,000人に1〜2人の割合で生まれるとされています(2026年10月時点で確認)。

難聴には、音を内耳まで伝える部分の障害による「伝音難聴」と、内耳(蝸牛)や聴神経の障害による「感音難聴」、その両方が混じる「混合難聴」があります。遺伝による難聴の多くは感音難聴です。病気としての全体像は遺伝性難聴 総論で詳しく解説しています。

先天性難聴の原因を多い順に

生まれつきの難聴の原因として最も多いのは遺伝で、遺伝以外の原因で最も多いのは、お母さんのおなかの中でかかる先天性サイトメガロウイルス感染症です[1]。GeneReviewsでは、遺伝による言葉を覚える前の難聴の約70%が難聴だけの型(非症候群性)、約20%がほかの症状を伴う型(症候群性)とされています[1]。

🧬 生まれつきの難聴の主な原因

原因 特徴
遺伝(非症候群性) 難聴だけが症状。遺伝による難聴の約70%。多くは潜性(劣性)遺伝
遺伝(症候群性) 目・腎臓・甲状腺・心臓・皮膚や髪の色などの症状を伴う。遺伝による難聴の約20%。ほかの症状はあとから出ることもある
先天性サイトメガロウイルス感染症 遺伝以外(後天的・環境の要因)の原因で最も多い

※割合と原因の順はGeneReviewsの遺伝性難聴総論[1]による。

家族に難聴の人がいないのに遺伝、はなぜ起きるのか

遺伝による難聴だけの型(非症候群性)では、約80%が常染色体潜性(劣性)遺伝です[1]。潜性遺伝では、ご両親は同じ遺伝子の変化を1つずつ持つ「保因者」で、ご本人は聞こえます。お子さんが両方から変化を受け継いだときに難聴になるため、それまで家系に難聴の方がいなくても、突然のように見えるのです。

GeneReviewsでは、GJB2遺伝子による難聴が、高度〜重度の潜性遺伝の難聴の原因として最も多く、アジアの集団にもあてはまるとされています[1]。日本で行われた1万人規模の解析でも、GJB2は最も多い原因遺伝子でした[2]。

突発性難聴・加齢性難聴は遺伝する?

ある日突然片方の耳が聞こえにくくなる突発性難聴は、親から子へ受け継がれる病気としては扱われていません。一方で、子どものころは聞こえていて大人になってから少しずつ進む難聴の中には、顕性(優性)遺伝のものがあります。ご家族に、同じような年代から聞こえにくくなった方が何人もいる場合は、遺伝の可能性を考えてもよいでしょう。突発性難聴と遺伝の関係は、突発性難聴と遺伝についての解説にまとめています。

2. 日本人に多い難聴の遺伝子

日本で多い難聴の原因遺伝子は、多い順にGJB2・CDH23・SLC26A4・STRC・KCNQ4です[2]。信州大学を中心とした日本の解析では、10,047人の難聴の方を調べ、38.8%で原因が見つかりました。生まれつき、または早い時期に見つかった難聴に限ると、原因が見つかった割合は48.6%でした[2]。

🧬 日本で多い難聴の遺伝子と、わかると変わること

遺伝子 どんな難聴か 遺伝のしかた わかると変わること
GJB2 生まれつきの高度〜重度の難聴が多い 潜性(劣性) ご両親が保因者とわかれば、次のお子さんへの確率(4分の1)がわかる
CDH23 難聴だけの型(DFNB12)と、目の症状を伴うアッシャー症候群がある 潜性(劣性) 目の見張りを始めるかどうかの手がかりになる
SLC26A4 内耳の骨の形の変化(前庭水管拡大)を伴い、聞こえが変動・進行しやすい 潜性(劣性) 甲状腺(ペンドレッド症候群)の見張りが必要とわかる
STRC 難聴だけの型の原因になる。よく似た配列(偽遺伝子)があり調べにくい 潜性(劣性) このパネルで調べられる範囲に限りがある(第7章)
KCNQ4 難聴だけの型の原因になる 顕性(優性) お子さんへの確率は2分の1と考える
MYO7A 難聴だけの型(DFNB2・DFNA11)と、アッシャー症候群がある 潜性(劣性)/顕性(優性) 目と平衡感覚の見張りの手がかりになる
OTOF 重い先天性難聴の原因になる 潜性(劣性) 米国で遺伝子治療が承認された(2026年4月)
ミトコンドリアDNA(m.1555A>G・m.3243A>Gなど) m.1555A>Gはアミノグリコシド系抗菌薬で難聴が起こりやすくなる。m.3243A>Gは糖尿病を伴う難聴に関わる 母系遺伝 このパネルの対象外(第6章)

※日本で多い遺伝子の順は日本の1万人規模の解析[2]による。遺伝子ごとの難聴の特徴はGeneReviews[1][3]による。STRCとKCNQ4は当サイトに遺伝子ページがありません。

難聴だけの型の遺伝性難聴は、DFNB(潜性)・DFNA(顕性)・DFNX(X連鎖)という番号で分類されています。分類のしくみと型ごとの特徴は、非症候群性感音難聴(DFN)総論で解説しています。

3. 難聴が子どもに遺伝する確率(遺伝のしかた別)

お子さんに伝わる確率は、原因の遺伝子と遺伝のしかたで決まります。潜性(劣性)なら保因者どうしのご夫婦で4分の1、顕性(優性)ならお子さん1人ごとに2分の1が基本です。「難聴は遺伝するか」は、原因がわからないうちは答えられず、原因がわかると具体的な数字でお答えできる問いです。

🧬 遺伝のしかたと、お子さんに伝わる確率

遺伝のしかた どんなとき お子さんへの確率
常染色体潜性(劣性) 聞こえるご両親がどちらも同じ遺伝子の保因者 お子さん1人ごとに4分の1が難聴、2分の1が保因者
常染色体顕性(優性) ご両親のどちらかが同じ難聴 お子さん1人ごとに2分の1
X連鎖 X染色体にある遺伝子の変化 男の子と女の子で確率と症状の出方が違う
ミトコンドリア(母系) ミトコンドリアDNAの変化 母親から伝わり、父親からは伝わらない。病的変異を受け継ぐ可能性やその割合、発症の可能性は、変異の種類やヘテロプラスミーの状態で異なる

※潜性遺伝の確率はGeneReviews[3]、顕性遺伝の確率は[4]による。

潜性(劣性)遺伝:聞こえる両親から4分の1

ご両親がどちらも同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに、4分の1の確率で難聴に、2分の1の確率で保因者に、4分の1の確率でどちらの変化も受け継がない状態になります[3]。上のお子さんの結果で、下のお子さんの確率が変わることはありません。難聴のお子さんのきょうだいは、聞こえていても3分の2の確率で保因者です。

顕性(優性)遺伝:2分の1

顕性遺伝では、2本ある遺伝子のうち1本に変化があると難聴になりうるため、お子さん1人ごとに2分の1の確率で変化を受け継ぎます[4]。大人になってから少しずつ進む型が多く、変化を受け継いでも症状の程度に差があることがあります(表現度の違い)。また、変化を持っていても症状が現れないことがあります(浸透率)。ご家族に難聴の方がいないのに顕性遺伝の難聴になる場合は、ご本人の代で新しく起きた変化(de novo)の可能性も考えます。

X連鎖遺伝

X染色体にある遺伝子の変化では、X染色体を1本しか持たない男の子に症状が出やすく、母親が保因者のことがあります。確率は男の子か女の子かで変わるため、X連鎖遺伝のしくみを踏まえてご家族ごとに考えます。

ミトコンドリア遺伝(母系遺伝)

ミトコンドリアDNAは母親から受け継がれ、父親からは伝わりません。「母系遺伝の難聴」と呼ばれるのはこのためです。ただし、病的変異を受け継ぐ可能性やその割合、発症の可能性は、変異の種類や、正常なミトコンドリアDNAと変化したものが混在する「ヘテロプラスミー」の状態で異なります。日本の解析でも、ミトコンドリアDNAのm.3243A>Gやm.1555A>Gは多い原因の中に入っていました[2]。くわしくはミトコンドリア病をご覧ください。

両親とも難聴のとき

ご両親が同じ遺伝子による潜性遺伝の難聴なら、お子さんは原則として難聴になります。反対に、ご両親の原因の遺伝子が違えば、お子さんは両方の変化を1つずつ受け継ぐ保因者となり、聞こえることが多いと考えられます。ご両親とも難聴という同じ状況でも、原因によって見通しは正反対になります。ご両親それぞれの原因を調べることに、大きな意味があります。

4. 難聴と結婚・妊娠:家族に難聴の人がいるときに考えること

家族に難聴の方がいて結婚や妊娠を考えるときは、「ご家族の難聴の原因」「ご自身が保因者かどうか」「パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうか」の3つがわかると、お子さんへの確率を具体的に考えられます。難聴と結婚を結びつけて悩む方は少なくありません。わからないまま不安を抱えるより、確かめられることを確かめてから考えるほうが、選べることが増えます。

症状のないご自身が調べられること

ご家族の難聴の原因の遺伝子と変化がすでにわかっていれば、ご自身がその変化を持っているかを確かめられます。ご家族の原因がわかっていない場合は、難聴のご家族ご本人が検査を受けることに同意されれば、まずそのご家族がこの検査を受けると、ほかのご家族は同じ場所を調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめやすくなります。祖父母やきょうだいに難聴の方がいる場合も、誰の原因を調べるのがよいかを遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

パートナーの保因者検査

潜性遺伝の難聴では、パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、お子さんが同じ難聴になる可能性は低くなります。当院では、結婚前・妊娠前に受ける拡大版保因者スクリーニング(女性版)・男性版や、ファミリーセーフティ プラスをご相談いただけます。ファミリーセーフティ プラスは、NIPTと同日に採血するカップルの保因者検査で、単独では受けられません。二人で受ける意味は結婚相手と受けたい保因者検査で解説しています。

妊娠したときの選択肢

ご家族の原因の遺伝子と変化がわかっていれば、妊娠中に赤ちゃんが同じ変化を受け継いでいるかを、絨毛検査や羊水検査で調べられる場合があります。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。くわしくは羊水検査・絨毛検査をご覧ください。

GJB2による難聴は、当院のNIPTのどのプランでも標準の検査項目ではありません。ご家族ごとに個別にご相談して対応していることがあります。GJB2と出生前診断の考え方はGJB2遺伝子の出生前診断は可能?に、難聴のお子さんがいるご夫婦の考え方は遺伝性難聴のお子さんがいるご夫婦のNIPT遺伝カウンセリングにまとめています。

着床前診断(PGT-M)について

体外受精でできた受精卵を調べる着床前診断(PGT-M)は、日本では日本産科婦人科学会の審査を受けて行われます。学会の指針(2026年9月改定)は、対象を原則として「成人に達する前に、日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患」としており、難聴だけの場合は対象になりにくいと考えられます(2026年10月時点で確認)。

そのため、海外でPGT-Mを考える方もいます。当院は体外受精や着床前診断は行っていませんが、海外で使える英語の検査結果をお渡しできます(検査のときにお申し出ください)。PGT-Mの結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあるため、PGT-M後に妊娠した場合も、絨毛検査・羊水検査による確定検査について説明を受け、検討することが大切です。準備の進め方は海外でPGT-Mを考えている方へに、PGT-M以外の選択肢は着床前診断(PGT-M)だけが選択肢ではない理由にまとめています。

5. ほかの症状を伴う難聴(症候群性難聴):あとから出てくる症状に早く気づく

難聴のほかに、目・腎臓・甲状腺・心臓・髪や皮膚の色などの症状を伴う難聴を、症候群性難聴といいます。遺伝による言葉を覚える前の難聴の約20%がこの型です[1]。大切なのは、難聴が先に見つかり、ほかの症状はあとから出てくる病気があることです。原因の遺伝子が先にわかれば、症状が出る前から見張りを始められます。

🧬 この検査の対象に含まれる主な症候群性難聴

病気 難聴以外の症状 主な遺伝子 遺伝のしかた
アッシャー症候群 網膜色素変性(暗いところで見えにくい・視野が狭くなる)。型によって平衡感覚の障害 MYO7A・USH1C・CDH23・PCDH15・USH1G・USH2A・ADGRV1・WHRN・CLRN1など 潜性(劣性)
ペンドレッド症候群 甲状腺腫(多くは10代以降)、前庭水管拡大 SLC26A4 潜性(劣性)
ワーデンブルグ症候群 前髪の一部が白い、虹彩の色の違い、皮膚の白斑、目と目の間が離れて見える PAX3・MITF・SOX10・SNAI2・EDN3・EDNRB 顕性(優性)が中心
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群 心電図のQT延長(失神・突然死の危険) KCNQ1・KCNE1 潜性(劣性)
アルポート症候群 血尿・腎臓の働きの低下、目の症状 COL4A3・COL4A4・COL4A5(COL4A5とCOL4A6にまたがる欠失では、びまん性平滑筋腫症を伴うことがある) X連鎖が中心(潜性・顕性の型もある)
鰓耳腎症候群 首の瘻孔、耳の前の小さな穴(耳瘻孔)、腎臓の形の異常 EYA1・SIX1(SIX5との関連は確立していない) 顕性(優性)
CHARGE症候群 目のコロボーマ、心臓の病気、後鼻孔閉鎖など CHD7 顕性(優性)
スティックラー症候群 強い近視・網膜剥離、口蓋裂、関節の症状 COL2A1・COL11A1・COL11A2・COL9A1・COL9A2・COL9A3 顕性(優性)と潜性(劣性)の型がある
NF2関連シュワノマトーシス 両側の前庭神経鞘腫(聴神経腫瘍)などの腫瘍 NF2 顕性(優性)
ジストニア難聴症候群1型 ジストニア(体が意図せずねじれる)、視神経の障害 TIMM8A X連鎖
ツェルヴェーガー症候群スペクトラム 肝臓・目・脳などの症状を伴う代謝の病気 PEX1・PEX6など 潜性(劣性)
ビオチニダーゼ欠損症 けいれん・皮膚や髪の症状などを伴う代謝の病気 BTD 潜性(劣性)

※病気の分類と遺伝のしかたはGeneReviewsの遺伝性難聴総論[1]による。ワーデンブルグ症候群の症状は[4]による。

このほか、トリーチャーコリンズ症候群(TCOF1・POLR1C・POLR1D)、ウォルフラム症候群(WFS1)、アルストローム症候群(ALMS1)、シャルコー・マリー・トゥース病(PMP22)なども、この検査の対象遺伝子に含まれています。NF2遺伝子は、当院のNIPTではインペリアルプランの対象です(妊娠9週から。6〜8週は臨床研究)。

ワーデンブルグ症候群は日本人にもいる?

ワーデンブルグ症候群は日本人にもみられ、日本人では原因の遺伝子の内訳が欧米と違う可能性が報告されています。GeneReviewsによると、ワーデンブルグ症候群全体の有病率は2万〜4万人に1人で、生まれつき耳の聞こえない子どもの約3%を占めます[4]。

同じGeneReviewsは、日本人の集団で、1型の目安となる「目と目の間の広さの指標」を満たした人の61%が、1型の原因であるPAX3ではなく、MITF・SOX10・EDNRBに変化をもっていたと紹介しています。そのうえで、この指標の基準がすべての民族にあてはまるとは限らない可能性を指摘しています[4]。見た目の特徴だけで型を決めるのは難しく、日本人ではとくに、複数の遺伝子をまとめて調べる意味があります。ワーデンブルグ症候群にしぼって調べたい場合は、ワーデンブルグ症候群NGS遺伝子パネル検査もあります。

6. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子がわかると、聞こえの見通し、あとから出る症状の見張り、避けたい薬、補聴器・人工内耳の検討、ご家族の検査まで、次に打てる手が具体的になります。当院は治療を行っていないため、治療や見張りは専門の医療機関で受けていただきます。どの診療科で何を確かめればよいかを、結果とあわせてご説明します。

聞こえの見通しがわかる(進む型か、変わらない型か)

遺伝子によって、聞こえが生まれつきのまま変わりにくい型と、変動したり進んだりする型があります。たとえばSLC26A4による難聴では、新生児聴覚検査に合格したあとで聞こえが変動しながら低下し、進み方がとても速いことがあるとされています[3]。進む型とわかれば、聴力検査の間隔を短くするなどの備えができます。また、GeneReviewsは、騒音には「これなら安全」という基準はないとしており、聞こえを守るために大きな音を避けることも大切です[1]。

補聴器・人工内耳を選ぶときの手がかりになる

GeneReviewsでは、高度〜重度の難聴がある生後9か月を過ぎた子どもで、人工内耳を検討できるとされています[1]。日本では、耳鼻咽喉科で年齢・聴力・補聴器の効果などをもとに判断します。原因の遺伝子がわかっていると、難聴が内耳の中で起きているのか、進む型なのかなど、補聴器と人工内耳を考えるときの材料が増えます。

GeneReviewsは、すでに人工内耳を入れた耳には遺伝子治療は受けられないとも記しています[1]。遺伝子治療の対象になりうる遺伝子(下のOTOFなど)の場合は、このことも知ったうえで、耳鼻咽喉科で人工内耳の時期を相談するとよいでしょう。

目・腎臓・甲状腺・心臓の見張りを早く始める

避けたほうがよい薬:ミトコンドリアDNAの変化とアミノグリコシド系抗菌薬

ミトコンドリアDNAのMT-RNR1遺伝子にm.1555A>Gなどの変化がある方は、アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン・ストレプトマイシンなど)で難聴が起こりやすくなります。米国の薬理遺伝学の指針(CPIC)は、こうした変化をもつ方には、命に関わる感染症などでほかに安全で効果のある薬がない場合を除き、アミノグリコシド系抗菌薬を避けるよう勧めています[5]。GeneReviewsも、MT-RNR1の一部の変化をもつ方は、ときどき使うだけでもほぼ全員に難聴が起こるとしています[1]。

⚠️ この変化は181遺伝子パネルでは調べられません

難聴遺伝子パネル検査(181遺伝子)が調べるのは、細胞の核にある遺伝子です。ミトコンドリアDNA(MT-RNR1など)は対象に含まれていないため、この検査が陰性でも、アミノグリコシド系抗菌薬への注意が不要とは言えません。母方の家系に難聴の方が多い場合は、遺伝カウンセリングでミトコンドリア病遺伝子検査パネルなどの検査をご相談ください。

頭を打つこととスポーツ:前庭水管拡大がある場合

SLC26A4による難聴で見られる前庭水管拡大では、頭を打ったあとに聞こえが落ちたという報告があり、以前は頭をぶつけないよう強く勧められていました。最新のGeneReviews(2025年改訂)は、頭部外傷は聞こえが進む主な危険因子とは考えるべきでないとし、ぶつかり合うスポーツをするかどうかは、ご家族が判断するよう勧めています。避けても進行を防げるという根拠は示されていないためです[3]。気になる場合は、耳鼻咽喉科の主治医とご相談ください。

遺伝子治療はどこまで来ているか

OTOF遺伝子の両方のコピーに変化があることによる重い難聴では、2026年4月23日に米国FDAが遺伝子治療を承認しました(迅速承認)。FDAの発表によると、対象は聞こえの程度が高度〜重度(90dB HLを超える)の子どもと大人で、承認は生後10か月〜16歳の24人を対象とした治験にもとづき、有効性を評価できた20人の80%で聞こえが改善しました。迅速承認のため、効果がどれくらい続くか、言葉の発達や生活の質への効果は、引き続き確かめられます。米国の承認と日本の承認は別であり、日本で受けられる治療については専門の医療機関で確認が必要です。原因の遺伝子がわかっていることは、こうした治療の対象になるかを考える出発点になります。

7. 難聴遺伝子パネル検査(181遺伝子)の内容

難聴遺伝子パネル検査は、難聴の原因として報告されている181の遺伝子を一度に調べる検査です。難聴だけの型の遺伝子と、アッシャー症候群・アルポート症候群・ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群・ワーデンブルグ症候群・鰓耳腎症候群などの症候群性難聴の遺伝子の両方を含みます。この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性のがんや周産期を含む遺伝子検査全般を手がける米国の専業会社のうち、2025年通期の売上高の上位3社を指しています。

1つずつ遺伝子を調べる方法では、Aの遺伝子で見つからなければBの遺伝子へ、と検査を重ねる必要がありました。パネル検査なら、181の遺伝子をまとめて調べられます。遺伝子検査の基本的なしくみもあわせてご覧ください。

どんな人が受けるとよいか

  • ●新生児聴覚検査で「要再検(リファー)」となり、精密検査で難聴とわかった方
  • ●言葉の発達がゆっくりで、聞こえの検査で難聴を指摘された方
  • ●子どものころ、または大人になってから聞こえにくさが進んでいる方
  • ●補聴器や人工内耳を考えている、またはすでに使っている方
  • ●ご家族に難聴の方がいる方
  • ●目・腎臓・甲状腺・心臓・髪や皮膚の色など、ほかの症状を伴う難聴の方
  • ●結婚や妊娠を考えていて、ご家族の難聴が気になる方

新生児聴覚検査で再検査になると、多くのご家族が不安になります。再検査はあくまで「詳しく調べる必要がある」という意味で、その時点で難聴が決まったわけではありません。精密検査で難聴とわかったあと、原因を調べる方法のひとつがこの検査です。

どの難聴パネルを選ぶか

🔍 症状に合わせた難聴の検査の選び方

こんなとき 向いている検査
難聴の原因を広く調べたい/ほかの症状があるか迷う このページの難聴遺伝子パネル検査(181遺伝子)
難聴だけで、ほかの症状がない 非症候群性難聴NGS遺伝子パネル検査
目・腎臓・甲状腺・心臓などの症状を伴う 症候性難聴NGS遺伝子検査(92遺伝子パネル)
難聴に、暗いところでの見えにくさや視野の狭さがある アッシャー症候群 遺伝子検査(NGSパネル)
難聴に、髪・目・皮膚の色の変化がある ワーデンブルグ症候群NGS遺伝子パネル検査
難聴に、心電図のQT延長がある ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群遺伝子検査(NGSパネル)
難聴以外にも多くの症状がある/パネルで原因が見つからなかった 全エクソーム検査(WES)

どの検査が合うかは、聞こえの検査の結果・ほかの症状・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

対象遺伝子(181遺伝子)

対象遺伝子:ABHD12, ACTB, ACTG1, ADCY1, ADGRV1, AIFM1, ALMS1, AMMECR1, ANKH, ASAH1, ATP6V1B1, BCS1L, BDP1, BSND, BTD, CABP2, CACNA1D, CATSPER2, CCDC50, CD164, CDC14A, CDC42, CDH23, CEACAM16, CEP78, CHD7, CHSY1, CIB2, CISD2, CLDN14, CLIC5, CLPP, CLRN1, COCH, COL11A1, COL11A2, COL2A1, COL4A3, COL4A4, COL4A5, COL4A6, COL9A1, COL9A2, COL9A3, CRYL1, CRYM, DCDC2, DIABLO, DIAPH1, DIAPH3, DNMT1, DSPP, EDN3, EDNRB, ELMOD3, EPS8, ERCC2, ERCC3, ESPN, ESRRB, EYA1, EYA4, FGF3, FGFR1, FGFR2, FOXI1, GATA3, GIPC3, GJA1, GJB2, GJB3, GJB6, GPSM2, GRHL2, GRXCR1, GRXCR2, GSDME, HARS, HARS2, HGF, HOMER2, HOXB1, HSD17B4, ILDR1, KARS, KCNE1, KCNJ10, KCNQ1, KCNQ4, KITLG, LARS2, LHFPL5, LHX3, LOXHD1, LRP2, LRTOMT, MANBA, MARVELD2, MET, MIR96, MITF, MPZL2, MSRB3, MYH14, MYH9, MYO15A, MYO1C, MYO3A, MYO6, MYO7A, NARS2, NDP, NF2, NLRP3, OPA1, OSBPL2, OTOA, OTOF, OTOG, OTOGL, P2RX2, PAX3, PCDH15, PDZD7, PEX1, PEX6, PJVK, PMP22, PNPT1, POLR1C, POLR1D, POU3F4, POU4F3, PRPS1, PTPRQ, RDX, RIPOR2, ROR1, S1PR2, SEMA3E, SERPINB6, SIX1, SIX5, SLC17A8, SLC19A2, SLC26A4, SLC26A5, SLC4A11, SLC52A2, SLC52A3, SLITRK6, SMAD4, SMPX, SNAI2, SOX10, STRC, SYNE4, TBC1D24, TBL1X, TBX1, TCOF1, TECTA, TFAP2A, TIMM8A, TJP2, TMC1, TMEM132E, TMIE, TMPRSS3, TMPRSS5, TNC, TPRN, TRIOBP, TSPEAR, TWNK, TYR, USH1C, USH1G, USH2A, WFS1, WHRN(181遺伝子)

このうち、OTOAはよく似た配列(偽遺伝子)の影響でエクソン20〜28(NM_144672.3)の変化を確実には見つけられません。STRCは、よくあるSTRC/CATSPER2の連続した欠失は見つけられますが、それ以外の変化はふつう評価されません。TPRNはエクソン1を調べられません。

塩基配列と、欠失・挿入は料金に含まれます。意義がまだわからない変化(VUS)を報告から除くオプション(無料)もあります。カバレッジ(読み取りの精度の目安)は、対象の99%以上の領域で20回以上の読み取り(≥99% at 20x)です。

検体とオンライン診療

検体は、血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色のキャップ)、抽出したDNA(EBバッファー中3μg)、頬の粘膜を綿棒でこすったもの、唾液(採取キットをお送りします)のいずれかです。唾液・頬の粘膜・血液のいずれも、オンライン診療でお受けいただけます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院へお送りいただきます。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。ご自身で先に検体を採らないでください。

この検査でわかること・わからないこと

  • ●調べられない変化:染色体の転座や逆位、繰り返し配列の伸長、遺伝子の働きを調節する領域(プロモーターなど)や、エクソンから20塩基以上離れたイントロンの奥の変化は対象外です。
  • ●ミトコンドリアDNA:m.1555A>Gなど、ミトコンドリアDNAの変化は対象に含まれていません(第6章)。
  • ●欠失・重複:1つの遺伝子全体、または2つ以上続くエクソンの大きさの欠失・重複は見つけられますが、1つのエクソンだけの欠失・重複は通常は検出されません。見つかった欠失・重複は別の方法(qPCRまたはMLPA)で確かめます。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある「モザイク」を見つけることは目的としていません。
  • ●よく似た配列:偽遺伝子など、よく似た配列がある遺伝子では、見つけにくい変化があります(上のOTOA・STRC・TPRN)。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。VUSはそれだけで診断を確定したり、ご家族の発症リスクを判断したりする根拠にはしません。ただし、その意味を調べるために、ご家族の同意のもとで同じ変化の有無を調べることはあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で見つけにくい変化や、まだ難聴との関係がわかっていない遺伝子、先天性サイトメガロウイルス感染症など遺伝以外の原因の可能性が残ります。

結果の報告書

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

8. 料金と結果が出るまでの期間

難聴遺伝子パネル検査(181遺伝子)の料金は税込330,000円で、結果までは2〜3週間です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。当院の検査はすべて自費診療です。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取唾液・頬の粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別。出生前の遺伝カウンセリングは30分33,000円(税込)
結果までの期間 2〜3週間
至急オプション 55,000円(結果までの期間が約7日短くなります)
VUS除外オプション 無料
検体 血液・抽出DNA・頬の粘膜・唾液
オンライン診療 可能(オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。)

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【難聴の原因を知ることは、これからの地図をつくること】

「難聴の原因を調べても、聞こえが治るわけではないのでは」と考える方もいると思います。たしかに、多くの遺伝性難聴では、原因がわかっても今すぐ聞こえが元に戻るわけではありません。それでも私は、原因を知ることには大きな意味があると考えています。

遺伝子がわかると、聞こえが進む型かどうか、目や腎臓、心臓にあとから症状が出る型かどうかが見えてきます。避けたほうがよい薬もわかります。次のお子さんに伝わる確率も、ご家族ごとの数字でお伝えできるようになります。原因がわからないままでは、「念のため全部に気をつける」か「何も気にしない」かのどちらかになりがちです。原因がわかれば、気をつけるべきことにしぼって備えられます。私はこれを、これからの人生の地図をつくることだと考えています。

私自身、遺伝性の病気の当事者です。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。ご家族に難聴の方がいて、結婚や妊娠を前に悩んでいる方には、わからないまま悩み続けるより、確かめられることを確かめてから考えてほしいと思っています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 難聴は遺伝しますか?

遺伝することがあります。遺伝性難聴のまとめ(GeneReviews)では、先進国で言葉を覚える前に見つかる難聴の約65%が遺伝の原因とされています。ただし、遺伝が原因の難聴でも、ご家族に難聴の方がいないことは少なくありません。聞こえるご両親がそろって同じ遺伝子の変化を1つずつもっている「潜性(劣性)遺伝」が多いためです。

Q2. 先天性難聴は子どもに遺伝しますか?

原因と遺伝のしかたによって大きく変わります。潜性(劣性)遺伝の難聴なら、パートナーが同じ遺伝子の変化をもっていなければ、お子さんが同じ難聴になる可能性は低くなります。顕性(優性)遺伝なら、お子さん1人ごとに2分の1です。ミトコンドリアDNAの変化は母親から伝わり、父親からは伝わりません(伝わり方は変異の種類やヘテロプラスミーの状態で異なります)。原因の遺伝子がわかると、確率を具体的にお伝えできます。

Q3. 両親とも難聴だと、子どもは必ず難聴ですか?

必ずではありません。ご両親が同じ遺伝子による潜性(劣性)遺伝の難聴なら、お子さんは原則として難聴になります。一方、ご両親の原因の遺伝子が違えば、お子さんは両方の変化を1つずつ受け継ぐ保因者となり、聞こえることが多いと考えられます。ご両親それぞれの原因を調べると、見通しがはっきりします。

Q4. 突発性難聴は遺伝しますか?

突発性難聴は、ある日突然片方の耳が聞こえにくくなる病気で、親から子へ受け継がれる病気としては扱われていません。ただし、大人になってから少しずつ進む難聴の中には、顕性(優性)遺伝のものがあります。ご家族に同じような難聴の方が何人もいる場合は、遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q5. 母系遺伝の難聴とは何ですか?

ミトコンドリアDNAの変化による難聴のことです。ミトコンドリアDNAは母親から受け継がれ、父親からは伝わりません。病的変異を受け継ぐ可能性やその割合、発症の可能性は、変異の種類やヘテロプラスミーの状態で異なります。日本で多い変化のひとつにm.1555A>Gがあり、アミノグリコシド系抗菌薬で難聴が起こりやすくなります。なお、ミトコンドリアDNAはこの181遺伝子パネルの対象には含まれていません。

Q6. 結婚相手も検査を受けたほうがいいですか?

ご本人やご家族の難聴が潜性(劣性)遺伝とわかっている場合は、パートナーが同じ遺伝子の変化をもっているかを調べると、お子さんへの確率がわかります。当院では、パートナーの方の保因者検査(拡大版保因者スクリーニング)もご相談いただけます。受けるかどうかは、遺伝カウンセリングで十分に考えてから決めていただきます。

Q7. 先天性難聴は治る可能性がありますか?

多くの遺伝性難聴では、今のところ原因そのものを治す治療はなく、補聴器や人工内耳で聞こえを補うことが中心です。OTOF遺伝子の両方のコピーに変化があることによる重い難聴では、2026年4月に米国FDAが遺伝子治療を承認しました(迅速承認)。米国の承認と日本の承認は別で、日本で受けられるかは専門の医療機関での確認が必要です。原因の遺伝子がわかっていることは、こうした治療の対象になるかを考える出発点になります。

Q8. アミノグリコシド系抗菌薬は避けたほうがいいのですか?

ミトコンドリアDNAのMT-RNR1にm.1555A>Gなどの変化がある方は、米国の薬理遺伝学の指針(CPIC)で、命に関わる感染症などでほかに安全な薬がない場合を除いて、アミノグリコシド系抗菌薬を避けるよう勧められています。この変化は181遺伝子パネルでは調べられないため、母方に難聴の方が多い場合は、遺伝カウンセリングで別の検査をご相談ください。

Q9. 検査で原因が見つからなかったら、遺伝ではないということですか?

そうとは限りません。この検査では見つけにくい種類の変化や、まだ難聴との関係がわかっていない遺伝子が原因のこともあります。先天性サイトメガロウイルス感染症など、遺伝以外の原因もあります。陰性の結果の意味は、聴力の検査やご家族の情報とあわせて臨床遺伝専門医がご説明します。

Q10. 保険は使えますか?

当院の検査はすべて自費診療です。難聴遺伝子パネル検査(181遺伝子)は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。難聴の原因の遺伝子がわかれば、聞こえの見通しやあとから出る症状への備え、避けたい薬だけでなく、ご家族の検査や結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、パートナーの方の保因者検査、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Shearer AE, Hildebrand MS, Odell AM, Smith RJH. Genetic Hearing Loss Overview. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle (Last revision 2026 Jun 2). [NCBI Bookshelf NBK1434]
  • [2] Usami S, Nishio SY. The genetic etiology of hearing loss in Japan revealed by the social health insurance-based genetic testing of 10K patients. Hum Genet. [DOI: 10.1007/s00439-021-02371-3](PMCID: PMC9035015)
  • [3] Smith RJH, Azaiez H, Odell AM. SLC26A4-Related Sensorineural Hearing Loss (Pendred Syndrome and Nonsyndromic Enlarged Vestibular Aqueduct). In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 1998 Sep 28 (Last revision 2025 Apr 3). [NCBI Bookshelf NBK1467]
  • [4] Milunsky JM. Waardenburg Syndrome Type I. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2001 Jul 30 (Updated 2022 Oct 20). [NCBI Bookshelf NBK1531]
  • [5] McDermott JH, Wolf J, Hoshitsuki K, et al. Clinical Pharmacogenetics Implementation Consortium Guideline for the Use of Aminoglycosides Based on MT-RNR1 Genotype. Clin Pharmacol Ther. 2022;111(2):366-372. [DOI: 10.1002/cpt.2309](PMID: 34032273)

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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