この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

ワーデンブルグ症候群(ワールデンブルグ症候群とも書きます)は、生まれつきの難聴と、目・髪・皮膚の色の変化を特徴とする遺伝性の病気です。原因の遺伝子と型(1〜4型)によって、合併しやすい症状も、遺伝のしかたも違います。生まれ持った遺伝子は一生変わらないので、一度の検査でわかったことは、お子さんの聞こえへの備えから、ご家族の検査、これからの妊娠の計画まで、ずっと使える情報になります。このページでは、症状・日本人での報告・遺伝のしかたと、8つの遺伝子をまとめて調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
ワーデンブルグ症候群の原因として知られる8つの遺伝子(EDN3・EDNRB・KIT・KITLG・MITF・PAX3・SNAI2・SOX10)をまとめて調べ、原因の遺伝子と、どの型にあたるかの手がかりがわかります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
生まれつきの難聴に、目の色の違い・白い前髪・若いうちの白髪・皮膚の白斑などが重なる方、ご家族にワーデンブルグ症候群の方がいる方です。日本人では、目頭の離れ具合(W指数)だけでは型を決めにくいことも報告されています。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。顕性(優性)遺伝の型ならお子さんに受け継がれる確率は2分の1です。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. ワーデンブルグ症候群(ワールデンブルグ症候群)とは
ワーデンブルグ症候群は、生まれつきの感音難聴と、目(虹彩)・髪・皮膚の色素の変化を特徴とする遺伝性の病気です。英語ではWaardenburg syndrome(WS)といい、日本語では「ワーデンブルグ症候群」「ワールデンブルグ症候群」の2つの書き方が使われていますが、同じ病気です。
難聴は、音を感じ取る内耳や神経に原因がある感音難聴です。症状の出方には個人差が大きく、同じ家族の中でも、難聴がある人・目の色だけが違う人・ほとんど症状に気づかない人がいます。
どれくらいの人がなる病気か
欧州を中心とした報告では、ワーデンブルグ症候群の頻度はおよそ4万2,000人に1人と推定され、生まれつきの難聴全体の1〜3%を占めるとされています[2]。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは、1型の頻度を2万〜4万人に1人、生まれつき耳が聞こえない子どもの約3%と記載しています[1]。どちらも、集団全体を遺伝子で調べた数字ではないため、目安として受け取ってください。日本人だけを対象にした頻度の数字は、今回確かめた英語の論文の中には見つかりませんでした。
4つの型(1型〜4型)
ワーデンブルグ症候群は、難聴と色素の変化に、どんな症状が加わるかで4つの型に分けられます[2]。型によって原因になりやすい遺伝子が違うため、遺伝子検査で原因がわかると、型の判断の大きな手がかりになります。
🧬 ワーデンブルグ症候群の4つの型
※型の定義と遺伝子の割合はPingaultらの総説[2]、KITLGはZazo Secoらの報告[3]とGeneReviews[1]による。割合は欧州を中心とした報告の値です。
なぜ難聴と色の変化が同時に起こるのか
ワーデンブルグ症候群の原因遺伝子は、おなかの中で体ができていく途中に、神経堤細胞という細胞から色素をつくる細胞(メラノサイト)が育ち、体の各所へ移動していくのを助けています。メラノサイトは皮膚や髪、目の虹彩だけでなく、内耳にもあり、聞こえのしくみに欠かせない役割を担っています。そのため、この細胞がうまく育たないと、色の変化と難聴が同時に起こります。神経堤細胞の異常で起こる病気をまとめて神経堤病変と呼び、腸の神経(ヒルシュスプルング病)にも関わる4型は、その代表です。
PAX3・SOX10・MITFの3つの遺伝子は、互いに働きを調節しあう関係にあることもわかっています[2]。病気のしくみをさらに詳しく知りたい方は、ワーデンブルグ症候群(疾患の詳しい解説)もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
2. 症状と特徴:難聴・目・髪・皮膚
主な症状は、生まれつきの感音難聴、目の色の違い(虹彩異色症)、白い前髪、若いうちからの白髪、皮膚の白斑です。すべての症状がそろう人はむしろ少なく、どの症状がどの程度出るかは、型や原因遺伝子、そして一人ひとりで違います。
難聴:型によって頻度が違う
GeneReviewsによると、1型で生まれつきの感音難聴がみられるのは約60%(表では47〜58%)、2型では77〜80%と、2型のほうが多いとされています[1]。片耳だけのこともあれば両耳のこともあり、程度もさまざまです。1型の難聴はふつう進行しないとされています[1]。KITLG遺伝子が原因の家族では、片耳だけ、または左右で程度が違う難聴が多いことが報告されています[3]。
目の色:虹彩異色症・鮮やかな青い目
左右の目の色が違う、1つの目の中で色が部分的に違う、あるいはとても鮮やかな青い目になることがあります。1型では、左右の目の色が違う(虹彩異色症)人は15〜31%とされています[1]。
髪と皮膚:白い前髪・若白髪・白斑
1型では、前髪の一部がまとまって白くなる「白い前髪(white forelock)」が43〜48%、30歳より前に白髪が出る早期白髪が23〜38%にみられます[1]。生まれつき皮膚の一部の色が抜けている白斑も、診断の手がかりになる所見です[1]。
顔立ちの特徴
1型・3型では、目頭が外側にずれて、目と目の間が離れて見える「内眼角開離」がみられます。そのほか、左右の眉がつながる、眉の内側が広がる、鼻の付け根が広く高い、といった特徴が診断の補助になる所見として挙げられています[1]。これらは診断のための医学的な所見で、見た目の印象だけで病気を決めることはできません。
3型・4型で気をつける合併症
3型では腕や手の筋肉・関節・骨の異常(関節が曲がったままになる、手の骨がくっつく、指がくっつくなど)が、4型ではヒルシュスプルング病が加わります[1][2]。ヒルシュスプルング病は、腸の一部に神経の細胞がなく、生まれてすぐからの便秘やおなかの張りなどで見つかる病気です。
SOX10遺伝子が原因の場合は、末梢神経や脳の神経の症状を伴うことがあり、PCWH症候群(末梢の脱髄性神経障害・中枢の髄鞘形成不全・ワーデンブルグ症候群・ヒルシュスプルング病)と呼ばれます[2]。また、日本人の女の子で、SOX10の変化による4型と、思春期が来ない・においがわからないカルマン症候群を同時にもつ例が報告されています。著者らは、SOX10が原因の方では、思春期になってから性腺の働きの低下がわかることがあるため、経過をみていくべきだとしています[4]。カルマン症候群遺伝子検査のページもあわせてご覧ください。
3. 日本人のワーデンブルグ症候群:報告とW指数の注意点
日本人のワーデンブルグ症候群も、PAX3やSOX10などの遺伝子の変化による例が英語の論文で報告されています。また日本の研究から、日本人では目頭の離れ具合(W指数)だけで1型と2型を見分けるのは難しいことがわかってきました[1]。
日本人での報告
日本人の男の子で、片側の目の色の変化と片耳の生まれつきの難聴などがあり、PAX3遺伝子にこれまで知られていなかった変化が見つかった1型の例が報告されています[5]。前の章で紹介したSOX10による4型とカルマン症候群の例も、日本人の女の子の報告です[4]。原因遺伝子の種類そのものは、日本人でも欧米と同じ遺伝子が関わっています。
W指数だけでは型を決められない
1型の診断では、目頭・瞳・目じりの間の距離から計算する「W指数」が1.95を超えるかどうかが使われてきました。ところが、GeneReviewsが紹介している日本の研究(Minamiら、2019年)では、W指数が1.95を超えて1型とされた日本人のうち61%が、PAX3ではなくMITF・SOX10・EDNRBの変化をもっていました。GeneReviewsは、W指数1.95という基準は、すべての民族に当てはまるわけではないとしています[1]。
型によって、合併症への備え(4型ならヒルシュスプルング病、SOX10なら神経や思春期の経過)や、ご家族への遺伝のしかたが変わります。日本人では見た目の計測だけで型を決めにくいからこそ、原因遺伝子を調べて型を確かめることに意味があります。
4. 遺伝のしかた:型と遺伝子によって違う
ワーデンブルグ症候群の多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、親がもつ原因の変化は、お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継がれます[1]。ただし、4型のEDNRB・EDN3など、遺伝のしかたが違う遺伝子もあります。
顕性(優性)遺伝の型:お子さんへは2分の1
常染色体顕性(優性)遺伝では、対になった2本の遺伝子のうち1本に原因の変化があれば発症しうるため、親から子へ伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です。PAX3による1型・3型、MITFによる2型、SOX10による2型・4型がこの形です[1][2]。GeneReviewsによると、1型の方の多くは親御さんも同じ病気をもっており、新しく起きた変化(de novo)と考えられるのは少数です[1]。
4型のEDNRB・EDN3:「潜性」と「顕性」の中間
EDNRBやEDN3が原因の4型は、両親から1つずつ変化を受け継いで発症する常染色体潜性(劣性)遺伝の形をとることが多い一方、1つだけの変化で症状が出る家族もあり、総説は「完全な潜性でも完全な顕性でもない」と表現しています[2]。潜性遺伝の形であれば、ご両親とも保因者のとき、次のお子さんで発症する確率は4分の1です。このため、EDNRB・EDN3が原因とわかった場合は、ご両親の検査や、きょうだいが将来結婚・妊娠を考えるときの保因者の検査が意味をもちます。
同じ家族でも症状の重さが違う
同じ原因でも症状の出方が人によって違うことを「表現型の多様性」といいます。GeneReviewsは、1型ではPAX3の変化をもつ人はほぼ全員に何らかの所見が出る(浸透率はほぼ完全)一方、症状の組み合わせや程度は家族の中でも違うとしています[1]。KITLGが原因の家族では、変化をもっていても症状が出ない人がいて、浸透率は60〜67%と推定されています[3]。
⚠️ 「自分は目の色が違うだけだから、子どもも軽い」とは言えません
親御さんは目の色や白い前髪だけで難聴がなくても、同じ変化を受け継いだお子さんに生まれつきの難聴が出ることがあります。また、出生前に変化を受け継いだかどうかがわかっても、症状の重さまではわからないとされています[1]。だからこそ、ご家族の誰かがワーデンブルグ症候群とわかったときは、症状の有無だけで判断せず、知ったうえで計画することに意味があります。
家族歴がない場合:新しく起きた変化とモザイク
ご家族に同じ病気の方がいなくても、お子さんの代で新しく変化が起きて発症することがあります。このとき、症状のない親御さんの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性は否定できません。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは人によって違い、実際の診療ではわかりません。血液で調べた結果も、生殖細胞の割合の目安にはなりません。そのため、次のお子さんへの確率は「最大で2分の1」と考えます。「新しく起きた変化だから、次は大丈夫」と小さく見積もらないことが大切です。
5. どんな人がこの検査を受けるとよいか
生まれつきの難聴に色素の変化が重なる方、ご家族にワーデンブルグ症候群の方がいる方、結婚や妊娠を考えていて家族歴が気になる方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは型も遺伝のしかたも決めきれないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
お子さんに生まれつきの難聴があり、原因を知りたい方
新生児聴覚スクリーニングなどで難聴がわかり、目の色の違い・白い前髪・白斑などがあるときは、ワーデンブルグ症候群を考えます。名前がつくと、次の一手が決まります。補聴器や人工内耳の検討、4型ならおなかの症状への備え、SOX10なら神経や思春期の経過をみていくこと、など、受けるべき検査や気をつけることがはっきりします。エクソーム・ゲノム検査の研究167件を調べた系統的レビューでは、95%の研究で、患者さんやご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告されています(変化の中身や大きさは研究ごとに違います)[6]。
ご自身に色素の変化があり、ご家族の難聴が気になる方
大人になってから、ご家族の難聴をきっかけに「自分の白い前髪や目の色も関係があるのでは」と気づく方もいます。あなたの1回の検査結果は、ご両親・きょうだい・お子さんが自分のことを考える手がかりになります。原因の変化がわかれば、ほかのご家族は同じ場所を調べるだけで、受け継いでいるかを確かめられます。
結婚・妊娠を考えている方
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、これからの人生を計画したいと考える方もいます。英国でハンチントン病の発症前の検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[7]。病気は違いますが、「知って計画を立てたい」という思いは、ワーデンブルグ症候群のご家族にも通じるものだと思います。原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに出生前に調べるかどうかも含めて、前もって考えることができます(第8章)。
この検査より別の検査が向いている場合
難聴に目・髪・皮膚の色素の変化が重なるなら、まずこの検査です。一方で、症状がワーデンブルグ症候群らしくない場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。比べているのは検査の種類で、どれも当院で受けられます。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングでご相談ください。白皮症については白皮症(眼皮膚白皮症)総論、難聴の遺伝全般は遺伝性難聴 総論で解説しています。
6. この検査で調べる8つの遺伝子
この検査では、ワーデンブルグ症候群と、見分けが必要な病気に関わる8つの遺伝子(EDN3・EDNRB・KIT・KITLG・MITF・PAX3・SNAI2・SOX10)を、まとめて一度に調べます。遺伝子の文字(塩基)の変化に加えて、遺伝子の一部が欠けたり増えたりする変化(欠失・重複)も、料金の中で調べます。
🧪 ワーデンブルグ症候群NGS遺伝子パネル検査で調べる遺伝子
※PAX3の検出の割合と、まだら症(KIT・SNAI2)はGeneReviews[1]、2型・4型の割合と遺伝のしかたはPingaultらの総説[2]、KITLGはZazo Secoらの報告[3]、カルマン症候群はHamadaらの報告[4]による。
まだら症(piebaldism)は、白い前髪や、おでこの中央・眉の内側の色が抜けるのが特徴の病気で、ワーデンブルグ症候群と似ていますが、目の色の違いや難聴はまれとされています[1]。見た目が似ている病気をまとめて調べられるのも、このパネル検査の役割です。以前は、1つの遺伝子を調べて見つからなければ次の遺伝子へ、と順番に検査する必要がありましたが、この検査では8つの遺伝子を一度に調べます。
7. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、8つの遺伝子のたんぱく質をつくる部分(とその境目)にある、塩基の変化と小さな挿入・欠失、そして遺伝子の一部〜全体の欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●読み取りの精度:調べる範囲の99%以上を、同じ場所を20回以上くり返し読み取る精度で調べます。くり返し読むほど、読み間違いと本当の変化を見分けやすくなります。
- ●欠失・重複の見つけ方:遺伝子1つまるごとの欠失・重複は血液と頬の粘膜で、2つ以上続くエクソン(遺伝子の区切り)の大きさの変化は血液の検体でのみ見つけられます。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることはあっても、決まって検出できるわけではありません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●調べられない変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、繰り返し配列が長くなる変化、遺伝子の働きを調節する領域や、エクソンから離れたイントロンの奥の変化は、この検査では見つけられません。よく似た配列がほかにある場所では、読み取りが難しいことがあります。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態を見つけることは、この検査の目的に入っていません。腫瘍の組織を調べる検査でもありません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。ご希望によりVUSを報告から除くこともできます(無料)。
- ●陰性でも否定はできません:2型では、総説の時点で約70%が原因遺伝子不明とされていました[2]。この8遺伝子に変化が見つからなくても、症状からワーデンブルグ症候群と診断されることがあります。
8. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。
陽性だったとき:型がわかり、備えが決まる
原因の遺伝子がわかると、型の判断が確かになり、何に気をつけて過ごせばよいかが決まります。GeneReviewsは、診断がついたら聴力の評価を行い、難聴の程度に合わせて対応するよう勧めており、ワーデンブルグ症候群の方への人工内耳は成功していると記載しています[1]。4型にあたる遺伝子(SOX10・EDNRB・EDN3)なら腸の症状への備えを、SOX10なら神経の症状や思春期の経過をみていくことを、主治医と相談できます[2][4]。
ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき
顕性遺伝の型と確定した場合、ご両親・きょうだい・お子さんも同じ変化をもっている可能性があります。ご家族の中で原因がわかっていると、ほかのご家族は同じ場所を調べることで、受け継いでいるかを確かめられます。目の色の違いなど軽い所見しかないご家族でも、変化をもっていることがあります。症状のないご家族の検査は、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます。
陰性だったとき
8つの遺伝子に原因が見つからなかった場合も、ワーデンブルグ症候群が否定されるわけではありません(第7章)。症状に合わせて、症候性難聴の遺伝子検査や全エクソーム検査など、次の検査を考えます。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。
妊娠を考えている方:出生前の検査と保因者の検査
GeneReviewsによると、ご家族の原因(たとえばPAX3の変化)がわかっていれば、赤ちゃんがその変化を受け継いだかどうかを出生前に調べることはできますが、症状が出るか、どのくらい重いかまでは、出生前の検査ではわかりません[1]。難聴が主な症状の病気の出生前検査には、さまざまな考え方があります。当院では、受ける・受けないのどちらの選択も尊重し、妊娠を考えている段階から遺伝カウンセリングでご相談いただけます。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。
4型のEDNRB・EDN3のように潜性遺伝の形をとる遺伝子が原因の場合は、パートナーの方が保因者かどうかを知ることも大切です。妊娠前の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子、さらに女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子)があります。対象の遺伝子に含まれているかどうかは、ページの遺伝子一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血するカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(単独では受けられません)もあります。
9. 日本の制度(2026年10月時点)
このページの検査は自費診療で、保険は使えません。指定難病については、厚生労働省・難病情報センターの資料で、「ワーデンブルグ症候群」という病名が指定難病として載っていることは確認できませんでした。一方、4型に伴うことがあるヒルシュスプルング病のうち、全結腸型または小腸型は、指定難病291「ヒルシュスプルング病(全結腸型又は小腸型)」の対象です(厚生労働省の資料で確認)。
医療費の助成や、難聴に関する支援を受けられるかどうかは、病気の型・症状の程度・それぞれの制度の基準で変わります。お住まいの自治体の窓口や主治医にご確認ください。
10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の粘膜・血液のいずれでもオンライン診療で受けられ、遠方の方もご来院なしで検査できます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・来院またはオンライン
▶
検体の採取お支払い後にキットを送付
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。検体採取キットは、検査料金のお支払いを確認してからお送りします。キットが届く前に、ご自身で検体を採らないでください。決められたキットと手順で採らないと、検体の取り違えや、検査に使えない品質になるおそれがあるためです。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
11. 院長コラム
🩺 院長コラム【「目の色が違うだけ」で、将来を決めないでほしい】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。ワーデンブルグ症候群は、同じ家族の中でも、難聴がある人と、目の色や白い前髪だけの人がいる病気です。だからこそ、「自分は聞こえに問題がないから」という見た目の印象だけで、お子さんのことまで決めてしまわないでほしいと考えています。日本人では、目頭の離れ具合だけで型を決めにくいこともわかってきました。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ワーデンブルグ症候群とワールデンブルグ症候群は同じ病気ですか?
同じ病気です。英語のWaardenburg syndromeを日本語にするときの書き方の違いで、「ワーデンブルグ症候群」「ワールデンブルグ症候群」のどちらも使われています。生まれつきの感音難聴と、目・髪・皮膚の色素の変化を特徴とする遺伝性の病気です。
Q2. 日本人にもワーデンブルグ症候群はありますか?
あります。日本人でも、PAX3やSOX10などの遺伝子の変化による例が報告されています。日本の研究では、目頭の離れ具合(W指数)で1型とされた日本人の61%が、PAX3ではなくMITF・SOX10・EDNRBの変化をもっていたと報告されており、日本人では見た目の計測だけで型を決めにくいとされています。
Q3. ワーデンブルグ症候群は難病(指定難病)ですか?
2026年10月時点で、厚生労働省・難病情報センターの資料では、「ワーデンブルグ症候群」という病名が指定難病として載っていることは確認できませんでした。4型に伴うことがあるヒルシュスプルング病のうち、全結腸型または小腸型は指定難病291の対象です。助成を受けられるかは、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
Q4. 子どもに遺伝する確率は?
多くの型は常染色体顕性(優性)遺伝で、親がもつ原因の変化は、お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継がれます。4型のEDNRB・EDN3では潜性遺伝の形が多く、ご両親とも保因者なら次のお子さんで発症する確率は4分の1です。受け継いだ場合の症状の重さは人によって違い、出生前の検査でもわかりません。
Q5. 難聴は治療できますか?
難聴の程度に合わせて、補聴器や人工内耳などで対応します。GeneReviewsでは、ワーデンブルグ症候群の方への人工内耳は成功していると記載されています。1型の難聴はふつう進行しないとされています。原因の遺伝子がわかると、型に合わせた備えも決めやすくなります。
Q6. 知的障害はありますか?
ワーデンブルグ症候群の診断基準に挙げられている主な症状は、難聴と色素の変化、目頭の位置などで、知的障害は含まれていません。ただし、SOX10遺伝子が原因の一部の方では、末梢神経や脳の神経の症状を伴うことがあり(PCWH症候群)、型と原因遺伝子を確かめる意味があります。
Q7. 検査はオンラインで受けられますか?
受けられます。唾液・頬の粘膜・血液のいずれでもオンライン診療が可能で、血液の場合は全国の提携医療機関で採血します。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは検査料金のお支払い後にお送りしますので、届く前にご自身で検体を採らないでください。
Q8. 検査で異常が見つからなければ、ワーデンブルグ症候群ではないのですか?
そうとは限りません。2型では原因遺伝子が見つからない方も多いと報告されており、この検査で調べられない種類の変化もあります。変化が見つからなくても、症状からワーデンブルグ症候群と診断されることがあります。結果に合わせて、次の検査をご提案します。
🧬 一度の検査で、聞こえと、ご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ワーデンブルグ症候群の原因の遺伝子がわかれば、型に合わせた備えだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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