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アルポート症候群とは?遺伝子検査でわかる遺伝形式・女性の症状と、早く始められる腎臓を守る治療

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

アルポート症候群とは?遺伝子検査でわかる遺伝形式・女性の症状と腎臓を守る治療

アルポート症候群は、子どもの頃からの血尿で始まり、年齢とともに腎臓の働きが落ちていくことがある遺伝性の腎臓病です。難聴や目の変化を伴うことがあり、遺伝のしかたには、X連鎖・常染色体潜性(劣性)・常染色体顕性(優性)の3つの型があります。遺伝子検査で型がわかると、腎臓を守る薬をいつ始めるか、ご家族の誰を調べるか、腎移植のドナーを誰にお願いできるかが決まります。このページでは、症状・寿命の見通し・女性の症状・お子さんへの遺伝の確率と、6つの遺伝子を調べるアルポート症候群の遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. アルポート症候群とは?この検査で何がわかりますか?

IV型コラーゲンの遺伝子の変化で、血尿・蛋白尿から腎臓の働きが落ちていくことがある遺伝性の腎臓病です。この検査では、COL4A3・COL4A4・COL4A5を中心に6つの遺伝子を調べ、原因と遺伝の型(X連鎖・潜性・顕性)を確かめます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

子どもの頃から血尿がある方、ご家族に血尿・透析・腎移植・難聴の方が多い方、親やきょうだいがアルポート症候群で「自分も」と気になる方、腎移植のドナーを考えているご家族です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は330,000円(税込)、結果までは3〜5週間です。検体は血液・唾液・口腔粘膜ぬぐい液で、唾液・口腔粘膜ならオンライン診療でご来院なしでも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、腎臓を守る薬を始める時期の目安や、ご家族の検査につなげられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 型がわかれば、腎臓を守る次の一手が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

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1. アルポート症候群とは?血尿から始まる遺伝性の腎臓病

アルポート症候群とは、IV型コラーゲンという蛋白質の遺伝子の変化によって、腎臓・耳・目の「基底膜」が弱くなる遺伝性の病気です。血尿から始まり、年齢とともに蛋白尿が出て、腎臓の働きがゆっくり落ちていくことがあります。感音難聴や目の変化を伴うこともあります[1]。

基底膜は、細胞の下に敷かれた薄いシートのような構造です。腎臓では、血液をこしとって尿を作る糸球体のフィルターの役目をしています。IV型コラーゲンのうちα3・α4・α5の3本の鎖はより合わさって網目を作り、基底膜を支えています。この3本を作る遺伝子がCOL4A3・COL4A4・COL4A5で、どれか1つに変化があると網目がうまく作れず、糸球体の基底膜がもろくなります。同じ網目は内耳や目にもあるため、難聴や目の症状が出ることがあります。

病気のしくみや遺伝子別の特徴をさらに詳しく知りたい方は、アルポート症候群の詳しい解説(浸透率と出生前診断)もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

症状:血尿・蛋白尿・難聴・目の変化

いちばん早く、いちばん多くみられる症状は血尿です。難病情報センターによると、幼少期からの血尿が典型的で、尿検査で初めてわかることが多いとされています。年齢とともに蛋白尿が加わり、ゆっくりと末期腎不全へ進むことがあります(2026年10月時点で確認)。

  • ●腎臓:血尿 → 蛋白尿 → 高血圧・腎臓の働きの低下と進むことがあります。
  • ●耳:感音難聴が起こることがあります。生まれつきの難聴ではなく、あとから出てくるのが特徴です[1]。X連鎖型の男性と潜性型では50〜60%にみられ(X連鎖型の女性ではまれで、出るとしても遅い)、顕性型ではまれで、出るとしてもかなり年をとってからとされています[1]。
  • ●目:水晶体の前面が前に突き出る「前円錐水晶体」や、網膜の斑点状の変化がみられることがあります。前円錐水晶体はX連鎖型の男性で50%、潜性型で75%とされ、X連鎖型の女性では5%未満です[1]。

難聴の原因となる遺伝性の病気はほかにも多くあります。難聴全体のことは遺伝性難聴の総論で解説しています。

何歳から?経過と寿命(予後)

アルポート症候群の経過は、遺伝の型と性別によって大きく違います。根本から治す治療はまだありませんが、腎臓の働きが落ちるのを遅らせる治療があります。血尿は子どもの頃から出ることが多く、腎臓の働きが落ちる時期は型によって数十年の差があります。

📈 型ごとの腎臓の経過の目安(末期腎不全)

型 経過の目安
X連鎖型の男性 35歳までに約50%、40歳までに約80%が末期腎不全に至る[1]
X連鎖型の女性 60歳までに約20%(国際的な指針では60歳までに15〜30%)[1][2]
常染色体潜性型(男女とも) 30歳までに約80%。多くは子どものうちに蛋白尿が目立つ[1]
常染色体顕性型(COL4A3・COL4A4の片方の変化) 進み方はゆっくりで、腎不全に至るのは大人になってかなりたってからのことが多い。片方の変化をもつ人全体でみると、腎不全のリスクはとても低いとされる[1][2]

※治療を受けていない方を含む集団での目安です。一人ひとりの経過は、変化の種類や治療を始めた時期で変わります。日本の難病情報センターは、末期腎不全に至る年齢の中央値を、X連鎖型の男性35歳・女性65歳、潜性型21歳、顕性型60歳としています(2026年10月時点で確認)。

「アルポート症候群の寿命」について、型や性別を分けずに一つの数字で示した信頼できる資料はありません。ただ、治療で経過が変わることははっきりしてきています。3世代にわたるアルポート症候群の家族を調べた研究は、ACE阻害薬を早く始めると腎不全を遅らせ、寿命の見通しを改善したと報告しています[4]。日本の研究でも、腎臓を守る薬の治療を受けたX連鎖型の男性は、治療を受けなかった男性より末期腎不全に至る年齢が大きく遅れていました(第6章)[5]。

何人に1人?患者さんの数

難病情報センターは、海外の報告として出生4万〜5万人に1人、日本では受診のデータから約1,200人の患者さんがいると推測しています(2026年10月時点で確認)。ただ、遺伝子のデータベースを使った推計では、病気の原因となりうるCOL4A5の変化をもつ人は少なくとも2,320人に1人、COL4A3・COL4A4の片方に変化をもつ人は106人に1人とされています[1]。症状が軽く診断されていない方が多いと考えられており、「珍しい病気だから自分は関係ない」とは言い切れない病気です。

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)との違い

菲薄基底膜病(ひはくきていまくびょう)は、腎臓の基底膜が薄く、血尿が続く状態です。原因の多くは、アルポート症候群と同じCOL4A3・COL4A4の片方の変化で、いまは「経過を見守る必要がある状態」として扱われています。

これまで菲薄基底膜病は「良性家族性血尿」とも呼ばれ、心配のいらない血尿と考えられてきました。病気の分類のデータベースOMIMでも、COL4A4の変化による良性家族性血尿1、COL4A3の変化による良性家族性血尿2として載っています。一方、2022年の国際的な遺伝子検査と診療の指針は、COL4A3・COL4A4の片方に変化をもつ方は「菲薄基底膜病」とも「常染色体顕性アルポート症候群」とも診断されていて、呼び方が統一されていないとしています。そのうえで、腎不全のリスクはとても低いものの、微量アルブミン尿・高血圧・腎臓の働きの低下が出てきたら腎臓を守る治療を始めることを勧めています[2]。

つまり、「良性」と言われてきた血尿でも、定期的に尿蛋白と血圧を見ていく意味があります。血尿だけなのか、アルポート症候群の型なのかは、見た目の症状だけでは区別できず、遺伝子検査が手がかりになります。

2. アルポート症候群の遺伝形式:X連鎖・潜性・顕性で、男女の症状とお子さんへの伝わり方が違う

アルポート症候群の遺伝形式には、COL4A5によるX連鎖型、COL4A3またはCOL4A4の同じ遺伝子の2つのコピーに病的変異がある常染色体潜性(劣性)型、片方のコピーの変化による常染色体顕性(優性)型の3つがあります。どの型かで、男性と女性の症状の出方も、お子さんへの伝わり方も変わります。

🧬 アルポート症候群の遺伝形式と、男女の違い・お子さんへの伝わり方

型(遺伝子) 男性・女性の症状 お子さんへの伝わり方
X連鎖アルポート症候群(COL4A5) 男性は重くなりやすい。女性も血尿はほぼ全員にみられ、腎臓の働きが落ちる方もいる 変化をもつ女性から:お子さん1人ごとに2分の1(男女とも)。変化をもつ男性から:娘さんは全員受け継ぎ、息子さんは受け継がない
常染色体潜性型(COL4A3またはCOL4A4の同じ遺伝子の2つのコピーに病的変異):常染色体潜性アルポート症候群2・3B 男女とも重くなりやすい ご両親とも片方ずつ変化をもつ場合、お子さん1人ごとに4分の1で発症、2分の1で片方だけ受け継ぐ
常染色体顕性型(COL4A3・COL4A4の片方のコピー):常染色体顕性アルポート症候群3Aなど 進み方はゆっくり。症状が軽く、診断されていない方が多いと考えられている(難病情報センター) お子さん1人ごとに2分の1(男女とも)

※伝わり方はGeneReviews[1]、病名と遺伝のしかたはOMIMによる。COL4A3・COL4A4の両方の遺伝子に1つずつ変化がある場合などの「二遺伝子遺伝」もあり、その場合の確率はご家族ごとに考えます[1]。

X連鎖型の詳しいしくみはX連鎖遺伝の解説で、潜性型・顕性型は常染色体潜性遺伝・常染色体顕性遺伝の解説で、それぞれ説明しています。潜性型では、同じ遺伝子の2つのコピーにそれぞれ違う変化があること(複合ヘテロ接合)も多くあります。

遺伝子ごとの割合は、GeneReviewsではCOL4A5が80〜85%、COL4A3が12〜15%、COL4A4が5〜8%とされています[1]。日本の資料では、X連鎖型が約75〜80%、潜性型が約10〜15%、顕性型が約5〜15%と、資料によって幅があります(難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。症状の軽い顕性型は診断されていない方が多いと考えられているため、調べ方によって割合が変わります。

アルポート症候群の女性の症状:X連鎖でも、腎臓の働きが落ちることがある

X連鎖型の女性は「保因者」と呼ばれてきましたが、血尿はほぼ全員にみられ、一部の方は腎臓の働きが落ちます。X連鎖型の女性を調べたヨーロッパの研究では、変化をもつ女性の95%に血尿がみられ、蛋白尿・難聴・目の変化はそれぞれ約75%・28%・15%で出ていました。40歳までに末期腎不全に至るリスクは女性で約12%(男性は約90%)で、60歳を過ぎるとリスクが上がるとされています[6]。

同じ研究では、同じ家族の中でも女性の症状の重さに大きな差があり、遺伝子の変化の種類から先の経過を予測するのは難しいとされました。蛋白尿が増えてくることと、難聴が出てくることは、腎不全の危険因子とされています[6]。

💡 用語解説:X染色体の不活化

女性は2本のX染色体をもっていますが、体の細胞の一つひとつでは、どちらか1本がランダムに働かなくなっています。これをX染色体の不活化といいます。変化のあるX染色体が働いている細胞の割合は人によって違うため、X連鎖型の女性では、症状のない方から腎不全に至る方まで幅が出ると考えられています。

お子さんに遺伝する確率は?

アルポート症候群がお子さんに遺伝する確率は、型と、どちらの親が変化をもっているかで決まります。上の表のとおり、X連鎖型の母親からはお子さん1人ごとに2分の1、X連鎖型の父親からは娘さん全員に伝わり、息子さんには伝わりません。顕性型は2分の1、潜性型はご両親とも片方ずつ変化をもつときに4分の1で発症します[1]。

「生まれつきの病気ですか?」という質問には、原因の遺伝子の変化は生まれたときからあるが、症状は年齢とともに出てくる、と答えられます。ご家族に誰もいなくても発症することもあり、X連鎖型の男性の発端者の約10〜15%は、ご本人の代で新しく起きた変化(de novo)によるとされています[1]。新しく起きた変化でも、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性は残ります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。

⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません

X連鎖型の女性が軽い症状でも、同じ変化を受け継いだ息子さんは、男性として重い経過をたどることがあります。顕性型でも、同じ家族の中で症状の重さに差があります(表現型の多様性)。だからこそ、ご家族の誰かがアルポート症候群とわかったときは、症状の有無だけで判断せず、知ったうえで計画することに意味があります。

3. アルポート症候群の遺伝子検査を受けるとよい人

2022年の国際的な指針は、ほかに原因が見当たらない血尿が6か月を超えて続くときに、COL4A3〜COL4A5の遺伝子検査を行うことを勧めています[2]。次のような方は、この検査で原因がはっきりする可能性があります。

子どもの頃から血尿がある・健診で血尿を指摘され続けている

子どもの頃の検尿で血尿を指摘され、大人になっても毎年「尿潜血」と言われ続けている方は、一度原因を確かめる意味があります。家族に血尿の方がいないお子さんの血尿では、IgA腎症・アルポート症候群・C3腎症が主な候補とされています[1]。アルポート症候群の小児の方では、早く型がわかるほど、腎臓を守る薬をいつ始めるかを決めやすくなります(第6章)。

家族に血尿・透析・腎移植・難聴の人が多い「腎臓が悪い家系」

「うちは腎臓が悪い家系」と言われてきた方、親や祖父母・おじ・おばに透析や腎移植を受けた方がいる方、血尿と難聴の両方がある家族がいる方は、アルポート症候群を含む遺伝性の腎臓病の可能性があります。指針でも、難聴と血尿があり家族歴がある場合、原因のわからない腎不全、家族性のIgA腎症などが、遺伝子検査を考える場面として挙げられています[2]。透析が遺伝する確率は、原因の病気と遺伝のしかたで決まるので、まず原因を確かめることが出発点になります。

親・きょうだいがアルポート症候群で「自分もなるのでは」と不安な方

お父さんやお兄さんが透析を受けている、お母さんが「保因者」と言われた。そうしたご家族の中で、毎年の健診の尿潜血の結果に「いよいよ始まったのでは」とおびえながら暮らしている方もいます。その不安は、決しておかしなものではありません。

ご家族の原因の変化を受け継いでいないとわかれば、アルポート症候群について、ご家族と同じ確率を心配しなくてよくなります。受け継いでいるとわかった場合も、薬を始める時期の目安、見張る検査、ご自身のお子さんへの確率がはっきりし、腎臓を守る準備を早くから始められます(第6章)。症状のない方の検査は、将来の発症の可能性を知る発症前の検査(予測的検査)にあたるので、検査の前に臨床遺伝専門医と時間をかけて考えていただきます。知らないでいることも、同じように選べます。

当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。ごきょうだいがアルポート症候群と診断され、症状のない段階で検査を受けた方のアルポート症候群遺伝子検査の体験談も公開しています。

腎移植のドナーになることを考えているご家族

アルポート症候群の方が腎移植を受けるとき、ご家族がドナーの候補になることがあります。指針は、ドナーの候補になる方の遺伝子の型を必ず確かめることを勧めています[1][2]。ご家族の原因の変化がわかっていれば、ドナー候補の方がその変化をもっていないかを確かめられます(第6章)。

この検査より別の検査が向いている場合(どの検査を選ぶか)

血尿が中心で、難聴や家族の腎臓病があるなら、まずこの検査です。一方、腎臓の病気の種類によっては、別のパネル検査のほうが合うことがあります。当院の腎臓の検査ページでは、同じ考え方の表で選び分けを示しています。

🔍 腎臓の症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
血尿が続く、難聴を伴う、家族に血尿・腎不全の方 このページの検査(アルポート症候群遺伝子パネル検査)
大人で腎臓にたくさんの嚢胞がある 多発性嚢胞腎遺伝子パネル検査
子どもや若い人の腎臓の嚢胞、原因不明の腎機能低下 多発性嚢胞腎・ネフロン癆遺伝子パネル検査/ネフロン癆NGS遺伝子パネル検査
血尿より、多量の蛋白尿・ネフローゼ症候群が中心 ネフローゼ症候群・糸球体性蛋白尿NGS遺伝子検査パネル/ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群遺伝子検査
腎臓の症状がなく、難聴が中心 難聴遺伝子パネル検査/症候性難聴NGS遺伝子検査
腎臓以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※GeneReviewsは、症状がアルポート症候群に合う場合はCOL4A3・COL4A4・COL4A5を含むパネル検査を、典型的でない場合はエクソーム・ゲノム検査を選ぶ方法を示しています[1]。どの検査が合うかは、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ あなたの1回の検査が、ご家族を守る手がかりになります /

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唾液・口腔粘膜の検体なら、オンライン診療でご来院なしでも検査を受けられます。

ご家族の検査を考えている方は、遺伝カウンセリングを予約する(ご希望があれば検査まで受けられます) | どの検査がよいか迷う方へ

4. 調べる6つの遺伝子と、それぞれでわかる病気

アルポート症候群の遺伝子検査では、原因遺伝子のCOL4A3・COL4A4・COL4A5と、症状がよく似た病気の原因になるCD151・COL4A6・MYH9の、合わせて6つの遺伝子を調べます。

🧪 アルポート症候群遺伝子パネル検査で調べる6遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
COL4A5 X連鎖アルポート症候群 X連鎖
COL4A3 常染色体顕性アルポート症候群3A/常染色体潜性アルポート症候群3B/良性家族性血尿2 常染色体顕性/常染色体潜性/常染色体顕性
COL4A4 常染色体潜性アルポート症候群2/良性家族性血尿1 常染色体潜性/常染色体顕性
COL4A6 X連鎖難聴6型。COL4A5とつながって欠ける場合は、びまん性平滑筋腫症を伴うアルポート症候群 X連鎖
MYH9 MYH9関連疾患(巨大血小板性血小板減少症に、腎炎や感音難聴を伴うことがある)/常染色体顕性難聴17型 常染色体顕性
CD151 腎症と難聴を伴う単純型表皮水疱症7型 常染色体潜性

※対象遺伝子は当院の検査内容による。病名と遺伝のしかたはOMIMの遺伝子と病気の対応表、COL4A5・COL4A6の欠失はGeneReviews[1]による。

COL4A6・MYH9・CD151も調べる理由

この3つは、アルポート症候群とよく似た「腎臓+耳」の症状を起こしうる遺伝子です。いっしょに調べることで、症状が似ていても違う病気かどうかを見分ける手がかりになります。

  • ●COL4A6:X染色体の上でCOL4A5のとなりにあります。COL4A5とCOL4A6の端がつながって欠けると、食道や気管のまわりに良性の平滑筋腫ができる型のアルポート症候群になります。GeneReviewsは、COL4A6の変化だけではアルポート症候群は起こらないとみられるとしています[1]。
  • ●MYH9:MYH9関連疾患は、腎炎と難聴をあわせもつことがあり、アルポート症候群と見分ける必要がある病気です。血小板が大きく数が少ないこと(巨大血小板性血小板減少症)が見分ける手がかりになります[1]。
  • ●CD151:皮膚の水疱に、腎臓の病気と難聴を伴うまれな病気の原因です。皮膚の水疱が中心の方は、表皮水疱症NGSパネル遺伝子検査が向いています。

なお、同じIV型コラーゲンの仲間でも、COL4A1・COL4A2は、この検査の対象ではありません。

5. この検査でわかること・わからないこと(検査の限界)

この検査でわかるのは、6つの遺伝子の中の小さな変化(1文字の変化や、小さな挿入・欠失)です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

この検査は、次世代シークエンサー(NGS)で、6つの遺伝子の蛋白質を作る部分(エクソン)と、その境目(スプライシング部位)を読みます。大事な変化は、別の方法(サンガー法)でもう一度確かめてから報告します。大きな欠失・重複が疑われるときは、MLPA法やqPCR法という別の原理の方法で追加して確かめます。

  • ●見つけにくい変化:COL4A5の1つのエクソンだけが欠けたり重複したりする変化は、見つけられる範囲が限られます。
  • ●調べていない場所:エクソンから20塩基以上離れた、遺伝子の中の深い場所(深いイントロン)の変化は見つかりません。
  • ●構造の変化:染色体の一部が入れかわる転座や、向きが逆になる逆位などの大きな組みかえ、一部の複雑な構造の変化は見つけられません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある場合や、変化をもつ細胞が少ない場合は、見つけにくいことがあります。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。GeneReviewsは、VUSだけで診断を確かめたり否定したりはできないとしています[1]。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で検出できない変化が残る可能性があります。また、アルポート症候群以外の腎臓の病気も考えられます。
🔬 専門的な情報:カバレッジ

98% at 20x(調べる場所の98%を、20回以上読んでいる)。同じ場所を何回も読むほど、読み間違いと本当の変化を区別しやすくなります。詳しくは遺伝子検査のカバレッジをご覧ください。

6. 病的変異が見つかったら、次にできること

アルポート症候群の原因がわかると、腎臓を守る薬をいつ始めるか、何をどのくらいの間隔で調べるか、ご家族の誰を調べるかが具体的に決まります。わかるだけで終わらず、次の行動につなげられるのが、この検査のいちばんの意味です。治療は腎臓内科・小児腎臓の専門の医療機関で受けていただきます。

早くから腎臓を守る薬(ACE阻害薬・ARB)を始める

アルポート症候群の治療の中心は、ACE阻害薬やARBで腎臓を守る治療です。国際的な推奨では、X連鎖型の男性と潜性型の方は、診断がついた時点から始めることが勧められています。X連鎖型の女性と顕性型の方は、微量アルブミン尿が出てきた時点から始めることが勧められています[1][2][3]。

💊 腎臓を守る薬を始める時期の目安(国際的な推奨)

型・性別 始める時期の目安
X連鎖型の男性 診断がついた時点から(GeneReviewsでは1〜2歳を過ぎていれば)
常染色体潜性型(男女とも) 診断がついた時点から
X連鎖型の女性 微量アルブミン尿が出てきた時点から(2022年の指針では、高血圧や腎臓の働きの低下が出たときも)
COL4A3・COL4A4の片方の変化(顕性型) 微量アルブミン尿が出てきた時点から(2022年の指針では、高血圧や腎臓の働きの低下が出たときも)

※GeneReviews[1]、2022年の国際的な指針[2]、2020年の診療推奨の更新[3]による。2020年の更新では、それまでの「蛋白尿が出てから」という考え方を改め、より早く始める方向に変わりました[3]。日本の難病情報センターも、ACE阻害薬またはARBによる腎保護療法を治療の中心としています(2026年10月時点で確認)。実際の開始時期や薬の量は、主治医が決めます。

日本の研究も、この治療の効果を示しています。神戸大学のグループが日本人のX連鎖型の男性430人を調べた研究では、腎臓を守る薬(レニン・アンジオテンシン系の阻害薬)の治療を受けた方は、末期腎不全に至る年齢の中央値が50歳を超えていたのに対し、治療を受けなかった方では28歳でした。遺伝子の変化が蛋白質を途中で途切れさせるタイプ(トランケーティング変異)の方では、治療で末期腎不全が16歳から28歳へと12年遅れていました[5]。

この研究は、遺伝子の変化の種類によって経過も薬の効き方も違うことを示しています[5]。遺伝子検査で変化の種類までわかっていると、主治医が見通しを立てやすくなります。

見張る検査:尿蛋白・腎機能・血圧・聴力・目

GeneReviewsは、次のような定期的な見張りを勧めています[1]。

  • ●腎臓:尿検査・腎機能・血圧を、尿アルブミンが基準未満なら12か月ごと、基準以上なら6か月ごとに。
  • ●聴力:6〜7歳から、1〜2年ごとに聴力検査。難聴が進むと補聴器が必要になることもあります(難病情報センター)。
  • ●目:COL4A5のトランケーティング変異をもつ男性と潜性型の方は、思春期から1〜2年ごとに眼科で検査。

難病情報センターは、腎臓の働きが保たれている時期は通常の生活を送ることができ、生活上の制限は基本的にないとしています(2026年10月時点で確認)。

「保因者だから大丈夫」と言われてきたX連鎖の女性の方へ

X連鎖型の女性は、昔は「保因者」として、治療の対象ではないと考えられがちでした。けれども第2章のとおり、女性でも蛋白尿が出たり、60歳ごろから腎臓の働きが落ちたりすることがあり[2][6]、国際的な推奨は、微量アルブミン尿が出てきたら腎臓を守る治療を始めることを勧めています[3]。遺伝子でX連鎖型とわかった女性は、症状が血尿だけでも、尿蛋白と血圧を定期的に確かめていくことが大切です。妊娠を考えている方は、妊娠中の腎臓の見張りについても主治医とご相談ください。

ご家族を、ピンポイントで調べる(お母さん・きょうだい・お子さん)

ご家族の中で原因の変化がわかっていると、ほかのご家族は同じ場所を調べるだけで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。2022年の指針は、X連鎖型ではほかの検査の結果にかかわらず、顕性型でも、第一度近親者(親・きょうだい・子)が遺伝子検査を順に受けること(カスケード検査)を勧めています[2]。

たとえば、息子さんがX連鎖型と診断されたら、お母さんが同じ変化をもっているか、お姉さん・妹さんが受け継いでいるかを調べることで、女性のご家族の見張りを始められます。お母さんが変化をもっていなければ、新しく起きた変化の可能性が考えられます。原因の変化がわからないご家族でも、少なくとも年1回の尿検査と血圧の確認が勧められています[1]。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のうえで行います。

腎移植のドナー選びに使う

アルポート症候群の方が腎移植を受けるとき、同じ変化をもつご家族が腎臓を提供すると、提供した方ご自身の腎臓に負担がかかるおそれがあります。GeneReviewsは、ドナー候補の方全員の遺伝子の型を確かめること、片方の変化をもつご家族は最後の選択肢として考えること、40歳未満で片方の変化をもつ方や、腎臓にすでに異常がある方の生体腎提供は勧められないことを示しています[1]。2022年の指針は、COL4A3・COL4A4の片方の変化をもつ方も腎臓の提供者にならないよう勧めています[2]。

移植を受けたあとには、まれに新しい腎臓に対する抗体ができる腎炎(抗基底膜抗体腎炎)が起こることがあり、リスクのある方は移植後しばらく見張りが勧められています[1]。小児慢性特定疾病情報センターは、移植した腎臓の生着率は比較的良好としています(2026年10月時点で確認)。

アルポート症候群と結婚・妊娠・出産

アルポート症候群だからといって、結婚や出産ができないわけではありません。ご家族の病気を理由に、結婚を心配されたり反対されたりして悩む方もいます。けれども、遺伝の確率は型と、どちらの親が変化をもっているかで決まり、検査で「わかること」があります。ご自身が変化をもっているか、パートナーも同じ遺伝子の変化をもっているか(潜性型のとき)、お子さん1人ごとの確率はどれくらいか、です。

確率がわかると、知ったうえで選べる選択肢が増えます。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。どちらの立場の方も責める必要はなく、知ってから一緒に考えることができます。

子どもを持つときに選べること

原因の遺伝子の変化がわかっていれば、子どもを持つときに、次のような選択肢を考えられます。GeneReviewsは、ご家族で原因の変化がわかっていれば、出生前の検査や着床前の検査が可能としています[1]。一方、2022年の指針は、VUSだけをもとに出生前・着床前の遺伝子検査を行うべきではないとしています[2]。

  • ●自然に妊娠して、出生前診断を受ける:ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。この病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
  • ●着床前の検査(PGT-M):日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。
  • ●パートナーの保因者検査(潜性型のとき):ご自身がCOL4A3・COL4A4の片方の変化をもつ場合、パートナーも同じ遺伝子に変化をもっているかを知ることで、お子さんが潜性型になる確率がわかります。当院の拡大版保因者スクリーニングの女性版(787遺伝子)には、COL4A3・COL4A4・COL4A5が含まれています。男性版はX連鎖の遺伝子を除いているため、対象かどうかは遺伝子一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります。結婚前の方は遺伝子ブライダルチェックもご覧ください。
  • ●特別な検査をせずに出産する:これも、そのまま選べる選択肢です。お子さんが生まれたあとに尿検査や遺伝子検査で確かめ、早くから見張りを始めることもできます。

原因がわかっていれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、そして次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。

7. 陰性・VUSだったとき

原因が見つからなかった場合でも、アルポート症候群を完全に否定することはできません。第5章のとおり、この検査では見つけにくい変化があるためです。症状やご家族の情報によっては、ほかの腎臓のパネル検査や全エクソーム検査を考えます。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかった場合は、それだけで診断やご家族の発症予測、出生前の検査の判断には使いません。ただし、その変化が病気の原因かどうかを調べるため、ご家族の同意のもとで同じ変化の有無と症状を照合する検査(家族内分離解析)を行うことはあります[1][2]。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。詳しくはVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いをご覧ください。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針にまとめています。

8. 日本の制度:指定難病・小児慢性特定疾病

アルポート症候群は、指定難病218に指定されています。難病情報センターの一般向けの解説(令和6年11月更新)に掲載されています。また、小児慢性特定疾病では「慢性糸球体腎炎(アルポート症候群によるものに限る。)」として、小児慢性特定疾病情報センターに掲載されています(いずれも2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の基準を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。遺伝子検査で原因が確定していることは、診断の手がかりのひとつになります。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

アルポート症候群の遺伝子検査の費用は330,000円(税込)で、結果までは3〜5週間です。検体は血液・唾液・口腔粘膜ぬぐい液から選べます。唾液・口腔粘膜ぬぐい液なら、遠方の方でも、ビデオ通話での遺伝カウンセリング(オンライン診療)のあとに検体をお送りいただく形で、ご来院なしで検査を受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・口腔粘膜
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結果のご説明3〜5週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 CD151、COL4A3、COL4A4、COL4A5、COL4A6、MYH9(6遺伝子)
検査費用 330,000円(税込)
結果までの期間 3〜5週間
検体 血液、唾液、口腔粘膜ぬぐい液
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別。検査を受けなかった場合も診察料としてかかります
オンライン診療 唾液・口腔粘膜ぬぐい液の検体で対応。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。検体は、取り違えや品質の問題を防ぐため、当院の案内に沿って採取してください。

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の腎臓を守る計画だけでなく、これからの妊娠・出産の計画や、ご家族の健康を考えるときにも、ずっと役に立ちます。研究が進めば、同じ結果の意味が新しくわかることもあります。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、腎臓とご家族のこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

妊娠したときの羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「ただの血尿」で終わらせず、型を知って先に手を打つ】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。アルポート症候群は、同じ家族の中でも、男性と女性、型によって経過が大きく違う病気です。「お母さんは血尿だけだから」「自分は健診で毎年引っかかるけれど元気だから」という見た目の印象だけで、将来を決めてしまわないでほしいと考えています。とくに、X連鎖型の女性が「保因者だから治療はいらない」とされてきた時代から、いまは微量アルブミン尿の段階で腎臓を守る治療を始める時代に変わっています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、パートナーの検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. アルポート症候群とはどんな病気ですか?

IV型コラーゲンの遺伝子(COL4A3・COL4A4・COL4A5)の変化によって、腎臓の糸球体などの基底膜が弱くなる遺伝性の病気です。子どもの頃からの血尿で始まることが多く、年齢とともに蛋白尿が出て腎臓の働きが落ちていくことがあります。感音難聴や目の変化を伴うこともあります。指定難病218に指定されています。

Q2. アルポート症候群の女性の症状は?

X連鎖型の女性を調べたヨーロッパの研究では、血尿は95%にみられ、蛋白尿は約75%、難聴は28%、目の変化は15%でした。40歳までに末期腎不全に至るリスクは約12%で、60歳を過ぎるとリスクが上がるとされています。症状の重さは同じ家族の中でも大きく違うため、尿蛋白と血圧を定期的に確かめることが大切です。

Q3. アルポート症候群が子どもに遺伝する確率は?

型によって違います。X連鎖型の母親からはお子さん1人ごとに2分の1、X連鎖型の父親からは娘さん全員に伝わり、息子さんには伝わりません。顕性型はお子さん1人ごとに2分の1、潜性型はご両親とも片方ずつ変化をもつときに、お子さん1人ごとに4分の1で発症します。

Q4. アルポート症候群の寿命は?完治しますか?

根本から治す治療はまだありません。寿命を型や性別を分けずに一つの数字で示した信頼できる資料はありませんが、ACE阻害薬などで腎臓を守る治療を早く始めると、腎不全を遅らせられることがわかっています。日本人のX連鎖型の男性の研究では、治療を受けた方は末期腎不全に至る年齢の中央値が50歳を超え、治療を受けなかった方の28歳より大きく遅れていました。

Q5. 菲薄基底膜病(良性家族性血尿)との違いは?

菲薄基底膜病の多くは、アルポート症候群と同じCOL4A3・COL4A4の片方の変化によるもので、国際的な指針では「常染色体顕性アルポート症候群」と呼ばれることもあり、呼び方は統一されていません。腎不全のリスクはとても低いものの、微量アルブミン尿・高血圧・腎臓の働きの低下が出てきたら治療を始めることが勧められています。

Q6. アルポート症候群は結婚に差し支えますか?

アルポート症候群だからといって、結婚や出産ができないわけではありません。遺伝の確率は型と、どちらの親が変化をもっているかで決まり、遺伝子検査でご自身の変化・パートナーの保因者かどうか・お子さんへの確率がわかります。知ったうえで、出生前診断などの選択肢も含めて考えることができます。

Q7. アルポート症候群は出生前診断で分かりますか?

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、出生前の検査は可能とされています。意義がまだわからない変化(VUS)だけをもとに出生前の検査は行いません。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っています。この病気で出生前診断を行えるかは個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

Q8. アルポート症候群の遺伝子検査の費用と、結果が出るまでの期間は?

検査費用は330,000円(税込)で、結果までは3〜5週間です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。検体は血液・唾液・口腔粘膜ぬぐい液で、唾液・口腔粘膜ならオンライン診療でご来院なしでも受けられます。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

🧬 一度の検査で、腎臓とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。アルポート症候群の型がわかれば、腎臓を守る薬を始める時期の目安や見張る検査が決まり、ご家族の検査、腎移植のドナー選び、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて担当します。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Nozu K, Yamamura T, Horinouchi T. Alport Syndrome. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2001 (Updated 2025 Aug 14). [NCBI Bookshelf NBK1207]
  • [2] Savige J, Lipska-Zietkiewicz BS, Watson E, et al. Guidelines for Genetic Testing and Management of Alport Syndrome. Clin J Am Soc Nephrol. 2022;17(1):143-154. [DOI: 10.2215/CJN.04230321](PMID: 34930753)
  • [3] Kashtan CE, Gross O. Clinical practice recommendations for the diagnosis and management of Alport syndrome in children, adolescents, and young adults: an update for 2020. Pediatr Nephrol. 2021;36(3):711-719. [DOI: 10.1007/s00467-020-04819-6](PMID: 33159213)
  • [4] Gross O, Licht C, Anders HJ, et al. Early angiotensin-converting enzyme inhibition in Alport syndrome delays renal failure and improves life expectancy. Kidney Int. 2012;81(5):494-501. [DOI: 10.1038/ki.2011.407](PMID: 22166847)
  • [5] Yamamura T, Horinouchi T, Nagano C, et al. Genotype-phenotype correlations influence the response to angiotensin-targeting drugs in Japanese patients with male X-linked Alport syndrome. Kidney Int. 2020;98(6):1605-1614. [DOI: 10.1016/j.kint.2020.06.038](PMID: 32712167)
  • [6] Jais JP, Knebelmann B, Giatras I, et al. X-linked Alport syndrome: natural history and genotype-phenotype correlations in girls and women belonging to 195 families: a “European Community Alport Syndrome Concerted Action” study. J Am Soc Nephrol. 2003;14(10):2603-2610. [DOI: 10.1097/01.asn.0000090034.71205.74](PMID: 14514738)

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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