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ネフローゼ症候群・蛋白尿の遺伝子検査|遺伝が原因かを76遺伝子で調べる(FSGS・先天性ネフローゼ・アルポート症候群)

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

ネフローゼ症候群・蛋白尿の遺伝子検査

ネフローゼ症候群は、尿にたんぱく質が大量にもれて、血液中のたんぱく質(アルブミン)が減る病気です。多くは遺伝しませんが、一部は生まれ持った遺伝子の変化が原因で起こります。原因が遺伝子にあるとわかると、効きにくい治療を長く続けずに済む手がかりになり、腎移植のあとの見通しや、ご家族が腎臓を提供できるかを考える材料にもなります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の治療だけでなく、ご家族の健康や、これからの結婚・妊娠の計画にも、ずっと使える情報になります。このページでは、蛋白尿やネフローゼ症候群が遺伝によるものかを76遺伝子で調べる検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. ネフローゼ症候群の遺伝子検査で何がわかりますか?

蛋白尿やネフローゼ症候群、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)が、遺伝子の変化によるものかどうかを、NPHS1・NPHS2・WT1・COL4A3〜5など76遺伝子でまとめて調べます。先天性ネフローゼ症候群やアルポート症候群の原因遺伝子も含まれます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

ステロイドが効かないネフローゼ症候群の方、乳児期までに発症した方、原因のわからない蛋白尿やFSGSがある大人の方、ご家族に腎臓病や透析の方がいる方、腎移植を考えている方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が見つかれば、治療の選び方・腎移植の見通し・ご家族の検査を考える手がかりになります。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの治療と計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. ネフローゼ症候群の遺伝子検査でわかること

この検査では、ネフローゼ症候群や蛋白尿の原因が、生まれ持った遺伝子の変化にあるかどうかを、76の遺伝子でまとめて調べます。腎臓の「糸球体」という血液のフィルターをつくる遺伝子や、フィルターを支える膜(基底膜)の遺伝子、全身の病気の一部として蛋白尿を起こす遺伝子が含まれています。

原因の遺伝子がわかることには、はっきりした意味があります。国際小児腎臓学会(IPNA)の2020年の指針は、1つの遺伝子が原因のステロイド抵抗性ネフローゼ症候群では、免疫を抑える薬(カルシニューリン阻害薬)を控え、ステロイドを中止することを勧めています[1]。ドイツの子どもの研究では、遺伝子の原因がない方の79%が免疫抑制薬のシクロスポリンで寛解(完全寛解または部分寛解)したのに対し、遺伝子の原因がある方では19%にとどまりました[2]。原因がわかると、効きにくい薬を長く続ける負担を減らせる可能性があります。

そのほかにも、腎移植のあとに再発しやすいかの見通し、ご家族が腎臓を提供するドナーになれるかの確認、腎臓以外の合併症(耳・目・血液など)の見張りにつながります(第7章でくわしくご説明します)。

2. ネフローゼ症候群とは?蛋白尿が出るしくみ

ネフローゼ症候群とは、腎臓から大量のたんぱく質が尿にもれ出て、血液中のアルブミン(たんぱく質)が減る状態のことです。むくみ(浮腫)や、コレステロールが高くなる脂質異常症を伴うことが多い病気です。蛋白尿は健診や学校検尿で見つかることもあります。

ネフローゼ症候群の診断基準と症状(むくみ・泡立つ尿)

日本の成人の診断基準(難病情報センター、2024年4月更新の診断基準で確認)では、次の2つを同時に満たすものをネフローゼ症候群と診断します。そのうち、ほかの病気による二次性のものを除いたものが、一次性ネフローゼ症候群です。むくみと脂質異常症は、診断の条件ではなく、よくみられる症状とされています。

📋 成人のネフローゼ症候群の診断基準(日本)

項目 基準
蛋白尿 1日3.5g以上が続く(随時尿の尿蛋白/クレアチニン比3.5g/gCr以上でもよい)
血清アルブミン 3.0g/dL以下
よくみられる症状 むくみ(浮腫)、脂質異常症(コレステロールが高い)

※難病情報センター「一次性ネフローゼ症候群」の診断基準(2026年10月時点で確認)。子どもでは別の基準が使われます。

試験紙で尿蛋白が「3+」と出ても、それだけでネフローゼ症候群と決まるわけではありません。量を測り、血液のアルブミンとあわせて判断します。尿蛋白が続くときは、まず腎臓内科で原因を調べてもらうことが大切です。

糸球体は血液をこすフィルター

腎臓には、血液をこして尿のもとをつくる「糸球体」という小さなフィルターがたくさんあります。フィルターは何層にもなっていて、いちばん外側の「足細胞(ポドサイト)」どうしのすき間にある「スリット膜」と、それを支える基底膜が、たんぱく質を通さない関所の役目をしています。ネフローゼ症候群では、この関所がこわれて、たんぱく質が尿にもれます[3]。

血液たんぱく質をふくむ
▶
基底膜IV型コラーゲンなど
▶
足細胞のスリット膜ネフリン・ポドシンなど
▶
尿ふつうはたんぱく質がほぼない

スリット膜の部品の「ネフリン」はNPHS1遺伝子から、「ポドシン」はNPHS2遺伝子からつくられます。基底膜の主な部品のIV型コラーゲンは、COL4A3・COL4A4・COL4A5の遺伝子からつくられます。こうした部品の設計図に変化があると、生まれつきフィルターがこわれやすくなります。

蛋白尿・ネフローゼ症候群の原因:一次性・二次性、そして遺伝

ネフローゼ症候群の原因は、腎臓そのものの病気による「一次性」と、糖尿病・膠原病・感染症など別の病気による「二次性」に分けられます。難病情報センターによると、一次性ネフローゼ症候群は毎年6,000〜7,000人が新たに診断され、患者さんは約17,000人と推定されています(情報更新2023年10月)。

同じページでは、一次性のうち遺伝性の巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)には原因遺伝子が知られている一方、そのほかの一次性ネフローゼ症候群には遺伝性はないとされています。つまり、ネフローゼ症候群の多くは遺伝しませんが、一部には遺伝子の原因があります。その一部を見つけるのが、この検査です。小児では、16歳未満の子ども10万人あたり毎年1〜3人が特発性ネフローゼ症候群を発症し、約85%はステロイドで完全寛解に至るとされています[1]。

3. ネフローゼ症候群は遺伝する?年齢によって遺伝が原因の割合が違う

ネフローゼ症候群が遺伝子の変化によって起こっている割合は、発症した年齢が若いほど高くなります。ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の1,783家系を調べた国際研究では、全体の29.5%に1つの遺伝子の原因が見つかり、その割合は発症年齢が上がるほど下がっていました[4]。

📊 発症した年齢と、1つの遺伝子の原因が見つかった割合

発症した年齢 国際研究(1,783家系)[4] 日本の研究(230人)[5]
生後3か月まで 69.4% 85%(先天性ネフローゼ症候群)
4〜12か月 49.7% 53%(乳児ネフローゼ症候群)
1〜6歳 25.3% 26%(1〜3歳)、17%(4〜6歳)
7〜12歳 17.8% 31%
13〜18歳 10.8% 20%
19歳以上 (この研究の年齢区分にはない) 20%

※国際研究[4]はステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の家系、日本の研究[5]は高度の蛋白尿で遺伝子検査を受けた患者さんが対象で、対象も調べた遺伝子も違うため、数字はそのまま比べられません。

生まれてすぐ〜乳児:先天性ネフローゼ症候群

生後3か月までに発症するものを先天性ネフローゼ症候群といいます。米国国立医学図書館の解説(MedlinePlus Genetics)では、多くはNPHS1またはNPHS2の変化によって起こり、常染色体潜性(劣性)遺伝の病気とされています。日本人を対象にした研究では、先天性ネフローゼ症候群の85%に原因の遺伝子が見つかりました[5]。

子ども:ステロイドが効かない小児ネフローゼ症候群(ステロイド抵抗性・難治性)

小児ネフローゼ症候群の多くはステロイドがよく効きますが、効かないものを「ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群」といいます。IPNAの指針は、標準量のステロイドを4〜6週間続けても寛解しない場合をステロイド抵抗性と考えるとしています[1]。日本の成人の基準では、十分量のステロイドだけで治療して1か月後に完全寛解または不完全寛解I型に至らない場合とされています(難病情報センター、2024年4月)。

IPNAの指針によると、ヨーロッパの患者さんで最も多い原因遺伝子はNPHS2で、次にWT1、NPHS1が続きます[1]。日本人の研究では、多く見つかった順にWT1(17人)、NPHS1とINF2(8人ずつ)、TRPC6(7人)、LAMB2(6人)でした[5]。人種によって多い遺伝子が違うため、まとめて調べるパネル検査が向いています。

大人のFSGS(巣状分節性糸球体硬化症)でも遺伝子の原因が見つかる

遺伝子の原因は、子どもだけのものではありません。英国でステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の遺伝子パネル検査を受けた患者さんの研究では、子どもの20.0%(220人中44人)、大人の21.3%(47人中10人)に原因と考えられる変化が見つかりました。大人で最も多かったのはINF2で、WT1、COL4A3〜5、SCARB2、TRPC6も見つかっています[3]。日本人の研究でも、19歳以上で発症した方の20%に原因の遺伝子が見つかっています[5]。

巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、腎生検で見られる糸球体の傷つき方の名前で、原因はひとつではありません。同じ研究では、FSGSと診断された方の中に、アルポート症候群の遺伝子(COL4A3・COL4A4・COL4A5)の変化をもつ方も含まれていました[3]。腎生検の結果だけでは遺伝子の原因があるかどうかはわからず、遺伝子を調べてはじめてわかることがあります。

APOL1:アフリカ系の祖先をもつ人に多いリスクの遺伝子

APOL1遺伝子には、アフリカ系の祖先をもつ人の染色体に多く、ヨーロッパ系の人の染色体にはみられない2つの変化があります。アフリカ系米国人の研究では、APOL1のリスクアレル(G1またはG2)を父母から1つずつ、合計2つ受け継いだ人は、0個または1個の人と比べて、FSGSのなりやすさが高いことが示されました(オッズ比10.5)[6]。APOL1の変化は、それだけで必ず病気になる原因ではなく、なりやすさに関わるものです。ご家族の祖先にアフリカ系の方がいる場合は、遺伝カウンセリングでお知らせください。

親が透析・腎臓病だと自分や子どもも?遺伝する確率

親やきょうだいが透析を受けていると、「自分も、子どもも同じになるのでは」と不安を抱えながら暮らしている方もいます。まず知っておいていただきたいのは、透析になる原因の多くは遺伝子の病気ではなく、ご家族の確率は原因によってまったく違う、ということです。

🧬 遺伝子の原因があるときの、遺伝のしかたと確率

遺伝のしかた お子さんへの確率(1人あたり) 例
常染色体顕性(優性)遺伝 親の一方が変化をもつと2分の1 WT1によるデニス・ドラッシュ症候群・フレイジャー症候群、LMX1Bによる爪膝蓋骨症候群、MYH9関連疾患
常染色体潜性(劣性)遺伝 両親とも保因者のとき4分の1 NPHS1・NPHS2による先天性・乳児ネフローゼ症候群
X連鎖遺伝 母親が保因者のとき、男の子は2分の1の確率で受け継ぐ COL4A5によるアルポート症候群

※例の遺伝のしかたは、IPNAの指針[1]・文献[3]・米国国立医学図書館の解説(MedlinePlus Genetics)による。同じ遺伝子でも、変化の種類によって遺伝のしかたが違うことがあります。

ご家族の原因の変化がわかっていて、ご自身がそれを受け継いでいないとわかれば、その病気については、ご家族と同じ確率を心配する必要はなくなります。受け継いでいるとわかった場合も、尿や腎機能を定期的に調べて早く気づく、治療の選び方を考える、といった次の行動につなげられます(第7章)。知らないでいることも選べます。検査の前後には、臨床遺伝専門医と時間をかけて考えることができます。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

ステロイドが効かないネフローゼ症候群の方、乳児期までに発症した方、原因のわからない蛋白尿やFSGSがある方、ご家族に腎臓病・透析の方がいる方、腎移植を考えている方に向く検査です。原因がわからないまま治療や検査をくり返す時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。ただし、全員に原因が見つかるわけではありません(第6章)。

  • ●ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群と診断された方(IPNAは、すべての子どもに可能であれば遺伝子検査を勧めています[1])
  • ●生後1年までに発症したネフローゼ症候群の方(遺伝子の原因が見つかる割合が高い[4][5])
  • ●ご家族に同じ病気の方や、原因のわからない腎臓病・透析の方がいる方
  • ●難聴・目の異常・血小板の異常・骨や爪の異常など、腎臓以外の症状がある方
  • ●腎生検でFSGSと言われ、原因がわかっていない大人の方
  • ●腎移植の準備をしている方、ご家族からの腎臓の提供を考えている方

尿・血液・画像の結果から、どの腎臓の検査を選ぶか

腎臓の遺伝子検査は、病気のグループごとに分かれています。比べる相手は検査の種類です。今わかっている検査結果から、次のように選びます。

🔍 腎臓の遺伝子検査の選び方

こんなとき 向いている検査
大量の蛋白尿・ネフローゼ症候群・FSGS、原因をしぼれない、全身の症状もある このページの検査(76遺伝子)
ステロイドが効かないネフローゼで、主な原因遺伝子をしぼって調べたい ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群パネル(14遺伝子)
血尿が中心、難聴や目の異常がある、家族に血尿の人がいる アルポート症候群遺伝子パネル
貧血・血小板の減少と腎障害が一緒に起こった 血栓性微小血管症(TMA)遺伝子パネル
腎臓が小さい・形が違う・尿路の異常がある 先天性腎尿路異常(CAKUT)パネル
腎臓に嚢胞(水のふくろ)がある 多発性嚢胞腎パネル・ネフロン癆パネル
腎臓以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※どの検査が合うかは、検査結果・腎生検の所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

76遺伝子パネルと14遺伝子パネル、どちらを選ぶか

当院のステロイド抵抗性ネフローゼ症候群パネルの14遺伝子(ACTN4・CD2AP・COQ2・INF2・LAMB2・LMX1B・NPHS1・NPHS2・PDSS2・PLCE1・SCARB2・SMARCAL1・TRPC6・WT1)は、すべてこの76遺伝子パネルに含まれています。76遺伝子パネルは、14遺伝子に加えて、アルポート症候群の遺伝子や、全身の病気の一部として蛋白尿が出る遺伝子まで広く調べます。料金はどちらも同じパネル検査の料金です。

子どものステロイド抵抗性ネフローゼで、腎臓以外の症状がなく主な原因から確かめたい場合は14遺伝子パネル、大人のFSGS、血尿も伴う、腎臓以外の症状がある、14遺伝子では原因がわからなかった、という場合は76遺伝子パネルが向いています。

この検査より別の検査が向いている場合

糖尿病や高血圧など、ほかにはっきりした原因がある二次性のネフローゼ症候群では、遺伝子検査の前に、その病気の治療が優先されます。また、腎臓以外の症状が多く病気をしぼれない場合は全エクソーム検査(WES)のほうが向いていることがあります。迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

\ あなたの結果が、ご家族の腎臓を守る手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご家族から腎臓の提供を考えるときも、遺伝子の原因がわかっていれば、ドナー候補の方が同じ変化をもっていないかを確かめられます。

お問い合わせはこちら | 14遺伝子のパネルと比べる

5. 調べる76遺伝子と、わかる病気

この検査では、次の76遺伝子を調べます。働きと関係する病気のグループごとに分けて示します。遺伝子名にリンクがあるものは、遺伝子の詳しい解説ページがあります。

足細胞・スリット膜のネフローゼ・FSGSの遺伝子

🧬 ネフローゼ症候群・FSGSの主な原因遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
NPHS1 先天性ネフローゼ症候群(フィンランド型を含む) 常染色体潜性(劣性)
NPHS2 先天性・乳児ネフローゼ症候群、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群 常染色体潜性(劣性)
WT1 デニス・ドラッシュ症候群・フレイジャー症候群、腎臓だけのネフローゼ症候群。ウィルムス腫瘍との関係も知られる 常染色体顕性(優性)
INF2・TRPC6・ACTN4・CD2AP FSGS。INF2・TRPC6は日本人の研究[5]で多く見つかり、INF2は英国の研究[3]で大人に最も多かった 遺伝子ごとに異なる(結果のご説明のときにお伝えします)
LAMB2・PLCE1・MYO1E ネフローゼ症候群。LAMB2は日本人の研究[5]で多く見つかった遺伝子のひとつ 遺伝子ごとに異なる(結果のご説明のときにお伝えします)
ANLN・ARHGAP24・ARHGDIA・CRB2・EMP2・KANK1・KANK2・KANK4・MAGI2・PTPRO・DGKE・FAT1・NXF5・SGPL1 ネフローゼ症候群・FSGSとの関係が報告されている遺伝子 遺伝子ごとに異なる(結果のご説明のときにお伝えします)

※関係する病気・遺伝のしかたは、IPNAの指針[1]、文献[3][5]、米国国立医学図書館の解説(MedlinePlus Genetics)で確かめたもの。

基底膜の病気:アルポート症候群など

🧬 基底膜とそのつなぎ目の遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
COL4A5 アルポート症候群(X連鎖アルポート症候群) X連鎖
COL4A3・COL4A4 アルポート症候群(常染色体の型)。FSGSと診断される方もいる 常染色体潜性(劣性)または常染色体顕性(優性)
CD151・ITGA3・ITGB4 ネフローゼ症候群・蛋白尿との関係が報告されている遺伝子 遺伝子ごとに異なる(結果のご説明のときにお伝えします)

※アルポート症候群の遺伝子と遺伝のしかたは米国国立医学図書館の解説(MedlinePlus Genetics)、FSGSとの関係は文献[3]による。

アルポート症候群は、ほぼすべての方に血尿があり、多くの方に蛋白尿が出て、腎機能が少しずつ落ちていく病気です。感音性の難聴や目の水晶体の形の異常を伴うことがあります(MedlinePlus Genetics)。米国国立医学図書館の解説では、約3分の2がCOL4A5によるX連鎖、約15%が常染色体潜性、20〜30%が常染色体顕性とされています。血尿が中心の方は、アルポート症候群遺伝子パネルも選べます。

全身の病気の一部として蛋白尿が出る遺伝子

🧬 全身の症状を伴う病気の遺伝子

遺伝子 関係する病気・特徴 遺伝のしかた
COQ2・COQ6・COQ8B・PDSS2 コエンザイムQ10(CoQ10)をつくる遺伝子。原発性コエンザイムQ10欠乏症で、ネフローゼ症候群がよくみられる 常染色体潜性(劣性)
SMARCAL1 シムケ免疫骨異形成症(低身長・骨の異常・免疫の低下と腎臓の病気) 常染色体潜性(劣性)
LMX1B 爪膝蓋骨症候群(ネイルパテラ症候群)(爪・ひざの骨の異常と腎臓の病気)、手足の異常を伴わない爪膝蓋骨様腎症 常染色体顕性(優性)
MYH9 MYH9関連疾患(大きな血小板と血小板の減少、難聴、蛋白尿・血尿、白内障) 常染色体顕性(優性)
CFH 非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)(溶血性貧血・血小板の減少・腎障害)。補体の働きを調節する遺伝子 家族内で起こる場合は常染色体顕性または潜性
PMM2 PMM2による先天性グリコシル化異常症(先天性グリコシル化異常症Ia型) 常染色体潜性(劣性)
ALG1・NUP93・NUP107・NUP205・XPO5・WDR73・OSGEP・TP53RK・TPRKB・LAGE3・SCARB2・ZMPSTE24・FOXP3・ZAP70・ERCC4・MEFV・FGA・LPL・APOE・ABCC6・ENPP1 神経・免疫・代謝・皮膚・骨など全身の病気の一部として、蛋白尿や腎臓の病気を起こすことがある遺伝子 遺伝子ごとに異なる(結果のご説明のときにお伝えします)

※コエンザイムQ10欠乏症・シムケ免疫骨異形成症・爪膝蓋骨症候群・MYH9関連疾患・aHUS・PMM2による先天性グリコシル化異常症は米国国立医学図書館の解説(MedlinePlus Genetics)で確かめたもの。CoQ10の遺伝子についてはIPNAの指針[1]も参照。

腎臓の発生・尿細管・そのほかの遺伝子

🧬 腎臓の発生や尿細管などに関わる遺伝子

遺伝子 関係する病気・特徴 遺伝のしかた
HNF1B 腎嚢胞糖尿病症候群(RCAD)。遺伝子をふくむ領域ごと欠ける17q12微小欠失症候群もある。先天性腎尿路異常(CAKUT)の原因にもなる 遺伝子ごとに異なる(結果のご説明のときにお伝えします)
PAX2・LRP2・CUBN・AMN・UMOD・REN・SEC61A1・MAFB・TTC21B・FAN1・NEIL1・ELMO1・FN1 腎臓の発生、尿細管、腎臓の組織の病気などに関わる遺伝子(ADTKD-UMOD、フィブロネクチン腎症など) 遺伝子ごとに異なる(結果のご説明のときにお伝えします)
APOL1 FSGSなどのなりやすさに関わる変化(主にアフリカ系の祖先をもつ人) なりやすさに関わる変化(第3章)
EXT1 多発性外骨腫(遺伝性多発性骨軟骨腫)の原因遺伝子として知られる 常染色体顕性(優性)

※HNF1BとEXT1は米国国立医学図書館の解説(MedlinePlus Genetics)、APOL1は文献[6]による。

76遺伝子の一覧:ABCC6、ACTN4、ALG1、AMN、ANLN、APOE、APOL1、ARHGAP24、ARHGDIA、CD151、CD2AP、CFH、COL4A3、COL4A4、COL4A5、COQ2、COQ6、COQ8B、CRB2、CUBN、DGKE、ELMO1、EMP2、ENPP1、ERCC4、EXT1、FAN1、FAT1、FGA、FN1、FOXP3、HNF1B、INF2、ITGA3、ITGB4、KANK1、KANK2、KANK4、LAGE3、LAMB2、LMX1B、LPL、LRP2、MAFB、MAGI2、MEFV、MYH9、MYO1E、NEIL1、NPHS1、NPHS2、NUP107、NUP205、NUP93、NXF5、OSGEP、PAX2、PDSS2、PLCE1、PMM2、PTPRO、REN、SCARB2、SEC61A1、SGPL1、SMARCAL1、TP53RK、TPRKB、TRPC6、TTC21B、UMOD、WDR73、WT1、XPO5、ZAP70、ZMPSTE24(76遺伝子)

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査は、次世代シーケンサーで76遺伝子のたんぱく質をつくる部分(エクソン)と、そのつなぎ目を読み、遺伝子の文字の小さな変化を探します。遺伝子のまとまりが欠けたり増えたりする変化(欠失・重複)も調べます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。

同じ部分を20回以上読む精度で、調べる部分の99%以上を読み取ります。何度も読むほど、読み間違いと本当の変化を区別しやすくなるためです。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●見つけにくい変化:染色体の一部が入れかわる変化(転座・逆位)、同じ配列のくり返しが長くなる変化、遺伝子のスイッチの部分や、つなぎ目から遠い部分の変化は調べられません。
  • ●欠失・重複の条件:遺伝子1つ分の欠失・重複は血液と頬の粘膜の検体で、2つ以上続くエクソンの欠失・重複は血液の検体でわかります。エクソン1つだけの欠失・重複は、ふつうは見つかりません。
  • ●似た配列の影響:体の中にとてもよく似た配列があると、読み取りがじゃまされることがあります。ALG1遺伝子のエクソン6〜13は、この理由で変化を見つける力が下がっています。
  • ●モザイク:体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)を見つけるようには作られていません。がんの組織の検査には使えません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:76遺伝子で原因が見つからなくても、この検査で調べていない遺伝子や見つけにくい変化が原因のことがあります。遺伝子の原因がないネフローゼ症候群も多くあります。

調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針に沿ってご説明します。

7. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子がわかると、病名がはっきりし、治療・腎移植・ご家族の検査・妊娠の計画について、次に何をするかが具体的になります。わかるだけで終わりではありません。立場ごとに、できることを整理します。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。

ご本人:効きにくい治療を避け、腎移植と合併症に備える

  • ●治療の選び方:IPNAの指針は、1つの遺伝子が原因のステロイド抵抗性ネフローゼ症候群では、カルシニューリン阻害薬を控え、ステロイドを中止することを勧めています[1]。ドイツの研究では、遺伝子の原因がある方のシクロスポリンへの反応は19%(完全寛解は3%)でした[2]。
  • ●CoQ10をつくる遺伝子の場合:COQ2などのコエンザイムQ10をつくる経路に原因があるときは、コエンザイムQ10の補充を考えてもよいとされています[1]。
  • ●腎移植の見通し:遺伝子の原因がある場合は、移植後の再発が少ないと報告されています。IPNAの指針が紹介する研究では、再発は遺伝子の原因がない方で24%・ある方で0%(ブラジル)、ない方で50%・ある方で7%(ヨーロッパ)でした[1]。
  • ●腎臓以外の見張り:WT1ではウィルムス腫瘍や性腺、MYH9では血小板・難聴・白内障、アルポート症候群では難聴と目、というように、遺伝子によって見張る場所が決まります。

治療や移植は、腎臓内科・移植の専門医療機関で行います。当院は遺伝子の結果の意味をご説明し、主治医に伝えるための情報をお渡しします。

ご家族:腎臓のドナーになれるか、症状のない方の検査

IPNAの指針は、遺伝性のステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の方に親族が腎臓を提供する場合、ドナー候補の方にも遺伝子検査を行うことを強く勧めています[1]。顕性(優性)遺伝の病気では、まだ症状のないご家族が同じ変化をもっていることがあり、その方から腎臓をもらうと、ドナーご本人の将来の腎臓にも影響しうると考えられるためです。

ご本人の原因がわかっていれば、ご両親・きょうだい・お子さんは、その変化だけをピンポイントで調べられます。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のもとで、検査の前に遺伝カウンセリングで知ることの意味をよく考えていただいてから行います。

症状のない方・保因者だった方:ご自身とパートナー

常染色体潜性(劣性)遺伝の病気で保因者とわかった方は、ふつうご自身は発症しません。お子さんに影響するのは、パートナーも同じ遺伝子の保因者だったときです。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の一覧には、NPHS1・NPHS2・COL4A3・COL4A4・COL4A5・SMARCAL1・PMM2などが含まれています(2026年10月時点で一覧を確認)。対象の遺伝子は、ページの一覧でご確認ください。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(NIPTと一緒に受ける検査で、単独では受けられません)。

次のお子さん:知ってから選べること

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんに同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは「海外でPGT-Mを考えている方へ」で解説しています。何もせずに妊娠・出産することも、もちろん選べる選択肢です。どの選択も尊重します。

お子さんで新しく起きた変化(de novo)とわかった場合でも、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性は残ります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。

陰性・VUSだったとき

原因が見つからなかった場合は、遺伝子以外の原因(免疫の働きに関わるものなど)によるネフローゼ症候群の可能性が高くなります。ドイツの研究では、遺伝子の原因がない子どもの多くがシクロスポリンで寛解していました[2]。症状に合わせて、ほかのパネル検査や全エクソーム検査を考えることもあります。VUSは、それだけで診断やご家族の発症リスクの判断には使いません。ただし、その変化の意味を調べるために、ご家族での受け継がれ方を検査することがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。

8. 日本の制度(2026年10月時点)

一次性ネフローゼ症候群は指定難病222、アルポート症候群は指定難病218です(2026年10月時点で確認)。小児慢性特定疾病の腎疾患には、フィンランド型先天性ネフローゼ症候群、びまん性メサンギウム硬化症、巣状分節性糸球体硬化症、ギャロウェイ・モワト症候群、アルポート症候群による慢性糸球体腎炎、ネイル・パテラ症候群(爪膝蓋症候群)などが載っています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。病名がはっきりすることは、制度を使うときの手がかりにもなります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液のほか、唾液や口の内側の粘膜でも調べられます。この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
調べる遺伝子 76遺伝子(塩基配列の解析と欠失・重複の解析は料金に含まれる)
結果までの期間 2〜3週間
至急オプション 55,000円。結果が出るまでの期間が約7日短くなります
VUS除外オプション 無料。意義がまだわからない変化(VUS)を報告に載せないこともできます
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出したDNA、頬の粘膜(スワブ)、唾液
オンライン診療 唾液・口の内側の粘膜・血液いずれも対応。血液は全国の提携医療機関で採血をお願いします

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。くわしくはオンライン診療のご案内をご覧ください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。遺伝子検査そのものについては「遺伝子検査(遺伝学的検査)とは」もご覧ください。

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臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら出生前診断(羊水検査・絨毛検査)の相談まで院内で続けられます。

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10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「効かない理由」を知ることも、治療の一部】

ネフローゼ症候群で、ステロイドや免疫を抑える薬を続けているのに良くならないとき、ご本人もご家族も「もっと強い薬を」「もう少し続ければ」と考えがちです。けれども、原因が生まれ持った遺伝子にあるなら、その薬は効きにくいことが研究で示されています。効かない理由がわかることは、治療をあきらめることではなく、つらい副作用を減らし、腎臓を守る次の一手や腎移植の準備に時間を使うための、大切な情報だと考えています。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。生まれ持った遺伝子は一生変わらないので、一度の検査で得た答えは、ご本人の治療だけでなく、ご家族が腎臓を提供するとき、きょうだいやお子さんが結婚や妊娠を考えるときにも使えます。知ったうえで妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ネフローゼ症候群は遺伝しますか?

多くのネフローゼ症候群は遺伝しません。ただし、一部は遺伝子の変化が原因で起こり、その割合は発症した年齢が若いほど高いことがわかっています。ステロイドが効かない子どもを調べた国際研究では、生後3か月までに発症した方の69.4%、4〜12か月では49.7%に、1つの遺伝子の原因が見つかりました。大人の巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)でも、遺伝子の原因が見つかることがあります。

Q2. 親が透析をしています。自分や子どもに遺伝する確率は?

透析になった原因の病気によって、まったく違います。糖尿病や高血圧による腎臓病と、1つの遺伝子の変化による腎臓病とでは、ご家族の確率が大きく違います。遺伝子の病気の場合も、常染色体顕性(優性)遺伝ならお子さん1人あたり2分の1、常染色体潜性(劣性)遺伝なら両親とも保因者のときにお子さん1人あたり4分の1、と遺伝のしかたで変わります。まず原因を確かめることが、確率を知るための出発点です。

Q3. 尿蛋白が3+だとネフローゼ症候群ですか?

試験紙の3+だけでは決まりません。日本の成人の診断基準では、尿蛋白が1日3.5g以上(または尿蛋白/クレアチニン比3.5g/gCr以上)が続き、血清アルブミンが3.0g/dL以下の両方を満たすときにネフローゼ症候群と診断します。そのうち、ほかの病気による二次性のものを除いたものが、一次性ネフローゼ症候群です。尿蛋白が続くときは、まず腎臓内科で原因を調べてもらってください。

Q4. ネフローゼ症候群は短命ですか?完治しますか?

ひとくくりには言えません。小児の特発性ネフローゼ症候群では、約85%がステロイドで完全寛解に至るとされています。一方、遺伝子の原因が見つかったステロイド抵抗性ネフローゼ症候群のドイツの子どもの研究では、観察期間中に74%が末期腎不全に至り、遺伝子の原因が見つからなかった方(27%)より高い割合でした。見通しは原因によって大きく違うため、原因を知ることに意味があります。

Q5. ステロイドが効かないときは、遺伝子検査を受けたほうがいいですか?

国際小児腎臓学会(IPNA)の2020年の指針は、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群と診断されたすべての子どもに、可能であれば遺伝子検査を行うことを勧めています。とくに、ご家族に同じ病気の方がいる場合、腎臓以外の症状がある場合、腎移植の準備をしている場合を優先するとしています。大人の方でも、原因のわからないFSGSや蛋白尿が続く場合は、検査を考える理由になります。

Q6. 腎移植のあとに再発しますか?

遺伝子の原因がある場合は、ない場合より移植後の再発が少ないと報告されています。IPNAの指針が紹介している研究では、再発の割合は、遺伝子の原因がない方で24%、ある方で0%(ブラジル)、ない方で50%、ある方で7%(ヨーロッパ)でした。移植の時期や方法は、腎臓内科・移植の専門医と相談して決めます。

Q7. ネフローゼ症候群は結婚や妊娠に差し支えますか?

ネフローゼ症候群があることで、結婚できない・してはいけない、ということはありません。遺伝するかどうかは原因によって違い、多くのネフローゼ症候群は遺伝しません。遺伝子の原因があるときは、遺伝のしかたからお子さんへの確率がわかり、パートナーの保因者検査や妊娠したときの出生前診断など、知ったうえで選べることが増えます。妊娠中の腎臓の管理については、腎臓内科・産科の主治医にご相談ください。

Q8. 費用はいくらですか?オンラインで受けられますか?

検査費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。唾液や口の内側の粘膜の検体なら、オンライン診療で受けていただけます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

🧬 一度の検査で、治療とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ネフローゼ症候群・蛋白尿の原因の遺伝子がわかれば、効きにくい治療を避ける手がかり、腎移植の見通し、ご家族がドナーになれるかの確認、そして結婚・妊娠の計画に使えます。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Trautmann A, Vivarelli M, Samuel S, et al. IPNA clinical practice recommendations for the diagnosis and management of children with steroid-resistant nephrotic syndrome. Pediatr Nephrol. 2020;35:1529-1561. [DOI: 10.1007/s00467-020-04519-1](PMID: 32382828)
  • [2] Büscher AK, Beck BB, Melk A, et al. Rapid response to cyclosporin A and favorable renal outcome in nongenetic versus genetic steroid-resistant nephrotic syndrome. Clin J Am Soc Nephrol. 2016;11(2):245-253. [DOI: 10.2215/CJN.07370715](PMID: 26668027)
  • [3] Sen ES, Dean P, Yarram-Smith L, et al. Clinical genetic testing using a custom-designed steroid-resistant nephrotic syndrome gene panel: analysis and recommendations. J Med Genet. 2017;54:795-804. [DOI: 10.1136/jmedgenet-2017-104811](PMID: 28780565)
  • [4] Sadowski CE, Lovric S, Ashraf S, et al. A single-gene cause in 29.5% of cases of steroid-resistant nephrotic syndrome. J Am Soc Nephrol. 2015;26(6):1279-1289. [DOI: 10.1681/ASN.2014050489](PMID: 25349199)
  • [5] Nagano C, Yamamura T, Horinouchi T, et al. Comprehensive genetic diagnosis of Japanese patients with severe proteinuria. Sci Rep. 2020;10. [DOI: 10.1038/s41598-019-57149-5](PMID: 31937884)
  • [6] Genovese G, Friedman DJ, Ross MD, et al. Association of trypanolytic ApoL1 variants with kidney disease in African Americans. Science. 2010;329:841-845. [DOI: 10.1126/science.1193032](PMID: 20647424)

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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