目次

網膜色素変性症の遺伝子検査は、網膜色素変性症と、よく似た網膜の病気の原因となる129の遺伝子をまとめて調べる検査です。網膜色素変性症は遺伝する病気ですが、子どもに伝わるかどうか、伝わる確率はどれくらいかは、遺伝のしかた(顕性・潜性・X連鎖)によってまったく違います。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の見え方の見通しや治療の手がかりだけでなく、結婚・妊娠の計画やご家族の健康を考えるときにも、この先ずっと使える情報になります。このページでは、遺伝する確率・子どもへの遺伝・結婚の不安・最新の治療とあわせて、この検査でわかることを臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
網膜色素変性症と、よく似た網膜の病気の原因となる129の遺伝子をまとめて調べます。原因がわかると、遺伝のしかた(子どもへの伝わり方)、遺伝子治療や治験の対象になるか、目以外の病気(難聴・腎臓など)の一部として出ていないかを考える手がかりになります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
網膜色素変性症と診断された方、夜盲(暗いところで見えにくい)や視野が狭いと言われた方、ご家族に網膜色素変性症の方がいる方、結婚や妊娠を考えていて「子どもに遺伝するか」が気になる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口腔粘膜で、唾液・口腔粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、ご家族の検査や、妊娠したときの出生前診断(絨毛検査・羊水検査は院内で)まで計画できます。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。
\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /
検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。
1. 網膜色素変性症とは|初期症状・見え方・失明まで何年か
網膜色素変性症(RP)は、目の奥の網膜で光を感じる細胞(視細胞)が少しずつ働かなくなっていく、遺伝性の網膜の病気の総称です。多くは暗いところで見えにくい「夜盲」から始まり、視野が外側から狭くなっていきます。どの遺伝子のどんな変化が原因かによって、始まる年齢も進む速さも大きく違います[1]。病気そのものの詳しい解説は網膜色素変性症 総論にまとめています。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
頻度は、遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは3,000〜7,000人に1人[1]、難病情報センターでは4,000〜8,000人に1人とされています(2026年10月時点で確認)。網膜色素変性症は、遺伝性網膜ジストロフィと呼ばれる病気のグループの中で、代表的な病気のひとつです。
初期症状と見え方:夜盲から視野が狭くなる
はじめは、夕方や暗い部屋で見えにくい、暗いところに目が慣れるのに時間がかかる、といった夜盲に気づくことが多い病気です。進むと、まわりの視野が欠けて、筒の中からのぞいているような見え方(求心性視野狭窄)になります。まぶしさを強く感じることもあります。中心の視力は、病気がかなり進むまで保たれることが多いのも特徴です。
失明するまで何年?進み方は遺伝子で大きく違う
「何年で失明する」という決まった年数はありません。GeneReviewsは、症状が出る年齢、進む速さ、重さは、原因の遺伝子、変化の種類、環境の要因によって違うとしています[1]。難病情報センターは、多くの方が最終的に字を読むのが難しくなる(矯正視力0.1以下)一方で、完全に失明する方はむしろあまり多くないとしています(2026年10月時点で確認)。
見え方を悪くする合併症も知られています。網膜の中心がむくむ嚢胞様黄斑浮腫は網膜色素変性症の方の約10〜50%に、白内障は約50%の方が最終的に手術を必要とすると報告されています[1]。どちらも眼科で治療の対象になるので、定期的な受診が大切です。
目だけの網膜色素変性症と、全身の病気の一部として出るもの
網膜色素変性症には、目だけに症状が出る型と、難聴・肥満・指の数の違い・腎臓の病気など、目以外の症状をともなう型(症候群性)があります。代表的なものが、難聴をともなうアッシャー症候群と、肥満・多指・腎臓の病気などをともなうバルデー・ビードル症候群です。これらの多くは、細胞のアンテナのような「繊毛」の働きが損なわれるシリオパチー(繊毛病)に含まれます。
この検査の129遺伝子には、こうした症候群性の病気の遺伝子も含まれています(第5章の表)。目の症状をきっかけに原因がわかり、まだ気づいていない腎臓や耳の病気に早く備えられることがあるのは、遺伝子検査ならではの意味です。
日本の制度:指定難病90と身体障害者手帳
網膜色素変性症は、指定難病90に指定されています(難病情報センター、2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには、認定の基準を満たして申請する必要があります。また、視力や視野の障害の程度によっては、身体障害者手帳(視覚障害)の対象になることがあります。基準や申請の方法は、難病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
2. 網膜色素変性症は遺伝する?遺伝する確率と子ども・孫への遺伝
網膜色素変性症は遺伝する病気ですが、伝わり方には「常染色体顕性(優性)」「常染色体潜性(劣性)」「X連鎖」の3通りがあり、子どもに伝わる確率はそれぞれまったく違います。どの型かは、見た目や家族歴だけでは決められず、原因の遺伝子がわかってはじめてはっきりします。遺伝のしかたの基本は遺伝形式とはで解説しています。
遺伝のしかたは3通り:日本と欧米の割合
🧬 網膜色素変性症の遺伝のしかた
| 遺伝のしかた | 日本の割合(難病情報センター) | 欧米の割合(GeneReviews) | お子さんへの伝わり方 | 多い原因遺伝子(欧米) |
|---|---|---|---|---|
| 常染色体顕性(優性) | 約10% | 15〜25% | 親から子へ、お子さん1人ごとに2分の1 | RHO(顕性の20〜30%) |
| 常染色体潜性(劣性) | 約35% | 5〜20% | ご両親がともに保因者のとき、お子さん1人ごとに4分の1 | USH2A(潜性の10〜15%) |
| X連鎖 | 約5% | 5〜15% | 保因者のお母さんから生まれる男の子の2分の1が発症 | RPGR(X連鎖の70〜90%) |
| 家族に同じ病気の人がいない(孤発例) | 残りの約半数 | 40〜50% | 原因の遺伝子がわかるまで決められない | — |
※日本の割合は難病情報センター「網膜色素変性症(指定難病90)」(2026年10月時点で確認)、欧米の割合と遺伝子の割合はGeneReviews[1]による。調べた集団や方法が違うため、数字は一致しません。
日本と欧米で割合が違うのは、調べた人の集まりや方法の違いに加え、日本人に多い遺伝子の変化があるためと考えられます。日本では、常染色体潜性遺伝のEYS遺伝子の変化が比較的多く見つかることがわかっています(難病情報センター)。
家族に同じ病気の人がいなくても、遺伝子が原因のことがある
難病情報センターによると、日本の患者さんの約半数は、親族に同じ病気の方がいません。それでも遺伝子が原因でないとは言えません。常染色体潜性遺伝では、ご両親は症状のない保因者のことが多く、家族にほかの患者さんがいないのがふつうです。欧米の報告では、家族歴のない男性の患者さんの約15%に、X連鎖のRPGR遺伝子の変化が見つかっています[1]。ご本人の代で新しく起きた変化(新生突然変異)のこともあります。
つまり、「家族にいないから遺伝ではない」「家族にいないから子どもは大丈夫」とは言えません。ご自身の原因がどの型なのかを確かめることが、お子さんへの確率を考える出発点になります。
子ども・孫・きょうだいに遺伝する確率
👨👩👧 立場ごとの確率の目安(原因の遺伝子がわかっている場合)
| あなたの立場 | お子さん・ご家族への確率 |
|---|---|
| 常染色体顕性遺伝の患者さん | お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぐ(男女に関係なし) |
| 常染色体潜性遺伝の患者さん | パートナーが同じ遺伝子の病的変異をもたない場合、お子さんは全員が保因者になる。パートナーが同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに発症する確率が2分の1、保因者になる確率が2分の1 |
| 常染色体潜性遺伝の患者さんの、症状のないきょうだい | ご両親がともに保因者で、あなたがその病気に罹患していない場合、保因者である確率は3分の2。ただし、今は症状がなくても将来発症する可能性がある場合には、そのまま当てはめられません |
| ご両親がともに保因者 | お子さん1人ごとに、発症4分の1・保因者2分の1・受け継がない4分の1 |
| X連鎖遺伝の保因者の女性 | 息子さんの2分の1が発症、娘さんの2分の1が保因者 |
| X連鎖遺伝の患者さん(男性) | 娘さんは全員が保因者、息子さんは受け継がない |
※いずれもお子さん1人ごとの確率で、上のお子さんの結果は下のお子さんの確率を変えない。
「隔世遺伝」と言われることがあるのは、常染色体潜性遺伝やX連鎖遺伝では、症状のない保因者を通して伝わるため、世代を飛ばしたように見えることがあるからです。たとえばX連鎖遺伝では、患者さんの娘さんは症状がほとんどない保因者のことが多く、その息子さん(患者さんの孫)が発症することがあります。
X連鎖の女性:保因者でも症状が出ることがある
X連鎖遺伝の網膜色素変性症で、変化を1つもつ女性は、症状がないこともあれば、軽いものから重いものまで網膜の変化が出ることもあります。女性の症状は、ふつう男性より軽いとされています[1]。そのため、女性の患者さんがいる家系がX連鎖でないとは言い切れず、顕性遺伝のように見えるX連鎖の家系もあります。GeneReviewsは、顕性遺伝と考えられた258家系のうち7.4%がRPGRによるX連鎖だったという報告を紹介しています[1]。
3. 「網膜色素変性症だと結婚できない」は本当?結婚・妊娠を考える方へ
病気があることは、結婚できない理由にはなりません。網膜色素変性症で子どもに伝わる確率は、型によって大きく違い、遺伝子検査とパートナーの検査で具体的にわかります。「網膜色素変性症 結婚できない」「結婚 反対」と検索する方がいるのは、それだけ多くの方が、わからないまま不安を抱えているからだと思います。
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。網膜色素変性症の当事者の方にとっても、きょうだいに患者さんがいる方にとっても、知ってから決めるのと、知らずに決めるのとでは意味が違います。当院は、知りたいと願う方を拒むことはしません。そして、知ったうえで選んだどの選択も尊重します。
パートナーの検査と、拡大版保因者スクリーニング
ご自身の原因が常染色体潜性遺伝の遺伝子だった場合、お子さんが発症するかどうかは、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで決まります。パートナーの方が同じ遺伝子を調べることで、お子さんへの確率をかなり具体的に考えられるようになります。
当院では、多くの潜性遺伝の病気の保因者かどうかをまとめて調べる拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)と男性版(714遺伝子)も行っています。網膜色素変性症の原因遺伝子が対象に入っているかは、それぞれのページの遺伝子一覧でご確認ください。ふたりで受ける意味は結婚相手と受けたい保因者検査で、全体の案内は遺伝子ブライダルチェックで解説しています。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラスもあります(NIPTとセットでのみ受けられる検査です)。
「自分もいつか見えなくなるのでは」という不安を抱えている方へ
親やきょうだいが網膜色素変性症と診断されると、夕方に少し見えにくいだけでも「始まったのでは」と不安になる方がいます。こうした不安を抱えながら暮らしている方もいます。
ご家族の原因の遺伝子がわかっていれば、症状のないご家族も、同じ変化を受け継いでいるかを調べられます。受け継いでいないとわかれば、その変化については、ご家族と同じ確率を心配しなくてよくなります。受け継いでいるとわかった場合は、眼科での定期的な検査、治験の情報、仕事・住まい・結婚や出産の計画など、先に備えられることがあります(第7章)。英国でハンチントン病の発症前の検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[3]。病気は違いますが、「わかったうえで計画したい」という思いは共通しています。
一方で、知らないでいることも、同じように大切な選択です。検査の前には臨床遺伝専門医と時間をかけて考え、結果のあとも気持ちの変化について相談を続けられます。
4. 網膜色素変性症の遺伝子検査を受けるとよい人
網膜色素変性症と診断された方、夜盲や視野の狭さを指摘された方、ご家族に網膜色素変性症の方がいる方、結婚や妊娠を考えていて遺伝が気になる方に向く検査です。網膜色素変性症は、眼底検査と網膜電図(ERG)で診断されることが多く、そのうえで原因を確かめるために遺伝子検査が使われます[1]。
- ●網膜色素変性症と診断され、原因の遺伝子と遺伝のしかたを知りたい方
- ●夜盲や視野が狭いと言われたが、診断がはっきりしない方
- ●遺伝子治療や治験の対象になるかを知りたい方
- ●ご家族に網膜色素変性症の方がいて、ご自身が受け継いでいるか知りたい方
- ●結婚・妊娠を考えていて、お子さんへの確率を知りたい方
- ●難聴・肥満・腎臓の病気など、目以外の症状もある方(症候群性の可能性)
💡 見た目や家族歴だけでは判断できません
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを何度も経験してきました。家族に患者さんがいないから遺伝ではない、症状が軽いから子どもも軽い、とは言えません。当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
この検査より別の検査が向いている場合
網膜色素変性症と診断されている、または強く疑われているなら、まずこの検査です。症状の中心が黄斑(視野の真ん中)だけ、目以外の症状が多く病気をしぼれない、といった場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。
🔍 目の症状に合わせた遺伝子検査の選び方
| こんなとき | 向いている検査 |
|---|---|
| 夜盲・視野が狭い、網膜色素変性症と言われた | このページの検査(網膜色素変性症パネル・129遺伝子) |
| 目の病気がしぼれない、いくつも目の症状がある | 包括的眼疾患遺伝子検査(510遺伝子) |
| 網膜の病気に加えて視神経の病気も疑われる | 網膜症・視神経萎縮遺伝子パネル検査 |
| 見えにくさが視野の真ん中から始まる | 黄斑変性症の遺伝子検査、円錐杆体ジストロフィー遺伝子検査 |
| 眼底に白い点・斑点がある | 斑状網膜(白点状眼底)遺伝子検査 |
| まぶしさが強く、生まれつき色がわからない | 1色覚(全色盲)遺伝子検査 |
| 難聴もある | アッシャー症候群の遺伝子検査 |
| 肥満・多指・腎臓の病気もある | バルデー・ビードル症候群の遺伝子検査、繊毛病症候群の遺伝子検査 |
| 目以外の症状が多く、病気をしぼれない | 全エクソーム検査(WES) |
※どの検査が合うかは、眼科の検査結果やご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
\ 妊娠の前に知れば、選べることが増えます /
ご夫婦の検査で原因がわかっていれば、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。
海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください) | どの検査がよいか迷う方へ
5. この検査で調べる129遺伝子と、わかる病気
この検査では、目だけに症状が出る網膜色素変性症、アッシャー症候群やバルデー・ビードル症候群などの症候群性の網膜色素変性症、そしてよく似た病気(レーバー先天性黒内障など)の原因となる129の遺伝子を、まとめて調べます。原因の遺伝子がこれほど多い病気では、遺伝子を1つずつ調べるより、まとめて調べるパネル検査が勧められています[1]。
日本人で見つかりやすい遺伝子
日本の網膜色素変性症の患者さん1,204人を調べた研究では、83の遺伝子を調べて、29.6%の方で原因となる変化が見つかりました。原因がわかった方のうち65.4%は、EYS・USH2A・RP1L1・RHO・RP1・RPGRの6つの遺伝子によるものでした[2]。この6つは、すべてこの検査の129遺伝子に含まれています。
ただし、この研究で調べた遺伝子の数と方法は、この検査と同じではありません。研究の結果は「日本人ではどの遺伝子が多いか」の目安として受け取ってください。
129遺伝子の一覧と、関係する病気
表の遺伝子名・病気名に下線があるものは、当院のサイトに詳しい解説ページがあります。遺伝子名の古い表記は、現在の名前を添えています。
🧬 網膜色素変性症の遺伝子検査で調べる129遺伝子
| 遺伝子 | 関係する病気 | 遺伝のしかた |
|---|---|---|
| ABCA4 | スターガルト病1型、黄色斑眼底、網膜色素変性症19型、錐体杆体ジストロフィー3型、加齢黄斑変性へのかかりやすさ(2型・顕性) | 常染色体潜性 |
| ABHD12 | 多発ニューロパチー・難聴・運動失調・網膜色素変性症・白内障(PHARC) | 常染色体潜性 |
| ADGRA3 | 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病気の登録なし) | 研究中 |
| AIPL1 | レーバー先天性黒内障4型、網膜色素変性症 | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| ARL2BP | 網膜色素変性症(内臓逆位を伴うことがある) | 常染色体潜性 |
| ARL6 | バルデー・ビードル症候群3型、網膜色素変性症55型 | 常染色体潜性 |
| BBS1 | バルデー・ビードル症候群1型 | 常染色体潜性 |
| BBS10 | バルデー・ビードル症候群10型 | 常染色体潜性 |
| BBS12 | バルデー・ビードル症候群12型 | 常染色体潜性 |
| BBS2 | バルデー・ビードル症候群2型、網膜色素変性症74型 | 常染色体潜性 |
| BBS4 | バルデー・ビードル症候群4型 | 常染色体潜性 |
| BBS5 | バルデー・ビードル症候群5型 | 常染色体潜性 |
| BBS7 | バルデー・ビードル症候群7型 | 常染色体潜性 |
| BBS9 | バルデー・ビードル症候群9型 | 常染色体潜性 |
| BEST1 | 卵黄状黄斑ジストロフィー2型(ベスト病)、硝子体網膜脈絡膜症、網膜色素変性症50型、常染色体潜性ベストロフィノパチー | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| C1QTNF5 | 遅発性網膜変性 | 常染色体顕性 |
| C2orf71(現在の名前:PCARE) | 網膜色素変性症54型 | 常染色体潜性 |
| C8orf37(現在の名前:CFAP418) | 錐体杆体ジストロフィー16型、バルデー・ビードル症候群21型、網膜色素変性症 | 常染色体潜性 |
| CA4 | 網膜色素変性症(Orphanetに関連の登録あり。OMIMでは病気との関係を整理中) | 研究中 |
| CACNA1F | 先天停在性夜盲2A型、X連鎖錐体杆体ジストロフィー3型、オーランド島眼病 | X連鎖 |
| CC2D2A | メッケル症候群6型、ジュベール症候群9型、COACH症候群2、網膜色素変性症93型 | 常染色体潜性 |
| CDH23 | アッシャー症候群1D型、常染色体潜性難聴12、下垂体腺腫5(顕性) | 常染色体潜性(下垂体腺腫5は顕性) |
| CDHR1 | 錐体杆体ジストロフィー15型 | 常染色体潜性 |
| CEP290 | レーバー先天性黒内障10型、ジュベール症候群5型、シニア・ローケン症候群6型、メッケル症候群4型、バルデー・ビードル症候群14型 | 常染色体潜性 |
| CERKL | 網膜色素変性症26型 | 常染色体潜性 |
| CLN3 | 神経セロイドリポフスチン症3型(バッテン病)、網膜色素変性症101型 | 常染色体潜性 |
| CLRN1 | アッシャー症候群3A型、網膜色素変性症61型 | 常染色体潜性 |
| CNGA1 | 網膜色素変性症49型 | 常染色体潜性 |
| CNGB1 | 網膜色素変性症45型 | 常染色体潜性 |
| CRB1 | 網膜色素変性症12型、レーバー先天性黒内障8型、色素性傍静脈網脈絡膜萎縮 | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| CRX | 錐体杆体ジストロフィー2型、レーバー先天性黒内障7型、網膜色素変性症 | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| CYP4V2 | ビエッティ結晶性角膜網膜ジストロフィー | 常染色体潜性 |
| DHDDS | 網膜色素変性症59型、先天性グリコシル化異常症1bb型、発達の遅れとけいれん(顕性) | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| DHX38 | 網膜色素変性症84型 | 常染色体潜性 |
| ELOVL4 | スターガルト病3型、脊髄小脳失調症34型、魚鱗癬・痙性四肢麻痺・知的発達障害(潜性) | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| EMC1 | 小脳萎縮・視覚障害・精神運動発達遅滞 | 常染色体潜性 |
| EXOSC2 | 低身長・難聴・網膜色素変性症・特徴的な顔立ち | 常染色体潜性 |
| EYS | 網膜色素変性症25型 | 常染色体潜性 |
| FAM161A | 網膜色素変性症28型 | 常染色体潜性 |
| FLVCR1 | 網膜色素変性症を伴う後索性運動失調、小頭症・言葉の遅れ・筋緊張低下を伴う神経発達症 | 常染色体潜性 |
| FSCN2 | 網膜色素変性症30型 | 常染色体顕性 |
| GNPTG | ムコリピドーシスIII型(γ) | 常染色体潜性 |
| GUCA1B | 網膜色素変性症48型 | 常染色体顕性 |
| GUCY2D | レーバー先天性黒内障1型、錐体杆体ジストロフィー6型、中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィー1型、先天停在性夜盲1I型 | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| HGSNAT | ムコ多糖症IIIC型(サンフィリッポ症候群C型)、網膜色素変性症73型 | 常染色体潜性 |
| HK1 | 網膜色素変性症79型、ヘキソキナーゼ欠損による溶血性貧血(潜性)、遺伝性運動感覚ニューロパチー・ルセ型(潜性)、視覚障害と脳の異常を伴う神経発達症 | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| IDH3B | 網膜色素変性症46型 | 常染色体潜性 |
| IFT172 | 短肋骨胸郭異形成症10型、網膜色素変性症71型、バルデー・ビードル症候群20型 | 常染色体潜性 |
| IFT43 | 頭蓋外胚葉異形成症3型、短肋骨胸郭異形成症18型、網膜色素変性症81型 | 常染色体潜性 |
| IMPDH1 | 網膜色素変性症10型、レーバー先天性黒内障11型 | 常染色体顕性 |
| IMPG2 | 網膜色素変性症56型(潜性)、卵黄状黄斑ジストロフィー5型(顕性) | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| INPP5E | ジュベール症候群1型、MORM症候群(知的障害・体幹肥満・網膜ジストロフィー・小陰茎) | 常染色体潜性 |
| INVS | ネフロン癆2型 | 常染色体潜性 |
| IQCB1 | シニア・ローケン症候群5型 | 常染色体潜性 |
| KIAA1549 | 網膜色素変性症86型 | 常染色体潜性 |
| KIZ | 網膜色素変性症69型 | 常染色体潜性 |
| KLHL7 | 網膜色素変性症42型(顕性)、PERCHING症候群(潜性) | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| LCA5 | レーバー先天性黒内障5型 | 常染色体潜性 |
| LRAT | レーバー先天性黒内障14型、網膜色素変性症 | 常染色体潜性 |
| LRP5 | 滲出性硝子体網膜症1型、滲出性硝子体網膜症4型、骨粗鬆症・偽神経膠腫症候群(潜性)、内骨膜過骨症・常染色体顕性大理石骨病1型、多発性肝嚢胞4型 | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| MAK | 網膜色素変性症62型 | 常染色体潜性 |
| MERTK | 網膜色素変性症38型 | 常染色体潜性 |
| MFRP | 真性小眼球症2型、小眼球症5型 | 常染色体潜性 |
| MKKS | バルデー・ビードル症候群6型、マキューシック・カウフマン症候群 | 常染色体潜性 |
| NEK2 | 網膜色素変性症67型 | 常染色体潜性 |
| NEUROD1 | 若年発症成人型糖尿病(MODY)6型、2型糖尿病 | 常染色体顕性 |
| NMNAT1 | レーバー先天性黒内障9型、脊椎骨端異形成・難聴・知的発達障害・レーバー先天性黒内障 | 常染色体潜性 |
| NPHP1 | ネフロン癆1型、シニア・ローケン症候群1型、ジュベール症候群4型 | 常染色体潜性 |
| NPHP3 | ネフロン癆3型、メッケル症候群7型、腎・肝・膵異形成1型 | 常染色体潜性 |
| NPHP4 | ネフロン癆4型、シニア・ローケン症候群4型 | 常染色体潜性 |
| NR2E3 | S錐体増強症候群、網膜色素変性症37型 | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| NRL | 網膜色素変性症27型(顕性)、S錐体増強症候群2型(潜性) | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| PCDH15 | アッシャー症候群1F型、アッシャー症候群1D/F二遺伝子遺伝型、常染色体潜性難聴23 | 常染色体潜性 |
| PDE6A | 網膜色素変性症43型 | 常染色体潜性 |
| PDE6B | 網膜色素変性症40型(潜性)、先天停在性夜盲(顕性2型) | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| PDE6G | 網膜色素変性症57型 | 常染色体潜性 |
| PEX1 | ペルオキシソーム形成異常症1A型(ツェルヴェーガー症候群)・1B型、ハイムラー症候群1型 | 常染色体潜性 |
| PEX2 | ペルオキシソーム形成異常症5A型(ツェルヴェーガー症候群)・5B型 | 常染色体潜性 |
| PEX26 | ペルオキシソーム形成異常症7A型(ツェルヴェーガー症候群)・7B型 | 常染色体潜性 |
| PEX7 | 近位肢節型点状軟骨異形成症1型、レフサム病、ペルオキシソーム形成異常症9B型 | 常染色体潜性 |
| PHYH | レフサム病 | 常染色体潜性 |
| PITPNM3 | 錐体杆体ジストロフィー5型 | 常染色体顕性 |
| PLA2G5 | 家族性良性斑状網膜 | 常染色体潜性 |
| PRCD | 網膜色素変性症36型 | 常染色体潜性 |
| PRKCG | 脊髄小脳失調症14型 | 常染色体顕性 |
| PROM1 | 網膜色素変性症41型(潜性)、スターガルト病4型(顕性)、網膜黄斑ジストロフィー2型、錐体杆体ジストロフィー12型 | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| PRPF3 | 網膜色素変性症18型 | 常染色体顕性 |
| PRPF31 | 網膜色素変性症11型 | 常染色体顕性 |
| PRPF4 | 網膜色素変性症70型 | 常染色体顕性 |
| PRPF6 | 網膜色素変性症60型 | 常染色体顕性 |
| PRPF8 | 網膜色素変性症13型 | 常染色体顕性 |
| PRPH2 | 網膜色素変性症7型、白点状眼底、パターンジストロフィー1型、卵黄状黄斑ジストロフィー3型、中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィー2型 | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| RBP3 | 網膜色素変性症66型 | 常染色体潜性 |
| RBP4 | 網膜ジストロフィー・虹彩コロボーマ・面皰性ざ瘡症候群(潜性)、コロボーマを伴う小眼球症10型(顕性) | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| RD3 | レーバー先天性黒内障12型 | 常染色体潜性 |
| RDH11 | 網膜ジストロフィー・若年白内障・低身長症候群 | 常染色体潜性 |
| RDH12 | レーバー先天性黒内障13型 | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| RGR | 網膜色素変性症44型 | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| RHO | 網膜色素変性症4型、先天停在性夜盲(顕性1型)、白点状眼底 | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| RLBP1 | 白点状眼底、ボスニア網膜ジストロフィー、ニューファンドランド杆体錐体ジストロフィー | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| ROM1 | 網膜色素変性症7型(PRPH2との二遺伝子遺伝を含む) | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| RP1 | 網膜色素変性症1型 | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| RP1L1 | オカルト黄斑ジストロフィー(顕性)、網膜色素変性症88型(潜性) | 常染色体顕性/常染色体潜性 |
| RP2 | X連鎖網膜色素変性症2型 | X連鎖 |
| RP9 | 網膜色素変性症9型 | 常染色体顕性 |
| RPE65 | レーバー先天性黒内障2型、網膜色素変性症20型、脈絡膜病変を伴う網膜色素変性症87型(顕性) | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| RPGR | X連鎖網膜色素変性症3型、X連鎖錐体杆体ジストロフィー1型、X連鎖萎縮型黄斑変性、副鼻腔・呼吸器の感染をくり返すX連鎖網膜色素変性症 | X連鎖 |
| RPGRIP1 | レーバー先天性黒内障6型、錐体杆体ジストロフィー13型 | 常染色体潜性 |
| RPGRIP1L | ジュベール症候群7型、メッケル症候群5型、COACH症候群3 | 常染色体潜性 |
| SAG | 小口病1型、網膜色素変性症47型(潜性)、網膜色素変性症96型(顕性) | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| SEMA4A | 網膜色素変性症35型、錐体杆体ジストロフィー10型 | 常染色体潜性 |
| SLC7A14 | 網膜色素変性症68型 | 常染色体潜性 |
| SNRNP200 | 網膜色素変性症33型 | 常染色体顕性 |
| SPATA7 | レーバー先天性黒内障3型/若年性網膜色素変性症 | 常染色体潜性 |
| SPP2 | 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病気の登録なし) | 研究中 |
| TMEM216 | ジュベール症候群2型、メッケル症候群2型、網膜色素変性症98型 | 常染色体潜性 |
| TOPORS | 網膜色素変性症31型 | 常染色体顕性 |
| TRIM32 | 肢帯型筋ジストロフィー2H型、バルデー・ビードル症候群11型 | 常染色体潜性 |
| TRNT1 | 網膜色素変性症と小球性赤血球症、鉄芽球性貧血・B細胞免疫不全・周期性発熱・発達遅滞 | 常染色体潜性 |
| TTC8 | 網膜色素変性症51型、バルデー・ビードル症候群8型 | 常染色体潜性 |
| TTPA | ビタミンE単独欠乏性運動失調症 | 常染色体潜性 |
| TUB | 網膜ジストロフィーと肥満 | 常染色体潜性 |
| TULP1 | 網膜色素変性症14型、レーバー先天性黒内障15型 | 常染色体潜性 |
| USH1C | アッシャー症候群1C型、常染色体潜性難聴18 | 常染色体潜性 |
| USH2A | アッシャー症候群2A型、網膜色素変性症39型 | 常染色体潜性 |
| WFS1 | ウォルフラム症候群1型(潜性)、常染色体顕性ウォルフラム様症候群、常染色体顕性難聴6、核白内障(顕性) | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| WHRN | アッシャー症候群2D型、常染色体潜性難聴31 | 常染色体潜性 |
| ZNF408 | 網膜色素変性症72型(潜性)、滲出性硝子体網膜症6型(顕性) | 常染色体潜性/常染色体顕性 |
| ZNF513 | 網膜色素変性症58型 | 常染色体潜性 |
※遺伝子の一覧は当院の検査内容(2026年10月18日に検査のもとの資料と照合)による。病気の名前と遺伝のしかたは、OMIMの登録内容(Human Phenotype Ontologyが配布するOMIM由来データ、2026年9月版)で確認した。1つの遺伝子に複数の病気が登録されている場合は、目に関わるものを中心に記載した。
表のとおり、この検査では網膜の病気だけでなく、重症早期発症型網膜ジストロフィやレーバー先天性黒内障、腎臓の病気(ネフロン癆)、脳の病気(ジュベール症候群)、代謝の病気(ペルオキシソーム病・レフサム病など)の遺伝子も調べます。そのため、目の検査で受けた方に、目以外の病気の手がかりが見つかることがあります。
6. 遺伝子検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、129遺伝子のたんぱく質を作る部分(とその境目)にある小さな変化と、一部の大きな欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があり、原因が見つからない方も少なくありません。
GeneReviewsは、遺伝子パネル・次世代シーケンス・エクソーム検査で網膜色素変性症の原因が見つかる割合を50〜80%としています[1]。日本の研究では、83遺伝子を調べて原因が見つかったのは29.6%でした[2]。調べた遺伝子や集団で数字は違いますが、陰性(原因が見つからない)という結果も十分にありうることを知ったうえで受けていただくことが大切です。
- ●わかること:遺伝子の文字(塩基)の置き換わりや、小さな挿入・欠失。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●欠失・重複の範囲:血液では、遺伝子全体または2つ以上続くエクソン(遺伝子の区切り)の欠失・重複を調べます。口腔粘膜の検体では、遺伝子全体の欠失・重複が対象です。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、いつも見つけられるわけではありません。
- ●見つけにくい場所:X連鎖のRPGR遺伝子には「ORF15」という、配列が似た繰り返しの多い領域があります。この検査はORF15のほとんどの病的な変化を見つけられますが、ORF15の一部の領域では、変化がないとは言い切れません。
- ●調べられない変化:染色体の転座・逆位、繰り返し配列の伸長、遺伝子の働きを調節する領域(プロモーター)やエクソンから20塩基より奥の変化は、この検査では見つけられません。体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を調べるための検査でもありません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識では判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、網膜色素変性症ではないという意味にはなりません。調べていない遺伝子や、この方法で見つけられない変化が原因のことがあります。
- ●目的と別の病気の手がかり:調べた目的と別の病気の原因が見つかることがあります(二次的所見)。当院の方針は二次的所見の開示方針をご覧ください。
7. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子がわかると、病名がはっきりするだけでなく、ご本人の治療や備え、ご家族の検査、これから子どもを持つときの選択肢まで、次の一手が具体的に決まります。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してからマイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。
ご本人:遺伝子治療・治験の対象か、見え方の見通し、気をつけたいこと
日本では2023年6月、「両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィー」に対する遺伝子治療薬(ボレチゲン ネパルボベク、販売名ルクスターナ)が承認され、同年8月に保険で使えるようになりました(ノバルティスファーマの発表、難病情報センター)。対象は、RPE65遺伝子の2本ともに病的な変化がある方です。治療を受けられるかどうかは、専門の医療機関で網膜の状態なども含めて判断されます。
そのほかの遺伝子では、遺伝子治療や新しい治療の治験・研究が進められています。治験は、対象の遺伝子が決まっていることがほとんどです。原因の遺伝子がわかっていないと、治験の情報が自分に関係あるかどうかを判断できません。治験の状況は時期によって変わるため、最新の情報は眼科の主治医にご確認ください。
原因によって、気をつけたいことが変わることもあります。GeneReviewsは、ABCA4遺伝子が原因の病気では高用量のビタミンAを避けるべきとし、高用量のビタミンEも網膜色素変性症に悪い影響を与える可能性があるため避けるべきとしています[1]。サプリメントは自己判断で使わず、眼科で相談してください。紫外線を防ぐサングラス、禁煙もすすめられています[1]。
見えにくさが進んだときは、拡大鏡や拡大読書器、夜道の歩行を助ける広い範囲を照らすライトなど、ロービジョンケアが役に立ちます[1]。嚢胞様黄斑浮腫(嚢胞黄斑浮腫)や白内障の治療と、指定難病・身体障害者手帳などの制度(第1章)もあわせて、眼科で相談しましょう。症候群性の遺伝子が見つかった場合は、耳・腎臓・代謝などの診療科での見張りも必要になります。
症状のないご家族:きょうだい・親・いとこの検査
ご本人の原因がわかると、ご家族はその変化だけをピンポイントで調べられます。常染色体顕性遺伝なら親・きょうだい・お子さん、常染色体潜性遺伝ならきょうだい(保因者かどうか、発症していないか)、X連鎖遺伝ならお母さん・姉妹・娘さん(保因者かどうか)が主な対象です。症状のない方の検査は、ご本人の同意のもとで行い、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます。
子どもを持つときの選択肢
ご家族の原因の遺伝子がわかっていると、子どもを持つときに選べることが増えます。どれを選ぶか、選ばないかは、おふたりで決めることです。
- ●自然に妊娠して、出生前診断を受ける:ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
- ●PGT-M(着床前遺伝学的検査):日本では日本産科婦人科学会の審査を経て行われ、海外で受ける方もいます(下の項目)。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
- ●何もしないで出産する:これも、そのまま選べる大切な選択肢です。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
網膜色素変性症の方から、「海外でPGT-Mを受けたい」というお問い合わせをいただくことがあります。当院では、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます。ご希望の方は、検査の時にお申し出ください。なお、当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査です。
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。欧州ヒト生殖胎生学会(ESHRE)の指針は、準備として次のことを挙げています[4]。
- ●病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること。意義がまだわからない変化(VUS)は、原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます(臨床遺伝専門医としての判断)。
- ●変化の内容が書かれた元の報告書。認定を受けた検査室から取り寄せることが勧められています。
- ●ご家族の検体。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、2本ある遺伝子の片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(STR・SNPなどの多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。変化も一緒に調べる場合は両側にSTR1個(またはSNP3個)以上、目印だけで調べる場合は両側にSTR2個(またはSNP6個)以上の目印が求められます[4]。
ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要です。指針の目安は、常染色体顕性遺伝なら患者さん少なくとも1人(できれば2人)および/または発症していない方1人、常染色体潜性遺伝なら患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方、X連鎖遺伝なら患者さんおよび/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)です[4]。血縁者がいない場合、指針はご夫婦の目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法を挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。新しく起きた変化(de novo)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[4]。
海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。常染色体潜性遺伝では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。詳しくは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[5]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、症例ごとに学会の審査を受け、実施施設の倫理委員会の承認を経て行われます。指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる病気で、有効な治療法がないか、あっても高度で体への負担が大きいもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないものの日常生活が著しく損なわれる病気については、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みもあります。審査が続いている申請も多く、学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。
英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。網膜色素変性症も、型ごとにPGT-Mを行ってよい病気として一覧に載っています(2026年9月時点。すべての型が載っているわけではありません)。米国には、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[6]。米国生殖医学会の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[7]。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。
陰性・VUSだったとき
原因が見つからなかった場合でも、網膜色素変性症ではないという意味にはなりません(第6章)。症状に合わせて、包括的眼疾患遺伝子検査や全エクソーム検査を考えることがあります。VUSは、それだけで診断やご家族の発症予測、PGT-Mの判断には使いません。ただし、VUSが病気の原因かを確かめる手がかりとして、ご家族の検査を行うことがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。
当院でのその後
結果をお伝えしたあとも、ご家族の検査、パートナーの保因者検査、妊娠したときの出生前診断(絨毛検査・羊水検査を院内で)まで、臨床遺伝専門医が続けてご相談に応じます(遺伝カウンセリング料は第8章のとおり)。結果の報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口腔粘膜で、唾液・口腔粘膜ならクリニックにお越しにならずに、オンライン診療で受けられます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
💴 費用・日数・検体
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査内容 | 網膜色素変性症の遺伝子パネル検査(129遺伝子) |
| 検査費用 | 330,000円(税込) |
| 遺伝カウンセリング料 | 30分22,000円(税込)※検査費用とは別。検査を受けない場合もかかります |
| 結果までの期間 | 2〜3週間 |
| 検体 | 血液・唾液・口腔粘膜 |
| オンライン診療 | 唾液・口腔粘膜の検体なら可能(遺伝カウンセリング料金は事前にお支払いください) |
| 結果の報告書 | 基本は日本語版。英語版のご用意も可能(下記) |
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分(おふたりで30分22,000円)になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたをご覧ください。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
\ 原因がわかれば、治療・治験の手がかりになります /
臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【「家族にいないから大丈夫」では、計画は立てられない】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
網膜色素変性症は、患者さんの約半数で親族に同じ病気の方がいない病気です。それでも多くは遺伝子が原因で、型によって子どもへの確率はまったく違います。「家族にいないから」「自分は軽いから」という印象だけで、結婚や出産を決めてしまわないでほしいと考えています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、家族歴が濃いものの、ご本人は大学を卒業して会社に勤めていた方が念のため検査を受けたところ、染色体の微小欠失が見つかったことがあります。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
網膜色素変性症は、遺伝子がわかってはじめて、遺伝子治療や治験の対象になるかどうかを考えられる時代になりました。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 網膜色素変性症が遺伝する確率は?
遺伝のしかたによって大きく違います。常染色体顕性(優性)遺伝なら、親から子へ伝わる確率はお子さん1人ごとに2分の1です。常染色体潜性(劣性)遺伝では、ご両親がともに保因者のとき、お子さんが発症する確率は4分の1です。X連鎖遺伝では、保因者のお母さんから生まれる男の子の2分の1が発症します。どの型かは、遺伝子検査で原因がわかってはじめて決まります。
Q2. 網膜色素変性症は子どもに遺伝しますか?
遺伝することがありますが、型によって確率はまったく違います。たとえば常染色体潜性遺伝の患者さんのお子さんは、パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、ふつう発症しません(保因者にはなります)。ご自身の原因遺伝子がわかれば、お子さんへの確率を具体的に考えられます。
Q3. 網膜色素変性症で失明するまで何年かかりますか?
決まった年数はありません。進み方は原因の遺伝子や変化によって大きく違います。難病情報センターは、多くの方が最終的に字を読むのが難しくなる一方で、完全に失明する方はむしろあまり多くないとしています。原因遺伝子がわかると、見通しを考える手がかりになります。
Q4. 網膜色素変性症だと結婚できないのですか?
いいえ。病気があることは、結婚できない理由にはなりません。お子さんへの遺伝の確率は型によって違い、遺伝子検査とパートナーの保因者検査で具体的にわかります。知ったうえで、出生前診断なども含めて、おふたりで選べることが増えます。
Q5. 家族に患者さんがいないのに、遺伝子が原因のことはありますか?
あります。難病情報センターによると、日本の患者さんの約半数は、親族に同じ病気の方がいません。常染色体潜性遺伝では、ご両親が症状のない保因者のことがよくあります。欧米の報告では、家族歴のない男性の患者さんの約15%にX連鎖のRPGR遺伝子の変化が見つかっています。
Q6. 網膜色素変性症の最新治療は?治った人はいますか?
日本では2023年に、両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィーに対する遺伝子治療薬(ルクスターナ)が承認され、保険で使えるようになりました。ただし、対象はRPE65の両方に病的な変化がある方に限られます。そのほかの遺伝子では治験・研究の段階です。治療の対象になるかを知るにも、原因遺伝子を調べることが出発点になります。
Q7. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。当院では、海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます。検査の時にお申し出ください。ただし、PGT-Mの準備には、ご本人の結果だけでなく、ご家族の検体も必要になることがふつうです。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
Q8. 網膜色素変性症の遺伝子検査の費用と、結果までの日数は?
検査費用は330,000円(税込)で、結果までは2〜3週間です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。検体は血液・唾液・口腔粘膜で、唾液・口腔粘膜ならオンライン診療でも受けられます。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
🧬 人生に一度の遺伝子検査を、ご自身とご家族のこれからに
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。網膜色素変性症の原因がわかれば、遺伝子治療や治験の対象になるか、見え方の見通し、お子さんへの確率、ご家族の検査まで、これからの計画を具体的に考えられます。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。唾液・口腔粘膜の検体なら、オンライン診療でも受けられます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Fahim AT, Daiger SP, Weleber RG. Nonsyndromic Retinitis Pigmentosa Overview. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2000 (Updated 2023 Apr 6). [NCBI Bookshelf NBK1417]
- [2] Koyanagi Y, Akiyama M, Nishiguchi KM, et al. Genetic characteristics of retinitis pigmentosa in 1204 Japanese patients. J Med Genet. 2019;56(10):662-670. [DOI: 10.1136/jmedgenet-2018-105691](PMID: 31213501)
- [3] Baig SS, et al. 22 Years of predictive testing for Huntington’s disease: the experience of the UK Huntington’s Prediction Consortium. Eur J Hum Genet. 2016;24(10):1396-1402. [DOI: 10.1038/ejhg.2016.36]
- [4] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
- [5] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
- [6] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
- [7] Ethics Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Use of preimplantation genetic testing for monogenic adult-onset conditions: an Ethics Committee opinion. Fertil Steril. 2024;122:607-611.



