この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

遺伝病(単一遺伝子疾患)の出生前診断は、ご家族でわかっている原因の遺伝子の変化を、おなかの赤ちゃんが受け継いでいるかどうかを、妊娠中に調べる検査です。絨毛検査か羊水検査で赤ちゃんの細胞をいただき、その遺伝子を調べます。上のお子さんやご家族に遺伝病があり、「次の子にも同じ病気が起こるのか」を知りたい方が、妊娠中に答えを得るための方法です。当院では、絨毛検査・羊水検査を院内で行い、検査の前と結果のときの遺伝カウンセリングまで、臨床遺伝専門医が担当します。このページでは、受ける前に必要なもの、絨毛検査と羊水検査の時期と流産のリスク、母体細胞混入検査(MCC)が欠かせない理由、費用の内訳、結果が出たあとにできることまでを解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
ご家族でわかっている遺伝子の変化(バリアント)を、赤ちゃんが受け継いでいるかどうかがわかります。調べるのは、ご家族で原因がわかっている病気だけです。ほかの遺伝病まで一度にわかる検査ではありません。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
ご自身かパートナーが遺伝病をもつ方、上のお子さんの遺伝病の原因がわかっている方、保因者検査でご夫婦とも同じ遺伝子の保因者とわかった方です。原因がまだわかっていなければ、先にご両親(あなたとパートナー)の検査が必要です。
🧬 Q. 時期と費用は?
絨毛検査は妊娠10〜14週(税込132,000円)、羊水検査は妊娠15週以降(税込88,000円)です。これに胎児の遺伝子検査と母体細胞混入検査(MCC、税込132,000円)が加わります。例:絨毛検査+ご家族の変化だけを調べる検査(1か所)+MCC=税込506,000円。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。赤ちゃんが変化を受け継いでいたときも、病気の見通し、生まれたあとの備え、次の妊娠の計画まで一緒に考えます。どの選択も尊重します。
1. 遺伝病(単一遺伝子疾患)の出生前診断とは
単一遺伝子疾患の出生前診断は、ご家族で原因とわかっている1つの遺伝子の変化を、赤ちゃんが受け継いでいるかを確かめる検査です。赤ちゃんの細胞は、妊娠の早い時期なら胎盤のもとになる絨毛から(絨毛検査)、少し進んでからなら羊水から(羊水検査)いただきます。その細胞から取り出したDNAで、ご家族と同じ場所に同じ変化があるかを調べます。
「出生前診断は遺伝と関係ありますか?」という疑問をよく見かけます。出生前診断には、染色体の数を調べるもの(NIPTや羊水検査の染色体検査)と、遺伝子の変化を調べるもの(このページの検査)があります。ご家族の遺伝病を調べるのは後者で、染色体の検査だけでは、1つの遺伝子の小さな変化はわかりません。同じ羊水検査でも、何を調べるかによって、わかることがまったく違います。羊水の染色体検査でわかることは羊水検査でわかることで解説しています。
単一遺伝子疾患とは:親から子へ伝わる確率は遺伝のしかたで決まる
単一遺伝子疾患とは、1つの遺伝子の変化が主な原因で起こる病気のことです。親から子へどう伝わるか(遺伝形式)によって、お子さん1人ごとの確率が変わります。親が遺伝病をもつ方、上のお子さんが遺伝病だった方が「次の子の確率」を考えるときの基本になるので、まず表で整理します。
🧬 遺伝のしかたと、お子さん1人ごとの確率
※確率は妊娠ごとに同じで、前のお子さんの結果に左右されません。数字は米国国立医学図書館の遺伝情報サイト(MedlinePlus Genetics、2026年10月確認)による。X連鎖のくわしいしくみはX連鎖遺伝とはで解説しています。
上のお子さんの病気が、ご両親から受け継いだものではなく、お子さんの代で新しく起きた変化(de novo変異・新生突然変異)だったとわかることもあります。この場合、次のお子さんの確率は低くなりますが、ゼロにはなりません。親御さんの卵子や精子のもとになる細胞の一部だけに変化がある(性腺モザイク)ことがあるためです。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。新しく起きた変化だったご家族でも、次の妊娠で出生前診断を考える意味はあります。
出生前診断で調べられる遺伝病の例
ご家族で原因の変化がわかっていれば、病気の種類を問わず、出生前診断を考えることができます。下の表は、よく知られている単一遺伝子疾患の例です。表にない病気でも、ご家族の報告書があればご相談いただけます。ただし、その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針(日本産科婦人科学会の見解)を踏まえて個別に判断します。妊娠を考えている段階からご相談ください。
🧬 出生前診断の対象になりうる遺伝病の例
※遺伝のしかたと原因の遺伝子は、米国国立医学図書館の遺伝情報サイト(MedlinePlus Genetics、2026年10月確認)による。「リピート数を見る」病気は、同じ配列のくり返しが長くなることで起こる病気(リピート伸長)で、配列を読む検査とは別の方法で調べます。
筋強直性ジストロフィー1型やハンチントン病では、世代を重ねるとくり返しが長くなり、発症が早く重くなることがあります(表現促進現象)。脆弱X症候群では、お母さんの「前変異」が卵子になる途中で長くなり、お子さんで症状が出る長さになることがあります。軟骨無形成症は、約8割が平均的な身長のご両親から新しく起きた変化で生まれます。「親は軽いから、子どもも軽い」「家族にいないから大丈夫」とは言えない病気があることも、出生前診断を考える理由のひとつです。
2. 受ける前に必要なもの:ご家族の「原因の遺伝子の変化」がわかっているか
胎児の単一遺伝子疾患を調べるには、ふつう、ご家族で原因の遺伝子の変化がすでにわかっていることが必要です。出生前診断で「何を調べるか」を決める的になるのが、その変化だからです。原因がわからないままでは、赤ちゃんのどの遺伝子のどこを調べればよいかが決まりません。
ご家族の遺伝子検査の報告書が、いちばんの手がかり
ご家族がすでに遺伝子検査を受けていて原因がわかっていれば、その報告書がいちばんの手がかりです。報告書には、どの遺伝子の、どの位置の、どんな変化か(たとえば「c.」「p.」で始まる表記)が書かれています。遺伝カウンセリングの日に、報告書(コピーで構いません)をお持ちください。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
報告書に書かれた変化が「病的(Pathogenic)」「おそらく病的(Likely pathogenic)」と判定されているかも大切です。意義がまだわからない変化(VUS)は、病気の原因と確かめられていないため、そのまま出生前診断の的にするのは難しいと考えています。VUSしか見つかっていない場合は、ご家族の検査や情報を足して判断できるかを、遺伝カウンセリングで一緒に考えます。
原因がまだわかっていないとき:ご両親(あなたとパートナー)を検査する
原因がわかっていなければ、先にご両親(あなたとパートナー)ご自身を検査します。たとえば、上のお子さんが潜性遺伝の病気と言われたものの遺伝子検査はしていない場合は、ご両親それぞれの拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・1009遺伝子、男性版714遺伝子・911遺伝子)や、単一遺伝子検査・病気ごとのパネル検査で、どの変化をもっているかを確かめます。パネルに入っていない遺伝子は、カスタマイズ遺伝子パネル検査として追加して調べることもできます。
ご自身の検査の結果が出るまでには時間がかかります。妊娠してから原因探しを始めると、絨毛検査・羊水検査の時期に間に合わないことがあります。次の妊娠を考えている段階で、ご両親の検査を先に済ませておくことをおすすめします。
💡 ご家族を連れてきて検査することはできますか?
当院で検査を受けられるのは、検査の意味を理解して同意できる方ご本人です。知的障害のあるご家族が、ご自身で検査に同意できるかどうかは、個別に確認します。ご本人が同意できない場合、代わりに同意するのは、その方ご本人の利益のための検査であることが前提なので、きょうだいの将来のために、知的障害のあるご家族を検査することはできません。この場合は、症状のないご相談者ご本人(とパートナー)を検査して、確率を考えていきます。
ご両親の検体や、変化をもつご家族の検体が必要になることがある
胎児の検査では、結果を正しく読むために、ご両親の検体を一緒に調べることが強くすすめられています。また、病気や変化の種類によっては、変化をもつご家族の検体を「比べる相手(陽性対照)」として必要とすることがあります。どの検体が要るかは、変化の種類と調べ方で違うので、遺伝カウンセリングでお伝えします。
3. どんな人が受けるとよいか
この検査が向いているのは、ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていて、妊娠中に赤ちゃんの状態を確かめたい方です。具体的には、次のような方です。
- ✅ 上のお子さんが遺伝病で、原因の変化がわかっている方(次のお子さんのリスクを知りたい)
- ✅ 親が遺伝病をもつ方、またはご自身・パートナーが病的な変化をもつとわかっている方
- ✅ 保因者検査で、ご夫婦とも同じ遺伝子の保因者とわかった方
- ✅ お母さんがX連鎖の病気の保因者とわかっている方
- ✅ 遺伝病の家族歴があり、結婚・妊娠を考えるにあたって、知ったうえで準備したい方
遺伝病と結婚:反対されたり、不安で迷ったりしている方へ
ご自身やご家族の遺伝病を理由に、結婚を反対されたり、結婚や出産をためらったりする方がいます。けれども、お子さんに伝わる確率は病気とご家族ごとに違い、検査で「わかること」があります。ご自身が変化をもっているか、パートナーが同じ遺伝子の保因者か、お子さん1人ごとの確率はどれくらいか。それがわかれば、妊娠中にこの検査で赤ちゃんを確かめる、という計画を立てることができます。遺伝病があることは、結婚や出産をあきらめる理由にはなりません。知ったうえで選べる道があることを、ご家族にも伝えていただければと思います。
この検査より別の検査が向いている場合
ご家族で原因がわかっていない場合や、調べたいことが「家族の病気」ではない場合は、別の検査が向いています。比べる相手は、ほかの施設ではなく、検査の種類です。
🔍 目的に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、ご家族の情報と妊娠の状況で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めます。
NIPTでは、ご家族の遺伝病はわかりますか?
ご家族でわかっている変化を、お母さんの血液だけで調べる検査(NIPD)は、当院では今は扱っていません。ご家族の遺伝病を赤ちゃんで確かめるには、絨毛検査か羊水検査が必要です。
一方で、ご両親にない変化が赤ちゃんの代で新しく起きる病気の一部は、当院のNIPTで調べられます。ダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子)です。たとえば軟骨無形成症の原因遺伝子FGFR3は、どちらのプランでも調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性なら、確定検査(絨毛検査・羊水検査)を院内で受けられます。父親の年齢と新しく起きる変化の関係はNIPTと単一遺伝子疾患で解説しています。
4. 絨毛検査と羊水検査:時期・流産のリスク・どちらを選ぶか
赤ちゃんの細胞をいただく方法は、絨毛検査と羊水検査の2つです。当院ではどちらも院内で行います。「絨毛検査と羊水検査、どちらがよいか」は、妊娠週数、結果を知りたい時期、検体の量などで決まります。
🏥 絨毛検査と羊水検査の違い(当院)
※流産のリスクは、検査を受けた人と受けなかった人を比べた研究をまとめた2019年のメタ解析による(羊水検査:12研究・63,723件、絨毛検査:7研究・13,011件)[1]。採取の費用に、基本の染色体検査は含みません。
流産のリスクは?:羊水検査0.30%、絨毛検査0.20%
2019年のメタ解析では、検査が原因で増える流産のリスクは、羊水検査で0.30%(95%信頼区間0.11〜0.49%)、絨毛検査で0.20%(同−0.13〜0.52%)と推定されました[1]。絨毛検査の数字は、検査を受けなかった人との差が統計的にはっきりしない、という結果でした。古い資料にある「羊水検査で300人に1人、絨毛検査で100人に1人」といった数字より、今の推定は低くなっています。
ただし、リスクがゼロになるわけではありません。この数字は研究をまとめた平均で、一人ひとりのリスクを保証するものではありません。流産のリスクと、ご家族の病気について知ることの意味を比べて決めていただくために、遺伝カウンセリングでご説明します。くわしくは羊水検査のリスクもご覧ください。
絨毛検査と羊水検査、どちらを選ぶか
絨毛検査は、羊水検査より早い時期に受けられるので、結果も早くわかります。妊娠の早い時期に答えを得て、その後の準備や選択の時間を取りたい方に向いています。羊水検査は、妊娠15週以降になりますが、採取の費用は絨毛検査より抑えられます。どちらにするかは、妊娠週数と、ご家族の病気の調べ方(必要な検体の量など)を踏まえて、遺伝カウンセリングで一緒に決めます。2つの検査の違いは絨毛検査と羊水検査の違い、それぞれの検査は絨毛検査について・羊水検査とはで解説しています。
5. 母体細胞混入検査(MCC)が必要な理由
母体細胞混入検査(MCC)は、絨毛や羊水にお母さんの細胞が混ざっていないかを確かめる検査です。胎児の遺伝子検査では、必ずセットで行います。絨毛や羊水を採るとき、お母さんの血液や組織がわずかに混ざることがあります。混ざったまま調べると、お母さんの遺伝子を赤ちゃんのものと読み違えるおそれがあります。
⚠️ お母さんが同じ変化をもっているときほど、MCCが大切です
母体の細胞の混入は、胎児の単一遺伝子検査で、偽陽性(本当は受け継いでいないのに「ある」と出る)にも、偽陰性(受け継いでいるのに「ない」と出る)にもなりえます。とくにお母さんがその変化をもつ(保因者や顕性遺伝の病気をもつ)場合は、お母さんの変化を赤ちゃんの変化と見誤るおそれがあり、少ない混入でも結果に影響しやすいと報告されています[2]。そのためMCCでは、お母さんの検体と、絨毛・羊水のDNAを比べて、混入がないかを確かめます。
当院では、胎児の遺伝子検査の正確さを守るために、MCCを必ず行っています。単一遺伝子検査・既知の変異検査のページにある「胎児の検査は+132,000円」は、このMCCの料金のことです。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、ご家族でわかっている変化を、赤ちゃんが受け継いでいるかどうかです。次のことは、この検査だけではわかりません。
- ⚠️ ほかの遺伝病・染色体の病気:調べるのはご家族の病気の変化だけです。ほかの病気がないことの証明にはなりません。染色体も調べたい場合は、別に染色体検査が必要です。
- ⚠️ 症状の重さ・発症の時期:同じ変化をもっていても、症状の重さには人によって大きな幅があることがあります(表現型の多様性)。受け継いでいるとわかっても、どの程度の症状になるかまでは言えないことが多いです。
- ⚠️ ご家族の変化そのものの解釈:ご家族の変化の判定が将来変わることがあります。とくに意義がまだわからない変化(VUS)は、出生前診断の的にするのが難しいことがあります。
- ⚠️ ほかの意義不明な変化:この検査(出生前の単一遺伝子検査・遺伝子パネル検査)では、意義がまだわからない変化(VUS)は報告しない運用です。出生前全エクソーム・全ゲノムでは扱いが異なり、ご希望によりVUSも報告できます。
確定検査(羊水検査・絨毛検査)の精度と限界は、羊水検査・絨毛検査の精度とはで解説しています。
7. 結果が出たあとにできること
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけを郵送やメールでお送りすることはしていません。
赤ちゃんが変化を受け継いでいなかったとき
ご家族と同じ変化は、赤ちゃんには見つからなかった、という結果です。その病気について、ご家族と同じ確率を心配しなくてよいことがわかります。ただし、これは「すべての病気がない」という意味ではありません(前の章のとおり)。妊婦健診やエコーは、これまでどおり続けてください。
赤ちゃんが変化を受け継いでいたとき:次にできること
赤ちゃんがご家族と同じ変化を受け継いでいるとわかっても、そこで終わりではありません。わかったことから、次を考えることができます。
次の妊娠に向けて:PGT-M(着床前遺伝学的検査)という選択肢
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている変化を受け継いでいない受精卵を選んで子宮に戻す検査です。日本でも、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へ、ご本人の検査だけでは準備が整わない理由はPGT-Mはなぜ本人だけでは検査できないのかで解説しています。
⚠️ PGT-Mのあとも、妊娠中の確定検査がすすめられています
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。欧州生殖医学会(ESHRE)の指針は、誤った結果になる割合は多くの施設で全体として1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[3]。PGT-Mで選んだ受精卵で妊娠した場合も、このページの検査で赤ちゃんそのものを確かめることができます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。
PGT-Mと出生前診断のどちらがよいかは、ご夫婦の考え方や状況によって違います。PGT-Mだけが選択肢ではない、という考え方は着床前診断(PGT-M)だけが選択肢ではない理由で解説しています。
報告書の言語
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
8. 検査の流れ・費用・結果まで
遺伝カウンセリング報告書を確認
▶
採取絨毛・羊水(院内)
▶
遺伝子検査MCCとセット
▶
結果のご説明そのあとマイページへ
最初の遺伝カウンセリングで、ご家族の報告書を確認し、調べる変化・調べ方・採取の方法(絨毛か羊水か)・必要な検体を決めます。検査会社でも、ご家族の報告書と調べる変化を専門のスタッフが確かめてから検査を始めます。採取は院内で行い、お母さんの検体(MCC用)も同じ日にいただきます。結果までの日数は、調べ方や、検体を培養する必要があるかによって変わるため、遺伝カウンセリングでお伝えします。妊娠週数に余裕をもって進めるためにも、妊娠がわかったら早めに、できれば妊娠前からご相談ください。
費用は「採取+胎児の遺伝子検査+MCC」の足し算
当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。胎児の検査の費用は、採取・胎児の遺伝子検査・MCCの足し算になります。胎児の遺伝子検査は、調べ方によって料金が違います。ご家族の変化がわかっている場合は、ふつう、その変化だけを見る「既知の変異検査」を使います。
💴 費用の内訳(税込)
※遺伝カウンセリング料は基本はおひとりずつかかります。おふたり(ご家族)が同じ診療枠で、かつ同時に検査を受ける場合だけ、一人分をサービスします(おふたりで22,000円)。検査を受けない場合(ご相談だけの場合)は、人数分かかります。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください(絨毛・羊水の採取はご来院が必要です)。
🧮 合計の例(税込)
※このほかに遺伝カウンセリング料がかかります。調べる変化が2か所以上のとき(潜性遺伝でご両親の変化が違う場合など)や、配列を読む検査・リピート伸長検査を使うときは、金額が変わります。
絨毛・羊水の採取は院内で行い、採取した検体の遺伝子検査とMCCは、次の会社で行います。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
院内は全室個室で、受診枠は90分です。ほかの患者さんと時間が重ならないように予約を取っているため、院内でほかの患者さんと顔を合わせることはありません。キッズスペースはありませんが、お子さま連れでご来院いただけます(診察室は広さに余裕があります)。なお当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。受診の前の約束ごとはNIPT以外の遺伝子検査の診療方針にまとめています。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【知ってから選べるように、妊娠の前から】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。そして、原因がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんを確かめることができます。原因がわからないままでは、出生前に調べる的を決められません。だからこそ、上のお子さんやご家族の原因を知ることは、次の妊娠への準備の第一歩だと考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。私が出生前診断に携わると決めた原点は、出生前検査をする原点症例に書きました。結婚・妊娠・出産のどの段階でも、遺伝の専門医として支えます。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 出生前診断は遺伝と関係ありますか?
出生前診断には、赤ちゃんの染色体の数を調べる検査と、遺伝子の変化を調べる検査があります。ご家族の遺伝病(単一遺伝子疾患)を調べるのは後者で、ご家族でわかっている原因の遺伝子の変化を、絨毛検査か羊水検査でいただいた赤ちゃんの細胞で調べます。染色体の検査だけでは、1つの遺伝子の小さな変化はわかりません。
Q2. 出生前診断でわかる遺伝病は?
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっている病気です。脊髄性筋萎縮症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病、βサラセミア、脆弱X症候群、筋強直性ジストロフィー1型などが例です。ほかの遺伝病まで一度にわかる検査ではありません。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断します。
Q3. 単一遺伝子疾患の出生前診断はいつから受けられますか?
当院では、絨毛検査は妊娠10〜14週、羊水検査は妊娠15週以降に行っています。ご家族の報告書の確認や、ご両親の検査が先に必要なことがあるので、妊娠がわかったら早めに、できれば妊娠前からご相談ください。
Q4. 費用はいくらですか?
採取(絨毛検査132,000円または羊水検査88,000円)、胎児の遺伝子検査(ご家族の変化だけを見る既知の変異検査は1か所242,000円など)、母体細胞混入検査(MCC)132,000円の足し算です(いずれも税込)。たとえば絨毛検査+既知の変異検査(1か所)+MCCで506,000円です。このほかに遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)がかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
Q5. 家族の遺伝子検査の結果がなくても受けられますか?
ご家族で原因の変化がわかっていないと、赤ちゃんのどこを調べればよいかが決まりません。その場合は、先にご両親(あなたとパートナー)ご自身を保因者検査や遺伝子検査で調べます。結果が出るまでに時間がかかるので、妊娠前からのご相談をおすすめします。
Q6. NIPTで家族の遺伝病はわかりますか?
ご家族でわかっている変化を、お母さんの血液だけで調べる検査(NIPD)は、当院では今は扱っていません。ご家族の遺伝病を赤ちゃんで確かめるには、絨毛検査か羊水検査が必要です。なお、赤ちゃんの代で新しく起きる変化による病気の一部は、当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)で調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。
Q7. 羊水検査・絨毛検査で流産する確率は?
2019年のメタ解析では、検査が原因で増える流産のリスクは、羊水検査で0.30%、絨毛検査で0.20%と推定されています(絨毛検査は、受けなかった人との差が統計的にはっきりしない結果でした)。ゼロではないので、遺伝カウンセリングで、知ることの意味と比べて決めていただきます。
Q8. 遺伝病があると結婚できないのでしょうか?
遺伝病があることは、結婚や出産をあきらめる理由にはなりません。お子さんに伝わる確率は病気とご家族ごとに違い、ご自身が変化をもつか、パートナーが同じ遺伝子の保因者か、お子さんの確率はどれくらいかを、検査で知ることができます。知ったうえで、妊娠中にこの検査で赤ちゃんを確かめるといった計画を立てられます。
🧬 ご家族の遺伝病を、次の妊娠で確かめる
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ご家族の原因がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんを確かめる計画が立てられます。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、ご両親の検査、検査の前後の遺伝カウンセリング、羊水検査・絨毛検査による胎児の遺伝子検査まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Salomon LJ, Sotiriadis A, Wulff CB, Odibo A, Akolekar R. Risk of miscarriage following amniocentesis or chorionic villus sampling: systematic review of literature and updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019;54(4):442-451. [DOI: 10.1002/uog.20353](PMID: 31124209)
- [2] Li M, Song J, Sun K, Chang J, Yin K, Yang X, Lv Y, Jiang Y, Hao N. The asymmetric threat of maternal cell contamination in prenatal single-gene testing. Diagnostics (Basel). 2026;16(15):2302. [DOI: 10.3390/diagnostics16152302]
- [3] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
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